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訪日中国人観光旅行者の居住地域別観光行動に関する研究 *

A Study on Travel Behavior of China’s Inbound Tourists by Regions *

島田 貴子 ** ・ 日比野 直彦 *** ・ 森地 茂 **** By Takako SHIMADA**・Naohiko HIBINO***・Shigeru MORICHI****

1.はじめに わが国は,観光立国推進基本計画を掲げ,様々な観光 政策を実施している.その 1 つに訪日外国人旅行者の増 加に向けた取り組みがあり,訪日外国人旅行者数を 「2010 年までに 1000 万人」を目標としている.また, 2008 年 6 月の観光立国推進戦略会議においては,「2020 年までに 2000 万人」という新たな目標を策定すべきとの 意見も出されている. 現在,訪日外国人旅行者数は,政策の効果もあり伸び 続けている.2007 年には,前年比 13.8%増の 834 万 7 千人と過去最高値を達した.2007 年における訪日外国 人旅行者の国別割合は,1 位が韓国,次いで台湾,中国 とアジアが上位を占めており,その割合は 74%と年々 増加している.また,中国については, 2020 年に世界 第 4 位の観光客送出し国となり,アウトバウンド旅行者 が延べ 1 億人,世界シェアの 6.2%を占めると世界観光 機構(UNWTO)が予測している 1) しかしながら,現在の訪日外国人旅行者数の伸びを長 期的に維持することが困難であるとの指摘もあり 2) ,ア ジアからの海外旅行者が,今後,日本以外の国を選択す る可能性も否定できない.さらなる訪日外国人旅行者の 増加に向けては,統計データより現状を分析し,適切な マーケティングを行っていく必要がある. そこで,本研究では,現在訪日旅行者数の多い韓国, 台湾,香港に,今後の増加が見込まれる中国を加え,訪 日観光旅行者の現状について分析を行う.また,中国は, 人口が多く,国土面積も広いため,地域による気候の差, 人口規模の差,所得の差等が大きく,国内の地域格差が 著しい.したがって,様々な要因の地域差を持つ中国を ***** キーワーズ:観光,訪日外国人,中国地域別 ***** 正会員,修士(開発政策),(株)建設技術研究所 東京都中央区日本橋浜町 3丁目 21番地 1号 TEL 03-3668-4464,E-mail [email protected]

***** 正会員,博士(工学),政策研究大学院大学 助教授

(TEL 03-6439-6215, E-mail [email protected]

***** 名誉会員,工学博士,政策研究大学院大学 教授

(TEL 03-6439-6217,E-mail [email protected]

1つの国として捉えるのではなく,地域単位で分析する 必要があると考える.本研究では,人口,経済格差,訪 日観光旅行者数等を基準に,中国をいくつかの地域に分 割し,その地域差,韓国,台湾,香港との差を,統計デ ータより明らかにする.また,訪日回数による差,季節 による差等についても定量的に分析し,訪日外国人観光 旅行者の増加に向けたマーケティングおよび観光政策立 案のために必要な情報を示すことを,本研究の目的とす る. 2.既往研究のレビューと本研究の位置づけ 観光に関する既往研究を概観すると,国内観光に関す る論文は数多くあるものの,国際観光に関する論文は極 めて少ない.訪日外国人旅行者に関するものは,重要な 研究テーマであるにも関わらず,訪日観光客数の予測, 国内での観光行動の実態,訪日観光市場に関する研究等 しか行われていないのが現状である. 訪日観光客数を予測した研究には,石井ら 3) がある. 福岡空港を中心に,韓国,中国から訪日旅客数の予測を したものであるが,旅行目的別にはなっておらず,推計 年次も2010年のみとなっている.また,今後の訪日観光 客の増加が期待される中で,田中 4) は国別に分析を行い, 日本について人気がない国ではないが,東アジア諸国・ 地域における顧客獲得競争で優位に位置しているわけで はないと述べている.そして,岡本ら 2) は長期的に見る とアジア諸国の国際旅行者は増加するが,訪問地は北米, ヨーロッパが増加し日本への訪日割合は減少しインバウ ンドは衰退すると指摘している. 次に,観光行動については,田中 5) は実際に販売され ている「日本旅行商品」に着目し訪日旅行商品より,香 港,台湾,韓国,中国の旅行者の観光行動を把握してい る.しかし,中国については十分なデータがなく,ツア ー日数のみの分析であり,詳細なツアー内容は述べられ ていない.また,訪日観光市場について,村上 6) は韓国, 台湾,香港の旅行代理店の訪日旅行商品より,その現状 と課題を述べている.また,島川 7) は定性的ではあるが 外国人観光客誘致の問題点を示している. 以上のとおり,訪日外国人旅行者について国単位で論

