シークエンスの観点から捉えた日本の商業地における「雑多感」 -国内外の商業空間を比較して- [ PDF
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(2) して、独自の商業地の分類を試みた(表 2)。商業地. 関係した⑦組合せの悪さ の 7 項目が抽出できた。また. はスケールの小さい順に市場型のクローズド・オープ. 環境的現象には⑧うるささ・騒音、⑨暗さの 2 項目が. ン、歩行者天国型 ( 以下歩天型 ) のクローズド・オー. 抽出できた。要素の多さについては指摘数が 75 と多. プン、歩車一体型、歩車分離型、ロードサイド型の 7. く、そのものの数量だけではなく種類や色の多さに雑. 種類に分けることができる。本研究では市場型クロー. 多感を感じるようである。また配列の悪さは指摘数が. ズドは柳橋、市場型オープンは箱崎とムフタール ( 以. 88 と最も多く、形やデザインの不揃いや位置関係の. 下 MFT)、歩天型クローズドは新天町とショワズール. 悪さ、配色の問題などが挙げられた。これらの中で本. ( 以下 CHS)、歩天型オープンは西新とサンタンドレ. 研究のキーワードである複数と整理の悪さに関係が強. ・デザールの歩行者専用空間 ( 以下 SDA 歩専 )、歩車. いのは①から⑦の物理的現象であると考えられる。. 一体型は大名と サンタンドレ・デザールの歩車一体空. 3-2 実験結果の考察. 間 ( 以下 SDA 歩車 )、歩車分離型は西通りとシェル. 実験の結果を 図 5 に示す。要素の指摘率を見る と、. シュ・ミディ ( 以下 MID) が該当する。. 最も雑多感を感じる要素はあふれだしであった。全体. 3. 雑多感を感じる現象. 的に付属物が多く、また人が指摘されるなど、商業. 3-1 現象の分類. 空間を演出する商業系の要素が多く取り上げられてい. 実験は表 2 の分類を網羅的にカバーするように選定. た。また道路や建物、違法駐輪などの放置物も雑多感. した 23 枚の商業地の写真を提示して、日本の商業地. を生み出す要因であると考えられる。しかし、我々が. の写真の「どういう所に雑多感を感じるか、また雑然. 日常的に目にするような電柱等の指摘は少なかった。. としていると感じるか」を自由記述で答える形式で. 次に現象と商業地タイプの関係について見る 。図 6. 行った。被験者は 12 人であり、それにより 255 サン. に特に顕著に特徴が現れた 3 つの現象を示す。結果を. プルを得た。そして実験後のヒアリングの結果も合わ. 見ると、市場型クローズド以外では要素が多くなれば. せて、雑多感を感じる現象を図 4 のように分類した。. 配列も悪くなり、両者は同様な傾向を示した。対称的. 現象は大きく物理的現象と環境的現象の 2 つに分け. に、この 2 つの現象と「雑多感を感じない」という項. られる。物理的現象には密度に関係した①要素の多. 目は相反する傾向を示した 。このことから、雑多感を. さ、②空間の狭さ、③人の多さ・アクティビティ、空. 感じるか感じないかを大きく左右しているのは要素の. 間の変化性に関係した④配列の悪さ、⑤主張の強さ、. 多さと配列の悪さであると考えられる。. 手入れ・管理に関係した手入れ・管理の悪さ、異物感に. このように商業空間の雑多感は商業系の要素や建物 に関係があり、その多さや配列の悪さに. 表 2 商業地のタイプ分類 空間 スケール. 小. 大. 空間スケール 市場・横丁. 街路の格. 裏通り. よって生み出されていると考えられる。. 表通り. 表通り・大通り. 歩車一体. 歩車分離. ロードサイド . ⑤歩車一体型. ⑥歩車分離型. そこで 4 章では配列の悪さを生み出す空. 歩行者専用. 街路形態 (空間形態). 分類 (本研究の該当地). クローズド. オープン・セミ オープン. クローズド. オープン・セミ オープン. ①市場型 クローズド. ②市場型 オープン. ③歩行者天国型 クローズド. ④歩行者天国型 オープン . (柳橋商店街). (箱崎商店街) (ムフタール). (新天町商店街) (ショワズール). 間の変化性に、5 章では要素の多さを生 み出す空間の密度感に焦点を当て る。. (大名・紺屋町) (西新中央商店街) (サンタンドレデザール) (サンタンドレデザール). ⑦ロードサイド型. (天神西通り) (シェルシュ・ミディ). (該当無). 物理的現象 密度. 変化性. ①要素の多さ(種類・数量・色). ○○商店. ○ □ △. 