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学位論文題名Physiological studies on somatic growth and sexual maturation in salmonids

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科学 )   ミン ベェレ ット    ミ ンギ ストゼ リフ ン

     学位論文題名

Physiological studies on somatic growth     and sexual maturation in salmonids

(サケ科魚類の体成長と性成熟に関する生理学的研究)

学 位論文内容の要旨

  魚類の養殖において、魚体の体成長およぴ性成熟を促進するために内分泌機構や環境要因などの側面 から様カな研究がなされてきた。しかし、サケ科魚類の体成長と性成熟の両方に関わる内分泌機構に関 しては不明な点が多い。本研究では、サケ科魚類の体成長と性成熟に関する以下の3っの生理学的研究 を行った。まず、生理活性物質を含有し魚類を含む脊椎動物において体成長およぴ性成熟を促進するこ とが報 告され ているク モノス カビ抽出 物(Rhizopus extract; RU)が、サクラマス(Oncorhynch us masouの体成長と性成熟に与える影響を調べた。次に、シロザケ(〇.血・ぬ)のべーリング海から千 歳川の孵化場までの母川回帰に伴う体成長と性成熟に関与するホルモンの分泌動態を調べた。さらに、

熊 石 支 場 に お け る 池 産 サ ク ラ マ ス の 低 発 眼 卵 率 の 原 因 に 関 す る 内分 泌 学 的解 析 を 試 みた 。

1. RUのサクラマスの体成長と性成熟におよぼす影響

  洞爺臨 湖実験所 産のサ クラマス を用い て長期RU投 与の影 響を調べ た。実験魚は、体重1kgに対し てRUを0mg( コ ン ト ロー ル 群 ) 、20mg (RU20群 )、200mg (RU200群 ) 餌 に混 ぜ て 投与 す る3群 に分け、240月問サンプリングを行った。毎月15‑20尾を供試魚として、採血後に尾叉長・体重. 生 殖腺重 量・肝重 量を測 定して生 殖腺指 数(GSI;生殖腺重量xiooi体重)を算出した。血清中のインシ ユリン様成長因子I (IGF‑I)、テストステロン(T)、11.ケトテストステロン(11‑KT)、エストラジオ ール‑178 (E2)、お よび17a,20B‑デ ヒドロキ シ‑4‑プレグネン‑3‑オン(DHP)を時間分解螢光免疫測定 法(TR‑FIA法)により測定した。

  RU200群 で は0+ の9月 か ら1゛ の3月、未成 熟魚では1+ の4月 から6月およ び2゛ の2月 から3月、

成熟魚の雄では1+の9月から10月、雌では1+の春・夏・秋および2+の春に魚体の体長・体重がコント ロ ール 群 に 比べ 有 意 に増 加 し た。 ま た 、RU200群 のIGF‑Iは 、雄では1+ の6月‑9月・10月 ・12月 および2+の3月.4月 に、雌で は1+ の7月.8月.10月,.12月およぴ2+の3月‑4月でコントロール 群 に比べて 有意に増 大した 。また、RU20群およ びRU200群のGSIは、コン トロー ル群と比 べて増 加 する傾 向がみら れたが 統計的な 差は見 られなか った。さらにRU200群では、T.11‑KT. E2は産卵前 に、DHPは産卵 期に高 値を示し た。成 熟RU 200群では、アンドロゲンとDHPが著しく増加していた。

長 期RU投 与に よ り 、サ ク ラ マス のIGF‑I濃度が上 昇した ことによ り体成長 が促進 され、さ らにT‑

11.  KT.  E2.  DHP濃 度 が 上 昇 し た こ と に よ り 性 成 熟 が 促 進 し た と 考 え ら れ た 。   次 に 、RUお よ ぴク ロ マ ト分 画(RU分画A,B,C,D,E,F)が視床下 部(HYP)、下垂体 およぴ 生殖 腺のホルモン放出に及ばす影響を確かめるため、サクラマスの成熟個体を用いてRU培養実験を行った。

L‑15培 養液Iml中のRU濃 度は0・1・10・100・1000 y,g/ml、RU分画 濃度は0・100.1000.  10000 p g/mlとし、培養時間は6・12・18・ 24時間とした。培養後、培養液中のサケ型ゴナドトロピン放出ホ

