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(1)

1

平成 22 年度

内閣官房情報セキュリティセンター委託調査

情報システムのサプライチェーンにおける 情報セキュリティに関する調査

財団法人未来工学研究所 平成

23

年3月

(2)

2

情報システムのサプライチェーンにおける情報セキュリティに関する調査

1. 情報システムのサプライチェーンのセキュリティ問題の概要 1.1 情報システムのサプライチェーンの定義

1.2 サプライチェーンのセキュリティ課題が登場した背景 1.3 情報システムのサプライチェーンの概念図

2. サプライチェーンの情報セキュリテ問題の最近の動向と将来予測

2.1 米国におけるサプライチェーンの情報セキュリティの最近の動向と将来予測

2.1.1 米国の商務省・NISTによる情報サプライチェーン管理政策の近年の動向

2.1.2 米国の国土安全保障省による情報サプライチェーン管理政策の近年の動向

2.1.3 国防総省による情報サプライチェーン管理政策の近年の動向

2.1.4 大統領のサイバーセキュリティ・イニシアティブにおけるサプライチェーン課題

2.1.5 NISTIR 7622文書

2 .1.6 日本企業に関わる米軍サプライチェーンの情報セキュリティ課題の一事例

2.2 欧州におけるサプライチェーンの情報セキュリティの最近の動向と将来予測 2.2 欧州におけるサプライチェーンの情報セキュリティの最近の動向と将来予測

2.2.1 ENISA の研究開発課題におけるサプライチェーンの情報セキュリティの提起

2.2.2 ENISA Quarterly Reviewにおけるサプライチェーン課題の提起

2.2.3 EU の研究開発計画(PRCENT)における「サプライチェーン統合」の登場 2.3 わが国におけるサプライチェーンの情報セキュリティの最近の動向と将来予測

2.3.1 わが国における近年のサプライチェーン問題の認識の推移

2.3.2 「第2次情報セキュリティ基本計画」におけるサプライチェーン課題の認識

2.3.3 「サイバーセキュリティと経済」研究会におけるサイバーセキュリティ課題の認識 3.サプライチェーンが重要インフラの情報セキュリティにもたらす影響の考察

3.1 米国における考察

3.1.1 サイバーセキュリティ・イニシアティブにおけるサプライチェーン関連技術開発

3.1.2 国防総省の視点から見たサプライチェーンリスク管理の標準化

3.1.3 IT技術の歴史的発展から見たサイバー・サプライチェーンへの一考察

3.2 欧州における考察

3.2.1 欧州サイバー研究開発計画におけるサプライチェーン統合についての記述 3.3 わが国における考察

3.3.1 「サイバーセキュリティと経済」研究会における山口委員の議論 4. 今後の取り組みに向けた提言

5.文献一覧

(3)

3 1.サプライチェーンの情報セキュリティ課題の概要

1.1 サプライチェーンの定義

20106月に公表されたNISTIR 7622ドラフト、Piloting Supply Chain Risk Management Practices for Federal Information Systems”は、サプライチェーンに以下のような簡 潔な定義を与えている。

本報告書において、サプライチェーンとは、製品やサービス(サブエレメントを含む)を 生産し、移動して、サプライヤから組織の顧客に供給するための組織、人、活動、情報及 び資源を意味する。

http://csrc.nist.gov/publications/drafts/nistir-7622/draft-nistir-7622.pdf

1.2 サプライチェーンの情報セキュリティが課題として登場した背景

サイバー・サプライチェーン・セキュリティという概念は、1980年代末に米国で導入さ

れたTrusted Product Evaluation(高信頼製品評価)制度に始まる。当時の米国の関心は、

防衛関連装備の調達において、そのコンポーネントや部品に民生品の採用が進んだ(いわ ゆるCOTS1)ことによって、民生品の信頼性が問われるようになったことにあった。ま た、この頃に日本や欧州各国などの技術水準の上昇によって、米国産品だけによる装備品 のコンポーネントや部品の調達が困難になったという事情(調達のグローバル化)もその 背景にあった。

NCSC-TG-002, Trusted Product Evaluation, A Guide for Vendors, March 1988 http://www.fas.org/irp/nsa/rainbow/tg002.htm

その後、1990年代後半以降のIT技術の劇的な発展過程で、サーバ、PC、ルータ、IC チップなどのIT関連ハードウェアの価格が下落し、安価な民生用品が防衛装備などの政 府調達システムに大量に採用されることとなり、ソフト面また、WindowsLinuxなど のオープンOSや汎用ソフトウェアが、大型メインフレーム時代以来のいわゆるレガシ ーシステム中に大量に導入されることとなった(IT調達のオープン化)

