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第2章 必修教科等の研究 08 技術・家庭(家庭分野) 「伝える」ことを通して技術を学ぶ : 衣・住生活の自立と技術を定着させるための授業

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Academic year: 2022

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(1)

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~ 衣・住生活の自立と技術を定着させるための授業 ~

菊谷 愛

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日本の生活文化においては,草花や昆虫,風も日光も風情ととらえ,窓から自然光を取 り入れたり,簾や障子で通風を調節したり,夏祭りには浴衣を着て団扇を片手に出かけた りするなど,自然のエネルギーを生かした生活が昔から受け継がれてきており現在でも日 本人の心に多くを残している。このような衣食住にかかわる生活文化の背景には,家族や 地域などによって様々な伝承の方法があり,生活文化の理解に違いがあるのは当然である が,誰もが後世に伝承する役目を担っていることを生徒に理解させたい。そして生活文化 を伝承するためには,基礎的・基本的な生活技術を身につけて実際に体験し,その面白さ や魅力を感じ取り,他へ知らせたいという気持ちが湧いてくることが重要となる。本研究 では,特に「伝える」学習活動を重視し,ペアやグループ・小学生など,人とコミュニケ ーションをはかりながら「伝え合う」ことによって技術力を高め,より理解が深まるよう にした。この「伝え合う」学習に欠かせないものが言語であり,言語と技術・関与の相関 性は,実生活から受ける影響が大きいことが見えてきた。人から伝えられて学んだり,自 ら伝えることによって自己を確認したりすることで生活への関心意欲や工夫する力に結び つけることから生活技術を定着させることができれば,生活を豊かに工夫しようとする力 もはぐくまれると考える。

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東日本大震災の復興支援が進む中,消費者の生 活スタイルも多様化し,衣食住の生活に対する価 値観も現在は「安全・安心」な志向の傾向にある と言われている。衣食住をはじめとする人を取り 巻く安全・安心な環境を得ることは誰もが望んで いることである。そこで,本研究では衣服と住ま いを取り上げ,安全で快適で豊かな衣生活・住生 活を営むための基礎的・基本的な技術を定着させ て実生活で活用できるようにさせるために,衣生 活と住生活を関連させた題材の開発と言語活動の 充実を図る学習指導の工夫について研究を行った。

本研究を進めるにあたり平成 24 年度から実施の 新学習指導要領の要点にあげられている内容の中 で,特に着目した点として,小学校の内容と体系化 を図り学習した知識と技術などを活用することや生 活の課題を解決するための言語活動の充実を図るこ と,さらに衣生活と住生活の内容を1つの指導内容 として構成しその中で布を用いた物の製作を設ける など,生活を豊かにするための学習活動の重視を取 り上げた。

衣生活と住生活は深く関連している。例を挙げ ると,「着物と畳の文化」「世界の住まいの特徴と 民族衣装」「衣服計画と収納・部屋の整理」「災害 への備えのための布を用いた物の製作」などの題 材である。そこで本研究においては,特に「伝え る」学習活動を重視し,人とコミュニケーション をはかりながら「伝え合う」場面を取り入れた。

特に実技実習と製作実習においては,身につけた 知識と技術を他へ発信できるような場面を設定し た。

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ア)自分の持っている技術を他者へ伝える

・小学生にミシン縫いを教えよう イ)話し合いを通してアイデアを深める

・製作した作品の使い心地を検証し補修しよう

・家族が安全・安心な室内環境を考えよう ウ)製作品を家庭で活用し伝承する

・非常持ち出し用ポンチョの製作実習

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(2)

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授業の中に「伝える」場面を設定し,ペアやグ ループ・小学生など人とコミュニケーションをは かりながら,自分の持っている知識や技術を「伝 え合う」ことによって,理解が深まり,技術力を 高め,さらには実生活で的確に活用する力として 実践的な態度につなげることができるであろう。

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本題材は中学校の内容「C 衣生活・住生活と自 立」の「(2)イ 安全な室内環境の整え方,快適 な住まい方の工夫」として「災害への備えの重要性」

