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大学生における運動習慣および客観的評価に基づく身体活動量とうつ症状との関連性に関する研究 [ PDF

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大学生における運動習慣および客観的評価に基づく身体活動量とうつ症状との関連性に関する

研究

キーワード:運動習慣,身体活動量,うつ症状 行動システム専攻 張 嫣娉 1.背景 若年者の自殺問題は今日の日本の大きな社会問題と なっている1).平成 21 年,警察庁が把握した青少年(30 歳未満者)の自殺者数 4035 名のうち,大学生の自殺者 数は 517 名で,全自殺者の 13%を占めている2).また, 大学生の自殺と抑うつとの関連は深く4)5),自殺した約 3 割以上の学生がうつ症状の保有者であることが報告 されている3) 青年期である大学生という期間は,新しい環境への 適応や対人関係など人生の課題に直面する期間である 6).環境への適応については,大学に入学後,小学校, 中学校のクラスのように,集団組織に所属することは なくなり,個人行動が必要とされる.学生自身で自由 に生活時間を設定できるため,これまでの規則的な生 活リズムが乱れがちになる.また,新しい生活への対 応ができない場合,5 月病をはじめとした新入生を主と して生じる抑うつ症状を発症するリスクが高くなると いう指摘もある7).生活習慣の乱れ,学業プレシャー, 大学生活の充実度,対人関係に関する障碍,および失 恋などの感情的な問題は,大学生の抑うつ発症の起因 となっている8) 身体活動は,成人および青少年のメンタルヘルスや 睡眠の質に好ましい影響を与えることが報告されてい る9).また,多くの疫学研究において,身体活動の増加 や運動の実践は,うつ症状の発現に抑制的に作用する ことが実証されている 10).しかしながら,これらの研 究ではアンケート調査による主観的な身体活動量の評 価を行っているため,情報バイアスや記憶バイアスに より,強度別に見た正確な身体活動量が反映されてい ない可能性がある.さらに,大学生を対象として客観的 に測定された身体活動量とうつ症状との関連を検討し た研究は行われてない。 2.目的 本研究では,まず日本の K 大学の大学生における運 動習慣の有無とうつ症状との関連性を明らかにする (研究 1).さらに,大学生における客観的評価に基づ いた身体活動量とうつ症状の関連を明らかにする(研究 2). 3.方法 (1)研究デザイン 本研究は K 大学に入学する学生のメンタルヘルス支 援に向けた全学的な支援システムの構築を行う 4 年間 の縦断研究のベースラインデータを用いた横断研究で ある.本研究は九州大学健康科学センター倫理委員会で の審査と承認を得た上で実施された.全ての参加者に研 究の主旨を説明して,書面による同意が得られた. (2)調査対象者 本研究の対象者は,K 大学における 2010 年度の全入 学者である.2010 年の 5 月に1年次の必修科目である 全学教育の健康·スポーツ科学演習を履修した 2,631 名 に,調査内容を関する説明と同意を得た後,質問紙を配 布・回収した.調査に対し同意を得られた 2,139 名(同 意率 81%)のうち,活動量計の装着時間 4 日間以下の 669 名と性別,うつ症状,および身体活動量データ欠損者を 除いた 1115 名を解析対象者とした. (3)測定項目 ①うつ症状 うつ症状に関しては,「うつ病(抑うつ状態)/自己評価 尺 度 」 (The center for Epidemiologic Depression Scale: CES-D Scale 日本語版 )を用 いて評価し た. CES-D の得点が 16 点以上(満点 60 点)のものは「うつ 症状保有者」と評価し,対象者を「うつ症状保有群」と 「うつ症状非保有群」に区分した.CES-D は国内外で広 く使用されており,十分な信頼性および妥当性が検証さ れている. ②運動習慣 定期的な運動習慣は,質問紙法により評価した.「何 か定期的に運動していますか?」という質問に対して, 3 つの選択肢(1,ほとんどない 2,時々 3,ほとんど毎 日)から回答を得た. ③生活習慣 生活習慣に関する質問は,主観的健康状態,生活の規