さらに2001年の9.11事件において重要インフラがテロ攻撃の手段や対象になり、その 防護が国家的重要課題として浮上し、その後も相次いだ政府システムや重要インフラへ のサイバー攻撃が、サプライチェーンのセキュリティ課題の重要性を一層広く認識させ ることなった。

以上に述べたように、COTS化、グローバル化、オープン化という三つの背景と、重 要インフラへの攻撃の頻発が相まって、この課題の重要化に至ったといえる。

本報告書では、サプライチェーンのセキュリティという幅広い概念のうち、情報シス テムに関わるサプライチェーンのセキュリティについて主として論及する。また、この 課題が近年米国において急速に関心を集め、対策も次々と公表されてきたので、本報告

1 COTS=Commercially off the Shelf, 民間が開発したソフトウェアを政府部門が購入してそのまま使 用すること

(4)

書で るこ

1.3 しば用 構築 情報 と考 訳し

図表

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(5)

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COTS サプライヤ 再使用 不明のサプライヤ群 外注 不明のサプライヤ群 内製 不明のサプライヤ群 調達 不明のサプライヤ群 ENGINEERING FOR SYSTEM ASSURANCE Version 1.0 National Defense Industrial Association http://www.ndia.org/Divisions/Divisions/SystemsEngineering/Documents/Committees/

Systems%20Assurance%20Committee/2008/SA-Guidebook-v1-Oct2008-REV.pdf

上の二つの図が示しているように、情報システムのサプライチェーンが、システムの下 部要素に行けば行くほど、その開発が、調達者である政府機関やそのプライム・コントラ クタであるシステム・インテグレータの目を離れ、開発者の実体が定かではない国内外の サプライヤの手にゆだねられるという現実が存在している。政府情報システムの調達や開 発におけるこのような現状の下で、システムの情報セキュリティをいかに担保するかが、

情報システムのサプライチェーンにおける情報セキュリティ課題の本質であると考えられ る。

(6)

6 2.サプライチェーンの情報セキュリティ問題の最近の動向と将来予測

2.1 米国におけるサプライチェーンの情報セキュリティの最近の動向と将来予測

2.1.1 米国の商務省・NISTによる情報サプライチェーン管理政策の動向

1.2で述べたサプライチェーンにおけるCOTSの拡大、グローバル化、オープン化という 三つの傾向を背景に、1996 年に施行された「情報技術マネジメント改革法」の第5131 で、連邦政府の調達するIT機器に関わる「標準とガイドライン」の設定が求められている。

http://govinfo.library.unt.edu/npr/library/misc/s1124.html

また、9.11テロ後の2002年には、「2002年連邦情報セキュリティマネジメント法=法律 107 347」が制定された。

http://csrc.nist.gov/drivers/documents/FISMA-final.pdf

この二つの連邦法の下で商務省・NISTの手で策定されたのが、2004年2月公布の「連邦 情報処理規格=FIPS199」、及び2006年3月公布の「FIPS200」であった。FIPS199は「連 邦政府の情報および情報システムに対する最低限のセキュリティ分類規格」を定めたもの であり、FIPS200は「連邦政府の情報および情報システムに対する最低限のセキュリティ 要求事項」を定めたものである。この二つの規格については、米国政府の調達に応じる外 国企業が順守しなければならない情報セキュリティ基準として、わが国の情報処理機構

(IPA)の手によって訳出されている。

http://www.ipa.go.jp/security/publications/nist/documents/FIPS-200-J.pdf http://www.ipa.go.jp/security/publications/nist/documents/FIPS-199-J.pdf

さらに、20098月にはNISTから「連邦情報システムと組織に推奨されるセキュリテ ィコントロール」と題する特別出版800-533版が刊行された。239ページに及ぶ大部の

NIST800-53文書は、FIPS199FIPS200と並んで、連邦政府の情報システムの調達に際

するセキュリティ順守の基準を定めるものとなっている。NIST800-53は下の図表2-1を掲

げて、FIPS199FIPS200と連動した情報リスクマネジメント戦略のフレームワークのサ

イクルを描いている。

(7)

図表

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2-1 NIST

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(8)

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2.1.3

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(11)

