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太陽熱湯沸装置を用いた熱水発電の優位性

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Academic year: 2021

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40

<総説>

太陽熱湯沸装置を用いた熱水発電の優位性

迯目英正

1

・八木田浩史

2

・角田晋也

3

・伊藤拓哉

4

・鈴木誠一

5

・小島紀徳

6 1

㈱デザインウォーター・

2

日本工業大学・

3

国立研究開発法人海洋研究開発機構・

4

沼津工業高等専門学校・

5

成蹊大学・

6

NPO マクロエンジニアリング研究機構

E-mail: [email protected]

<要旨> 発電の安全性・安定性・負荷追随性・拡張性・低コストなどを備え、環境保全に資する太陽熱水発 電(Solar hot water Thermal Energy Conversion、以下 STEC)を開発した。

LSTEC は、熱源を太陽熱とすることで不偏的かつ実用的に無尽蔵であり、集熱温度を 95℃に下げる ことにより集光・作動媒体輸送・蓄熱におけるエネルギーロス・装置コストを抑え、発電の安定性 (24 時間/日かつ 365 日/年)を確保し、別報で可能性を検討した低温スターリングエンジンの利用で 発電効率を改善し、発電コストを低減できる。 更に、STEC は太陽熱に限らず低品位の排熱・地熱などを利用できるので、熱汚染やヒートアイラン ドの解消に資するほか、低コストで必要十分な電力・エネルギーを家庭・企業・地域・国家単位で自 給できるようになり、世界の環境・生活・社会・文化基盤に貢献する。 <キーワード> 太陽熱、海洋深層水、発電コスト、独立分散型、大規模ベース電源、熱汚染、ヒートアイランド

Superiority of Solar Hot Water Thermal Energy Conversion (STEC)

using Solar Hot Water Heater

Eisei NIGEME

1

, Hiroshi YAGITA

2

, Shinya KAKUTA

3

, Takuya ITO

4

, Seiichi SUZUKI

5

and Toshinori KOJIMA

6

1

DesignWater Co., Ltd.

2

Department of Liberal Arts and Sciences, NIPPON INSTITUTE OF TECHNOLOGY

3

Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology

4

Department of Chemistry and Biochemistry, National Institute of Technology, Numazu College

5

Department of Materials and Life Science, Faculty of Science and Technology, Seikei University

6

NPO Research Institute for Macro-Engineering Practice

E-mail: [email protected]

<Abstract>

We have realized Solar hot water Thermal Energy Conversion (STEC), which has safety, stability, load followability, expandability, and low cost of power generation, besides environmental protection.

To be universal and inexhaustible, STEC uses solar heat as a heat source. Lowering the heat collection temperature to 95℃, we suppress energy loss and equipment costs in light collection, working medium transportation, and heat storage, securing power generation stability (24 hours / day and 365 days / year). Low-temperature Stirling engines whose possibility was examined in a separate report, enable STEC to improve the efficiency and

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reduce the cost of power generation.

Utilization not only of solar heat but also of low-grade waste or geothermal heat as a heat source, can mitigate heat pollution and heat islands, and realize the self-sufficient power, energy supply necessary to household, company, region, national unit at low cost, to contribute to the world's environment, livelihood, society and cultural foundation in the world.

<Keyword>

Solar heat, deep sea water, power generation cost, independent distributed, large-scale base power supply, heat pollution, heat island

1.

緒言(新たな発電システムの必要性)

1.1 発電システムの要件とエネルギーミックス 電力需要は時間的・季節的変動が大きく、電力の安定供給に向け、発電システムには安全性※1・安 定性※2・負荷追随性※3・低コスト※4・拡張性※5・環境保全※6などが求められる。Table 1 は既往発電シ ステムにおいてこれら要件と適用性を示したものである。要件のすべてを満足するシステムは存在し ないため、それぞれベース電源・ミドル電源あるいはピーク電源として互いに補完している*1 なお、※を付した注釈は既知とすべき、または既報と重複するため、巻末の注 1)発電要件の考え 方、注 2)既往発電システムおよび高温側熱源の評価・適用性、注 3)低温側熱源の評価、適応性、およ び注 4)発電装置にまとめた。 Table 1 既往発電システムの評価 凡例 〇…優れる、△…ほどほど、×…劣る、以降同じ 1.2 新たな発電システムの必要性 再生可能エネルギーが注目されているが、従来のピーク電源を一定量以上に増やすことは、ブラッ クアウトの危惧・発電の安定性のしわ寄せによる電気料金の高騰など、電力賦課金以上に弊害が多 い。環境保全を実現するには、安全性・安定性・負荷追従性・低コスト・拡張性・環境保全など、電 力システムの要件を全て満たす、ミドル電源・ベース電源に足る新たな発電方式が求められる。

2.