に関わる学習の中で,「(3)ア 布を用いた物の製 作,生活を豊かにするための工夫」を考えさせ,避 難所生活に役立つ「非常持ち出し用ポンチョの製作」

を衣生活と住生活の内容を1つに構成する題材とし て取り入れた。この「非常持ち出し用ポンチョ」に は,補修の技術に必要なまつり縫いやミシン縫いに よる二度縫い,スナップ付け,ポケット付けなどの 縫製箇所を取り入れた。

しかし「非常持ち出し用ポンチョの製作」にあた っては,補修の技術を扱うが,本当の意味で補修の 必要性を理解させることができるのは,実際のとこ ろ完成後にポンチョを使用してからになる。そこで,

本題材では,自身が小学6年時に製作したことがあ り,小学生にミシン縫いの補助を行って製作した「ナ ップサック」を検証するようにした。このナップサ ックを使用した後に,使い心地を実感したり,ほこ ろびの程度を観察したりすることで目的に応じた補 修の必要性を理解させることができるのではないか と考えたためである。さらに,このナップサックは 小・中学生が協同で製作したため,愛着を持って,

丈夫で長持ちする「理想のナップサック」にするた めの工夫をそれぞれの立場で考えさせることにつな げられるとも考えた。

この丈夫で長持ちする「理想のナップサック」に するための工夫を話し合わせる場面では,小学生に とっては目標である「生活に役立つ」視点で形や縫 い方の工夫を考えさせ,また中学生にとっては,「生 活を豊かにする」視点で補修の必要性を考えさせる ことで,小中学校の学習内容の系統性が生徒に明確 に伝わるようにしたい。この学習を通して,生徒に 実習後の製作品について評価し,補修して改善する という一連の学習活動を,生活を見直す視点をもっ て進んで取り組んでいけるような力を身に付けさせ たいと考え,この題材を設定した。

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第1次 社会生活の目的に応じた衣服の着用の工 夫を考えよう ― 2時間

~いろいろな仕事着の観察とTPO~

第2次 浴衣の着付けをしよう ― 4時間

~和服と洋服それぞれの材料や状態に応 じた手入れと計画的な活用~

第3次 家族が安全・安心な室内環境を考えよう

― 2時間

~校舎内の衛生環境・音の測定~

第4次 災害への備えを考えよう ― 5時間

~避難所生活に役立つ非常持ち出し用ポ ンチョの製作~

第5次 小学生にミシン縫いを教えよう

― 3時間

~手縫いやミシン縫いの技術を小学生に 伝える~

第6次 小学生に伝えることを通して補修の技術 を学ぼう ― 2時間(本時1/2)

~製作品を振り返りよりよい作品にする 工夫を考える~

[第1次 いろいろな仕事着の観察とTPO]

[第4次 避難所生活に役立つ非常持ち出し用ポ ンチョの製作]

技術 家庭科

(3)

( � ) � � � 展 開

学習内容・活動 指導・評価(◆)

1.

ナップサックの使用場面の画像を見る。 小学生と一緒に製作したナップサックが実際に修学旅行で使用されている場 入 ・修学旅行中 面や自分が小学生の時に製作したナップサックを現在も使用している場面,

・中学校生活(体操服入れ,サブバッグ) また既製品の使用場面を見て,実生活でのナップサックの機能を知らせる。

・ハイキング ・ファッション

2.

本時の課題を知る。 本時は小学生と一緒に修学旅行で使用したナップサックの使い心地やほころ びの程度を調べ,長持ちさせる工夫を考えることを示す。

3 .

その後のナップサックを観察し 小学生・中学 小・中学生が互いのナップサックを見せ合うことで違いに気付かせる。

開 生全員にその後のナップサックの状態につい 小学生に修学旅行で活用した場面を思い出させながら,使い心地や不便さ・

て書かせる。 ほころびの箇所を付箋に書かせる。

中学生には小学生の時に製作したナップサックの現在の状態を書かせる。

4.

中学生が マトリックスを活用しながら付箋 中学生に付箋をマトリックスに貼り付け,分類しながら表を整理させる。

のナップサックの使い心地・不便さ・いたみ 「あきどまり」「縫い代のほつれ」など家庭科用語を使って,小学生と積極 やほころびの程度を縫製箇所ごとに分類して 的に話し合い意見をまとめさせる。

整理する。 小学生のナップサックのほころび箇所の状況と適した補修の方法を「お直し

5.