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じている研究は既にあるが,本研究で対象としている地 域単位での分析は未だに行われていない.本研究は,訪 日外国人旅行者数の伸びが期待できる中国を地域単位で 分析することにより,訪日増加に向けた有益な情報を示 すものと位置付けている. 3.中国,韓国,台湾,香港の訪日外国人旅行者の動向 (1) 海外旅行者数と経済成長の関係 中国,韓国,台湾,香港の訪日外客数および伸び率の 増加が著しい背景には,経済成長が考えられる.そこで, 中国,韓国,台湾,香港の1993年を基準とした海外旅行 者数の伸び率と1人あたりの名目GDPの伸び率の関係を 図-1に示す.4カ国ともに,経済成長の伸び率より, 海外旅行者数の伸び率が高いことが見て取れる.ただし, 台湾,香港については,1990年代初頭に既に経済成長を 遂げており,1人あたりの名目GDPおよび海外旅行者数 の伸びは,韓国,中国と比較すると小さくなっている. 韓国では1人あたりの名目GDPの伸びより海外旅行者数 の伸び率が1993年以降,全年において高く,特に2003年 以降は経済成長より海外旅行者数の伸びが高い.中国は, 2002年以降は海外旅行者数の伸び率が経済成長の伸びに 比べて高くなっているが,その伸びも2004年から緩やか となり,近年は経済成長と比例関係となっている. 図-1 海外旅行者数伸び率と GDP/人伸び率の関係 (2)国別海外旅行渡航先割合について 次に各国の海外旅行者数と一人当たりの名目 GDP, さらに海外旅行の渡航先割合について 1994 年から中 国について示したものが図-2である. 台湾,香港は海外旅行者数の増加とともに,訪日外 国人旅行者数も増加しており,日本を選択する割合は 変化していない.一方韓国は,海外旅行者数の伸びは 著しく,訪日旅行者数も増加している.しかし,渡航 先選択肢割合の中で日本選択割合は微減である.そし て,1998 年まで中国より日本への渡航割合が多かった が,1999 年に逆転し,近年日本より中国を選択する割 合が上昇している. 中国については,海外旅行者数および訪日旅行者数 は増加している.しかし,日本への渡航先割合は減少 している.さらに香港,韓国といった以前までの渡航 されていた国も減少しており,その他の国が多くなっ ている.その理由として,中国では 2004 年に欧州 26 カ国の団体観光旅行が解禁となり,中国人旅行者の渡 航選択肢が広がり訪日増加に影響が生じていると考え られる.さらに,2008 年には米国旅行が解禁となり, 今後もさらなる中国人の渡航先の選択肢が拡大してい くと考えられる. 図-2 国別海外旅行渡航先割合 4.中国,韓国,台湾,香港の訪日外国人観光旅行者の 現状分析 (1)分析データについて 日本政府観光局(JNTO)の協力を得て「JNTO訪日外 客訪問地調査」を利用し,中国,韓国,台湾,香港の訪 日外国人観光旅行者について分析を行う.データ概要を 表-1に示す.本調査は,訪日外国人旅行者の誘致戦略 の策定や誘客活動の向上及び受け入れ体制の整備に資す る目的で日本政府観光局(JNTO)が1984年度から毎年 度行っている.中国については2006年より居住地域別に 調査を行っており,よって本研究では,2006年から2008 年秋までの調査結果を用いる.本調査結果を用いること により,国,地域別および訪日回数別の訪日目的ごとの 旅行行動と,個々の訪問地および訪問地の組合せ等を分 析することが可能となる.本研究では,観光旅行者に着 GDP/人(名目) 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 (万人) 0 400 800 1200 1600 2000 2400 2800 (G DP U .S .d o lla r) 0 20 40 60 80 100 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 (%) その他 北米 ロシア アジア 韓国 マカオ 香港 日本 アジア:タイ、シンガポール、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム 〈データ〉海外旅行者総数:JNTO、訪日外国人旅客数:JNTO 各国海外旅行者数:WTO(世界観光機関)料集2000年版、2003年版、2001-2005年版 注1)北米:98年以降カナダのデータ追加 注2〉海外旅行者数は、香港、マカオ含む 0 1 2 3 4 5 6 7 0 1 2 3 4 5 6 7 海外 旅行 者数 伸 び 率 (対 93 年比) GDP/人伸び率(対93年比) 中国 韓国 台湾 香港 GDP:IMF,World Economic Outlook Database, October 2008  海外旅行者数:JNTO国際観光白書より作成(中国は対94年比) 03 03 07 07 05 05 01 01