発電システム構成要素と特徴

発電要件を満足できるか否かは、構成要素の高温側熱源・低温側熱源・発電装置(エネルギー変換 選択肢 安全性※1 安定性※2 負荷追従性※3 コスト※4 拡張性※5 環境保全※6 適応性 原子力発電※7 ベース 火力発電※8 × ミドル バイオマス発電※9 ピーク 地熱発電※10 ベース 排熱発電※11 × × ピーク 太陽熱発電※12 ピーク 太陽光発電※13 × ピーク 水力発電※14 × ピーク 風力発電※15 × ピーク

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42 装置)それぞれの特性とその組み合わせに依存する。新たな発電システムの開発では、構成要素ごと に電力の要件を満たす装置の選択と組み合わせ、必要に応じ新たな技術を開発することになる。 高温側熱源・低温側熱源・発電装置それぞれの選択肢に対し、発電要件を満足するか否か、次にそ れぞれの特性・適用性を整理する。 2.1 高温側熱源 Table 2 に高温側熱源の比較を示す注2。熱源温度が高いほど発電効率はよくなるが、エネルギーロ ス・熱源コストは高くなる。例えば、太陽放射はエクセルギーが高く、高度に集光すれば高温にでき るが、高温にするとエネルギーロスが大きく、製作・検査・制御を含め、集熱コストは安くならな い。現状で発電要件全てを満足する熱源はないが、低温スターリングエンジンが効果的に利用できれ ば、太陽熱を低温で集熱することに合理性が生ずる。 Table 2 高温側熱源の比較 選択肢 温度(℃) 安全性 安定性 負荷追従性 コスト 拡張性 環境保全 総合評価 原子力※7 500 × 化石燃料※8 ~1,500 × バイオマス※9 500 地熱※10 ~300 排熱※11 ~200 × × 太陽熱(高温) ※12 ~1,500 × × 太陽熱(低温) ※16 ~100 2.2 低温側熱源 Table 3 に低温側熱源の比較を示す注 3)。低温側熱源は、温度は低く、季節変動・日変動の影響を受 けないことが望ましい。大量に使用すること、使用後は水温が数~十数℃高くなることから環境への 配慮を要する。海洋深層水は水深 500m で 10℃、1,000m で 3.2℃と低く、年間を通じ一定である。特 に高温側熱源が低いとき、低温側熱源温度の発電効率への影響は大きく、取水条件に恵まれるサイト では海洋深層水の利用が勧められ、更には発電所を良好な取水サイトに立地することも考えられる。 Table 3 低温側熱源の比較 選択肢 温度 安定性 負荷追従性 コスト 拡張性 環境保全 総合評価 陸水※17 △(10~30℃) × × × 空冷※18 ×(45~55℃) 表層海水※19 △(15~30℃) 海洋深層水※20 〇(5℃一定) 2.3 発電装置(エネルギー変換装置) 前節で高温側熱源度を下げたときの熱源の選択肢・合理性に触れたが、Table 4 は比較的温度の低 い(低品位の)熱源向けの既往発電装置の出力・発電効率・価格等を示したものである*2~5 オーガニックランキンサイクル(以下 ORC)機は低価格であるが発電効率で劣る*2,3。カリーナサイ クル機は、発電効率は改善されるが高価になる*3。OTEC 用高性能 ORC 機も発電効率で改善されるが高 価である*3,4。当然の結果でもあり計算過程は割愛するが、これらの発電装置と相対的に温度の低い高

(4)