小学生のナップサックのほころびの状況に応 メモ」に記入させ,ナップサックと共に預からせる。

じて,中学生が手縫いやミシン縫いをして補 修してくることを約束し、「お直しメモ」に 記入する。

6 .

丈夫で長持ちする「理想のナップサック」に マトリックスにまとめた内容を活用して,「理想のナップサック」について するためには,どのような工夫が必要か話し 話し合わせ,ナップサックの図案用紙(TPシート)に「理想のナップサッ 合い図案用紙(TPシート)に説明を書き添 ク」にするための工夫を書かせて発表させる。

えてわかりやすく表現し発表する。 ・あったらいいな

肩当て

・マチ付きは、たくさん入荷物を入れられる。

・縫製に関わる工夫…赤色 ・ワッペンを付けて自分だけのオリジナルナップサックにする。

・表の部分の工夫…青色 ・分厚い紐に替えて重さに持ちこたえるようにする。

・裏の部分の工夫…緑色 ・袋口にフタやポケットがあれば便利。ペットボトルポケット必要。

・わき線は二度縫いの必要あり。

・ひも通し口の布はしをまつり縫いする。

◆非常持ち出し用ポンチョの製作で学習したことを応用して,目的と布地に 適した縫い方,補修の方法を考えることができる。

【 生 活 を 工 夫 し 創 造 す る 能 力 】 小学生の評価:

◇形を工夫した生活に役立つ布を用いた製作品を考えることができる。

◇目的に応じた手縫いやミシンの直線縫いについて理解できる。

7.

他のグループから出た「理想のナップサック 全てのグループの「理想のナップサック」の図案用紙(T Pシート)

と にするための工夫」を知る。 を重ねて実物投影機で拡大して映す。

め 全てのグループの「理想のナップサック」の 全てのグループが考えた「理想のナップサック」を知り,「お直し 考えを知り,「お直しメモ」に記入した補修 メモ」に記入した内容と比較させ,適切な補修 の方法であるか確認 の方法が,ほころび箇所の状況に適している させる。

かを見直す。

(�)学習���と��

本校では昨年より,教師が附属小学校の家庭科の 時間にT.Tで授業を行ったり,小・中学生が交流を 行ったりしてきた。本時の小学6年生については昨年,

中学2年生と一緒に「帆布バック」の製作を行ってい ることもあり,交流するにあたって不自然さはあまり 感じられなかった。このように小学校家庭科の製作の

授業に小・中学生が交流を行うことで,小学生にとっ ては中学生から手縫いやミシン縫いの補助をしてもら うことで製作過程の理解が深められることができ,中 学生にとっては小学生に教えることで既習事項である ミシン縫いの技術を定着させることができると考え,

互いに学びを共有しあえるようにした。またこのナッ プサックは中学生が小学6年時にも製作しており,現

(4)

在も体操服入れとして使用している。そのため実生活 での使い心地や使い勝手について,自分が学んだ経験 から工夫すべき点を小学生に助言することができた。

なお本時で扱う教材のナップサックは,小学校6年 生の内容「C 快適な衣服と住まい」の「(3)生活に 役立つ物の製作」の「イ 手縫いやミシン縫いを用い た直線縫いにより目的に応じた縫い方を考えて製作・

活用できる」ようにするために学習活動を,「修学旅行前に 製作 → 旅行中に活用 → 旅行後に振り返り」という流れ のもとに設定して取り入れた。

[第5次 小学生にミシン縫いを教えよう]

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中学生と一緒にナップサックを製作した小学生 に学習後質問した以下の3点の内容について結果 を分析した。

①今回のように中学生と一緒に授業を受ける ようなことが、今後もあったらどう思いま すか。次の4つから選んでください。

・今回のように中学生に来てほしい。

・今度は中学校へ行きたい。

・機会があれば授業を一緒に受けたい。

・一緒に受けたくない。

結果は図1の通り,「中学生に来てほしい」ある いは「中学校へ行きたい」というような積極的に 関わりたいという回答が25人(67%),また機 会があれば一緒に受けたいという消極的な関わり を希望した回答が12人(31%)で,大半が中 学生との関わりを今後も持ってもよいと考えてい ることがわかった。また一緒に受けたくないと答 えた小学生はその理由として「中学生が関係ない ことをしゃべっていた」「全然話しかけてくれなか った。」ことをあげ,中学生が「小学生に教えよう」

