『
御
抄
』の
「正
法
眼
蔵
」解
釈
打
返
の表
現
に つ いて
伊
藤
二 一 八秀
憲
は じ め に 「 『御
抄
』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 」 と 題 し て 、 こ れ ま で 、 否定
的
表 現、 或 は 疑 問 詞 と 疑 問 の 助 詞 に つ い て 見 て き た が 、今
回 は 、 打 返 の 表 現 に つ い て 考 え て み る こ と に し た い 。 「 打 返 の表
現
」 と し た の は 、 こ こ で取
り 上 げ よ う と し て い る 表 現 を 、 『 御 抄 』 ( 『 正 法 眼 蔵 抄 』 ) で は 「 … … ト 打 返 サ レ タ リ 」 ( 優 曇 華 抄 二 ・ 四 二 九 頁 下 ) と い う よ う に 説 い て お り、 ま た こ の 語 が こ の 表 現 の 特 微 を よ く 表 わ し て い る か ら で あ る 。 で は そ の打
返 の 表現
と は ど の よ う な 表 現 を 言 う の か と い え ば 、 例 え ば 「AB
」 と い う 語 順 の こ と ぽ が あ っ た と す る 。 こ の と き 、A
・B
は 一字
の 場 合或
は 二 字 三 字 の 場合
もあ
る が、 字 数 に は 関 係 が な い 。 こ の 「AB
」 と い う 語 順 の こ と ば を、 「BA
」 と い う よ う に 、 語 順 を逆
に す る こ と を 「 打 返 」 と い う の で あ り、 こ の よ う な 表 現 が 一 体 何 を 表 わ さ ん と し て い る の か を 考 察 す る の が 本稿
の 目 的 で あ る 。 否 定 的 表 現 の 場 合 は、 否 定 的 表 現 を 「 一 方 を 証 す る と き は 一 方 は く ら し 」 の 論 理 で解
釈 し よ う と し 、 こ と ば の 持 つ 本 来 の 意 味 か ら 大 き く懸
け離
れ た、 『 御 抄 』 独 自 の解
釈 が な さ れ て い た 。 ま た 、 疑 問 詞 ・ 疑 問 の 助 詞 に お い て も 、 道 元 禅 師 自 身 の 解 釈 を、 他 の 場 合 に も普
遍 せ ん と す る 意 図 の も と に 解 釈 が な さ れ て い た 。 し か し 、今
回 取 り 上 げ た 「 打返
の 表 現 」 は 、 先 の 二 つ と は 少 し 異 な り 、 禅 師 独自
と い う よ り も 、 既 に 中 国 の 禅 語 録 の 中 に そ の よ う な表
現 が 見 ら れ 、 『 正 法 眼 蔵 』 に も こ れ が引
用 さ れ て い る 。 そ の よ う な 点 か ら 言 え ぽ 、 前 の 二 者 ほ ど の禅
師
独 特 の 表 現 、 或 は 『 御抄
』 の 解 釈 と は 言 え な い が、 し か し 、 中 国 の 禅 語録
に 見 ら れ る よ り も 、 よ り 自 由 な 、 こ と ぽ に囚
わ れ な い 打 返 の 表 現 が な さ れ て い る と 言 え る 。 以 下 の 引 用 文 中 、 『 正 法 眼 蔵 』 は 大 久 保 道 舟 編 『 古 本 校 定 正 法 眼 蔵 』 に、 『 正 法 眼 蔵 抄 』 は 『 曹 洞 宗 全 書 』 註 解 一 ・ 二 に ょ っ た 。Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 二 打 返 の 表 現 の 用 例 打 返 の 表 現 と し て は 、 譬 喩 と し て 用 い ら れ る 場 合 と 、 そ れ 以 外 の 場
合
と に 分 け る こ と が で き る 。 『 正 法 眼 蔵 』 が 引 用 す る 語 録等
か ら の 用 例 は 、 前 者 が 多 い 。 し か し 、 道 元禅
師 の 用 法 の 主 は む し ろ 後 者 で あ る 。 以 下e
譬 喩 と し て の 用 例 、◎
譬 喩 以 外 の 用 例 に 分 け 、 『 御抄
」 が 如 何 な る 解 釈 を し て い る の か を 見 て み る こ と に し た い 。O
譬
喩
と し て の 用 例ω
烈 焔 亘 天 仏 説 法 . 亘 天 烈 烙 法 説 仏 圜 悟 禅 師 云、 将 謂 猴 白 、 更 有 二 猴 黒 叩 互 換 投 機 、 神 出 鬼 没 、 烈 焔 亘 天 仏 説 γ 法 、 亘 天 烈 焔 法 説 7 仏 。 風 前 剪 断 葛 藤 案、 一 言 勘 破 維 摩 詰 。 ( 行 仏 威 儀 五 四 頁 ) い は ゆ る 、 烈 焔 亘 天 は ほ と け 法 を と く な り 、 亘 天 烈 焔 は 法 ほ と け を と く な り 。 ( 行 仏 威 儀 五 七 頁 ) 其一 一 今 園 悟 ノ 詞 二 、 烈 焔 亘 天 ハ 仏 法 ヲ ト ク ナ リ、 亘 天 烈 焔 ハ 法 仏 ヲ ト ク 也 ト 、 サ ワ サ ワ ト ア レ ハ 、 能 所 彼 此 モ 聞 ス 、 ( 抄 一 ・ 一 八 一 頁 下 〜 一 八 二 頁 上 ) 『 圜 悟 仏 果禅
師 語 録 』 巻 第 一 九 ( 正 蔵 四 七 、 八 〇 二b
〜 c ) か ら の引
用 で あ る 。 「 仏 説 法 」 を 「 烈 焔 亘 天 」 に 、 「 法 説 仏 」 を 「 亘 天 烈 焔 」 に 当 て て い る 。仏
が 法 を 説 く ( 仏 説 法 ) と い え ぽ、能
説
の 仏 ・ 所 説 の法
と な る が 、 逆 に 法 が 仏 を説
く ( 法 説 仏 ) と い え ば 、 能 説 の 法 ・ 所 説 の 仏 と な り 、 能 所 の関
係 は 逆 『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) 転 す る 。 少 く と も 、表
現
の 上 か ら 言 え ぽ、 「 仏 説 法 」 と 「法
説 仏 」 と は 、 全 く 相 い反
す る も の で あ る 。 し か し 、 こ れ が 、 「 烈 焔 亘 天 」 と 「 亘 天烈
焔 」 の関
係 だ と 言 う の で あ る 。 「烈
焔 亘 天 」 と は 「 烈 し い 火焔
が 天 に わ た る 」 と い う こ と であ
り、 コ 旦 天 烈 烙 」 と は 「 天 を つ く し た 烈 し い 火 烙 」 で あ っ て 、 そ の 表 わ さ ん と し て い る こ と は 、 「 烈焔
」 と 「 亘 天 」 と の語
順 が 逆 に な っ て も 変 り は な い 。 と い う こ と は 、 「 烈焔
亘 天 」 に 対 応 す る 「 仏 説 法 」 と 、 コ 旦 天烈
烙
」 に 対 応 す る 「 法 説 仏 」 と が 同 じ で あ る と い う こ と で あ る 。 「 仏 説 法 」 と 「 法 説 仏 」 と が 同 じ であ
る と い う こ と は 、 仏 と 法 が 同時
に 能 説 で あ り 、 同 時 に 所 説 で あ る と い う、矛
盾 し た 関 係 に あ る 。 こ れ は 、仏
と 法 と は 能 所 相 対 す る も の で は な く、 不 二 同 一 な る こ と を表
わ し て お り 、 そ れ を 『抄
