1) 筑波大学体育系
〒3058574 茨城県つくば市天王台 111 2) NPO 法人 AS. Laranja
〒6010251 京都府京都市右京区京北周山町高梨 子12
連絡先 苅山 靖
1. Faculty of Health and Sport Sciences, University of Tsukuba
111, Tennodai, Tsukuba, Ibaraki 3058574 2. Speciˆed Nonproˆt Corporation AS. Laranja
12, Takanasi, Keihoku Shuzancho, Ukyo-ku Kyoto-shi, Kyoto, 6010251
Corresponding author y_kariyama@yahoo.co.jp
サッカーのインステップキックにおけるボール速度に影響する
支持脚の筋力およびジャンプ能力助走速度の相違に着目して
苅山 靖1) 渡来 真人2) 図子 浩二1)
Yasushi Kariyama1, Masato Watarai2and Koji Zushi1: Muscle strength and jump ability of the support-ing leg in relation to ball speed dursupport-ing instep kicks in soccer, focussupport-ing on diŠerences in approach speed. Japan J. Phys. Educ. Hlth. Sport Sci. 59: 755770, December, 2014
AbstractThis study aimed to clarify the importance of strength and jump ability of both the kicking and supporting legs for increasing the speed of a soccer ball during instep kicks at various approach speeds. Twelve male university soccer players performed instep kicks using diŠerent approach lengths (1 m, 3 m, 7 m, and free length). Maximal isokinetic and concentric muscular strength was measured in terms of knee extension/‰exion, hip extension/‰exion, and hip abduction/adduction using an isokinetic dynamometer. Jump ability was measured using countermovement jump, double-leg rebound jump, and single-leg rebound jump with the kicking leg and supporting leg. For the instep kick, kinematic and kinetic data were recorded using the Vicon T20 system (250 Hz) and force platforms (1000 Hz). The results of the analyses were as follows:
1. The approach speed increased as the approach length increased. Moreover, the time between the moment when the foot touched the ground and the moment of ball impact became shortened, and the ground reaction force at all axes increased as the approach speed increased.
2. Foot speed under all the approach conditions was correlated with hip extension and the abduc-tion strength of the supporting leg.
3. Foot speed for the 3 m, 7 m, and free-length conditions was correlated with the rebound jump ability of the supporting leg. Moreover, foot speeds for the 3 m, 7 m, and free-length conditions was cor-related with hip adduction strength of the supporting leg.
4. Similar results were obtained for relative foot speed (calculated by dividing foot speed by the speed of the body's center of gravity at the moment of ball impact).
5. The rate of change in the relative foot velocity (for an approach of 1 m to 7 m) was correlated with the rebound jump ability of the supporting leg.
These results suggest that it is important to improve hip extension and the abduction strength of the supporting leg in order to increase the ball speed, regardless of the approach speed. In addition, it is important to improve the hip adduction strength, especially the rebound jump ability of the supporting leg in order to increase the ball speed when a high approach speed is employed.
Key wordsplyometrics, hip abductor muscles, jump, single leg キーワードプライオメトリクス,股関節外転筋群,跳躍,片脚
緒
言
サッカーにおいてインステップキックはゲーム 中の様々な場面で用いられており,それによる ボール速度を高めることはシュートの成功率を上 げるだけでなく,中,長距離のパス,ディフェン スのクリアなどにおいて優位にゲームを展開する 上で重要になる. インステップキックによるボール速度を高める ためには,蹴り脚のスイング速度を高め,ボール インパクト時における足部速度を大きくすること が要求される(Lees and Nolan, 1998; Lees et al., 2010).そのために,これまで高い足部速度の獲 得に関して行われてきた研究は蹴り脚を対象とし たものが大部分であった(Lees and Nolan, 1998; Kellis and Katis, 2007; Lees et al., 2010).しかし ながら,インステップキックはまず支持脚を踏み 込むことから始まるために,この踏み込み無くし ては蹴り脚を高速で振り込むことができないと考 えられる.すなわち,支持脚も最終的な足部速度 を高めることに大きく影響していることが推察で きる.このことから近年では,支持脚に関する研 究が注目されていると共にその重要性が指摘され 始めている(Masuda et al., 2005福井ほか, 2007; OrloŠ et al., 2008; Katis and Kellis, 2010; Inoue et al., 2014).インステップキックは,助走により得られた速 度(運動量)を支持脚により受け止めることから 始まり,身体へは鉛直成分だけでみても体重のお よそ 2―3 倍もの大きな地面反力が作用すること になる(OrloŠ et al., 2008; Katis and Kellis, 2010).また,支持脚接地中では,片脚において 身体を支持することや,身体が支持脚側に傾くこ と か ら , 下 肢 3 関 節 の 屈 曲 伸 展 運 動 だ け で な く,特に股関節における内外転運動を制御する筋 群が機能していることが予測される.これらのこ とから,インステップキックにおいて高いボール 速度を獲得するためには,身体を支持するための 支持脚による筋群が大きな筋力を発揮できること が重要になると考えられる.それに加えて,支持 脚における主要筋群の筋収縮様式に着目すると, それらは支持脚の接地と共に伸張し,その後短縮 する伸張短縮サイクル(SSC: Stretch-Shorten-ing Cycle)運動によって大きな力を瞬間的に発 揮していることが推察できる.SSC 運動により 大きな力発揮を行っている代表的な運動としては ジャンプ運動が挙げられ,このジャンプ運動はス プリント走や各種フットワークなど SSC 運動が 内在するスポーツのパフォーマンスと密接な関係 にあることが報告されている(Chelly and Denis, 2001; Bret et al., 2002図子ほか,1993有賀ほ か,2012苅山・図子,2013a).これらのこと から判断すると,インステップキックにおける支 持脚では SSC 運動による大きな筋力発揮能力を 有していることが重要であり,ジャンプ運動に類 似した筋力発揮の優劣がボール速度を高めるため に影響している可能性がある.しかしながら,こ れまでのボール速度と支持脚の脚筋力との関係性 について検討した研究は少なく(Masuda et al., 2005),さらにジャンプ能力との関係性について 検討したものは見当たらない. また,フリーキックやペナルティーキックなど のディフェンス側の制限がない場合においては, 高いボール速度を獲得するために助走距離の長い 助走が用いられている.このような条件下では身 体の持つ運動量が大きいために,支持脚接地時に は支持脚においてより大きな力発揮が要求される ことが予想されるものの,これまでに,助走速度 の増大に伴って支持脚に要求される筋力やジャン プ能力がどのように変化するかについては検討さ れていない.これらの未解決の事項を究明するこ とは,インステップキックにおけるボール速度向 上のための支持脚に対する筋力・パワートレーニ ング法を考案するための際の有益な知見になるこ とが考えられる. そこで本研究では,サッカーのインステップキ ック時におけるボール速度に影響する支持脚の筋 力やジャンプ能力について,助走速度の相違に着 目して明らかにすることを目的とした.なお, ボール速度を獲得するためには足部速度の獲得が 前提条件になること,足部速度をボール速度へ
Table 1 Subject characteristics
Number (years)Age Body height(cm) Body weight(kg) Athletic history(years) Subjects 12 20.3±13.0 170.8±4.4 66.8±4.3 12.8±1.9
変 換 す る に は イ ン パ ク ト 技 術 が 影 響 す る こ と (Lees and Nolan, 1998; Lees et al., 2010)を考慮 して,本研究ではボール速度ではなく足部速度を 用い,それと筋力やジャンプ能力との関係性につ いて検討することで目的の達成を目指した.