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目していることから,訪日目的が観光目的のみの訪日外 国人旅行者を対象とする.サンプル数を表-2に示す. 表-1 データ概要 JNTO訪日外客訪問地調査   2006-2007,2007-2008,2008   * 2008年は,夏,秋データのみ 調査実施時期 夏:6~8月,秋:9~11月,冬:1~2月 調査対象者 日本旅行終了後の出国しようとしている外国人旅行者 調査方法 調査員によるインタビュー形式 1)属性,訪日目的,訪日回数,旅行形態,訪日動機等 2)日本旅行中の訪問地,滞在期間、宿泊地等 調査項目 調査名称 表-2 サンプル数 2006年度 2007年度 2008年 中 国 329 568 335 韓 国 1595 2420 1708 台 湾 1732 1859 1190 香 港 577 739 540 全サンプル 4233 5586 3773 (2)訪日回数 図-3に2007年度の訪日回数別について観光旅行者を 初訪日者とリピーターに分けた割合を示す.香港では約 80%,台湾約77%がリピーターであり,次いで韓国約 50%とリピーター割合が高いことが見て取れる.一方, 中国は,初訪日者の割合が高い.また,各国の人口規模 が異なることから,人口1000人あたりのリピーター数を 算出した.その結果,2007年の台湾,香港からのリピー ターの訪日人数は約33人,韓国は約14人,一方中国は観 光目的での訪日者数が0.3人と大きな差があることが明 らかとなった.かつてより海外旅行者数が多いことと, 香港,台湾,韓国は中国と異なり早い段階でのビザ免除 の影響がリピーターの多い理由と考えられる.そして, 2004年以降の経年変化では,韓国,台湾,香港では年々 リピーターが増加しており,中国では初めて日本に来る 旅行者が増えている. 78.0 47.3 23.1 19.1 22.0 52.7 76.9 80.9 0 20 40 60 80 100 中国 (567) 韓国 (2397) 台湾 (1810) 香港 (734) (% ) リピーター 初訪日 ()内サンプル数 図-3 訪日回数(2007 年) (3)訪問地 2007 年の中国,韓国,台湾,香港の観光旅行者の, 初訪日者とリピーターの訪問地の組合せを図-4に示す. はじめに,国別の訪問地の差については,中国は他のア ジア 3 カ国と大きく異なることが見て取れる.多くの人 が複数の地域を周遊する行動が多いことが見て取れる. 一方,韓国,香港,台湾3カ国共に,一つの地方のみの 訪問割合が多く,特に関東のみの訪問割合が高いことが 伺える.各国の特徴は,韓国では距離的な近さや交通の 便から,九州を訪れている割合が高い.そして,台湾で は,関西および北海道への訪問割合が高く,香港では, 関東および北海道への訪問割合が高い. 次に,訪日回数別による訪問地の特徴については,中 国では複数都市を選択する割合が初訪日者は約 8 割ある が,リピーターは約 5 割弱に減少していることが見て取 れる.そして,関東および九州のみの訪問地を選択する 割合が高くなっていることが見て取れる.同様に韓国, 台湾,香港についても,複数都市を周遊する行動割合は 減少している.韓国では,九州を選択する割合が減少し, 関西,北海道のみを訪問する割合が高くなっている.ま た,台湾では,その他の割合が増加していることから, リピーターは既に訪問している地域を避け新たな地域へ と移行していることが考えられる.さらに,台湾につい ては,他の国に比べ,沖縄への訪問割合が 5%と少ない 割合だが,他国が 1%前後なのに比べ選択割合が多い. 香港では両年ともに,リピーターの北海道訪問割合が大 きく増加しており,関西を選択する割合より多いことが 伺える. 図-4 訪日回数別訪問地割合 5.訪日中国人観光旅行者の居住地域別分析 (1)中国行政別の現状 中国の国内の経済情勢は,1人あたりの域内総生産は 上海と貴州省ではおよそ10倍もの差があり,沿岸部等経 済発展の著しい地域と,内陸部の貧しい地域との経済格 差が大きくなっていることが見て取れる.次に,人口に ついても大きな差があり,河南省,山東省,広東省の 9300万人台に対し最小のチベット自治区は281万人と規 模が大きく異なる.そして,気候分布については,最北

