博 士 ( 歯 学 ) 葛 巻 学 位 論 文 題 名
RAS 癌遺伝子 抑制変異体による ヒト舌癌に対する増殖抑制効果
学位論文内容の要旨
哲
現在まで舌癌の治療法と しては主に外科療法、化学 療法、放射線療法が用いられてきた。しかし、
いずれの治療法でも機能障 害や後遺症など患者に対す る治療後の影響は無視できない。このため、患 者に低侵襲かつ優れた効果 を持っ新しい治療法として 、遺伝子治療法の検討は重要である。本研究で は、RAS癌遺 伝子 の発 現亢 進 を示 すヒ ト舌 癌 に対 する 遺伝 子治 療 の基 礎研 究とし て、RAS癌遺伝子 の機 能を 抑制 す る抑 制変 異体 遺伝 子N116Yを アデ ノウ イルスベクターに搭載してヒ ト舌癌細胞株に 感染させ、細胞増殖に対す る影響について検討した。
材料と方法
細制 朱 には 、ヒ ト舌 癌 細8包 昧HSC‑3、HSC4、& 噛およびヒ ト口唇正常紡琳B細胞株KDを 用いた。
各 細胞 株 のRAs蛋 白質 の発 現お よび 日K蛋白 質 のり ン酸 化は 、そ れ ぞれ の抗 体を用いてウ エスタン ブ ロ ッ ト 法 で 解 析 し た 。RAs癌 遺 伝子 抑制 変 具体N116YcDNAあ るい はコ ン トロ ール とし て大 腸 菌 ロ , ガ ラ クト シダ ーゼ 遺伝 子 (La吃)cDNAを サイ トメ ガロ ウイ ル ス( いW)プ ロモ ータ ーと 共 に 接 続 し 、 ヲ 艚 殖 陛 ア デ ノ ウ イ ル ス ベ ク タ 叫 、dQw‐N116Y、 お よ びAdの 付I舷 を 作 製 し たNn6Y 遺 伝 子 発 現 の 検 出 は 、AdQn仆I116Yま た はAdQw−La吃 を 各細 胞昧 に感 染 、培 養後 に全 融乢 へ を 抽 出 し てcDNAを 合 成 し 、R‐PCRを 行 っ た 。 各 細 胞 株 の 増 殖 測 定 は 、Ad.Q小 仆H1甜 あ る い は AdいW,h吃を 感染 後、 経 時的 に生 細胞 を計 数 して 行っ た。 また 、 ヒト テロ メラーゼ触媒 サブュニ ッ ト(11THU) を プロ モー ターに 用いたアデノウイルスベクタ ーAdlERI.−N11甜を使用し た実験で は 、Mrrア ッ セ イ を 行 っ た 。 ア ポ トー シス の 検討 は、 各舌 癌細 胞 株にAdい 小′ ‐N116yある い は AdCMv.h吃を 感染 させ た のち 細胞 を回 収し て ヘキ スト 染色 し、 螢 光顕 微鏡 にて核の形態 を観察し て 行っ た 。h1RTプ ロモ ー ター 漕l生 の 測定 には 、ル シフェラ ーゼリポーター遺伝子を用い た。各結 果 は 平 均 値 と 標 準 偏 差 値 で 示 し 、 そ れ ぞ れ の 数f直 をStu匸lent sf幗tで 検 定 し た 。
1. RAS癌 遺 伝 子 抑 制 変 異 体N116Yの ヒ ト 舌 癌 細 胞 株 に 対 す る 増 殖 抑 制 ・ ア ポ ト ー シ ス 誘 導 RAS癌 遺 伝 子 抑 制 変 異 体N116Yの増 殖抑 制お よ びア ポト ーシ ス誘 導 効果 を調 べる た め、 各細 胞株 に お け るRAS蛋 白 質 産 生 を ウエ スタ ン ブロ ット 法で 検 討し た。 正常 線維 芽 細胞 株KDではRAS蛋白 ―765―
質 の 産 生 が ほ と ん ど 見 ら れ な か っ た の に 対 し て 、 舌癌 細胞 株HSC‑3、HSC4、SASでRAS蛋 白質 産 生の 亢進 が確 認 され た。CMVプロ モー ター を 持っア デノウイルスベクターAd. CMV‑N116Yあるいは コ ン ト ロ ソ レ のAdCMV‑LacZを 、 正 常 紬 包 株KDお よ て 晤 繊 田 胞 株HSC‑3、HSC4、SASに 感 染 さ せ 、N116Y遺 伝 子 発 現 をRr‐KR法で 確認 した 。Ad CMV‑LacZ感染 細胞 では 増幅 産 物が 検出 され な か っ た の に 対 し て 、 全 て のAdCMV‑N116Y感 染 細 胞 に お い てN116Y特 異 的 増 幅 産 物が 検出 され た AdCMV‑N116Yあ る い はAd. CMV‑LacZ感染 細 胞株 の細 胞増 殖 抑制 効果 につ いて 検 討し たと ころ 、 ALい 刪a吃を 感染 させ た 細胞 株は 、非 感染 細 胞株 と同 じよ う に増 殖し た。 