11 られており、特に以下の5項目について詳しくガイダンスが定められている。

①システム要素の重要性

②サプライヤのリスク評価

③オフザシェルフ(OTS)COTS及びGOTS

④カスタムシステム

⑤信頼できるIC半導体

http://www.acq.osd.mil/se/docs/SA-Guidebook-v1-Oct2008.pdf

例えば、①システム要素の重要性評価については下の図表2-5による分類が求められている。

図表2-5 システム要素の重要度評価基準

重要度 定義 許容度

最高 システム内のシステム又は要 素の不具合が、直接ミッション /ビジネスの能力を低下させ、

ミッション/ビジネスの失敗を もたらす。

秒 単 位 か ら分単位

オンラインの防衛関連トランザ クションへのDoS攻撃

高い システム内のシステム又は要 素の不具合が、システムのミッ ション/ビジネスの能力を深刻 に低下させる可能性がある

分 単 位 か ら 時 間 単

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中間 システム又は要素の不具合が、

システムのミッション/ビジネ スの部分的または特定可能な 能力を低下させる可能性があ

時 間 単 位 か ら 日 単

ITシステムの不具合による都市 交通信号の機能喪失

低い システム又は要素の不具合が、

不都合をもたらす可能性があ

日単位

上の表によって決定された重要性レベルに応じて、必要なソフトウェアアシュアランス を与える必要があり、ソフトウェアの重要性のレベルについては、”DoD Instruction 8500-2”

が各々の定義を与えているとしている。

2.1.4 大統領のサイバーセキュリティ・イニシアティブにおけるサプライチェーン課題

2009 10 月、オバマ大統領はサイバーセキュリティに対する包括的な政策を発表した

(12)

12

(Comprehensive National Cybersecurity Initiative=CNCI)。このなかで大統領府は米 国のサイバーセキュリティに関わる12の課題を指摘し、国家政策の焦点を明らかにしてい る。「サプライチェーンのリスク管理」は、第 11 番目の課題として登場している。下の図 2.6CNCIの指摘する12の課題を掲げる。

図表2-6 CNCIの掲げるサイバーセキュリティ12の課題

#1 信頼できるインタネット接続を備えた単一の連邦政府ネットワークの管理

#2 連邦政府システム全体に及ぶセンサーによる侵入検出システムの展開

#3 連邦政府システム全体に及ぶ侵入防止システムの展開の追及

#4 研究開発(R&D)努力の調整と再指向

#5 状況認識力の強化のために現存するサイバー運用センターを結合させる

#6 政府全体に及ぶサイバー・カウンターインテリジェンス(CI)プランの開発 と実施

#7 米国の機密ネットワークのセキュリティ強化

#8 サイバー教育の拡充

#9 耐久性のある「飛躍的」技術、戦略、計画を定義し開発する

#10 耐久性のある抑止の戦略と計画を定義し開発する

#11 グローバルに多数に枝分かれしたサプライチェーンのリスク管理

#12 重要インフラドメインへのサイバーセキュリティの拡大への連邦政府の役 割の定義

The Comprehensive National Cybersecurity Initiative、white house, Oct. 2009 http://www.whitehouse.gov/cybersecurity/comprehensive-national-cybersecurity-initiati ve

#11 のサプライチェーンのリスク管理については、「サプライチェーンをよりよく管理し、

リスクを緩和する強固なツールセットを提供し、連邦政府の技能、政策、プロセスを強化 する」ことが目標として掲げてられている。

2.1.5 NISTIR 7622文書(DRAFT)

20106月、NISTは「連邦情報システムのためのチェーンリスク管理の実施を先導す る」と題するNIST IR(Interagency Report)7622DRAFT(草案)を公表した。NISTIR 7266は草案とはいえ、現時点においてサプライチェーンのセキュリティに関する最新文献 であり、サプライチェーンリスク管理に関する極めて詳細な文書となっているので、本項 でその概略をやや詳細に紹介する。

この報告書は3章構成になっており、1章で報告書の性格を紹介し、2章がサプライチ ェーンリスク管理の手段、3章がサプライチェーンリスク管理の対策となっている。以下、

(13)

13 各章ごとに図表の形で大略を抄訳する。

図表2-7 NISTIR 7266の目的、対象、背景、ライフサイクル基準、前提条件

1.1目的 本書の目的は、連邦政府規定によりインパクトレベルが高いと区分された 情報システムへのサプライチェーンの脅威を低減するための対策リスト を提供すること。

1.2 対象 サプライチェーンには、製品のライフサイクルである設計、開発、調達、

システム統合、システム運用及び廃棄が含まれる。人、プロセス、サービ ス、製品やその構成要素は、すべてサプライチェーンに影響しうる。本書 は、そのようなライフサイクルを通じたサプライチェーンリスクへの対処 を対象とする。

