平成27年度 学内研究助成金 研究報告書
研 究 種 目
■奨 励 研 究 助 成 金 □研究成果刊行助成金
□
21
世紀研究開発奨励金(共同研究助成金)
□
21
世紀教育開発奨励金(教育推進研究助成金)
研 究 課 題 名
二酸化炭素の選択的付加反応を利用した新しい高分子の合成:
リチウムイオン電池用電解質ゲルへの展開
研究者所属・氏名研究代表者:分子工学研究所 助教 青柳 直人 指導教授:分子工学研究所 教授 遠藤 剛
1.研究目的・内容
エポキシ基を有するオキセタンモノマーに対し、温和な条件(
1
気圧・室温付近)で触媒活性 を有する環状アミジンヨウ化水素塩を用いることでエポキシ基のみを二酸化炭素(CO
2)と選択 的に反応させ、五員環環状カーボナートを有するオキセタンモノマーを合成する。次にこのモノ マーのオキセタン環のみを選択的に開環重合することで、側鎖に環状カーボナートを有するポリ オキセタンを合成し、更にリチウムイオン添加剤を用いて電解質ゲルを作製する。2.研究経過及び成果
まず最初に、五員環環状カーボナート構造を有するオキセタンモノマー
(1)
を二段階で合成した(Scheme 1)
。反応の一段階目では、原料の3-
エチル-3-
オキセタンメタノールの水酸基部分がエピクロロヒドリンのエポキシ環へ求核攻撃して開環し、それに引き続く塩基存在下での閉環反応に よってエポキシ環を有するオキセタンモノマーが得られた。そして二段階目では、このモノマー のエポキシ環と
CO
2の反応は触媒としてDBU
•HI
を用いることで、常圧・無溶媒で定量的に進 行した。この反応は温和な条件で進行するため、オキセタン環とCO
2を反応させることなく、ほ ぼ100%
の選択性でエポキシ環のみが環状カーボナートへ変換された。このモノマー(1)
は分液操 作だけで精製することができ、次の重合反応へ用いることが可能である。次に、既知の環状カーボナート
(3)
を用 いて、ルイス酸触媒(BF
3•Et
2O)
存在下 での五員環環状カーボナートの安定性 を 検 討 し た(Scheme 2)
。 反 応 温 度 を25 °C
から60 °C
まで上げても、BF
3•Et
2O
による五員環環状カーボナートの 開環重合等は進行しない事を明らかに した。そして、オキセタンモノマー
(1)
および市販の二官能性モノマー(2)
を用いて、BF
3•Et
2O
を触媒 とするカチオン開環重合を試みた(Scheme 3)
。いずれの反応も25 °C
で12
時間後にはモノマー をほぼ消費し、分子量8,000-10,000
程度の高分子量体が得られた。エポキシモノマーのカチオン 開環重合の場合はエポキシ環の塩基性が低いため、生長末端から高分子主鎖中の酸素原子へ求電 子的にバックバイティング反応が起こり、分子量1
万前後の高分子量体を得ることは困難である。NN HH NN
DDBBUU-
-HHII((55momoll%%)) II
CCOO22((11aattmm)) BuBullkk,
,4545 °
°CC, ,4848hh OO
OO
OO OO
OO OO
1::1 9999%%
OO OO
NNaaOOHH((11. .0055eqeq)) ((22eqeq)) BBuullkk,
,5050 °
°CC, ,1212hh OHOH
OO CllC
OO
7272%% ScSchheemmee11.
.SySynntthheessiissooffoxoxeettaanneemomonnoommeerrcoconnttaaiinniiggccyycclliicccacarrbboonnaattee. .
