厚生労働科学研究費補助金(長寿科学政策研究事業)
分担研究報告書
地域診断指標としての高齢者における幸福感指標の検討
研究協力者 奥園桜子(国立成育医療研究センタ)
研究分担者 白井こころ(琉球大学法文学部人間科学科)
研究協力者 佐藤 峻(千葉大学大学院人文社会科学研究科)
研究代表者 近藤克則(千葉大学予防医学センター)
研究要旨 1.目的
厚生労働省は,地域包括ケア「見える化」システムを通じて,各種指標の地域間比較による 地域診断結果の公開を進める中で,幸福感尺度から作成した指標の公開を検討している.しか し,地域間に差があるのか,幸福感で健康寿命の喪失を予測できるのか,幸福感尺度から作成 できる複数の指標の中でどれが地域診断指標として相応しいのかなどについての先行研究は 少ない.そこで本研究では,地域診断指標としての幸福感指標の妥当性の検証の一環として,
高齢者の幸福感尺度から作成できる複数の幸福感指標による 3 年後の健康寿命の喪失に関す る予測妥当性や地域差の有無を検討した.
2.方法
プロジェクトの2010年度及び2013年度横断データ,並びに2010年調査回答者の要介護認 定状況を追跡した縦断データを用いた.
<2010年調査横断データ>:調査対象者は1万3749名(男46.1%,女53.9%)である.
<2013年調査横断データ>:調査対象者は12万9740名(男48.8%,女51.2%)である.
<2010年調査縦断データ>:日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクト2010-11年度調 査(回答率66.3%)の幸福感尺度を含む調査票に回答した者のうち,本分析に用いた項目に欠 損値がなく,2013年までの死亡と要介護認定の有無の追跡データが入手できた24市町村の1 万3697名(平均年齢73.4歳,男47%)を分析対象とした.
幸福感は「あなたはご自分がどの程度幸せだと思いますか」と尋ね,1(全く幸せでない)~
10点(非常に幸せ)の尺度に○をつけてもらった.平均点,8/7/6点以上,2点以下の者の割 合など数種類の指標を作成した.縦断分析のアウトカムは,2013 年調査時における死亡や認 知症を伴う要介護認定ありなどとした.縦断分析ではcox比例ハザードモデルを用い年齢3群,
性別,喫煙・飲酒,がん・脳卒中の既往, BMIなど13因子を調整したハザード比(HR)を 求めた.
3.結果
<横断分析> 2010 年の幸福感は平均 7.14(24 市町村の最小 6.59~最大 7.39[p<.01],
SD1.87)で,8点が24.6%と一番多く,5点17.6%,7点16.9%,6点12.2%の順で,8点以 上が46.4%(24市町村の最小37.4~最大56.8%[p<.01])を占めていた.2013年調査でも,
ほぼ同様な分布であった.(図1参照)
<縦断分析> 13因子を調整後の死亡HRは幸福感8点以上群で0.75(95%信頼区間0.63- 0.89)で,認知症発症HRでは8点以上群で0.75(0.63-0.89)であり,ともに6・7点以上の HRよりわずかに小さかった.
4.結論
地域診断指標としての妥当性の高さは,各市町村の幸福感の平均像をみたいのか,低い人達 を減らす底上げ政策に用いるのかなどの目的に依存する.地域間に差がみられる弁別的妥当 性,将来のwell-being(幸福・健康)の予測妥当性など指標としての多面的な妥当性の高さも 必要である.今回のデータと分析結果に基づけば, 平均値や8点以上の者の割合など,幸福 感尺度の指標値には24市町村間に有意差があり,8点以上の者は高齢者のおよそ半数に該当 し,これらは地域比較・診断指標になりうると思われた.1-3年後の死亡や認知症を伴う要介 護認定を受けるHRは,8点未満のものを1とした時に8点以上の者では0.75と有意に低く 健康寿命喪失の予測妥当性があると思われた.いくつか試作した指標の中では,HRの小ささ の点などからは「8点以上の者の割合」がやや良いと思われた.データや分析方法に依存する 面があることから,今後さらに検討を重ねることが必要と思われた.