方
法
. 被検者 被検者は,体育系大学サッカー部に所属する男 子サッカー選手12名(Table 1)とした.実験を 開始するにあたり,すべての被検者に本研究の目 的,方法および実験にともなう安全性を十分に説 明し,実験参加のための同意を得た.被検者へ は,事前に実験試技に関する説明を行い,十分に 練習を行わせた. . 実験運動と測定および算出方法 1) インステップキック動作の測定 実験設定 被検者には,十分なウォーミングアップの後, ボールから 1 m, 3 m および 7 m の助走距離(以 下「1 m 条件」,「3 m 条件」,「7 m 条件」と略す), さらに被検者の自由な助走距離(以下「Free 条 件」と略す)の 4 種類の助走条件を用いて,助 走 路 の 延 長 線 上 に 設 置 し た ゴ ー ル 型 の ネ ッ ト (ボールから 5 m 前方)に向けて,最大努力でイ ンステップキックを行わせた.ボールはフォース プレート中央側方に置き,キック時には支持脚を フォースプレート上に踏み込むように指示した. また,それぞれの助走条件においてフォームを崩 さず,かつ 5 段階評価における被検者の内省が 4 以上の試技が 2 試技得られるまで各助走条件で 実施させた.得られた成功試技の内,後述する足 部速度が高い値を示したものを分析対象とした. 試技間には疲労の影響を無くすために十分な休息 をとらせた.これらインステップキックの測定 は,上述の実験設定を支障なく行うことのできる 広い実験施設内で実施した. 測定方法 インステップキックの動作を 3 次元分析する ために,赤外線カメラ10台(Vicon Motion Sys-tems 社製,Vicon MX+)を用いて,身体計測 点47点およびボール計測点 4 点,計51点の 3 次 元座標データを250 Hz で収集した.地面反力は フォースプレート(Kistler 社製,9287B)を用 いて1,000 Hz で計測し,各センサ出力を A/D 変 換ボードによってコンピュータに取り込んだ.静 止座標系は,助走の進行方向に対して水平左右方 向を X 成分,水平前後方向を Y 成分,鉛直上下 方向を Z 成分と定義した. 算出方法 ◯ 関節角度,関節トルク 本研究では,運動自由度を 3 として,14の関 節によって連結された15の剛体セグメントモデ ルを用いて全身をモデル化した.各セグメントの 重心位置,質量,慣性モーメント等の慣性パラ メータについては,阿江ほか(1996)の身体部 分慣性係数を用いて算出した.そして,画像より 得られた身体座標点の 3 次元座標値と,フォー スプラットフォームにより計測された地面反力 データを用いて逆動力学的計算を行い,支持脚に おける膝関節屈曲伸展軸,股関節屈曲伸展軸およ び内外転軸まわりにおける関節トルクを算出し た.さらに,これらの軸まわりにおける関節角度 を算出し,それを時間微分することで角速度を算 出した.なお,これらの算出に用いた座標系およ び関節角度定義は,苅山ほか(2013)と同様で ある. 地面反力および全ての関節トルクは,体重あたりの相対値として算出した.また関節角速度およ び関節トルクに関しては,すべての試技において 被検者が支持脚接地からボールインパクトまでの 局面に要した時間を100としてデータを規格化 し,1毎に平均化した.これらの算出に関しては, Wells and Winter(1980)の方法を用いて,身体 各部の分析点毎に最適遮断周波数(5―35 Hz) を 決 定 し , 4 次 の 位 相 ず れ の な い Butterworth digital ˆlter による平滑化を行った. ◯ 足部速度,ボール速度および助走速度 支持脚接地からボールインパクトまでの時間 は,鉛直地面反力が各被検者の体重 3以上にな った時点からボール速度が上昇し始めた時点まで とした.助走速度は支持脚接地時における身体重 心速度,足部速度はボールインパクト時の足部重 心速度とした.また,身体重心速度の影響を除い た正味の足部速度として,足部速度からボールイ ンパクト時の身体重心速度を減じて相対足部速度 を算出した.これらの速度は,各時点における静 止座標系の 3 成分の速度ベクトルにおける平方 和の平方根とした. インステップキックでは,助走を用いることで 足部速度を高めることができるが,助走速度の増 大に伴ってそれは困難になることが予想される. 本研究では,個人内において,増大する助走速度 に対して足部速度を高めることができる下肢の筋 力やジャンプ能力について検討するために,足部 速度および相対足部速度それぞれにおいて 1 m 条件から 7 m 条件への変化率を算出した. 足部速度および身体重心速度の算出において は,収集された 3 次元データについて,ボール インパクト後のデータを取り除き,ボールインパ ク ト 前 30 フ レ ー ム の デ ー タ を 反 転 し た も の を ボールインパクト後に挿入し,それを時間で数値 微 分し た も の か ら算 出 し た (Shinkai et al., 2009).ボール速度については,ボールに貼付し た 4 点 の マ ー カ ー か ら ボ ー ル 中 心 を 算 出 し , ボールが足部から離れた後の 5 フレームの平均 速度とした.ボール速度の算出においても他の速 度変数と同様,静止座標系の 3 成分の速度ベク トルにおける平方和の平方根として算出した. 2) 等速性筋力の測定 下肢の筋力を測定するために,多用途筋機能評 価運動装置(System 4, Biodex 社製)を用いた. 