個人投資家向け会社説明会 ミーティングメモ
ソニー株式会社(6758)
開催日:2018 年 12 月 8 日(土) 場 所:名古屋国際ホテル 2 階 『老松・若竹の間』(名古屋市中区) 説明者:執行役員 財務・IR 担当 村上 敦子 氏 1.ソニーの概要 ・ 2017 年度のグループ全体の売上は 8 兆 5,440 億円でした。昨日、2018 年 12 月 7 日の株 価は 5,886 円、時価総額は 7 兆 4,757 億円です。 ・ 当社は、1946 年 5 月に、井深大氏、盛田昭夫氏の 2 名によって、東京通信工業という社 名で創業しました。その後、当社ブランドであったソニーを社名として、ソニー株式会 社に社名変更しました。井深大氏が書いた「設立趣意書」には、会社設立の目的として、 「自由闊達(かったつ)にして愉快なる理想工場を建設し、技術を通じて日本の文化に 貢献すること」とあります。当社は、「人のやらないことをやる」というチャレンジ精 神の下、数々の日本初または世界初の商品を打ちだしてきました。 ・ 設立以来、新しい事業への挑戦を続けてきました。1968 年に、アメリカの CBS レコー ドとの合弁で CBS・ソニーレコード株式会社(現・株式会社ソニー・ミュージックエン タテインメント)を設立し国内音楽事業へ参入しました。1979 年に、アメリカのプルデ ンシャル生命との合弁でソニー・プルデンシャル生命保険株式会社(現・ソニー生命保 険株式会社)を設立し生命保険事業へ参入しました。1993 年にはゲーム事業に参入しま した。 ・ 1988 年に、CBS レコードを買収して 100%子会社化し海外音楽事業に参入しました。1989 年にアメリカのコロンビア・ピクチャーズ(現・ソニー・ピクチャーズエンタテインメ ント)を買収して映画事業に参入しました。 ・ 当社はエレクトロニクスだけでなく、ゲーム、音楽、映画、金融など幅広く事業を展開 し、連結売上高 8 兆円を超えるところまできました。 ・ 2017 年度の連結営業利益は 7,349 億円でした。これまでの最高益である 1997 年度の 5,257 億円を更新しました。要因として、テレビやカメラなどのエレクトロニクス事業におい て、いたずらに規模の拡大を追わずに、差異化、収益性を重視する方針を徹底すること によって、安定的な収益が期待できるようになったことが挙げられます。 ・ 2018 年度の連結営業利益は 8,700 億円を見込んでおり、再び最高益を更新する見通しで す。主な要因として、ゲーム事業が好調なことと音楽出版会社の完全子会社化などがあ ります。過去に連結営業利益の高かった 1997 年度や 2007 年の次年度と同様に減益とな らないように、持続して高収益を創出できる企業になるように努力しています。 ・ 2012 年 4 月末から株価は順調に推移しています。2018 年 9 月の株価は、10 年ぶりに 6,900円を超えました。 ・ 過去に最高益を達成した 1997 年度と 2017 年度の売上高構成比を比較しますと、1997 年 度の売上高 6 兆 7,610 億円のうち、ゲームを除くエレクトロニクス事業(オーディオ、 ビデオ、テレビ、情報・通信、電子デバイスなど)の占める割合は 64.3%でした。2017 年度の売上高 8 兆 5,440 億円のうち、エレクトロニクス事業の占める割合は 38.8%と低 くなった一方で、ゲーム&ネットワークサービス事業や金融事業の占める割合が高くな りました。 2.中期経営戦略 ・ 社長の吉田は、今後の経営の方向性として「人に近づく」を掲げています。ユーザー(お 客さま)や、感動を創り出すクリエイターに近づくことによって、ソニーブランドが最 も近い存在、そして愛される存在になることを目指しています。 ・ 当社は 3 年ごとに中期経営計画を策定し、今年度は第 3 次中期経営計画(2018~2020 年 度)の初年度です。 ・ 第 1 次中期経営計画(2012~2014 年度)では、事業構造の見直し、構造改革を行い、「ソ ニーの変革」に取り組みました。利益が出ない事業からの撤退や間接部門の人員削減を 実施しました。第 2 次中期経営計画(2015~2017 年度)では、「利益創出と成長への投 資」に取り組んだ結果、最終年度(2017 年度)に最高益を達成しました。 ・ 第 3 次中期経営計画(2018~2020 年度)は、「持続的に高収益を創出する企業へ」を掲 げています。利益成長に加え、継続的に利益・売上が上げられるビジネスモデルに変化 することで、「利益の質を高める」ことに注力します。 ・ 中期経営計画の数値目標は、営業キャッシュフローを重視しています。営業キャッシュ フローの 3 年間累計額(金融分野を除く)は 2 兆円以上、ROE(連結株主資本利益率) は 10%以上の継続を目指します。最終年度の業績をターゲットにするのではなく、3 年 間の累計額を指標として、継続的に高収益を生み出すことに注力します。 ・ 営業キャッシュフローの 3 年間累計額の推移は、2003~2005 年度が 1 兆 1,000 億円、2006 ~2008 年度が 9,000 億円、2009~2011 年度が 1 兆円、2012~2014 年度が 6,000 億円、2015 ~2017 年度が 1 兆 5,000 億円でした。第 3 次中期経営計画の目標値 2 兆円以上を達成す ることは簡単ではありませんが、これまでにない高いキャッシュフローの創出を目指し ています。 ・ 経営方針の基本戦略は 3 つです。 ・ 1 つ目は、「映像と音を極める技術でソニーブランドのエレクトロニクスを、安定的に高 いレベルのキャッシュを生み出す事業と位置づける」です。具体的な商品として、4K 有 機 EL テレビの A シリーズは、美しい映像と画面自体から音が出ることが特徴です。よ り臨場感のある画像と音を楽しんでいただくことができます。2018 年 10 月に発売した 「A9F シリーズ」は、今の段階での最高峰モデルです。α(アルファ)シリーズのフル
サイズミラーレス一眼カメラ「α9」は、新開発のイメージセンサーを搭載することによ って 1 秒間に 20 コマの連写が可能になりました。また、シャッター音を消すことがで きますので、特にゴルフなどのスポーツを撮影するプロのカメラマンから高い評価を得 ています。 ・ 2 つ目は、「半導体の CMOS イメージセンサーの領域でイメージング用途での世界 No.1 を維持し、センシング用途でも世界 No.1 を目指す」です。鑑賞を目的として画像を撮影 するイメージングの用途では既に世界 No.1 になっています。ただ、センシングの用途は 少し遅れていますので、こちらでも No.1 を目指したいと考えています。 ・ 3 つ目は、「お客さまとの直接・継続的なお付き合いを通じて、安定的に収益の拡大を図 るサービスとお客さまに感動をもたらすコンテンツを強化し、共通の感動体験や関心を 共有する人々のコミュニティを創造する」です。共通の感動体験として、例えば、ゲー ムを一緒に楽しんでいただくコミュニティ、「aibo」のファンの方たちのコミュニティ、 カメラで感動体験を共有するコミュニティなどを作っていくことを考えています。 ・ 以上の 3 つの基本戦略を支える上で特に重要な事業領域として、ゲーム&ネットワーク サービス分野、音楽分野、半導体分野、そして新規事業領域として AI×ロボティクス分 野、医療分野をご説明します。 ・ ゲーム&ネットワークサービス分野では、2013 年 11 月に販売を開始した「プレイステー ション 4」(PlayStation®4)が順調に売上を伸ばしており、累計売上台数は 2018 年度末 に 9,650 万台に達する見込みです。「プレイステーション 4」向けのソフトウェアタイト ルも大変ご好評をいただいています。自社開発のタイトルとして、2018 年 4 月発売の「ゴ ッド・オブ・ウォー」、2018 年 9 月発売の「Spider-Man」(スパイダーマン)は、発売か ら 3 日間で 300 万本を超える記録的な売上となり、今年度上半期の業績に大きく貢献し ました。同じく自社開発の「グランツーリスモ SPORT」(2017 年発売)は、実写のよう な高精細のグラフィックとサウンドで、かつてない臨場感を実現し、車を運転する楽し さ、レースの興奮を楽しんでいただくことができます。 ・ ゲーム&ネットワークサービス分野の売上は、「プレイステーション 4」の 2013 年 11 月 発売以降、右肩上がりで推移しており、2018 年度の売上高は 2 兆円を超える見込みです。 「プレイステーション 4」は、従来のプレイステーションシリーズに比べてネットワー ク売上の拡大が顕著です。