43 温側熱源と海洋深層水の組み合わせによる発電コストは石炭火力発電のコストに及ばなかった*6 原理的には、ORC・カリーナサイクル・高性能 ORC はランキンサイクルの変形で、作動気体の蒸発/ 凝縮に伴う潜熱は大きいが、使われた熱量は圧力変化に伴うタービンの回転を介したエネルギー変換 に役立たない。この潜熱に使われる熱量(エネルギーロス)は、高温側熱源温度が高いときは出力に 対し小さいが、高温側熱源温度が低くなると大きな比重を占め、発電効率の向上には限界が生ずる*7 スターリングエンジンは元々蒸発/凝縮の潜熱はなく、作動気体の温度変化と膨脹/収縮の圧力によ る熱・エネルギー変換に基づき、熱伝導・熱橋・熱攪拌(再生器部)・摩擦などのエネルギーロスを小 さくできれば、カルノー効率に近い性能を発揮する。詳細は別報に記したので参照されたい*5 Table 4 低温熱源対象発電装置の主な機種と性能、価格 熱サイ クル メーカ 名称(型式) 定格出力時の 熱水、冷却水水温,水量 発電端 出力 発電効 率 価格 千円 比 ORC ㈱神戸 製鋼所 マイクロバイナリー発電 システム(MB-70H)*3 熱水 95℃、1,250ℓ/min 冷水 15℃、2,000ℓ/min 72kW 2.1% 28,000 0.7 カリーナサイクル (KCS) 地熱技術 開発㈱ カリーナサイクル発電システム (KCS-34g-50)*3 熱水 98℃、388ℓ/min 冷水 14℃、1,200ℓ/min 87kW 8.0% 87,000 1.8 高性能 ORC ㈱ゼネシ ス 久米島 OTEC 用*4 熱水 25.7℃、207,000ℓ/min 冷水 7℃、162,000ℓ/min 1,250kW 1.8% 3,100,000 81.4 低温スターリン グエンジン DW 社 低温スターリングエンジン LSE-3K, -10K*5 熱水 95℃、63ℓ/min(10kW) 冷水 5℃、216ℓ/min(10kW) 3kW 10kW 10.9% 11.4% 4,200 11,000 2.0 2.0 2.4 熱源と発電装置の組み合わせ、太陽熱水発電の可能性 以上から高温側/低温側熱源・発電装置の組み合わせで、既往例と STEC の比較を Table 5 に示す。 排熱発電は小規模・手軽な熱源利用に適する。海洋温度差発電は高温側に表層水、低温側に海洋深 層水を用いその温度差で発電するものであるが、温度差が小さいため高性能 ORC 機でも発電効率に限 界があり原理的に実用化は難しい。地熱発電では、地熱を収集できるサイト・熱量は限定され、立地 に応じた小規模なものになる。STEC は太陽熱湯沸装置・海洋深層水取水装置・低温スターリングエン ジンで構成され新規開発技術はあるものの発電の要件すべてを満たす。 なお、低温スターリングエンジンは高温側/低温側熱源の種類・温度を選ばない。ここでは高温側熱 源を不偏性から太陽熱を低温で集熱するとしているが、立地条件により排熱・地熱・ソーラーポンド などからも選択できる。低温側熱源は発電コストの低減を目指し海洋深層水としているが、陸水・空 冷・表層海水などからも選択できる。 Table 5 高温側熱源、低温側熱源、発電装置の組み合わせと比較 高温側熱源 低温側熱源 発電装置 安 全 性 安 定 性 負 荷 追 従 性 コ ス ト 拡 張 性 環 境 保 全 適 用 性 排熱発電 排熱 空冷, 陸水 ORC 機 〇 × × △ × 〇 △ 海洋温度差発電 表層海水 海洋深層水 高性能 ORC 機 〇 △ △ × △ 〇 △ 地熱発電 地熱 空冷 カリーナサイクル機 〇 〇 △ △ △ △ △ 太陽熱水発電 太陽熱(低温) 海洋深層水 低温スターリングエンジン 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 注 4)※21

(5)

44

3.

太陽熱水発電(STEC)の概要

3.1 システムの構成 出力 1 万 kW の STEC について、Fig.1 に全 体図、Table 6 に発電所仕様を示す。以下、 構成要素を具体的に述べる。 3.2 太陽熱湯沸装置 Fig.2 に太陽熱湯沸装置の外観、Table 7 に 集熱効率を示す。太陽熱湯沸装置は、太陽光の 各行程(反射板の受光・反射、レシーバーの透 過・吸収)でエネルギーロスを最小化するよう に配慮したもので、以下の特徴を有する。 ① 集熱温度を下げることで、エネルギーロスを 低減し、製作精度・検査・設置に余裕ができ ることに加え、作動媒体は水を常圧で使用で き、製作コストを低減できる。 ② 制御を単純化、使用エネルギーを最小化し、 維持管理コストも低減できる。 ③ 反射材・反射防止剤・日射吸収材・断熱材な どは最先端技術を用いることができる。 項目 単位 数量 出力 kW 10,000 日射量(集熱板直達+散乱) kWh(熱)/m2/d 3.14 集熱板敷地面積 ha 161 雨天, 曇天時発電継続日数 日 3 貯水池容量 m3 300,000 海洋深層水 水温 ℃ 5.0 取水量 m3/d 311,000 低温スターリング エンジン発電所 面積 m2 1,333 基数(10kW) 基 1,000 項目 細目 有効率 備考 反射板 汚れの影響 98.0%±0.1% メーカー値 低高度除外 97.9%±0.1% 図解法 反射率 92.5%±0.1% メーカー値 誤差 99.8%±0.1% 形態から算出 レ シ ー バー 透過率 94.5%±0.1% メーカー値 熱変換率 99.0%±0.1% 〃 断熱 97.3%±0.1% 〃 誤差 99.9%±0.1% 形態から算出 水路 熱伝導ロス 99.4%±0.1% 〃 貯水池 熱伝導ロス 99.8%±0.1% 〃 有効率 80.0%±1.0% 一般 70~90% Fig.2 太陽熱湯沸装置 Table 7 太陽熱湯沸装置の集熱効率 Fig.1 STEC 全体図 Table 6 STEC 発電所仕様(於:久米島) 100m(×n1)  反射板 北 レシーバー   西 東 熱媒体送水管 17 @ 5. 88m = 100m ( × n2 ) 5 5 ℃~75℃ 95 ℃ 低温太陽熱集熱装置 5 .0℃ 1 5 .0℃ 南 貯水池 海洋深層水取水装置 P P P 発電器 P P P P P 低温スターリングエンジン 低温太陽熱集熱システム G SE

