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は じ め に
本書の旧版が基礎化学選書の一冊として出版されてから 30年近く経過した.
この間にコンビューターは著しく進歩し,当時は一部の研究室でしかできな かった量子化学の計算がパソコンでできるようになった.このような情勢の変 化には,コンビューターの進歩だけでなく,新しい計算法の開発やソフトの普
及が寄与していることはいうまでもない.
旧版の「まえがき」でも述べたように,本書は初学者が量子力学の基本原理 を学んだ後に,量子化学で用いられるモテ*ルや近似計算の物理的意味を十分理 解できるようになることを目的とした.大学初年級の読者を想定して数学や物 理の基礎を含めて計算過程を詳述し,量子化学の最近の進歩まで言及したので,
旧版に比べて大幅なページ数の超過となった.下巻の20章以降では主に著者が
実際に手元のパソコンで求めた数値を用いながら,計算結果を解説している.
巻末の付録では量子化学のソフトと簡単な使用法についても述べたので,読者 が時折コンビューターを操作しながら,本書を読んで、いただくことを期待して いる.
著者は量子化学の理論が専門ではないので,この方面の専門家である京都大 学福井謙一記念研究センター准教授の石田俊正博士に本書の査読をしていただ
いた.同博士は本書を懇切丁寧に通読され,数多くの有益な助言や誤りの指摘 をされた.本書が完成できたのは同博士のおかげであると深く感謝している.
最後に校正その他の事務でお世話いただいた裳華房の小島敏照氏と山口由夏 さんに厚く御礼申し上げる.
2007年10月
著 者
『量子化学(上巻)~ (原田義也著/裳筆房)
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旧 版 の ま え が き
量子化学は量子力学の化学への応用である.したがって量子化学で取り扱う 問題を理解するには,あらかじめ量子力学の知識を必要とする.この本では量 子力学の考え方および基本原理を解説した後,それを原子,分子に適用するこ
とを試みた.
物理学の場合に比べて,化学では複雑な物質を対象とするので,量子力学を 適用するにあたって,適当な近似計算や簡単化したモデルが用いられることが 多い.これらの近似やモデルの物理的内容を十分理解しておかないと,それら の適用範囲を越えた議論が行われることになる.最近の電子計算機の進歩に よって,多くの人々が既製のプログラムを用いて分子軌道法による計算を行う ことができるようになった.しかし上記の点を認識しないと, ブラック・ボッ クス"から答だけを取り出すことになり,計算値を過信する結果となる.この本 で量子力学の基本原理の解説に相当のページ数をさいたのは,この点を考慮し たためである.
この本は大学初年級の読者にも楽に読み通せるように書くことを試みた.そ のため,簡単な偏微分の計算を除いては,予備知識として高校で学ぶ数学や物 理学程度のものしか要求していない.また式の誘導やその物理的意味はできる だけ詳しくわかりやすく記したつもりである.さらに論旨の飛躍は極力避ける ことにした.例えば,閉殻の角運動量がすべてOになること (p.187)や,水素 分子の基底状態の配置間相互作用の計算にIOg"OglとIOu"Oulだけを取り入れれ ばよいこと (p.221) などは, 通常の本では 2~3 行で述べられているが本書で は 4~5 ページを費して説明した.これらは初学者には自明のこととは考えら れないからである.
以上の執筆方針を貫いたので,量子化学の基本事項しか述べられなかったに
旧 版 の ま え が き V
もかかわらず,予定のページ数を大幅に超過してしまった.量子化学が応用さ れる分野は最近ますます増加しているが,読者がさらに進んでト量子化学の各分 野を勉強していく上での基礎として本書が役立つことを期待している.
なお,本文中で
これらの箇箇‑所は省略しても後の理解に差支えない.
この本は分子科学研究所の井口洋夫教授と埼玉大学の下沢隆教授の懇切丁寧 な査読をいただいた.また 1~4章と 10 章は東京大学の波田野彰氏, 14, 15章 は大野公一氏に通読していただいた.本書の誤りや不満足な点が改善されたの は,これらの方々のおかげである.なお東京大学の高橋隆氏,宗像利明氏,千 葉大学の日野照純氏にも有益な助言をいただいたことを付記したい.
最後に裳華房の遠藤恭平氏の御配慮、と,校正その他の事務で一方ならぬお世 話になった坂倉正昭氏および清水香苗さんに厚く御礼申上げる.
1978年10月
著 者