(
(22mmooll%%)) CCHH22CCll22,
,2255 °
°CC, ,1122hh BBFF33-EEtt22OO
BBuuOO OO OO
OO
33 SScchheemmee22.
.NNoorriinngg-
-ooppeenniinnggpprroodduuccttssooffccyycclliiccccaarrbboonnaattee iinntthheepprreesseenncceeooffBBFF33-
-EEtt22OO. . oorrDDCCEE,
,6600 °
°CC, ,1122hh
BBuuOO OO OO
OO
NNoocchhaannggee
それに対してオキセタン環は塩基性が高く連鎖反応が起きにくい為、オキセタンモノマー
(1)
から は高分子量体のPoly-1
およびPoly-1-co-2
が得られたと推測された。そして、1H
及び13C NMR
分析より、ポリマー側鎖の五員環環状カーボナートは開環せずに構造を保持していることを明ら かにした。また、架橋剤(2)
を25 mol%
用いて得られたPoly-1-co-2
は、Poly-1
と比較して分子量 分布が大きく広がり、2
を42 mol%
以上用いるとPoly-1-co-2
はほぼ完全にゲル化した。次に得られたポリマーの熱物性を測定した。まず熱重量測定
(TG-DTA)
ではいずれのポリマーも 良好な耐熱性を示し、単独重合体であるPoly-1
の5%
重量減少温度( T
d5)
は293 °C
であった。そ して架橋剤(2)
の割合が増えるにつれて耐熱性は向上し、モノマー(1)
と(2)
が1:1
の比で得られる ネットワークポリマー(Poly-1-co-2)
のT
d5は333 °C
に達した。次に示差走査熱量測定(DSC)
では、単独重合体である
Poly-1
のガラス転移温度( T
g)
は8.0 °C
であり、モノマー(1)
と(2)
が8:2
の比で 得られるPoly-1-co-2
のT
gは25.6 °C
であった。従ってPoly-1-co-2
中の架橋剤(2)
の割合が増加す ると共にT
gは上昇したが、高架橋体でもT
gが室温付近なので、側鎖に五員環環状カーボナート を有するポリオキセタンは高い柔軟性を有することが分かった。そしてモノマー
(1)
と(2)
が8:2
の比で得られるPoly-1-co-2
にリチウム化剤であるビス(
トリフル オロメタンスルホニル)
イミドリチウム(LiTFSI)
を100mol%
添加したところ、高濃度の添加にも 関わらず良好な相溶性が見られ、均一な電解質ゲルが得られた(Chart 1)
。この電解質ゲルのT
gは
20.5 °C
であり、リチウム化剤を加える前の25.6 °C
より低下した。一般的なポリマー電解質であるポリエチレンオキシドはリチウム化剤を添加すると
T
gが上昇し、局所的に結晶化が起こり イオン電導性が低下する問題点がある。これはポリエチレンオキシド中のエーテル部位とリチウ ムイオンの相互作用が強いためであり、通常はリチウム化剤の添加は
10-20 mol%
が限界である。本研究で 合成したポリオキセタンの側鎖の五員環環状カーボ ナートはエーテル基より塩基性が低く、リチウムイオ ンとの相互作用も弱いためにリチウムイオンが移動 しやすく、リチウム化剤を100 mol%
添加しているに も関わらず柔軟性が向上したと考えられる。以上の結 果より、本研究で開発したネットワークポリマー(Poly-1-co-2)
は、従来のポリエチレンオキシドよりも高濃度でリチウム化剤を添加でき、リチウムイオン電 池用電解質ゲルとして有望である。
3.本研究と関連した今後の研究計画
本研究において開発した、側鎖に五員環環状カーボナート基を有する架橋ポリオキセタン
(Poly-1-co-2)
は、リチウム化剤(LiTFSI)
を高濃度(100 mol%)
で添加しても柔軟性が高く、リチウ ムイオン電池用電解質ゲルとしての利用に適している。今後は、
Poly-1-co-2
にLiTFSI
を更に添加(200mol%
~)
した際の柔軟性への影響を検討し、添 加量の上限を見極める。そして得られた種々のリチウムイオンゲルのイオン伝導性を測定し、リ チウムイオン電池用電解質ゲルとしての性能を評価する。OO OO
((11 mmooll%%)) 2255°
°CC, ,1122 hh BFBF33
-E-Ett22OO
CHCH22CllC22
22 ((00-
-110000 mmooll%%))
OO OO
OO OO
11 oorr
C oConnvv. .>>9999%%,
, MMnn:: 88, ,000000-
-1100, ,000000 PPoollyy-
-11- -coco-
-22 ScSchheemmee 33.
. CCaattiioonniicc rriinngg-
-ooppeenniinnggppoollyymmeerriizzaattiioonn ooffooxxeettaannee mmoonnoommeerrss. . OO
C oConnvv. .>>9999%%,
, MMnn:: >>1100, ,000000 PoPollyy-
-11
nn
OO OO
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OO OO
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OO OO
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OO SS
NN SS
LLii FF33CC
FF33CC OO OO OO
OO CChhaarrtt11.
.MMiixxttuurreeooffPPoollyy- -11-
-ccoo-
-22wwiitthhLLiiTTFFSSII. .
4.成果の発表等
発 表 機 関 名 種類(著書・雑誌・口頭) 発表年月日(予定を含む)