(6)

45 ④ 理論的・技術的に難しいところはなく、設計・積 算できる。 なお、本集熱装置は発電用のみならず、手軽で効 率的な集熱器として、農業・地域冷暖房・温泉など 他分野でも有用である。 3.3 貯水池 集熱装置で暖められた作動媒体(淡水)は送水管 を通じ貯水池で貯水(蓄熱)される。Fig.3 に貯水池 の断面、Table 8 に諸元を示す。 3 日間の雨天・曇天でも定格出力で連続運転でき るようにした場合、集熱温度が低いため、貯水量は 出力 1 万 kW で 300,000m3となる。 容量が大きく水温が低いため、3 日間貯水した時 の水温低下は 0.24℃、送水管(熱水管、温水管の延 長 1km、流速 1.0m/s)における水温低下は熱水管で 0.16℃、温水管で 0.07℃、合計で 0.47℃と小さく、 実用的な蓄電に相当し、発電の安定性に寄与する。 3.4 海洋深層水取水装置 Fig.4 に海洋深層水取水施設の側面図、Table 9 に諸元を示す。取水管敷設工法は、大規模取水・ 低コストに対応できる必要があり、従来の工法は使えない。図は DW 工法*8によるもので、建設・操業 時に要するエネルギー(≒取水コスト)を最小化するよう意図されている。従来工法とは異なるが、 要素技術は既往で新たな技術開発を伴わない。 なお、取水条件・取水コストはサイトにより大きく異なる。ここでは他工法・他発電方式との比較 のため、久米島の海洋条件・海底地形とした。 項目 細目 単位 数量 容量 熱水 m3 75,000 温水 m3 75,000 蒸気圧 気圧 1.3 構造 形式 RC 地下貯水池 縦 m 100 横 m 100 深さ m 15 3 日後水温低下 ℃ 0.24 項目 単位 数量 取水量 m3/d 311,000 水温 ℃ 5.0 水深 m 850 取水管延長 km 3.7 水頭 m 3.5 管径 mm φ1,800 流速 m/s 1.42 工事費 億円 27.0 取水コスト 円/m3 1.21 ジェット埋設(砂地盤) 弧状推進 管防護 1km 発電装置へ 海面 水深約33m 水深約60m 砂 P 岩盤  自然流下(水圧による送水)で、管縦断の凹凸は問題にならない。 水位差により、ピット に海水が侵入する 砂地盤のところはジェット埋設で管防護(ただし、 水深60mくらいまで) 管防護:岩盤の中を弧状推進(水平ボーリン グ)による削孔、中を取水管を通す。 Fig.4 海洋深層水取水装置側面図 100m 15 m P P P P 3m Fig.3 貯水池断面図 Table 9 取水施設諸元 Table 8 貯水池諸元(15 万 m3,2 面)

(7)

