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著者 木村 光雄, 吉江 重二, 清水 融

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(1)

金属錯塩染料の染着機構に関する研究第3報 対称 1:2型金属錯塩染料の構造とナイロン中への拡散挙 動との関連

著者 木村 光雄, 吉江 重二, 清水 融

雑誌名 福井大学工学部研究報告

巻 20

号 2

ページ 243‑250

発行年 1972‑09

URL http://hdl.handle.net/10098/4745

(2)

金属錯塩染料の染着機構に関する研究第 3 報

対 称 1: 2 型 金 属 錯 塩 染 料 の 構 造 と ナ イ ロ ン 中 へ の 拡 散 挙 動 と の 関 連

木 村 光 雄 ・ 吉 江 重 二 ・ 清 水 融

Studies on the Mechanism of Dyeing of Metal Complex Dyes ,  Part 1 1 1 .   Re l a t i o n s h i p   between the Chemical  s t r u c t u r e  of Symmetrical 1 :  2  type  Metal  Complex Dyes and the  Behaviour of  Diffusion i n t o   Nylon Film. 

Mitsuo KIMURA ,  J u j i  Y  O S H I E ,  Toru 8HIMIZU  ( R e c e i v e d  A p r .  

14, 1972) 

8everal symmetrical 1 : 2  t y p e   metal  complex dyes  (metal=Cri l l ,  C O i l l   and 

AIID) 

derived from 1‑(2'‑hydroxy‑5'‑R‑benzeneazo)‑2‑naphtho

I(

R=H ,  80

2

NH

2) 

were s y n t h e s i s e d  and p u r i f i e d .   With t h e s e  dyes ,  d i f f u s i o n  p r o f i 1 e s  o f  dyes i n t o   nylon f i 1 m were measured by r o l l  f i 1 m method i n  t h e  l o n g  d y e b a t h .   D i f f u s i o n   p r o f i 1 e s  o b t a i n e d  can be d i v i d e d  two t y p e s  o f  d i f f u s i o n .   One i s  t h e  i o n i c  t y p e   ( 1  t y p e )  and another i s   t h e  n o n i o n i c  type (N t y p e ) .   Whole d i f f u s i o n  p r o f i 1 e s   o f  t h e s e  dyes are c a l l e d  H t y p e  (H=I+N).  D i f f u s i o n   c o e f f i c i e n t   Do  and D  and the r a t i o  o f  I  t y p e  t o  H t y p e  CI/H%) were c a l i c u l a t e d .   Do and D o f  metal  complex dyes are very lower than u s u a l  a c i d  dyes  or  d i s p e r s e   d y e s .   I/H% 

i s   a f f e c t e d  by t h e  hydroph i 1 i c   property o f  dye ,  t h e  e l e c t r o n e g a t i v i t y  o f  c o o r ‑ d i n a t e d  m e t a l i o n  and dyebath c o n c e n t r a t i o n .   I n  t h e  low dyebath c o n c e n t r a t i o n   as 0 . 5  x  1 0 ‑

molj1 ,  most p a r t  o f  d i f f u s i o n   c o n s i s t  o f  t h e  I  type  and as  t h e   dyebath c o n c e n t r a t i o n  i n c r e a s e ,  N t y p e   d i f f u s i o n   i n c r e a s e   r a p i d l y .   80 ,  t h e   mechanism o f  dyeing o f  metal complex dyes i s   apparen t 1 y sim i 1 ar t o  Freund‑

l i c h  type i n  theωse o f  u s u a l  dyebath c o n c e n t r a t i o n .  

