第 4 章
教育相談活動の充実を目指して
教育相談に関する実態調査や学校教育に生かす教育相談活動の具体的な事例を通して,教育相 談活動の在り方についてまとめると次のようになる。
1 校内研修の進め方と具体例
児童生徒一人一人を大切にし,個性の伸長を図るためには,教師一人一人が学校の実態に 即して,人間関係づくりの必要性やその方法,児童生徒理解,カウンセリングの技法などに ついて共通理解を深め,共通実践を進めなければならない。それらの学びの場,共通理解・
共通認識の場が「校内研修」である。ここでは 「ソーシャルスキルトレーニングを活用し, た人間関係づくり」,「コラージュ技法を活用した児童生徒理解」,「ロールプレイングを活用 した面接相談」,「インシデント・プロセス法を活用した事例研究会」の内容に関する校内研 修会の進め方について,内容と実施例を述べる。
2 定期教育相談の進め方
児童生徒一人一人の抱えている悩みやストレス,相談したい内容に対して,教師の支援が
, , 。 , ,
求められ その対応として 教育相談活動がある 本章では 定期教育相談の進め方について 教師の基本姿勢,相談に至るまでの対応,相談における留意点について示す。
3 校内体制の確立
児童生徒の抱える問題は,複雑かつ多様化してきている。これらの問題には組織としての 対応が求められている。本稿においては,校内体制の組織化だけでなく,その具体的取組に ついて示す。
4 保護者との連携
教育活動を展開していく上で家庭との連携は不可欠である。そこで本章では,家庭との連 携を図る上での教師の姿勢について示す。
5 スクールカウンセラーや関係機関等との連携
児童生徒の抱える課題によっては,スクールカウンセラーとの連携や関係機関等との連携 が必要な場合がある。具体的な方策として,スクールカウンセラーや関係機関等との連携の 在り方について示す。
1 校内研修の進め方と具体例
児童生徒一人一人が学校で自分らしさを発揮して生き生きと生活するためには,児童生徒が自分
, 。
のよさに気付いたり 自分らしさを発揮したりできるように教師が援助していくことが大切である そうした児童生徒の自己理解や自己表出を促し,個性の伸長を図るために効果的なカウンセリン グの様々な技法がある。教師がその具体的な方法や効果を知っておくと,より深い児童生徒理解や
。 ,「 」,「 」,
かかわりに生かすことができる そこで ソーシャルスキルトレーニング コラージュ技法
「ロールプレイング」,「インシデント・プロセス法」などの技法を取り上げ,そうした技法を教 師自らが体験し,学ぶ機会としての校内研修の具体的展開例を紹介する(図36 。)
開会行事 内容説明 演習 振り返り 閉会行事
・あいさつ ・進め方 ・体験 ・自己開示 ・まとめ
・趣旨説明 ・留意点 ・体感 ・共感 ・あいさつ
図36 校内研修の基本的流れと主な内容 (1) ソーシャルスキルトレーニングを活用した人間関係づくり
児童生徒の 人間関係づくり を進める方法として 構成的グループエンカウンター や ソー「 」 「 」 「 シャルスキルトレーニング」などがある。実態調査の結果から,校内研修で「ソーシャルスキル トレーニング」の実施校が少ないことが分かった(図11 。そこで,ここでは「ソーシャルスキ) ルトレーニング」について,校内研修の進め方を紹介する。
ア ソーシャルスキルトレーニングとは
ソーシャルスキルとは,良好な人間関係をつくり,保つための知識と具体的な技術やこつの ことである。そのソーシャルスキルを身に付けるためのトレーニングをソーシャルスキルト レーニングという。
イ ソーシャルスキルトレーニングの意義
ソーシャルスキルを身に付けていない児童生徒は,他の児童生徒とコミュニケーションをう まくとれないことが多い。そのため相手に自分の意思を伝えられなかったり,相手からの働き 掛けにこたえられず心を閉ざしたりする。そのことから,学級での不適応感が強まり,不登校 や学業成績にも影響を与えると考えられる。
ソーシャルスキルを身に付けることにより,次のような効果が期待できる。
① 他者と接する場合に,具体的にどうかかわればよいかが分かるようになる。
② 今後の人間関係の中で発生するであろう葛藤やストレスなどの心理的負担に対して,適 切に対処できる能力を身に付けることができる。
③ 学校生活への不適応の問題を抱えている児童生徒に対し,不適応傾向の改善に向けた効 果的な支援を行うことができる。
ウ 校内研修の実際Ⅰ「ソーシャルスキルトレーニングを活用した人間関係づくり (60分)」
研 修 内 容 留 意 点 等
時間
, 。
1 開会 ・ 研修の概要の説明 研修の目的について確認する
2分
2 ソーシャルスキルトレーニングの説明 ・ 無理強いをしないことや児童生徒がソーシャルス (1) ソーシャルスキルトレーニングの目的と効果 キルトレーニングを行う際の留意点について確認す
5分 (2) 実施上の留意点 など る。
3 演習 ・ 緊張がほぐれるようなエクササイズを行う。
(1) 雰囲気づくり(ウォーミングアップ) 「じゃんけん手の甲たたき」
・ ショートエクササイズ じゃんけん手の甲たたき「 」 ペアをつくり互いに左の手で握手する。右手でじゃ
をする。 んけんをし,勝った方が相手の左手の甲を叩く。負
5分
・ シェアリングを行い,活動を振り返る。 けた方は,直接叩かれないよう自分の右手でガード する (1分間)。
(2) めあての確認(インストラクション) ・ 学習すべきスキルについてそれがどんなときに,
研修の方向性について,意義,めあてについて説明 どのように役立つのかを説明し,研修のめあてを確 3分
する。 認する。
