九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Examination of the Methods Predicting the High- Temperature Flow Stress in Solution Hardened Alloys
宮川, 英明
有明工業高等専門学校共通専門科
中島, 英治
九州大学大学院総合理工学研究科材料開発工学専攻
吉永, 日出男
九州大学大学院総合理工学研究科材料開発工学専攻
https://doi.org/10.15017/17242
出版情報:九州大学大学院総合理工学報告. 13 (4), pp.325-331, 1992-03-01. Interdisciplinary Graduate School of Engineering Sciences, Kyushu University
バージョン:
権利関係:
九州大学大学院総合理工学研究科報告 第13巻第4号325−331頁平成4年3月
號翻鼓驚瀟翻照費b櫨塾忌轟総冨
Vo1.13, No,4pp.325−331 MAR.1992
固溶硬化合金の高温変形応力予測法の比較検討 宮川英明*・中島英治**・吉永
(平成3年11,月30日 受理)
日出男**
Examination of the Methods Predicting the High・Tempera加re Flow
Stress in Solution Hardened AlloysHideaki MIYAGAWA*, Hideharu NAKASHIMA**
and Hideo YOSHINAGA**
There are a few reports on the method for theoretical prediction of flow stress along an arbitrary deforma−
tion path. We have recently studied the method based on the deformation mechanism in solution hardened alloys at high temperature and clarified that the predicted stress−strain curve agrees well with the experimental one。
In this paper, our predicting method is applied to the stress−strain curves of Al−3at%Mg alloy along diffe−
rent deformation paths at 673K and compared with other current predicting methods.
1.緒
言金属材料の高温変形では変形初期の遷移段階を経た 後,変形応力がひずみに依存しなくなる定常状態に達 する。この定常状態における変形応力は,ひずみ速度 が大きいほど大きく,温度が高いほど小さくなる。一 般に変形応力σは,ひずみε,ひずみ速度ξおよび温 度Tを変数とする変形経路の関数g(ε,量,T)の汎関 数として
σ「ブ{8(ε,ξ,T)} (1)
と表すことができる。この3つの変数の中で,ひずみ 速度εはひずみの時間(t)微分であるので,変形経路 の独立変数はε,tおよびTとしてよい。
しかし,Raymondとporn1)は純金属について同一 応力で得られた異なる温度におけるクリープ曲線が,
クリープ時間tの代わりに拡散速度で補償した時間θ
=t・exp(一QSD./T)を用いることによって,同一の 曲線上に乗ることを示している。ここで,Rはガス定 数,Tは絶対温度, Qs.D.は拡散の活性化エネルギー である。この事実は変形中に温度変化がある場合にも,
時間に温度補償時間θを用いれば,変形応力はひずみ
*有明工業高等専門学校共通専門科
**゙料開発工学専攻
と時間で表せることを示している。
Fig.1はひずみ(ε)と時間(t)を変数とした変形 経路を表したものである。ある一定のひずみε.をあ る時間t,で与える変形経路は無限に多様であり,経 路によって(t,,ε,)点での変形応力は異なる。任意 の変形経路に沿う変形応力を実験的に調べ尽くすこと は不可能であり,不経済である。ここに,任意の変形 経路に沿って変形応力を予測する方法を開発する必要 性がある。
ところが,これまでの研究は紅中引張か定応力(あ るいは定荷重)クリープという特定の変形経路につい て調べたものが大部分である。変形応力の予測あるい はクリープひずみの予測は金属材料の変形機構との関 連から永い間研究され,多くの進歩が見られたものの,
未だに解決しない問題が多く残されている。しかし,
工業界においては,これらの問題の解明を持ってはい られないため,これまでの不完全な理論と経験に頼っ ているのが現状である。特に,金属材料の熱間加工の 分野では式(1)に経験式や半経験式が用いられている が,その手法は汎用性に欠け,材料と変形条件毎に多 くのパラメータを決めなければならないという問題が
ある。
そこで本論文では,既報2)のA1−3at%Mg合金の 673Kにおける変形応力の変形経路依存性を,既報2)3)
一326一 固溶硬化合金の高温変形応力予測法の検討
ω ご
§
お
(tr、εr)
Time,≠
Fig. l Illustration of deformation paths.