』 で は 「 能 所彼
此 モ 聞 ス 」 と述
べ て い る 。 こ こ で は 、 「仏
説 法 」 と 「 法 説 仏 」 の 不 二 同 . な る関
係
、 即 ち 仏 と 法 と の 同 一 な る こ と を 表 わ さ ん と し て、 「 烈焔
亘 天 」 コ 旦 天 烈 焔 」 と い う 打 返 し て も 意 味 の 変 ら な い 表 現 が 、 讐 偸 と し て 用 い ら れ て い る と い え る 。胡 鬚 赤 ・ 赤 鬚
胡
@ 百 丈 拍 手 、 笑 云、 将 為 胡 鬚 赤 、 更 有 赤 鬚 胡 。 ( 大 修 行 五 五 一 頁 ) 是 ハ 重 重 右 二 所 γ 挙 ノ 道 理 詞 サ マく
二 多 二 似 タ レ ト モ 、 只 一 道 理 ナ ル 所 ヲ 将 為 胡 鬚 赤 、 更 有 赤 鬚 胡 ト ハ 云 也、 只 → 物 カ カ ハ ラ ヌ 道 理 ヲ 如 此 云 也 、 但 猶 二 物 ヲ 置 テ 是 力 冂 ハ 一 理 ナ ル ユ ヘ ニ 、 此 将 為 ノ 詞 ア リ ト 心 得 ハ 、 同 事 ナ レ ト モ 、 猶 イ カ ニ モ 凡 見 モ 指 二 一 九『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) 出 ヌ ヘ シ、 只 一 物 ノ 上 ノ 道 理 ニ モ、 将 為 胡 鬚 赤、 更 有 赤 鬚 胡 ノ 理 ハ ア ル ヘ キ 也 、 此 儀 甚 深 也、 独 立 ノ 姿 ナ ル ヘ シ 、 ( 抄 . 一 ・ 四 七 五 頁 上 〜 下 ) コ ノ ピ ケ ノ ア カ キ モ 、 ア カ キ ビ ケ ノ コ ナ ル モ 同 シ カ ル ヘ シ 、 ( 聞 書 二 ・ 四 八 一 頁 上 ) ω ( 前 略 ) 師 拍 手 笑 云 、 「 将 為 胡 鬚 赤 、 更 有 二 劇 劉 胡 謝 ( 大 修 行 五 四 四 頁 ) 又 師 ノ 詞 二 将 為 胡 鬚 赤、 更 有 赤 鬚 胡 ト ハ 、 不 落 因 果 モ 落 因 果 モ 、 又 不 昧 因 果 ト 云 モ 乃 至 錯 対 一 転 語 ト 云 モ 、 転 転 不 錯 ト 云 モ 、 只 同 詞 也 同 心 也 、 ユ ヘ ニ 将 為 胡 鬚 赤、 更 有 赤 鬚 胡 ト ハ 云 ナ リ 、 非 二 別 物 一 所 ヲ 云 也。 ( 抄 二 ・ 四 六 三 頁 下 ) ま こ と に 師 資 の 道 な ほ ざ り な る べ か ら ず 。 将 謂 赤 鬚 胡 の み な ら ん や、 さ ら に こ れ 胡 鬚 赤 な り 。 ( 行 仏 威 儀 五 六 頁 ) 将 謂 赤 鬚 胡、 胡 鬚 赤 也 ト 云 ハ ル 、 始 終 師 資 ノ 詞 不 〆 可 7 違、 同 道 理 ナ ル 証 拠 分 明 也 、 只 暫 見 解 ノ ァ シ ク ナ リ ヌ ヘ ギ 所 ヲ 被. 不 F 也 、 ( 抄 一 ・ 一 七 八 頁 下 ) い ま 胡 来 胡 現 は 、 → 隻 の 赤 鬚 な り 。 ( 古 鏡 一 七 九 頁 ) 今 ノ 胡 来 胡 現 ハ 一 隻 ノ 赤 鬚 也 ト ハ 、 胡 ハ 来 、 漢 ハ 現 ト 云 ヘ ハ 、 胡 モ 漢 モ 来 モ 現 モ カ ハ リ タ ル ヤ ウ ニ 聞 ユ 、 但 赤 鬚 胡 胡 鬚 赤 ト 云 詞 ア リ、 是 ハ 只 同 事 也、 今 ノ 胡 来 胡 現 モ 只 同 シ キ ユ ヘ ニ 、 此 赤 鬚 ノ 喩 ヲ 被 γ 出 ナ リ、 ( 抄 → ・ 四 → 二 頁 上 ) 阿 羅 漢 の 神 通 ・ 智 慧 ・ 禅 定 ・ 説 法 ・ 化 導 ・ 放 光 等、 さ ら に 外 道 ・ 天 魔 等 の 論 に ひ と し か る ぺ か ら ず 。 見 百 仏 世 界 等 の 論、 か な ら ず 凡 夫 の 見 解 に 準 ず べ か ら ず 。 将 謂 胡 鬚 赤 、 更 有 赤 鬚 胡 の 道 理 な り g ( 阿 羅 漢 三 二 三 頁 ) 二 二 〇 羅 漢 ハ 百 仏 世 界 ヲ 見 ト 云 事、 論 蔵 ノ 所 談 歟 、 是 ハ 猶 能 見 所 見 ニ カ カ ハ ル、 今 詞 ハ 此 百 仏 世 界 カ ヤ カ テ 羅 漢 ノ 眼 也 ト 談 也、 ユ ヘ ニ 能 見 所 見 ヲ 離 ヌ ル ナ リ 、 百 仏 世 界 ト、 今 ノ 能 見 ノ 羅 漢 ト ノ 各 別 ナ ラ ヌ 道 理 力 、 将 謂 胡 鬚 赤 、 更 有 赤 鬚 胡 ト 云 ハ ル ル 也 、 只 同 物 ナ ル ユ へ 也、 ( 抄 二 ・ 二 頁 下 ) の 本 文 は 『 天 聖 広 燈 録 』 巻
第
八 ( 続 蔵 =. 一 五 ・ 三 二 九 a ) か ら の 引 用 で あ る 。 「AB
」 を 「BA
」 と す る と い う 打 返 の 表 現 の 原 則 通 り で は な い が、 こ れ も 「 打 返 の 表 現 」 と 見 る こ と に し た い 。 「胡
鬚
赤 」 は 「胡
人 の 鬚 は 赤 い 」 と い う こ と で あ り 、 「 赤 鬚胡
」 は 「 赤 鬚 の胡
人 」 で あ る 。 表 現 は 異 な っ て も、赤
い鬚
を し た 胡 人 の こ と を 述 べ て お り、 異 な る内
容 で は な い 。 大 修 行 の 巻 (ー
ab ( ( ) で は 、 百丈
の こ と ば と し て 引 用 さ れ て い る が 、 そ こ で は 『抄
』 の 示 す 如 く 、 不 落 因 果 ・落
因 果 ヘ ニ ヒ コ ヨ ヨ く フ で ニ ヒ ヨ ア ね コ に へ ま エ コ ニ ヘ ニ ゐ へ と ヨ ラ ら ト コ ヨ ぐ ノ コ ダし ニ し る ロ ・ イ 明 β 身 天 7 ヨ 鑁 文 聒 ヨ 叫 . 奄 亳 イ 斜4
羽 誇 て rFt 芒 仙 四 て 凌 る と い う こ と を 表 わ さ ん と し て 使 わ れ て い る 。 更 に◎
で は、 師 と 資 の こ と ば の 異 な ら な い こ と を、 で は、胡
・漢
・ 来 ・ 現 す べ て 同 じ で あ る こ と を、 で は 、 阿 羅 漢 と 百 仏 匿界
と が 能 見 所 見 の 関係
に あ る の で は な く 、 同 一 で あ る こ と を述
ぺ ん が た め に 用 い ら れ て い る 。 こ の よ う に 、 「 胡 鬚 赤 ・赤
鬚
胡 」 は 、 不 二 同 一 な る こ と を 表 わ す 譬 喩 と し て使
用 さ れ て い る と 言 え る 。回 頭 換 面 ・ 換 面 回 頭
Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty お ほ よ そ 回 頭 換 面 の 面 面 、 こ れ 仏 仏 要 機 な り 。 換 面 回 頭 の 頭 頭 、 こ れ 祖 祖 機 要 な り 。 ( 坐 禅 箴 九 八 頁 ) 是 ハ 回 頭 換 面、 換 面 回 頭 只 同 事 也 、 打 チ カ ヘ タ ル 許 也、 仏 仏 要 機、 祖 祖 機 要 ハ 、 只 回 頭 換 面、 換 面 回 頭 程 ノ 理 也 ト 云 也、 只 同 事 也、 ( 抄 一 ・ 二 五 六 頁 上 〜 下 ) 「 回 頭 換 面 」 と は 「 頭 を め ぐ ら し て
面
の む き を 換 え る 」 こ と で あ り、 「 換 面 回 頭 」 は 「 面 の む き を 換 え て頭