1 緒 言

1 : 2型金属錯塩染料はその良好な染着性,竪ロウ 性から羊毛あるいはナイロン用染料として多用されて いるo

L

かしながら,その染料構造が非常に複雑であ ることから, 染着機構についての詳細な報告は

B a c k

Z o l l i n g e r

1

) ベ

Gilesらヘ

S t a r i k o v i c h

ら ペ 菅 野 と飯島5)などの他あまり見当らない。

B a c k

ら及びGilesらはその等温吸着曲線をイオン吸 着によるラγグミュア型(以下 I型という〉と分散吸着 骨繊維染料学科梢大学院学生

による分配直線型〈以下N型という〉の複合したいわ ゆる

H

型であると述べているのに対し

S t a r i k o v i c h

ら,菅野らはN型の寄与が主であると報告しているo

染着機構の考察には等温平衡吸着実験による平衡論 的研究と共に繊維基質中への等温拡散実験による速度 論的研究が非常に有力な手段である。等温拡散の測定 にはいろいろな方法があるが,関戸ら6)によって考案 されたフィルム巻層法は操作が簡単で、しかも精度が高 く最近よく用いられており,菅野らめ及び著者らわも この方法をナイロンに対して用いているo

(3)

ところで1:2型金属錯塩染料の染着機構が難解な のは先に述べたようなその染料構造の複雑なことの他 に高純度の精製が困難であることや,染料の羊毛及び ナイロンに対する親和性が極めて大きく染着量が非常 に多いことなどが挙げられるであろうO 著者らおは先 に活性アノレミナカラム液体クロマトグラフィーと電気 泳動法を併用することによって染料を純度良く精製し 得ることを示し,さらに以下に述べるような染色装置 を考案することにより 6~9 日聞の長時間にわたって 染浴濃度を一定に保っすなわち無限染浴条件を満たし 非常に低染浴濃度での染色実験を行ない得ることを報 告した9)

また,現在用いられている 1: 2型金属錯塩染料の 大多数はクロムイオンを配位金属イオンとするもので あり, 6配位クロム錯塩の極めて高い安定度の故にそ の染料とLての優れた染着性,堅ロウ性も得られてい るのであるが,他方生活環境保全の見地よりすれば,

それらの合成面を含めてクロムイオンに代えて他の金 属イオンを使用することが望ましし、。他の金属イオン としてはコバルト,ニッケル,銅等のイオンが用いら しているが8) 10¥ これらはL、ずれも遷移金属イオγで あり,典型金属のイオンは安定度等の問題からあまり 使用されていない。

本報においては最も構造の簡単な 00'ージオキシベ γゼンアゾナフタリ γ系の配位子にクロム及びコバル トと典型金属であるアルミニウムの各イオンを配位せ しめ,若干の対称1: 2型金属錯塩染料を合成し, フ ィルム巻層法を用いてそれらのナイロγフィノレム中へ の拡散挙動を比較考察した結果について報告する。

2 試料及び実験の方法

2 ・ 1

染 料

配位子アゾ化合物として次の1.

1

を合成し,これ OH  HO 

/ 、一一〆 ベ ‑ ー ‑ 〉 一 ¥(1)

日 一 日

¥一一〆

/  / ¥ ( 1 )  

R= S02NH2 

¥一一〆

図1 配位子アゾ化合物

らをそれぞれ酢酸クロムCr(OCOCHS)3• H20, 酢 酸 コバルト Co(OCOCH3)2

4H20及び可溶性酢酸アル ミニウムAl(OCOCH3)3• A1(S04)3と処理して図2 のような対称 1:2型金属錯塩染料を得た。 これらの アゾ化合物,染料の合成法,精製法はいずれも既報8)

のとおりであり,得られた染料の可視部における最大

H n 

M

H''s 

n n 

ErEDFazrEO 

F U C A C C  

EF

一 一 勾

一 ‑

︒白川州

b h

LUHr

e H  

BISEBEE'a'SEEEl

EaEE

V O D O R

MLf

t M

12 Ml

M

k ' U

R Q 0 0 0  

図2 使 用 染 料 表1 怖仰と分析結果

mp 

l u F ‑ ) i l

計算値

アゾ化合物

1 1

188‑9

‑Cr 

>400 

1

8附 ! 9旧

‑Co 

>400 

I  1 

‑Al 

>400 

アゾ化合物

1 1

7

H‑Cr 

>400 

6. 76 

7.08  ll‑Co 

>400 

I  o  1 

7. 50 

7.95 

吸収波長〈んω〉及び金属分析結果は表1のとおりで あるo

また,比較の為酸性染料Orangell(以下 ORHと 略す) と分散染料 DispersolFast Scarlet B (以下 DFSBと略す〉をいずれも精製して使用した。なお,

