交流電力回路への電気二重層コンデンサの 適用に関する基礎的検討
日大生産工 ○愛澤 忠良
1 まえがき
電気二重層コンデンサは従来形コンデンサ に対して105倍程度の大容量を有し、その 特長を活用して無停電電源装置で従来の蓄電 池の代用として使用される等、電力分野での 適用が年々増加している。しかし、同コンデ ンサは現時点では直流用のみのため、進相コ ンデンサとしての適用はなされていない。
筆者らは電気二重層コンデンサを交流電力 回路で進相コンデンサとして活用することを 主体として基礎的な検討を始めたので二、三 の検討経過を報告する。
2 進相コンデンサ
高圧需要家の進相コンデンサ (以下、SCと 呼称する) は従来高圧側に設置するのが通常 であった。しかし、昭和末期から平成のはじ めにかけて多発した高圧需要家進相設備への 高調波障害(1), (2)の波及を回避するため、SCの 低圧側設置が推奨され(2),(3)今日に至っている。
SCを低圧側に設置すると、高調波対策面と進 相設備の稼動 (投入・しゃ断) 面でメリット があるが、設置台数の増加とSC静電容量の増 大 (無効電力を同一として、静電容量比で高 圧側設置の1000倍程度) 等の問題も発生 する。本研究では静電容量面での問題点を解 決するため、SCへの電気二重層コンデンサの 適用を検討した。
3 進相コンデンサとしての適用法
直流用のコンデンサを交流用のコンデンサ と同様に交流回路で無効電力発生用として使 用するためには、交流電源の半周期以内でコ ンデンサへの充放電を行わねばならない。こ のような動作をさせるための基本回路例を図 1(a)~(b)に示す。両図でLoとroは配電線路側 の等価的なインピーダンスで、SW1~SW4 はそれぞれ消弧機能を有したGTOサイリスタ あるいはIGBT等とする。
(a) 回路例-1
(b) 回路例-2
Fig.1 電気二重層コンデンサの交流回路
での適用法の一例
(a) 補償無しの場合 (b) 補償有りの場合
Fig.2 電気二重層SC回路の電流波形例
The Basic Study on the Application of Electric Double Layer Condenser to the AC Power Circuit
Tadao AIZAWA
なお、図中に併記した補償電流発生回路は、
コンデンサ電流が放電電流から充電電流に移 行時の電源電流波形の不要振動を相殺するた めの電流発生回路で、同回路の有無がコンデ ンサ電流波形に及ぼす影響例を図2に示す。
<補償電流発生回路の動作>
補償電流発生回路は図3に示すように、R
-L-C直列回路に交流電圧を印加した際の 過渡振動電流の正負各半波の最初の振動波形 のみを抽出する回路で、この部分の電流はL, Cから定まる通流幅を有した正弦パルス状の 電流となり(4)、点弧角βを電圧0V付近に設 定することにより電気二重層コンデンサへの 充電電流立ち上がり部分の不要振動を相殺し 電気二重層コンデンサからの電源電流が余弦 波に近似した波形となるような働きをする。
Fig.3 SC回路用の補償電流発生回路
<調相への適用例>
力率0.7の遅れ力率負荷 (容量:3kW) に 対して図1(a)に示した回路により力率調整を 行った場合の電流波形例とその波形分析結果 を図4に示す。なお、調相後の電源側の力率 は0.99に改善された。
Fig.4 電気二重層コンデンサによる
調相結果の一例
4 進相形整流回路への応用
図5に示すように、図1に示した回路は電 気二重層コンデンサの端子電圧Vdcを出力と する(a)単相全波整流回路、(b)単相倍電圧整流 回路と等価な動作をする整流回路として利用 することができる。すなわち、これらの回路 は余弦波状の電源電流を流す「進相形整流回 路」(5)として活用することができる。
(a)全波整流対応 (b)倍電圧整流対応
Fig.5 コンデンサの端子電圧波形
5 まとめ
電気二重層コンデンサを進相コンデンサと して活用することに関して一つの提案を行っ た。整流回路内蔵機器の入力側に図1に示し たコンデンサ回路を付加し、電気二重層コン デンサに蓄えたエネルギーの一部を整流回路 側で消費し、他は電源側に戻す「進相形整流 回路」を導入すれば需要家の進相コンデンサ 容量を激減させることが可能となる。 6 あとがき
高圧需要家に設置されたSCは夜間、休日等 の軽負荷時に開放されない分が多く、特に高 圧側に設置された直列リアクトル無しのコン デンサは系統上の高調波の拡大、さらには配 電線末端付近での電圧上昇等の悪影響を及ぼ す。近年電力供給者側から、これによる無効 電力の適正化が叫ばれているが、需要家の負 荷で遅れ力率となる電動機使用器具と家電・
OA機器 (すなわち、整流回路内蔵機器) とは
使用される容量が同程度の場合が多く、「進 相形整流回路」の導入による需要家SC容量の 低減は、配電系統の無効電力の適正化に寄与 するものと考える。
「参考文献」
(1) 高調波対策専門委員会「電力系統にお ける高調波とその対策」電気協同研 究、第46巻 第2号、(社)電気協同 研究会(1990,6)
(2) ビル電気設備の高調波に関する調査研 究委員会「ビル電気設備の高調波に関 する調査研究報告」、電気設備学会誌 (1994.9)
(3) ビル電気設備の高調波に関する調査研 究委員会「ビル電気設備の高調波に関 する調査研究報告」、電気設備学会誌 (1994.10)
(4) 愛澤忠良「三相4線式低圧配電線にお ける中性線電流の軽減法」、平成19 年 電気学会・電力エネルギー部門大 会 65
(5) 愛澤忠良「電源電流高調波を軽減した 進相形整流回路」、平成6年電気学会 産業応用部門全国大会 124