.0 10.0 20.0 30.0
1点 2点 3点 4点 5点 6点 7点 8点 9点 10点
%
図1 2010-13幸福感の分布(いずれかに回答した者)
2010 2013
A.背景と目的
厚生労働省は,地域包括ケア「見える化」システムを通じて,各種指標の地域間比較による地域診断 結果の公開を進める中で,「幸福感」の評価に関する指標の公開を検討している.幸福感は,Well-being の1指標として重要であると同時に,健康寿命や他の健康機能との関連についても重要性が指摘されて いる指標である.
しかし,本邦においては,幸福感の地域間の差についての検討はあるものの,幸福感と介護度や健康 寿命の喪失との関係についての検討は限られている.また幸福感尺度から作成できる複数の指標の中で どれが地域診断指標として相応しいのかついての検討は少ない.
そこで本報告書では,地域診断指標としての幸福感指標の妥当性の検証の一環として,高齢者の幸福 感尺度から作成できる複数の幸福感指標による3年後の健康寿命の喪失に関する予測妥当性や地域差の 有無を検討した結果を報告する.
B.研究方法
1.用いた調査データ
本分析に用いたのは,厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)「介護保険の総合的政策評 価ベンチマーク・システムの開発」(H22-長寿-指定-008)並びに「介護予防を推進する地域づくりを戦 略的に進めるための研究」(H25-長寿-一般-003)等で実施した J-AGES(Japan Gerontological
Evaluation Study,日本老年学的評価研究)プロジェクトの2010年度及び2013年度横断データ,並
びに2010年調査回答者の要介護認定状況を追跡した縦断データを用いた.
2.対象
<2010年調査横断データ>
幸福感尺度は,5種類の調査票のうち,1つに入っていたため,調査対象者は1万3749名(男46.1%,
女53.9%)である.
<2013年調査横断データ>
幸福感尺度は,すべての調査対象者が回答しているため,調査対象者は12 万9740名(男 48.8%,
女51.2%)である.
<2010-2013年調査縦断データ>
本研究では,日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクト2010-11年度調査(回答率66.3%)の 幸福感尺度を含む調査票に回答した者のうち,本分析に用いた項目に欠損値がなく,2013 年までの死 亡と要介護認定の有無の追跡データが入手できた24市町村の1万3697名(平均年齢73.4歳,男47%)
を分析対象とした.
■なぜ対象年齢は65-84歳なのか? ■なぜうつ傾向は除外したのか?
3.分析方法
幸福感は「あなたはご自分がどの程度幸せだと思いますか」と尋ね,1(全く幸せでない)~10点(非 常に幸せ)の尺度に○をつけてもらった.1~2点を「1(とても不幸せ)」,3~5点を「2(不幸せ)」,
6~8点を「3(幸せ)」,9~10点を「4(とても幸せ)」の4段階とする指標も試作した.平均点,4段 階評価,8点以上,5点以上,2点以下の者の割合の5指標を作成し,その妥当性を検討した.また,作 成した指標を用いて,幸福感が2010年度調査から追跡期間3年間の間の死亡・認知症を伴う要介護認 定の有無と関連があるかを検討した.その検討を実施する際には,年齢3群,性別,教育歴,職歴,現 在の就業の有無,世帯状況,既往歴,主観的健康観,喫煙,飲酒,BMI,ソーシャルサポートの有無,
うつの既往,など13因子を調整変数としてcox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を求め た.
4.分析内容と方法
大きくは以下の3つの分析を行った.
1.繰り返し横断調査データを用いた基礎統計
1)10段階評価を用いた幸福感の分布と平均値を算出 2)4段階評価を用いた幸福感の分布と平均値を算出 2.幸福感尺度の市町村間比較
1)2010年度の市町村別の幸福感の平均値と地域間の群間差の算出 2)幸福感を指標ごとに市町村間で比較
3.2010年調査縦断データを用いた多変量解析
1)幸福感と死亡率との関連について,多変量Cox回帰モデルを使用してHRを指標ごとに算出 2)幸福感と認知症の発症を伴う要介護認定との関連について,多変量Cox回帰モデルを使用し
て指標ごとにHRを算出
C 分析結果
1.繰り返し横断調査データを用いた基礎統計
1)10段階評価を用いた幸福感の分布と平均値について
① 2010年度の幸福感調査の対象者は,1万3749名で,幸福感の平均値は7.11だった.
図 2010年の幸福感の分布
② 2013年度の幸福感調査の対象者は,12万4931名で,幸福感の平均値は7.25だった.
