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「みんな違ってみんないい」社会をめざして

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Academic year: 2021

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巻 頭 言

発達障害という言葉が、世の中に飛び交うようにな って 10 年以上が経過した。未だに知的障害者と同 義であると勘違いしている企業経営者がいることに 驚くことが多いが、それでも、社会啓発が進み、多 くの公的機関では、一定の理解が進んできている。

発達障害は、元々持って生まれた特性であると考え られ、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動 症(ADHD)、限局性学習症(LD)に知的障害を加 えた総称であるが、現在社会問題となっているのは、

この中の知的障害を伴わない、むしろ知的に高い「少 し変わった人」の中に発達障害児者が多く含まれ、

その数が年々増加していると言われている点である。

教育現場では平成 24 年度文部科学省の全国調査で 知的に遅れの無い通常学級に在籍する小・中学校の 児童生徒の内、発達障害疑いの割合が 6.5%と報告 され、社会に衝撃を与えた。発達障害児者が増えて いると言われる理由については、生物学的に増加し ているという説、社会環境の変化、社会啓発の促進 など、複数の要因が挙げられているが、いずれも単 独で、説明できるものはなく、これら要因が複雑に 絡み合って起きていると考えられている。発達障害 は生まれつきの特性によることから、「発達障害児 者の見たり感じたりしている世界は、定型発達児者 の見たり感じたりしている世界と異なっている(違 っている)こと」を自他ともに理解していないと、

その違いの程度や種類によって様々な場面で衝突や 困り感が生じ、不適切な関わりは、二次、三次障害 に発展する。医療的関与が必要な重いケースから日 常のほんの少しの気遣いで回避できる軽いものまで 様々であるが、大事なことは、生後できるだけ早い 時期からその特性に気づき、早期に介入することが 最も有効であるという事である。これは欧米の研究 から明らかであるが日本は大きく遅れている。問題 点は、発達障害を専門的に診断できる医師・専門機 関の絶対的不足、人と同じでなくてはならないとい う我が国独特の文化、障害という言葉に対する非常 にネガティブなイメージなどが挙げられる。また、

発達障害を含む「脳とこころ」の諸問題を取り扱う 専門家は、多岐にわたっており、医師は教育や支援 現場を知らず、教師は、医療的知識が充分でないな ど、専門家を頼る子ども達、保護者、患者たちが、

誰の意見を信じて良いのか分からず混乱するケース が続いてきた。そこで、これら専門家が等しく科学 的根拠を持ってそれぞれの専門性を活かせるような 新たな学問を創造し、教育・研究を行い得る機関と して、平成18 年に浜松医科大学との連携融合事業「子 どものこころの発達研究センター」が発足し、平成 24 年度には、大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・

千葉大学・福井大学の 5 大学による連合大学院(連 合小児発達学研究科)と各校にセンターを持つ組織 に発展し、最新の神経科学から、多様な脳画像研究、

大規模なコホート、疫学研究、そしてこれら科学的 根拠を利用した様々な支援法、認知行動療法等まで、

文理融合・学際的教育、研究、社会貢献活動を展開 する日本で唯一の研究科となった。H28 年度から「障 害者差別解消法」が施行され、様々な「合理的配慮」

を多くの職場で求められるようになる。そのため発 達障害のように外から見えない障害ではアセスメン トによる「共通の物差し」を挟むことで、お互い「ど

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生 産 と 技 術  第67巻 第3号(2015)

「みんな違ってみんないい」社会をめざして

片 山 泰 一

Striving for society All are different, all are wonderful

Key Words:developmental disorder, child development, ASD, ADHD, LD

 Taiichi KATAYAMA 1964年7月生

京都薬科大学 薬学研究科 修士課程 修了(1990年)

現在、大阪大学 大学院 大阪大学・金 沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井 大学 連合小児発達学研究科

研究科長・教授 博士(医学) 神経化学 TEL:06-6879-3313

FAX:06-6879-3313

E-mail:katayama@ugscd.osaka-u.ac.jp

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こが」「どのように」「どのくらい」違うのかを客観 的に知る(可視化する)ことが重要であり、そのた めには、科学的根拠を利用した社会、企業のシステ ム作りが求められている。発達障害児者が暮らしや

すい社会は全ての人々が暮らしやすい社会であり「み んな違ってみんないい」社会を実現するために我々、

連合小児発達学研究科は様々な科学的根拠を提供し て貢献していきたい。

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生 産 と 技 術  第67巻 第3号(2015)

参照

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