を め ぐ ら す 」 こ と で あ る 。 ど ち ら も 、 い わ ゆ る ふ り 返 っ た 様 を 述 べ て い る の で あ っ て 、 打 返 し て も そ の 意 味 は 同 じ で あ る 。こ こ で は 『
抄
』 が 示 す よ う に、 「仏
仏 要 機 」 と 「祖
祖
機 要 」 と 同 が じ であ
る こ と を 表 わ す た め に 、 こ の 打 返 の 表現
が 譬 喩 と し て 用 い ら れ て い る 。ω
盤 走 珠 ・ 珠
走
盤 夾 山 圜 悟 禅 師 、 ( 中 略 ) 云 、 盤 走 〆 珠、 珠 走 ノ 盤 。 偏 中 正、 正 中 偏 。 ( 中 略 ) い ま 盤 走 珠 の 道 、 こ れ 光 前 絶 後、 古 今 罕 聞 な り 。 古 来 は た だ い は く、 盤 に は し る 珠 の 住 著 な き が ご と し 。 ( 春 秋 三 二 九 頁 ) 至 テ ヨ キ 珠 ハ 盤 上 二 住 著 ナ シ ト テ、 留 事 ナ ク マ ワ ル ナ リ、 其 ヲ 云 詞 二 、 珠 盤 二 走 ト 云 ヲ、 今 夾 山 ハ 盤 珠 ニ ハ シ ル ト 云 詞 ヲ 被 二 云 出 → 是 ヲ 光 前 絶 後 、 古 今 牢 聞 也 ト ハ 被 二 讃 嘆 一 也、 イ カ ニ モ 正 ハ マ サ リ 、 偏 ハ 劣 也 ト 思 所 ヲ、 返 返 被 γ 嫌 ナ リ 、 偏 中 正 、 正 中 偏 ト ハ 、 只 偏 正 共 二 無 差 別 所 ヲ 如 レ 此 云 也、 ( 抄 二 ・ 一 = 頁 下 ) 如 来 道、 為 説 実 相 印 。 い は ゆ る を い ふ べ し、 為 行 実 相 印、 為 聴 実 性 印 、 為 証 実 体 印 。 か く の ご と く 参 究 し 、 か く の ご と く 究 尽 す べ 『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) き な り 。 そ の 宗 旨 、 た と へ ぽ 珠 の 盤 を は し る が ご と く 、 盤 の 珠 を は し る が ご と し 。 ( 諸 法 実 相 三 六 七 〜 三 六 八 頁 ) 是 ハ 只 同 事 ナ ル 証 拠 二 、 此 詞 ヲ 被 γ 引 也、 ( 抄 二 ・=
一 頁 上 ) こ の 語 は 、 『 圜 悟仏
果禅
師 語 録 』 巻 第 一 九 ( 正 蔵 四 七 ・ 八 〇 四 a ) に 見 ら れ る 。 「 珠 走 盤 」 と 言 え ぽ 、 「 珠 が 盤 を 走 る … で あ る が、 「 盤 走 珠 」 と 打返
せ ぽ、 「 盤 が 珠 を 走 る 」 と な っ て 、 全 く 反 対 の意
味 と な り 、 「烈
焔 亘 天 ・ 亘 天 烈 焔 」 等 の 、打
返 し て も 同 じ 意 味 を 表 わ す 表 現 と は 異 な る 。 「 珠 走盤
」 と 言 え ぽ 、盤
と そ の 上 を 走 る 珠 と が 考 え ら れ る が 、 「 盤 走 珠 」 と打
返 す こ と に よ り 、 盤 と 珠 と の 相 対関
係 は 逆 に な る 。 こ の こ と は 、珠
が 盤 を走
る と い う よ う な 、珠
と 盤 と を 異 な っ た も の と み る 見 方 を 否 定 し 、 珠 と 盤 と が同
一 で あ る こ と を 示 さ ん と し て い る の で あ ろ う 。 道 元 禅 師 は 、 こ の 「 盤 走 珠 」 の こ と ば を 、 「 こ れ 光 前 絶後
、 古 今罕
聞 な り 」 と 讃 嘆 さ れ る 。 で は こ の こ と ば の 次 に 、 「 偏 中 正 、 正 中 偏 」 が あ る が 、 こ れ は 、 「偏
中
正 ・ 正 中 偏 」 が 「 盤 走 珠 ・ 珠 走 盤 」 の 関 係 に あ る こ と 、 即 ち 盤 と珠
と が 相 対 す る も の で は な く 同 一 で あ る よ う に、 偏 と 正 と も 異 な る も の で は な い こ と を 表 わ し て い る と 言 え よ う 。 ま た で は、 『 抄 』 に 「 只 同事
ナ ル 証 拠 二 、 此 詞 ヲ被
〆 引 也 」 と あ り 、 こ れ は 、 「 為 説実
相 印 」 「 為 行 実 相 印 」 「 為 聴 実 性印
」 「 為 証 実 体 印 」 の す べ て が 同 じ で あ る と い う こ と を 示 す た め に 、 譬 喩 と し て 「 珠 走 盤 ・ 盤 走珠
」 が 用 い ら れ た の で あ る と 二一 二『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) 解 釈 し て い る 。
人 喫 飯 ・ 飯 喫 人 馬 祖 道 の 法 性 は、 法 性 道 法 性 な り 。 馬 祖 と 同 参 す 、 法 性 と 同 参 な り 。 す で に 聞 著 あ り、 な ん ぞ 道 著 な か ら ん 。 道 性 騎 馬 祖 な り 。 湘 喫 飯 、 飯 喫 人 な り 。 ( 法 性 四 一 六 頁 ) 法 性 騎 馬 祖 也 ト ハ 、 法 性 ト 馬 祖 ト 一 体 ナ ル 道 理 ヲ 、 馬 祖 ノ 詞 二 騎 ル ト 云 詞 ヲ エ ム ナ ル ニ ヨ リ テ ツ ケ ラ レ タ ル 也、 所 詮 只 馬 祖 ト 法 性 ト 一 体 ナ ル 姿 力、 如 7 此 イ ハ ル ル ト 可 二 心 得 → 人 喫 飯、 飯 喫 人 ア リ 、 法 性 騎 馬 祖 也 ノ 道 理 ハ 、 人 喫 飯、 飯 喫 人 ノ 道 理 也 、 ( 抄 二 ・ 一 八 八 頁 上 ) 「 人 喫 飯 」 と は、 「 人 が 飯 を 食 べ る 」 こ と で あ っ て 、 能
食
の 人、 所 食 の飯
と な る が 、 そ れ を 「 飯 喫 人 」 と 言 え ぽ 、 「 飯 が 人 を食
べ る 」 と い う こ と に な り、 能 所 の 関 係 は 逆 に な り 、 意 味 も 反 対 と な る が、 こ の よ う に 打 送 す こ と に よ っ て 、 能 所 な く 一体
で あ る こ と を 表 わ さ ん と し て い る と い え る 。 こ こ で は こ の 語 を譬
喩
と し て 用 い る こ と に よ り 、 馬祖
と 法 性 と の 一体
な る こ と を 表 わ し て い る 。仏
祖
の 嫡 孫 ・嫡
孫 の 仏 祖 説 の 性 な る こ と を 参 学 す る、 こ れ 仏 祖 の 嫡 孫 な り 。 性 は 説 な る こ と を 信 受 す る 、 こ れ 嫡 孫 の 仏 祖 な り 。 ( 説 心 説 性 三 六 二 頁 ) 仏 祖 ノ 嫡 孫 、 嫺 孫 ノ 仏 祖 ト 打 ヂ , ガ, べ , デ、 カ カ ル 仏 祖 ノ 嫡 孫 卜 云 ヘ ハ 、 例 ノ 詞 ニ テ 、 嫡 孫 ノ 仏 祖 ト 云 ヘ ハ 、 能 所 ナ キ 道 理 サ ハ サ ハ ト 聞 ユ ル 也 、 ( 抄 二 ・ 九 ゴ . 頁 ド 〜 九 四 頁 上 ) 二 二 二 「 仏 祖 の 嫡 孫 」 と 「 嫡 孫 の 仏 祖 」 と は 、 『 諸 悪 莫作
抄 』 で 説 く と こ の ろ 「前
仏 ヨ リ 後 仏 二 正 伝 シ 」 と 「 後 仏 ヨ リ 前 仏 二相
嗣 ス 」 ( 一 . 六 三 八 頁 上 ) の 関 係 で あ る と 言 え る 。 そ こ で は 続 い て こ の 道 理 を 、 「 唯 仏与