30
8
茎
b20
㎡ 組 轟
い10
2
≧L O
Aト3GtO oMg
673K
②
0.2 遷
.⊆O.1 呈 の
0
Pqths(1.8k。,043)
②
①
③
0 1・0 2・O
Time、ナ ks
③
①
0 0・05 0」10 0!15
Apporent strαin, εb
Fig.2 Experimental stress(σ)一strain(εa)curves2)
obtained for 3 deformation paths indicated in the inserted diagram. Al−3at%Mg alloy at 673K.
の著者らの方法とこれまでに提案されている他の方法 によって予測し,比較・検討した。
本論文で比較する予測法は,
1.経験的に知られている変形の状態方程式を用いる 方法
2.いくつかの実測曲線を組み合わせる方法(中西
法4)5))
3.変形機構に基づく方法(著者ら2>3>)
の3種類である。
なお,予測の検討に用いた実験結果をFig.2に示 した。ただし,横軸のε、は弾性ひずみを含む見かけ のひずみである。Fig.2に示し・た応カーひずみ曲線は 図中に内挿した変形経路に沿って得られたものであり,
以下の特徴がある。
経路1(定速引張試験)では,変形初期に高温降伏 現象が現れた後,一定応力を示す定常変形へ移行して いる。また,はじめにひずみ速度が大きく次第に減少 する経路2では,経路1より大きな高温降伏現象が現 れ,ひずみ速度が遅くなるにつれ応力は次第に低下す る。一方,はじめにひずみ速度が小さく次第に増加す る経路3では,高温降伏現象は現れずひずみ速度が大 きくなるとともに変形応力は単調に増加する。その結 果,(時間1800s,ひずみ0.13)点における変形応力 は変形経路によって大きく異なる。このように,同じ 時間で同じひずみに達した時の変形応力は経路によっ て大きく異なっており,変形応力に経路依存性がある ことがわかる。しかし,3つのひずみ速度が同じにな る0.13より大きいひずみ領域では,経路2,経路3と も,ひずみ速度が急変したことによる短時聞の遷移過 程の後,経路1とほぼ同じ変形応力となる。
2. 変形応力予測法の比較・検討 2.1変形の状態方程式を用いる方法 2.1.1方 法
金属材料を一定ひずみ速度で変形させたり,一定応 力でクリープ変形させると,変形初期の遷移段階を経 て,加工硬化と回復がバランスして変形応力やひずみ 速度が一定となる定常状態が現れる。この定常状態に おける塑性ひずみ速度ξは三囲硬化合金では次式のよ うに,溶質原子濃度C,応力σおよび温度Tに依存す ることが経験的に知られている6)。
糊塗C−m僻α・(QkT)
(2)ここで,ADは温度や合金組成に依存しない定数, G は剛性率,bは隣接原子問距離(転位のバーガースペ クトルの大きさに等しい),kはボルツマン定数, m は濃度指数,nは応力指数, Qは変形の活性化エネル ギーである。溶質原子濃度や温度が一定の場合には,
式(2)は簡単に
ε=A cσn
とすることができる。ただし,
昨辮C一炉α・(一謝
である。
(3)
一327一
10−3
7
辺・ω
垣 910葡4
.∈
9
あ
10−5
Al−30t。ノ。Mg
673K OMeqsured
n器3.1
30
8
Σ
620
㎡ 組
蕊10
壼
L
O
Aト3αt。 。Mg
673K
_Meαsured−」一 Cα巳cu巳αted
〜一@一一 ,,,璽一r
,
、 旨
、、 、
ノ7
①
1 10 100
Row stress,σ1MPG
Fig.3 The relation7Σbetween plastic strain rate, , and flow stress,σ,for steady−state deforma−
tion of Al−3at%Mg alloy at 673K.