蹴り脚と支持脚それぞれにおいて,短縮性の膝関 節伸展筋力と屈曲筋力,股関節伸展筋力と屈曲筋 力を60, 180および300°/s の 3 つの角速度で実施 した.股関節外転筋力と内転筋力においては, 4.19 rad/s(240°/s)よりも高い角速度条件では 股関節外内転筋力を精度よく計測できないという 報告(Masuda et al., 2005)に基づき,60および 180°/sec の 2 つの角速度で実施した.これらの 筋力測定は,十分なウォーミングアップの後,各 試技条件それぞれにおいて最大努力で 5 回実施 させ,その際の最大値(ピークトルク)を分析対 象とした. 膝関節の伸展および屈曲筋力測定での肢位は椅 座位とし,シートに座った被検者の上半身,骨盤 部および測定脚の大腿部を専用のベルトでシート に固定した.ダイナモメーターの回転軸に膝関節 の回転中心をアームの長さを調節して合わせ,足 関節上部を専用パッドで固定した.可動範囲は, 最大伸展位を 0°とし,そこから屈曲方向に90°ま でとした. 股関節伸展および屈曲筋力測定での肢位はベッ ド上仰臥位とし,シート上で被検者の胸部,骨盤 部および非測定脚を専用のベルトでシートに固定 した.ダイナモメーターの回転軸に大転子を合わ せ,測定脚の膝関節上部を専用パッドでアームに 固定した.可動範囲は,股関節伸展位を 0°とし てそこから屈曲方向に120°までとした. 股関節外転および内転筋力測定での肢位はベッ ド上側臥位とし,シート上で被検者の胸部および 骨盤部を専用のベルトでシートに固定した.ダイ ナモメーターの回転軸に大転子を合わせ,測定脚 の膝関節上部を専用パッドでアームに固定した. 可動範囲は,シートと大腿部のなす角度が 0°の 位置から外転方向に45°までとした. 3) ジャンプ能力の測定 ジャンプ能力の測定として,十分なウォーミン グ ア ッ プ の 後 , 両 脚 踏 切 の 垂 直 跳 ( Counter-Movement Jump: CMJ),両脚踏切のリバウンド
Table 2 Foot speed, ball speed and approach speed in various instep kicks
1 m 3 m 7 m Free DiŠerences Ball speed (m/s) 23.48±1.22 26.81±1.10 28.46±0.96 27.28±1.03 1 m<3 m, Free<7 m Foot speed (m/s) 17.92±0.97 20.44±0.74 22.08±0.98 20.98±0.98 1 m<3 m, Free<7 m Relative foot speed (m/s) 16.55±0.97 17.41±0.91 17.45±1.10 17.64±0.97 1 m<3 m, 7 m, Free Approach speed (m/s) 2.24±0.24 4.10±0.14 5.69±0.21 4.49±0.32 1 m<3 m<Free<7 m Touch down-impact time (s) 0.127±0.013 0.116±0.010 0.103±0.009 0.114±0.009 1 m<3 m, Free<7 m <, >: represent a signiˆcantly smaller or larger during one condition than during another condition, p<0.05
ジャンプ(Double-leg Rebound Jump: DRJ),さ ら に 片 脚 踏 切 の リ バ ウ ン ド ジ ャ ン プ を 蹴 り 脚 (Kicking leg Single-leg Rebound Jump: K-SRJ)
と支持脚(Supporting leg Single-leg Rebound Jump: S-SRJ)それぞれで行わせた. CMJ では,立位姿勢からその場でしゃがみ込 みの反動動作を用いてできるだけ高く跳ぶことを 口頭で指示して行わせた.DRJ, K-SRJ および S-SRJ はその場から動作を開始し,5 回連続して 跳躍する運動であり,その際にはできる限り踏切 時間を短くし,できる限り高く跳ぶことを口頭で 指示して行わせた.5 回のジャンプ中において フォームを崩さず,かつ被検者の内省の良かった 試技の中から,後述する RJ-index が最も高い値 を示したものを分析に用いた.なお,すべてのジ ャンプにおいて両手を腰に当てて行わせ,試技間 には疲労の影響を無くすために十分な休息をとら せた.
測定には Multi jump tester(DKH 社製)を用 いてすべての試技における跳躍高と,DRJ, K-SRJ および S-K-SRJ においては RJ-index を以下の 式より算出した. 跳躍高=8-1・9.81・滞空時間2,9.81は重力加 速度(m/s2) RJ-index=跳躍高・踏切時間-1(図子ほか, 1993遠藤ほか,2007). なお,RJ-index を力学的に捉えた際には,踏切 中の力学的パワーとして解釈できる(Tauchi et al., 2008). . 統計処理 各測定項目は平均値±標準偏差で示した.3 群 以上の平均値の差を検定する場合には Bonferro-ni 法を用い,相関係数は Pearson の方法を用い て算出した.なお,有意性は危険率を 5未満で 判定し,10未満を有意傾向として扱った.
