座屈防止杭による道床横抵抗力増強発現のメカニズム
東海旅客鉄道株式会社 正会員 ○福中 力也 東海旅客鉄道株式会社 正会員 久永 健一郎 東海旅客鉄道株式会社 正会員 前田 麦 東海旅客鉄道株式会社 正会員 清水 裕介
1 はじめに
従来,下級線(3,4級線)の一般的な軌道構造は,40N, 木まくらぎ,ふるい砂利であった.近年,安全性をさら に強化することに加え,LCCを低減することを目的とし て,下級線においても50N化,PC化,道床砕石化を推進 している.
この中長期的な軌道強化の推進に併せて,労務費,材 料費の低コスト化を図るため,下級線専用のPCまくらぎ
(以下,「下級線用PCまくらぎ」)を開発した,下級線に おける列車通過トン数を考慮し,軽量化しつつ,道床横 抵抗力は従来と同程度を確保した設計としており,平成 26年度より本格導入している.
下級線用PCまくらぎには,貫通縦穴を軌間内に2箇 所設けている.その活用方法の主なものとして,貫通縦 穴に異形棒鋼を打ち込むこと(図-1)により,道床横抵 抗力を増強させる方法を提案した.
本稿では,貫通縦穴を通じて道床に打ち込む異形棒鋼 を『座屈防止杭』(以下,「杭」)と呼び,杭の基本性能及 び酷暑期における道床弛緩作業への影響を検証するため,
道床横抵抗力測定試験(総数657本)を行ったので,そ の結果について報告する.
図-1 下級線用PCまくらぎと杭 2.下級線用PCまくらぎの概要
(1)下級線用PCまくらぎの特徴
下級線用PCまくらぎは,従来のPCまくらぎに比べ,
「まくらぎ厚を薄くし軽量化を図った点」,「まくらぎ端 部面積を増加させ道床横抵抗力を確保した点」,「軌間内 に2つの貫通縦穴を採用した点」の3点が挙げられる.
(2)杭打込みによる道床横抵抗力測定結果(実軌道試験)
ふるい砂利,砕石における杭の有無についての試験結 果を図-2 に示す.グラフは弛緩状態での道床横抵抗力を 示す.杭を打ち込むと,道床種別に関係無く,約 3kN/m の増強効果があることを確認した.
図-2 杭打ち込みによる道床横抵抗力 3.杭が道床横抵抗力に与える影響の分析
ここでは,なぜ杭を打ち込むことにより増強効果があ るのかを検証する.
(1)仮説と試験概要
図-3に示すように,杭には,留まろうとする杭単体の 力と回転モーメントによる道床を押さえる力が働くこと により増強効果が発揮されると仮説を立てた.
図-3 杭による増強効果(仮説)
試験方法を図-4に示す.
下級線用 PC まくらぎ各部にひずみゲージを取付け試 験を実施した.ゲージ取付け位置は図-4の②~④である.
図-4 試験測定項目
(2)試験結果
試験結果を図-5に示す.
キーワード 座屈防止杭 道床横抵抗力 実軌道モデル 増強メカニズム
連絡先 〒453-0872 名古屋市中村区平池町4-1 東海旅客鉄道㈱名古屋保線区 TEL:052-541-7032
①荷重
②杭が留まろうとする力
④道床を押さえる力
③回転モーメント
測定項目
①荷重
②杭側面の応力
③まくらぎ上面応力
④まくらぎ下面応力
④
断面図
③
②
① まくらぎ
ひずみゲージ 0
2 4 6 8 10
5.81 5.80
杭なし 杭なし
3.9kN/m 道床条件:弛緩状態
杭長さ :200㎜
必要道床 横抵抗力
杭あり
2.97 2.91
ふるい(土) 砕石
道床横抵抗力 杭あり
(kN/m)
N=40
σ=0.66 N=9
σ=0.65
N=8
σ=0.70 N=10
σ=0.61
土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)
‑1013‑
Ⅵ‑507
①は荷重であり,道床横抵抗力の増加を示す.②はひ ずみゲージの測定値である.抵抗力の増加とともに,軸 力が増加していることがわかる.③④はまくらぎに働く 応力を示す.どちらも圧縮方向に力が働いていることを 確認した.これらの結果から,杭の効果は,杭単体の抵 抗力と,回転力の発生による下面摩擦力の増加の二つの 要素により約 3kN/m の増強効果を発揮していることを 確認した.