46 3.5 低温スターリングエンジン Fig.5 に低温スターリングエンジンの概観を、Table 10 に仕様を示す*5。なお、拡張時の仕様は実 験機からの想定したものである。 低温スターリングエンジンはエクセルギーの小さい熱源(温度が低く従来は使えず、熱汚染やヒー トアイランドの原因になっていた)を経済的に利用でき、発電装置として以下のような特徴を持つ*7 ① 熱効率に優れる(カルノー効率に近い)。 ② 排ガスがない。 ③ 静粛 ④ 長寿命(20~60 年) ⑤ 構造が単純、メンテナンスが容易 ⑥ 可逆サイクル(熱⇔動力) 3.6 発電コスト (1)日射量の感度 Table 11(次頁)に久米島(計画中の OTEC とも比較できる)・館山・ペルーにおける発電コスト (日射量の STEC 発電コストへの影響)を示す。なお、高温側熱源入温度 95℃・出温度 75℃・流量 9.1 万 m3/日、低温側熱源入温度 5℃・出温度 10℃・流量 31.1 万 m3/日で、出力は 1 万 kW、発電効率は 11.4%となる。 日射量(kWh(熱)/m2/d)は久米島で 3.14、国内で比較的日射量に恵まれる館山で 3.54、世界的に日射 量に恵まれるペルーでは 9.30 であり、集熱面積(ha)はそれぞれ 161.3、142.9、54.4 と大きく異なっ てくる。 発電コストは久米島 OTEC の 120.5 円/kWh*4,*8に比べ、同じ久米島における STEC で 15.9 円/kWh、館 山では 14.6 円/kWh、ペルーでは 8.0 円/kWh となる。日射量の発電コストへの影響は大きいが、サン ベルトなどに比べ日射に恵まれない日本においても、電力市販価格約 30 円/kWh に対し価格競争力を 持つ。 項目 細目 仕様 外観 外径 φ2,000mm 高さ H 2,000mm 高温側 熱源 作動媒体 淡水 温度 95℃ 低温側 熱源 作動媒体 海洋深層水 温度 5℃ 作動気体 種類 二酸化炭素 平均圧力 3.79 気圧 出力 単体 3kW~10kW 並列 任意(万 kW) 効率 発電効率 11.4% 機械効率 46.7% Fig.5 低温スターリングエンジン概観 Table 10 低温スターリングエンジン諸元 ⑦ 熱源は排熱・地熱・太陽熱など種類・温 度・量を選ばない。 ⑧ 小規模(3kW~10kW)でも合理的で、独 立・分散型に適する。 ⑨ 熱源をつなぐだけで並列でき、大規模出 力に対応できる

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47 単位 久米島 館山 ペルー 備考 集熱板幅 m 2.700 2.700 2.700 A 構造寸法からの設定値 日射量 kWh(熱)/m2/d(集熱板) 3.14 3.54 9.30 B 散乱光の一部を含む kWh(熱)/m/d(集熱板) 8.475 9.566 25.121 C =A×B エネルギーロス(有効率) - 0.800 0.800 0.800 D 構造形態からの計算値 集熱日射量 kWh(熱)/d/m(集熱板) 6.777 7.649 20.087 E =C×D 発電効率 - 11.4% 11.4% 11.4% F 95℃-5℃、CO2、3.7atm 発電量 kWh(熱)/d/m(集熱板) 0.774 0.873 2.294 G =E×F 稼働時間(24 時間×稼働率) h 21.2 21.2 21.2 H =24×I 貯水池有効率(気象変動含む) - 0.885 0.885 0.885 I 年日射量に対する有効率 集熱版面積当たり出力 kW/m(集熱板) 0.0364 0.0411 0.1080 J =G/H/I ↓1kW 当たり原単位 集熱装置延長 m 27.4 24.3 9.3 L =J/K 敷地面積 m2 161.3 142.9 54.4 M 集熱板延長×幅 集熱板面積 〃 74.1 65.6 25.0 N 集熱板延長×幅 2.2m ↓発電コスト(出力 1 万 kW を例に) 出力 kW 10,000 10,000 10,000 O 送電量 7,492 万 kWh/年 敷地 ha 161.3 142.9 54.4 P =M×100 所内率 3.4% 集熱板面積 〃 74.1 65.6 25.0 Q =N×100 事 業 費 集熱器,貯水池 億円 152.3 135.0 51.4 AA =Q×集熱板面積当たり 発電機 〃 31.6 31.6 31.6 AB 低温スターリングエンジン 関連施設(送電含まず) 〃 7.2 7.2 7.2 AC 久米島の条件で統一 深層水設備 〃 17.2 17.2 17.2 AD 〃 その他 〃 7.4 7.4 7.4 AE 〃 計 〃 215.7 198.4 114.8 AF Σ 原 価 償却費 集熱システム 億円/年 5.75 5.10 1.94 AG =AA/26.5 発電機その他 〃 1.54 1.54 1.54 AH =(AB+AC+AE)/30 運転維持費 〃 1.19 1.19 1.19 AI 久米島の条件で統一 深層水費 〃 0.57 0.57 0.57 AJ 〃(耐用年数 30 年) 借地料 〃 1.61 1.43 0.11 AK =P×20/10,000 租税公課 〃 1.22 1.12 0.65 AL =AF×0.565% 計 〃 11.89 10.95 6.00 AM Σ 発電コスト(原価) 円/kWh 15.9 14.6 8.0 AN =AM/7,492 目標:10 円/kWh 注 5)算出条件 ※22 日射量は NEDO データはじめ公開資料による。※23 各装置の性能, 工事費は概略設計, 積算による。 ※24 事業費、操業経費は事例よりカスタマイズしているが、あくまでも参考値である。 ※25 特別の断熱対策費は含まず。 Table 11 発電コストおよび日射量の感度 ※23 ※22 ※24 ※24 ※25