結
果
Table 2 には,ボール速度,足部速度,相対足 部速度,助走速度と支持脚接地からボールインパ クトまでの時間について示した.助走距離の増大 に伴って,ボール速度,足部速度および助走速度 においては大きく,支持脚接地からボールインパ クトまでの時間においては短くなることが認めら れた.また,これらの項目について Free 条件は 3 m 条件と同様もしくは大きく,さらに 7 m 条 件よりは小さいことから,3 m 条件と 7 m 条件 の中間的な特徴を示した.一方,相対足部速度に ついては,1 m 条件が他の条件よりも小さいこと が認められた.なお,Table 3 には等速性最大筋 力を,Table 4 には各種ジャンプ能力について示 している. Fig. 1 には,最大地面反力を静止座標系におけ る左右方向,前後方向および鉛直方向それぞれに ついて示した.助走距離が増大することに伴いす べての項目は増大することが認められた.また, Free 条件は,1 m 条件よりも大きく,7 m 条件 よりも小さく,3 m 条件と同様の大きさであった. Table 5 には,足部速度と等速性筋力との相関 関係について示した.蹴り脚においては,1 m 条 件の足部速度と180°/s 条件の股関節伸展筋力,3 m 条件の足部速度と180°/s 条件の股関節内転筋 力,7 m 条件の足部速度と180°/s 条件の股関節Fig. 1 The maximal ground reaction force about lateral, horizontal and vertical directions in various in-step kicks
: represent a signiˆcant diŠerence among various instep kicks, p<0.05 Table 3 Maximal isokinetic strength
Kickking leg Supporting leg Knee (Nm)Extension 60°180°/s 163.89±36.62 168.08±29.45/s 101.68±22.26 102.00±22.87 300°/s 80.09±21.26 76.53±19.28 Flexion 60°/s 88.96±13.37 90.72±15.95 180°/s 62.68±13.32 64.18±18.02 300°/s 54.58±15.90 55.63±18.97 Hip (Nm)Extension 60°180°/s 254.63±40.33 247.47±46.53/s 222.56±36.70 205.51±46.91 300°/s 186.56±44.80 179.35±42.66 Flexion 60°/s 138.24±41.05 140.69±38.75 180°/s 110.83±32.10 112.78±31.75 300°/s 100.46±21.22 101.47±19.94 Abduction 60°/s 115.47±25.54 112.82±27.22 180°/s 92.25±34.13 83.15±22.73 Adduction 60°/s 172.91±28.00 160.82±23.13 180°/s 122.22±34.06 115.36±20.42
Table 4 Ability of various jumps
CMJ DRJ K-SRJ S-SRJ Jump height (m) 0.467±0.392 0.315±0.037 0.188±0.019 0.192±0.026 Contact time (s) ― 0.157±0.019 0.228±0.020 0.236±0.020 RJ-index ― 2.038±0.354 0.833±0.127 0.818±0.147 外転筋力との間において相関関係のみられる傾向 が示された.支持脚においては,1 m 条件の足部 速度と300°/s 条件の股関節伸展筋力,1 m 条件 の足部速度と60°/s 条件の股関節外転筋力,7 m および Free 条件の足部速度と300°/s 条件の股関 節外転筋力,3 m および Free 条件の足部速度と 180°/s 条件の股関節内転筋力との間において相 関関係のみられる傾向が示された.また,3 m お よび 7 m 条件の足部速度と300°/s 条件の股関節 伸展筋力,1 m 条件の足部速度と180°/s 条件の 股関節屈曲筋力,1 m および 3 m 条件の足部速 度と180°/s条件の股関節外転筋力,7 m 条件の足 部速度と180°/s 条件の股関節内転筋力との間に 有意な相関関係が認められた.なお,相対的な足 部速度と各種等速性筋力との間の相関関係につい て 検 討 し た 場 合 も ほ ぼ 同 様 の 結 果 が 示 さ れ た (Table 6). Table 7 には,足部速度と各種ジャンプ能力と の間の相関関係について示した.両脚踏切の跳躍 運動である CMJ および DRJ の RJ-index との間 には,どの助走条件との間にも有意な関係性はみ られなかったものの,S-SRJ の RJ-index との間 には,1 m 条件を除くすべての助走条件の足部速 度において有意な関係性が認められた.なお,相 対的な足部速度と各種ジャンプ能力との間の相関 関係について検討した場合もほぼ同様の結果であ った(Table 8). Fig. 2 には,S-SRJ の RJ-index と支持脚の股 関節伸展筋力および外転筋力それぞれとの間の相 関関係について示した.S-SRJ の RJ-index と支 持脚の股関節伸展筋力との間には,どの角速度条
Table 5 Correlation coe‹cients between foot speed and maximal isokinetic strength Knee joint Extension Knee joint Flexion
Kicking leg Supporting leg Kicking leg Supporting leg 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 1 m 0.210 0.491 0.207 0.264 0.338 0.109 -0.171 0.046 0.360 0.193 0.276 0.254 3 m 0.012 -0.015 -0.161 0.393 0.096 -0.011 0.177 -0.244 0.146 0.244 0.100 -0.018 7 m -0.382 -0.090 -0.140 0.327 0.243 0.172 0.070 0.047 0.308 0.115 0.177 0.066 Free -0.269 0.140 -0.011 0.122 0.092 -0.007 -0.467 -0.138 0.150 0.030 0.154 0.207
Hip joint Extension Hip joint Flexion
Kicking leg Supporting leg Kicking leg Supporting leg 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 1 m 0.110 0.507# 0.233 0.184 0.301 0.499# 0.177 0.415 0.034 0.357 0.672 0.489
3 m 0.292 0.302 0.280 0.446 0.478 0.578 -0.347 0.056 0.302 -0.223 0.326 0.320 7 m 0.351 0.214 0.479 0.282 0.365 0.578 -0.357 0.071 0.474 -0.374 0.159 0.162 Free 0.337 0.352 0.278 0.385 0.180 0.350 0.151 0.456 0.242 0.105 0.392 0.314