仏 ノ ス カ タ ナ リ 」 と 註 釈 し て い る が 、 こ れ に 依 れ ば 、 こ こ で は 仏 祖 と 仏 祖 の 関係
が 説 か れ て い る こ と に な る 。嫡
孫 は 仏 祖 よ り 正 し く 法 を 受 け た 人 で あ る か ら、 そ の 意 味 で嫡
孫
は 仏 祖 に 同 じ で あ っ て 異 な る も の で は な い と 言 い 得 る 。 だ か ら そ の よ う な 正 し く 法 を 受 け た ( 仏 祖 の 嫡 孫 と し て の ) 人 か ら す れ ば 、 仏 祖 を 逆 に 「嫡
孫 の 仏 祖 」 ( 嫡 孫 と し て の 仏 祖 ) と 言 う こ と も で き る 。 「 仏 祖 の嫡
孫
・嫡
孫 の 仏 祖 」 と 打 返 す こ と に よ り 、 仏 祖 と嫡
孫
の 同 一 な る こ と を 表 わ す と 同時
に、 説 と 性 と の 不 二 同 一 な る こ と を 示 す 譬喩
と し て 使 用 さ れ て い る 。⇔
譬 喩 以外
の 用 例ω
全 依 ・ 依 全 仏 性 の 巻 に、 次 の よ う な 馬 鳴尊
者 の こ と ば ( 『 最 徳 伝 燈 録 』 巻 第 一 正 蔵 五 一 ・ 二 〇 九 c ) が引
用 さ れ て い る 。 第 十 二 祖 馬 鳴 尊 者、 十 三 祖 の た め に 仏 性 海 を と く に い は く、 山 河 大 地 、 皆 依 建 立、 三 昧 六 通 、 由 茲 発 現 。 ( 仏 性 一 七 頁 ) そ し て、 こ の 「 皆 依 」 と い う語
を、 道 元禅
師 は 「 全 依 」 「 依 全 」 と解
釈 さ れ、 そ れ を受
け て 『御
抄
』 は そ の意
味 を 明 ら か に し て い る 。Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 皆 依 は 全 依 な り、 依 全 な り と、 会 取 し 不 会 取 す る な り 。 ( 仏 性 一 七 頁 ) 又 皆 依 ト 云 ヘ ハ イ カ ニ モ 、 猶 能 依 所 依 之 心 地 サ シ イ ツ 、 故 全 依 也 ト 被 γ 釈、 然 而 是 モ 猶 全 依 モ 依 ノ 心 地 相 ノ コ リ ヌ ヘ シ 、 仍 依 全 ト 云 時 、 能 依 所 依 ノ 義 ハ 解 脱 ス ル ナ リ、 ( 抄 一 ・ 三 九 頁 上 ) 依 全 ト 云 ハ 、 依 カ ヤ カ テ 全一 = ア ア ル 也 、 能 所 ヲ ヲ カ ヌ 心 也 、 ( 聞 書 一 ・ 四 一 頁 下 ) 「 山 河 大 地 、 皆 依 建 立 」 と 言 え ば 、 山 河 大 地 が 皆 、
仏
性 海 に 依 っ て 建 立 し て い る と い う 意 味 に 理 解 さ れ る が、 『御
抄 』 は 「 皆 依 」 を そ の よ う に は解
釈 し て い な い 。 『 正 法 眼蔵
』 で は 、 「 皆 依 は 全 依 な り 、 依 全 な り 」 と 説 か れ る 。 「 依 」 と 言 え ば 、 「 仏 性海
に 依 っ て 」 と い う よ う に 、 能 依 所依
が考
え ら れ る が 、 そ れ を 否 定 す る た め に 「 全 依 」 ( 全 て が 依 ) と 説 か れ た の で あ り 、 そ れ で も や は り 「依
」 の 意 味 が 残 る か ら、 「 依 全 」 ( 依 が 全 て ) と 説 か れ た と 『 抄 』 は 註 釈 す る の で あ る 。 依 が 全 て と い う こ と は、 山 河 大 地 は仏
性 海 に 依 っ て 建 立 し て い る の で は な く 、 山 河 大 地 は 仏 性 海 に ほ か な ら な く 、 全 て が 仏 性海
で あ る と い う こ と を 示 し て い る 。 「 全 依 」 を 「 依 全 」 と 打 返 す こ と に よ り 、 能 依 所 依 と い う 相 対 を 否 定 し、 「 依 」 が 即 ち 「 全 」 で あ る と い う こ と を表
わ し て い る 。発
菩 提 心 ・ 菩 提 心 発 境 発 に あ ら ず、 智 発 に あ ら ず 、 菩 提 心 発 な り、 発 菩 提 心 な り 。 ( 身 心 学 道 三 八 頁 ) 『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) 境 二 対 シ テ 発 ル ニ テ モ ナ シ 、 智 慧 ヨ リ 可 発 物 ニ ア ラ ス 、 ユ ヘ ニ 菩 提 心 発 ト ハ 被 決 也、 発 菩 提 心 ト 云 ヘ ハ 、 イ カ 一 一 モ 能 発 ノ 人、 所 発 ノ 菩 提 心、 各 別 二 思 ナ ラ ハ シ タ ル ヲ、 菩 提 心 発 ト 談 ス レ ハ 能 所 彼 此 ヲ 離 タ ル ナ リ 、 菩 提 心 ヲ 発 ト 仕 フ ユ ヘ ニ 、 菩 提 心 発 ト 云 フ カ、 殊 親 切 、 発 菩 提 心 ニ テ ア ル 也、 ( 抄 一二
二 八 頁 上 ) 菩 提 心 を 発 す と い う の は 、 境 に 対 し て、或
は智
よ り 発 るも
の で は な く 、 ま た 能発
の 人 と 所発
の 菩 提 心 と が異
な る も の で も な い か ら 、 能 所 彼此
相 対 す る考
え を 否 定 す る た め に 、 「発
菩
提 心 」 が 「 菩 提 心発
」 と打
返 し て 説 か れ る 。菩
提 心 自 か ら が菩
提 心 を発
す の で あ る か ら 、 「菩
提 心 」 が 「 発 」 で あ る と 言 え る 。威
儀
・ 儀 威、 行 仏威
儀
・ 威 儀 行 仏 威 儀 儀 威 、 大 道 体 寛 と 究 竟 す べ し 。 ( 行 仏 威 儀 四 八 頁 ) 威 儀 儀 威 ノ 詞、 セ メ テ 体 脱 サ ト ル 心 地、 行 仏 威 儀 親 切 ナ ル 道 理 ヲ、 重 委 被 γ 釈 也 、 依 全 ヲ 全 依 ト 云 ヒ 、 発 菩 提 心 ヲ 菩 提 心 発 ト 心 得 シ カ 如 シ 、 ( 抄 一 ・ 一 六 〇 頁 下 〜 → 六 一 頁 上 ) 大 の 有 に あ ら ざ る、 小 の 有 に あ ら ざ る 、 疑 著 に に た り と い へ ど も 、 威 儀 行 仏 な り 。 ( 行 仏 威 儀 四 九 頁 ) 是 ハ 実 二 大 小 有 等 疑 著 二 似 タ レ ト モ 、 皆 是 威 儀 行 仏 也、 此 威 儀 行 仏 、 サ カ サ マ ナ ル 様 二 聞 ユ レ ト モ 、 威 儀 儀 威 ノ 詞 ホ ト ノ 義 也 、 ( 抄 一 ・ 一 六 一 頁 下 )の 「 威 儀 ・ 儀 威 」 を 『 抄 』 で は 「 全 依 ・ 依 全 一 「
発
菩
提
心 ・菩
提 心 発 」 の 関 係 と 同 じ で あ る と し て い る 。 即 ち 「威
」 と 「 儀 」 と が 異 な る も の で は な い こ と を 、 打 返 の 表 現 は表
わ 二 二 三『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) し て い る と 言 え る 。
更
にで は 、 「 行 仏 威 儀 ・ 威
儀
行 仏 」 を 、 の 「威
儀 ・儀