1.3 背景 これまで本報告書で記述してきたので省略する 1.4 ライフサイ

クル基準

ラ イ フ サ イ ク ル 基 準 に つ い て は NISTSP 800-64 Rev2 Security Considerations in the System Development Life Cycle を参照する。

http://csrc.nist.gov/publications/nistpubs/800-64-Rev2/SP800-64-Revis ion2.pdf

1.5 成功するサ プ ラ イ チ ェ ー ン リ ス ク 管 理 の前提条件

サプライチェーンリスクマネジメントを効果的に実施するには、システム 設計や運用の基本的な取組が前提となる。例えば、セキュリティ要件をラ イフサイクルの初期から組み込むこと、途中経過を適切に記録すること、

危機管理計画にサプライチェーンを位置付けること、委託先を適切に管理 すること等が前提となる。

2-8 NISTIR 726の示すサプライチェーンリスク管理の手段

2.1 サプライチ ェ ー ン リ ス ク 管理能力

サプライチェーンリスクマネジメントを機能させるには、情報システム セキュリティ、情報システム管理、調達、法務の各部門によるチームア プローチが必要である。

2,2役割と責任 サプライチェーンに関わる役職や部門には次のようなものがある:経営 者、CIO、契約管理者、契約担当者(技術担当)、法務アドバイザ、リス ク担当役員、事業責任者・担当者、情報システム管理者、CISO、情報シ ステムセキュリティ管理者、IT 投資役員会。

2.3 サプライチ ェ ー ン リ ス ク 管 理 能 力 の 実

サプライチェーンリスクマネジメント機能の実施に当たっては、第 1 に、

サプライチェーンリスクを特定し、コスト、性能、スケジュール等のリ スクとのトレードオフを行ってサプライチェーンリスクマネジメントに 関する要求を定める(第 3 章は、サプライヤやインテグレータに対する 一般的な又は技術的な要求のソースとして使用できる)。第 2 に、可能性

(14)

図表

図表 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 3.10 3.11 3.12

2-8 NISTIR

2-9 NIST インテ 使用し サプラ 信頼性 多様性 重要な 防護性 サプラ 構成要 外部サ システ システ

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14 画、実 継続的 連邦政 は、上

(15)

15

3.13 人をサプライチェーンの一部と考える

3.14 サプライチェーンに関する意識啓発、人の教育・訓練を行う

3.15 サプライチェーンの配送メカニズムを強化する

3.16 運用システムを防護し、モニタし、監査する

3.17 要求の変更について交渉する

3.18 サプライチェーンの脆弱性を管理する

3.19 ソフトウェア更新時やパッチ適用時のサプライチェーンリスクを低減する

3.20 サプライチェーンインシデントに対応する

3.21 廃棄時のサプライチェーンリスクを低減する

2 .1.6 日本企業に関わる米軍サプライチェーンの情報セキュリティ課題の一事例

この項では、調達システムオープン化およびそのサプライチェー問題の一例として、

米国空軍研究所のスーパーコンピュータシステムに関わる事例を紹介する。

米国ニューヨーク州ローマ市に立地する空軍研究所は、そのスーパーコンピュータシ ステムの演算クラスタの一部として、約1700台のソニー製PS3(各160GB)を購入し、

Linux上で動く500テラFLOPSのスーパーコンピュータクラスタとした。このスーパー

コンピュータの用途は、合成開口レーダー(SAR)の画像情報処理である。PS3の購入 価格は総額663000ドルであり、この価格はインテル社製のXeonを用いたクラスタ構 成よりも一桁安価なコストであるという。

しかし、米空軍が購入契約を結んだ数カ月後、SonyPS3OSgameOS)のアッ プグレードを行うとともに、今後PS3Linuxをサポートしないと発表した。空軍研究 所のシステムはPS3ネットワークから切り離されているので、自動的にファームウェア を書きかえられる心配はないが、コンポーネントが故障して返送修理をメーカーに依頼 した際にファームウェアが書きかえられ、Linuxが動かなくなることが心配されている。

下に米空軍スーパーコンピュータシステムの写真と、この問題について論じた2つのメ ディア記事を情報源として挙げた。

(16)

図表

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(17)

17 2.2.2 ENISA Quarterly Reviewにおけるサプライチェーン課題の提起

ENISAは4半期毎のレビュー(ENISA Quarterly Review)を刊行しているが、その2010 年第1号(20103月発行)において初めてサプライチェーンについての議論が行われて いる。以下、「サプライチェーンの統合」と題する、スラボミール・ゴルニアクの論文が特 筆している「サプライチェーン統合にともなう課題」と「サプライチェーンリスクのキー ファクター」を紹介する。同論文は課題として7点、キーファクターとして4点を指摘し ている。