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部の黒龍江省の省都ハルピンは北緯44度で冬は長く11月 ~3月までの平均気温は-5~-20度と低い.一方,南部 の広東省の省都広州はでは北緯23度8分に位置しており 亜熱帯に属しており,年平均気温は20~22度と夏季が長 く温暖多雨である.また降水量も南東部から北西部へと 次第に少なくなり各地の年間平均降水量の格差も大きい. (2)地域区分別設定 このような中国国内の現状と調査結果サンプル数を考 慮して,図-5の示すように7つに地域分割し,分析対 象地域を,北京,上海,東北,華北,華中,華南,西部 とする.地域区分における2006年の人口および人口あた りの域内総生産を図-6に示す.北京,上海は人口あた りの域内総生産額が他の地域に比べ極端に大きいことが 見て取れる. 図-5 地域区分設定 図-6 各地域の人口および人口あたりの域内総生産 (3)各地域の訪日観光旅行者の特徴 1)訪日回数の割合 2006年から2008年までの地域別の訪日回数の割合を 図-7示す.各地域ともに初訪日者の割合がリピータ ーより高いが,北京,上海ではリピーターの割合が 20%を超えており,他の地域よりリピーターの割合が 高いことが見て取れる.これは,北京,上海では中国 人の訪日団体観光旅行ビザが2000年解禁されており, リピーターの訪日旅行者がすでに発生している可能性 が高いと考えられる. 図-7 域別訪日回数割合 2)訪日回数の違いによる訪日動機の変化 リピーターの割合が高かった北京,上海と,かつて からリピーターの割合が高い韓国,台湾,香港の2006 年の初訪日者との訪日動機の差について図-8に示す. 本図は,リピーターの訪日動機割合から初訪日者の訪 日動機割合の差をポイント制にしたものである.北京, 上海ではリピーターによるゴルフ・スキーを目的とし た訪日が他3カ国に比べて多いことが見て取れる.ま た,北京では,伝統文化歴史的施設が多く,自然景観 は少ない. 図-8 訪日動機の変化 3)地域別の訪問地 2006年から2008年までの中国地域別での訪問地の選 択組み合わせの割合を図-9に示す.前章で中国全土 は関東,関西を中心とした複数の地域を周遊する割合 が高かった.しかし,地域別で見ると,東北,華北, 華中,華南の5割以上が日本の3つの地域を周遊する行 動をしている.一方,北京,上海では3つの地域を周 遊している割合は5割を下回り,関東や関西の1つの地 域のみを訪問する割合が他の中国の地域に比べて高い ことが見て取れる.さらに,北京,上海では北海道を 選択している割合が他の中国地域に比べ高い.上海で は,北海道を含めた周遊割合が高いことが伺える. 0 10 20 30 40 50 60 70 80 0 50 100 150 200 250 300 350 400 東北 華北 華中 華南 西部 北京 上海 域内総生産( 千元/ 人) 人口( 1 0 0 万 人 ) 一軸:各地域総人口(100万人) 二軸:域内総生産/人(千元)データ:中国国家統計局より 81.0 75.5 81.5 86.1 88.2 76.5 69.1 11.9 14.3 7.6 6.9 5.9 9.2 9.4 3.4 5.0 6.1 8.7 10.9 12.9 0 20 40 60 80 100 東北 (30) 華北 (27) 華中 (62) 華南 (59) 西部 (26) 北京市 (58) 上海市 (75) (%) ()内サンプル数 5回以上 4回 3回 2回 1回 ‐15.0  ‐10.0  ‐5.0  0.0  5.0  10.0  伝統 文化 歴史 的 施 設 シ ョ ッ ピ ン グ ゴ ル フ ・ ス キ ー テ ー マ パ ー ク 日本語 日本文 化 習 得 日本 の 食 事 温泉 ・リ ラ ッ ク ス 祭り ・イ ベ ン ト 都市 の 魅 力 、 現 代 性 日本 人 と そ の 生活 自然 景 観 日本 旅 行 へ の 憧 れ ポイ ン ト 北京市 上海市 韓国 台湾 香港 東北 西部 華南 華中 華北 北京 上海