ゲーム&ネットワークサービス分野の売上高に占めるネット ワーク事業の売上比率は、「プレイステーション 4」発売当初の 2014 年度は全体の約 27% でしたが、2017 年度には約 56%と半分を超えるようになりました。インターネット上 でゲームを楽しむお客さまが非常に増えたためです。 ・ ネットワークサービス事業の売上は、例えばインターネット上でゲームを買っていただ いたり、ゲームをしている中で追加のコンテンツを買っていただいたりするもののほか に、月額有料会員制サービス「プレイステーションプラス」のご利用があります。「プ レイステーションプラス」に入会すると、世界中のプレイヤーとオンラインで対戦する
ことができますし、対象となるゲームタイトルが遊び放題になるサービスなどを受ける ことができます。2018 年 9 月末時点の会員数は世界で 3,430 万人になっています。今後 も会員数を拡大し、ネットワークサービス事業の成長を目指します。 ・ 「音楽分野」の事業領域は、CD やミュージックビデオを制作する音楽制作、楽曲の著 作権の管理をする音楽出版、ライブハウス経営やアニメ事業などを展開する映像メディ ア・プラットフォームの 3 つです。音楽市場における当社のシェアは、日本では 1 位、 米国では 2 位です。 ・ 毎月一定の料金で音楽が聴き放題になる定額制音楽配信サービスの拡大によって、いっ たん縮小傾向にあった音楽事業は再び成長に転じつつあります。当社は保有する音楽コ ンテンツの質と量を確保するために、著作権を多数保有する EMI ミュージック・パブリ ッシング(EMI Music Publishing)を 2018 年 11 月に完全子会社化しました。世界有数の 音楽出版会社の保有は、長期的な当社の戦略にとって重要だと考えています。
・ 音楽分野のアニメーション関連事業は、映画配給、アニメーションから派生したモバイ ルゲームなどを手がけています。スマートフォン向けゲームアプリ「Fate Grand Order」 (フェイトグランドオーダー)は、配信から 4 年目になりましたが人気が衰えず、当社 の収益に大きく貢献しています。モバイル向けゲームアプリは、2017 年度の音楽分野全 体の営業利益 1,278 億円のうちの 3 割強を占めています。 ・ 「半導体分野」の主力商品であるイメージセンサーは、レンズで集めた映像を電気信号 に変えることから「電子の目」と呼ばれています。当社が強みを持つ高性能の「CMOS イメージセンサー」は、IoT、人工知能(AI)、自動運転などの将来技術の展開における 要であると認識しています。第 3 次中期経営計画の期間中はイメージセンサー事業に最 も大きな研究開発と設備投資を行う計画です。当社の 2017 年度売上高 8,500 億円のうち 4 分の 3 以上がイメージセンサーの売上です。 ・ イメージセンサー市場におけるモバイル(スマートフォン)領域は、複眼とモバイルセ ンシングを中心に拡大することが予想されます。特にスマートフォン用カメラの複眼化 によって、CMOS イメージセンサーは大幅な伸びが期待できます。 ・ 今後はイメージセンサーを車載用途にも広げていきたいと考えています。車にイメージ センサーを搭載することによって、対象物までの距離、対象物の移動方向とスピード、 対象物の判別が可能になります。当社のイメージセンサーは、夜間でも通行者をはっき り認識することが可能です。また、高ダイナミックレンジによってトンネルの出入り口 など明暗差が大きいところでも、白飛びの少ない情報の取得が可能です。 ・ 当社が開発した先進運転支援システム用途の積層型 CMOS イメージセンサーは、160 メ ートル先の交通標識を読み取ることが可能です。現在、株式会社デンソーや、海外の Bosch(ボッシュ)、NVIDIA(エヌビディア)、Mobileye(モービルアイ)などと共同で 車載カメラシステムの開発に取り組んでいます。キープレイヤーである各社との連携を 強化して、「車の目」となるイメージセンサーを進化させ、より高い安全性能を早期に