図-5 試験結果 4.杭の実用化を想定した課題の検証
杭効果の持続性,降雨の影響,杭の浮き上がりについ て検証を行った.
(1)杭効果の持続性
杭有り,杭無しの道床横抵抗力を追跡調査し,杭効果 の持続性を確認した.ふるい区間の結果を図-6 に,砕石 区間を図-7に示す.敷設後90日までの間,杭の増強効果 が持続することを確認した.
図-6 追跡調査(ふるい) 図-7 追跡調査(砕石)
(2)降雨の影響
ふるい区間において,降雨により細粒分が流出し,道 床横抵抗力に影響が無いかを検証するため,時雨量50mm 相当の水140㍑を散水し測定した.散水状況と降雨試験 結果を図-8に示す.
道床弛緩作業直後の含水状態による測定結果に差が無 いことから,降雨による杭の効果減少の影響はほとんど 無いことを確認した.
図-8 散水状況と降雨試験結果 (3)杭の浮き上がり
杭設置から 60 日後までの杭とまくらぎをレベル測量 した結果を図-9に示す.初期沈下量による2~3㎜程度の 隙間はあるが,その後の繰返し荷重による変化は無いこ とから杭の浮き上がりは発生しないことを確認した.
図-9 杭とまくらぎの沈下差の経過 5.実施工への展開
これまでの結果を踏まえ,夏期作業制限期間中の PC まくらぎ取替工事を夜間にて実施した.施工条件として,
全てのPCまくらぎへ杭を設置することとした.施工後に は最高レール温度 56.6℃を経験したが変状等は発生して おらず,図-10に示すとおり,通り狂いの経過もほとんど 変化のないことがわかる.
図-10 施工後の通り狂い(試験車)
6.まとめと今後の進め方
本研究において,下級線用PCまくらぎに座屈防止杭を 打込むことにより,道床状態や道床種別に関らず,道床 横抵抗力の増強効果が得られることを確認した.また,
杭の実用性を評価したところ,安価にかつ,施工性良く 軌道強化が可能なことを確認した.また,夏期に道床弛 緩作業を実施してその安全性も確認した.
〈参考文献〉
1) 楠田,山口,桃谷,伊藤(2012) 「模型実験によるバラスト軌道の道床横 抵抗力の検討」第 67 回土木学会年次学術講演会概要集,Ⅵ-533,
2012
2) 清水,渡邊(2013) 「実物大の軌きょうを用いたPCまくらぎの道床横抵抗 力試験」 第 68 回土木学会年次学術講演会概要集,Ⅵ-465,2013
0 1 2 3 4
0 20 40 60
経過日数(日)
杭① 杭② 杭③ 杭ーまくらぎ沈下差(mm)
-1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0
0 1.0 2.0 3.0 4.0
-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
①
③ ④
②
水平変位(㎜)
荷重と鉄筋の応力
(kN,MPa) (MPa)
まくらぎ応力
①荷重(道床横抵抗力)
②杭の応力
③まくらぎ上面応力
④まくらぎ下面応力
①② ③④
0 2 4 6 8 10
0 20 40 60 80 100
道 床 横 抵 抗 力
(経過日数)
(kN/m) ふるい
杭なし 杭あり 杭の効果
必要道床横抵抗力 3.9kN/m 必要道床横抵抗力 3.9kN/m
N=116 σ=0.73
0 2 4 6 8 10
0 20 40 60 80 100
砕石 杭なし 杭あり
(経過日数)
杭の効果
道 床 横 抵 抗 力
(kN/m)
必要道床横抵抗力 3.9kN/m 必要道床横抵抗力 3.9kN/m
N=108 σ=0.84
-10 -5 0 5 10
6,810 6,820 6,830 6,840 6,850 6,860 6,870 6,880 6,890 キロ程
直後 1ヶ月 2ヶ月
6k820m 6k840m 6k860m 6k880m
復元波形通り
(mm)
0 2 4 6 8 道床横抵抗力 10
(kN/m)
50mm 5.48 5.64
必要道床 横抵抗力 3.9kN/m 必要道床 横抵抗力 3.9kN/m
時雨量降雨なし
道床条件:弛緩状態
ふるい
土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)
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