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則正しさおよび睡眠という項目から構成されている. ④個人特性 性別,年齢,所属学部,住居形態, 経済状況,アル バイトの有無および大学生活の充実度は質問紙で回答 を得た。 ⑤身体活動量の測定 身体活動量の測定には,3 軸加速度センサー内蔵活動 量計(Active Style Pro, HJA-350IT,オムロンヘルスケ ア株式会社)を用い,身体活動量を客観的に評価した. 測定期間は 7 日間で,睡眠時と入浴時を除いた一日の 身体活動量を測定した.データの記録間隔は 60 秒とし て,7 日間における活動量計の装着時間が 600 分以上か つ 4 日間以上得られたデータを使用した.中高強度活 動は 3 メッツ以上の活動と定義し,1日あたりの中高 強 度 活 動 時 間 ( moderate-to-vigorous intensity physical activity; MVPA,時/日)を算出した.同様 に 1.6-2.9 メッツの活動を軽強度活動と定義し,軽強 度活動時間(Light intensity physical activity; LPA, 時/日)を算出した.座位行動は 1.5 メッツ以下の活動 と定義し,座位時間(Sedentary time;SED, 時/日)を 算出した. (4)統計解析 本研究の統計解析は SASver.9.3 を用いた.最初に対 象者の特性について,連続変数は平均値±標準偏差で 示し,カテゴリー変数は割合で示した.対象者は CES-D 得点からうつ症状保有者群とうつ症状非保有者群に区 分された.うつ症状を目的変数,運動習慣を説明変数 として,ロジスティック回帰分析を行った.性差およ びうつ症状保有者群と非保有者群の 2 群間の差の検定 には分散分析を行い,カテゴリー変数はカイ二乗検定 を行った. 身体活動時間とうつ症状の関連を検討するため,ま ずうつ症状の有無を目的変数,MVPA および LPA と SED を説明変数として,ロジスティック回帰分析を行い,オ ッズ比( OR, Odds ratio) と 95%信頼区間( 95%CI, confident interval)を算出した.さらに,MVPA,LPA および SED を 4 分位し,それぞれ少ない方から Q1,Q2, Q3,Q4 として,ロジスティック回帰分析を行った.調 整因子は性別,年齢,所属学部,住居形態,運動習慣, アルバイトの有無,主観的健康状態,経済状況および 大学生活の充実度とした.モデル 1 は調整なし,モデ ル 2 は性別,年齢,所属学部,住居形態,運動習慣, アルバイトの有無,主観的健康状態,経済状況,およ び大学生活の充実度を調整した.有意水準は α=0.05 と した. 4.結果 大学生における運動習慣とうつ症状との関連性 (研究 1) Table 1 に 示 す よ う に ,CES-D 得 点 の 平 均 値 は 11.7±7.9 点であった.うつ症状保有者(CES-D の得点 >=16)の割合は 25.1%(280 名)であった. 定期的な運動習慣の有無について,運動習慣あり群の 割合は,うつ症状保有者群の方がうつ症状非保有者群よ りも有意に少なかった(49.3%,61.0%,p=0.001).ま た,ロジスティック回帰分析の結果から,時々運動して いる群では運動習慣なし群よりうつ症状を保有する者 が有意に少なかった(OR: 0.66, 95%CI: 0.5-0.87).毎 日運動している群では運動習慣なし群よりうつ症状を 保 有 す る 者 が 有 意 に 少 な か っ た (OR: 0.41, 95%CI: 0.23-0.75). 主観健康状態, 生活の規則正しさ, 睡眠時間, 大学 生活の充実度について、うつ症状保有者群と非保有者群 との間に有意な群間差を認めた(すべて p<0.0001). LPA について,うつ症状非保有者群は保有者群より有 意に高かった(3.4±0.9,9.8±1.5,p<0.001).MVPA と SED は,両群間ともに有意差は認められなかった. n % n % p value

CESD score : (means ± SD) 22.43 ± 6.70 8.13 ± 4.02 <.0001*

Regular exercise 0.001* very few 142 50.7 326 39.0 sometimes 124 44.3 431 51.6 almost everyday 14 5 78 9.3 House form 0.03* Home 65 23.2 251 30.1 Apartment 161 57.5 469 56.2 Apartment with the meal 17 6.1 44 5.3

Lodge 4 1.4 9 1.1

Student dormitory 22 7.9 50 6

Others 11 3.9 11 1.3

Subjective health status <.0001* Very healthy 14 5.0 160 19.2 Healthy 196 70.3 613 73.5 Not very healthy 66 23.7 61 7.31

Unhealthy 3 1.1 0 0

Regularity of life <.0001*

Very regular 11 3.9 56 6.7 Regular 125 44.6 536 64.2 Not very regular 108 38.6 211 25.3 Irregularity 36 12.9 32 3.8

