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KOBE STEEL ENGINEERING REPORTS
/Vol. 51 No. 2(Sep. 2001)新 製 品 ・ 新 技 術
人工股関節の摺動部(臼蓋カップ)には超高分子量ポリエチ レン(UHMWPE)が使用されるが,人の歩行にともない摩耗 粉が発生する。手術後 10 年程度経過するとこの摩耗粉が蓄積し て,骨融解が生じ,人工股関節の再置換手術がおこなわれる頻 度が増加している。
摩耗粉の発生量は人の活動度合い,骨頭の材質や表面粗さ,
カップの材質などに依存する。
第 1 図は UHMWPE カップの摩
耗量と骨頭表面粗さ(骨頭材料:SUS,アルミナ)の関係を示 す。表面粗さを Ra 0.02μm 以下にすることで摩耗量は著しく減 少する。また,摩耗量に及ぼす骨頭材質の影響を臨床データを もとに整理すると,第 2 図に示すようにチタン合金の場合の摩 耗量が相対的に大きく,アルミナセラミックスの場合が比較的 少ない。ステンレス鋼や Co-Cr 合金は両者の中間であるが,こ れはセラミックスの方が超鏡面を創生しやすいことに起因す る。当社の人工股関節では上記のことを踏まえて,骨頭はセラミ ックス製で表面粗さも Ra 0.02μm 以下にしたものをもちいて おり,摩耗粉を少なくするには UHMWPE カップの耐摩耗性向 上を図る必要があった。この度脱酸素雰囲気で適量のγ線照射 とその後の加熱処理により,耐摩耗性を大幅に向上させた架橋
(クロスリンク)した UHMWPE カップ(商品名:Excellink)
を開発した。
製 法
安定したクロスリンクは脱酸素雰囲気で適量のγ線照射とそ の後の加熱処理により達成される。
製法の概略は以下のとおりである。
1)UHMWPE ブロック材を脱酸素密封してγ線を照射すると,
分子鎖の一部が反応性の高い状態となり,隣接する分子鎖 間が結合する(クロスリンク)。この反応は材料内部までほ ぼ均等に起こり,脱酸素状態はフリーラジカルが周囲の酸 素と結合し,特性が劣化するのを防止 する。なお,γ線照 射量が多すぎると硬質に成り過ぎ,機械的特性が損なわれ る。
2)次にこのブロックを融点より若干低い温度で加熱処理し,
γ線照射後の反応性の高いフリーラジカルを解消させると ともに構造ひずみを除去する。
3)1)および2)の処理をおこなったブロックをカップに精 密機械加工した後,脱酸素密封包装して,洗浄,γ線滅菌 される。
特 徴
1)Excellink の材料特性は ASTM,ISO の医療用具の国際規格 を満足する(第 3 図)。
2)Excellink の耐摩耗性は,従来の当社製品にくらべて飛躍的 に優れていることが HIP シミュレータによる摩耗比較試験 により確認された(第 4 図)。
人工股関節用架橋 UHMWPE カップ-Excellink
佐々木佳男
*・土居憲司
*・松下富春
*・鈴木 順
***本社・医療材料部 **技術開発本部・化学環境研究所
問い合わせ先:本社・医療材料部 TEL(078)261−4752 FAX(078)261−4755
SUSアルミナ
摩耗量 mg
1.0
0.5
0 0.05
表面仕上げ Ra μm
0.10 摺動サイクル数:106回
密度
(平均)
引張強さ
(最小)
降伏強さ
(最小)
伸び
(最小)
衝撃強さ
(最小)
硬さ
(最小)
クリープ
(最大)
300 250 200 150 100 50 0 ISO5834の
要求値
ASTM F658の 要求値
Excellink
%
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0.21
0.04
0.23
0.04
0.16
0.03 0.36
0.08
ステンレス鋼 Co-Cr合金 チタン合金 アルミナ セラミックス
1年当たりの線摩耗量 mm
従来製品 Excellink
第 1 図 超高分子量ポリエチレンカップの摩耗量に及ぼす骨頭
表面仕上げの影響