Fig.3はAl−3at%Mg圃溶硬化合金の673Kで得ら れた定常変形状態における応力σとひずみ速度εの両 対数プロットの結果7)である。図より明らかなように,
測定点にはほぼ直線関係があり,この勾配より得られ る応力指数は3.1である。また,比例定数A Dは5.9
×10−8(MPa)−s−1である。ただし,σの単位には MPaを用いている。
ところで,変形応力が時間とともに変化する遷移段 階では,制御できる見かけのひずみ速度ε、は試験片 の塑性ひずみ速度葦と異り,塑性ひずみ速度ξは見か けのひずみ速度忌、から試験片を含む試験機系の弾性 ひずみ速度δ/Kを差し引いた次式で与えられる。
0 0・05 0・10 0・15
APPαrent strαin, &
Fig.4 Tensile stress−strain curves measured (solid lines) and predicted (dashed lines) on the basis of eq. (5) for the paths 1, 2 and 3 shown in Fig.2.
∂ ε=ε 一一
a K
(4)
ここで,δは変形応力の変化速度であり,Kは試験機 系の弾性変形を含む試験片の見かたのヤング率8)であ る。したがって,式(3)と(4)を用いると,変形応力の 増分dσは
dσ=K(とa−A Dσn)dt (5)
で表される。Fig.2の内挿図のように変形経路が与え られると(ξ。はその勾配),式(5)より,σの初期値 を用いて微小時間dt経過後の応力σ+dσが計算でき る。このようにして,変形経路に沿って変形応力の予 測ができる。
2.1.2予測結果
Fig.2に示した3つの変形経路について,式(5)に よる変形応力を予測した結果をFig.4に破線で示し た。図に実線で示した実測曲線と比較すると,変形初 期を除けば予測曲線は実測曲線を概ね再現していると 見ることができる。しかし,経路1と2の変形初期の 高温降伏現象*は全く再現できていない。式(5)によ る変形応力予測法では,定常変形状態における応カー ひすみ速度の関係式を用いているため,高温降伏現象 のような定常状態から大きく離れた遷移段階を再現で きないことがわかる。そこで,次に遷移段階における ひずみ速度の関係を考慮した中西法4)5)について検討
する。
2.2 中 西 法 2.2.1方 法
中西ら4>5>は,温度やひずみ速度の異なる多数の定
*高温降伏現象は,固溶硬化の大きい合金の高温変形に特 有の現象である。すなわち,転位が溶質雰囲気を引きずりな がら運動するとき,その引きずり抵抗は転位速度とともに増 大するが,ひずみの増加とともに転位密度が増加すると,定 速変形のときには転位の平均速度が減少するため,変形応力 が逆に減少する現象である9)10)。
一328一 固溶硬化合金の高温変形応力予測法の検討
20
σ 0.
Σ15
へb
㎡
㎝10 2
祈
2
≧ 5L
OAト3αt。ノ。Mg,673K (o)
@ ε=εi εQ=2.8x10−4s−1 0
σとi
ミbi ε。.1.2x10−4…ジ1
眺i εα冨3.Ox10−5⊆ジ1
0 O.05 0.10 045 4
幸3
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α∫2 蒼
.⊆ 1
2 0
あε=εi
qi
εbi
εq.2.8x10−4♂
』.12x10−4∫1
(b)
εci ε。。3¢x10−5∫1
0 0・05 0。10 0・15
StrQin,ε
Fig.5 Experimental(a)stress−strain curves7)and (b) strain rate−strain curves.
