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Microsoft Word - こどもの病気【第7回】注目の感染症と予防接種(  改訂版).doc

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こどもの病気【第

7 回】

最近話題の

感染症と予防接種

近年、麻疹の大流行や成人の百日咳の流行など例年と比べ感染症の話題が多 く見られます。また、小児科医が要望を続けてきた Hib ワクチンや肺炎球菌ワ クチンも発売されました。最近話題となっている感染症と予防接種についてお 話します。 1. 感染症 Ⅰ.ノロウイルス感染症 ノロウイルス感染症とは、文字通りノロウイルスというウイルスによる感染 症で、冬に流行する感染性胃腸炎の代表的なものです。 ノロウイルス感染症は、 初冬(11~12 月)に急に寒くなった時から認められ、1~2 月に少なくなる傾向 があります。食中毒としてのノロウイルス感染症は 12~2 月に多く、その多く は生ガキを代表とする二枚貝を食べることによって起こります。 原因:ノロウイルス 感染様式:経口、接触、空気感染の3つの経路 潜伏期:1~2 日 症状:1~2 日の潜伏期の後、発熱、嘔吐、下痢がおこります。下痢と嘔吐はど ちらか片方のこともあります。 診断:ノロウイルス抗原迅速検査、RT-PCR 検査(ともに便) 治療:ウイルス性下痢症に有効な抗ウイルイス薬はありません。対症療法 として、整腸剤や吐き気止めが使われます。止痢剤は細菌やウイルスの産生 した毒素を停滞させ、体内に毒素を吸収させ悪影響となる危険性があり、使用 する際は注意を要します。下痢は、体の中にいるウイルスの量を減らそうとす る反応でもあります。水分が十分に摂れていればあまりあわてる必要はありま せん。治療の最大のポイントは、脱水にならないようにすることです。一般的 には普通の水や麦茶、ほうじ茶が勧められていますが、病的な状態では電解質 や糖分も補充すべきなのでイオン飲料などが用いられます。嘔吐が激しいとき は、1 回に与える量はほんの少しでいいです。スプーン 1 杯やペットボトルのキ ャップ 1 杯程度から開始し、徐々に多くしていくと良いでしょう。氷をなめさ せるのもひとつの方法です。溶けた水分が少しずつ胃に流れ込みます。胃に到 達する頃は、特に問題となる冷たさではなくなっています。市販のスポーツ飲 料は塩分が少なく、カリウムはほとんど含まれていません。また、糖質が多い ため、下痢に対しては不利に働きます。アクアライト ORS(和光堂)などの乳 幼児用のイオン飲料は、その組成が医療用の経口電解質液に近く経口水分補給 に比較的適しています。

