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明治後期の語法型教材

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(1)

1.はじめに

筆者は吉岡

2000A

で、明治期に作成された

100

種類余りの日本語教材の構成内容を調 査し、文典型教材、語法型教材、読解教材、文字教材、会話教材の

5

種類に分類し、それ ぞれの特徴を述べた(1)。このうち語法型教材は、教師が教室で使用することを想定し各課 の学習項目の量や文法項目の提出順が易から難へと段階的に配列され、4技能が並行して 学習されることを前提として作成されている語法総合型教材と、文型的な学習項目が明示 されそれぞれに用法を示す例があげられている語法用例教材に分けられるが、吉岡

2002A

では、明治

38

年ごろまでに作成された語法用例教材である『日語入門』『東語完璧』『日 語用法彙編』『応用東語法教科書』の

4

種類を対象に、各教材の文法学習項目の調査を行 った。そして、現代の初級学習項目を基準にした場合、低いもので

43

%、高いもので

64

%の項目が一致することを明らかにし、それぞれの教材の特徴を見た。

本稿は、明治

39

年以降の語法用例教材を調査し、文法学習項目から見た明治後期の各 教材の特徴を明らかにすることが目的である。また、明治期の語法用例教材を文法学習項 目をもとにその流れを概観すると同時に、現代の日本語教材との関わりについても触れた い。

2.調査対象教材の構成内容

明治期の語法用例教材には、次のようなものがある。台湾総督府民政局学務部『新日本 語言集甲号』(明治

29

年、1896)、長谷川雄太郎『日語入門』(明治

34

年、1901)、新智社 編集局『東語完璧』(明治

36

年、1903)、金井保三『日語指南』壱巻(明治

37

年、1904)、 弐巻(明治

38

年、1905)、李文蔚、畢祖誠『日語用法彙編』(明治

38

年、1905)、宝閣善教、

権量『応用東語法教科書』(明治

38

年、1905)、振武学校『日本語会話教程』(明治

39

年、

1906)

、文求堂編集局『日語全璧』(明治

39

年、1906)、大宮貫三『日語活法』(明治

40

年、

1907)

、渡辺直助、楊汝梅『日語用法自習書』(明治

40

年、

1907)

、呉人達『東語大観』(明 治

40

年、1907)である。このうち、その編纂者や学習項目などについて既に調査発表し た(2)『日本語会話教程』を除く明治

39

年以降に作成された『日語全璧』、『日語活法』『日 語用法自習書』『東語大観』の

4

種類の教材を対象として、文法学習項目を調査するが、

吉岡 英幸

キーワード

明治後期・日本語教材・語法型教材・文法学習項目

(2)

まずこれらの教材の構成内容について見ておきたい。この

4

種類の教材に共通しているの は、中国語母語話者を対象とした教材であること、中国語で文法などの解説や用例の対訳 が行われていることである。

a.『日語全璧』(文求堂編集局編、明治 39

2

月、文求堂書店発行、明治

39

8

月再版 発行による)

全体は、発音編、単語編、成句編、散語編、問答上編、問答下編、談話編の

7

部構成 となっている。発音編は「五十音、鼻音、濁音、半濁音、促音、拗音、転音、音勢(アク セント)」の項目に分け、それぞれに例をあげその中国語訳も付している。単語編は「数 目、月日、時令、十干方角、天文、地理、身体」など

32

の項目に分け、それぞれの分野 の語彙をあげ、その中国語訳を付している。成句編は人称代名詞、「の」、「こ・そ・あ」、 形容詞、形容詞+名詞、「と」、「に」、「を」というように、助詞や連体修飾、動詞の時制 など、65の文法学習項目に分け、それぞれ日本語の用例とその中国語訳をあげている。

項目は日本語教育の基本的なものをかなり網羅しており、用例は他の文法要素を排除した シンプルな語句や文で、その用例の数もかなりあげられている。散語編は、1から

46

ま で学習項目を明示せず

1

文単位の例文を列挙し、その中国語訳を付したもので、例文の数 はかなりあるものの、どのような意図で各項目がまとめられているか、編者の意図は明ら かではない。問答上編は

