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茨城大学教育学部紀要 ( 自然科学 )63 号 (2014)33-43 地域資源を用いた理科教育教材の開発 (1): レンコンを用いた吸水性ポリマーの作成実験 松川覚 * 守口諒 * (2013 年 11 月 26 日受理 ) Development of the Science Teaching

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Academic year: 2021

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お問合せ先

茨城大学学術企画部学術情報課(図書館)  情報支援係

http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html

Title

地域資源を用いた理科教育教材の開発(1) : レンコンを

用いた吸水性ポリマーの作成実験

Author(s)

松川, 覚; 守口, 諒

Citation

茨城大学教育学部紀要. 自然科学, 63: 33-43

Issue Date

2014

URL

http://hdl.handle.net/10109/8838

Rights

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地域資源を用いた理科教育教材の開発(1):レンコンを用いた

吸水性ポリマーの作成実験

松川 覚 *・守口 諒 * (2013 年 11 月 26 日 受理)

Development of the Science Teaching Materials Using a Local Resource

SatoruMATSUKAWA * and Ryo MORIGUCHI*

(Received November 26 , 2013) はじめに  新学習指導要領が 2008 年に公示され,平成 23 年度より小学校で新学習指導要領が施行され, 平成 24 年度に中学校でも施行された。中学校学習指導要領理科では改善の基本方針のひとつと して,「自然体験・科学的な体験の充実」があり,その具体的な方策の一つとして地域の教育資 源の活用が挙げられる1)。茨城大学教育学部においても大学院教育改革支援プログラム(教育 GP)として平成 20 年度より「地域教育資源開発による高度教育専門職養成 」に取り組んだ2) また,茨城県教育委員会でも,いばらき理科推進事業の一つとして平成 24 年度より「中学校理 科新教材開発事業」を立ち上げ,県の特色を生かした「いばらき理科アイテム」の創生と活用 を行っている3), 4)。こうした背景の下,今回我々は茨城県の地域特産物であるレンコンに着目し, それを用いた理科教材開発を行うことにした。レンコンはハスの地下茎が肥大した食用に栽培さ れる作物であり,その作付け量,生産量ともに茨城県が全国1位である。全国の生産量の約3割 が茨城産であり,農業が盛んな茨城県でも代表的な農作物の一つである。レンコンはその食感か らも容易に想像できるようにごぼうやタケノコと同様に繊維質を多く含む作物である。我々はこ の繊維質に着目した。レンコンなどの野菜に含まれる繊維質の主成分はセルロースやリグニンで ある。今回はこのセルロースを用い,吸水性ポリマーの合成を行うことにした。  高吸水性樹脂(Superabsorbent Polymer,以下,吸水性ポリマー)とは,高分子鎖中のイオ ン同士の電気的反発と浸透圧によって,自重の 10 倍以上の水を吸収,保持し,ゲル化する能力 を有した高分子である。高分子鎖自体が親水性を有し,水に浸して分子鎖が水中に拡散,溶解し てしまわないように架橋・不溶化した構造を有している。1996 年,日本工業規格(JIS)において,「水 を高度に吸水して,膨潤する樹脂。高吸水性樹脂は,架橋構造の親水性樹脂で,水と接触するこ とによって吸水し,一度吸水すると,圧力をかけても離水しにくい特徴を持っている。」と定義 茨 城 大 学 教 育 学 部 化 学 研 究 室( 〒 310-8512 水 戸 市 文 京 2-1-1; Laboratory of Chemistry, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan)