(3) 観察学習(モデリング)
① モデルが 上手な断り方 についての演技を行い「 」 , ・ モデルが演じる様子を観察させて,具体的なスキ 参加者はそれを観察して断り方のこつを学ぶ。 ルや話し方,態度などのこつを見付けさせることが
大事である。
【場面】絵を仕上げて帰りたいと思っているBに対して, ・ モデルについては,リーダーや参加者自身が示す Aが一緒に帰ろうと誘う。Bはそれを断る。 場合や視聴覚教材を活用する場合が考えられる。
A: 部活も終わったのに,教室で何やっているの?」「 ・ 適切なスキルを理解させるために,ここでは不適 B: うん,仕上がらなかった絵を描いているんだよ 」「 。 切な例も示している。
A: そうなんだ。でも,もう一緒に帰ろうよ 」「 。
) ,「 。」
B:タイプ1(1回目 ,タイプ2(2回目) ・ Bは 絵を仕上げてから帰りたいと思っている
【タイプ別の言葉】 ことを確認し,次の2タイプで表現する。
タイプ1 タイプ1:自分のことしか考えず,相手のことを考
「いやだよ。この絵を仕上げてから帰るんだ。今,仕上げ えないタイプ
ない と明日の朝,早く学校 へ来てやらなければ ならな タイプ2:自分のことを考えるが,同時に相手のこ いんだ。先に帰ってよ。じゃあね 」。 とも考えるタイプ
タイプ2 10分
「この絵 を仕上げてから帰り たいんだ。あと20分だから 待っててくれる?でも,もし忙しかったら先に帰って。
誘ってくれてありがとう 」。
② 「上手な断り方」のこつを確認する。 ・ モ デリン グから 得た 「上手 な断り 方」の こつに, ア 「ごめんね」の一言を入れる ついて確認する。
イ きちんと理由を言う ・ 参加者から発言がなければ,リーダーが具体的な ウ きちんと相手を見て言う スキルや話し方,態度のこつなどを押さえる。
エ はっきりした言い方で断る(声の大きさ,歯切 れよく)
「 , 」,「 」
オ また 誘ってね 誘ってくれてありがとう の一言を入れる
(4) リハーサル(ロールプレイング) ・ ロールプレイングのグループ編成,役割交代順な
① 3人のグループを作り,役割を決めて(誘う役, どについて説明する。
断る 役,観察者 ,場面設定を確 認してロールプ) ・ 断る役のタイプ1,タイプ2をそれぞれ演じる。
レイングを行う(役割を交代して3回繰り返す 。)
-練習の場面-
・ 時間内に3回のロールプレイングと振り返りが終 わるように,グループの進行状況を確認しながら,
進めさせる。
・ ロールプレイングや振り返りの様子を見て,全体 25分
に紹介したいグループをピックアップしておく。
② グループでの振り返り ・ 参加者自身の取組に対する賞賛に加え,児童生徒 1回のロールプレイングが終わる度に,その都度 に実施する際の留意点等も含めて助言する。
フィードバック(相互評価)を行う。
③ 全体での振り返り
いくつかのグループの振り返りの様子を聞いて,
全体の振り返りに生かす。
(5) まとめ ・ 児 童生徒 に対し て実際 に行う 場合は 「定 着化」, 学んだスキルを日常生活に生かせるように,意欲付 により学習したスキルが,家庭や地域社会など,日 5分
けを図る段階であることを説明する。 常場面で具体的に実践されるように促すことが大切 であることを確認する。
4 全体のシェアリング(振り返り) ・ 児童生徒の実態に応じて,工夫していくことの必 3分 活動全体を通した感想や反省などについて話し合う。 要性に気付かせる。
5 閉会 ・ 管理職または教育相談係が研修のよかった点を整
2分 まとめ 理してまとめる。
「放課後,掲示係の友達に習字の掲示を手伝ってくれないかと 頼まれました。今日は,母と病院におばあさんの見舞いに行
, 。」
くことになっているので すぐ帰らないと間に合いません
エ 実施上の留意点
, ,
ソーシャルスキルトレーニングは 良好な人間関係をつくるために行われるものであるから 楽しい雰囲気の中で行われるようにする。また,実施に当たっては自己開示しやすい雰囲気を つくり,楽しみながらトレーニングできるようにすることが大切である。
教師が児童生徒に対して実施する場合,各場面で細かな説明や発言をなるべく控え,学習し ているスキルに関して児童生徒自らが考えたり,気付いたりできるように配慮し,決してスキ ルを教え込むようなことにならないようにする。
(2) コラージュ技法を活用した児童生徒理解
児童生徒一人一人を大切にし,児童生徒のもつよさや可能性を最大限に引き出していくために は,児童生徒と教師の信頼関係を基盤に,児童生徒のもつ特徴や傾向をよく理解し把握するなど 深い児童生徒理解が大切である。
そこで,ここではコラージュ技法(マガジン・ピクチャー・コラージュ法)を活用した校内研 修の進め方について紹介する。
ア コラージュ技法とは
コラージュ(collage)とは,coller(のり付けする)という語源からなるフランス語「の りによる貼り付け」を意味し,そもそもは20世紀初頭に生まれた美術の表現方法である。最近は では心理療法にも活用されている。コラージュ技法は言語や絵による表現が苦手な人でも比較 的抵抗なく取り組むことができる。また,簡単な方法で自己表現が可能となり,自己を自由に 表現できた喜び・達成感を味わうことができ,作品を通して自分を客観的に見つめるなど,自 己の内面を意識化することができる。さらに,他者の作品のよさを互いに認め合い,伝え合う などの過程を通して人の心が癒される不思議な魅力をもった技法である。こうしたコラージュ 技法を児童生徒理解の方法として実践するには,教師自身がコラージュ技法を体験し,そのよ さを実感することが大切である。コラージュ技法には以下の二つの方法がある。