速引張試験で得られた応カーひずみ曲線から,任意の 変形経路の変形応力を予測する方法を提案した。ただ し,ここで比較する実測曲線は一定温度で得られたも のであるから,温度の効果を考慮する必要はない。前 節の予測法が定常状態のひずみ速度と変形応力の関係 のみで予測式を構成しているのに対し,中西法では変 形初期の遷移段階でのひずみ速度と変形応力の関係を も含めている点で予測精度が高くなるものと予測され
る。
中西らは予測に必要なパラメータを実験式として求 めて予測式を作成し,数値計算により変形応力を求め ているが,本論文では原理的に同じ方法である作図法 で変形応力の予測曲線を求めた。以下,その方法につ いて述べる。
予測に必要な基準の応カーひずみ曲線として中島 ら11)がAl−3at%Mg合金について673Kで測定した応 カーひずみ曲線を用いる。Fig.5(a)はこれを示した
もので,それに対応する塑性ひずみ速度一ひずみ曲線
をFig.5(b)示す。
Fig.5(a)と(b)より,各ひずみに対応する変形応 力と塑性ひずみ速度を求める。例えば,ひずみεiで Fig.5(a)中に示した変形応力σ。i,σbi,σ,iを求め,
同様にFig。5(b)でεiでの塑性ひずみ速度ε。i,εbi,
乙dを求める。このようにして,各εiに対応するひ ずみ速度εと変形応力σの関係が得られる。Fig.6に
1例として,εi=0。05におけるσ一εの関係を示した。
変形経路が与えられると,各ひずみでのひずみ速度が わかるので,各ひずみごとにFig.6と同様な応カー ひずみ速度線図を作製すれば,それらの図から各経路 に沿って変形応力を求めることができる。
変形経路が与えられたとき,わかるひずみ速度は見
25
£20
茎
b15
㎡ 器
』10 0
≧
2 5 L
0
A星一3αtOゐMg
673K
ε=O,0510 1 2 3 4 StrGin rαte,ξ 10−4ゴ1
Fig.6 An example of the relation between strain rate,葦,and flow stress,σ,at a strain εi=
0.050btained from Fig.5.
30
£ 茎
b20
㎡ 紹
缶10
壼
L o
Aレ3αt。 。Mg
673K
、、噛噛
_ Meqsured
一一一@Cα1culqted
②③_一一一 隔}弛一…そ一 @ i
①
、0 0・05 010 015
APPαrent strαin, 品
Fig.7 Tensile stress−strain curves measured (solid lines) and predicted (dashed lines) on the Nakanishi s method for the paths 1,2and 3 shown in Fig.2.
一329一 かけのひずみ速度と、である。中西らは塑性ひずみ速
度乙と見かけのひずみ速度を区別していないが,正し くは塑性ひずみ速度で記述すべきものと思、われる。こ こでは式(4)の関係より,ε、と∂から塑性ひずみ速 度を求めた。ただし,本研究における3つの経路につ いて評価したところ,見かけのひずみ速度を用いても,
真の塑性ひずみ速度を用いても変形応力の予測誤差は 最大で2%に過ぎなかった。
2.2.2予測結果
Fig.2に示した3つの変形経路について,中西法で 求めた変形応力予測結果をFig.7に破線で示した。
中西法による予測では,実線で示した実測曲線よりも 小さいが,変形初期の高温降伏現象も現れており,実 測曲線に近い予測曲線が得られることがわかる。なお,
定速引張試験(経路1)では,この方法では,本来実 測曲線と予測曲線は一致するべきものであるが;Fig.
7ではこれが一致していない。これはFig.5の実測 曲線の3つのξ、がFig.7の定速引張試験の乙、とい つれも一致していないため,内挿でFig.7の予測を 行ったためである。
経路2において低ひずみ速度¢=3k10『5〜2.5×
10}6s−1)で変形する0.12〜0.13のひずみ範囲では,
実測曲線に比べ予測曲線がやや大きい変形応力を示し ている。この理由は次のように考えられる。Fig.3
(a)に示した673Kの3個の測定値(これらのデータ は中西法で用いたFig.5の定常変形状態から得た)
は,よく見ると直線から外れやや上に凸になっている。
この3点を滑らかに結ぶ曲線を引いて,低ひずみ速度 領域の変形応力を外挿法で求めると,応力を高く予測 することになり,これが予測曲線がやや大きくなった 原因であると考えられる。したがって,中西法で精度 の高い予測を行うためには,広いひずみ速度範囲にわ たって,少なくとも数個の定速引張試験による応カー ひずみ曲線を実測する必要がある。また,中西法では 本質的に材料毎に予測に必要な応カーひずみ曲線を求 めなければならないという欠点がある。