用いた試薬はいずれも市原1級試薬であるo

2 ・ 2

供試フィルム

ユニチカ製二軸延伸ナイロン6フィルム(BN#2500, タイプ200)をサンモールO持120,0.5 %水溶液で80 OC, 30分処理した後アルコール及びエーテルで洗浄

して使用した。このフィルムの平均膜厚は25μ(膜 厚 の測定は高分子計器製作所製薄膜用特型測厚器を用L、 て行なった〉であれ末端アミノ基含量は3.81XlO‑5 moll!l  (mークレゾーノレに溶解し, アルコール性塩酸 で滴定して求めた), 65% RH, 200Cにおける含水率 は2.76%であるo

2 ・ 3

染色方法と染費量の決定

フィノレム巻層はフィルムを押し出し方向に沿って3 X100cmの大きさに切り取り蒸留水中で80oC, 1時間 処理した後直径1cmのガラス管に巻きつけ巻層を作製

した。

次に染色装置は既報9)のとおり無限染浴条件を保つ ため図3のような装置を使用したo

フィルム巻層を内容積3

o

の染色フラスコ (C)内

(4)

; ::  Reservoir : ・:

三 三 日 A :.:.:.~~~~

図3 染 色 仁三〉

E f f l u e n t  

装 置

に吊るし回転させる。染料溶液約50

e .

を (A)に入れ ておき,所定温度 (800C)の恒温槽内のパイプ (B) の中で恒温にした後 (C)に流し込み最後に(D)を経 て排出する。染料溶液の流量を適当に調整することに よって染色開始から終了まで (C)内の染料濃度をほ ぼ一定に保つことが出来るo染色終了後,フィルム巻 層を取り出し,素早く巻層を聞き

F

紙に挟んで乾燥し た後各層から一定量のフィルムを切り取り,ギ酸に溶 解しジオキサンまたはアセトンで希釈し目立分光々度 計101型を用いて予め作製しておいた検量線から染着 量を定量した。

(ト

C r )

(叫

10  [D]s: 0.5 

x  10

s m o Y l

1 S  

図4

実 験 結 果

実験はすべて800Cで行なったが, これらの染料の 染色平衡に達する時間は非常に長くほぼ144時間 (6

日間〉を要する。そこで拡散実験はし、ずれも72時間及 び144時間,一部については216時間の染色で、行なっ た。但し, ORH及びDFSBは染色平衡に達する時闘 が短いので拡散実験も24時間及び48時間で行なった。

(I・Cr)

‑0‑: (a) [D]s= O.5x10‑srnolA 

‑ロ・ー (b) " 

2.0 

‑'‑A‑'‑: (c) 8.3 Oyeing  : 6days, BO.C. 

図5

(  1  ‑Co) 

皿+ー

(a)[D

J s =

O.5xfO‑Smolll 

‑0

ーー{防 2.0 

(  1  ‑A l  ) 

… 企 … [0]5=2.0x105moYL 6days

,  8 0

0

10  15 

N o .  o f  

Layer 

図6 Co錯塩染料とAl錯塩染料の拡散プロフィル

(5)

巻層フィルムによる拡散測定の結果,それぞれの場 合における層数と染着量の関係の例は図4.‑....図8のと おりである。

巻層フィルム法による拡散プロフィルからの拡散係 数の算出には次の2通りの方法が適用されている11)。 一般的な方法はM2.tanoの方法12)で、あって(1)式によっ て計算されるが,この方法は拡散プロフィルがBox型

(  n  ‑ Cr ) 

‑0‑

(a) 凶[s=O.5Xl0Smol/l

̲ . ‑ ・ 一

(b)0]5

6.2. 