という気持ちがなく小学生に真剣味のない姿を印

象づけてしまったためではないかと考えられる。

図1[小学生 38 人対象アンケート 今後も中学生と一 緒に授業を受けることについてどう思いますか。]

次に、

②中学生はあなたに話しかけてきましたか。

また中学生はどのようなことを話しましたか。

については、話しかけてきた言語とそれを発言し た中学生の縫製技術を横軸に,小学生への関与の 状態を縦軸にとり,座標平面で表した。この座標 平面からは,縫製技術と関与の関係,そしてその 生徒が小学生と関わる際に発言した言葉を読み取 ることによってコミュニケーションをはかる場面 での相関性が見えてくる。(図2)

まず縫製技術が高い生徒について,縫製技術が 高く小学生に積極的に関わっている生徒(座標平面 の右上)は,「大丈夫だよ。」「ちゃんとできてるよ。」

など小学生を安心させるような発言をしている。

さらに「こうすればもっときれいにできるよ。」と 言って刺繍の仕方を教えたり,名前入りのアップ リケを作ってプレゼントするなど,自分が身につ けている技術をいろんな形で小学生に伝えようと していた。また,縫製技術は高いが小学生への関 わりは消極的な生徒(座標平面の右下)について は,「うまいなあ。」「上手だね。」と感想を述べる に留まり,それ以上自分から教えてあげようとす る姿はなく,小学生の横に座っていて尋ねられた ら答えるという様子が多く見られた。ただこの生 徒に,積極的に関与するように促せばほとんどの 生徒が関わろうと努力することができる。これら 縫製技術の高い生徒については,小学生にどのよ うに接すればよいかを十分理解しており,自分で 考えてナップサックの縫製を小学生に教えるなど 教師を頼ることなく関わることができていた。

中学生 に来て 欲しい, 

11

中学校 へ行き たい, 14 機会が

あれば 一緒に 受け たい, 12 一緒に

受けたく ない, 1

技術 家庭科

(5)

一方,縫製技術が低い生徒についてであるが,

縫製技術が低いが積極的に関わろうとする生徒(座 標平面の左上)は,「私が小学生の頃はこんな柄な かったよ。」「かわいいなあ。」などと小学生の作品 を見て自分と比較し素直な感想を述べる姿が多く 見られた。また,ミシンの上糸かけがうまくいか ない時には,教師やわかる生徒に助けを求めて何 とかしようと努力する姿も見られた。この生徒の 特徴として,自分にできることはしようという態 度で,ミシンの準備や後片付けなどを積極的に手 伝う姿が見られた。最後に縫製技術・関与ともに 低い生徒(座標平面の左下)については,「俺より 上手やん。」「教える必要ないやん。」と言って自分 から関わろうとしない生徒もいた。また,小学生 に質問されて答えられない内容は逐一教師に質問 してそれを小学生に説明する姿が見られた。さら にナップサックの仕上げのひも通しの仕方を説明 書で図解できない生徒もこの生徒が最も多かった。

残念なことに小学生に間違ったことを教えてしま い,小学生を不安な気持ちにさせてしまう場面も 見られた。

また小学生が中学生に言われた言葉としてあげ ていたものの中で最も多かったのが,ミシン針に 糸を通す時に「大丈夫?」と話しかけられたこと をあげている。これはミシン針に糸を通すのは,

中学生でも苦手意識が高いためではないかという ことが考えられる。ミシンがより機能的であり,

かつ構造が単純化されてきている今日は,上糸か けよりも最後の糸通しに時間のかかる生徒が意外 に多い。これは小学生においても同様に言えるこ とである。ただミシン針は元からミシンに設置し てあるもので,糸を通す方向も前から後ろへと決 まっているために,利き手と関わらずやりにくい のが現状のようである。

[マトリックスを活用してナップサックの使い心 地・いたみなどを縫製箇所ごとに分類して整理]

そしてこれは全般を通して言えることであるが,

小学生と一緒に行う授業の回を重ねるごとに小中 学生が互いに理解を深め合い信頼して自然な形で 接するようになっていった。特に一緒に製作した ナップサックを修学旅行で使用してきた小学生と

