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メトトレキサート誘発肺線維化における肺胞上皮細胞の関わり

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Academic year: 2021

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(1)

メトトレキサート誘発肺線維化における肺胞上皮細胞の関わり

薬物療法学講座臨床薬学部門大林真幸

[序論】

薬剤性肺障害は、患者の Q u a l i t yo f  l i f e  (  QOL) を低下させるとともに、治療 継続を困難にする。したがって、臨床上これを回避することは重要な課題である。

近年、様々な疾患に対する分子標的薬をはじめとする高い有効性を有する医 薬品が開発されているが、肺線維化の副作用により治療継続困難となることも 多く、臨床において薬剤性肺線維化発症機序の解明および回避方法の探索 が望まれている。

メトトレキサ一 r(MTX )は、米国や我国の関節リウマチ治療ガイドラインで第 1 選択に位置づけられており、確定診断後、早期から使用が推奨されている。し かし、 MTX の投与量や服用年数に関わらず、死に至る重篤な肺線維化が発症 ( 0

3‑14% )することが報告されている。しかし、 MTX 誘発肺線維化の発症機序 は未だ明らかではなく、回避方法も見出されていない。従って、リウマチ患者が 長期にわたり安全で有効な薬物治療を受けるためには、 MTX を服用したことに よる肺線維化の発症機序を明らかにすることは重要である。

肺組織の線維化巣において、筋線維芽細胞の集積が認められている。筋線 維芽細胞は、肺障害時における細胞外基質の蓄積や組織リモデリングを助長 し、線維化・癒痕形成を引き起こすことが明らかとなっている。また、特発性肺線 維症患者の線維化巣周囲の肺胞上皮細胞の 80%以上が上皮−間葉転換 ( E p i t h e l i a l   mesenchymal t r a n s i t i o n   :  EMT )を生じていたことから、筋線維芽 細胞の起源として EMT の関与は大きし立考えられている。

正常の肺では、上皮細胞は線維芽細胞の遊走能、増殖、コラーゲン合成を 抑制し、線維芽細胞は上皮細胞の増殖や分化を誘導することで肺組織の恒常 性を保っている。肺胞上皮細胞は感染、自己免疫反応、毒素、放射線、薬物な どの種々の刺激により障害を受ける。障害が収束に向かう時点では、創傷部位 に隣接した肺胞上皮細胞が増殖し、再上皮化することで修復が行われる。しか し、過度な障害を受けた肺胞上皮細胞は自己増殖能や線維芽細胞に対する 増殖抑制力を失い、線維芽細胞の活性化に伴い線維化が生じることが考えら れる。したがって、肺線維化発症機序を解明するためには肺胞上皮細胞の障 害と修復過程が重要と考える。

肺胞上皮細胞の障害機序を解明するために、トキシコキネティクスの観点か

ら考え、薬物トランスポーターに着目した。薬物トランスポーターは薬物による毒

性の発症や薬物間相互作用への関与が注目されており、薬剤の蓄積を介した

薬剤性組織障害の発症過程に重要な役割を演じていることが示唆されている。

(2)

このことから、 MTX誘発肺線維化発症機序を明らかにするために、肺胞上皮細 胞の細胞障害過程と筋線維芽細胞の起源に焦点を当てることとした。

そこで、本研究は、 MTX誘発肺線維化発症機序を明らかにすることを目的とし、

肺胞上皮細胞に焦点を当て、細胞障害過程における薬物トランスポーターの 役割ならびに線維化過程における EMTの関与について i nv i v o 及 び i nv i t r o   の両面から検討することを目的とした。

1 .   MTX 誘発肺線維化モデノレマワスの作成と評価

[実験方法】

MTX誘発肺線維化モデルマウス作成

7 ‑ 9 週齢の雄性 C57BL/6J雄性マウスに MTX3  mg/kg/day または蒸留水を 21 、28、35 日間連日経口投与した後、肺を摘出し、生化学的および組織化学 的に評価した。