(II‑Co) 

…込… [D]5=Q.5x 10Smolll 6 days

, 

80

・ c

1 5  

図7

8

〈非Fick型〉である時すなわち拡散係数が濃度に依存 するとする時多く用いられてし、る。

(一一一)

dx¥f 

clxdc  …‑…・・(1) 2t¥dc )J 

相対濃度c(各層の染着量/平衡染着量〉とη(=x/

2vt, xは表面からの距離 tは染色時間)の関係を 図上にプロットし,得られたグラフについて図上で徴 分及び積分を行なって相対濃度Clにおける拡散係数 Da=引を求めcとDaの関係を図に描きc=0へ外挿し て無限希釈における拡散係数Doを求めるo

また,拡散係数が濃度に依存しないとする時すなわ ちFick型の拡散プロフィルを与える時は一般に関 戸,松井の方法山が適用される。すなわち

( 2 )

式の関係 を示すグラフからζを求め, (3)式から拡散係数Dを 求めるo

Ci+l  ̲ ierfci( ‑ierfci+ 1と Ci  ierfci ‑1 (‑ierfciと

(i= 1

, 

2HH・..n) ・HH・‑・(2) ここで、

F﹂ '

Ju 

p

c r e 

x

= t  

f j :

一 一

D

一 一

e一

/V

E一2C

d

=  

・ か

F

故に

D=~ ・ 1 ・ 1 ・H・-・(3)

(2 

但し, εはフィルムの厚さ(cm),tは染色時間(min), 

Ci, Ci+lはそれぞれ i層目 .i+ 1層自の平均染着量。

それぞれの場合の拡散係数を求めるに当って, ま ず平衡染着量として同じ染浴中に加えておいたフィル ム片の染着量を用い前記の両者の方法でそれぞれ拡散 係数Do及びDを計算した。この際第1層の染着量に は染料の会合等の影響があるので除き第2層以下を使 用した。拡散の全プロフィルから得られた拡散係数は 表2中にH typeとして示しであるが,染浴濃度が低 い時はDa‑c曲線に極大値が生ずる(図11)。また,

(2), (3)式による取扱いをした場合, i= 2.‑....6の範囲 でのと値のパラッキが大きく,染浴濃度が高い場合も Do値と

D

値の差が大きし、。これらの事と上に述べた Da‑c曲線の極大値を与えるcの値がほぼ平衡染着量 に対するアミノ末端基当量(塩酸の飽和吸着量〉の比 に等しいことなどから,これらの染料の染着機構が単 一のものでは無くI型とN型の両者を含むものと考え

ることが出来る。

そこでこれらのプロフィルを塩酸の飽和吸着量3.70 X 1O‑5moI! fJを表面濃度とするBox型 (1型染着部 分〉 とそれ以外のFick型 (N型染着部分〉とに分割

(6)

した。分割に当っては森田ら山の直接染料のナイロγ 中への拡散の場合の方法に従って行なった。分割の例 を図9に示す。他の場合についても同様の分割を行な い,いずれも

I

部分については

{ 1 }

式によって

D o

を求 め

N

部分については

( 1 )

式による

D o

( 2 )

,(3}式によ るDの両者を計算した。その際N部分については2層 目以下の染着量から制式13)によって表面濃度 C¥)を求 め,その例を図9のN部分に破線で示した。

主主=~一(ierfci

C ‑1 

,一位

fciC)

, 

, 

(i= 

1

2

3

,…n) ・HH

" ( 4 )

I N  

&L 

WHm

AJFhVAV 

M F m ' V J

.. 