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ルモン(sGnRH)、 ゴナドトロピン(黄体形成ホルモン;LH、卵胞刺激ホルモン;FSH)、およぴステロ イドホ ルモン を抽出し 、TR‑FIA法にて各ホルモン濃度を測定した。その結果、HYPおよぴ下垂体では RUの濃度が高くなるのに伴って各ホルモン濃度が増加し、また培養時間が長くなるに従い各ホルモン 濃度が上昇する傾向カミ認められた。さらに、ほとんどのRU分画は、コントロールと比べて各ホルモン 濃度を 有意に 増加させ た。生殖 腺でも 、RU分画AおよぴBについてはステロイドホルモン濃度が大幅 に増加 した。RUの生理活 性物質 が、脳― 下垂体一 生殖腺(BPG)系の ホルモ ン分泌に関与しているこ とが明らかになった。

  以上の 結果、RUはサクラマスにおいてBPG系のホルモンの分泌を刺激して性成熟を促進する共に、

IGF‑Iの 分泌を 刺激して 体成長を促進させることが明らかになり、RUはサクラマスの増養殖において 魚体の体成長およぴ性成熟の両方を促進することに有効であることが示唆された。今後は、RUの生理 活性物質についてより詳細に解析する必要がある。

2. シ ロ ザ ケ の 母 川 回 帰 に 伴 う 体 成 長 と 性 成 熟 に 関 与 す る ホ ル モ ン の 分 泌 動 態     シ ロザケの べーリ ング海か ら千歳川 の孵化 場までの母川回帰に伴うBPG系ホルモンおよぴIGF‑I の分 泌動態 を2003年か ら2005年まで 調べた 。シロザ ケは、ベーリング海および石狩沖から千歳の孵 化場まで7地点にて採取した。断頭の後、脳(嗅球;OB、終脳;TE、HYP)を摘出し、血液も採取した。

OB・TE.HYP.脳 下垂体の 各部位 のsGnRH量 を、脳 下垂体の ゴナド トロピン 量、血 中のステ ロイド ホ ル モ ン(T. 11‑KT. E2. DHP)お よ び IGF‑I量 を 、 ′ rR‑FIA法 に よ り 測 定 し た 。   GSIは3年間大き な差を 見せず、 雄では べーリン グ海から石狩川河口まで上昇した後に減少し、雌 では べーリ ング海か ら孵化 場まで上 昇した 。sGnRHは 、OB. TEでは石狩沖合で上昇し、石狩川河口   (河口)潟よび石狩川と千歳川の分岐点(分岐点)において最大値を示す傾向が見られた。HYPでは、

べーリング海で高い値を示し、石狩沖合およぴ石狩沿岸で上昇し、河口および分岐点において最高値を 示 し た 。 ま た 、 脳 下 垂 体のLHは、sGnRHと 同様 の 傾 向 を示 し 、sGnRHはLHの生 合 成 ・分 泌 に 関 わ っ て い る と 考 え ら れ た 。 一 方 、 脳 下 垂 体 のFSHは 河 口 ま で 上 昇 し そ れ 以 降 は 下 降 し た 。   血中のアンドログンとエストロゲンは、年毎の相関がほとんど見られなかったが、河口および分岐点 まで 憾上昇 する傾向 が見ら れた。血中のDHPは分岐点までは低い値を示し、産卵場において急激に上 昇した。血中のIGF‑Iは、3年間とも同様の傾向を示し、雌雄ともに性成熟の進行に伴い急激な減少が 見ら れた。IGF‑Iが成 熟前に 高値を示 し、そ の後減少 したこ とより、IGF‑Iは 配偶子形成にBPG系ホ ルモ ンの分 泌動態に 重要た 影響を及 ばすこ とが考え られた。特に、IGF‑Iと11‑KTおよびE2の動態が 同調 してい たことよ り、IGF‑Iは精子形成およぴ卵黄形成に重要な役割を果たすことが示唆された。