異物感. ④配列の悪さ(形・位置・配色). ○ □ △. ☆△金融. × △. × × × ×. ○ □ △. ○○商店. × △. × △. ○ □. ○ □ △. L i v ×e ×d o ×o ×o o o r. ⑦組合せの悪さ ☆△金融. × △. ○ □ △. × △. ○ ○ ○. ○○商店. ○ □ △. ○ □ △. 90 % O F F. 24. × △. ○ □ △. × △. × △. ③人の多さ・アクティビティ. ○○商店. 9 環境的現象. ☆△金融. × × × ×. ○ □ △. V. 88 ⑤主張の強さ(大きさ・色). ☆△金融. ○○商店. × × × ×. 屋 八百. 75 ②空間の狭さ. ○ □ △. ○ □ △. 図 5 雑多感を創出する要素. ⑧うるささ・騒音. × × × ×. ☆△金融. ♪ × △. ○○商店. ○ □ △. × △. 大 安 売 !. × × × ×. ♪. × △. ♯. 15. 0. 手入れ・管理 ☆△金融. × × × ×. ⑥手入れ・管理の悪さ ○○商店. × △. 21. ○ □ △. ☆△金融. × × × ×. × △. ⑨暗さ ○ □ △. ○○商店. ○ □ △. × △. ☆△金融. × × × ×. × △. 19. 4. 図 4 雑多感を感じる現象の分類(枠内の数字は指摘数) 6-2. 図 6 現象と商業地タイプの関係.
(3) 4. シークエンス的にみる空間の変化性. 所と出ていない場所の差の大きさが分かる。一般に日. 4-1 隣接変化. 本はあふれだしが大きいと言われているが、西新と比. 3 章の結果を基に、表 3 に示す 3 項目 6 要素につい. べると、むしろパリのほうがあふれだしが大きい。. ての変化を捉える。その中から図 7 にファサード、あ. 業種では CHS と箱崎が最も変化指数が高く 0.68. ふれだし、業種の変化を示す。またその際、空間のシー. であり、一定の業種が並んでいないことがシークエン. クエンス的な変化を捉えるために隣接変化指数 A を. ス図から読み取れる。対称的に大名・紺屋町では飲食. 用いる。隣接変化指数は、ある区間のシークエンスの. 店、服飾などが連続して配置しているのが分かる。. 変化を最大値を 1、最小値を 0 として、街路全体にお. これらの事より空間の配列による変化には、街路の. ける変化の大きさを求めたもので 表 3 変化性の項目. 基本要素である建物の外見上の変化から、街路上にあ. あり、隣接間の変化が大きいほど. る付属物の変化、また店舗の性格の変化など多種多様. 1 に近づく。式は以下のようにな. に存在し、その変化は商業地によって異なることが見. り結果を図 8 に示す。. てとれる。また前章で雑多感に関係のあったあふれだ. Σ bi. しの配列は、日本だけではなくパリでも同様に変化の. . A =. n. ( 区間数 n = 0 . 1 . 2 . . . . . 20 ). 大きい商店街が存在した。. 連続データの場合 bi= | an+1 - an |. 4-2 変化性から捉えた商業地. カテゴリデータの場合 bi は an+1 と an が同じで. 表 4 に 6 要素全ての隣接変化指数の結果を示す。表. あれば b = 1、異なれば b = 0 とする。. 表 4 全隣接変化指数の結果. ファサードタイプ を見ると、箱崎が最も変化指数 が高く 0.34 であり、図を見て分かるように変化の激 しい空間となっている。対称的に変化の少ない空間は MID であり、変化指数は 0.08 であった。パリでは全 体的にファサードは隣接変化が低く、変化が少ない。 またあふれだしを見ると、MFT の変化が特に激し い。シークエンス図を見るとあふれだしの出ている場. 図 7 空間変化のシークエンス ( 左 ファサード、中 あふれだし幅、右 業種 ) 隣接変化指数(あふれだし). 隣接変化指数(ファサード) 0.40. 0.34. 0.30. 0.20 0.18. 0.14. 0.16. 0.19. 0.08 0.13. 0.68. 0.30. 0.27. 0.26. 0.20 0.10 0.13 0.00. 隣接変化指数(業種). 0.40. 0.32. 0.27 0.21. 0.04 0.09. 0.07. 0.03. 0.01. 0.65. 0.53. 0.38 0.25. 0.00. 図 8 隣接変化指数 ( 左 ファサード、中 あふれだし幅、右 業種 ) 6-3. 0.68. 0.48 0.38. 0.10 0.00 0.07. 0.43. 0.22. 0.19. 0.60. 0.55.