Hip joint Abduction Hip joint Adduction
Kicking leg Supporting leg Kicking leg Supporting leg 60°/s 180°/s 60°/s 180°/s 60°/s 180°/s 60°/s 180°/s 1 m 0.332 0.429 0.527# 0.631 0.263 0.083 -0.124 0.167 3 m 0.075 0.376 0.302 0.579 0.477 0.574# -0.027 0.552# 7 m -0.047 0.560# 0.234 0.555# 0.329 0.468 -0.270 0.578 Free 0.020 0.240 0.626 0.521# 0.226 0.116 -0.261 0.540# n=12, P<0.05,#P<0.1 件においても相関関係はみられなかったものの, 60°/s 条件における股関節外転筋力との間には相 関関係のみられる傾向が,180°/s 条件における 股関節外転筋力との間には有意な相関関係が認め られた. Fig. 3 に は , S-SRJ の RJ-index , 支 持 脚 の 股 関節外転筋力と足部速度,相対足部速度における 1 m 条件から 7 m 条件への変化率それぞれとの 間の相関関係について示した.足部速度における 1 m 条件から 7 m 条件への変化率との間には, どの項目間にも有意な関係性は認められなかった が , 相 対 足 部 速 度 に お い て は , S-SRJ の RJ-index との間にのみ相関関係のみられる傾向が示 された. Fig. 4 には,膝関節屈曲伸展軸,股関節屈曲伸 展軸および内外転軸周りの関節角速度と関節トル クの時系列的な変化パターンを規格化時間で示し た.膝関節では,伸展トルクは接地後,ボールイ ンパクトへ向けて増大する傾向を示し,その大き さは助走速度の増大に伴って増大していることが 示された.角速度についてみると,負の値(屈曲) から正の値(伸展)へ推移する傾向を示し,助走 速度の増大に伴って増大していることが示され た.股関節は,助走条件に関わらず前半部では伸 展トルク,後半部では外転トルクが大きな値で推 移している一方で,助走速度の増大に伴って股関 節伸展トルクの大きさはほぼ同程度であるもの の,股関節外転トルクにおいては 3 m, 7 m およ び Free 条件は 1 m 条件と比較して,局面全体に わたって高い値で推移する傾向を示した.また, 角速度に着目すると,すべての助走条件におい て,股関節屈曲伸展軸まわりではほぼ正の値(伸
Table 6 Correlation coe‹cients between relative foot speed and maximal isokinetic strength Knee joint Extension Knee joint Flexion
Kicking leg Supporting leg Kicking leg Supporting leg 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 1 m 0.151 0.316 0.075 0.125 0.200 -0.013 -0.072 -0.130 0.180 0.177 0.232 0.172 3 m -0.074 -0.086 -0.268 0.273 0.021 -0.139 0.198 -0.285 0.012 0.144 0.031 -0.099 7 m -0.393 -0.267 -0.317 0.239 0.048 -0.070 0.142 -0.222 0.073 0.092 0.057 -0.061 Free -0.300 0.007 -0.206 0.146 -0.065 -0.178 -0.348 -0.265 -0.013 -0.102 -0.117 -0.087
Hip joint Extension Hip joint Flexion
Kicking leg Supporting leg Kicking leg Supporting leg 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 60°/s 180°/s 300°/s 1 m 0.115 0.491 0.210 0.229 0.294 0.467 0.163 0.359 -0.056 0.243 0.516# 0.262
3 m 0.159 0.236 0.170 0.287 0.296 0.424 -0.302 0.105 0.198 -0.196 0.276 0.227 7 m 0.321 0.186 0.353 0.251 0.182 0.412 -0.369 0.116 0.360 -0.428 0.093 0.068 Free 0.221 0.176 0.070 0.237 0.041 0.259 -0.132 0.277 0.175 -0.087 0.299 0.395
Hip joint Abduction Hip joint Adduction
Kicking leg Supporting leg Kicking leg Supporting leg 60°/s 180°/s 60°/s 180°/s 60°/s 180°/s 60°/s 180°/s 1 m 0.334 0.246 0.426 0.521# 0.396 0.186 0.032 0.290 3 m 0.107 0.336 0.287 0.571# 0.535# 0.509# 0.084 0.548# 7 m -0.047 0.375 0.267 0.552# 0.526# 0.468 -0.062 0.675 Free 0.020 0.325 0.396 0.465 0.327 0.177 -0.247 0.510# n=12, P<0.05,#P<0.1
Table 7 Correlation coe‹cients between foot speed in various instep kicks and ability of various jumps
CMJ
jump height RJ-indexDRJ RJ-indexK-SRJ RJ-indexS-SRJ 1 m 0.176 0.096 0.188 0.436 3 m 0.054 0.462 0.493 0.789 7 m 0.203 0.159 0.091 0.658 Free 0.124 0.121 0.034 0.634 n=12, P<0.01, P<0.05
Table 8 Correlation coe‹cients between relative foot speed in various instep kicks and ability of various jumps
CMJ
jump height RJ-indexDRJ RJ-indexK-SRJ RJ-indexS-SRJ 1 m -0.063 -0.010 0.133 0.312 3 m -0.093 0.377 0.458 0.750 7 m -0.044 0.194 0.190 0.667 Free 0.068 0.147 0.163 0.729 n=12, P<0.01, P<0.05 展)で推移している一方,股関節内外転軸まわり では負の値(内転)で推移する傾向を示した.さ らにこの負の角速度は,3 m, 7 m および Free 条 件は 1 m 条件よりも高い値で推移する傾向を示 した.