(ア) コラージュ・ボックス法
教師があらかじめ雑誌やカタログなどから使えそう な材料を集めて切り抜き,それを箱の中に入れておき,
その中から児童生徒が選び出して貼り付ける方法。は (イ) マガジン・ピクチャー・コラージュ法
児童生徒が自分で雑誌やカタログなどから直接切り 取って貼り付ける方法(図37 。)
は
図37 作品例
(マガジン・ピクチャー・コラージュ法)
イ コラージュ技法のよさ
(ア) 台紙,はさみ,のり,雑誌などを準備するだけで手軽に実施できる。
(イ) 好みの雑誌等を持参させると,その児童生徒の内的世界がより反映されやすい。
(ウ) 絵を描くことが苦手な児童生徒でも取り組みやすい。
(エ) 作品作りの過程を通して,カタルシス(心的浄化作用)が図られやすい。
(オ) 表現された作品から,その児童生徒の感性や心理状態などが把握できる。
ウ 校内研修の実際Ⅱ「コラージュ技法を活用した児童生徒理解 (60分)」
※ 開会,閉会については「校内研修の実際Ⅰ」と同様
時間 研 修 内 容 留 意 点 等
1 説明 ・ 自分を出しやすい雰囲気をつくることを心掛ける。
10分 コラージュ技法について説明する。 ・ 児童生徒が制作する場面では自己の内面を見つめられるよう,
制作中はおしゃべりをしないこと,むやみに席を離れて他人の作 品を見たりしないことを確認する。
2 制作 ・ 集中して自己表現を楽しむ。
40分 作品を制作する。 ・ 進行役は,全体の進み具合を見ながら柔軟に時間配分する。
・ 終了5分前には,終了時刻を予告する。
3 シェアリング ・ 周囲の人と,作品について「作品のタイトル」「作品に込めた 自 分の 作品 に つい て ,あ るい は 制作 思い 「気に入っているところ」などを伝え合い,互いの作品の」 7分 を通して感じたこと,考えたことなど, 「いいところ 「その人らしさ 「意外な一面」などを認め合う。」 」
グループで感想を述べ合う。 ・ 「否定的なことは言わない」ということを確認する。
・ 自己開示を積極的に行う。
4 振り返り ・ 振り返りの重要性を強調する。
3分 全体で感想・意見を発表する。 ・ 感想等の発表については「肯定的に受け止める」ことを確認す る。
[準備するもの]
・ 台紙となる画用紙
・ はさみ,のり(スティックのりが便利 ,雑誌・カタログなど(好きなもの,気になるものなどが載っている) もので,切り取ってよいものを各自2,3冊準備する 。)
エ 実施上の留意点
コラージュの制作にあたっては,他の芸術療法と同じように,何を表現しても非難されない という安心感がなければならないことを確認する。また,作品について感想を伝え合うときに は,カウンセリングの原則である無条件の積極的関心や共感的理解の態度が求められる。
さらに,表現しない自由もあり,制作をためらっている児童生徒に無理に制作させないこと も大切である。
(3) ロールプレイングを活用した面接相談
, 。 ,
教師が児童生徒理解を深めるための一つの手段として 児童生徒との面接相談がある しかし 実態調査の結果(図3)からも分かるように教師が児童生徒から相談相手としてあまり選択され ていない。そこで教師はこれまでの説諭や指導的な面接だけでなく,児童生徒の発達課題を解決 したり,問題行動を予防したりするなど,人格の成長を促進したりするための教育相談を行う必 要がある。そのためには,基本的なカウンセリングの理論や技法について理解しておくことが重 要である。ロールプレイングは,短時間で児童生徒の気持ちに気付いたり,自分の言動に気付き 振り返ったりすることができる有効な技法である。
ア ロールプレイングとは
ロールプレイングは,日常生活での課題等を解決するための手掛かりを得ることができるカ ウンセリングの技法である。一般的には,ウォーミングアップ→演じる→終結(振り返り)の 流れとなる。演じる人や観察している人の心の中で感じるものや気付くものが重要視される。
イ ロールプレイングの意義
ロールプレイングでは,様々な役割を演じ,それぞれの役割に徹することによって,それぞ れの立場での感情,心理的な葛藤などを体験的に理解することができる。このことによって面
接時における「自分の癖」が浮き彫りになり,面接時のよりよい態度の手掛かりが得られやす くなる。また,ロールプレイングを通して,自己表現,自己開放がなされたり,心情が浄化さ れたりして,こだわりのない本来の自分に立ち戻ることもできる。
ウ 校内研修の実際Ⅲ「ロールプレイングを活用した面接相談 (60分)」
※ 開会,閉会については「校内研修の実際Ⅰ」と同様
時間 研 修 内 容 留 意 点 等
1 定期教育相談の進め方
(1) 定期教育相談の目的,相談における配慮 (目的) 児童生徒とのリレーションの確立を目指す。
事項についての確認 (配慮事項)
5分 ・ 児童生徒自身で解決していくことができるよう支援する。
・ 秘密を保持する(ただし,虐待や生命にかかわる内容など 緊急を要する内容については管理職へ報告する 。)
(2) 面接相談の基本姿勢 傾聴 受容 共感 ・ 教師の基本姿勢について共通理解を図る。
5分 ( , , ,
誠実など)
2 定期教育相談の模擬面接 ・ 2人の座る距離や角度による感じ方の違いを体験する。
(1) 2人組での演習 また,聞き手が足を組んだり,腕を組んだりしたときの感じ 10分 ・ 座る位置等による感じ方の違いの実感 方を体験する。
・ カウンセリングの基本的技法の確認 ・ カウンセリングの基本的技法を確認する。
(受容 繰り返し 質問 感情の明確化, , , , 沈黙など)