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訪日回数別にみると,すべての中国の地域において, 日本の複数地域を周遊する行動から,1つの地域を選 択する行動にシフトしていることが見て取れる.特に, 北京,上海では,複数の地域を選択している割合が5 割を下回っている.また,全ての中国の地域において, リピーターによる関東地方の選択は増えており,北京, 上海では北海道の選択が増えていることが明らかとな った. 図-9 訪日回数別訪問地 6.属性による訪問地選択の傾向分析 訪問地に着目し,訪問地の選択が地域別,訪日回数別 等の理由より異なることを前章で示したが,それらを定 量的に見るために数量化Ⅲ類を適用し分析する.変数ご とに得られたスコアを散布図として表現し,要素間の関 係性を示す.対象地域は全地方とした.なお,九州は沖 縄を含んでいる. (1)韓国,台湾,香港と中国地域別の寄与率と訪問地の カテゴリースコア 表-3に固有値および寄与率を示す.対象地域が 7 地 域のため寄与率は高くはないが,2 軸までの累積寄与率 は 39%である.本分析では,1 軸と 2 軸を用い象限ごと に解釈をする.縦軸に 1 軸,横軸に 2 軸をプロットした 訪問地選択の散布図を図-10に示す.第一象限は中国 四国,第二象限は九州,第三象限は北海道,第四象限は 関東,関西,中部の大都市と位置づけられる.第四象限 では,原点からの距離が近く,さらに 3 地域が集中して いることから,同時に選択がされていると考えられる. 一方,北海道,九州は単独での訪問地選択がなされてい ることが見て取れる. 表-3 固有値および寄与率 軸No. 固有値 寄与率(%) 累積寄与率(%) 1 0.91 20.6 20.6 2 0.85 19.2 39.8 3 0.76 17.1 56.8 図-10 カテゴリースコア (2)属性別の傾向 1) 国および地域別の傾向 図-11に,国および地域別のサンプルスコアの平 均値をプロットした図を示す.韓国は九州,台湾,香 港は北海道にプロットされ,中国は全ての地域が第 4 象限の大都市にプロットされている.しかし,中国の 各地域のばらつきは,台湾,香港との差と同程度のば らつきが見て取れる. 2) 訪日回数別の傾向 図-12に,訪日回数別のサンプルスコアの平均値 をプロットした図を示す.韓国,台湾,香港では初訪 日者とリピーターとの差はあまり見られなかったが, 中国の各地域ではばらつきが大きい.華南および北京 のリピーターは台湾や香港の訪日旅行者と類似してお り,第 3 象限にプロットされた.一方中国の初訪日者 はどの地域も類似した行動をしており,複数の都市を 訪れていることが見て取れる. 3) 季節別の傾向 季節別のサンプルスコアの属性別平均の散布図では, 韓国,台湾,香港は季節による差はみられなかった. 中国の各地域では,季節でのばらつきがあり華南の冬 は第 2 象限に近いものの,全ての地域で全ての季節が 第 4 象限に位置している. 4)属性別傾向のまとめ 中国を地域別で見ることにより,2000 年に訪日団 体観光客のビザの発給が開始された北京,上海からは 39.1 15.9 29.2 18.3 5.0 11.0 7.4 13.4 5.0 6.1 12.2 10.9 23.2 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 初訪日 リピーター 上海 関東 中部 関西 関東 関西 関東 中部 関西 中部 関東 関西 北海道 北海道  関東 関西 その他 54.2 41.2 25.3 11.8 5.9 11.8 4.8 5.9 5.9 10.8 17.6 初訪日 リピーター 東北 55.7 40.0 23.9 32.0 4.0 8.0 4.0 12.5 12.0 初訪日 リピーター 華北 57.3 32.4 27.5 29.4 8.8 7.6 17.6 8.8 初訪日 リピーター 華中 60.2 48.6 15.8 14.3 5.6 5.7 6.6 8.2 17.1 5.7 初訪日 リピーター 華南 44.4 27.3 28.9 27.3 4.4 20.0 18.2 27.3 初訪日 リピーター 西部 53.3 25.5 24.7 14.9 8.5 23.4 8.5 4.9 17.0 4.44.9 初訪日 リピーター 北京 北海道 東北 関東 中部 関西 北陸 九州 中国四国 -3.5 -2.5 -1.5 -0.5 0.5 1.5 2.5 3.5 -3.5 -2.5 -1.5 -0.5 0.5 1.5 2.5 3.5 1軸 2軸 中国四国 九州 大都市 北海道