実現し、自動運転社会に貢献できるように開発に取り組んでおります。 ・ 新規事業領域の 1 つ目「AI×ロボティクス」では、2018 年 1 月に家庭における新しい楽 しみを提案する進化した自律型エンタテインメントロボット「aibo」(アイボ)を発売し ました。発売から半年で 2 万台を突破し、生産体制を増強して予約受付ができるように なりました。「aibo」は、2018 年 9 月からアメリカでも販売を開始しました。当社ならで はのセンサー、IoT、AI などユニークな技術を搭載して、人に寄り添う新しいスタイル のロボットとしてご好評をいただいています。 ・ 「aibo」はさまざまな場面で活用されています。ソニー・ライフケア株式会社傘下の介 護付き有料老人ホームに「aibo」を導入しました。また、2018 年 3 月に、アメリカのユ タ州で行われた火星模擬居住実験に「aibo」をクルーとして導入しました。プライバシ ーのない密閉空間の中での共同生活において人間関係に変化を与えることが期待され、 プロジェクト関係者からの打診により実現したものです。 ・ 新規事業領域の 2 つ目「医療」では、2013 年にオリンパス株式会社との医療事業合弁会 社を設立しました。ソニーのイメージングを中心とした技術とオリンパスの技術を生か し、4K 技術搭載の外科手術用内視鏡システムや 4K3D ビデオ技術搭載の手術用電子顕微 鏡システム「ORBEYE」(オーブアイ)を製品化して、着実に成果を上げ、事業も順調 に成長しています。ただし、医療事業はすぐに大きな利益に貢献できるわけではなく、 時間がかかりますから「十年の計」で取り組んでいます。 3.株主還元 ・ 2017 年度の 1 株当たりの配当は 27.5 円(中間配当 12.5 円、期末配当 15 円)でした。2018 度は、中間配当は 1 株当たり 15 円としました。期末配当は未定で、業績が確定した段 階で発表させていただきます。社長の吉田が申しているように、配当については安定的 に少しずつ長期的に増額していきたいと考えています。 ・ 株主特典として、3 月末日の株主名簿に記載された 100 株以上ご所有の株主さまに、当 社のインターネット上の公式通販サイト「ソニーストア」と、銀座、名古屋など各地の ソニーストア店舗で、対象商品を割引価格で購入いただけるクーポンを発行しています。 高額の商品のご購入にご利用いただいている株主さまも多く、毎年好評をいただいてい ます。 4.質疑応答 Q1.自社株買いなど配当以外の株主還元は考えていますか。 A1.自社株買いは選択肢の 1 つとして認識していますが、現時点で実施する予定はありま せん。株主の皆さまへの株主還元は非常に重要だと考えています。還元は継続的な企 業価値の増大、それから配当を通じて実施していくことを基本と考えており、今年度 (2018 年度)の中間配当は 15 円としました。
Q2.グローバルな政治経済の動向などにより新興国通貨の為替が大きく変動することがあ りますが、ソニーの業績にはどのような影響がありますか。 A2.新興国通貨安になりますと、当社の業績にある程度ネガティブな影響を与えると思い ます。新興国でテレビがよく売れている国は、インド、中国、ベトナムです。カメラ は中国で非常によく売れています。このような国で通貨安が進むと、影響は比較的大 きいと思います。ブラジル、ロシア、インド、中国の BRICs 通貨の合計で 1%円高にな ると、営業利益ベースで年間約 35 億円マイナスになると思います。 Q3.米中貿易摩擦問題やトランプ政権の保護主義的な通商政策がビジネスに与える影響は どの程度だと認識していますか。 A3.対象となるものが日々変わったりしますので、大変注視して、毎回詳しく見ています。 ただし、現時点では、当社の製品への影響はそれほど大きくなく、軽微だと理解して います。引き続き動向を注視していきたいと思います。当社のビジネスに影響を及ぼ すようなことが具体的にある場合は、適宜必要な対応を取っていかなければいけない と思っています。 Q4.御社の役員報酬はどのように決めていますか。 A4.基本的には業績の指標を用いた業績連動と、株主の皆さまと同じ視線に立つ株価連動 で決められています。当社の役員報酬は報酬委員会で決められます。報酬委員会は主 に社外の取締役で構成されています。役員報酬は、定額の部分に加えて、業績連動の 部分と株価連動の部分から構成されています。株価連動報酬として、ストック・オプ ションのほかに、最近、役員報酬に譲渡制限付株式を導入しました。 以上