免疫組織化学染色

脱パラフインした肺切片に 1 次抗体( Rabbit a n t i ‑ E ‑ c a d h e r i n 抗体、

a n t i 開仔 SMA 抗体)と 2次抗体(Alexa488、rhodamine600 a v i d i n  D )を処置後、

DAPI 染色を行った。また、アポトーシスの検討には、 TUNEL染色法を用いた。

観察は、オーノレインワン蛍光顕微鏡 BZ‑9000(KEYENCE)を用いて行った。

I 結果 1

MTX による肺線維化の評価

肺線維化を免疫組織化学染色法で評価した。 MTX投与群は、 C o n t r o l群と 比較して経時的に肺胞中隔の肥厚、勝原線維の沈着、筋線維芽細胞の集積 がみられた。特に MTX35日間投与群で、顕著で、あった(F i g . 1 )。また、肺胞上 皮細胞は MTX投与 7 ‑ 2 1日目にかけてアポトーシスを生じ、線維化巣周辺では 発現が低下していた。一方、筋線維芽細胞は顕著に発現が増加していた。

H y d r o x y p r o l i n e 量は、 C o n t r o l 群と比較して MTX21、28、35日間投与群では それぞれ 143.2±  4.8% 、129.2±5.1%、188.4±  10.3% と有意な増加が見られ た (F i g .2 。 )

吉 き 250

s   20

ミ− 150

~

2

宮 100 8

50

‑ 6  

主 o

* 

c 。 n t r o l2 1   28  35(days) 

F i g .   1 .   MTX 誘発肺線維化モテーノレの組織化学的評価( Azan染色) MTX  treatment  左図コントロール、右図・ MTX を35 日関連日経口投与することによっ

て顕著な肺胞壁の肥厚と膝原線維の沈着が認められた。 F i g .   2 肺組織内ハイト、ロキシプロリン量

(3)

2 .   MTX 輸送を担う薬物トランスポーターの関与

【方法】

マウス初代肺由来細胞の単離・培養

初代マワス肺由来細胞の単離は C o r t i らの方法を一部改変して行った。マウ ス初代肺胞上皮細胞( MAEC )の単離方法を以下に示す。雄性 C57BL/6J マウ スの頚部の表皮を切開し気道を露出させ、気道から DISPASERII 溶液及び、

1% アガロース水溶液を注入した。摘出した肺を DISPASERII 溶液中でインキ ュベートしたのち、余分な組織を除去し細切して DNase I 含有 DMEM 中でイ ンキュベートした。次に細胞懸濁液に 1 次抗体( CD16/CD32 及び CD45 抗体)

を処置し、インキュベート後、上 j 青を除去した。再懸濁後 2 次抗体を加えた。そ の後、 Dynal MPCTM‑15 に 2 分間静置し、抗体陽性細胞を除去した。細胞懸 濁液の上清をシャーレに播種した。細胞の接着を確認し、非接着細胞(上清)

をフィブロネクチンでコートしたシャーレで培養し、以降の実験に用いた。同様 に、マウス初代肺線維芽細胞( MLF )の単離方法を以下に示す。摘出した肺を 細切し、 DNase Iおよび CollagenaseType  I含有 PBS( )中でインキュベ ートした。その後、細胞懸濁液を遠心した。上清を除去し、再懸濁してシャーレ に播種した。細胞の接着を確認して非接着細胞(上清)を除去し、接着細胞を 培養し、以降の実験に用いた。

薬物トランスポーターの発現比較

MAEC 及 び MLF において、 MTX の輸送を担う Abe トランスポーター 9 種類、

S o l u t e   c a r r i e r トランスポータ− 15 種類の発現を RT‑PCR 法および r e a l ‑ t i m e RT‑PCR 法を用いて検討した。

r3HlMTX uotake assav 

MAEC 及 び MLF を 24 穴プレートにコンフルエントになるように培養した。 100 nM  に調製した [3H]MTX を添加し、経時的に取込み実験を行った。各時間後、

上清を除去し、氷冷した PBS( )で少なくとも 3 回洗浄した。洗浄後、 1%SDS を加え、 6 ‑ 8 時間振とうし、細胞を十分に溶解した。 C l e a r ‑ s o lI I で良く混和し、

液体シンチレーションカウンターで放射活性を測定し、結果は fmol/mgp r o t e i n   で表示した。[ 3H]MTX 取込み量は検量線より算出した。また、 Abe トランスポー ターの阻害剤は MK571 を 、 S i c トランスポーターの阻害剤は d i g o x i n を用いた。

MTX  による細胞毒性

MTX による細胞毒性の評価は LIVE/DEADRV i a b i l i t y / C y t o t o x i c i t y  K i t を用 いて行った。