30、問答下編は 35

の項目に分かれていて、それぞれ関係のない 対話形式の用例がいくつか列挙され、その中国語訳がつけてある。談話編は、8つに分か れており、それぞれ

2

つから

5

つの文章例とその中国語訳をのせたものである。本書は自 習書としての使用も意図されている。文法学習項目の調査は、成句編、散語編、問答上編、

問答下編を対象とする。

b.『日語活法』(大宮貫三、明治 40

4

月、早稲田大学出版部発行)

全体は、1編助詞、2編動詞、3編形容詞、4編助動詞という品詞ごとの部立てをとって いるが、最も比重を置いているのが

76

の項目に分けている助詞である。各項目の意味用 法を中国語で説明し、その項目の用例文をあげている。動詞は

16

の項目に分け、5つは 動詞の種類ごとの活用の変化を中心に、他は「行く、行かない、行こう、行ったでしょう、

行く人、行き帰り、行けば、行ってください」などの形の意味用法の中国語の説明と、日 本語の用例をあげている。形容詞は、活用や種類や修飾するときの形などを

5

つの項目に 分け、それぞれ中国語で説明した後、日本語の用例をあげている。助動詞は、可能、受身、

敬語、使役、使役受身、自発、否定、願望「たい」、時制の

9

つの項目に分け、中国語の 説明と表や用例をあげている。文法学習項目は

1

編の助詞、2編の動詞、4編の助動詞を 対象として調査する。

c.『日語用法自習書』(渡辺直助、楊汝梅、明治 40

5

月、清国留学生会館発行)

全体は、1編語法用例類纂、2編與語法用例相關連之重要品詞、3編語法用例之推廣應 用の

3

編の構成になっているが、品詞や活用変化の説明、主な動詞の語例をあげた

2

編、

演説の例と「法螺吹、三日坊主」などの語とその用例をあげた「詼諧語及奇字例解」とで 成っている。3編は付録としての要素が強く、中心は

1

編である。編纂者は序で、語法の

(3)

中で最も難しい助詞、助動詞、接続詞を中心にその用法を示したとしており、180の文法 項目を選んで、各項目の中国語の説明と、日本語の用例、中国語の訳、それに練習問題で 構成されている。各項目には

2

つか

3

つの用例文しかないのがもの足りない。書名のとお り自習用として作成されているため、中国語でされている説明は丁寧である。文法学習項 目の調査対象は

1

編である。

d.『東語大観』(呉人達、奥付がない東京都中央図書館実藤文庫本によった。「実藤文庫

目録」によると「清光緒

33

刊:明治

40

年」)

全体は

1

巻語法、2巻語例、3巻普通応用語と、3巻で構成されている。1巻は「語法」

となっているが、文字や発音などについて解説したもので

33

ページしかとっていない。2 巻は、「は」「が」「を」「で」「ことができます」「てはいけません」「どうして〜しょうか」

「やります、もらいます、あげます、ください」のような

77

の項目に分かれ、例文と中国 語訳がついている。3巻は

40

の場面や話題の項目を立て、そこでの会話例とその中国語 訳を付したものである。

本教材は、用例が多いことが特徴であるが、文法項目があまり整理されておらず、最初 の「は」の項目に「私の学校は神田区錦町三丁目十番地で経緯学堂という看板が出ていま す」(p.33)のような例文が見られように、ある学習項目の例文に他の学習項目をいっしょ に使用したり、本書では採られていない文法項目を例文に使用したりしている。また、

「あの歴史の本はもう何枚読まない所があります」(p.47)のような不自然な例文、「昼が 過ぎた以上はとても追いつけますまい」(p.119)のように場面背景の説明がないと理解が 難しいような例文が目に付く。文法学習項目の調査対象は

2

巻である。

3.文法学習項目

a『日語全璧』

、b『日語活法』、c『日語用法自習書』、d『東語大観』のそれぞれの具体

的な文法学習項目がどのようなものかを調査した結果を以下の表に示す。項目は、現代の 日本語初級教材の文法学習項目を基に決められた日本語能力試験の

4

級と

3

級の文法項目 が、各教材に採られているかどうかを調査したものである(3)。受給表現「あげる、もらう、

くれる」のように複数の語彙が項目となっている場合は、その教材に一つでも出てくれば 原則として初出の課を記した。編纂者が文型として意識して例文に入れたかどうか疑わし いものもあるが、その例文に文法項目が含まれていると判断できるものはすべて採った。