威 」 の 詞 を も っ て 解 釈 し て い る 。 こ れ は 「 行 仏 」 と 「威
儀
」 と が 同 一 で あ る こ と 、仏
と し て の 行 が 仏 と し て の 威 儀 そ の も の で あ る こ と を 表 わ し て い る 。ω
偏 界 不曾
蔵 ・ 不曾
蔵 偏 界 仏 仏 祖 祖 の 道 趣 す る 尽 乾 坤 の 威 儀、 尽 大 地 の 威 儀、 と も に 不 曾 蔵 を 偏 界 と 参 学 す べ し 。 偏 界 不 曾 蔵 な る の み に は あ ら ざ る な り。 こ れ 行 仏 一 中 の 威 儀 な り 。 ( 行 仏 威 儀 四 九 頁 ) 偏 界 不 曾 蔵 ハ 常 ノ 詞 也 、 是 ハ 猶 物 ヲ 置 テ カ ク レ ス ト 云 心 地 モ 、 イ テ キ ヌ ヘ シ 、 不 曾 蔵 ヲ 褊 界 ト 参 学 ス ル 也 、 喩 ヘ ハ 発 菩 提 心 ヲ 、 菩 提 心 発 ト 云 シ カ 如 シ 、 ( 抄 一 ・ 一 六 一 頁 下 ) 「 発 菩 提 心 」 を 「 菩 提 心 発 」 と 打 返 し た よ う に 、 「 偏 界 不 曾 蔵 」 を 「 不 曾 蔵 偏界
」 と 打 返 す こ と に よ り 、 偏 界 に お い て 何 物 も か く さ な い と い う の で は な く 、 不 曾 蔵 な る こ と が 偏 界 と い う こ と、 即 ち 偏界
と 不 曾 蔵 の 不 二 同 一 な る こ と を表
わ し て い る 。転 法 ・ 法 転 転 大 法 輪 は 、 転 自 転 機 あ る べ し 。 展 事 投 機 な り、 転 法 法 転 あ る べ し 。 ( 行 仏 威 儀 五 四 頁 ) 転 法 法 転 ト 云 ハ 、 無 能 所 義 也、 理 ト シ テ 転 ス ル ナ リ 。 ( 聞 書 一 ・ 一 九 四 頁 上 ) 「 転 法 」 と 言 え ば 、 法 を 転 ず る 人 と 、 転 ぜ ら れ る 法 が あ る こ と に な る が 、 「 法 転 」 と 打 返 す こ と に よ り 、 能 所 な き こ と 二 二 四 が 示 さ れ る 。 こ れ は
先
の 「 仏 説法
・ 法 説 仏 」 と 同 じ で、 仏 ( 人 ) と 法 と は 不 二 同 一 で あ る か ら、 法 が 法 を 転 ず る と 言 う こ と が で き る 。 「 理 ト シ テ 転 ス ル 」 と は 、 こ の こ と を 言 う の で は な か ろ う か 。伝 法
伝
衣 ・ 法 伝 衣伝
祖 祖 機 要 。 先 師 無 此 語 な り 。 こ の 道 理、 こ れ 祖 祖 な り、 法 伝 衣 伝 あ り 。 ( 坐 禅 箴 九 八 頁 ) 法 伝 衣 伝 ト 云 ハ 、 人 ノ 伝 ル ニ テ ハ ナ シ 、 法 力 伝 へ 、 衣 力 伝 ル 也 、 是 ハ 打 任 テ ハ 伝 法 伝 衣 ト 云 ヲ 、 打 . ヂ 州、 ヘ デ、 法 ト 伝 ト 能 、 所 ー 唄 荊 所 ヲ 、 法 伝 衣 伝 ト 云 ナ ル ヘ シ 、 ( 聞 書 一 ・ 二 七 六 頁 下 ) 「 転 法 ・ 法 転 」 の 関 係 と 同 じ で あ る 。 「 伝 法伝
衣 」 と 言 え ば 、 人 が 法 ・ 衣 を 伝 え る と い う こ と に な る が 、 「 法伝
衣 伝 」 と 打 返 す こ と に よ り 、 そ の よ う な 能伝
所 伝 を否
定
す る 。 人 と 決 。 衣 と は 不 二 同 . で あ る か ら 、 法 が 法 を 広 え 、 衣 が 衣 を 云 え る と い う こ と に な る 。 ω海 印 ・ 印 海 印 水 の 印 、 か な ら ず し も 印 海 の 印 に は あ ら ず 、 向
L
さ ら に 印 海 の 印 な る べ し 。 こ れ を 海 印 と い ひ、 水 印 と い ひ 、 泥 印 と い ひ、 心 印 と い ふ な り 。 ( 海 印 三 昧 → 〇 五 頁 ) 海 印 三 昧 ト 云 ヲ、 コ コ ニ ハ 印 海 ト, 打 ヂ 刻, へ , デ 云 フ 、 海 印 ト 云 ヘ ハ 猶 海 二 物 ヲ 摂 入 シ テ 、 談 ス ル 心 地 ス ル ア ヒ タ 、 印 海 ト 云 ヌ レ ハ 能 所 ナ シ 、 解 脱 ノ 言 ト 聞 ユ ル ナ リ 。 ( 抄 一 ・ 二 八 九 頁 上 ) 「海
印 」 の 「 印 」 と は 映 る の 意味
で あ る か ら、 「海
印 」 とKomazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 言 え ぽ
海
に 何 か が 映 る か の ご と く に 考 え る が 、 「 印 海 」 と 打 返 し て 、 そ の よ う に相
対 す る も の が あ る の で は な く 、 「海
」 と 「 印 」 と が同
一 であ
る こ と を 説 く の で あ る 。仏 光 ・ 光 仏 い は ゆ る 仏 祖 の 光 明 は 、 尽 十 方 界 な り 、 尽 仏 尽 祖 な り、 唯 仏 与 仏 な り 。 仏 光 な り 、 光 仏 な り 。 仏 祖 は 仏 祖 を 光 明 と せ り 。 ( 光 明
=
七 頁 ) イ ハ ユ ル 仏 祖 ノ 光 明 ハ 、 尽 十 方 界 也 、 尽 仏 尽 祖 也、 唯 仏 与 仏 也 ト ア リ 、 我 等 力 日 来 ノ 見 解 ノ 光 明 二 非 サ ル 条 、 文 ノ 面 顕 然 也、 仏 光 ト 云 ヘ ハ 、 猶 能 照 ノ 仏 、 所 照 ノ 別 ア ル ヤ ウ ニ 聞 ユ 、 光 仏 ト 云 ヘ ハ 、 能 所 ナ キ 道 理 ア ラ バ レ テ 聞 ユ 、 故 二 仏 光 光 仏 ト 云、 ( 抄 一 ・ 三 三 四 頁 上 〜 下 ) 「仏
光
」 と 言 え ば 、 能 照 の 仏 と 所照
の 世 界 と が あ る か の 如 く に 考 え ら れ る が 、 「光
仏 」 と 打 返 す こ と に よ り 、 そ の よ う な 能 所 は否
定 さ れ、 仏 祖 の 光 明 ( 仏 光 ) が 即 ち 尽 十 方界
で あ る と 説 か れ る 。 尽 十 方 界 が 仏 祖 に ほ か な ら な い の で あ る な ら ぽ、 あ る の は 仏 祖 の み で あ る か ら、 「 尽 仏 尽 祖 な り 、唯
仏与
仏 な り 」 と 言 う こ と も で き る 。 ま た 「 仏 光 」 と 言 え ぽ 、 「 仏 」 と そ こ か ら発
せ ら れ る 「 光 」 と が あ る よ う に も受
け 取 れ る が 、 「 光 仏 」 と 打 返 す こ と に よ り 、 そ の よ う な 理解
も 否 定 さ れ る の は勿
論 で あ る 。 「 仏 祖 は 仏 祖 を 光 明 」 と し て い る の で あ っ て 、 仏 祖 の ほ か に 光 明 が あ る の で は な い 。尽
界
・界
尽 『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) そ れ 尽 界 を も て 尽 界 を 界 尽 す る を 、 究 尽 す る と は い ふ な り。 ( 有 時 一 九 一 頁 ) 界 尽 ト 云 事 ハ 、 尽 界 ト 云 ヘ ハ 、 猶 イ カ ニ モ 打 任 テ 、 世 界 ヲ 置 テ 、 是 二 遍 シ タ ル 様 二 被 二 心 得 一 ヌ ヘ キ 所 ヲ 、 界 尽 ト 打 力 ヘ セ パ 、 能 所 彼 此 ナ キ 道 理 カ ア ラ ハ ル ル 也 、 全 依 依 全 、 乃 至 発 菩 提 心 、 菩 提 心 発 ナ ム ト 云 シ カ 如 シ 。 ( 抄 一 ・ 四 五 一 頁 上 〜 下 ) 「 尽 界 」 と 言 え ぽ、 世界