2.3 変形機構に基づいた予測法 2.3.1方 法
最近,著者ら2)3)は固溶硬化合金の高温変形機構に 基づいた変形応力予測法を提案し,実験的検討も加え た結果,変形応力を精度よく予測できることを示した。
ここでは,その予測法の要点のみを述べる。
固溶硬化合金の変形が転位の溶質雰囲気引きずり機
構で律速されている場合の変形応力は,
σニ・σ 十 i
α鍔b(ξ。一÷) (6)
で与えられる。ここで,σiは転位間の長距離相互作 用に基づく内部応力,右辺第2項は転位の溶質雰囲気 引きずりに必要な有効応力(引きずり抵抗)で,αは 内部応力の発現機構iによって決まる定数†12)13)14),Mは テーラー因子15)(fccであるA1−Mg合金では3.06),
Bは刃状転位の易動度である。α,M, G, bおよびB は温度と合金組成が一定であれば定数である。また,
式(6)より明かなように,応力の変化速度δは,ε、
を与えればσとσiより求められ,微小時間dt後の変 形応力はσ+δdtより求められる。したがって,変 形応力を予測するには,変形経路に沿う内部応力σi の変化が予測できればよい。
内部応力の増分dσiは加工硬化と回復の競合で決
まる16)17)が,著者ら2)3)は加工硬化については転位の増 殖と正負転位の会合による対消滅を考え,回復につい ては転位の上昇運動による対消滅と初期に存在する転 位ネットワークの変形にともなう消失を考えると,
dσiは
dら一
oA鳶ら(ご。一÷)一RDギ
一πD4・xp(一δ・)}d・
となることを示した。ただし,
α2G2bM3 A=β・ 4σisat
R=・ ro
R =
2α2M2G2b2 r 0
2αMGb
(7)
(8)
(9)
(10)
である。ここで,σisatは回復がないときの飽和内部 応力,Dは拡散係数,β・は変形による転位の増殖係 数,r・およびr ・はそれぞれ回復および初期ネット
ワーク生長速度の比例係数であり,δはr oを含む項
†αは内部応力と転位密度を関係ずける係数であり,ひずみ 速度と転位密度によって平均転位速度が決まり,平均転位速 度によって有効応力が決まる。
一330一 固溶硬化合金の高温変形応力予測法の検討
30
ε
≡
b20
㎡
$
砺10
≧
2 L O
、
Al−30t。 。Mg _Meqsured 673K 一一一bqlculqted Bo=97x105 m−1 馬=78.7,
σlq㌔3・・M・・:㎡・2馴・8㎡6・5・・
② ③一_1
、、、、 一一一一 1 、、、、 , 巳 h 1 祀 1
!!1
① \、
O O・05 0・10 045
APPαrent stroin、 ε冶
Fig.8 Tensile stress−strainごurves measured (solid lines) and predicted (dashed lines) on the basis of eqs. (6) and (7) for the paths 1,2 and 3 shown in Fig.2.
のひずみによる減衰率である。したがって,パラメー
タσisat,β・, r・, r ・およびδが決まると,式(6)と(7)に
より変形応力の予測が可能となる。各パラメータの中 でr ・とδはただ1つの定速引張試験の高温降伏現象 を再現するように2重回帰法によって決定することが でき,また,σisat,β0およびroは定速引張試験:の定 常変形状態における内部応力の実測値と回復速度の報 告値18)を用いることによって決定することができる。
2.3.2予測結果
予測に必要なパラメータをFig.5(a)に示したε、
=2.8×10−4s一ユの応カーひずみ曲線とこの定常変形状 態における内部応力の測定値(σi=8.OMPa)および 吉永18)の回復速度の報告値を用いて決定した。得られ た予測曲線と実測曲線を比較した図をFig.8に示す。
図で実線は実測曲線であり,破線は予測曲線である。
また,予測に用いた5つのパラメータをFig.8中に 示した。なお,予測計算に必要な物性定数には,剛性 率G(=19.4GPa)19),拡散係数D(=5.65×10−15m2
s}1j20)を用いた。転位の易動度Bには中島と吉永2Dの 計算値(3.69×10−13m・s−IPa−1)を用いた。
予測曲線は実測曲線を全般にわたってほぼ再現して いる。前述の2つの方法に比べ,固溶硬化合金の高温 変.形機構に基づいた変形応力予測法による予測結果に は,高温降伏現象も明瞭に現れており,実測曲線を一 番よく再現していることがわかる。本予測法の利点は 中西法のよう・に多数の条件での実測曲線を用いる必要 がなくただ1つの定速引張より必要なパラメータを決