図 2013年の幸福感の分布
③ 2013年度の幸福感調査の対象者のうち、2010・2013年度の両方の調査に参加している対象者は1 万3141名で,幸福感の平均値は7.31だった.
図 2010-2013年の幸福感の分布
2010 年度の幸福感の平均値7.05と 2010-2013 年度の 7.29との間には有意差があった.(P<0.001) 有意差がみられた要因として,対象市町村が異なること,新らたに加わった 65-67 歳のコホート効果,
同じコホートにおける社会経済的変化などによる変化,などの要因が考えられ,今後さらなる分析が必 要である.
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000
1点 2点 3点 4点 5点 6点 7点 8点 9点 10点
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
1点 2点 3点 4点 5点 6点 7点 8点 9点10点
③2010年度の調査の男性の対象者は8314名で,幸福感の平均値は6.89だった.女性の対象者は9731 名で,幸福感の平均値は7.18だった.この男女の幸福感の平均値には有意な差が見られた.
図 2010年度の幸福感の点数ごとの男女別の人数
④2013年度の調査の男性の対象者は5万8542名で,幸福感の平均値は7.09だった.女性の対象者は 6万6389名で,幸福感の平均値は 7.38だった.この男女の幸福感の平均値には有意な差が見られた.
(P<0.001)
図 2013年度の幸福感の点数ごとの男女別の人数
⑤2010年度から2013年度両方の調査に回答した1万3141名の幸福感の変化の平均は+0.18(±1.60)
だった.また,2010年度と2013年度の幸福感には有意な相関があった.(相関係数=0.63)
図 2010年度から2013年度の間の幸福感の変化の分布 0
1000 2000 3000
1点 2点 3点 4点 5点 6点 7点 8点 9点 10点
人 数
( 名
)
2010年度 幸福感 男女別
男性 女性
0 10000 20000
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
人 数
( 名)
2013年度 幸福感 男女別
男性 女性
.0 10.0 20.0 30.0 40.0
%
図 2010年度と2013年度の幸福感の相関図
2)4段階評価による幸福感の分布と平均値について
幸福感尺度1~2点を1,3~5点を2,6~8点を3,9~10点を4とした結果を示す.
①2010年度の幸福感調査の対象者は1万8749名,平均値は3.03だった.
図 2010年度の幸福感の分布
②2013年度の幸福感の対象者は12万4931名,平均値は3.02であった.
図 2013年度の幸福感の分布
2010 年と2013 年の幸福感を 4段階に分けて集計すると,平均値は同水準であったが,分布をみる と,大きく異なっていた.このように調査年や対象,区分の仕方によって分布が異なることから,引き 続き最適な指標についての検討が必要と思われた.
0 20004000 6000 100008000
1 2 3 4
人 数
( 名
)
1=幸福感尺度1-2 2=幸福感尺度3-5 3=幸福感尺度6-8 4=幸福感尺度9-10
0 20000 40000 60000 80000
1 2 3 4
人 数
( 名
)
1=幸福感尺度1-2 2=幸福感尺度3-5 3=幸福感尺度6-8 4=幸福感尺度9-10
2.幸福感の市町村間比較
1)2010年度の市町村別の幸福感の平均値と8点以上の者の割合の市町村間格差 10段階評価の幸福感の全国平均は7.12だった.
幸福感の平均点が最も高かった市町村はA市(7.49)で,最も低かった市町村はB市(6.59)だった.
また分散分析の結果,地域の幸福感の平均値について,統計学的に有意な群間差があった.また,地域 ごとの8点以上の幸福感の割合について分散分析を実施したところ,統計学的に有意な群間差があった.
図 幸福感の平均点の市町村比較
2)幸福感の指標別市町村間比較
幸福感が8点以上の割合が多い地域,5点以上の割合が多い地域,2点以下の割合が多い地域,及び 平均点という4つの指標別に上位5位までを出した.その結果,平均点と8点以上の割合が多い地域は A市,5点以上の割合が多い地域はO市,2点以下の割合が少ない地域はB市だった.用いる指標によ って,順位が異なること,統計学的にも有意差ではないことから,上位ランキングなどとして用いるこ とは不適切と思われた.