(9)

48 (2)低温側熱源の影響 海洋深層水に恵まれない場合は低温側熱源として表層海水・陸水・あるいは空冷を用いることにな るが、Table 12 に示すように、発電効率は 11.4%に比べ、それぞれ 10.1%、8.8%、8.1%と低減し、 発電コスト(円/kWh)は 15.9 に比べ、17.6、20.2、22.0 と増加する。海洋深層水に比べ表層海水・ 陸水・空冷では割高になるが、それでも市販価格より安価で海洋深層水は必須の条件ではない。 Table 12 STEC における、低温熱源による発電効率、発電コストの違い(概算)

4.

結 語

4.1 熱源温度と発電コストの関係 従来、発電システムでは、熱源温度を上げることに注力されてきたが、太陽熱の利用では、集熱温 度を上げると集熱コストも上昇し、発電コストの低減につながらない。低温スターリングエンジン で、低温熱源を効率的に活用できれば、低温での集熱でエネルギーロス・発電コストを抑えられる。 Table 12 に示すように、発電コストは集熱効率・エクセルギー率・発電装置機械損率・発電効率・ 工事費比・発電コスト比などの、熱源温度の関数( ~ )で表わされ、それぞれに実際の値を代入 することで Fig.6 を得る。 1)集熱温度と集熱効率の関係 一般的に、集熱温度を高くすると、集光・輸送の 全行程における集熱効率は落ちる。(集熱装置の構 造・工事費に依存するが、集熱温度 1,000℃で 65%、 400℃で 75%、95℃で 80%、60℃で 81%) 2)集熱温度とエクセルギーの関係 集熱温度を高くするとエクセルギーは大きくな る。(カルノー効率が大きくなる。60℃で 165W、 100℃で 255W、1,000℃で 800W、6,000℃で 960W) 単位 海洋深層水 陸水 表層海水 空冷 高温側熱源温度 ℃ 95⇒75 95⇒82.5 95⇒80 95⇒77.5 低温側熱源温度 ℃ 5⇒10 15⇒20 25⇒32 25⇒40 発電効率 % 11.4% 10.1% 8.8% 8.1% 発電コスト 円/kWh 15.9 17.6 20.2 22.0 ソーラーポンド温水発電 太陽熱発電 太陽熱水発電 60 ℃ 10 0℃ 1, 00 0℃ 6, 00 0℃ Fig.6 太陽熱集熱温度とエネルギー変換量, 工事費比,発電コスト比のイメージ Table 12 発電コストと諸変数(熱源温度)の関係 発電コスト=経費/発電量 経費=設備減価償却費+操業費 設備減価償却費= (熱源温度) 操業費=固定費+熱源コスト 熱源コスト= (熱源温度) 発電量=使用可能エネルギー×発電効率 使用可能エネルギー=集熱効率×エクセルギー率 集熱効率= (熱源温度) エクセルギー率= (熱源温度) 発電効率= (熱源温度) f 4 f 5 f 3 f 2 f 1 f 1 f 5 20 0℃ Sunpulse500

(10)

49 3)集熱温度と使用可能エネルギーの関係 結果として、使用可能エネルギー(=集熱効率×エクセルギー)は 1000℃前後でピークを迎える 発電装置の機械効率は 1,000℃以下で大きくは変わらない。 4)集熱温度と発電量(Fig.6 では日射量 1,000W としているため発電効率と同値)の関係 発電量(=使用可能エネルギー×機械効率)は 67W~230W で、800℃あたりでピークを迎える。 5)集熱温度と工事費の関係 工事費は集熱温度、集熱方式により大きく異なる。設計の考え方によるが、集熱温度を下げれば、 工事費は大幅に低減できる。 6)集熱温度と発電コストの関係 発電コストが最も低減する集熱温度・装置形態・発電方式は理論的に存在する。その際、集熱温度 と各変数の関係・特徴を生かす集熱装置・発電装置の考え方、新素材の活用等を含め設計が重要にな るが、提案は緒に就いたばかりで今後の多くの方の意欲的なチャレンジが期待される。 4.2 電力・エネルギーの低コスト・無尽蔵の自給(世界の平和)に向けて 太陽熱は普遍的かつ無尽蔵であり、集熱温度を下げることにより装置費・運用費を抑えるとともに、 集光・作動媒体輸送・蓄熱におけるエネルギーロスを抑え、発電の安定性(24 時間×365 日)を確保で き、低温熱源に適した低温スターリングエンジンでリーズナブルな発電システムを構築できる。 低温スターリングエンジン 1 基の出力は 3kW~10kW と小さく、小規模でもリーズナブルな分散/独立 型電源に適し、複数並列しスケールメリットを追求すれば、大規模な発電・エネルギー供給基地として 必要十分な電力・エネルギーを家庭・企業・地域・国家単位で自給できるようになる。