再会した補修の授業では,とても懐かしく温かな 雰囲気の中で楽しく取り組むことができた。以上 のことから言語と技術・関与の関係からわかるこ ととして,技術や関与が高い場合は,相手により よい言葉かけをして積極的に話しかけていったり,

自分が持っている技術や知識を伝えることができ るということ,また,技術や関与が低い場合は,

進んで言葉かけができないが,回を重ねるごとに 人間関係を円滑に作ることができるということで ある。なお,この4つのタイプのそれぞれの人数 の割合は,右上(高技術高関与)が40%,左上(高 関与低技術)が25%,左下(低技術低関与)が 10%,右下(高技術低関与)が25%であった。

(図3)技術の高低についての基準は,2回実施 した実技テスト[なみ縫い・かがり縫い・返し縫 い]と[スナップつけ]において,基礎的・基本 的な技術を身につけているかどうかを判定した結 果である。この場合の低技術の程度は,玉どめ・

玉結び・運針がうまくできないということである。

関与の高低については,小学生に実施したアンケ ートにおいて「中学生にしてもらってうれしかっ たこと」と「中学生に話しかけてもらったこと」

などの記述から判定した。

図2[言語と技術・関与の関係]

関与 高

「名前は?」 「ここをこうやったら

「わかる?」 きれいに仕上がるよ。」

「わからないところな 「ちゃんとできてるよ。」

い?」「難しくない?」 「大丈夫だよ。」

「この布の柄かわいい 「来年待ってるね。」

ー。私たちの時はこ 「わからないところな んな柄とかなかった い?」

よ。」 「ミシンの使い方 うまいね。」 技

低 高 術

「俺よりきれいに 「ミシンの使い方 縫えてるやん。」 わかる?」

「めっちゃ上手やん。」 「上手だね。」

「中学校では提出物は 「うまくできたね。」

厳しいよ。」 「うまいなあ。」

「中学校に入ったら勉 「大丈夫?」

強ばっかりだから今 「かわいい。」

のうちにいっぱい遊 んだほうがいいよ。」

「修学旅行楽しみ?」

(6)

図3[技術と関与のタイプ別人数割合]

関与 高

高関与低技術 高技術高関与

25% 40%

技 低 高

低技術低関与 高技術低関与

10% 25%

③「お直しメモ」について

製作したナップサックを小学生が修学旅行時に 使い,その後洗濯をしたものを中学生と一緒に観 察した。特にひも通し口の糸のほつれと刺繍の糸 のほつれが補修箇所としてあがった。ひも通し口 や袋口などの物の出し入れをする箇所は,二度縫 いや返し縫いを確実に行う必要があることを,実 物の観察と使い心地の話し合いなどから実感させ ることができた。その際,小学生に「お直しメモ」

に補修してほしい箇所を書くように指示すると,

小学生からは「もう一度ミシンで縫い直してくだ さい。」「刺繍だけやり直してください。」などとい うふうに丁寧な言い回しでお願いをする表現が多 く記入されていた。中には,とてもきれいにでき ており,糸のほつれや補修箇所が全くない小学生 もいた。しかし,全員分を預かり,担当した小学 生の作品の補修にあたらせた。ミシンで二度縫い を行ったり,刺繍をやり直したり,糸の切り残し を切ったりするなどの補修を行った。そして「お 直しメモ」に今後の使い方の注意点をコメントさ せた。そこには,「とてもきれいに縫えています。」

「自分で作ったものだからいつまでも大事に使っ てください。」「また使っているうちにほつれてき ても簡単に直すことができるので,ずっと使って ね。」など,作品を大切にする心を伝える記載が見 られた。これは過去に自分が経験してわかったこ とを,人が体験している姿を目の当たりにするこ とで,学び直し再確認することにつなげることが できたのではないかと考える。以前製作者となっ ていた経験を持つ自分から現在の製作者に向けて 発信するメッセージは,自分の反省やよりよい生 活に結びつけるための心得が詰まったものになっ

た。

[第6次 補修を終えたナップサックにお直しメ モをつけて小学生に返却する]

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この題材は,「C衣生活・住生活と自立」の(1)