『日語全璧』の場合、「単語編」は

T、

「成句編」は

K、

「散語編」は

S、

「問答編上」は

J、

「問答編下」は

G、

「談話編」は

D

とし、数字は課を示しているが、「単語編」のみ課の数 字がないため項目をそのまま記した。『日語活法』は、数字は「1編助詞」の課を示すが、

「2編動詞」「3編形容詞」「4編助動詞」に項目がある場合は、頭に「2−」「3−」「4−」

のように編の数をあげてから課を示した。『日語用法自習書』の数字は、1編の課を示す。

『東語大観』の数字は、2巻の語例を示すが、同書の

2

巻には項目名しかなく項目に数字 がついていないため、最初の項目「は」(p33)を

1

とし、最後の「自動詞與他動詞之分」

(p156)の

77

までを順番に番号をふり、その数字を示した。

(4)

1)4

A.文法事項

A

−Ⅰ 文型、活用等

A

−Ⅱ 助詞、指示語、疑問詞等

文 法 項 目 a全璧 b活法 c用法 d大観

「は」+疑問詞 K33 25 66 13

疑問詞+「が」 S03 31 68 9

形容詞の現在・過去・否定 K20 5 24 8

形容詞のテ形 大きくて K54 43

形容詞の連用形+動詞 大きく書く K15 21 38 13

形容詞+名詞 大きい木 K06 21 56 16

形容詞+の 大きいの K42 59 51 12

形容動詞 現在・過去・否定 2 28 1

形容動詞のテ形 きれいで 74 116

形容動詞の連用形+動詞 きれいに書く S38 35 126 38 形容動詞+名詞 きれいな花 K42 25 58 16

形容動詞+の きれいなの S19 68 86

存在文 NにNがある/いる K18 10 25 2 存在文 NにNがQある/いる K65 64 14

所在文 NはNにある/いる K62

動詞 現在・過去・否定形 K20 4 6 3

動詞の自他 NがV/NをV K37 6 4 77

動詞のテ形 書いて K40 22 31 1

動詞のテアル形 書いてある K65 71 58 65

動詞のテイル形 書いている K40 33 14 1

動詞のナイデ形 書かないで S41 50 36

名詞述語文の現在・過去・否定 K34 12 57 1

名詞述語文のテ形 Nで D02 25 1

名詞+の+名詞 私の本 K02 4 15 1

名詞+のだ 私のだ K34 59 14 16

連体修飾+名詞 買った本 K59 61 46 43

疑問詞 何 K33 25 61 7

疑問詞 だれ/どなた K21 23 14 14

疑問詞 いつ K49 62 65 1

疑問詞 いくつ K50

疑問詞 いくら/(いかほど) K65 85

疑問詞 どこ K38 36 67 12

疑問詞 どれ K41

疑問詞 どう K34 51 93

疑問詞 どんな K42 14

疑問詞 どのぐらい K50 24

疑問詞 なぜ/どうして K45 19 148 27

疑問詞+か 何か K40 50 79 13

疑問詞+も+否定 何も〜ない K21 50 60 19

これ、それ、あれ K01 2 44 10

この、その、あの K04 2 10 1

ここ、そこ、あそこ K12 25 14 2

(5)

こちら、そちら、あちら K12

が 友達が来た(主語) K16 1 4 2

を 私はパンを食べる(目的語) K13 6 1 3

を 家を出る(起点等+を) K13 14 2 29

に ここに本がある(場所) K12 10 14 2

に バスに乗る(到達点) K11 14 14 5

に 7時に起きる(時間) K17 15 17 1

に 本を買いに行く(目的) K40 16 19 5

に 1日に3回行く(回数) S42

で 公園で野球をする(場所) K47 18 48 4

で バスで行く(手段方法) K29 42 47 4

で 木で机を作る(材料) K29 53 9 4

で 病気で学校を休む(原因、理由) K29 43 54

で 全部で百円(数量) K65 54 51 29

へ 東京へ行く(方向) K40 8 41 5

と 本とノート K07 11 31 9

と 妹と(いっしょに) S13 31 9

と 友達と会う(動作の相手) D01 18 72 61 から、まで 家から駅まで(場所) K32 44 39 8 から、まで 1時から3時まで(時間) K32 46 39 8