【結果】

薬物トランスボーダーの発現比較

RT‑PCR 解析の結果、マウス肺組織には Mdr1 、 Mrp1 、 3 、 4 、 5 、 Bcrp 、 Rfc 、

(4)

Oatp1 a 1 、 1a4 、 1a5 、 1b2 、 2a1 、 2b1 、 3a1 、 4c1 、 5a1 の発現が認められた。さ らに MAEC と MLF の両細胞における薬物トランスポーターの発現量を r e a l

t i m eRT‑PCR 法を用いて比較した。その結果、 MAEC は取込み型トランス ポーターである Oatp4c1 の発現が高く、一方で MLF は排池型トランスポーター である ABC トランスボーターの発現が高かいことが明らかとなった。

『 3HlMTXuotake assav 

問細胞に発現の相違が認められた薬

物トランスポーターが MTX の細胞内輪 虫 玄 関

送に関与しているか否かを明らかにする a e  

ために「 H]MTX を用い、取込み実験を 8  ~ 4 0   行った。その結果、 MAEC 及び MLF 共 喜 言 2 0

巴. . E  

に 30 分まで時間依存的に MTX の取込 ー

みが増加した。また、 MAEC における 0  0  5  1 0   1 5   2 0   MTX の細胞内取り込み量は、 MLF と比 官 me( m i n )  

較して有意に高く、約 3 倍であった( F i g . F i g .   4 .   ["H]MTX uptake ass 的

4 。 ) Abe トランスポーターの阻害剤である MK571 と Oatp4c1 の阻害剤である d i g o x i n を用いて、 MTX の取込み阻害実験を行った。 MK571 存在下では、

MLF の MTX の細胞内濃度が顕著に増加した( 3.66 倍 、 p=0.027 )。一方、

d i g o x i n  (  100 い M )存在下では、 MAEC の MTX 細胞内濃度が半減したが、 MLF では変化は認められなかった。

MTX による細胞毒性

MAEC と MLF は共に濃度依存的な細胞生存率 の低下が認められた。 I C s o 値を比較したところ、

MAEC は 6 . 8 刈 0 ‑ 7μM 、 MLF は 2 . 8 刈 0 ‑ 5μM であ ったことから、 MAEC は MLF に比べ、 MTX によって 細胞障害を受けやすいことが明らかとなった( F i g . 5 )。また、 MTX1 μM 処置によって MAEC は MLF と比べ、有意にアポトーシスが誘導されたことから、

細胞障害過程にアポトーシスが関与していることが 示された。

* 

MLF  MAEC 

*  *  80 

3 0  

8 ・ 7 ‑ 6 ‑ 5 ‑ 4 MTXconcent 悶 ! i o n( l o 日開}

F i g .  5 .   MTX による細胞障害 車

2 5  

0 0 8 0

8 6 4 2

︷ − E

Z o

u 盲

点 ︸

b −

z a

E Z

Z U

3 .  MTX 誘発肺線維化過程における EMT の関与

【方法】

肺胞上皮細胞における EMT 関連因子の発現変化

MTX 誘発肺線維化モデルマウスの肺切片ならびに MAEC およびヒト H 型肺

胞上皮細胞株である A549 細胞を用いたて検討した。ポジティブコントロールと

(5)

して EMTを誘導することが報告されている T r a n s f o r m i n g Growth F a c t o r  [ 3 1  

(以下、 T G F ‑ [ 3 1)を用いた。 MTX誘発肺線維芽化モデルマウスの線維化巣に おける E ‑ c a d h e r i n(肺胞上皮細胞マーカー)ならびに α − SMA(筋線維芽細胞 マーカー)の発現局在を免疫蛍光法により評価した。さらに、的 v i t r oにおいて MTX 1  μM又は T G F ‑ [ 3 1( 5  ng/ml)による細胞形態変化、 E ‑ c a d h e r i nならびに a‑SMAの発現変化を位相差画像、免疫蛍光染色法、 Westernb l o t法および r e a l ‑ t i m e  R下PCR法を用いて検討した。