円 ﹂

︐ ︐ ︑

ケ 任 十 目 ﹁

und 

0‑0 (I ‑Cr)(a)

days 

主 1 . 5

0.5 

Relative Concentration (c)  1 .0 

1 1

D(c)c曲 線 の 例

結果を表2にそれぞれ1type, N typeとして示し たが,両部分のcーη曲線の例を図

1 0

に,また Doc曲 線の例を図

1 1

に示す。表

2

中のI/

H%

は全拡散染料 中に占めるI部分の割合であり,従ってN部分の割合 は

100%‑I(H%

となるQ

図10 c‑η 曲 線 の 例

4

考 察

1 ; 2型金属錯塩染料の染色において,一般に染浴 中には染料分子の会合体が存在するとされているの で,染色したフィルムの表面への染料会合体の吸着が 考えられるo従ってフィルム片によって測定した平衡 吸着等温線は図12に例示するように一見ブロインドリ

ッヒ型を呈L,巻層フィルムの第1 層目と第2層目の染着量の差が極め て大きくなるoこ れ は 染 料 の 親 水 性,疎水性に密接に関係し,疎水性 が大きくなる程その影響は顕著にな るQ これらのことは染俗にエタノー ルを加えて染浴内の染料分子の会合 を少なくすると第1層目への染着量 が減少することからも裏付けられ るoちなみに25%エタノールを含ん だ染浴からの (I‑Cr)の拡散係数 ((D)s=2.0XlO‑5mol! 

o .  

800C)  は そ れ ぞ れI部 分 のDo=2.05X 10‑8, N部分のDo=O.90XlO‑S,D 

= 0.87 X 1O‑8cm2/minであり I/H=

レ の 分 室 口

.

b e  

e

VJ   k

し プ

5 F

σ

n v 

M

n u

dw

h wE

1 . 0 , ‑ . ̲  

¥.、 (1Cr)同 一 一 typeH 

、 ¥ 一 . ‑

component 1 

\\~

¥ ¥  

¥ ¥  

¥ ¥  

¥ ¥  

、 ¥ ¥

¥ 

、、ごと::‑‑¥¥¥

10  15 

t z

 

1 0

C",州諸

.... 、

、~U  c o 

咋 d

~

噌d

Q) 

~O.5

υ

(7)

表2 拡散係数とI/H%(800C) 

染 (CJs  Type H  TypeI  Type N  CAin i m A i n I C A i n I A n l m 2

in

mo1/

 

 

e .

I/H 

I‑Cr 

0.5XlO‑5 I1.26X 10‑8 

0.66X10‑8 0.54XlO‑8 

0.54XlO‑8 

70 

2.0~ ※ I 1.33 I 0.72 I 0.54 I0.54 55 c I 8.3

I3.70XlO‑81 1.36 

~

10.72

タ ¥

0.60 

~

0.56 

~ ¥ < <  

I‑Co 

5~ I

I  126~ I 

80~ I 

20

I 017~ I 

87 

2.0  ~※ I 1.25 I0.78 I0.19 I0.16  ~ 67  I‑Al 

H‑Cr 

83  83  57  H‑Co 

OR 

│0.5 

~

1

1.39 

~I

0.80 

~

│10.0

I

20.0X1

‑ 1 │ ‑ 1  

│ 0.27 

~

0.23 

~

86 

DFSB 

8.4

9.41X10

サ │ ‑ 1  

※ Dc町 一c曲線にピークが生じたもの

40  E  ぞ

30

0'1 

、 。

ε  / 

/  ~

1 0   [ 0 ] 5   x  1 0

mOlll 

65%である。そこで前述のように拡 散係数を求めるに当って第1層を除 外し第2層目以下を用いた結果,表 2に示したようにどの染料もI部 分,

N

部分共それぞれ染浴濃度によ らず拡散係数はほぼ一定であり, N 部分のDoとDもほぼ一致した値を 与えた。これらの拡散係数について 考察すると, まずI部分のDoにつ いてはどの染料もあまり差がなく配 位金属イオンの違いによってCr, Co.  Alの順に若干大きくなるが,