  以 上の結果 、シロザ ケの母川回帰には、BPG系ホルモンの分泌動態が主導的役割を果たしているこ とが確認された。さらに、IGF‑Iがステロイドホルモンの分泌を介して配偶子形成に重要な役割を演じ ることが初めて明らかになった。BPG系ホルモンと成長ホルモン−IGF‑I系がどのようにシロザケの体 成 長 お よ び 性 成 熟 に 関 与 し て い る か を 、 今 後 よ り 詳 細 に 解 析 し な け れ ぱ な ら な ぃ 。

3. 熊 石 支 場 に お け る 池 産 サ ク ラ マ ス の 低 発 眼 卵 率 の 原 因 に 関 す る 内 分 泌 学 的 解 析   熊石支場池産サクラマスの低発眼卵率の原因を解析するために、熊石支場と森支場の成熟サクラマ ス を用いて、ストレスに関与するコルチゾルを指標として、血中および卵中のコルチゾル量をTR‑FIA 法 により測定し、発眼率を比較した。その結果、熊石支場における血中コルチゾル量は5月および6月 に おいて森支場の12倍もの高値を示した。一方、発眼率の増加に伴い卵中および血中のコルチゾル量 は減少し、負の相関が確認された。また、発眼率の増加に伴い、卵中の甲状腺ホルモン量は増加した。

卵と同様に血中においてもコルチゾル量はー定して高値を示したため、高コルチゾル量は発眼率を減少 させたことが考えられた。

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  以上の結果、熊石支場のサクラマスは、何らかのストレスのため血中および卵中のコルチゾル量が 増加し、発眼率が低下することが明らかになった。今後、ストレスの原因を解明して、低発眼率を向上 さることが必要である。

  以上の サケ科魚 類の体 成長と性成熟に関する3つの生理学的研究により、今後のサケ科魚類の増養 殖 に 応 用 可 能 な 内 分 泌 機 構 に 関 与 す る 重 要 な 基 礎 的 知 見 を 数 多 く 提 供 す る こと が で きた 。

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学 位論文審 査の要旨 主 査    教 授    上 田    宏 副 査    教 授    足 立 伸 次 副査    助教授    東藤   孝 副 査    講 師    清 水 宗 敬

     学位論文題名

Physiological studies on somatic growth     and sexual maturation in salmonids

( サ ケ 科 魚 類 の 体 成 長 と 性 成 熟 に 関 す る 生 理 学 的 研 究)

  サケ科魚類の体成長と性成熟の両方に関わる内分泌機構に関しては不明な点が多い。本研究では、

脳(サケ型ゴナドトロピン放出ホルモン:sGnRH)・下垂体(ゴナドトロピン;黄体形成ホルモン:LH、 卵胞刺激ホルモン;FSH).生殖腺(ステロイドホルモン;テストステロン:T、11‐ケ卜テス卜ステロ ン:11‑KT、エストラジオール.17ロ:E2、17a,20ロ・デヒドロキシ‑4‑プレグネン‑3‑オン:DHP) (BPG) 系ホルモンおよぴインシュリン様成長因子I (IGF‑I)を指標として、サケ科魚類の俸成長と性成熟に関 する3つの生理学的研究:1)クモノスカビ抽出物(Rbizopus extract;RU)がサクラマス(Oncorhynch us masouの体成 長と性成 熟に与 える影響 、2) シロザ ケ(〇加 ぬ)の べーリン グ海から 千歳川 の孵化 場までの母川回帰に伴う体成長と性成熟に関与するホルモンの分泌動態、3)熊石支場における池産サ クラマスの低発眼卵率の原因に関する内分泌学的解析、を行った。