衣服の選択と手入れ(2)住居の機能と住まい方

(3)衣生活,住生活などの生活の工夫で構成して いる。本題材では,室内環境に関する調査や観察 を通して,安全・安心・快適な住まい方の基礎的

・基本的な知識を身につけさせ,生徒の関心を高 めさせ主体的によりよい住生活の工夫や災害への 備えをおこなっていこうとする態度をはぐくみた い。さらに衣生活と住生活との関連をはかり,和 服文化と和室の構成,災害に備えるための非常持 ち出し用ポンチョの製作など体験や製作をさせる ことによってこれらの理解をより実生活に近づけ たいと考えた。そしてまた「安全で快適な住まい」

は住人の生活スタイルや将来のこと,さらには周 囲への配慮なども十分考慮した上で成り立ってい くものであることを自覚させ,それが実生活で的 確に活用する力として実践的態度につながること をねらいとし,この題材を設定した。

[第3次 モデル家族が快適に住まうことができ る室内環境の工夫を鳥瞰図で発表しよう]

技術 家庭科

(7)

(�)���展開

ま と め

6.

本時のふり返りをする。

「快適」「室内環境」「工夫」の3文字を使って 今日学んだことを

100

字以内でまとめる。

本時のキーワードとなる「快適」「室内環境」「工夫」の3文字を使って,今 日学んだことを

100

字以内で書かせる。

各グループに異なるモデル家族の説明が入った間取り図を配布し,モデル家 族にとっての快適な室内環境の工夫を赤色のマジックで記入させる。

例) モデル家族の生活スタイル

・祖母 最近,夜にトイレに行く回数が増えました。

・父 音楽家で一日中ピアノを弾いています。

・母 ほこり・ダニアレルギーです。

・子 中学1年生

・子 高い所に興味があり,何でも上がろうとします。

他のグループの間取り図に記入された工夫について,気づいた点やよりよい 工夫のアドバイスを付箋に書いて貼らせる。

宿題で調べてきた「災害の備え」を記入する。

実物投影機を使って発表させる。

「快適な室内環境」について,導入で発問した際に記入したものよりも多く の工夫があげられるように促す。

◆家族の安全を考えた室内環境の整え方を知り,快適な住まい方 を工夫できる。 【生活を工夫し創造する能力】

ワークシートに記入させる。

2.

モデル家族が快適に住まうことができる室 内環境を考える。

グループで話し合ってモデル家族が快適に 住まうことができる工夫を,間取り図(鳥 瞰図)に記入する。

3.

他のグループの間取り図を検討し,アドバ イスを付箋に書く。

自分のグループ以外のグループの席に分か れて着席し,他のグループの間取り図に記 入された工夫について話し合う。

4

. 自分の班に戻り,付箋のアドバイスを読ん で整理する。他からのアドバイスを受けて

「いいな」と思ったことは青色のマジック で記入する。

「もしもこの家で地震が起こったら…」を 想定し,災害の備えの工夫を赤色のマジッ クで書き入れ,順に発表する。

5

. 快適な室内環境の条件とは何かを考え,

ワークシートに記入し発表する。

・便利,設備が整っている

・周りに迷惑をかけないように生活する

・住人の生活を考えて住みやすくする。

モデル家族 設定季節「冬」

・祖母(70歳)

・父(45歳)

・母(40歳)

・子(中学1年生)

・子(幼児2歳)

展 開

ワークシートを配布し,宿題で調べてきた「快適な室内環境の工夫」につい て記入させる。

発表させる。

そのように答えた理由も聞く。

本時は快適な室内環境の工夫を考えることを示す。

1.

快適な室内環境とは何かを,宿題で調べて きたことをもとに考え,発表する。

・換気 ・花を飾る。

・こまめに掃除すること。

本時の課題を知る。

導 入

学習内容・活動 指導・評価(◆)

(�)学習���と��

住まいにとって安全であることは第一条件であ るが実際には,家庭内事故で特に幼児や高齢者が 事故で亡くなるケースもある。高齢化社会に向け てめまぐるしく変化する現在,これらのことは身

近な問題として対応していく必要がある。そこで 生徒に「安全で快適な住まい」について事前に調 査をしたところ,災害に備えて家の中でしている ことについて,緊急避難場所を家族で確認するこ とや,非常持ち出し用袋の常備,設置が義務化さ