これらの値はORHのほぼ1130であ って酸性染料と比較して非常に拡散 し難いことが分る。

N

部分のDo及 びDについても一般の分散染料と比 較すると非常に小さいが,染料によ ってもかなり異なり染料の親水性が

増す即ちI/H泊。値が大きくなるに 図12

( 1  

‑Cr)の吸着等温線(800C,144時間〉

つれて小さくなっている。

次にこの分割した両部分についてもう少し詳しく検 討するため拡散フ。ロフイノレからI部分及びN部分の全 拡散染料量を求めPattersonとSheldon15Jの式(5)にあ

Ct=K/t(Ct=時間tにおける染着量〉

(5)

てはめ染色時間の平方根に対してプロットしたo図13 にその例を示すが全拡散染料量I(D]jが(5)式のCtに 対応するものである。図から分るようにいずれの場合 も6日間〈〆t

92. 9min1/2)染色まで良好な直線性

を示している。

(8)

‑ @  

o E  '"

  10 

←  

図13

1

部分及びN部分の全拡散染料量 と染色時間の関係 (800C)

また,I, N両部分の割合を示すI/H %は染料の親 水性,疎水性の度合を示すものであり,先にも述べた ごとく染料の親水性が大きい程l/H%は大きくなるO

さらに同一染料であっても染浴濃度によってその値は 異なり染浴濃度が低い程I/H%は大きくなる。染浴濃 度とI/H%の関係の例を図14に示したが,染俗濃度の 対数とl/H%はほぼ直線関係を与え,この (l‑Cr)の 場合染浴濃度が約 41O‑5mo1/ 

e .

のところで両部分

1 . 0 

zo

。 ¥ ¥ ¥

¥ ¥ ¥ O

、 ド

nu  

T

00 26 E

ー5 ‑4  l09 [O)S 

図14染浴濃度と

( 1

‑Cr)のl/Hの関係 (800C)

の割合はほぼ等しくなるo

これらのことから次のような機構が推定出来る。す なわち

1:  2

型金属錯塩染料の場合,染浴内におい ては染料分子の一部がイオン解離し,非解離染料と平 衡を保っているoナイロン分子は中性染浴内で両性イ オン Zwitterion構造をとっていると考えられる16)17>ので,この染浴中にナイロンが加えられるとそのア

ミノ末端基への解離染料分子のイオン吸着とその他の 場所への非解離染料の分散吸着とが競合して起るであ ろうoこの両者の拡散速度は表2からも分るようにI 型の方が若干大きいので,イオン吸着の方が僅かに起

りやすしそれに伴なって染浴内の平衡はイオン解離 側にずれて行くと考えられるo従って染浴濃度の低い 場合にはこのイオン吸着による I型機構が大きく表わ れるのであるが,イオン吸着の座席(アミノ末端基当 量〉は限りがあるので染浴濃度が高くなるとイオン吸 着以外の吸着 (N型〉の方が多くなり,これに会合染 料分子の表面吸着が加わり N型機構が優勢となると考 えられるo

次に配位金属イオンについてこれらの機構を考察し てみると,その染料の立体構造的にはし、ずれもDrew‑

Pfitzner型の直交正8面体酌で、あって違いはないので、

あるが,その金属イオンの電気陰性度の大きさによっ て周囲の配位座原子への影響は異なり,従って染料分 子全体の性質もかなり異なってくるoそこで配位結合 の混成軌道を考慮に入れて求めてある Mullikenの電 気陰性度XMから(6)式によってPaulingの電気陰性度 と対応させてあるXp山の値を用いてCr,Co, Alそれ ぞれの錯塩染料の同一染浴濃度におけるl/Hの値及び

1 .

A l  

O

一 宇

¥¥Co 

. 今 止 ¥3

¥ ¥  

O@n

ヨ 凶 ・ ヨ Z ︐

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n u n 3 0 E   4 E H n u n u  

1 .