(2) ロールプレイングについての説明 ・ ロールプレイングの目的や効果,進め方について簡単に説
・ 3人組をつくる。 明する。
5分 ・ 児童 生徒 役,教 師役 ,観察 者を決 め, ・ 1回演じるごとに,振り返りを行うことを確認する。
役割を交代して順番に行う。
(3) ウォーミングアップ ・ ショートエクササイズを行い,明るく楽しい雰囲気づくり 5分 ・ ショートエクササイズ「フルーツバス をする。
ケット」をする。
(4) ロールプレイングをする。 ・ 身近なテーマを取り上げる。
25分 ・ 演じる。 ・ その役になりきって,真剣に演じる。
・ 振り返りを行う。 ・ 振り返りは毎回行い,その重要性について確認する。
3 全体の振り返り ・ ロールプレイングについての感想等を発表してもらう。
5分 ・ 感想等の発表については肯定的に受け止める。
エ 実施上の留意点
「テーマ」が漠然としたままで演習を実施すると,現実味の薄いやり取りになってしまうの で,日常的で実際にある保護者からの相談内容などの身近な問題を取り上げる。また,演じる 中で 「沈黙」の場面も取り入れる等,様々な場面への対応が図られるよう工夫する。,
ロールプレイング終了後の振り返りでは,批判するのではなく具体的な反応について感想を 述べ合うことを確認する。
(4) インシデント・プロセス法を活用した事例研究会
事例研究は,児童生徒理解と具体的援助を目指すものである。事例研究を通して,教師には,
が期待できる。事例の中には,教師だけでは問題の理解をできなかったり,難しい問題が出たり する場合がある。その際は,多くの情報を得るためにスクールカウンセラーや専門機関等の講師
○ 指導上活用できる点と改善を加える点を発見できる力の養成
○ 具体的で実行可能な改善策を立案できる力の養成
○ 実践的問題解決能力の向上
による講演を取り入れながら,児童生徒への援助や教師の資質向上を図ることが大切である。こ こでは,事例研究法の中でも比較的容易に取り組みやすいインシデント・プロセス法について述 べる。
ア インシデント・プロセス法とは
インシデント・プロセス法とは,発表された出来事を基にして,参加者が次々に質問するこ とにより事例の概要を明らかにしながら,事例の原因と対策を考えていく事例研究法である。
このように,発表された簡単な状況を示す出来事(インシデント)を基にして,問題の核心は 何なのかを判断し,その解決策を具体的に検討することから,模擬演習といった気持ちではな く,今まさに自分がその事例とかかわっているという臨場感が味わえるため,研修への意欲が 増すと言われている。事例の分析よりも,参加者による事実の発見に重きを置いている。
イ インシデント・プロセス法活用の意義
ウ 校内研修の実際Ⅳ「インシデント・プロセス法による事例研究会 (60分)」
※ 開会,閉会については「校内研修の実際Ⅰ」と同様
時間 研 修 内 容 形 態 留 意 点 等
1 事 例研 究会 の 進め 方, 方法 全体 ・ インシ デント・ プロセス 法の特徴及 び事例研究 会の進 5分 についての説明 め方,方法等について,参加者に説明する。
2 イ ンシ デン ト の提 示と 情報 収集
5分 (1) インシデントの提示 ・ 事例提供者は,出来事(インシデント)を発表する。
・ 事例について内容の把 ・ 参加者 は,イン シデント を参考に, なぜこの出 来事が 握,質問事項の検討 個人研究 起こった のか,状 況を把握 するために はどのよう な情報
が必要か考え,質問事項を整理する。
(2) 情報収集 ・ 事例提 供者への 質問は一 問一答形式 で,具体的 な内容
・ 質問による事例の理解 を聞く。
5分 ・ 事例提 供者への 質問を通 して,事例 の概要・背 景等に
ついて理解する (記録カードへ記入)。
(3) アセスメント(見立て) ・ 収集した情報を基に,仮説を立てる (記録カードへ記
5分 。
・ 背景等の考察 入)
2 支援策の立案
(1) 背景等 を踏まえ ,指導方 個人研究 ・ 解決す べき課題 等を考慮 しながら, ①本人に対 して,
5分 針 ,対 応方 法 など 個人 で考 ②家庭に 対して, ③学校内 でなど観点 を焦点化し 実行可
える。 能な対応策を考える。
・ 対 応策につい ては,上 記の観点別 に色分けさ れたカー ド又は付せんに記入し,整理する。
(2 ) 指 導方針 ,対 応方法 につ グループ研究 ・ 5,6 人でグル ープを編 成し,観点 ごとに協議 し,対 いてグループで協議する。 応策を集約する (個人研究で作成したカードあるいは付。
15分 せんを画用紙等に貼りながら整理していく )は 。
○ グ ル ー プ 討 議 を 中 心 に 行 う こ と で , 参 加 者 全 員 の 問 題 意 識 を 高 め ら れ る 。
○ 参 加 者 が 一 人 一 人 当 事 者 の 立 場 で 考 え , 主 体 的 で 積 極 的 な 研 修 に な る 。
○ 情 報 収 集 能 力 や 問 題 発 見 能 力 , 実 行 可 能 な 解 決 策 を 立 案 す る 能 力 な ど を 養 う こ と が で き る 。
○ 実 際 に 発 生 し た 問 題 を 共 有 体 験 す る た め , い ろ い ろ な 角 度 か ら の 解 決 策 が 出 や す い 。
○ 事 例 提 供 者 は , 資 料 作 成 等 の 事 前 準 備 を ほ と ん ど 必 要 と し な い 。
・ 各対応 策につい て,有効 性,実行性 を考慮しな がら順 位付けを行う。
・ 順位付けされた対応策については,「何を」,「誰が」,「い つ」,「どこで」,「どのよう に」など具体 的に整理し,援 助カードに記入する。