ENISA Quarterly Review, vol. 6, no. 1

http://www.enisa.europa.eu/publications/eqr/issues/eqr-q1-2005-vol.-6-no.-1

・サプライチェーン統合にともなう幾つかの課題

① グローバルに分散したサプライチェーン(人、プロセス、技術)の複雑な性格

② ICTサプライチェーンに共通したガイドラインの欠如

③ 統計的な確信レベルとITエコシステム全体を通じて統合性を認証するツール、プロセ ス、コントロールの欠如

④ エンドユーザにとっての非効果的な製品評価の方法論と技術

⑤ 偽造や偽装によるシステムへの侵入を検出し、または打破できる、幅広く適用できる ツール、テクニック、プロセスの欠如

⑥ 購入によって生産され運用・使用されている、異なったタイプの製品の統合を維持す るための協同的アプローチの欠如。

⑦ ICTの各種の分野を越えた統合的要求の調和を引きだし得る、共通のビジネスモデルの 欠如。

・サプライチェーンリスクのキーファクター

① 生産、配送、購入、導入および導入された製品とシステムの維持などの全サプライチ ェーンの設計を通じて、継続的に実行され明確に定義された製品とサービスへの要求

② アップストリームの要求を遵守したコンポーネントの評価と実証のための方法論

③ ソルージョンの組立と導入時、及び製品の適切な(定義されるべき)ライフサイクル 時期における、ハードウェアとソフトウェアのコンポーネント・パーツの出自(確認され た起源)と真実性を評価する能力。

④ その元来の意図された利用モデル全体を通じた、システム、コンフィギュレーション、

運用パラメータの統合性を防護し維持する手段

2.2.3 EUの研究開発計画(PRCENT)における「サプライチェーン統合」の登場

2010年の4月、EUは先に触れた研究開発の優先分野を特定したPROCENTと称する情報セキ ュリティ関連研究開発プロジェクトを公表した。この報告書では、今後3~5年の優先開

(18)

18 発課題として5つの分野が挙げられ、サプライチェーンの統合はその第5番目に登場して いる。これら5つの分野とは、①クラウド・コンピューティング、②リアルタイム検出・

診断システム、③将来型無線ネットワーク、④センサネットワーク、⑤サプライチェーン の統合、である。なお、⑤サプライチェーン統合に関する課題の詳細については、本報告 書の3.2で述べることとする。

“Priorities for Research on Current and Emerging Network Trends”

http://www.enisa.europa.eu/act/it/library/deliverables/procent

2.3 わが国におけるサプライチェーンの情報セキュリティの最近の動向と将来予測

2.3.1 わが国における近年のサプライチェーン問題の認識の推移

経済産業省が「設計と製造の無駄を見える化」を掲げて取り組んできた「サプライチェ ーン省資源化連携促進事業」のように、わが国ではサプライチェーンは長く物流やモノづ くりに関わる問題としてとらえられることが多かった。オープン化・グローバル化が進む サプライチェーンを情報セキュリティ問題と結び付けて考えることは、最近に至るまでほ とんど行われてこなかった

2.3.2 「第2次情報セキュリティ基本計画」におけるサプライチェーン課題の認識

わが国の情報セキュリティに関する基本プランは「情報セキュリティ基本計画」である が、2006年の「第1次基本計画」においてはサプライチェーンのセキュリティへの言及は まったくなかった。その後2009年2月に樹立公表された「第2次基本計画」において、幾 つかの箇所でサプライチェーンの情報セキュリティについての論及がなされるに至った。

サプライチェーンの課題は、対策実施4領域の「企業」の項、横断的な情報セキュリテ ィ基盤の「国際連携・協調」の推進の項で、「企業の領域においては、グローバル化に伴う 企業活動の細分化、専門化が更に進展し、海外へのアウトソーシング、直接投資が拡大し ている。製品・サービスは、少なからぬ部分が IT を活用したグローバルなサプライチェー ンを経て製造、提供されている。経済活動は国家の領域を超えて行われており、世界にお ける情報セキュリティ対策の推進という観点から、グローバル企業の果たす役割は拡大し ている」と言及されている。この時点においては、サプライチェーンは、主としてグロー バルな企業活動の問題として認識されていたように思われる。

http://www.nisc.go.jp/active/kihon/pdf/bpc01_ts.pdf http://www.nisc.go.jp/active/kihon/pdf/bpc02_ts.pdf

2.3.3 「サイバーセキュリティと経済」研究会におけるサイバーセキュリティ課題の認識 2010 12 月に第1回が開催された経産省の「サイバーセキュリティと経済」研究会で は、検討課題として 5 つの項目が掲げられている。①標的型攻撃への対処、②制御システ ムの安全性確保、③企業等の機密漏えい対策、④サイバーセキュリティ産業の強化、⑤そ

(19)

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