1 0 

F3

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H

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︑ ﹄ ︐

¥

hu

︑︑ 庄

A︑

0.7 

5  Xp 

図15配位金属イオγの電気陰性度とI庁I 及び

I

部分のDoの関係

((DJs=2.0XlO‑5molj ß~ 800C) 

(9)

xp=0.336(XM ‑O. 615)  (6) I型のDo値との関係を示したのが図15であるoCr,  Co, Al11慣にI/Hの値が大きくなり,またI型のDo 値も増大することはこの順に染料の親水性,イオン解 離度が大きくなることを示しているが,この図から分 るようにI/H.Do共Xpとほぼ直線関係を示し配位金 属イオンの電気陰性度が,これらの染料の染色性に密 接な関係を有することが認められる。

5 総 括

以上の結果を総括して 1:2型金属錯塩染料のナ イロンフィルム中への拡散挙動はイオン解離した染料 分子のイオン吸着による I型機構と非解離染料分子の 分散吸着によるN型機構との複合したものであり,両 機構の割合は染料の性質,染浴濃度によって大きな影 響を受ける。すなわち配位金属イオンでは金属イオン の配位結合状態における電気陰性度が染料の性質に関 与し, Cr, Co.  Alの順に, また,親水性の基を染料 母体に導入することによって染料の親水性が増大し I 型機構の寄与が増加する。次にI型のDoはN型のそ れと比較して若干大きいこと,染浴内での染料分子の イオン解離状態,会合染料分子の存在等から染浴濃度 が低い場合にはI型機構が強く表われ,染浴濃度が高 くなるにつれ N 型機構が急激に増加する。 このため 1 X 1O‑4mo

1 !  . e

程度以上の染浴濃度ではその染着挙 動は見かけ上分散染料の挙動に近くなるのであると考 えられるD

終りにフィルムを賜わったユニチカ株式会社に厚く 感謝の意を表します。

参 考 文 献

1)  G. Back, H. Zollinger, Melliand Textilber. 37 1316  (1956) 

2)  G. Back, H, Zollinger, Helv. Chim. Acta, 412242  (1958), 42  1526, 1539, 1553 (1959) 

3)  C. H. Giles, T. H. MacEwan, J.  Chem. Soc.,  (1959)  1791 

4)  E. E. Starikovich, A. A. Kharkharov, Tekhnol.  Teksti1. Prom, 2464 (1964) (C. A. 61  13470(1964)),  25 58 (1965) (C. A. 63 16518 (1965)) 

5) 菅野勝男,飯島俊郎,織学誌,26  117 (1970) 

6)関 戸 実 , 学 振120委年次報告, 113(1953), 75(1954),  56 (1955), 39 (1956)他.

7)  木村光雄,高橋哲夫,福井大繊研報告675 (1968)  8)  木村光雄福井大織研報告, 67 (1968)  9) 木村光雄,吉江重二, ~育水融,繊学誌,印刷中,

10) 木村光雄他,工化誌, 67 1597 (1964), 68 512, 1915 (1965)  11)  関戸実,森田全三,染色工業, 13  103 (1965)  12) C. Matano, Japanese J.  Phys., 109 (1932)  13)関 戸 実 , 松 井 健 一 , 繊 学 誌 20778 (1964) 

14)森田全三,飯島俊郎,吉田継夫,関戸実,工化誌.70 180  (1弼7)

15) D.Patterson. R. P Sheldon , Trans. Faraday Soc.,  55 1254 (1959) 

16) 高分子学会編 iiじ学繊維の染色と加工J1>104.地人書館,

東京(1966)

17)木村光雄,清水融,未発表.

18) G. Sch~tty , Am. Dyestuff Reptr., 54 589 (1965)  19)  J.  Hinze, H. H. Jaffe,  JAm. Chem. Soc., 84 

540 (1962), J.  Hinze, M. A. Whitehead, H. H. 

Jaffe, ibid., 85 148 (1963) 

(昭和47414日受理〉

表 2 拡散係数と I/H% ( 8 0 0 C )  

参照

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