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されたことで,従来からの毛細管現象によって吸水する綿,パルプ,スポンジ,更にはコンニャ ク,寒天などと区別された5)。吸水性ポリマーは,1974 年にアメリカ農務省北部研究所で,トウ モロコシなどの農産物の有効利用の研究過程の中で開発された。開発当初のものは,トウモロコ シから得られた天然高分子化合物であるでんぷんにアクリル酸を化合させた,でんぷん・アクリ ル酸グラフト共重合体の加水分解物であった。その後,吸水能力,原料コスト,合成過程などの 容易さから,現在の高吸水性樹脂の市販製品は石油由来のアクリル酸をモノマーとしたポリアク リル酸ナトリウムを架橋させたものが主流となった。これは,紙おむつなどの吸水を目的とする 商品に用いられている。  本研究ではアクリル酸系高吸水性樹脂よりも生分解性が期待できるセルロース系高吸水性樹脂 に着目した。これまで,綿や木材パルプなどから生分解性を有する高吸水性樹脂を合成する先行 研究が報告されている(2005 吉村)6)。しかし,より身近な野菜などからの合成や植物セルロー スを直接利用して合成した報告例は少ない。そこで,本研究では茨城県の地域資源であるレンコ ンを中心に,レンコン茎,白菜,レタス,米ぬかと隣県である千葉県の地域資源である落花生を 原料とした高吸水性樹脂の合成を考えた。近年では規格外や商品化の過程で廃棄処分となった野 菜は,堆肥化などといった再利用も各方面で行なわれているが,焼却処分となることも多いため, これらの地域資源を利用することは,廃棄物の有効活用にも繋がるとも考えられる。  また,本研究における高吸水性樹脂の合成は,教育教材としても高等学校化学「高分子化合物 の性質と利用」での天然高分子化合物の理解や同生物での浸透圧学習の補助教材,さらには,子 どもたちが身近な地域資源を見直すきっかけとして応用できると考えた7) - 9)。中学校学習指導要 領理科編の改訂に伴い,「身の回りの物質とその性質」としてプラスチックの学習や「自然環境 の保全と科学技術の利用」などの項目が中学校理科の学習内容に追加された1)。これらの補助教 材として,身近にあるプラスチック製品は石油だけでなく,植物からも合成できるということを 子どもたちに提示したり,既存の高吸水性樹脂を利用した化学実験に本研究で合成したものを代 用したりすることで,子どもたちの理科への関心を高めることが出来ると考えた。 結果と考察  まず,試料であるレンコンの前処理について考えた。レンコンにはセルロースの他に多量のでん ぷんが含まれているため,吸水性ポリマーへと化学変換する前に前処理し,でんぷんを除去する必 要がある。そこで,レンコンをすりおろした後に水で洗浄・乾燥させ,できるだけでんぷんを除去 した(水洗)。また,でんぷんが水よりも湯に溶けやすい性質から,すりおろした後に 60℃の湯で の洗浄(湯洗)する方法も検討した。比較の為,レンコンをすりおろした後に搾り,乾燥させたの みのもの(無洗)も用いた。これらの試料を用いて,レンコンに含まれるでんぷんの量が高吸水性 樹脂の合成に影響を与えるか検討を行った。  本研究に使用するレンコンは JA 土浦より規格外のため出荷できない廃棄物を提供を受けたもの を用いた。その他,白菜とレタスに関してはフードマーケットカスミ梅園店より,商品化するため に同店で汚れの付いた部分や傷んだ部分を除去し処分されるものを提供を受けたものを用いた。  吸水性ポリマーの合成は,吉村ら(2005)の方法を参考にした。大まかな流れとしては,レン コン中のセルロースのナトリウム塩の生成,次に酢酸エステル化,エチレンジアミンジグリシジ