Sleep time <.0001*

Enough 23 8.2 135 16.2

Tolerably enough 78 27.9 358 42.9 Really not enough 118 42.1 297 35.6 Insufficient 61 21.8 44 5.3 M VPA time(h/d) : (means ± SD) 1.1 ± 0.4 1.1 ± 0.4 0.34 LPA time(h/d) : (means ± SD) 3.4 ± 0.9 3.6 ± 0.9 0.001* SED(h/d) : (means ± SD) 9.6 ± 1.6 9.8 ± 1.5 0.18 Abbreviations: Data are represented as mean SD or n (%). SD, standard deviations; M VPA, moderate-to-vigorous physical activity; LPA, Ligtht intensity physical activity;SED, Sedentary time; Depression ,CES-D scores≧16,Center for Epidemiologic Studies Depression Scale.

Table 1: Characteristics of Non-depressed and Depressed Study Participants

Depressed (CESD>=16,n=280) Non-depressed(CESD<16,n=835)

客観的評価された身体活動量とうつ症状との関連性 (研究2) Table 2 に示すように,MVPA とうつ症状との間には有 意な関連が認められなかった.LPA が高くなるに従い, 学 生 の う つ 症 状 の 発 現 は 有 意 に 低 か っ た (OR:0.77, 95%CI: 0.66-0.90).この関連は,性別,年齢,学部, 住居形態,運動習慣の有無,アルバイトの有無,主観的 健康状態,経済状況,大学生活の充実度,および MVPA を 調 整 し た 後 で も 維 持 さ れ た (OR:0.80, 95%CI: 0.67-0.96).SED について,モデル 1 では SED とうつ症

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状との間に関連は認められなかったが,年齢,学部, 住居形態,運動習慣の有無,アルバイトの有無,主観 的健康状態,経済状況,大学生活の充実度,および LPA を調整した後のモデル2では,SED が長くなるほど,う つ症状を保有している者が多かった(OR:1.00, 95%CI: 1.00-1.01). model 2a

OR (95%CI) p value OR (95%CI) p value

MVPA 0.85(0.60-1.19) 0.34 1.25(0.82-1.91) 0.30

LPA 0.77(0.66-0.90) <0.05* 0.80(0.67-0.96) <0.05*

SED 1.00(1.00-1.00) 0.18 1.00(1.00-1.01) <0.05*

Abbreviations: OR, Odds ratio; CI, confident interval; MVPA, moderate-to-vigorous physical activity, LPA, Ligtht intensity physical activity, SED:Sedentary time. Modle1:Unadjust; Model 2: adjusted for MVPA, sex, age, Department, Regular exercise, House form and Having part-time job or not,reguilar exercise,subjective health status,regularity of Table 2: Odd ratios (95%) of depressive symptoms for regular physical activity in logistic regression models

model 1 Table 3 には対象者を LPA,MVPA,SED の4分位点で それぞれ 4 分位した.LPA について,Q1 から Q4(Q1:2.9 未満,Q2:2.9-3.5 未満,Q3:3.5-4.1 未満,Q4:4.1 以上;時間/日)に分類した.その結果,Q1 群を基準と した場合,Q4 群のうつ症状保有は有意に低値を示した (OR:0.49, 95%CI:0.33-0.73).この関連は,年齢,学 部,住居形態,運動習慣の有無,アルバイトの有無, 主観的健康状態,経済状況,大学生活の充実度,およ び MVPA を調整した後も維持された(OR:0.52, 95%CI: 0.33-0.83). 対象者を SED の結果から4分位し,Q1 から Q4(Q1: 8.6 未満,Q2:8.6-9.6 未満,Q3:9.6-10.7 未満,Q4: 10.7 以上;時間/日)に分類した.その結果,Q1 群を基 準とした場合,Q3 群は有意にうつ症状を保有している 者が多かった(OR:1.49, 95%CI:1.01-2.19).この関連 は,年齢,学部,住居形態,運動習慣の有無,アルバ イトの有無,主観的健康状態,経済状況,大学生活の 充実度および MVPA を調整した後も維持された(OR:1.90, 95%CI: 1.12-3.20). 対象者を MVPA の結果から 4 分位し,Q1 から Q4(Q1: 0.8 未満,Q2:0.8-1.0 未満,Q3:1.0-1.3 未満,Q4: 1.3 以上;時間/日)に分類したが,その結果,Q1 群を 基準とした場合,他の 3 群は共に有意差は認められな かった. model 2a OR (95%CI) p value OR (95%CI) p value LPA Q1 (<2.9) 1 (reference) 1 (reference) Q2 (2.9-3.5) 0.75(0.52-1.09) 0.13 0.72(0.47-1.10) 0.13 Q3 (3.5-4.1) 0.76(0.53-1.10) 0.15 0.77(0.50-1.17) 0.22 Q4 (>4.1) 0.49(0.33-0.73) <0.001* 0.52(0.33-0.83) <0.01* M VPA Q1 (<0.8) 1 (reference) 1 (reference) Q2 (0.8-1.0) 0.81(0.554-1.189) 0.28 0.78(0.507-1.203) 0.26 Q3 (1.0-1.3) 0.89(0.613-1.306) 0.56 0.87(0.561-1.346) 0.53 Q4* (>1.3) 0.85(0.580-1.240) 0.40 1.16(0.730-1.830) 0.54 SED Q1 (<8.6) 1 (reference) 1 (reference) Q2 (8.6-9.6) 1.17(0.79-1.74) 0.43 1.35(0.85-2.14) 0.20 Q3 (9.6-10.7) 1.49(1.01-2.19) <0.05* 1.90(1.12-3.20) <0.05* Q4 (>10.7) 1.25(0.84-1.85) 0.27 1.90(0.96-3.76) 0.81 Table 3: Odd ratios (95%) of depressive symptoms for physical activity (quartile) in logistic regression models by