(4) には日本とパリでの上位 2 つを順に濃く塗ってある。. イヤーはほとんど見ることが出来なかった。. 日本では箱崎で最も変化が大きい要素が集中し、西新. 次に機能別に見ると、西新の広告系が特に多い。図. に 2 番目に変化が大きい要素が集中している。このよ. からは街路の全体に渡って広範囲に拡がっていること. うに日本では商業地によって変化の大きい要素に偏り. が分かる。また陳列系も区間の両端で多く見られる。. が見られる。しかし、パリでは MFT で付属物系の要. パリと比較すると商業系機能の多さが分かる。. 素が最も変化が大きく、SDA 歩専では建物の変化が. 図 10 に 4 商店街のファサード面に対する視覚情報. 大きいなどその変化性にばらつきが見られる。また日. 量の平均値をレイヤー・機能別に示す。シークエンス. 本のクローズド型では多くの要素が変化に乏しかった. 図で見られたように日本では広告系の割合が特に高. のに対し、パリのクローズド型では変化の大きい要素. い。そのレイヤーも第1・第 2 両レイヤーとも高く、. が多く見られる結果となった。. パリとは大きく異なる。しかし、全体的な視覚情報量. 5. シークエンス的にみる空間の視覚的密度. にはそれほど大きな差はない。パリは陳列系の視覚情. 5-1 方法. 報により歩行者にアピールしていると考えられる。日. 次に商業空間の視覚的な密度について 見ていく。密. 本では店舗表面の文字情報による広告看板の多さが目. 度には物理的な密度と視覚的に感じる密度とがある. 立つ一方で、パリでは表面上のショーウインドーなど. が、今回は街路の幅員の違い等を考慮し、商業地によっ. が多く、その視覚的密度の種類の違いが見られる。. て差が出ないようにするため、商業的要素の視覚的情. 6. まとめ. 報量を基に分析を進める。方法はファサードの写真を. 本研究では実験によって、商業空間において雑多感. 用いて、表 5 のように写真をレイヤーと機能に分けて. を感じる現象を 9 種類に類型化することができ、特に. その面積比を分析した。レイヤーは視覚的に確認でき. 要素の多さや配列の悪さに起因していることを明らか. る度合いによって 3 段階に分類した。また、機能は要. にした。その現象の多くはあふれだしなどの商業系機. 素の持つ役割を 3 種類に分類したものである。分析は. 能を持った要素によって創出され、また見られる現象. 日本とパリそれぞれから歩行者専用空間と自動車交通. は、商業地のタイプによっても異なっていた。そして. のある空間の計 4 商店街を対象とした。. その現象を実際の空間におけるシークエンスとして表. 5-2 分析結果. 現し、あふれだしの多さや変化の大きさは特に日本に. 西新と SDA 歩専の密度変化のシークエンスをレイ. おいてのみ見られるものではないことが実証された。. ヤーと機能別に図 9 に示す。. さらに空間の密度を視覚的情報量として捉え、レイ. レイヤー別では西新において店舗表面の第 2 レイ. ヤーと機能という二つの視点から日本の視覚情報の多. ヤーの多さが確認できる。また SDA 歩専でやや見ら. さとその拡がりを確認することができ 、日本の雑多感. れる第 3 レイヤーは西新では全く見ることができず、. の実態を明らかにすることができた。. 表 5 レイヤーと機能分類 機能. SDA 歩 専 の奥. 注釈 1) ファサードは可視性の良い順に open,all,half,close の 4 種類に分類した。 2) 業種は食品、飲食、服飾、サービス、物販、小売、その他の 7 種類に分類した。また、 これらはカテゴリデータのためシークエンス図では分布として表現した。 3) 動線は店舗へのアプローチ方法の違いにより、通過型、立寄型、滞在型、回遊型の 4 種類に分類した。 参考文献 (1) 新村出編、「広辞苑 第五版」、岩波書店、2003 年 (2) 土木学会編、「街路の景観設計」、技報堂出版、1992 年. 行感が感じられ る。 ま た SDA 歩専では第 1 レ. 図 9 密度変化のシークエンス ( 左 レイヤー別、右 機能別 ) 6-4. 図 10 視覚情報量の平均値.
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