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ルエーテル(以下,EGDE と表記)による架橋の 3 段階である。まずは以下の手順で実験を行った。  100ml ナス型フラスコに,2 -プロパノール 50 ml,乾燥および粉砕したレンコン試料(無洗, 水洗,湯洗)2.5g を加え,そこに 10%水酸化ナトリウム水溶液 13ml をピペットを用い 1 滴ずつ 滴下する。滴下終了後 30 分撹拌した後,クロロ酢酸ナトリウム 2.5g を室温で加える。30 分後に EGDE0.7 ml を加えた後,60℃に加温し,5 時間撹拌させた。反応生成物をブフナーロートで吸 引濾過し,70%メタノール水溶液で洗浄したものを,さらにメタノールにて洗浄し,12 時間自然 乾燥させ,粗吸水性ポリマーを得た。以下,この手法を通常法と呼ぶ。得られた粗ポリマーをイ オン交換水中で膨潤させた後,メタノールを加え脱膨潤させたものを濾過し,メタノールにて洗 浄し,12 時間自然乾燥させ精製した。得られた吸水性ポリマーは簡易吸水量測定方法にて吸水率 を求めた。この方法では「吸水率」しか測定できず,吸水速度や膨潤の様子は無視されてしまう。 理科教材として用いることも踏まえ,吸水する様子を観察したり,吸水後のポリマーの様子を確 認するという点も考慮した。吸水の様子を観察した結果と吸水率を求めた結果を表1に示す  まず,水酸化ナトリウムの加え方について述べる。このポリマーを作成する反応は不均一系で 進行する。ここで,水酸化ナトリウム水溶液を一度に多量に加えてしまうと撹拌中の試料の粒が 凝集し,フラスコ内壁にこびり付いてしまいガラス棒で削ぎ落とす必要が出てきたり,反応系が 固化し撹拌が停止してしまったりことがあった。これはセルロース中の OH 基への反応が過剰に 起こり過ぎたためと考えた。そこで,水酸化ナトリウム水溶液を加える時にピペットを用いて 1 滴ずつ滴下すると反応系の固化は改善され,撹拌が停止されず反応が進行した。  レンコンの前処理の違いについて比較すると,いずれの処理法でも吸水するポリマーが得られ た。中でも湯洗試料を用いたものが高い給水率を示した(60.3 倍)。これは不純物であるでんぷ んが少ないほうが良いということを示している。しかしながらいずれのポリマーも,吸水時にゲ ル化が遅く,水を吸収する様子は十分に観察できなかった。そこで,試料の加え方について検討 を行うことにした。まず,NaOH 投入時に試料が凝集してしまうと,吸水性ポリマーが上手く作 成できない可能性が考えられたので,NaOH 投入時に氷バスで冷やしながら投入した。しかし, 得られたポリマーは室温で投入した場合とほぼ同じものが得られ,改善は見られなかった。  ナトリウム塩作成の段階だけでは改善を行えなかったので,試薬を加える手順について改良す ることにした。水酸化ナトリウム,クロロ酢酸ナトリウム,EGDE を加える際にそれぞれ 30 分

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間隔をおいて加えたが,試薬を同時に加えることで架橋が速やかに行えると考えた。そこで,ク ロロ酢酸ナトリウムと EGDE を同時,3 つの試薬を同時に加える方法の 2 つを試した。その結果, いずれの場合も吸水率が多少向上したが水を吸収する速度は遅く,吸水する様子を分かりやすく 観察しにくかった。しかしながら,撹拌はスムーズに行えることが見出された。そこで,操作上 の簡易さも踏まえ,3 つの試薬を間をおかずに順に加える方法をさらに改良することにした。こ こまでは試薬を加えてから 60℃に温度を上げたが,今度は 60℃に加温してから試薬を加えるこ とにした。その結果,スムーズな撹拌を行いながら吸水性ポリマーが得られた。そのポリマーの 吸水率は 69.3 倍と高くは無かったが,速やかに吸水する様子をはじめて見ることが出来た。こ の手法を以下改良法と呼ぶ。この改良法で実験を行うと,レンコンの前処理法が水洗や無洗であっ ても速やかに吸水する様子が見えるポリマーが作成することが可能であった。ただし,比較する と湯洗法が一番吸水倍率も高く,良いポリマーが作成できた。この実験で得られたポリマーとそ の吸水の様子を図1, 2に示す。  このように,改良法によって,レンコンを材料として,速やかに吸水しゼリー状にゲル化する 吸水性ポリマーを作成することに成功したので,次に架橋剤を種々変えて検討した。架橋剤と して用いてきた EDGE に代えて,コハク酸,フタル酸,マレイン酸を用いて検討を行った。レ ンコンの前処理は湯洗,ポリマーの作成法は改良法で行った。その結果を表3に示す。まず, EDGE の量を倍にするとより架橋構造が出来てよい吸水ポリマーになると考え,実験したが逆に