と、 そ こ に遍
し て い る も の と が あ る よ う に 考 え ら れ る が 、 「 界 尽 」 と 打 返 す こ と に よ り、 そ の よ う な 能 所 彼 此 と い う 相 対 を 否 定 し 、 尽 く が 世 界 で あ っ て 、 世 界 の み な る こ と を 表 わ す 。00
諸 法 実 相 ・ 実 相 諸 法 示 真 実 相 と い ふ は、 諸 法 実 相 の 言 句 を 尽 界 に 風 聞 す る な り 、 尽 界 に 成 道 す る な り 。 実 相 諸 法 の 道 理 を 尽 人 に 領 覧 せ し む る な り、 尽 法 に 現 出 せ し む る な り。 ( 諸 法 実 相 三 六 九 頁 ) 又 諸 法 実 相 ト 云 ヲ、 実 相 諸 法 ト 上 下 シ テ 談 ス レ ハ 、 諸 法 ヲ 置 テ 是 力 実 相 ソ ト 心 得 ラ ル ル 所 ヲ 、 実 相 諸 法 ト 談 ス レ ハ 、 彼 此 能 所 ヲ 離 也 。 ( 抄 二 ・ 一 一 五 頁 下 ) 『 抄 』 の解
釈 で 十 分 で あ ろ う 。 諸 法 と実
相 と が 不 二 同 一 で あ る こ と、 諸 法 が そ の ま ま実
相 で あ る こ と を、 打 返 し の 表現
に ょ っ て 表 わ し て い る 。 ω無
情
説 法 ・ 説 法 無情
無 情 所 説 無 情 な り、 無 情 説 法 即 無 情 な る が ゆ ゑ に 。 し か あ れ ぽ す な は ち 、 無 情 説 法 な り 、 説 法 無 情 な り 。 ( 無 情 説 法 四 〇 一 頁 ) 無 情 ハ 能 説、 此 外 二 所 説 ノ 法 別 ニ ア ル 様 二 、 ヲ ノ ツ カ ラ 僻 見 モ 二 二 五『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) 発 ヌ ヘ キ 所 ヲ 、 無 情 所 説 無 情 也 、 無 情 説 法 即 無 情 ナ ル カ ユ ヘ ニ ト ハ ア ル 也、 無 情 ノ 外 二 又 交 物 ナ ク 、 能 説 所 説 義 ハ ナ レ タ ル 所 カ ア ラ ハ ル ル ナ リ、 仍 無 情 説 法 也、 説 法 無 情 也 ト 被 γ 決 ナ リ、 ( 抄 二
二
五 四 頁 上 〜 下 ) 「 無情
説 法 」 と 言 え ば 、 能 説 の 無 情 と 所 説 の 法 が あ る よ う に 思 わ れ る が 、 「 説 法無
情
」 と 打 返 す こ と に よ り、 「無
情
」 が 即 ち 「説
法 」 で あ っ て 、無
情 の 外 に 所 説 の 法 の なき
こ と を 表 わ し て い る 。面 授 面
受
・受
面 授 面 お よ そ 仏 祖 の 大 道 は、 唯 面 授 面 受 、 受 面 授 面 の み な り 。 ( 面 授 四 五 〇 頁 ) 比 唯 面 授 面 受、 受 面 授 面 ト ハ 、 授 面 ヲ ハ 師 ニ ツ ケ、 受 ヲ ハ 弟 子 ニ ツ ク ル 詞 也、 今 仏 祖 ノ 大 道 ニ ハ 、 只 唯 面 ノ 道 理 力、 授 面 ト モ 受 面 ト モ イ ハ ル ル 也 、 此 面 授 ノ 時 ハ 、 師 資 両 面 不 7 可 二 相 対 → 此 道 理 ナ ル ユ ヘ ハ 、 只 一 面 也、 一 面 ノ 理 ナ ル ユ ヘ ニ , 面 ヲ 以 テ 授 受 ト 談 シ 、 授 受 ヲ 以 テ 面 ト 可 7 云 也 、 ( 抄 二 ・ 二二
頁 上 ) 「 面 授 面 受 」 と は 、 師 と 資 が 面 面 相 対 す る こ と に よ っ て 、 師 か ら資
へ 仏 法 が 伝 え ら れ る こ と で は な く 、 資 が 師 に 入 り 、 師 が資
に 入 っ て 一 体 と な る こ と で あ る ( 拙 稿 「 『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 − 否 定 的 表 現 に つ い て ー 」 『 駒 沢 大 学 仏 教 学 部 研 究 紀 要 』 第 三 五 号 所 収 三 一 二 頁 参 照 ) 。 そ れ 故 、 「受
面 授 面 」 と 打 返 す こ と に よ っ て 、 「 師 資 両 面 相 対 ス 可 カ ラ サ ル 」 こ と、 即 ち た だ 一面
な る こ と を 表 わ す の で あ る 。 二 二 六見
仏
・ 仏 見 あ な が ち に 見 恒 沙 仏 を わ し り へ つ ら ふ こ と な か れ 。 ま つ す べ か ら く 随 師 学 を は げ む べ し、 随 師 学 得 仏 見 な り 。 ( 見 仏 四 八 二 頁 ) 随 師 学 ノ 理 力 、 則 見 恒 沙 仏 ナ ル 上 ハ 、 随 師 学 ヲ ハ ケ マ ハ 、 得 仏 見 ノ 理 ハ 、 ソ ノ 上 ニ ア キ ラ ム ヘ シ ト 云 也 、 見 仏 ヲ 得 仏 見 ト ア リ 、 例 事 也 、 得 見− 仏 ト 云 ヘ ハ 、 猶 旧 見 ニ ト ト コ ホ リ ヌ ヘ シ 、 得 仏 則 ト 談 レ ハ 、 能 見 所 見 ナ キ 也、 ( 抄 二 ・ 二 六 二 頁 下 ) 「 見 仏 」 と 言 え ぽ 、 能 見 の 人 と 所 見 の 仏 と が あ る こ と に な る が、 「 仏 見 」 と 打 返 し て 表 現 す る こ と に よ り、能
所
な き こ と が 示 さ れ る 。ω
抽
華
・ 華 抽 し か あ れ ぽ す な は ち 、 拈 華 裏 の 向 上 向 下 、 自 他 表 裏 等 、 と も に 渾 華 拈 な り 。 ( 優 曇 華 五 三 二 頁 ) 是 ハ 向 上 下 、 向 自 他 向 表 裏 等、 皆 拈 華 ノ 上 ノ 所 談 ナ ル ヘ シ 、 ユ ヘ ニ 渾 華 抂 也 ト 云 フ、 全 華 拈 ノ 理 也、 拈 華 ト ア ル ヲ 華 拈 ト 打 返 サ レ タ リ 、 是 ハ 能 所 ナ キ 道 理 ヲ ア ラ バ サ ル ル ナ リ 常 事 也 、 優 曇 華 力 優 曇 華 ヲ 拈 シ タ ル 道 理 力 、 渾 華 拈 ト ハ 云 ハ ル ル 也 、 ( 抄 二 ・ 四 二 九 頁 下 〜 四 三 〇 頁 上 ) 「 拈 華 」 が 「 華 拈 」 と 打返
さ れ た の も、能
所 な き こ と を表
わ す た め で あ る 。 人 が優
曇華
を拈
ず る の であ
る な ら ば 能所
が あ る が、 打 返 し て 表 現 す る こ と に よ り 、 そ の よ う な 能 所 は否
定 さ れ る 。 そ れ 故、 『 抄 』 が 述 べ る よ う に 、 相 対 す る も の は な く優
曇 華 の み 、 即 ち 優 曇華
が 優 曇 華 を拈
ず る と い う こ と がKomazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty で き る 。
03