平均点が高い 8点以上の割合が多い 5点以上の割合が多い 2点以下の割合が少ない 1位 A市(7.49) A市(56.8%) O市(83.0%) B市(1.3%)
2位 Q市(7.45) Q市(56.1%) A市(82.7%) X市(1.9%)
3位 O市(7.43) R市(55.3%) Q市(82.1%) J市(2.8%)
4位 R市(7.38) O市(52.7%) I市(79.6%) Y市(2.9%)
5位 V市(7.23) N市(51.3%) N市(79.4%) D市(3.2%)
3.2010年調査縦断データを用いた多変量解析の結果 1)幸福感と死亡率との関連について
①4段階評価を用いた結果
とても幸せな個人を基準とすると,とても不幸せな個人の死亡HRはとても幸せな個人と比較して有 意に大きくなり2.44(95%信頼区間:1.16-5.14)だった.
とても不幸せな個人を基準とすると,とても幸せな個人の死亡HRはとても不幸せな個人と比較して有 意に小さくなり0.4(95%信頼区間:0.19-0.84)だった.
6 6.5 7 7.5 8
C
市
D
市
E
市
F
市
B
市
H
市
I
市
J
市
K
市
L
市
M
市
N
市
A
市
O
市
P
市
Q
市
R
市
S
市
T
市
U
市
V
市
W
市
X
市
Y
市
幸 福 感
( 点
)
*とても不幸せ:幸福感尺度1-2,不幸せ:幸福感尺度3-5,幸せ:幸福感尺度6-8,とても幸せ:幸福感 尺度9-10
②8点を基準とした場合の結果
8点を基準とした場合,幸福感の高い場合の方が低い場合と比較して死亡HRが0.75(95%信頼区間:
0.63-0.89)と小さかった.
③5点を基準とした場合の結果
5点を基準とした場合,幸福感の高い場合の方が低い場合と比較して死亡HRが0.75(95%信頼区間:
0.63-0.88)と小さかった.
1 1.07 1.23 2.44 0
1 2 3 4 5 6
死 亡
(HR)
4段階評価
(「とても幸せ」を基準)
とても幸せ 幸せ 不幸せ とても不幸せ
*
1 0.75
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 死 亡
(HR)
8点を基準とした指標
7点以下 8点以上
*
1
0.5 0.43 0.4 0
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
死 亡
(HR)
4段階評価
(「とても幸せでない」を基準)
とても不幸せ 不幸せ 幸せ とても幸せ
* *
④2点を基準とした場合の結果
2点を基準とした場合は,幸福感が低い場合と比較して高い場合で死亡HRが2.11(95%信頼区間:
1.07-4.16)と大きかった.よって,幸福感が低い個人の方が死亡しやすいことが分かった.
④連続量を使用した場合
幸福感を連続量(1:不幸せ,10:幸せ9で測定した場合,点数が1点増加すると死亡HRが0.95にな るが,有意ではなかった.
1
0.75
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
死 亡
(HR)
5 点を基準とした指標
5点以下 6点以上
*
1
0.95 0.92
0.94 0.96 0.98 1 1.02
幸福感(1)
死 亡
(HR)
連続量
幸福感(1-10 )
8点を基準とした場合の方が 2点を基準とした場合と比較して,
信頼区間が小さかった.
よって,8点を基準とした指標の 方がより適切に死亡を予測すると 言える.
8点を基準とした場合と5点を基準とした 場合では死亡HR,信頼区間ともに大きな 違いはなかった.どちらがより適切に死亡を 予測するかについては精査が必要である.
1
2.11 0
1 2 3 4 5
死 亡
(HR)
2点を基準とした指標
3点以上 2点以下
*
2)幸福感と認知症の発症を伴う要介護認定との関連について
①4段階評価を用いた場合
とても幸せな個人を基準とすると,とても不幸せな個人の死亡HRはとても幸せな個人と比較して有 意に大きくなり1.84(95%信頼区間:1.04-3.25)だった.
とても不幸せな個人を基準とすると,とても幸せな個人の死亡HRはとても不幸せな個人と比較して 有意に小さくなり0.54(95%信頼区間:0.31-0.97)だった.
*とても不幸せ:幸福感尺度1-2,不幸せ:幸福感尺度3-5,幸せ:幸福感尺度6-8,とても幸せ:幸福感
尺度9-1
②8点を基準とした場合の結果
8点を基準とした場合,幸福感が高い場合の方が低い場合と比較して認知症発症HRが0.75(95%信頼 区間:0.63-0.89)と小さかった.よって,幸福感が高い個人の方がそうでない個人と比較して認知症が 発症しにくいことが分かった.