考
察
インステップキックにおいて,1 m 条件から 7 m 条件へと助走距離が増大することに伴って助 走速度は増大し,足部速度およびボール速度が増Fig. 2 Relationships between RJ-index and hip abduction strength, and hip extension strength about supporting leg 大することが確認された(Table 2).また,支持 脚接地からボールインパクトまでの時間は,すべ ての試技において極めて短い時間であるととも に,この時間は助走速度の増大に伴って減少する こ と も 認 め ら れ た ( 1 m: 0.127 ± 0.013 s, 3 m: 0.116±0.010 s, 7 m: 0.103±0.009 s).この際の 地面反力は,鉛直成分のみでみても 1 m 条件で 体重の 2 倍程度と大きな値を示し,さらに 3 m 条件で 3 倍程度,7 m 条件で 4 倍程度と助走速度 の増大に伴って大きな値を示した(Fig. 1).こ れらのことから,インステップキックでは助走速 度を高めることで足部速度およびボール速度が増 大するが,その際には支持脚において極めてより 短い時間により大きな力発揮が要求されることが 示された. ここで,足部速度から身体重心速度を減じた, 正味の足部速度である相対足部速度に着目する と,助走速度の増大に伴って足部速度が増大した 一方で,相対足部速度においては助走速度の増大 に対応した変化を示さず,7 m 条件においては 3 m 条件と同程度の大きさであった.助走速度の 増大によって足部速度が高まる理由について考え ると,◯支持脚から蹴り脚のスイング速度の増大 へ繋がる一連の機序(福井ほか,2007; Inoue et al., 2014)を有効利用できること,◯ボールイン パクト時における身体の持つ速度が高くなるこ と,以上の 2 点が挙げられる.7 m 条件における 助走速度および足部速度が他の試技よりも高い一 方で,相対足部速度が 3 m 条件と同程度であっ たことを考慮に入れると,3 m 条件から 7 m 条 件への足部速度の増大は,上記の中でも主に◯ ボールインパクト時における身体の持つ速度が高 くなることによる影響であると考えられる.この ことは,言い換えると 1 m 条件よりも高い助走
Fig. 3 Relationships between RJ-index, hip abduction strength about supporting leg and rate of change of foot velocity and relative foot velocity (7 m/1 m )
Fig. 4 Averaged patterns of joint angular velocity and joint torque about the knee and hip joints at sup-porting leg from touch down to ball impact in various instep kicks
速度条件では,大きな地面反力が短時間に作用す るために,◯支持脚から蹴り脚のスイング速度の 増 大 へ 繋 が る 一 連 の 機 序 ( 福 井 ほ か ,2007; Inoue et al., 2014)を有効利用して足部速度を獲 得することが困難であることを意味している.本 研究ではこのような助走条件の特徴へ配慮しなが
ら,足部速度の獲得に重要な支持脚の筋力やジャ ンプ能力について検討していく.なお,助走距離 を規定せずに行った Free 条件における助走速度 は 3 m 条件よりも高いものの 7 m 条件よりも低 く,他の変数は 3 m 条件と同程度であり 7 m 条 件よりも低かったことから判断すると,Free 条 件は 3 m 条件と 7 m 条件の中間的な特徴を有し ているものと推察される. . インステップキックにおける高い足部速度 の獲得に影響する筋力およびジャンプ能力 1) 蹴り脚について 足部速度および相対足部速度と蹴り脚における 下肢筋力との間には,わずかな項目において相関 関係のみられる傾向が示されたが,その中には蹴 り脚の主動作である股関節屈曲や膝関節伸展に関 する項目に相関関係はなく,特徴的な結果は認め られなかった(Table 5 and 6).これまで,ボー ルまたは足部速度に対する蹴り脚の筋力との関係 性について検討した研究では,両者の間に関係性 が認められるものとそうでないものの両方が存在 し,その見解は統一されていない(浅見・戸苅, 1968瀧井,1984; Cabri et al., 1988; McLean and Tumilty, 1993; Mognoni et al., 1994; Aagaard et al., 1996; Saliba and Hrysomallis, 2001; Masuda et al., 2005).その理由の一つとして, インステップキックによる足部速度は,身体分節 間の相互作用によって発生するモーメントによる 影響が大きく(Putnam, 1991; Nunome et al., 2006),さらにこのモーメントは支持脚の運動に よっても獲得される(Inoue et al., 2014)などの ように,足部速度の大きさは蹴り脚の筋力以外の 要素が大きく影響していることが挙げられる.ま た,足部速度および相対足部速度と CMJ の跳躍 高お よび DRJ の RJ-index ,蹴 り脚 側で 行う K-SRJ の RJ-index との間においても有意な関係性 は認められなかった(Table 7 and 8).これに関 する要因を蹴り脚について考えると,蹴り脚と本 研究で用いたジャンプ運動の踏切脚における主動 作に作用する筋群が異なることが挙げられる.一 方,蹴り脚の主動作に関する項目ではないが,蹴 り脚の股関節内転筋力においては,3 m 条件の足 部速度,3 m および 7 m 条件の相対足部速度と の間に相関関係のみられる傾向が示された(Ta-ble 7 and 8 ). 同 様 の 結 果 は , Masuda et al. (2005)においても報告されているものの,これ までにその詳細な機序については述べられていな い.インステップキックの蹴り脚と同様に高い股 関節の屈曲速度が重要となるスプリント走では, 股関節内転筋群が,臼蓋に向かって大腿骨を引き 込む求心性の力を生成し自由度の高い球関節であ る股関節を安定させること,また股関節伸展位で は股関節の屈曲に作用することで,股関節屈曲動 作に影響していることが報告されている(松尾ほ か,2011).これらを基に上述の関係性が見られ た背景について考えると,インステップキックの 蹴り脚においてもスプリント走でみられた内転筋 群の機能が同様に存在し,それが股関節屈曲速 度,すなわち足部速度の獲得に影響していること が推察される.しかしながら,これらについては 今後,蹴り脚の股関節周辺のキネマティクスやキ ネティクス変量,内転筋群などの活動を定量化し 検討すること,さらにその際には,上記の関係性 が 1 m 条件よりも高い助走速度条件で得られた ことを考慮し,助走速度の相違による影響へも着 目することが重要であると考えられる. 以上に述べた本研究の結果や先行研究の内容に 加え,本研究ではインステップキックに精通した 被検者を対象とし,さらに実験設定として助走距 離を厳密に規定していたことを合わせて判断する と,助走速度の大きさに関わらず足部速度に対す る蹴り脚の主動作に関する筋力やジャンプ能力の 影響は小さいものの,1 m 条件よりも高い助走速 度条件においては内転筋力が関与している可能性 のあることが考えられる. 2) 支持脚について 支持脚はインステップキックにおける動作の起 点であるとともに,身体を支持し安定性を確保す ること,さらには蹴り脚の足部速度を増大させる こと(福井ほか,2007; Inoue et al., 2014)に対 し重要な役割を有する.加えて,支持脚には極め
