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QT 延長症候群における Torsade de pointes のマグネシウム治療 愛知県健康福祉部

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Academic year: 2021

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<Editorial Comment>

QT 延長症候群における Torsade de pointes のマグネシウム治療

愛知県健康福祉部 長嶋 正實

最近の QT 延長症候群は話題が最も豊富な不整脈のひとつである.特に遺伝子解析の著しい進歩により,心 筋細胞のイオンチャネルの異常による疾患であることが明らかにされ,最近は チャネル病 とも呼ばれるよ うになっている.QT 延長症候群には現在 6 つの責任遺伝子が確認されているが,今後まだ増える可能性が高 く,また全く異なる疾患と考えられていた Brugada 症候群も同じ責任遺伝子が考えられている.

黒嵜らの本論文はマグネシウムが QT 延長症候群の torsade de pointes(TdP)の初期治療として有効であっ た新生児例の貴重な症例報告である.

QT 延長症候群の重大な合併症である TdP の治療は緊急を要することはいうまでもない.TdP の治療とし て,ペーシングやイソプロテレノールは心拍数を増加させ,心筋の活動電位持続時間を短縮させ,早期後脱分 極(early afterdepolarization, EAD)を抑制する.また心室期外収縮直後などに延長した RR 時間の次の心拍の 長い QT 時間(Tdp 発生の引き金になることがある)の発生の抑制のために RR 時間を短縮させることも有用 である1).新生児の場合,ペーシングの問題点も少なくないので,まず薬物治療が選択される.

最近は第一選択薬剤としてマグネシウムの静脈内投与が行われることがしばしばあり,この論文の著者らの 症例もマグネシウムが奏効している.マグネシウムは 1930 年頃からジギタリス中毒による不整脈,虚血性心疾 患による上室頻拍や心室頻拍の抗不整脈薬の一つとして使用された2)が,最近は有効な抗不整脈薬が多いため抗 不整脈薬として省みられることは少なくなった.

心電図上 QT 時間には大きな影響をおよぼさないがマグネシウムの静脈内投与は QT 延長症候群の Tdp を 抑制することが知られている2)3).Parikka らは不整脈を有する患者(QT 時間は正常)に対してマグネシウムの 静脈内投与を行いながら,カテーテル電極押しつけ法による単相性活動電位(monophasic action potential, MAP)持続時間の変化を観察し,心電図上 QT 時間には変化はないが洞調律(マグネシウムは心拍数を上昇さ せる作用もある)でも,ペーシングで心拍数を一定にしても MAP や心室有効不応期を短縮させたと報告してい る.これが TdP を発生させる EAD を抑制し,TdP の治療薬として有効であろうと推論している4).また抗不整 脈薬のキニジンやソタロールのような活動電位持続時間を延長させる薬剤などにより QT 時間を延長し,TdP を繰り返す症例にマグネシウムは QT 時間を短縮し,TdP を抑制することもを報告されている5)

また Stark らは実験的にソタロールの投与下で心拍の急激な変化によって QT 時間が大きく変化するもの が,マグネシウムを投与することにより QT 時間の変化が少なくなり,心室不整脈を予防する可能性を報告し ている6).また Verduyn らも EAD の引き金になる QT dispersion をマグネシウムが減らす可能性を報告して いる7)

TdP は QT 時間の延長により EAD が発生し,誘発されるためと考えられている.交感神経活性によりカルシ ウムチャネルが活性化し,活動電位持続時間を延長させるが,マグネシウムイオンはカルシウムイオンと拮抗 し,カルシウムイオンの細胞内への流入をブロックし活動電位持続時間を短縮させることも EAD の抑制に働 くと考えられている.

遺伝子解析に目が向けられ,チャネル病としての QT 延長症候群の解明が進んでいるが,TdP の治療法も少 しずつ進歩している.マグネシウムの TdP に対する有効性が注目され,その機序も少しづつ明らかにされてき ている.

1)Roden DM:Electorphysiology, pacing, and arrhythmia. A practical approach to torsade de pointes. Clin Cardiol 1997;20:285―290

2)Fazekas T, Scherlag B, Vos M, Wellens HJ, Lazzara R:Magnesium and the heart:Arrhythmic therapy with mag- 日本小児循環器学会雑誌 16巻 2 号 191〜192頁(2000年)

(2)

nesium. Clin Cardiol 1993;16:768―74

3)Tzivoni D, Banai S, Schger C:Treatment of tousade de pointes with magnesium sulfate. Circulation 1988;77:

392―7

4)Parikka H, Toivonen LK:Acute effects of intravenous magnesium on ventricular refractoriness and monophasic action potential duration in humans. Scand Cardiovasc J 1999;33:300―5

5)Devidenko JM, Cohen L, Goodrow R, Antzelvitch C:Quinidine-induced action potential prolongation, early afterre- polarizations, and triggered activity in canine purkinje fibers. Effects on stimulation rate, potassium, and magne- sium. Circulation 1989;79:674―86

6)Stark G, Schwarzl I, Heiden U, Stark U, Tritthart HA:Magnesium abolishes inadequate kinetics of frequency adap- tation of the Q-aT interval in the presence of sotalol Cardiovasc Res 1997;35:43―51

7)Verduyn SC, Vos MA, van der Zande J, Van der Hulst FF, Wellens HJ:Role of interventricular dispersion of repo- larization in acquired torsade-de-pointes arrhythmias:reversal by magnesium. Cardiovasc Res 1997;34:453―63

日小循誌 16( 2 ),2000 192―(98)

参照

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