注 記

注 1)発電要件の考え方 ※1 安全性…技術開発、その先導・期待は社会・経済発展の源泉であるが、次世代にまで及ぶ、責任 の取れないリスクを冒す権利は誰にも与えられていない。 ※2 安定性…24 時間×365 日、定格出力連続稼働を理想とする。太陽光・風力発電は気象の影響を受 け、原子力・火力発電は冷却水(表層海水)の水温上昇で出力は低下し、安定とは言えない。 ※3 負荷追従性…電力需要変動に応じて出力を調整・追従できること。原子力発電や地熱発電は需要 変動に対し出力を頻繁に調整するには向かない。太陽光発電や風力発電には負荷追従性はない。 ※4 低コスト…電力は基礎的な社会・経済インフラで、そのコスト低減は社会の活性化につながり、 可能な限り安く供給することを第一義とする。ここでは、石炭火力発電を比較対象とした。 ※5 拡張性…世界の無電化地域に数億人、経済的理由で十分な電力供給を受けられない地域に数億 人、電化地域においても生活・社会・文化の向上のため電力需要・供給を制限すべきではない。 ※6 環境保全…熱汚染・ヒートアイランドは化石燃料消費の増大が一因となっていることに議論の余 地はない。本質的に膨大な需要を持つ電力には、環境保全との両立が求められている。 注 2)既往発電システムおよび高温側熱源の評価、適用性 ※7 原子力発電…フェールセーフを確認した上で(現状はそれ以前)、ベース電源としてのコストが課 題となる。提案の太陽熱も恒久ではなく、将来のエネルギー源として安全対策が望まれる。 ※8 火力発電…ピーク電源としての役割は重要であるが CO2問題が指摘されている。環境対策を進め、 社会的賛同を得ても、燃料費が高く、多くは期待できない。

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50 ※9 バイオマス発電…バイオマスの元が太陽に起因し、面的には希薄、広域に分布するため、輸送距 離・コストに制約があり、小規模・地産地消型・ピーク電源向きになる。 ※10 地熱発電…地殻は良質な断熱材で、サイトは熱道に限られ出力も制限される。これに対し、高温 岩体発電が研究されているが、亀裂を通しての熱水の注入・回収には難が多い*9。弧状推進の坑 道で迎えにいく方法が考えられるが、掘削に用いるベントナイトは現状では 200℃で分離し排土 できなくなる。低温スターリングエンジンを前提に、比較的低温で集熱することは考えられる。 ※11 排熱発電…排熱の活用は燃料の節約・環境保全に効果的であるが、日本では省エネが進み、排熱 の絶対量は小さく、工場は分散し、稼働時間は制限されるため、補助的な発電になる。 ※12 太陽熱発電…太陽光のエクセルギーは大きいが、高温集熱はエネルギーロスが大きく、既往発電 システムのプラント効率は 10%~30%である*10。集熱温度を下げれば、装置コスト・エネルギーロ スを落とすことができるが発電効率も低減し、低温スターリングエンジン以前は効果的ではな く、今も高温集熱装置の開発*11は続いている。 ※13 太陽光発電…モジュールコストは低減してきたが、付帯構造物の発電コストに占める割合は大き く、発電コスト低減には限界がある。日射の時間変動が大きく、蓄電コストの低減が待たれる。 ※14 水力発電…ダムの良好なサイトは開発済みで拡張性に劣る。また、降雨は気象変動の影響を受 け、安定性に危惧がある。貯水や水の位置エネルギーを抜くことは環境への影響が大きい。 ※15 風力発電…年間を通じ適当な風速に恵まれる箇所は限定的。突風や風速の変動など、安定性に危 惧がある。騒音・生態・景観などへの影響も大きい。 ※16 太陽熱水発電…高温側熱源コストの発電コストに占める割合は 40%~70%になり、発電コストの 低減には熱源コストの低減、そのためには集熱温度を下げる必要があったが、低温スターリング エンジンが実用化されていない状況で、集熱温度を下げる選択肢はなかった。集熱装置では、従 来は集熱温度を高くする必要から集熱コストには限界があった。海洋温度差発電の改良として、 集熱温度を 100℃未満とした太陽熱湯沸装置ついては既報*6を参照されたい。低温側熱源の選択 では、大量取水を必要とし、従来は表層海水・空冷以外はないものねだりで海洋深層水の検討も 限定的であった*8。低温スターリングエンジンの開発も従来は限定的・実験的*5なものであった。 要素技術を含め太陽熱水発電はベース・ミドル電源の自給を目指す初めての試みである。 注 3)低温側熱源の評価、適応性 ※17 陸水…陸水は、環境への影響を踏まえると発電冷却水としての大量使用に適さない。 ※18 空冷…水冷に比べ、熱サイクルで 11.7℃の温度差が生ずる(50kW カリーナサイクル発電の熱源 熱水温度と,熱源熱エネルギーに対する送電端発電エネルギーの回収率との関係(村岡,2007; 大里,2003)*12。夏には気温が上昇し、発電効率は落ち、所内率も大きい。 ※19 表層海水…季節により温度変化があり、特に東京湾のような閉鎖水域の場合、夏の電力需要が大 きいときに水温は上昇し、出力低下が顕著になる。 ※20 海洋深層水…海洋深層水事業はボタンの掛け違いのため、正当な経済評価がないまま今日に至っ ているが、海洋深層水の低温安定性・実用的に無尽蔵などの特性は発電における効果は大きい。 注 4)発電装置 ※21 価格欄の比は Sunpulse500 を基準に出力の 0.82 乗則から求められる値との比。低温スターリン グエンジンは実験機の見積もり段階である。実用機では作動気体の圧力を上げ、出力当たりの装 置費を低減できるが、ここでは Sunpulse500 の価格を参考に余裕(約 2 倍)を持って推定した。