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嘔吐のひどいときや脱水症を起こしている場合は、点滴が必要となることが 多いです。尿の量が少なくなったり、目が落ち窪んだり、ボーっとして眠って ばかりいるようでは脱水の可能性が高いです。このような場合は病院を受診し ましょう。 予防:ノロウイルスに対するワクチンはありません。下痢症ウイルスの伝播方 式は、経口、接触、空気感染の3つの経路が考えられます。その中で一番多い ものは経口感染と考えられます。予防のためには、危険性のある食品は加熱処 理をすることが大切です。一般的には中心部まで 85℃で1分以上加熱すること が有効とされています。まな板、包丁、布巾なども同様に加熱することが有効 です。患児の便や吐物の処理のときにウイルスが手につき、その手で何かを食 べて感染することも多いため、便や吐物の処理をした際は、石鹸を使い10 秒以 上手を洗うことが勧められています。ノロウイルスは逆性せっけんやアルコー ルに強いウイルスですが、流水で十分に洗い流すことは有効です。もちろん日 常生活において手を良く洗うことは有効です。 Ⅱ.百日咳 百日咳は、コンコンコン(呼気:スタッカート)→ヒュー(吸気:レプリー ゼ)と特有の咳発作を特徴とする急性気道感染症です。母親からの移行抗体が 期待できず、乳児期早期から感染します。1歳以下の乳児、特に 6 ヵ月以下で は非常に重症化しやすく死に至る危険性もあります。一般的に乳幼児の病気と 考えられてきましたが、ワクチン効果は約10~12 年と報告されており、そのた め抗体価が下がってくる思春期や成人での感染が問題となってきています。 原因:百日咳菌 感染様式:鼻咽頭や気道からの分泌物の飛沫感染 潜伏期:5~14 日(最長 21 日) 症状:通常7 から 10 日間程度の潜伏期の後に普通のカゼ症状で始まります。次 第に咳の回数が増え程度も激しくなります(カタル期:約2 週間)。次第にコ ンコンコンというような発作性けいれん性の咳となります(スタッカート)。 これは短い咳が連続的に起こり、その後に息を吸う時に笛のようなヒューと いう音が出ます(レプリーゼ)。しばしば嘔吐を伴うこともあります。発熱は あっても微熱程度のことが多いです。息をつめて咳をするために、舌を突き 出し、顔が真っ赤になり、眼瞼が浮腫状に腫脹し、いわゆる百日咳様顔貌に なります。点状出血、眼球結膜の出血、鼻出血がみられることもあります。 非発作時には無症状ですが、何らかの刺激で発作が誘発されます(痙咳期: 約 2~3 週間)。激しい発作が次第に減衰します(回復期)。全経過約 2~3 ヵ 月で回復します。 典型的な症状は上記ですが、乳幼児早期や成人では典型的経過を示さないこと があります。乳幼児早期では無呼吸発作、痙攣、呼吸停止などを起こします。 成人では8 週以上続く咳嗽(慢性咳嗽)が主症状です。 診断:鼻咽頭からの百日咳菌の分離同定

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百日咳凝集抗体価 山口株(流行株)320 倍以上

山口株(流行株)/東浜株(ワクチン株)=4 倍以上 ペア血清で山口株(流行株)4 倍以上の上昇

抗百日咳菌毒素抗体価 IgG(抗 PT 抗体価 IgG)(EIA)上昇(100EU/ml 以 上)

抗繊維状赤血球凝集素抗体価IgG(抗 FHA 抗体価 IgG)(EIA)上昇(100EU/ml 以上) 乳幼児の典型的な症例では、リンパ球優位(70%以上)の白血球増多がみられ るが、成人例では白血球数の増加例は少なく(15,000 を越えない)、リンパ球 の比率が70%になる症例は認められません。 合併症:脳症 治療:エリスロマイシンやクラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬 抗生剤を内服し、5~7 日を経過すれば百日咳菌の感染力はないといわれてい ます。抗生剤を投与しないと、約3 週間排菌が続くといわれています。 予防:DPT-IPV 四種混合ワクチン 学校保健法:出席停止期間の基準では「特有の咳が消失するまで」とあります。 2. ワクチン Ⅰ.Hib ワクチン 「インフルエンザ菌b 型(以下 Hib)」は、乳幼児の 5%が鼻の奥やのどに保 菌するありふれた細菌です。乳幼児が死に至ることもある細菌性髄膜炎を引き 起こすこともあります。現在、日本国内において細菌性髄膜炎にかかる子ども の数は、年間1,000 人と推測されています。そのうち、Hib による髄膜炎は、5 歳未満の乳幼児 2,000 人に 1 人が発症し、患児のうち約 5%近くが死亡し、約 25%に聴覚障害や発達の遅れなどの後遺症が残るといわれている深刻な疾患で す。ちなみに、毎年冬に流行するインフルエンザは、インフルエンザウイルス によるウイルス感染症でインフルエンザ菌とは関係ありません。1890 年にイン フルエンザが流行したときに患者の痰からたまたま見つかった菌がこのインフ ルエンザ菌です。当時はウイルスの存在自体が知られておらず、このインフル エンザ菌がインフルエンザの原因と考えられたためこの名前がついたわけです。 Hib ワクチンは、1980 年代後半から海外において使われはじめ、現在では発 展途上国も含めた100 カ国以上で導入され、94 カ国で定期接種に組み込まれて います。アメリカでは、このワクチンの定期予防接種の導入により、Hib 罹患 率が 100 分の 1 になりました。導入した国では髄膜炎患者が激減し、世界的に はHib 感染症はまれな疾患となっています。WHO(世界保健機構)も 1998 年 に Hib ワクチンの定期予防接種を推奨する声明を出し、Hib ワクチンの定期予 防接種は今や発展途上国を含め世界の常識となっていますが、日本では未だ定 期予防接種が実施されていませんでした。 しかし、日本小児科学会を始め関係各機関が早期導入の要望をしてきた努力 が実り、この度、製造承認が取得でき、平成20 年 12 月 19 日から接種できるよ