(3) 指 導方針 ,対応方 法につ 全体研究 ※ 参加人 数が少な い場合は ,全体研究 はグループ 研究に 10分 い てグ ルー プ の考 えを 出し 含める。
合う。
3 指導の実際と感想,助言 全体 ・ すでに 終了した 事例であ れば,実際 に行った指 導の過 (1) 事 例提供 者の感想 発表等 事例提供者 程や現在の児童生徒の変容を説明する。
・ 現在進 行中の事 例であれ ば,現在ま での指導の 様子と 5分
感想を述べる。
(2) 指導・助言者からの講評 全体 ・ 今回の 事例に対 して,児 童生徒理解 や支援対策 のポイ
5分 助言者 ント,留意点を助言する。
・ 事例研究会についても講評を行う。
※ 事前の準備: 事例提供者を選出しておく。
事例提供者は簡潔に出来事の概要をまとめておく。
場合によっては指導助言者を招いておく。
エ 実施上の留意点
① 進行役は,参加者の質問によって問題の背景を探っていくため,積極的な質問を促すように する。
② 質問は一問一答形式で具体的な内容を聞くようにする。
③ 質問は問題の解明を見いだすためのものであり,事例提供者を責めるような質問は絶対しな いようにする。
④ 個人で考えている際でも,必要に応じて再度質問を認めるようにする。
⑤ 実例を扱うため,個人のプライバシーには十分に配慮する。
インシデント・プロセス法の校内研修を進める際に必要なインシデントの例,記録カードの例,
援助カードの例を以下に示す。
インシデント(例)
中学1年生Aは,3人で休日や放課後にB,Cと一緒に遊ぶ等,行動を共にする友達同士 である。小学校までは共に仲良しであったが,6月頃から,力関係に変化が表れてきた。3 人の中でBがリーダー的存在であり,遊びやテレビゲームで主導的な立場である。Cも活発 なタイプであるが,Bに対しては服従的である。Aはおとなしく,あまり自己主張しないタ イプである。
ある日,いつものようにA,B,Cの3人が公園に集まり,しばらくゲーム等をして遊ん でいたが,ささいなことから言い合いになり,AとCがけんかを始め,殴り合いになった。
Aは頭にこぶができ,Cは唇がはれ,口の中を切るけがを負った。
事例提供者がまとめ提
示する。
記録カード(例)
・ 友人から無視され続けている
・ Aを思いやる友人がいない 本人
・ 関係の修復に自信がない 情
・ 父親は厳しいが,単身赴任中で,子どもとのふれあいがもてない 家庭
報 ・ 母親によく甘える
・ 国語,英語は得意であるが,数学は苦手としている 収 学校生活
・ 特に目立った活動ぶりではないが,係の仕事はしっかりとこなす
集 その他
問 ○周囲(友人・学級集団)の問題 題 ・ いじめに対する認識が不足
の ・ 相手の気持ちになって考える雰囲気がない 背 ・ クラスにまとまりがなく,リーダーが不在 景
仮
説
援助カード(例)
順位 具体的対応策(何をするか) 誰が いつ どこで
*本人
担任 放課後 家庭訪問
1 本人の今の気持ちをしっかりと受け止め,今後どのよ
をして うにしたいのか一緒に考える。
養護教諭 昼休み 保健室
2 友達とかかわるときに必要なソーシャルスキル(あい さつをする,誘う,断る)などを具体的に教えて,対人 関係上の不安を取り除く。
*家庭
*学校生活
*その他
誰が,いつ,どこで 対応するのか,具体的 に記入する。
得られた情報を基に仮 説を記入する。
実行可能な対応策について 検討し,順位付けを行う。
原因や背景を踏まえ,指導 方針や援助を考え記入する。
事例提供者への質問に
より必要な情報を記入し
まとめる。
2 定期教育相談の進め方
教育相談には,チャンス相談,呼び出し相談,定期教育相談及び自主来談による相談があるが,
その中の定期教育相談は,本来教師への相談を望みながらも進んで相談できない児童生徒にとって は,じっくり相談できるまたとない機会である。また,教師が児童生徒理解を深め,児童生徒との リレーション(関係性)をつくる上でも効果的であり,チャンス相談や呼び出し相談,自主来談に よる相談につなげていくためにもその活用はきわめて重要である。
しかし,実際は,実態調査から定期教育相談を実施していない学校もあること,児童生徒が,自 分の抱える悩みの相談相手として,あまり教師を選んでいない等の実態が明らかになった。
また,定期教育相談を行っていても 「相談をどのように進めたらよいか分からない 「児童生徒, 」, の悩みをうまく聞き出すことができない」,「時間的に余裕がなく,思うような接し方ができない」
というような教師の声もある。
そこで,ここでは定期教育相談のねらいに立ち返り,どのようにしてその特性を生かしながら実 践を進めていけばよいかということについて述べる。
(1) 定期教育相談のねらいと教師の基本姿勢
定期教育相談のねらいは 「児童生徒一人一人のよさを見付け,児童生徒と教師が互いを理解, し,信頼関係をつくる」ことである。教育相談が,成績個票を前にしての指導の場になってい るというようなケースは論外だが,教師が 「今何か悩んでいることはないか 「悩みがあれば, 」, 先生が解決してあげよう」というような気負った姿勢で臨むと,逆に児童生徒は教師との距離 を感じとり,警戒して心を閉ざしてしまう。児童生徒が 「この先生には,小さなことでも相談, できそうだ」,「もう一度,この先生と楽しく語る機会をもちたい」と思うことが大切なのであ る。
言い換えれば,限られた時間内で児童生徒の抱える悩みを把握しようとすることにこだわら ず,児童生徒が自分の意思で相談に訪れるような人間関係づくりをすることが定期教育相談の ねらいということになる。