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吸水率も下がり,吸水の様子も観られなくなった。EDGE の量は増やさないほうが良いことが明 らかになった。次に架橋剤として EDGE に変えてコハク酸,フタル酸,マレイン酸を用いて検 討した。その結果いずれも高い吸水率で水を吸収したが,吸水の速度が遅く,また吸水後もゼリー 状に固まるというよりも柔らかいゲル状であった。これらの架橋剤は吸水率という観点では優れ ていたが,吸水する様子を観察したり,吸水後のポリマーの様子を確認するという点では劣るも のであった。以上のことから架橋剤としては EDGE がもっともよいことが明らかになった。  次に,レンコンの代わりに様々な植物セルロースを用いて検討した。レンコンの茎,白菜,レ タス,米ぬか,落花生を用いた。試料の前処理は湯洗,使用量はレンコンと同じ 2.5 gで行った。 ポリマーの調整法は改良法で行った。その結果を表 4 に示す。米ぬかを用いた場合に 68.4 倍と 高い吸水率を示したが,他の野菜では吸水はほとんど観られなかった。また米ぬかも,吸水の様 子はレンコンほどうまく観られなかった。 まとめ  本研究では,地域資源の活用を目的として,レンコンを用いて吸水性ポリマーの合成を検討した。 実験条件や試薬の検討を行い,70 倍程度の吸水率で,速やかに吸水し,ゼリー状のゲルを生成で きるポリマーの合成に成功した。さらにこの実験手法を次頁以降に示すようなレシピを作成し,誰 でも容易に再現可能になるよう工夫した。このレンコンポリマーは,地域資源の活用という点だけ ではなく,廃棄物の有効利用の一つの手段となると考えられ,有効な理科教育教材になると考える。

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参考資料2 : 簡易吸水量測定方法(JIS K7233 に基づき,独自に改良したもの) ①ポリエチレン / ポリプロピレン不織布パック(ダイソー製,煎茶用)に試料 0.1g を入れる ② 500ml ビーカーに 300ml 程のイオン交換水を加えたところに,パックを浸水させる。 ③ 24 時間放置する(図3)。 ④その後,1 時間水切りを行い(図4),重量を測る。吸水倍率の求め方は以下の通りである。 { 24 時間後の総重量-(パック重量+パック吸水量+試料重量)}×10 = 吸水倍率 (g/g) ※(パック重量+パック吸水量)は試料を入れない状態で 24 時間蒸留水に浸透させ,1時間水 切りをした後の重量 1) 文部科学省:中学校学習指導要領解説理科編,大日本図書(2010),pp.3-6. 2) 茨城大学大学院教育学研究科大学院教育改革プログラム報告書 3) 茨城県教育委員会 www.edu.pref.ibaraki.jp/board/welcome/koho/press/.../1.pdf 4) 全国知事会 HP:先進政策バンク内   http://www.seisaku.nga.gr.jp/kohyo/kohyo_top.php?seq=3341&uri=%2Fsearch%2Fsearch.   php%3Fbun%3D07%26p%3D1 5) 図解最新特許にみる高吸水性ポリマー開発・応用アイデア集,伏見隆夫編著,工業調査会(1990) 6) 葛西裕,平成 18 年度青森県工業総合研究センター事業報告書 p.62-64(2006) 7) 佐々木克敬,山内計一,花屋馨,化学と教育 42,337-340(1994) 8) 高木盛雄,伊藤敏幸,化学と教育,42,131-132(1996) 9) 文部科学省:高等学校学習指導要領解説理科編理数編(平成 20 年 9 月)実教出版株式会社

参照

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