Wound h e a l i n a  assav 法

A549細胞は 3cmシャーレに播種し、コンフルエントになるまで培養した。

w 。 und は、ピペットチップ

ρ

にでかき取り、各シャーレに作製した。細胞の遊走能 は MTX 1 μM 処置前および 24 時間後に、オールインワン蛍光顕微鏡 BZ‑9000 (KEYENCE)にて創傷エリアを撮影し、 BZa n a l y z e rを用いて解析を 行った。

[結果】

MTXによる E‑cadherinおよび α SMAの発現変化

MTX誘発肺線維化モデルマウスの肺紘縫化巣において、抗 Ec a d h e r i n抗 体陽性細胞と抗 α − SMA抗体陽性細胞が共局在していたことから、 EMTを生じ ている肺胞上皮細胞の存在が明らかとなった。免疫蛍光染色法により、 MTX 1  μM 72 時 間 処 置 し た A549 細 胞 は 線 維 芽 細 胞 様 の 形 態 変 化 お よ び ιcadherinの低下、 α SMAの増加が認められ、 MAECの結果と類似していた。

また、 Western b l o t法を用いてタンパク質発現への影響を検討したところ、

MTX処置により濃度依存的に E ‑ c a d h e r i nの低下、 α − SMAの増加が認められ、

特に MTX1 ぃ M 以上で有意で R あった。

MTX処置による A549細胞の遊走能への影響

MTX  T い M および TGF 個 別 5n g / m lで処置 24時間後における細胞の遊走 能は、コントロール群と比較して有意な差が認められた。さらに TG下 引 処 置 群 の方が MTX処置群に比べ、遊走能が有意に充進した。

【考察】

本研究は、リウマチ患者が MTXを長期に渡って、治療薬として選択できるか 否かを判断するために肺胞上皮細胞に焦点を当てて MTX誘発肺線維化の発 症機序を i nv i v oおよび i nv i t r oの両面から明らかにすることを目的とした。そ の結果、 MTX3  mg/kg/dayを 35日間連日経口投与により、肺線維化が生じ、

肺胞上皮細胞の消失、肺胞中隔の肥厚や肺胞腔の減少、筋線維芽細胞の集 積、勝原線維の沈着が認められた。また、 MTX誘発肺線維化過程において肺 胞上皮細胞がアポトーシスを起こし、障害されていることが明らかとなった。また、

I C s o f l 直を比較したところ、 MAECは 6 . 8 刈 o‑7M、MLFは 2 . s x 1 0 ‑ 5Mであった。

(6)

このことから肺胞上皮細胞は線維芽細胞と異なり、 MTX の細胞障害に対する感 受性が極めて高く、アポトーシスを生じやすいことが明らかとなった。肺胞上皮 細胞は線維芽細胞と比べて、 ABC トランスボーダーの発現が低く、一方 Oatp4c1 の発現が高いことから Oatp4c1 を介した MTX の細胞内への輸送が 関与していることが考えられた。また、線維化巣に認められた筋線維芽細胞の 起源として、 EMT を介した姉胞上皮細胞の存在が示された。

このようなことから、本研究は MTX 誘発肺線維化の発症機序として、

Oatp4c1 を介した MTX の細胞内への蓄積により肺胞上皮細胞が障害され、さ らには EMT を介して筋線維芽細胞に分化することで、肺線維化が惹起されるこ とを示唆した。今後、 MTX を服用している多くのリウマチ患者が長期にわたり安 全で有効な薬物治療を受けられるようにするために、肺胞上皮細胞の障害を最 小限に抑える方法の開発を目指してさらに検討していきたい。

【参考文献 1

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2 .   Ohbavashi M, Yamamoto C ,  Shiozawa A ,  Kohyama N ,  Kobayashi Y ,   Yamamoto  目 丁 D i 仔 e r e n t i a l mRNA e x p r e s s i o n   and  t h e   uptake  o f   m e t h o t r e x a t e  i n   p r i m a r y  MAEC and MLF c e l l s :  i n v o l v e m e n t  o f  t h e  Abe  and S l c o / O a t p  t r a n s p o 吋 e r si n  a l v e o l a r  e p i t h e l i a l  c e l l  t o x i c i t y . ,   J .   T o x i c o l .   S c i .  3 8 ,  1 0 3 ‑ 1 1 4 ,  2013. 

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4 .   Ohbavashi M, Yasuda M, Kawakami I   Kohyama N , ,   Kobayashi Y ,  

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2 0 0 8 .  

参照

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