(2) 定期教育相談に至るまでの対応 ア 事前の児童生徒理解
定期教育相談のねらいは,(1)で述べたとおりだが,教育相談に臨む教師は,事前に一人一 人の児童生徒理解を深めておく必要がある。そこで,家庭から得た情報や日常の観察 「生活,
」 , 。 ,
の記録 ノートなどから児童生徒理解を進め 整理し分析しておくことが大切である また 事前のアンケート調査や,様々な検査法を用いた資料を活用することも考えられる。
児童生徒理解を進めるに当たっては,特に児童生徒のよさに目を向けておくことが,相談 場面での児童生徒とかかわりに生きてくるので大切である。
イ 事前の意図的なリレーションづくり
定期教育相談の実施前に,児童生徒同士及び児童生徒と教師のリレーションづくりを意図 的に進めて対人関係の緊張をほぐし,話しやすい雰囲気をつくっておくと効果的である。例
えば,学級担任が構成的グループエンカウンターのエクササイズを,定期教育相談直前に計 画的に実施することも考えられる。また,教師自身が日ごろから自己開示する中で,児童生 徒に親近感を抱かせることが大切である。
ウ 場の設定
児童生徒が教育相談を受ける場合,教師とのリレーションがある程度できていても1対1 の面談となるとやはり緊張するものである。また 「友達に聞かれてしまうことはないか」と, いうことも気にするため,緊張を和らげ,秘密が守られる場の設定が必要になってくる。
しかし,定期教育相談の場合は,学年または学校で一斉に行われる場合が多いので,児童 生徒が安心して話すことのできる相談場所の確保については,教師間の連携が必要である。
さらに,それぞれの相談場所に花や絵を飾るなどの設営上の配慮や座席の配置など,環境を 整えることも大切である。
(3) 定期教育相談実施の際の留意点
ア 教師とのリレーションづくりに主眼を置いた場合
イ 児童生徒が自分から悩みを話し始めた場合
ウ 悩みがあっても児童生徒が自分から話そうとしない場合
① 「私はこういう状況の中,こんなに耐えているが解決の糸口すら見えてこない」と いう思いを抱えている児童生徒に対し 「その辛さを乗り越えて頑張るんだよ 」とい, 。 う励ましは 「これ以上まだ頑張れというのか 」という気持ちとともに,相手に苦し, 。
。「 。」
さを分かってもらえないという思いの方が強くなる 辛いけど頑張っているんだね と声を掛け,温かく見守る姿勢でかかわる。
② 児童生徒がうつむいたり,外を見たりしながら黙り込んでしまった場合,焦って話 し掛けない。沈黙している児童生徒の気持ちやその理由に思いを巡らせ,児童生徒の 動きを待つ。
① その時間内で,強引に児童生徒の心を開かせようとしない 「深い心の痛みは簡単に。 人前に出せるものではない 」という教師の思いを言葉にして伝える。また 「他人に。 , は言えない思いもあるだろう 」という深い思いやりの心で接する。。
。 , ,
② 教育相談を単発的なものとして考えない 児童生徒が 心の整理をする時間を与え チャンス相談や呼び出し相談を行う中で自主来談に発展させる。
① 日ごろとらえている児童生徒のよいところを話題に載せ,自己効力感をもたせる。
② 児童生徒が興味・関心をもっているものに触れ,共通の話題づくりに努める。
③ 指導の場との区別をつけ,服装の乱れ等をとがめたりしないよう留意する。
④ 足を組むなど,受容的でない態度をとらないよう留意する。
3 校内体制の確立
児童生徒の心の問題は複雑かつ多様化しており,学級担任や養護教諭だけでの対応,又は,両 者の連携による対応だけでは必ずしも十分ではなく,適切な判断が難しい場合が出てきている。
また,学校内外の連携についても,校内体制による組織的な対応が必要になってきており,今後 様々な問題を抱えた児童生徒に対して,学校が組織として相談体制を持ち,学校全体で問題を共 有しながら予防的な教育相談を含めて解決を図っていくことが必要である。
そこで,ここでは,校内体制を確立し,実際に学校全体で年間を通して教育相談の取組を行う 場合の具体例について述べる。
(1) 学校内外の連携とサポート体制の推進 ア 学校内外の連携
校内体制の確立のためには,学校内連携と保護者や関係機関等との連携を意識して構成す る必要がある。図38にその構成要素を示す。
図38 教育相談組織づくりの構成要素
イ サポート体制の推進
サポートチームは,児童生徒のニーズに応じて管理 職やコーディネーターが編成するが,基本的には,学 級担任・養護教諭(教育相談係)のペアに,学年主任 等が加わる形が考えられる。この場合,実際に児童生
, 徒にかかわるサポートチームの人数を多くし過ぎると
役割分担が曖昧になり,動きがとりにくくなる。した がって,それぞれが,自分の役割をきちんと認識し,
具体的かつ日常的に支援を継続できるものにしなけれ ばならない。
また,養護教諭が児童生徒の指導・援助に積極的に
図39 校内サポートチーム編成の考え方(例)
かかわる必要性が高まると予想されるので,過度な負担
児童生徒
学 級 担 任 管理職
学年主任 養護教諭
部活動顧問 教科担任
教育相談係
生徒指導主任 その他の教職員
スクールカウンセラー等
【学校内連携】
【関係機関等との連携】
福祉事務所 民生委員
医療機関
児童相談所
少年サ ポート センタ ー
教育センター等の相談機関
警察
適応指導教室 精神保健福祉センター
保護司 保護者
大学等
児童生徒
心の教育推進委員会
校内サポートチーム 学年主任 養護教諭
学級担任 コーディネーター
日常的な担当者への支援 担当者
児童生徒
がかからないようにコーディネーターは注意する必要がある。
(2) 意識調査の実施