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うになりました。Hib ワクチン接種は 0 歳児のときに 3 回、1 年後に 1 回の計 4 回接種の必要があります。 Ⅱ.小児肺炎球菌ワクチン 肺炎球菌とは、肺炎や中耳炎などを引き起こすごくありふれた細菌です。し かし、死亡することや重度の後遺症を残すことのある菌血症や細菌性髄膜炎を 起こす大変危険な細菌でもあります。細菌性髄膜炎の場合、その原因菌は、約 60%がインフルエンザ菌 b 型(Hib)で、約 30%が肺炎球菌といわれており、この 2 つの菌だけで 90%以上を占めます。肺炎球菌による感染症は、1 歳と 70 歳代 に2 つのピークをもつ U 字型の頻度で起こっています。 肺炎球菌に対するワクチンは以前からありましたが、免疫の発達の悪い 2 歳未 満には効果が悪いため接種できないニューモバックス○Rという名前の製品でし た。このワクチンは、70 歳代にピークのある抵抗力の落ちた高齢者の肺炎の予 防や免疫不全症等の重症の感染症を起こしやすい疾患をもつ人の感染症の予防 を第一の目的として開発されたワクチンであったため、1 歳をピークとする疾患 (敗血症や細菌性髄膜炎はこのグループに入ります)には接種できませんでした。 今回発売になるプレベナー○Rは生後2 ヵ月から 9 歳以下まで接種することができ るため、約半数が0 歳代でかかり、5 歳くらいまでが危険年齢である細菌性髄膜 炎の予防には非常に有効なワクチンです。このタイプの肺炎球菌ワクチンは世 界の101 の国・地域で承認されており、40 カ国近くで公費による定期接種が行 われています。日本では公費の対象ではありませんが、Hib ワクチンと肺炎球 菌ワクチンを接種することによってアメリカでは細菌性髄膜炎がほとんどなく なった事実を考えると、なるべく接種した方がよいでしょう。 日本でも、アメリカなど欧米で行われている異なるワクチンを同時にうつ「同 時接種」が医師の判断でできるようになり、四種混合ワクチンや Hib ワクチン と同時接種することも可能となり、より接種しやすくなっています。 Ⅲ.日本脳炎ワクチン 日本脳炎は、ブタなどの増幅動物を吸血した蚊(日本では主にコガタアカイ エカ)を媒介して、ヒトに感染します。日本脳炎ウイルスに感染したヒトの大 部分は不顕性感染ですが、脳炎を発症した場合は重篤化しやすいという特徴が あります。わが国では、1966 年までは年間 1,000 人以上の日本脳炎患者が発生 していましたが、様々な要因で患者数は減少し、1992 年以降は年間 10 人未満 となっています。 従来型の日本脳炎ワクチンは、標準的には1 期:3 歳で 2 回と 4 歳で追加接 種、2 期:9 歳、3 期:14 歳で定期接種を行っていましたが、現在は 3 期が廃止 されました。また、2005 年 5 月に接種後に呼吸停止を伴った急性散在性脳脊髄 炎(ADEM)となった症例が出現したため従来型.ワクチンの積極的勧奨の一次 休止がなされていました。 日本脳炎ウイルスは減少していますが、まだ日本には存在します。ブタの80%