1
0.75
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 認 知 症 の 発 症
(HR)
8点を基準とした指標
7点以下 8点以上
*
1
0.75 0.59 0.54
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 認 知 症 の 発 症
(HR)
4段階評価(「とても不幸せ」が基準)
とても不幸せ 不幸せ 幸せ とても幸せ
*
1 1.08 1.37 1.84 0
0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 認 知 症 の 発 症
(HR)
4段階評価(「とても幸せ」が基準)
とても幸せ 幸せ 不幸せ とても不幸せ
*
*
③5点を基準とした場合の結果
5点を基準とした場合,幸福感が高い場合の方が低い場合と比較して認知症発症HRが0.76(95%信頼 区間:0.62-0.92)と小さかった.よって,幸福感が高い個人の方がそうでない個人と比較して認知症が 発症しにくいことが分かった.8点を基準とした場合と比較すると,同水準だが8点の方がわずかに小 さかった.
③2点を基準とした場合の結果
2 点を基準とした場合,幸福感が低い場合と比較して高い場合の方が認知症発症 HR は 1.54(95%信 頼区間:0.92-2.65)と大きかった.このことから,幸福感が低い個人は認知症を発症しやすいことが分か った
1
0.76
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 認 1.2 知 症 の 発 症
(HR)
5 点を基準とした指標
5点以下 6点以上
*
1 1.54
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 認 知 症 の 発 症
(HR)
2点を基準とした指標
3点以上 2点以下
8点を基準とした場合の方が,
2点を基準とした場合を比較して,
信頼区間が小さかった.よって,
認知症発症を伴う要介護認定の○○には,
8点を基準とした指標の方がより適切に 認知症発症を伴う要介護認定を予測する と言える.
8点を基準とした場合と5点を基準とした 場合では認知症の発症HR,信頼区間とも に大きな違いはなかった.どちらがより 適切に認知症の発症を予測するかについては 精査が必要である.
④連続量を用いた場合
幸福感を連続量(1:不幸せ,10:幸せ9で測定した場合,点数が1点増加すると死亡HRが0.94で あり有意だった.
D 考察
1.幸福感尺度の予測妥当性に関して
幸福感尺度には死亡・認知症を伴う要介護認定の2つのアウトカムいずれにおいても予測妥当性があ ることが確認できた.幸福感尺度には,健康寿命の延伸を目標とした政策の中間指標あるいは予測指標 としての妥当性はあると言える
2.市町村の特徴の弁別的妥当性に関して
地域の幸福感の平均値について統計学的に有意な群間差があったので,困難を抱え,重点支援を必要 としている市町村などの地域を特定するための弁別的妥当性もある.ただし,同じ幸福感尺度から作成 した複数の指標のうちどれを用いたかで,幸福感指標の大きさ・順位が異なっていたことから,一つの 指標でランキングなどを行うことには慎重であるべきと考える
3.最適な指標の基準に関して
政策マネジメントに用いる場合,とても幸福な人を増やすこと,平均点を引き上げること,不幸な人 を減らすことなどのうち,どれを優先するのかで,最適な指標は異なってくる.今回の分析結果に基づ くと,予測妥当性の高さ(HRの小ささ),信頼区間の小ささの視点からは,8点以上のものの割合が尺 度として有力と思われた.ただし,用いたエンドポイントや用いるデータによって異なることが予想さ れるので,今回の検討に基づく,暫定的な結果と捉えるべきである.今後,より大規模なデータを用い た検証と,介入による変化が起きるのか,社会的受容性など,多様な視点からみた検討が,引き続き必 要であると考える
E 結論
本研究の結果より,幸福感尺度は死亡・認知症を伴う要介護認定に関して予測妥当性を持つ尺度であ ること,地域診断指標としてある程度の妥当性があることが確認された.一方で,幸福感尺度は対象と なる政策的介入によって適切なエンドポイントや基準が異なる可能性があり,このことに関しては引き 続き検討していく必要がある.
1
0.94
0.9 0.95 1 1.05
幸福感(1)
認 知 症 の 発 症
HR
連続量
幸福感(1-10)