て 短 い 時 間 に 大 き な 地 面 反 力 が 作 用 す る こ と (Table 2, Fig. 1)から判断すると,インステッ プキックにおいて高い足部速度を獲得するために は,支持脚において高い筋力やジャンプ能力が必 要になることが推察できる. 支持脚において,1 m, 3 m および 7 m 条件の 足 部 速 度 と 300 °/ s 条 件 の 股 関 節 伸 展 筋 力 と の 間,また股関節外転筋力においては,ほぼすべて の助走条件の足部速度および相対足部速度との間 に有意な相関関係または相関関係のみられる傾向 が示された(Table 5 and 6).これらのことは, インステップキックにおいて高い足部速度を獲得 するためには支持脚における股関節伸展筋力およ び外転筋力が重要になることを示唆するものであ る. その一方で,1 m 条件を除くすべての助走条件 (3 m, 7 m および Free 条件)においては,足部 速度および相対足部速度と支持脚で行う S-SRJ の RJ-index との間には有意な相関関係が認めら れ た も の の , 同 じ リ バ ウ ン ド ジ ャ ン プ で あ る DRJ の RJ-index と の 間 に は 認 め ら れ な か っ た (Table 7 and 8).SRJ と DRJ の踏切脚における 力発揮特性の相違について苅山ほか(2012; 2013) は,SRJ と DRJ は共に足関節底屈筋群の動員が 大きなジャンプ運動であるものの,両ジャンプを 比較した際には SRJ は DRJ よりも股関節伸展筋 群,特に股関節外転筋群の動員が大きく,これら の筋群による関節トルクは SRJ の遂行能力に影 響していることを報告している.また,苅山ほか (2012; 2013)からは,SRJ における股関節伸展 および外転筋群は伸張性から短縮性へと切り替わ る SSC 運動によって力発揮がなされていること も確認できる.これらのことから,SRJ は踏切 脚において股関節伸展筋群,特に外転筋群におけ る SSC 運動を伴った力発揮が大きいという特徴 を 有 し て い る こ と が 理 解 で き る . 本 研 究 で は SRJ における動作分析を行っていないものの,S-SRJ の RJ-index と股関節外転筋力との間にのみ 有意な相関関係が認められたこと(Fig. 2)から 判断すると,本研究の SRJ は先行研究同様に股 関節外転筋群の力発揮が特徴的な運動であると考 えられる.これらのことから,支持脚における片 脚リバウンドジャンプの能力は,1 m 条件を超え る高い助走条件において高い足部速度を獲得する ために重要な能力であり,その背景には SSC 運 動を伴った股関節外転筋群による力発揮が影響し ている可能性がある. インステップキックにおいて助走を用いること は高い足部速度を獲得する上で有利に働くもの の,より高い助走速度条件では正味の足部速度で ある相対足部速度の獲得は困難になる(Table 2).本研究では,個人内においてより高い助走 速度を利用して足部速度や相対足部速度を獲得す るための要因について,上述した股関節外転筋力 や支持脚のリバウンドジャンプの遂行能力に着目 して検討した(Fig. 3).その結果,股関節外転 筋力との間にはどの項目にも有意な相関関係は認 められなかったが,S-SRJ の RJ-index と相対足 部速度の変化率との間には有意傾向ではあるもの の対応関係のあることが示された.相対足部速度 は重心速度の影響を除いた正味の足部速度である ために,この相対足部速度の 1 m 条件から 7 m 条件への変化率の大きさは,個人内において増大 する助走速度に対し身体を支持し,考察冒頭で述 べた◯支持脚から蹴り脚のスイング速度の増大へ 繋がる一連の機序(福井ほか,2007; Inoue et al., 2014)を有効に利用する支持脚の能力を意味し ていると捉えることができる.すなわち,個人内 においてより高い助走速度を利用するためには, 支持脚でのリバウンドジャンプの遂行能力が重要 になると考えられる. これまでの結果から,インステップキックにお いて高い足部速度を獲得するためには,助走速度 に関わらず股関節伸展筋力や外転筋力,支持脚で 行う片脚リバウンドジャンプの遂行能力が重要に なることが示された.また一方で,個人内におい てより高い助走速度を利用し高い足部速度を獲得 するためには支持脚での片脚リバウンドジャンプ の 遂 行 能 力 が 重 要 に な る こ と , そ の 背 景 に は SSC 運動を伴った股関節外転筋群の働きが影響 している可能性のあることも示された.ここで, このような関係性が生じた要因について考えてみ
ると,SRJ の踏切脚における力発揮特性がイン ステップキックの支持脚におけるそれと類似して いること,言い換えると,インステップキックで は助走速度の相違に関わらず股関節伸展筋群や外 転筋群が大きな力を発揮していることや,助走速 度の高いインステップキックでは股関節外転筋群 が SSC 運動によって大きな力を発揮しているこ とが予測される.しかしながら,これまでにイン ステップキックにおける支持脚の関節毎の力発揮 特性が,助走速度の増大に伴いどのように変化し ているかについては報告されていない.そこで本 研究では,インステップキックにおける支持脚の 角速度と関節トルクを算出することで,上述の関 係性が生じた要因についての検討を加える(Fig. 4).股関節は,助走条件に関わらず支持脚接地 からボールインパクトにおいて,その前半部では 伸展トルク,後半部では外転トルクが大きな値で 推移していることが確認できる.このことから判 断すると,上述した股関節の伸展および外転筋力 (Table 5 and 6)は,これらの股関節伸展トルク および外転トルク発揮を介して高い足部速度の獲 得に貢献していることが推察される.一方,股関 節伸展トルクは助走速度の相違に関わらずほぼ同 程度の大きさであるものの,股関節外転トルクに お い て は 3 m, 7 m お よ び Free 条 件 は 1 m 条 件 と比較して,局面全体にわたって高い値で推移す る傾向を示した.また,角速度に着目すると,す べての助走条件において股関節屈曲伸展軸まわり ではほぼ伸展動作のみで遂行されている反面,内 外転軸まわりでは着地と共に内転していることが 確認できる.