卒業生の近況報告 かごはらメンタルクリニック
著者 清水 景子
雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要
巻 7
ページ 81‑83
発行年 2007
出版者 東京家政大学附属臨床相談センター
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010044/
東京家政大学附属 臨床相談センター紀要 第7集
卒業生の近況報告
かごはらメンタルクリニック
清 水 景 子
私は現在、埼玉県熊谷市にあるかごはらメンタ ルクリニックに臨床心理士として週5日勤務し ています。大学院卒業後から勤めはじめ、今年で 4年目に入ります。今回は、近況報告として、当
クリニックでの臨床心理士の業務内容と日々の 臨床活動の中で感じている事をご報告させて頂 きたい、と思います。
かごはらメンタルクリニックは、埼玉県熊谷市 高崎線籠原駅の駅前にあります。精神科・神経 科・心療内科の外来のみのクリニックです。3年 前に開業したばかりの比較的新しいクリニック で、精神科医1名、臨床心理士1名、事務員2名 で運営しています。対象となる疾患は、うっ病、
不安障害、統合失調症、人格障害、摂食障害、不 登校、痴呆など広範囲にわたっており、子どもか ら高齢者まで、幅広い年齢層の患者が来院してい
ます。
まず、当クリニックでの臨床心理士の業務は、
患者のカウンセリングが中心です。来院した患者 の多くは、精神科医の診察と投薬が治療の中心で すが、カウンセリング適用が患者の回復に役立つ、
と医師が判断し患者の希望があった場合、カウン セリングのインテーク面接が行われます。そして、
そのインテーク面接の中で、臨床心理士が、病態 や健康状態、家族関係、カウンセリングへの希望、
治療目標などについて聴き、カウンセリングが適 用可能か検討していきます。さらに、治療契約(自
殺・自殺企図の禁止や守秘義務、カウンセリング の中止事項など)について同意が得られた段階で、
カウンセリングを開始します。当クリニックでは、
カウンセリングのみでの来院はなく、精神科医の 診察と臨床心理士のカウンセリングを併用する 形で治療を行っています。
カウンセリングを行う患者の疾患・病態は、う つ病、不安障害、人格障害、摂食障害、不登校、
家族関係の問題が多いように感じます。10代、
20代、30代の患者が比較的多く、1日平均5〜
6人の患者を、30分、もしくは50分の時間枠で 担当しています。トータルでは、50人前後の患 者を担当しています。カウンセリングを行う場合、
患者の疾患や治療目標に合わせて当クリニック で可能な心理療法の種類、カウンセリングプログ ラムにっいて臨床心理士が説明し、患者に選んで もらうという形をとることが多いです。話を聴く ことに重点をおいた来談者中心療法、うつ病や不 安障害、摂食障害の治療をターゲットとした認知 行動療法、ソーシャルスキルトレーニング、アサ ーティブトレーニング、問題解決療法、家族関係 の調整などを行うことが多いです。私自身、経験 や勉強の不足で実施できない心理療法がありま すので、患者にはしっかりと「このカウンセリン グでできること、できないこと」を説明するよう にしています。場合によっては、精神科医と相談 し、他の施設でのカウンセリングを紹介すること もあります。
また、必要に応じて、病態把握のための質問紙 検査や知能検査などの心理検査を行ケことも業 務の1つです。この心理検査は、カウンセリング
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を受けている患者の病態把握のために行うこと が多いですが、場合によっては医師の依頼を受け、
診察へ来院している患者へも行うことがありま す。施行する心理検査は、SDS(自己評価式抑
うっ性尺度)、TEG−II(東大式エゴグラム)、 C
MI(Cornell Medical Index)、 DASS(Depression and Anxiety Symptom Scale)、JIBT−R(Japanese Irrational Belief Test)、 DAMS(Depression and Anxiety Mood Scale)などの質問紙検査や、ロー
ルシャッハテストやSCT(文章完成法)などの投 影法検査、WISC一皿(ウェクスラv・一・一 式児童用知 能検査)などの知能検査が主です。心理検査を行 う場合には、インフォームドコンセントを重視す るよう心がけています。検査前には検査の目的を 可能な限り伝え、検査後も結果を患者にフィード バックし、その後の診察やカウンセリングに役立 つように利用しています。
次に、これまでの3年間の自分の仕事を振り返 りながら、日々の臨床活動の中で感じている事を ご報告させて頂きたい、と思います。
私が仕事を始めたのは、当クリニックが開院し て2ヵ月後でした。採用のお話を伺ったときには、
信じられない気持ちで一杯でした。また、先輩の 心理士が全くいない状況の中で、一からシステム を作り上げていく立場だったので不安も強くあ
りました。最初は、大学院で教えて頂いた事をメ
インにスーパーバイザーからアドバイスを頂き、
いろいろな資料を作成しては精神科医の意見を 頂き、「どのようなカウンセリングが必要なの か?」について検討する日々でした。カウンセリ ングも、数人の患者を担当することが精一杯で、
カウンセリング内容も不十分なものばかりであ ったように思います。今思い返すと、上司や同僚、
患者に随分迷惑をかけたのではないか、と反省し ています。その後、臨床心理士の試験に合格し、
勤務2年目から少しずつカウンセリングのシス テムが確立していきました。不十分ながらも、実 施可能な心理療法が少しずつ増え、軽快していく 患者を見送ることも増えていきました。そして、
3年目からは、東京家政大学大学院文学研究科心 理教育学専攻臨床心理学コースOB・OG会の事 務局を担当することとなり、先生方や先輩、後輩 から様々なことを学ばせて頂きました。特に、ケ ースカンファレンスでは、参加者の多くの視点か らケースを読み解くことで自分では気づかなか った発見が数多くありました。先生方が熱心に指 導をして下さったことも日々の臨床活動の励み になりました。
今年から、臨床活動も4年目に入ります。そこ で、このような3年間の臨床活動の中で痛切に感 じてきたことを、これからの自分自身の課題とし て捉えていきたい、と思います。第1に、スーパ ービジョンや研修の継続の必要性を強く感じて います。日々の臨床活動が忙しくなってくると、
つい「自分自身の臨床を振り返る作業」がなおざ りになっていたように感じます。スーパービジョ
ンや研修で自分自身を振り返り修正しながら、新 しい知識をとりいれていくことによってより良 い臨床活動がうまれてくるのだ、と考えます。第 2に、専門性を広げていくことも重要である、と 思います。昨年、今まで自分が担当してきた患者 のデータをまとめてみたのですが、疾患によって カウンセリングの成果にばらつきが出ているこ とがわかりました。これからは、今まで専門性が 低かった疾患や病態に対しても、少しずつ知識や 経験を深めていきたい、と考えています。第3に、
研究に力を入れていくこと、を心がけていきたい です。この3年間の中で、日々の臨床活動から研 究を十分にできなかったことは反省すべき点だ、
と思っています。これからは、日々の臨床活動を
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研究へ繋げていき、自分自身のスキルアップとカ ウンセリングの効果をより明確な形で捉えてい けるようにカを尽くしていきたい、と考えていま
す。