model 1

Abbreviations: OR, Odds ratio; CI, confident interval; M VPA, moderate-to-vigorous physical activity, LPA, Ligtht intensity physical activity , SED:Sedentary time. M odle1:Unadjust; M odel 2: adjusted for M VPA, sex, age, Department, Regular exercise, House form and Having part-time job or not,reguilar exercise,subjective health status,regularity of life,economic anxiety,adequacy of collge life.

5.考察 本研究では運動習慣とうつ症状との関連性を検討し た.1115 名大学生の中に,うつ症状保有者の人数は 280 名(男性 183 名,女性 97 名)で,その割合は 25.1%(男性 25.6%,女性 24.2%)であった.時々運動している人の割 合は 49.8%で,毎日運動している人の割合は 8.3%であ った.運動習慣とうつ症状との間に負の関連があること を判明した. 徳永ら11)は青少年の運動習慣を含む生活習慣が健康 度への影響を検討した.運動習慣は「運動·スポーツの 実施」を通して評価された.中学生,高校生,大学生を 問わず,運動を実施する頻度が高いほど,精神健康度が 高いことを報告した.Farmer et al.12) は 25 歳から 77 歳までのアメリカ白人と黒人成人を対象として,身体運 動とうつ症状との関連について前向き研究を行った.そ の結果,定期的な運動の実践は,うつ症状の発現に抑制 的に作用することが報告された.Steptoe et al.13) 5,061 名の大学生を対象者として,前向き研究を行った. 運動実施の有無とその頻度を尋ねた.その結果,高頻度 の運動の実施はうつ症状とは負の関連があることが報 告された.本研究において,運動習慣は「ほとんどやっ ていない」,「時々運動する」と「毎日運動する」という 三段階に分類された.「時々運動する」群におけるうつ 症状を発見するリスクは「ほとんどやっていない」群と 比べ,30%以上に少なくなった.「毎日運動する」群はう つ症状を発見するリスクは「ほとんどしない」群と比べ, 約 50%減少した.すなわち,運動習慣保有者はうつ症状 を保有するリスクが低かった.本研究の成績は運動がう つ症状の発症に抑制的な作用があるとした先行研究と 一致していた12)14)15).したがって,本研究では運動習慣 の有無とうつ症状の発見リスクとの間に負の関連が認 められたものの,運動の種類,頻度,時間など運動条件 は明らかにできなかった.今後検討する必要がある課題

