基本動作の構えやバランス戦略
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(2) 基本動作の構えやバランス戦略. 741. や過剰な防衛反応をなくす必要がある。. 的な迷路性の刺激に反応し頸部を過剰に伸展して頭部を枕に押. 動作を行う中で患者が自信をもち,やる気をだして情動や無. しつけてダイナミックな変化に適応できなくなる。そのため. 自覚で潜在的な認知で,動いても危険でないことに気づいて. に,わずかな姿勢変化で不安や恐怖を訴え過剰な防衛反応が出. “危険,痛い,できない”という思いこみをぬぐい去ることが. 現する。日頃から転がる動作を行う必要がある。. できたときにのみ基本動作は積極的に動く構えやバランス戦略. 3.内臓は未だに背臥位に適応できていない. で行えるようになる。治療という行為の最中に患者の情動まで. 背臥位を持続すると口呼吸,舌根沈下による睡眠時無呼吸,. 変える接触の仕方や声かけが重要なのである。. 下側肺症候群,腹部血管の内臓による圧迫で下肢の静脈血栓,. 行動を開始するとは. 腹圧がかけにくいため便秘,膀胱炎などの問題が起きやすい。 背中を下にした姿勢が引き起こす問題ですべてが腹臥位になる. 1.意思決定に先行する構え. だけで解決できる。. リーチするとき主動作筋である三角筋は手を伸ばすと意思決. 4.思いこみによるバランス戦略の固定化. 定したときに活動を開始する。本来,意思決定する前に筋は働. 腹臥位は難しい,車いすでは背もたれに寄りかかると安定す. く必要がないと考える。ところが意思決定に先行して体幹の一. るといった患者,セラピスト双方の思いこみが一致して過剰な. 部の筋が活動を開始する。動作を開始するという意志決定に先. 安定をつくるバランス戦略の選択に結びつき,運動の自由度が. 行する筋活動は「構え」と呼ばれ,バランス戦略に基づいて転. 低い姿勢を患者は習慣としてしまう。車いすで支持基底面の外. 倒転落せずに,リーチするという基本動作を可能にするための. 側後方に圧をかけて座る姿勢は,すべての姿勢で,支持面の外. 準備である。なにかをするとき“やるぞ”と意思決定して行動. 側後方に圧をかけてバランスを取るバランス戦略を強制的に学. を開始すると,それを支援するために構えが準備されると考え. 習させてしまうといわざるを得ない。車いすテーブルなどを利. てきた。実際は,やろうとするとき,身体が生きるのに不利に. 用して背もたれに寄りかからないで座位姿勢を維持できるよう. ならない文脈で無自覚に活動を開始し“このようなやり方でよ. に工夫,習慣にする必要がある。. ければ支援しますよ”と構えを準備する。その構えにしたがっ. 5.呼吸とリズム運動. て行動を開始しているということである。. 長期に背臥位をとっていると伸筋が優位となり,呼気が不十. 2.サブリミナルな刺激,情報での活動. 分な,浅くて早い呼吸になりやすい。努力性の吸気になるため. 快不快の定位反応には扁桃体が重要である。音を聞いたり見. に,頸部肩甲帯の筋緊張が高くなり,背部が浮いてしまう。背. て怖いと反応するのもまず扁桃体で,皮質では閾値に達しない. 部をベッドにつけるように調整し,ゆっくり長く息を吐くこと. 2) サブリミナルな刺激でも反応できる 。逃げるという身体反応. で筋緊張のバランスを整えることが重要である。緊張が抜けた. が怖いという感情に先行するというジェームス・ランゲ説の神. ところで,両腕を組み,左右に振りながら両下肢を交互に曲げ. 経学的な説明になると考える。拡大して解釈するとネガティブ. 伸ばしする。歩行様のリズム運動をすることで,活動性を高め,. な発想や取り組みはサブリミナルな変化で自己保存の過剰な反. 不動をつくらないようにする。このような運動は自己,あるい. 応を引き起こし身体に消極的,回避的な構えや戦略をとらせて. は家族の管理で習慣になるまで続ける必要がある。. しまう。林は身体機能(情動)から感情(記憶)を生みだし脳 機能(理性)と結びつける前頭前野─線条体─視床─ A10 モ. おわりに. ジュレータニューロン群─大脳辺縁系の連合をダイナミック・. セラピストのこうやればよくなるというマニュアル的な思い. センターコアと呼ぶことを提唱 3)し,ポジティブな発想が運動. こみを克服し,潜在認知を考慮して,基本動作ができなくなっ. 効果や運動学習の質を変えることを強調し,成果をあげている。. た患者へのアプローチは基本動作ができる患者や健常者の運動. よく見かける治療的な問題を感じる場面. 学習とはまったく違う点があることを認識しなければならな い。情動や潜在認知による構えやバランスの戦略を変えられる. 1.廃用症候群の予防. ようになったとき,行動変容を定着,保持できるアプローチに. 早期座位,早期離床は重要なことはいうまでもない。しかし,. 一歩近づけるのではないかと今後の展開に大きな期待を掛けて. 治療者の思いこみや期待が過剰になり姿勢が崩れてもさらに続. いる。. けると,患者は辛い,苦しいなどネガティブな感情を強く感じ て,反って諦めやうつ,過剰な防衛反応を引き起こす原因をつ くりだしてしまう。 2.背臥位が引き起こす問題 低反発の寝具の発達で背臥位で動くことが少なく,同じ肢位 をとる時間が長くなっている。背臥位で不動が持続すると持続. 文 献 1) 長崎 浩:動作の意味論.雲母書房,東京,2004,pp. 74–181. 2) 下條信輔:サブリミナル・インパクト.筑摩書房,東京,2008, pp. 10–239. 3) 林 成 之: 思 考 の 解 体 新 書. 産 経 新 聞 出 版, 東 京,2008,pp. 16–66..
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