これらのことから,インステップキ ックにおける股関節外転筋群は,SSC 運動では ないものの伸張性の筋収縮により遂行されている ことが示され,さらにその伸長速度は 3 m, 7 m および Free 条件は 1 m 条件よりも高いことが確 認できる.SSC 運動における伸張性の筋収縮で は,筋の予備緊張(高松ほか,1991)や筋腱の 弾性エネルギーの貯蔵(Komi and Bosco, 1978) が生じ,続く短縮性収縮における発揮パワーの増 大へ直接的に影響する重要な役割を有する.これ らのことから判断すると,高い助走速度条件では, SRJ における踏切脚と共通して,支持脚の股関 節外転筋群が伸張性の筋収縮により大きな力を発 揮していることが理解でき,このことが,より高 い助走速度条件でインステップキックにおける足 部速度と S-SRJ の遂行能力の間に認められた関 係性(Table 7 and 8; Fig. 3)の要因として挙げ られる. また,3 m, 7 m および Free 条件において,足 部速度と180°/s での股関節内転筋力との間に有 意な相関関係が認められた(Table 5 and 6).イ ンステップキックでは,主に股関節外転トルクが 発揮されているものの,そのパターンに着目する と,接地後大きな値で推移した後,低下するパ ターンを示した.関節トルクは当該関節に作用す る筋群による正味のモーメントを意味するもので あるため,ここで確認される外転トルクの低下 は,股関節外転筋群の収縮力が低下したのではな く,拮抗筋である股関節内転筋群との同時収縮に より,内外転方向への外力に対し関節の合成を高 めていることを意味していると推察される(藤井 ほか,1997).すなわち,1 m 条件よりも高い助 走速度条件において,股関節内転筋群は外転筋群 とともに前額面上での身体の安定性を確保するこ とで,高い足部速度を獲得するために重要な役割 を有している可能性がある.しかしながら,この 内転筋群の役割については,表面筋電図法などに より外転筋群と共に内転筋群の活動状態を定量化 することによって検討していく必要がある.な お,本研究では支持脚における膝関節の筋力と足 部速度および相対足部速度との間に相関関係はみ られなかったものの(Table 4 and 5),インステ ップにおける支持脚の膝関節伸展トルクは大きな 値で発揮されていること,さらにこのトルクは助 走速度の増大に伴って増大していることが確認で きる(Fig. 4).これらのことから判断すると, インステップキックでは支持脚の膝関節伸展筋群 が高い足部速度の獲得に対し重要な役割を有して いる可能性があり,これについては今後,詳細に 検討していく必要がある.また,本研究では足部 速度を高めることに必要な支持脚の筋力やジャン プ能力について示すことができたものの,その詳
細な機序の解明には至っていない.上述した今後 の課題とも関連して,今後は高い足部速度の獲得 に対する支持脚の役割について明らかにする中 で,それに対する筋力やジャンプ能力の役割につ いて検討することも重要な課題である. . トレーニング実践への示唆 本研究の結果から,インステップキックにおい て高い足部速度を獲得するためには,蹴り脚だけ ではなく,支持脚における筋力およびジャンプ能 力を改善することの重要性が示された.具体的に は,支持脚における股関節伸展筋力や外転筋力が 重要になり,さらに高い助走速度条件において は,股関節内転筋力,特に支持脚で行う片脚リバ ウンドジャンプの能力が重要になる. これまで,サッカーにおける股関節内外転筋群 の重要性については,筋力比からみた障害予防に 関する指摘が多く(Thorborg et al., 2011),イン ステップキックの支持脚に関しては,踏込時の急 激 な 方 向 転 換 に 対 す る 指 摘 に 留 ま っ て い る (Masuda et al., 2005).本研究の結果は,これら に加え高い助走速度の利用という観点からも支持 脚による股関節内外転筋力の重要性について指摘 することができた.この観点からインステップキ ックによるボール速度向上のための支持脚を対象 とした筋力・パワートレーニングについて考える と,腹臥位や側臥位でのエクササイズバンドを用 いた股関節内外転運動だけでなく,股関節の内外 転筋群の動員が大きい片脚スクワットやレッグラ ンジなどの片脚系のエクササイズを高負荷で実施 することも有用であると思われる.さらに,SSC 運 動 を 伴 っ た 外 転 筋 群 に よ る 力 発 揮 が 大 き な SRJ,さらに同様の力発揮がより顕著に確認され るバウンディング(苅山・図子,2013b)を用い ることも有用であろう.ただし,SRJ は非常に 短い時間に大きな地面反力が作用するとともに, 片脚ジャンプであるために複雑な運動機構で遂行 されることから(苅山ほか,2013),ジャンプト レーニングをあまり行ったことが無い選手にとっ ては SRJ の遂行自体が困難になる場合も考えら れる.その際には,SRJ の基礎となる両脚リバ ウンドジャンプ(苅山・図子,2013b)や股関節 外転筋力(Fig. 2)を改善するエクササイズを事 前に導入するなど,トレーニング手段の階層構造 性へ配慮することも重要である.
要
約
本研究の目的は,サッカーのインステップキッ クにおけるボール速度の獲得に重要な足部速度に 影響する支持脚の筋力やジャンプ能力について, 助走速度の相違に着目して明らかにすることであ った.サッカー部に所属する男子大学生12名を 対象に,助走距離の異なるインステップキック, 等速性筋力測定,各種ジャンプ運動を実施させ, インステップキックにおける足部速度および相対 足部速度(足部速度からボールインパクト時の身 体重心速度を減じた値)と等速性筋力,各種ジャ ンプ能力との関係性について検討した.支持脚に 関する主な結果は,以下の通りである. 1) 助走歩数の増加とともに助走速度が増大 し,さらに支持脚接地からボールインパクトまで の時間が減少し,地面反力が増大した. 2) ほぼ全ての助走条件における足部速度と 等速性筋力測定による支持脚の股関節伸展筋力お よび外転筋力との間に有意な相関関係が認められ た. 3) 1 m 条件よりも高い助走速度で行われる試 技での足部速度と支持脚で行う片脚リバウンドジ ャンプの能力との間おいてのみ有意な相関関係が 認められた.さらに,同条件の足部速度と等速性 筋力測定による支持脚の股関節内転筋力との間に も有意な相関関係が認められた. 4) 上記に示した足部速度との間にみられた 関係性は,相対足部速度においてもほぼ同様に確 認することができた. 5) 1 m 条件から 7 m 条件への相対足部速度 の変化率と支持脚での片脚リバウンドジャンプの 能力との間に相関関係のみられる傾向が示された. 以上の結果から,インステップキックにおいて 高いボール速度を獲得するためには,助走速度に 関わらず支持脚における股関節伸展筋力および外転筋力の向上が重要であること,より高い助走速 度条件においては股関節内転筋力,特に支持脚で の片脚リバウンドジャンプの能力の向上が重要に なることが示された.
文 献
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