校内体制で教育相談を進めるために,児童生徒の意識調査を教育相談部等で企画し,学校全 体で実施することは有効である。そして,児童生徒の実態を調査し,分析と考察を加え,校内 体制の方針を決定する。また,支援の必要な児童生徒を把握し,サポートチームによる支援が 必要かどうか,コーディネーターが判断していく資料ともなる。
(3) 事例研究会の実施
これまで学校で行われてきた事例研究は,事例の概要を報告し,参加者の意見や感想を求め ることが中心の事例報告会型をとることが多かったのではないかと思われる。この方法では,
教師が,限られた時間内により多くの事例を把握できるという利点はあるが,肝心の今後の対 応についての論議はなされないことが多く,最終的にその判断が事例提供者に委ねられてしま いがちである。
そこで,校内体制による教育相談の取組の中では,事例研究会型を設定し,教師が協力して 事例の理解から対応の方向付けまで行い,担任もしくはサポートチームによる支援につなげて
。 , , ( )
いくことが必要である そこで 事例研究会では インシデント・プロセス法 P44〜P47参照 や短縮事例研究法(研究紀要第86号で紹介)などを活用し,職員研修の時間内で実施したい。
(4) 教育相談に関する校内研修会の実施
教育相談については,専門的な研修を行い,一人一人の教職員が,学校カウンセリングの基 本姿勢と技法を学んでおく必要がある。そのために,外部講師や校内の人材を活用した構成的 グループエンカウンターやソーシャルスキルトレーニング,ロールプレイングなどの実技研修 会を企画するなど,学校全体での積極的な校内研修会への取組が必要である。
また,学校で事例への対応の仕方について,判断に迷うようなケースは,関係機関等と連携 し,コンサルテーション(指導・助言)を受けることも効果的である。
このような研修を積極的に進めるためには,年間を見通した研修計画が必要だが,他の分野・領
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域とのバランスも考慮しながら 時機を得た研修も実施することが大事である 次に示すのは 教育相談に関する校内研修会の年間計画例(中学校)である。学校の実情に応じて適宜取り入 れるなど参考にしていただきたい。
表4 教育相談を中心とした校内研修会の年間計画例
月 関連行事等 テーマ 内容及び主なねらい
学級開き 生徒理解の基本と出会 一人一人の生徒へ目を向けていくための基本姿勢
4 いの工夫 を再確認する。
家庭訪問 保護者へのかかわり方 家庭との信頼関係を築くための基本姿勢について
5 研修する。
定期教育相談 教育相談の基本姿勢と 定期教育相談に向けた共通理解を行い,教育相談 6 技法を生かした生徒へ の基本的技法を確認する。
のかかわり方
1学期のまとめ 学級経営の振り返り 1学期の学級経営を,学級集団としての成長を中
7 心に振り返る。
事例研究会 学校不適応の傾向を示 1学期間の生徒理解の実践から事例を出し合い,
8 す生徒への対応 対応策を相互に検討し合う。
学期はじめ 積極的に人間関係をつ 構成的グループエンカウンターによる人間関係づ 9 体育祭 くる集団の育成 くりの実践に向けた研修をする。
文化祭 積極的な自己表現ので グループカウンセリング及びソーシャルスキルト 10 きる集団の育成 レーニングの実践について学ぶ。
定期教育相談 いじめ,不登校への対 いじめ,不登校にテーマを絞り,未然防止と早期 応 発見及び具体的対応の方法について研修を行う。
11 (保護者対応の
) 教育相談も計画
2学期のまとめ 学級経営の振り返り 2学期の学級経営,学級集団としての成長を中心
12 に振り返る。
学期はじめ 生徒の自己実現へ向け 生徒一人一人の自己成長を促す対応の在り方につ
1 た支援 いて研修をする。
事例研究会 学校不適応の傾向を示 これまでの生徒理解の実践から事例を出し合い,
2 す生徒への対応 対応策を相互に検討し合う。
学年のまとめ 新年度に向けた出会い 新年度の学級開きに向け,構成的グループエンカ
3 の工夫 ウンターの工夫等を話し合う。
(5) 教育相談週間(旬間)の実施
児童生徒のニーズに応じた教育相談を行うために,定期教育相談実施期間,もしくは別に設 定するなど,相談するきっかけを積極的に提供しながら教育相談をより身近なものとして位置 付けることが効果的である。そのためには,日ごろから児童生徒と教職員のリレーションを高 め,より多くの児童生徒が安心して教職員のもとへ訪れるよう配慮したい。
(6) 保護者との定期教育相談等の実施
校内体制で行う教育相談は,保護者との連携も重要である。保護者が来校しての定期教育相 談については,個別で面談をする機会が少ない教師と保護者にとって連携をとるよい機会とな る。この場合,児童生徒の同席がない形での面談となり,保護者も教師も児童生徒には直接聞 かせたくない内容にも触れながら,具体的に話を進めることができる。また,保護者対象の教 育相談講演会等の実施も,児童生徒への支援に向けた保護者の理解と協力を得ていく上で,効 果的である。
しかし,保護者が,担任の指導方針や学校の支援体制について,満足していなかったり,強 い要望をもっていたりする場合も少なくない。その場合は,学年主任や教頭,校長の経験に基 づいた対応も必要になってくるので,校内体制のかなめとして,強いリーダーシップを発揮す ることが大切である。
4 保護者との連携
( ) 「 」
文部科学省21世紀教育新生プラン 2001年 に 教育の原点は家庭にあることを自覚すること とあるように,家庭が児童生徒の成長発達に果たす役割は大きい。家庭がすべての児童生徒にとって 安全基地(ベースキャンプ)として例外なくその機能を発揮するためにも,学校には日ごろから