火 焔 の 諸 仏 な り ・ 諸 仏 を 火 烙 と せ り 雪 峯 山 真 覚 大 師、 示 衆 云 、 三 世 諸 仏 、 在 二 火 烙 裏 → 転 二 大 法 輪 殉 ( 行 仏 威 儀 五 三 頁 ) 火 啗 裏 に 処 在 す る 時 は 、 火 焔 と 諸 仏 と 親 切 な る か、 転 疏 な る か 。 ( 行 仏 威 儀 五 四 頁 ) 火 啗 ト 諸 仏 親 切 ナ ル 義 ア ル ヘ シ、 火 焔 則 諸 仏、 諸 仏 則 火 焔 ナ ル ユ ヘ ニ 、 又 転 疎 ナ ル 道 理 ア ル ヘ シ 、 火 焔 ハ 火 啗 、 諸 仏 ハ 諸 仏 ナ ル ユ ヘ ニ 、 蔵 身 露 角 三 界 タ タ 心 ノ 大 隔 ナ ム ト 云 、 同 心 ナ リ 、 ( 抄 一 ・ 一 七 四 頁 上 ) 玄 沙 院 宗 一 大 師 云、 火 焔 為 二 三 世 諸 仏 一 説 法、 三 世 諸 仏 立 地 聴 。 ( 行 仏 威 儀 五 四 頁 ) 火 焔 の 諸 仏 な る か 、 諸 仏 を 火 焔 と せ る か 。 ( 行 仏 威 儀 五 七 頁 ) 火 焔 諸 仏 無 二 各 別 義一 ユ ヘ ニ 、 火 焔 ノ 諸 仏 ナ ル カ 、 諸 仏 ヲ 火 焔 ト セ ル カ ト ウ ケ ラ ル ル ナ リ、 イ ツ レ ニ モ ア タ リ タ ル 義 也 、 ( 抄 一 ・ 一 八 一 頁 下 ) は 「 … … な る か、 … … な る か 」 と あ る が 、疑
問文
で は な い ( 拙 稿 「 『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈i
疑 問 詞 と 疑 問 の 助 詞 に つ い て ー 」 『 駒 沢 大 学 仏 教 学 部 論 集 』 第 八 号 所 収 一 七 一 頁 ) 。 火 烙 が 諸 仏 で あ り 、諸
仏 が 火 焔 で あ る こ と を 説 い て い る の で あ る 。 「 諸仏
則 火焔
・ 火 焔則
諸
仏 」 と い う こ と は 、 諸 仏 と 火 焔 と が 異 な る も の で は な く 、 不 二 同 一 な る こ と を 示 し て い る 。 こ れ が の 『 抄 』 で 説 く と こ ろ の 「 親切
の 義 」 で あ る 。 ま た 更 に 「 転疎
の 道 理 」 も あ る と し て、 「 火焔
ハ 火 烙 、 諸 仏 ハ 諸仏
ナ 『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) ル ユ ヘ 一 二 と 説 か れ る 。 し か し 、 こ れ は 親 切 の 義 と 異 な る も の で は な い 。 「 蔵 身露
角 三 界 タ タ 心 ノ 大 隔 ナ ム ト 云 、 同 心 ナ リ 」 と あ る が 、 「 蔵 心 露角
」 「 大 隔 」 は 「 一 方 を証
す る と き は 一 方 は く ら し 」 と 同義
語 で あ っ た ( 拙 稿 「 『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 − 否 定 的 表 現 に つ い て ー 」 『 駒 沢 大 学 仏 教 学 部 研 究 紀 要 』 第 三 五 号 所 収 三 〇 〇1
三 〇 三 頁 ) 。 故 に 、 「 火 焔 ハ 火 焔 、諸
仏 ハ 諸 仏 」 と は 、 火 焔 と 諸 仏 と が 異 な る こ と を 表 わ し て い る の で は な く 、 火 焔 と 諸 仏 と が 不 二 同 一 で あ っ て 、 火 烙 と 言 え ぽ 火 焔 に 対 す る 諸 仏 は な く、 諸 仏 と 言 え ば 諸 仏 に 対 す る 火 烙 は な い 。 即 ち 、 火焔
或 は 諸 仏 の 一 法 究 尽 な る こ と を 表 わ し て い る 。図 作 仏 は 脱 落 ・ 脱 落 な る 図
作
仏 図 作 仏 は 脱 落 に し て、 脱 落 な る 図 作 仏 か 。 ( 坐 禅 箴 九 二 頁 ) 図 作 仏 ハ 脱 落 、 脱 落 ハ 図 作 仏、 只 同 詞 ヲ 打 チ カ ヘ テ 云 也 、 是 ハ 坐 禅 作 仏 ノ ア ハ ヒ 如 γ 此 被 7 云 也 、 ( 抄 一 ・ 二 四 五 頁 上 〜 下 ) 「 図 作 仏 ハ脱
落、 脱 落 ハ 図 作 仏 」 と 『 抄 』 は 述 べ て い る か ら、 本 文 が 「 … … か 」 で終
っ て い て も 、疑
問 文 で は な く 肯 定 文 と し て解
し て い る 。 「 図 作 仏 」 と 「脱
落 」 と を 打 返 し て 、 「 図 作 仏 」 が 「 脱 落 」 に ほ か な ら な い こ と を 示 し て い る 。 こ コ ぬ の 「 図 作 仏 」 は、 南 嶽懐
譲
の 「 坐禅
図 箇 什麼
」 と い う 問 に 対 す る 馬 祖 道 一 の 答 で あ り 、 道 元 禅 師 も 「 坐禅
か な ら ず 図作
仏
な り 」 ( 九 二 頁 ) と述
べ て お ら れ る か ら 、 「 図 作 仏 」 と は 「 坐禅
」 す る こ と で あ り 、 「 坐禅
」 が そ の ま ま 「 脱 落 」 で あ る こ 二 二 七『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) と を、 こ の
打
返 の 表 現 は表
わ し て い る 。古
鏡 に も瑕
生 ・ 瑕 生 な るも
古
鏡
し か あ れ ば 、 古 鏡 に も 瑕 生 な り 、 瑕 生 な る も 古 鏡 な り と 参 学 す る、 こ れ 古 鏡 参 学 な り 。 ( 古 鏡 一 八 四 頁 ) 是 ハ 又 無一 一 風 情 哨 只 古 鏡 与 二 瑕 生 一 一 ナ ル 道 理 ナ リ 、 ( 抄 一 ・ 四 二 一 頁 上 ) 打 返 の 表現
に よ っ て 、 「古
鏡
」 と 「瑕
生 」 と の 同 一 な る こ と を 示 し て い る 。一 心 一 切 法 ・ 一 切
法
一 心 古 仏 い は く、 一 心 一 切 法 、 一 切 法 一 心 。 ( 都 機 二 〇 七 頁 ) 法 与 レ 心 一 ナ ル 道 理 ヲ 被 γ 述 テ、 ( 下 略 ) ( 抄 冖 ・ 五 〇 一 頁 下 ) い は ゆ る 正 伝 し き た れ る 心 と い ふ は 、 一 心 一 切 法 、 一 切 法 ] 心 な り。 ( 即 心 是 仏 四 四 頁 ) 即 心 是 仏 力 即 心 是 仏 二 正 伝 ス ル 也 、 其 心 ノ 姿 ハ イ カ ナ ル ソ ト 云 ヘ ハ 、 一 心 力 一 切 法 ニ テ ア ル 也、 一 切 法 力 一 心 ニ テ ア ル 也 、 只 一 物 ヲ ト カ ク イ ハ ル ル 也 、 法 ノ 甚 深 ナ ル 時 ハ 、 如 此 云 ハ ル 至 テ 親 切 ナ ル 理 也、 猶 ソ レ カ カ レ ト イ ヘ ハ 、 相 対 シ タ ル 心 地 モ ア リ ヌ ヘ シ 非 〆 爾 、 只 一 法 ノ 究 尽 ス ル 理 、 如 此 イ ハ ル 。 ( 抄 一 ・ 一 四 六 頁 上 )二
心 」 と 「 一 切 法 」 と が 、 打 返 の表
現
に よ っ て、 不 二 同 → で あ る こ と を 示 し て い る 。 以 上 打 返 の 表 現 の 一 一 に つ い て 考察
し て き た の で あ る が、 こ の表
現
が 表 わ さ ん と し て い る の は何