定できることと,各パラメータの物理的な意味が明確 な点である。
3.結
言Al−3at%Mg固溶硬化合金2)の673Kにおける変形応 力の変形経路依存性を定常変形状態の状態方程式を用
いる方法,中西法4)5)および変形機構に基づく方法2)3)
で予測し,実測曲線と比較して各予測法の優劣につい て検討した。
その結果,状態方程式を用いる方法では,変形初期 を除けばほぼ実測曲線を再現できるが,変形初期の高 温降伏現象がまったく再現できないことが明らかにな った。また,中西法および変形機構に基づく方法では いずれも高温降伏現象を含め概ね実測曲線を再現でき るが,変形機構に基づいた予測法の方が予測精度はや や優れていた。
中西法では数種類のひずみ速度の異なる定速引張試 験による応カーひずみ曲線が必要であるにの対し,変 形機構に基づいた予測法ではただ一つの時速試験の データのみで予測ができる。また,後者は高温変形の 基本原理に基づいた考え方によって予測式を導いてい るため,予測に必要なパラメータの物理的な意味がわ かっている。したがって,この予測法をいろいろな種 類の合金に適用する場合の見通しが良い。さらに,必 要があれば転位同士の相互作用による内部応力や転位 の溶質雰囲気引きずりに必要な有効応力を分離して予 測3)したり,転位密度の変形による変化を時間やひず みの関数として求めることもできる。このように,変 形機構に基づいた予測法はパラメータの物理的な意味 が明かであるばかりでなく,予測に必要な実験も一つ ですみ,予測精度も高く変形応力予測法として優れて いるといえる。ただし,変形機構は材料の種類や変形 条件に強く依存するので,変形機構が異なれば本予測 法も適用できないことになる。ここで用いた著者らの 方法は転位の溶質雰囲気引きずり運動を前提にしてい るので,転位が雰囲気から離脱するような条件での変 形には適用できない22)。したがって,今後は広範囲の 変形条件にわたる変形応力予測への拡張が必要であろ
う。
謝 辞
終わりに,本研究の一部は軽金属奨学会の研究補助 金によって行われたものである。ここに特記して深甚 なる感謝の意を表する。
一331一
参 考文 献
1)L,Raymond and J. E. Dorn. T7αη5.、41ル1E,230(1964),560.
2)宮川英明,中島英治,吉永日出男.日本金属学会誌,投 稿中.
3)宮川英明,吉武秀介,中島英治,吉永日出男 日本金属 学会誌,55(1991),20.
4)岡村俊一,中村正久,中西賢二.塑性と加工,16
(ユ975), 636.
5)中西賢二.塑性と加工,30(1989),262.
6)H.Oikawa.」厚。 1)ψηηα 歪。η qブ、4」麗ηz勿π2η z1」勿5. The Minerals, Metals and Materials Society,1991.
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8)F.Guiu and D. L. Pratt. P妙∫.3 α施5εo麗4歪,6(1964),111.
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351.
10)堀内 良,吉永日出男.日本金属学会誌,29(1965),
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12) G.Saada.∠16 αルf8ご.,8(1960),480.
13)W.Carrington, K, F. Hale, and D. McLean. Pγ06. R妙.306.,
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14)J.D. Baird and B. Gale. Pん乞1.τrαη∫. R(ワ.εoc., A 257 (1965),553.
15)G.LTaylor.ノ.1π5 .ルf8乙,62(1938),307.
16)RW. Bailey.∫1観.読励,35(1926),27.
17)E.Orowan。 Z. P勿ノ5,89(1934),614.
18) H.Yoshinaga。 Cr6ψαη4 Fγα6魏γθ〔〜ブEηg歪πθθ擁ηgルfα言εγ歪α♂5αη4 8∫πκ α76.Pinering Press,1981.
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20)H.Oikawa, N. Matsuno, and S. Karashima. 漁 αZ&ゴ.,9 (1975),209.
21)中島英治,吉永日出男.日本金属学会誌,印刷中.
22)宮川英明,中島英治,吉永日出男.日本金属学会誌,投 稿準備中.