様々な機会を利用して保護者との連携を深めていくことが求められる。
教師が保護者と連携を図る機会としては,直接保護者が学校に来る場合,電話での場合,教師 が家庭訪問したり,別の場で話をしたりする場合など多様である。その際,教師の姿勢としては 次のような点が重要である。
(1) 保護者と連携を図る際の教師の基本姿勢 ア 保護者の心情をくみ取る
どの保護者もわが子をかけがえのない存在として,そのよりよい成長を願って最善を尽く そうとしている。それ故,教師にわが子のことや子育ての在り方を批判的に言われると反感 を抱いてしまいやすい。また逆に,教師も保護者から指導の在り方等を指摘された場合は,
保護者の不安や思い・願いの深さ故であると受け止めることが大切である。
保護者を評価し,指導しようとするのではなく,教師が保護者の気持ちをくみ取ろうとす る姿勢をもったとき,初めて連携の基盤が出来上がる。
イ 保護者の話を傾聴する
, 。
人は誰しも自分の話を聴いてほしい 分かってほしいという願いをもっているものである その気持ちをくみ取り,まずは「聴く」ことが大切である。保護者の話に耳を傾け,言いた いことを十分に聴いていくとともに,保護者の辛い気持ちや不安などを自分のこととして受 け止め,その感情を受け入れていく。そのことによって保護者は今の自分自身を振り返る余 裕も出てくるし,自分の気持ちを整理することができるのである。
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逆に話を十分に聴かないうちに教師側の意見を言ったり 推測で物事を判断したりすると 信頼関係が損なわれたり,解決できる問題もかえってこじれたりすることがあるので留意す ることが大切である。
ウ 具体的な助言をする
問題解決のための対応を保護者に協力してもらうには,保護者としてできることを具体的 に助言し,保護者自身が自己決定できるように配慮することが大切である。そのためには,
児童生徒のよりよい成長を目指して何ができるか共に考え,知恵を出し合うことである。
そして,保護者が相談してよかったと思えるような具体的な対応の仕方を助言することが 大切である。
エ 保護者の行為を認める
自分の子どものことで悩んでいる保護者に共通していることは,大半の保護者が既に自分 の子育ての在り方に責任を感じているということである。そこで,保護者の子育ての在り方 を責めるのではなく,むしろその苦労に十分共感した上で,これからの対応を考えていくこ とが大切である。そのためにも,日ごろから児童生徒のよさや頑張りをしっかり見取り,保 護者に伝えるなど,保護者自身の子育てに対する自信をもたせながら信頼関係をはぐくむこ とが大切である。そのことが,保護者の行動変容につながるのである。
オ 誠意をもって迅速に対応する
相談したいことがあっても何かと遠慮している保護者は多い。いつでも気軽に保護者が相
談に来れるように,機会あるごとに「いつでも気軽にご相談ください 」と伝えておくことが。 大切である。 また,相談されたときは誠意をもって迅速に対応することが大切である。
例えば,電話で相談があった場合でも,できるだけ直接会って話を聴くほうがよい。その 際,感情の行き違いが起こらないためにも,会う時間や場所など保護者の事情をくみ取り,
できるだけ保護者の都合に添うようにすることが大切である。さらに,保護者との面談によって その思いが分かったら,その思いを大切にしてできるだけこたえるようにすることが大切で ある。
(2) 保護者と面談する際の留意点 ア 時間を守る。
イ 言葉遣いや服装などに留意する。
ウ 相談に使用する部屋の環境を整備する(整理整頓,机の配置,室温など 。) エ 丁寧な対応に努める(ねぎらいの言葉掛け,笑顔,温かい対応など)。
オ 対応する職員を事前に具体的に知らせておく。など
5 スクールカウンセラーや関係機関等との連携 (1) スクールカウンセラー等との連携
スクールカウンセラーについては,学校における教育相談の充実を図る観点から,平成7年 度以降,中学校を中心に100校配置されている。その活動は「心の専門家」としての専門性と学 校外の人材であることによる外部性により,児童生徒へのカウンセリングや教職員,保護者な
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どへの専門的助言・援助において効果を上げている また 小学校においては平成16年度以降
「子どもと親の相談員」が24校に,さらに平成17年度からは「生徒指導推進協力員」が4校に 配置され効果を上げている。
学校内に配置されている場合は,情報収集の方法や問題の所在,対応策などを共に考える姿 勢が大切である。また,配置されていない場合は,配置校を通して相談したり,事例研究会の 講師として依頼したりすることもできる。
(2) 関係機関等との連携
児童生徒の状況によっては学校だけでは対応できない場合や関係機関等と連携を行った方が 望ましい場合も多い。その際,関係機関等の役割を校長,教頭,生徒指導主任,担任などが理 解していることが重要である。特にコーディネーター役の教員は,関係機関等の業務内容,連 携方法などを知っていることが大切である。
学校が他機関と連携することは関係機関等の機能を生かすことにもなり,児童生徒や保護者 への多角的な支援につながる。また,その際学校は,関係機関等に一方的に頼ることなく,常 に連携しながら児童生徒や保護者を支援する姿勢をもつことが大切である。なお,県内の相談 機関及び適応指導教室については当センターのWebページでも紹介しているので参考にしていた だきたい。