ん で あ ろ う か 。 譬 喩 と 二 二 八 し て 用 い ら れ た 「 烈 焔 亘 天 ・ 亘 天 烈焔
」 「 胡 鬚赤
・赤
鬚
胡
」 「 回 頭 換 面 ・ 換 面 回 頭 」 の よ う に 、打
返
し て も そ の意
味 が 変 ら な い も の は、 も と の こ と ぽ と 、打
返 し た こ と ぽ の 意 味 が 等 し い と い う と こ ろ に 、 そ の 表 現 が 用 い ら れ た 理由
が あ る 。 し か し 、 そ の よ う な特
殊
な 用 例 以外
は、 譬 喩 と し て の 場 合 で あ れ 、 そ れ 以 外 で あ れ 、 例 え ば 、 「AB
」 と い う 語 順 の こ と ば を 「BA
」 と打
返 す こ と に よ っ て 、A
とB
と は能
所 彼 此 相 対 す る も の で は な く 、 不 二 同 一 で あ る と い う こ と を表
わ し て い る と 言 え る の で は な か ろ う か 。確
か に二
心 一 切 法 」 を 「 一 切 法 ] 心 」 と打
返 す こ と に よ り 、 「 一 心 」 と 「 一 切 法 」 と が 不 二 同 一 で あ る と い う こ と は 理解
し 得 る が 、 「 伝 法 」 「 伝 衣 」 「 拈華
」 「 見 仏 」 な ど 、 「 動 詞 (A
) + 目 的 語 (B
) 」 の 場 合 も 、A
とB
と が 不 二 同 一 で あ る と 言 え る か ど う か が 問 題 と し て 残 る 。 だ が 、 そ れ ら の 場合
も 、 他 の 者 が伝
え た り 拈 じ た り 見 た り す る の で は な く 、 打 返 の表
現 に よ り能
所 彼 此 が 否 定 さ れ、 そ の も の が そ の も の を伝
え 、 枯 じ、 見 る の で あ る か ら 、 伝 え 、拈
じ 、 見 る の は、 そ の も の に ほ か な ら な い こ と に な る 。 そ れ 故 、 「 法 ・ 衣 」 が 「 伝 」 、 「華
」 が 「 拈 」 、 「 仏 」 が 「 見 」 で あ る と 言 う こ と も で き る 。 こ の よ う に 、 や は り こ の 場 合 もA
とB
と は 不 二 同 。 で あ る と 言 う こ と が で き る 。 以 上 の よ う に 、 打 返 の 表 現 は、 一 般 的 に 、 「AB
」 と い うKomazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 語 順 の こ と ぽ を 「
BA
」 と 打 返 す こ と に よ り 、 二 同 一 な る こ と を 示 す も の で あ る と 言 え よ う 。 三 身 心 脱落
・ 脱 落 身 心A
とB
と の 不打
返
の 表 現 を 見 て い る と 、如
浄 禅 師 が 巡 堂 し て打
睡
し て い る僧
を 、 「 坐 禅 者 身 心脱
落
也、 祗管
打 睡 恁 生 ( 為 二 什摩
ヵ ) 」 と警
策 し た 時、 道 元禅
師 は隣
単 に あ っ て こ れ を 聞 き 、 豁 然 と し て 大 悟 し 、 そ の 後 、 方 丈 に行
き 焼 香 礼 拝 し て如
浄
禅
師 に 所 懐 を披
瀝 し 、 如浄
禅 師 も そ れ を 証 明 し た と さ れ る 時 の こ と ば が 想 い起
こ さ れ る 。 そ の 部 分 を あ げ れ ぽ 次 の よ う で あ る 。 天 童 五 更 坐 禅、 入 堂 巡 堂、 責 二 衲 子 坐 睡 一 云 、 坐 禅 者 身 心 脱 落 也、 祇 管 打 睡 恁 生、 師 聞 豁 然 大 悟 、 早 晨 上 二 方 丈 → 焼 香 礼 拝 、 天 童 問 云、 焼 香 事 作 麼 生、 師 云 、 身 心 落 々 ( 脱 落 力 ) 来 、 天 童 云 、 身 心 脱 落 、 脱 落 身 心 、 師 云 、 這 爾 ( 箇 力 ) 是 暫 時 伎 倆 、 和 尚 莫 三 乱 印 二 某 甲 → 童 云、 吾 不 二 乱 印 7 禰、 師 云、 如 何 是 不 二 乱 印 一 底 、 童 云 、 脱 落 々 々、 ( 『 永 平 寺 三 祖 行 業 記 』、 『 曹 洞 宗 全 書 』 史 伝 上 三 頁 上 ) 道 元 禅 師 の 「 身 心脱
落
」 と い う答
に 、如
浄 禅 師 は 「 身 心 脱落
、 脱 落 身 心 」 と 証 明 を 与 え て い る が、 こ れ は ま さ に 打 返 の 表 現 と 言 え よ う 。 「 身 心 脱 落 、 脱落
身 心 」 と い っ て も 、 身 心 が 脱 落 す る の で は な い 。 打 返 の表
現 と い う こ と か ら 考 え る な ら ば 、 身 心 と 脱 落 と は 異 な る も の で は な く 、 身 心 は 脱 落 の 身 心 で あ る と い う こ と に な る 。 こ の 「 坐 禅 者 身 心 脱 落 也 」 「身
心 脱落
、 脱 落 身 心 」 の こ と 『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) ば に 対 し て 、 . 更 に 先 の 項 の口
で 取 り 上 げ た 、 同 じ 坐
禅
に関
す る こ と ぽ が 想 い 出 さ れ る 。 そ れ は 、 図 作 仏 は 脱 落 に し て 、 脱 落 な る 図 作 仏 。 で あ る 。 坐禅
は 図 作 仏 であ
っ た か ら 、 「 坐 禅11
図作
仏11
脱落
」 と い う こ と が で き る 。 こ れ と 「 坐禅
者 身 心 脱 落 也 」 ( 坐 禅11
身 心 脱 落 ) と を 、 ま た 「 図作
仏 は 脱 落 に し て 、 脱 落 な る 図作
仏 」 と 「身
心脱
落 、 脱 落 身 心 」 と を 対 比 す れ ば 、 「 図 作 仏 」 を 「 身 心 」 と置
き換
え る こ と に よ っ て 、 「 身 心脱
落 、 脱落
身
心 」 は 、次
の よ う に 読 む こ と が 可 能 で あ る こ と に 気 付 く で あ ろ う 。 身 心 は 脱 落 に し て 、 脱 落 な る 身 心 。 こ の 読 み 方 は 、 打 返 の 表 現 と い う 上 か ら の 理 解 と 一 致 す る 。如
浄 禅 師 は更
に、 「 脱 落 々 々 」 と 述 べ ら れ て い る が 、 こ れ は 、 『 抄 』 が 先 の 項 の⇔
で、 「 火 焔 則 諸 仏 」 を 「 諸 仏 則 火 焔 」 と打
返 し、 更 に 「 火 焔 ハ 火 焔 」 「 諸 仏 ハ 諸 仏 」 と し た 例 に同
じ で あ る 。身
心 を 脱 落 す る の で は な く、 身 心 が 即 ち 脱落
で あ る な ら ば、 そ こ に は 脱 落 の ほ か に身
心 は な い か ら、 「 脱 落 々 々 」 と 答 え ら れ た の で あ ろ う 。 こ の よ う に 、 「 身 心 脱落
、 脱 落 身 心 」 は 、 本 稿 で考
察 し て き た 打 返 の表
現 で あ る と 言 う こ と が で き る 。 四 お わ り に 二 二 九『 御 抄 』 の 『 正 法 眼 蔵 』 解 釈 ( 伊 藤 ) 以 上 「 打 返 の 表 現 」 が