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文 献

*1 日本原子力研究開発機構,日本の各種電源の特徴と位置付け(2001),

https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_01-04-01-12.html

*2 Turboden co. Ltd., Organic Rankine Cycle Waste Heat Power Generation, (2015.8.15) *3 ㈶エンジニアリング協会, 地域開発に資する低温地熱発電の可能性調査研究報告書(2012.3) *4 沖縄県久米島町, 久米島海洋深層水複合利用基本調査報告書,緑の分権改革推進事業 (2011.3) *5 迯目英正;八木田浩史;角田晋也;伊藤拓哉;鈴木誠一;小島紀徳,太陽熱水発電における低温 スターリングエンジンの実現可能性に関するシナリオ分析による定量的評価,Macro Review 2021 年 33 巻 1 号 *6 迯目英正;小島紀徳;伊藤拓哉;鈴木誠一,非集光型太陽熱温度差発電の開発,日エネ誌,97, 53-63(2018) *7 迯目英正;小島紀徳他,100℃未満(熱水・排熱で発電する)低温スターリングエンジンの開発, 日本マクロエンジニアリング学会,東京大学ホームカミングディ最先端技術シンポジウム 2018 *8 迯目英正;小島紀徳;伊藤拓哉;鈴木誠一,取水等設備を含む個別最適化による海洋温度差発電 コストの低減と評価,日エネ誌,95, 653-662 (2016) *9 新エネルギー・産業技術総合開発機構、産業技術総合研究所 技術評価委員会,高温岩体発電シス テムの技術開発(要素技術の開発)事後評価報告書,平成15年8月 *10 NEDO,再生可能エネルギー技術白書第 2 版第 5 章 太陽熱発電・太陽熱利用(2014)

*11 Airlight Energy 社,CONCENTRATED SOLAR POWER(2018), http://www.airlightenergy.com/csp/

*12 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構;(委託先)地熱技術開発株式会社,新エネル ギーベンチャー技術革新事業, 温泉エコジェネシステムの開発,平成22年5月 迯目英正(にげめえいせい) 所属:株式会社デザインウォーター 研究・活動分野:低温スターリングエンジン 八木田浩史(やぎたひろし) 所属:日本工業大学 共通教育学群 教授 研究・活動分野:各種製品システムのライフサイクルの環境評価、各種エネルギーシステムの技術評価 角田晋也(かくたしんや) 所属:国立研究開発法人海洋研究開発機構 研究・活動分野:海洋深層水 伊藤拓哉(いとうたくや) 所属:沼津工業高等専門学校 物質工学科 助教 研究・活動分野:バイオマス 鈴木誠一(すずきせいいち) 所属:成蹊大学 理工学部 物質生命理工学科 教授 研究・活動分野:計測工学、生物物理学、化学電池 小島紀徳(こじまとしのり) 所属:NPO マクロエンジニアリング研究機構 副代表理事 元成蹊大学 教授 研究・活動分野:環境、バイオマス、ライフサイクルアセスメント 投稿日:2021 年 2 月 11 日; 改訂日:2021 年 3 月 6 日; 受理日:2021 年 3 月 6 日

参照

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