1. RUのサクラマスの体成長と性成熟におよばす影響

  洞爺 臨湖実 験所産の サクラ マスを用 いて長 期RU投与の 影響を 調べた。 実験魚は、体重lkgに対し てRUを0mg( コ ン ト ロ ール 群 ) 、20mg (RU20群 ) 、200mg (RU200群 ) 餌 に混 ぜ て 投与 す る3群 に分 け、24ケ 月問サン プリン グを行っ た。毎 月15〜20尾を 供試魚 として、 生殖腺指数(GSI)を算出 し 、 血中 のIGF‑I、 およ びT、11‑KT、E2、DHPを時聞 分解螢光 免疫測 定法(TR‑FIA法)に より測定 し た 。RU200群 の 魚 体の 体 長 ・体 重が コントロ ール群 に比べ有 意に増 加し、ま たRU200群のIGF‑I は、 コン卜 ロール群 に比べて有意に増大した。さらにRU 200群では、T.11‑KT. E2は産卵前に、DHP は産 卵期に 高値を示 した。 長期RU投与 により 、サクラ マスのIGF‑I濃度 が上昇して体成長が促進さ れ 、 さ ら に ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン 濃 度 が 上 昇 し て 性 成 熟 が 促 進 し た と 考 え ら れ た 。   RUお よ びRUの ク ロマ ト 分 画が 、BPG系の ホルモ ン放出に 及ばす 影響を、 サクラマ スの成 熟個体 の脳 、下垂 体、およ び生殖 腺を用い てRU培養 実験を行った。培養後、培養液中のsGnRH、LHとFSH、 およびステロイドホルモンを抽出し、TR.FIA法にて各ホルモン濃度を測定した。脳および下垂体では RUの濃度が高くなるのに伴って各ホルモン濃度が増加し、また培養時間が長くなるに従い各ホルモン 濃度が上昇する傾向が認められた。さらに、ほとんどのRU分画は、コン卜ロールと比べて各ホルモン 濃度を有意に増加させた。

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  以 上の結果、RUはサクラマスにおいてBPG系のホルモンの分泌を刺激して性成熟を促進する共に、

IGF.Iの分泌を刺激して体成長を促進させることが明らかに なった。

2.シ ロ ザ ケ の 母 川 回 帰 に 伴 う 体 成 長 と 性 成 熟 に 関 与 す る ホ ル モ ン の 分 泌 動 態   シ ロザ ケの べー リン グ海 から 千歳 川 の孵 化場 まで7地 点に おけ るBPG系ホ ルモンとIGF‑Iの分泌 動 態 を2003年 から2005年ま で調 べた 。断 頭の 後 、脳 (嗅 球;QB、 終脳 ;TE、視 床下 部;HYP)を 摘出し、血液も採取した。QB. TE. HYP・脳下垂体のsGnR.H量を、脳下垂体のゴナドトロピン量、

血中 のス テロ イド ホル モン およ びIGF.I量 を、TR‐FIA法により測定した。sGnRHは、OB.TEでは 石狩沖合で上昇し、石狩川河口(河口)および石狩川と千歳川の分岐点(分岐点)において最大値を示し、

HYPでは べ ーリ ング 海で 高い値を示し、河口および分岐点に おいて最高値を示した。脳下垂体のLH は、8GnR.Hと同様 の傾向を示した。一方、脳下垂体のFSHは河口まで上昇しそれ以降は下降した。血 中のT・11‐KT.E2は河口および分岐点までは上昇する傾向が見られ、DHPは分岐点までは低い値を 示し産卵場において急激に上昇した。血中のIGF‐Iは、雌雄ともに性成熟の進行に伴い急激な減少が 見られた。シロザケの母川回帰には、BPG系ホルモンの分泌動態が主導的役割を果たしていること、

およびIGF.Iがステロイドホルモンの分泌を介 して配偶子形成に重要な役割を演じるころが初めて明 らかになった。

3.熊 石 支 場 に お け る 池 産 サ ク ラ マ ス の 低 発 眼 卵 率 の 原 因 に 関 す る 内 分 泌 学 的 解 析   熊石支場池産サクラマスの低発眼卵率の原因 を解析するために、熊石支場と森支場の成熟サクラマ スを用いて、ストレスに関与するコルチゾルを 指標として、血中および卵中のコルチゾル量をTR‑FIA 法により測定し、発眼率を比較した。その結果 、熊石支場における血中コルチゾル量は森支場の12倍 もの高値を示した。一方、発眼率の増加に伴い卵中および血中のコルチゾル量は減少し、負の相関が確 認された。熊石支場のサクラマスは、何らかのストレスのため血中およぴ卵中のコルチゾル量が増加し、

発眼率が低下することが明らかになった。

  以上のように、本論文はサケ科魚類の体成長と性成熟の内分泌機構に関与する重要な知見を数多く提 供しており、その成果は水産科学の基礎的および応用的研究として評価された。よって審査員一同は申 請者が博士(水産科学)の学位を授与される資格があるものと判定した。

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