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リピーターが発生していることが明らかとなった.そ して,北京,上海ではリピーターによるゴルフ・スキ ーを目的とした訪日が,韓国,台湾,香港に比べて多 くなっている.訪問地では中国全土では複数地域周遊 型の割合が高かったが,地域別に分析することにより, 北京,上海では,3 地域を周遊する割合は少なく,ま た,華南,上海の南部の地域の北海道への人気が示さ れた.訪日回数別に見ると,リピーターは日本の複数 地域周遊型から一地域集中型へとシフトしており,ま た,関東のみの選択割合が増加し,北京,上海では北 海道の割合が増加している.そして,属性別の訪問地 選択では,中国国内での,大きな差ではないが差があ ることが見て取れた.また,北京,上海のリピーター による訪問地は台湾,香港と類似していることがあき らかとなった.このように,中国の地域ごとに違いが 生じていることが示すことができた. 図-11 国および地域別の重心位置の散布図 図-12 訪日回数別の重心位置の散布図 7.おわりに 本研究では,今後の訪日外国人旅行者増加に向けて, 増加が期待できる中国に着目した.中国では,国内格差 が著しいことから,1つの国として捉えるのではなく, 地域毎に分析する必要があると考え,地域ごとの訪日旅 行の特徴および違いを明かにした. 訪日外客実態調査結果を用いた訪日観光旅行者の実態 分析により,韓国,台湾,香港では,リピーターの割合 が中国に比べて高く,リピーター率が上昇していること を明らかにした.また,中国からの訪問地の組合せは韓 国,台湾,香港とは異なり複数の都市を周遊する割合が 高いことを示した. 次に,中国国内を7つの地域に分割し,地域単位の分 析を行った結果,地域により特徴が異なることが明らか となった.北京,上海では団体観光ビザが初期段階で発 給されたため,リピーターの割合が他の地域に比べ多い. また,北京,上海のリピーターのゴルフ・スキーの訪日 動機割合が,韓国,台湾,香港よりも高かったのも特徴 的である.訪問地では,北京,上海は他の地域に比べて 複数都市を周遊する行動が少なく,1つ地方を選択する 割合が高く,さらに,リピーターの北海道の割合が多い ことが明らかとなった.そして,属性別の訪問地選択で は,中国国内では差があり,また,北京,上海のリピー ターは,台湾,香港と類似した訪問地を選択しているこ と示し得た. 以上より,国土が広く,地域差の大きい中国を対象と したマーケティングや観光政策の立案を行う際には,地 域別にその特徴で見ることが必要であり,ここで示した 情報は大きな価値を有するものと考える.本研究の知見 を踏まえ,効果的な施策が行われること期待する. 参考文献

1) World Tourism Organization (UNWTO) ホームページ: http://www.unwto.org/index.php 2) 岡本直久,栗原剛:アジア諸国における将来の国際旅行 に関する考察,運輸政策研究,Vol.10,No.3,pp.2-10, 2007. 3) 石井伸一,井上伸昭,角知憲,樗木武:訪日外国人予測 に関する考察,土木計画学研究・講演集,Vol.23 (2), pp.209-210,2000. 4) 田中賢二:外国人観光客の訪日促進に関する研究 -国 際観光の現状の分析と安定的な旅行者の獲得を中心とし て-,運輸政策研究,Vol.10,No.1,pp.11-21,2007. 5) 田中賢二:訪日外国人観光客の観光行動の把握手法の試行 及びその結果の分析について,交通学研究(49),pp.11-20, 2005. 6) 村上恭一:アジアからの視線 -近隣諸国旅行代理店か ら見た日本のインバンドツーリズムの現状と課題-,日 本国際観光学会,日本国際観光論文集,Vol.10,pp.84-87,2003. 7) 島川崇:外国人観光客誘致の問題点,日本国際観光学会, 日本国際観光論文集,Vol.9,pp.83-88,2001. 8) 日本政府観光局 (JNTO) ホームページ: http://www.jnto.go.jp/jpn/tourism_data/index.html 華南 華中 北京上海 東北 華北西部 韓国 台湾 香港 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1軸 2軸 九州 大都市 北海道 中国四国 華南 北京 華北 上海 西部 華北 華中 西部 韓国 韓国 台湾 台湾 香港 香港 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1軸 2軸 ◆初訪日 ■リピーター 中国四国 九州 大都市 北海道

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