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人口減少時代の環境デザインを考える

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Academic year: 2021

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(1)2. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 清水泰博 Kiyomizu Yasuhiro 東京藝術大学. Tokyo University of the Arts. 人口減少時代の環境デザインを考える 令和のデザインサーヴェイ Think about Environmental Design in the Age of Population Decline: Design Survey in Reiwa Era. 本特集号の企画は2019年度の環境デザイン部会のテーマを「人口減少時代 の環境デザイン」と定めたところから始まったものです。少子高齢化が日常 的に言われる現代の日本、それでは現実に何が起こっているのかを見てみよ うということからこの企画はスタートしました。1967年に1億人を超えた日 本の人口は、2008年に1億2,808万人のピークを迎え、その後は減少に転じ. ていきます。現在2020年7月1日時点では1億2,596万人、既にこれは2008年. のピーク時から212万人の減少であり、平均すると毎年ほぼ18万人づつ減少 していることになります。 歴史的に見れば常に経済的に発展する国々は移り変わっていきます。今は. BRICS の台頭が見られますが、これから発展する国々では人口増が、成熟. 化した国では人口の安定化が、また場合によっては減少に転じていきます。 日本のゴールデンエイジと言われた1980年代は発展している人口増の時代で した。日本はその後のバブル期を経て、人口減少時代へと突入し、現代は減 少化の中でも一つのターニングポイントに来ているようです。今は人口の減 少と同時にグローバル化により多くの多国籍の人々を受け入れるような社会 変化が始まっています。環境デザイン部会のテーマとして、そのような時代 背景の中で一体何が起こっているのか、様々なジャンルにいる部会員からの 報告を集めようというのが一つの趣旨でした。またその中にあって新たな萌 芽として、どのような次への動きが始まっているのかを探ろうという意味合 いもあります。 またこのテーマのもう一つの意味は現代の「デザインサーヴェイ」という ことです。「デザインサーヴェイ」とは都市、建築の分野(環境デザインの 分野)で1960年代半ばから70年代にかけて活発だった活動です。これは多く が建築や集落の実測、図面化といったものでしたが、その時代に残っている 先代の知恵を探索することによって、そこから新たなデザインのコンセプト を見出していこうとするものでした。その時代から50年を経た今、本特集で は「デザインサーヴェイ」をより広い意味として捉え、部会員が関心を持っ ている、今起こっていること、気づいていること、考えていることをレポー トしてもらおうというものです。それは各人が現状認識を深めると同時に、 広く他の部会員の視点を知る機会に出来ればということもあります。またこ の企画は当初からデザイン学会の特集号などでの書籍化を考えてスタートし ました。そこで求めたものは下記のようなことでした。 1.都会の状況、地方の状況、田舎の状況などの現状調査報告など。 2.ハードづくりの変化、住まい方の多様化、ソフトの取組み例など自分 が興味深く思っている現代の事例・活動等報告など。 3.部会員による新たな試みの提案など。 そして6月末には18名からの報告、提案などの論考が集まりました。そこ で特集号に向けての新たな試みとして、集まった論考をまとめ、改めて投稿.

(2) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 者に返すことによって他の部会員の原稿を読んでもらい、それへのコメン ト、質問などを再度集めることとしました。そして集められたコメントに執 筆者が答える形の座談会の場を設けました。この座談会は日本デザイン学会 春季大会時に行う予定でしたが、コロナ騒動の為、オンラインにて7月11日 に行われました。この試みは座談会後の原稿の修正、加筆も可能ということ で、特集号執筆に査読を設けたようなものでもあり、また座談会自体は論考 に対するコメント、質問に答えるような内容ですから、大会の口頭発表の質 疑応答部分をまとめて行うようなかたちでもありました。その過程を経たも のが今回の特集号になっています。目次を見て頂ければお分かりかと思いま すが、そこには様々な現場での2020年の状況が示されています。 編集に当たっては、論考募集においては先に記しましたように大きく3つ に分けておりましたので、本誌では特に区切りは設けていませんが、それぞ れのまとまり毎に分けて構成しています。 第一部となる現状調査報告は、個別の地域からの報告では自由が丘という 商業地で起こっている商店街経営者の少子高齢化のことが清水から、過去の 人口減少期にスウェーデンがとった公園政策については鈴木によって紹介さ れています。施設の将来として、動物園に今後求められることについての考 察が上綱からあり、パブリックアートが隆盛を極めた90年代に設置された作 品のその後のメンテナンスの状況報告が森山からありました。歴史都市・金 沢での歴史的建造物の保存に見られる行政の対応姿勢の変化の現状について は豊島から、観光の視点からは石川県白山市でのサウンドスケープ利用の可 能性の報告が池田からありました。現代らしい視点としては、まちづくりに 参加しにくい若年層の意見を取り込むための SNS 利用の可能性といった川. 合らの研究もあります。現代のミュージアムでの情報伝達の事例の報告が伏 見から、また今後増えるであろう様々な場での人型ロボットの形状検証の実 際も橋田によって紹介されました。 第二部の活動報告では、コミュニケーションを誘発するプランターについ. ての報告が清水らからあり、高齢化社会の中での植物を使ったコミュニティ 実現の可能性が示されています。また空き家利用の観点からの「もうひとつ の住まい方」の可能性の活動報告が佐々木からあり、地域からの事例として は、秋田の「空き家や高齢者に優しい都市」に向けた取り組みなどが山内に よって、藤本からは小さな私設ミュージアムなどの地元住民たちによる大阪 の活動の報告と、そのような住民のシビック・プライドの重要性が指摘され ています。金沢の土田からは町家のリノベーションと共に「音風景」発信の 活動報告が、伊藤からは三重県桑名市における自治体によるプレイス・ブラ ンディングの活動が、原田からは八代市の紙漉きの街・宮地での地域文化を 次世代へつなげようとする活動が報告されています。 第三部の提案では、杉下からは国産木材の活用を歴史的経緯を参考に、改 めて「必需品」という観点からの商品開発の提案で、山本からは人口減時代 の交通手段について、目的地へのラストワンマイルでのシェアードスペース の提案でした。 このように本特集号を通読してみると論考それぞれが今の時代に考えなく てはならないことの指摘となっていることが分かります。そしてこれらがこ れからの環境デザインの方向性であることも示されています。この特集号が これからの日本の課題を考える一端になりましたら幸いです。. 3.

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