これ に 対し てAd.洲 ニ N11甜を感染させた全て の舌癌細胞株では、明らかな 増殖抑制が見られた。また 、A(iQ垣v―La吃感 染細 胞株 では 形 態変 化は 見ら れ なか った のに 対し 、AdQn′.N116yを感染させ た場合では細胞の伸 展性が阻止され島状に凝 縮した像が観察された。さらに、Ad.い爪′‐La吃を感染させた細胞株ではア ポト ーシ スが 見 られ なか った が 、AdQn仆7116Yを 感染 させ たHsC‐3、HSC一4で は 核濃 縮や 断片 化 など のア ポト ー シス の特 徴が見られた。増殖抑制効 果、形態変化およびアポト ーシスはKDでも見ら れた 、こ れら のRAs癌 遺 伝子 抑制 変異 体N116Yによ る細胞に対する効果の機溝を 解析するため、RAs の下流で働くりン酉餅腔 哮素ロぇKを調べた。AdCMv_klcZを感染させたHSC‐3では、R〕F弗憫を後著 明 な ロKの り ン 酸 化 が 検 出さ れ た。 これ に対 して 、Ad. の舛 .N116Yを感 染さ せ た場 合はHKの り ン醐 匕カ 瀬出 さ れず 、N116y遺罐 子の 発現 が 凡噛 下流 の情 ギ 臨鑓 系を 抑制 する こ とが 証明 され た
2.h1Brプ ロ モ ー タ ー お よ ぴN116Y搭 載 ア デ ノ ウ イ ル ス ベ ク タ ー の 構 築 と 癌 特 異 的 喞 樹 綿 |J 癌特 異的 なN116Y遺伝 子の 発 現系 を樹 立す るた め 、各 細胞 株に おけ るhIロUプロモーター活陸を 測 定 し た 。KDで は わ ず か な レ ベル のhTERrプロ モー ター 活 性し か見 られ なか っ たが 、3つの 舌癌 細 胞株 全て にお いて 高 いhTERrプロ モー ター 活陸 が 確認 され た。 そこ で 、hTERTプロモーターおよ びN116Y遺伝 子 をシ ャト ルプ ラ スミ ドに 挿入 して 、非増殖陸アデノウイ ルスグノムプラスミドと共 にヒト胎児腎由 来293細胞にコトランスフェ クションし、アデノウイルス ベクターAd hTBてr―N116Y を作製した。コントローッレとして用kヽるアデノウイノレスベクター|Ad11T日Uも同様に竹製した。次に、
KDおよ びHsC‐3、SAsに 対しAdhT駅I、−Nll甜あ るいはA(thTERrを感 染させ、細8尠曽殖に対する 効 果 をMrrア ッ セ イ に て 調 べた 。AdhTロUは 、い ず れの 細胞 株に 対し て も細 胞傷 害陛 を 示さ なか っ た こ れ に 対 し てAdhTHひN11dを 用 い た 場 合 、 高 いh1ロ 汀 プ ロ モ ー タ ー 漕 陸 を 持 つHSC.3、 SASでは 、非 感 染細 胞と 比較 し て増 殖が 有意 に抑 制された。これに対し 、KDではこのような増殖抑 制 努 果fま 認 め ら れ ず 、 AdHr瓜r‐ N116Yの 癌 特 異 餅 な 細 餅 鞴 抑 制 効 果 が 示 さ れ た
RAS癌 遺 伝 子 抑 制 変 異 体N116Yは 、 ヒ ト 舌 癌 細 胞 株HSC‑3、HSC4、SASに 対 し て 明ら かな 細胞 増殖 抑制 効 果を 、更 にHSC―3、HSC‑4に 対し ては アポ トー シ ス誘 導効 果も 示した。この機購 はRAS 癌遺 伝子 下 流で 働く りン 酸化 酵 素ERKの りン 酸化 が抑制されるた めであることが示された。 多くの 癌に 発現 し 正常 細胞 株で は発現して いないヒトテロメラーゼ触媒 サブュニット(hTBば)のプ ロモー ター を持 つN116yアデ ノ ウイ ルス ベク タ ーを 構築 し、舌癌細胞株 に対する細胞増殖抑制効果 を検討 した とこ ろ 、舌 癌に 特異 的な 抑 制効 果が 見ら れた 。これらの結 果から、hTE爾プロモーター を持つ N11甜アデ ノウイルスベクターが、ヒ ト舌癌に対する遺伝子治療に 用いられる可肯眺助ミ示唆 された
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