や 切手やはがき K62 64 28

は 私は学生です K15 3 8 1

は テニスは外でする(目的語) K21 26 60

は 酒は飲まない(否定と) K21 26

は 私は行くが、兄は〜(対比) 31 10

も 私は行く。兄も行く K18 7 13 10

も 本もノートもある K38 7 62 36

格助詞+は/も には、へも K15 26 25 51

か 本かノート K62 72 9

か 行くか行かないか S43

など 本やノートなど K55 23 64

ぐらい 30人ぐらい S24 74 73 24

だけ 果物だけ食べた K57 4−1 70 46

しか 果物しか食べない S32 46

て 朝起きて散歩した(単純接続) K40 27 11 15

て 本を見て歌う(副詞的、方法) K61 30 6

て 風邪をひいて休む(理由) K54 22 28 33

が すいませんが J18 51 67 7

か これはあなたの本ですか K19 13 8 1

か 先生ですか、学生ですか S15 25 44 77

ね 今日はいい天気ですね K63 25 24

よ その本はいいですよ K63 52 11 22

わ 私もいくわ

中 1年中暑い K51 75 15

たち/ども/方 私たち K01 33 46 22

あまり〜ない あまり見ない S03 68 24 20 1〜100/一つ (数) T数目 28 37 24

枚/冊/本等 (助数詞) K65 20 37 3

〜月/〜日/〜曜日 T月日 46 28 1

〜時〜分 (時刻) T時令 46 77 24

〜時間/〜分間 (時間) T時令 33 76 24

(6)

B.表現意図等

2)3

A.文法事項 A

−Ⅰ 文型、活用

依頼 Nを下さい K49 20

依頼 〜て下さい K49 21 153 3

依頼 〜ないで下さい

依頼 Nを/Vて下さいませんか/(ませ) S32 22

勧誘 Vましょう K25 62 38 5

勧誘 Vませんか S11 137

希望 Nがほしい K51 72 159 12

希望 Vたい K51 4−8 159 61

逆説 〜が K36 50 5 17

同時 V時 K17 21 21 13

同時 Vながら K58 94 40

前後 Vてから K40 47 40 50

前後 Vた後(で) D03

前後 V前(に)

推量でしょう/だろう/(ましょう) K23 27 70 6

並立 VたりVたり G13 113 33

変化Aく/ANに/になる K54 41 15 7

変化Aく/AN/Nにする 52 12

変化もう+肯定/否定 S10 18 98 50

変化まだ+肯定/否定 K32 13 5 2

名称の導入〜というN K43 1

理由 〜から K32 26 38 39

文 法 項 目 a全璧 b活法 c用法 d大観

受身 V(ら)れる K53 39 160 27

敬語 おVになる K45 40 62

敬語 V(ら)れる 4−3 163

敬語 おN/ごN K52 19 65 53

敬語 おVする D03

敬語 おVいたす S43 65

敬語(お)Aございます K42 14 55

敬語 AN/Nでございます S04 4−3

使役 V(さ)せる K56 4−4 159 28 使役+受身 V(さ)せられる 4−5 160

〜ずに Vず(に) S42 58 24 10

文の名詞化 〜の K43 30 45 25

文の名詞化 〜こと S21 2−2 102 文の名詞化 〜ということ

補助動詞 Vて いく/くる K46 63 48 3

補助動詞 Vてみる K57 97 21

補助動詞 Vてしまう K46 25 43 49

補助動詞 Vておく S23 72 100 26

(7)