(8)

れた火災警報器については大半の家庭で実施でき ていた。これは,阪神・淡路大震災以後,人々の

「住まい」に対する関心が高まり,特に安全性に おいて重視されるようになり,安全・安心に暮ら していくためには,台風や雷,洪水,地震などの 災害に対する備えが必要であるという保護者等家 庭内の認識の強さの現れとも思われる。ただ,家 具の転倒防止やガラスの飛散防止などの具体的な 対策については,していないと答えた生徒は6割 を超えていた。これら家具類の転倒や落下におけ る対策は,生徒が自分から行っていることがほと んどないために実際に家庭で行われていても,生 徒が気づいていないケースが考えられ,保護者の 災害対策についての関心の高さとは反対に,生徒 の家(住まい)に対する関心の低さがあらわれてい るといえる。さらに加えて「家庭内事故を防ぐた めの工夫」については,幼児や高齢者と同居する 家庭が少なく,また既にバリアフリー対応の住居 もあって,家庭内での事故がどのような場合に起 こるのかをイメージできない生活環境の生徒もい るのが現状である。

そこで,本時の学習活動では,導入で「快適な 室内環境とは何か。」について書かせたところ,ほ ぼ全員が「掃除」「整理整頓」「通風・換気」とい った小学校での既習事項を迷わず答えた。またこ のことは,宿題として家庭での聞き取りを行った 際にも,「快適な工夫」についてどの家庭もほぼ同 じような内容の理解であったものと考えられる。

そして授業の展開において,モデル家族が快適に 生活できる工夫を考える活動の場面では,様々な 生活スタイルに合わせた条件をグループで話し合 っていくうちに,考える視点が広がり,終末では

「安心・安全」「バリアフリー」「近所への配慮」

など多くの快適な工夫をあげられるようになった。

そして,まとめのふり返りの時間に 100 字以内で 書かせたふり返りノートには,話し合った時に出 てきたキーワードとなる言葉が多く表現されてい た。

[生徒のふり返りノートより]

・住人が快適に住むためには,適温・適湿な ど基本的なこと以外にも住人のアレルギー や仕事にも気をつかい,障害のある人にと ってはバリアフリーにし,隣人にも迷惑を かけないよう室内環境を工夫する必要があ ると学んだ。

・快適な室内環境の条件として大事なのは,

お年寄りや子供の安全を考えてあげること

や非常用対策なども大切だと感じました。

他にも一人だけが快適ではなく,家族が快 適に過ごせるような工夫をつけてあげると 良くなる。

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本研究では,授業の中に「伝える」場面を設定し 人とコミュニケーションをはかりながら,自分の 持っている知識や技術を「伝え合う」活動をさせ るようにした。小学生に伝える場面では,教える 立場になるため,持っている技術が確かなほどに よりよい関わり方ができること,また,技術が不 確かな場合でも自らの経験を話して,進んで関わ ろうとすることがわかった。これは自分が経験し て学んだことについて,満足感が得られていたり 逆に同じ失敗をしてはならないという反省を覚え ていたりすることが,関与の場面にでてくるので はないかと感じる。確実に言えることは,嫌な経 験が残り苦手意識が高い場合は,うまく関与でき ないということである。この場合は,特にミシン 縫いの補助をする活動であったが,手縫いの技術 が低い生徒にとってはミシンの苦手意識もかなり 高いため,積極的な関与の姿は見られなかった。

縫製のみにかかわらず調理においても身につけさ せたい技術の学習場面においては,苦手意識を持 たせない工夫が必要であると実感した。

また,家庭での聞き取りを宿題にして,それを 授業で伝え合う場面においては,家庭でしっかり と聞き取ってきた生徒は,自分の考えとして多く の語彙を述べることができた。これは,より多く の情報を持っている方が,積極的に発言できると いうことである。今後「伝え合う」場面を設定す る際には,予め「自分の家庭ではどうなのか。」を 調べさせてくるようにさせたいと思う。そうする ことが,実生活で的確に活用する力として実践的 態度につながっていくものと確信している。そし て生徒にいつでも家庭生活とつながっていること を感じさせられるような授業実践に取り組んでい きたいと思う。

技術 家庭科

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