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以上に日本脳炎ウイルス感染が確認された県も多くありました。感染している ブタは西日本に多い傾向もありました。コガタアカイエカも、北日本に少なく 西日本に多い傾向があります。そのため、日本脳炎に感染する危険性は九州・ 沖縄・西日本のほうが高くなります。また、日本に限らず、東アジアや東南ア ジアには存在します。日本国内でも、このような状況の中、2006 年 9 月に日本 脳炎ワクチン未接種の 3 歳6ヵ月の児が日本脳炎にかかってしまうという事例 がありました。 副反応を含めた従来型日本脳炎ワクチンの問題点を考慮し、世界各国で種々 の新型日本脳炎ワクチンの開発が進められ、日本でもやっと平成21 年 6 月 2 日 に“ジェービックV○R”と言う名前で発売され、やはり接種すべきであるという ことになりました。 1 期 2 期とも定期接種となり公費で受けることができます。そして、2010 年 8 月に予防接種法の改正があり積極的勧奨が休止されていた 4 年の間に接種時 期が過ぎてしまった子供たちに対して特例で、本来の 2 期の期間に接種してい ない分の接種ができるようになりました。さらに、未接種者の接種が進まない ことから、平成 7 年 6 月 1 日から平成 19 年 4 月 1 日までに生まれた子供は、 20 歳未満(できれば 13 歳未満)までに 4 回接種すればよいこととなりました。 日本脳炎の流行地へ渡航する場合や日本脳炎ウイルスを媒介する蚊に刺されや すい環境にある場合など日本脳炎に感染するおそれが高い場合などはもちろん、 すべての子どもたちに積極的に接種させるべきです。 参考:急性散在性脳脊髄炎(ADEM) ある種のウイルスの感染後あるいはワクチン接種後に、稀に発生する脳神経 系の病気です。ワクチン接種後の場合は、通常接種後数日から2週間程度で発 熱、頭痛、けいれん、運動障害などの症状が現れます。ステロイド剤などの治 療により完全に回復する例が多く、良性の疾患とされていますが、運動障害な どの神経系後遺症が 10%程度あるといわれています。日本脳炎ワクチンによる ADEM は 70~200 万回に 1 回程度発生するといわれています。 Ⅳ.経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン ロタウイルス感染症は、前述のノロウイルス感染症と並び小児の感染性胃腸 炎の代表的なものです。冬に流行するため、当期下痢症とも呼ばれています。 ノロウイルスの潜伏期は1~2 日、症状の持続日数は 1~2 日で予後は良好です。 ロタウイルス感染症の潜伏期は 1~2 日で、症状の持続期間は 5~8 日です。ノ ロウイルス感染症に比べ重症になる頻度は高いといわれています。下痢と嘔吐、 発熱を主症状とします。下痢と嘔吐はどちらか片方のこともあります。ロタウ イルスによる下痢は、白色から黄白色の水様便のことが多いです。発熱は細菌 性の胃腸炎と比べ軽度のことが多いです。 そのほか、呼吸器症状を伴うこともあります。まれではありますが、発疹、 けいれん、脳炎/脳症、腸重積、虫垂炎などがみられることがあります。下痢が

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消失してもしばらくの間(約3 週間)は便の中にウイルスが排泄されています。 平成23 年 11 月 21 日に発売されたロタリックス○Rは、ロタウイルス胃腸炎を 予防する経口生ワクチンです。2011 年 7 月現在、世界では 120 ヵ国以上で発売 されていたワクチンですが、やっと日本でも発売されました。 生後 6 週間から接種でき、少なくとも 4 週間の間隔をあけ 2 回目の接種を行 います。遅くとも生後24 週までに接種を完了させなければなりません。 この他にも、ロタテック○Rというワクチンもあります。こちらのワクチンも生 後 6 週間から接種できますが、少なくとも 4 週間の間隔をあけ 3 回の接種が必 要です。生後32 週までに 3 回目の接種を完了させなければなりません。

行徳総合病院小児科 佐藤俊彦

参照

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参考 日本環境感染学会:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第 2 版改訂版

そのうち HBs 抗原陽性率は 22/1611 件(1.3%)であった。HBs 抗原陰性患者のうち HBs 抗体、HBc 抗体測定率は 2010 年 18%, 10%, 2012 年で 21%, 16%, 2014 29%, 28%, 2015 58%, 56%, 2015

 活性型ビタミン D₃ 製剤は血中カルシウム値を上昇 させる.軽度の高カルシウム血症は腎血管を収縮さ