A

−Ⅱ 助詞、指示語等

B.表現意図等

こんな、そんな、あんな K42 69 9 19

こう、そう、ああ 23 122 36

縮約形 〜ちゃ

までに  9時までに K32 36 122

も 50万円も持っている S27 82 22

ばかり テレビばかり見て K57 62 75 30

でも お茶でも飲もう(例示) S33 62 60

疑問詞+でも 何でも K42 62 61 7

とか 本とかノートとか G26 30

し 頭もいいし体も丈夫 26 108

の いっしょに行くの だい どうしたんだい かい いっしょに行くかい

Aさ/ANさ 暑さ D03 38 46

らしい 男らしい人

Aがる/ANがる 暑がる G24 3−5 107 20

意志 V(よ)うと思う S22 51 33 74

意志 〜つもりだ K46 26 114 3

意志 V(よ)うとする S42 60

意志 Vことにする J26

意志 Nにする 54 15

依頼 おVください K52 64

依頼 (さ)せてください K56

引用 〜と言う K43 34 33 40

開始 Vはじめる D02 13

開始 Vだす S05 22 13

過度 Vすぎる S29 115 12

可能 Vことができる S39 62 5 29

可能 V(ら)れる K54 33 162 46

勧告 〜ほうがいい S19 37 68 76

希望 Vたがる 164

義務 〜なければならない/(ねばばらぬ) K52 65 149 22

逆説 〜のに S37 67 86 12

許可 〜て(も)いい/てもかまわない S35 53 32 禁止 〜てはいけない/てはならない K60 40 145 18

禁止 〜な K59 23 152 27

経験 Vたことがある S04 62 5 62

継続 V続ける 43

終了 V終わる

受給 あげる/もらう/くれる K50 29 157 3 受給 〜てあげる/もらう/くれる K50 61 158 34 受給 さしあげる/いただく/下さる S34 38 157 37 受給 〜てさしあげる/いただく/下さる K51 38

条件 〜ば K52 56 12 10

条件 〜たら S26 64 105 45

条件 〜なら(ば) K52 21 127 16

(8)

上記の各教材の文法学習項目数をまとめると次の表のようになる。

条件 〜と K62 56 30 14

状態放置 〜まま

譲歩 〜ても/でも 辞書を引いても S37 41 59 7 疑問詞+ても/でも 何があっても S42 62 84 14

推量 〜と思う K46 34 28 27

推量 〜らしい 101 15

推量 〜かもしれない S07 117 26

推量 〜はずだ/はずがない S07 75 133 36

推量 〜ようだ S03 74 109

伝聞 〜そうだ S21 74 89 27

難易 Vやすい

難易 Vにくい D01 19

比較 〜は〜より K44 37 38 11

比較 〜と〜とどちら/ほう J17 66 9

比較 〜ほど〜ない G28 65 81

比喩 〜よう J09 49

不必要 〜なくてもいい/かまわない G11 23

方法 〜かた S23 110 20

命令 V命令形 K48 102

命令 Vなさい K48 74 150 3

目的 Vため(に) 34

様態 〜そう S03 73

理由 〜ので S32 63 54

理由 〜ため(に) J24 61

〜は〜が 私は犬が好きだ S12 66

〜は〜が 象は鼻が長い 55

〜がする 音/におい がする 74 38

Vことがある 休むことがある J28 4−4 5 62 Vことになる 話すことになる

〜のだ 話したのだ S05 60 65 4

疑問詞+〜か だれが来たか S18 85 44

〜かどうか 来たかどうか S44

〜ように言う/願う G07 74 111 34

〜ようにする S37 74 112 22

〜ようになる S42 105 33

Vところだ 行くところだ S19 101 27

4 級 3 級 計 AⅠ AⅡ 小計 B

項目数 115 100 215 44 83 127 88

a日語全璧 108 79 187 39 74 113 74

(94%) (79%) (87%) (89%) (89%) (89%) (84%)

b日語活法 93 61 154 36 65 101 53

(81%) (61%) (72%) (82%) (78%) (80%) (60%)

c日語用法 自習書

92 70 162 38 63 101 61

(80%) (70%) (75%) (86%) (76%) (80%) (69%)

d東語大観 91 65 156 32 60 92 64

(79%) (65%) (73%) (73%) (72%) (72%) (73%)

(9)