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として残された. 本研究は,大学生を対象として,客観的に測定・評 価された身体活動時間,座位時間と抑うつとの関連を 横断的に検討した.すなわち,MVPA,LPA,および SED とうつ症状との関連を検討した.本研究では,LPA が高 くなるほど,うつ症状の発症リスクが低下することが 判明した.また,SED が長いほうが,うつ症状の発症リ スクを高めることが判明した.MVPA とうつ症状の関連 が認められなかった.Dugan et al.16)は 42 歳から 52 歳までの中年女性を研究対象者とした 10 年間の縦断研 究を行い,身体活動はうつ症状とは負の関連があるこ とを報告した.また,Kuwahara et al.17)による日本勤 労者を対象とした縦断研究では,仕事中の座位時間が 長いほどうつ症状の発症リスクが高くなることを報告 した.以上のことから,大学生において,LPA の増加と SED の減少は,うつ症状の発症に保護的な役割をもつ可 能性が示唆された.これは大学生のうつ症状の予防対 策にとって有効な情報であると考えられる.しかし, 本研究は横断研究であるため,うつ症状を保有してい るためにより長い座位時間を過ごしているという可能 性が否定できない. MVPA とうつ症状の関連について,先行研究では様々 な対象者や測定方法を用いて,研究を行ったが,その 結果は一致していない.本研究では MVPA とうつ症状の 間に有意な関連が認められなかった.その理由は,ま ず,対象者は大学生である.青年期である大学生とい う期間は,新しい環境への適応や対人関係など人生の 課題に直面する特殊な時期であることが考えられる7) 心理的な障害には多様性,複雑性の特性を有している. 本研究の対象者は大学新入生のため,また調査する時 期は 5 月と 6 月のため,対象者は新しい環境への適応 はまだ慣れていないし,親友もまだできていなかった. また,大学に入学した後,望ましい大学生活とは差が あって,大学生活を充実に過ごしていない可能性があ る.それらは対象者の精神健康およびうつ症状の発見 に影響を与えていると考えられる.本研究では MVPA の 測定は三軸内蔵加速活動量計を用いて,客観的な MVPA を測定した.運動以外の MVPA,例えば仕事や家事をや る時発生した MVPA もすべて含まれていた.先行研究は 主観的データで,すべての身体活動を強度別に正確に 評価できないが,身体活動の様式と内容が把握させて いた.運動の様式と内容によって,精神健康に影響さ せる効果は差異がある.例えば,集団運動の実践する うちに,ソーシャルサポートの影響で,うつ症状は減 少されることがある.したがって,今後の研究は主観 的評価された身体活動量と客観的評価された身体活動 量のデータを併用して,身体活動の様式と内容を把握し た上で,MVPA とうつ症状との関連性を検討することが 課題として残された. 本研究では身体活動量の評価に 3 軸加速度センサー 内蔵活動量計を用いて,強度別の身体活動量が客観的に 評価された.これは本研究の強みといえる.本研究の限 界は,活動量計は対象者の具体的な身体活動内容,種類, および場所を測定することができないため,身体活動の 様式は不明のままであった.また,本研究では LPA,お よび SED はうつ症状との間に有意な関連が認められた ものの,本研究は横断研究であるから,その因果関係を 実証することはできない. 6.まとめと課題 本研究では,大学生における運動習慣の有無とうつ症 状の関連,また身体活動量とうつ症状の関連について 4 年間の縦断研究のベースラインデータを用い検討した. 今後は,主観的及び客観的なデータを用い,かつ運動 の様式と内容も把握して,身体活動,座位行動とうつ症 状の関連性を検討することが課題として残された.また, LPA の増加と SED の減少はうつ症状の発見に抑制的な作 用が示唆されたことから,今後は前向き研究や,介入研 究を行って,その因果関係を検討することが必要であろ う. 7.引用文献

1) Holly S.et al.,Am. Coll. Health, 57:507-512, 2009. 2) 内閣府,子ども·若者白書,平成 22 年度版.

3) Takayama Y. et al.,Odontol., 99:179-87,2011. 4) 斎藤学,日本保険医学会誌,103:297-309,2005. 5) Nemeroff C.et al.,NY Acad Sci, 932:1-23, 2001. 6) 荒井弘和,他,大学体育, 30:21-26, 2003. 7) 加藤明子,他,心身医学,40:221-228,2005. 8) 堤俊彦,他,行動科学,40: 45-58, 2001. 9) 荒井弘和,体育学研究,50:459-466,2005.

10) Vankim NA.et al., Am.J.Health Promot.,28:7-15, 2013. 11) 徳永幹雄,他,健康科学,24:39-46, 2002.

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14) Farmer E. et al.,Am. J. Epidemiol.,128:1340-51, 1988. 15) Rothon C.et al., BMC Med., 8: 32, 2010.

16) Dugan A.et al.,Med.Sci.Sports Exerc.,47:335-342, 2015. 17) Kuwahara K. et al.,Int. J. Behav. Nutr. Phys. Act.,

Table 1: Characteristics of Non-depressed and Depressed Study Participants
Table 3: Odd ratios (95%) of depressive symptoms for physical activity (quartile) in logistic regression models by  model 1

参照

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