4

種類の教材とも

3

級より

4

級の項目が多く、より基本的な文法項目に対する認識があ ったと見ていいであろう。また、4種類とも、初級文法学習項目の

7

割以上を有しており、

特に『日語全璧』は

87

%という高い数字を示していて、明治期としては稀なほど多くの 文法学習項目を配した教材となっている。

5.ま と め

明治後期に作成された

4

種類の日本語教材『日語全璧』『日語活法』『日語用法自習書』

『東語大観』は、中国語母語話者のために作成された教材であり、それぞれ現代の初級文 法学習項目の

7

割以上が重なっており、文法の面からは充実した教材である。特に『日語 全璧』は、「文型、活用等」、「助詞、指示語、疑問詞等」の

A

と、「表現意図等」の

B

も それぞれ

8

割以上が重なっているように、文法学習項目の点からは基本的なものを幅広く バランスよく採り入れた優れた教材だと言うことができる。『日語活法』は、Aの項目は

8

割近く採っているが、「表現意図等」の

B

6

割しかないのは、助詞を中心に品詞ごと の部立てを行っているためであると思われる。『日語用法自習書』は、自習書の性格から 中国語の説明や対訳にスペースをさかなければならないこともあり、それぞれの項目の日 本語の用例が少ないのが欠点ではあるが、それでも

76

%も文法項目があるということは、

逆に文法上から見ると選ばれた用例を幅広く集めたと見ることもできる。『東語大観』は、

各項目の日本語の用例も多く、7割以上の文法項目を採っているが、日本語として不自然 な例文や、その例文だけでは理解しにくい特殊な場面での発話などの例文が見られ、余り 質の高い教材とは言い難い。

明治期の語法用例教材全体の文法学習項目を見てみると以下のとおりである。A.長谷 川雄太郎『日語入門』、B.新智社編集局『東語完璧』、C.金井保三『日語指南』、D.李 文蔚、畢祖誠『日語用法彙編』、E.宝閣善教、権量『応用東語法教科書』、F.振武学校

『日本語会話教程』、G.文求堂編集局『日語全璧』、H.大宮貫三『日語活法』、I.渡辺直助、

楊汝梅『日語用法自習書』、J.呉人達『東語大観』の

4

級と

3

級の文法項目が採られてい る数をそれぞれパーセントで記す。

概して後期に編纂された教材のほうがパーセントが高くなっている。特に『日語全璧』

は全体を通じても最も高い比率を示しており、文法項目のバリエーションという点から見 ると最も優れた教材だということができる。編纂者がこれらの文法学習項目をどこまで正 確に分析していたかは疑問のところであるが、当時から

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年の歳月が経ち、当然使用さ れる日本語が変遷していることを考慮すれば、8割以上が重なるということは、現代の 我々とほぼ同じように認識されていたと考えてよいであろう。日本語教育における基本的 な文法学習項目は何かという選択基準が、かなり明確に意識されていたと見ることができ る。換言すれば、これら明治期の日本語教材の分析から、現代の文型を軸とする構造シラ 教材 A入門 B完璧 C指南 D彙編 E応用 F会話 G全璧 I活法 I用法 J大観

4級 71 57 83 78 73 79 94 81 80 79

3級 33 27 59 50 48 53 79 61 70 65

計 53 43 72 64 61 67 87 72 75 73

(10)

バス中心の日本語の初級教科書が、第二次大戦後急に出現したわけではなく、既に明治期 に端を発し、大正、昭和、現代へと継承されてきたことがわかるのである。

付記 本文の引用文献の旧字体や旧仮名遣いなどの表記に関しては、原則として現代表記 の基準にのっとり書き改めた。

(1)吉岡英幸[2000A]参照。

(2)吉岡英幸[2002B]参照。

(3)国際交流基金、日本国際教育協会編[1994]『日本語能力試験出題基準』による。

参考文献

吉岡英幸[2002A]「明治期の語法型教材」『早稲田大学日本語研究教育センター紀要』15号。

吉岡英幸[2002B]「振武学校の日本語教材」『早稲田大学日本語教育研究』創刊号。

吉岡英幸[2001]「金井保三著『日語指南』の文法学習項目」『講座日本語教育』第37分冊。

吉岡英幸[2000A]「明治期の日本語教材」『日本語教育史論考』凡人社。

吉岡英幸[2000B]「明治期の日本語会話教材」『早稲田大学日本語研究教育センター紀要』13号。

吉岡英幸[1999]「明治期の日本語教科書の「文型」」『日本語研究と日本語教育』明治書院。

参照

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