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慶應義塾大学文学部心理学研究室

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Academic year: 2021

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DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.36.45 263 川畑: 慶應義塾大学文学部心理学研究室

慶應義塾大学文学部心理学研究室

川 畑 秀 明

慶應義塾大学文学部

Department of Psychology, Faculty of Letters, Keio University

Hideaki Kawabata

Faculty of Letters, Keio University

慶應義塾大学(以下,当大学の慣例に従い「本塾」と 略す)に所属する心理学の教員・研究者は,東京(三 田・信濃町・芝)と神奈川(日吉・矢上・藤沢)にある キャンパスの様々な学部に点在しています。その中で も,文学部心理学専攻,大学院社会学研究科心理学専攻 は,基礎心理学に関する教育研究の中心的役割を担って います。本稿では,学部・大学院の心理学専攻をまとめ て「心理学研究室」とよび,紹介していきます。 本心理学研究室は,三田キャンパスと日吉キャンパス に研究室や実験室,実習室があります。2018年4月現 在,三田には 7名,日吉には2名の教員,計9名で構成 されています(うち,4名が本学会会員)。 三田キャンパスは東京都港区三田にあり,山手線田町 駅・都営地下鉄三田駅から徒歩8分程度と,とても便利 な場所にあります。本学会の前理事長が本研究室の教員 だったということもあり,ここ数年,本学会の春に開催 される第1回フォーラムの会場となっているので,おみ えになった会員の方々も多いのではないでしょうか。そ の利便性ゆえ,ぜひお越し下さいと言いたいところです が,猫の額ほどの丘の上に建物が密集し,かつ老朽化し た施設も多いので,来てみたら驚かれるかもしれませ ん。三田では,研究室棟という建物の地下1階に教員研 究室と実験室があります。もうすぐ築50年になる古い 建物です。地下とはいえ窓があるのですが,夏は暑くて 冬は寒く,そして暗い場所にあります。教員の個室研究 室が7つに実験室が9つありますが(Figure 1A),実験室 は大学院生の居室を兼ねているので十分なスペースが確 保されているわけではありません。そのため,南別館と いう建物には大学院社会学研究科実習室や,プロジェク トスペースに賃貸の研究室があります。大学院実習室で は,乳幼児の発達研究や臨床発達心理学(障害児研究を 含む)等の実習と研究が行われています。プロジェクト スペースは築10年程の比較的新しい建物の5階に, 75平 米程の部屋が全5室ありますが,ほぼ心理学の教員が借 りています。私も1部屋を借りていて,月額16万円ほど の賃料を捻出するための資金繰りの苦労が絶えません が,研究員や大学院生の研究環境を維持するためには仕 方がないものです。 三田キャンパスに隣接する綱町地区には動物実験室が あります。「綱町」というのは旧地名で,三田キャンパ スから徒歩5分ほどの場所,本塾の中等部のグラウンド の片隅にあります。ハトやカラス,マウスやラット等の 動物を用いた行動実験・生理実験・薬理実験が行われて います。ちなみに,かつては同じグラウンドの別の片隅 にMRI実験施設もありました。 日吉キャンパスには,第8校舎という建物に心理学研 究室があり,知覚や認知神経科学などの研究が行われて います。建物は1977年築ですから,築40年ほどですが, 実験室は近年リフォームがなされました。なお,日吉の 心理学教室には,文学部に所属する 2名の教員以外に も,経済・法・商・理工の学部に所属する4名の専任教 員が在籍しており,そのうち2名が本学会員です。 本塾における心理学の講義は1877 (明治10)年に始ま り,1926 (昭和元)年には三田に実験室が開設され, 1928年には文学部において心理学専攻が作られました。 動物実験室は戦後の 1952 (昭和27)年につくられまし た。実験心理学の祖であるヴントがライプツィヒに実験 室を創設したのが1879 (明治12)年,東京大学での心理 学の講義が1877年に始まり1903年に実験室が開設,京 都大学でも1906年に研究室が設置されたのに続き,日

The Japanese Journal of Psychonomic Science

2018, Vol. 36, No. 2, 263–265

紹  介

Copyright 2018. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. Corresponding address: Department of Psychology, Faculty

of Letters, Keio University, 2–15–45 Mita, Minato-ku, Tokyo 108–8345, Japan. E-mail: kawabata@flet.keio.ac.jp

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264 基礎心理学研究 第36巻 第2号 本の私立大学では最も早いものとなっています。創設者 の横山松三郎以来,本塾における心理学の教育研究は 様々な変貌を遂げつつ,実験室の場所や設備についても 様々な変貌を遂げてきました。1926年,三田に最初の 実験室が開設されて以降,教員の増員や学生数の増加な どの理由により数回の引っ越しを余儀なくされました。 横山に続いて 1932年に友田善二郎,1936年に林銈蔵が 教員に加わり学生数も増えていきました。さらに,1950 年代には小川 と印東太郎が,1960年代には佐藤方哉と 小谷津孝明が教員に加わり,本心理学研究室の現代的基 礎を築きました。実験室がある三田の建物には1969年, 綱町の動物実験室には1990年代に移転し,現在に至り ます 。なお,1966年時点での設計案がありますが(Fig-ure 1B),基本的な部屋構造はそのままに,少しずつ変 化を遂げていきました。 文学部に入学した学生は,1年次を日吉キャンパス (以下,日吉)で教養教育を受けます。その後2年次か ら三田キャンパス(以下,三田)にて専攻に属して専門 教育を受けることになります。日吉で学ぶことのできる 心理学科目としては,心理学I・II (概説科目),心理学 III・IV (実験実習科目)・自然科学特論(講義もしくは 演習科目)といった科目があります。自然科学特論とい う言葉からうかがえるように,教養教育の中での心理学 が自然科学としての位置付けになっているのは特徴的な 点であると言えるでしょう。心理学に限らず,様々な科 目を日吉で受けるなかで自分の進路を模索し,文学部の 1年生は17ある専攻の中から1つを選択して進学するこ とになります。 ただし,専攻によっては定員があるため,必ずしも希 望通りの専攻に進学できるわけでありません。文学部心 理学専攻の定員は1学年25名で,例年数名から十数名の 希望者の超過があります。過去5年でいうと,定員に満 たない年もあれば定員の1.7倍ほどの希望者が集まる年 もありました。希望者が定員を超過していなくても志望 理由などについて教員全員による集団面接をしますが, 定員を超過した場合はこの面接により選抜を行います。 同じ文学部内の専攻でも,社会学専攻や人間科学専攻が 1学年100名程度を定員としているのに比べれば,心理 学専攻は25名ですから小規模なものとなっています。 学部教育では,生物心理学・行動分析学・知覚心理 学・認知心理学・発達心理学・認知神経科学の6つの領 域を柱として,実験的研究を中心とした教育研究が行わ れています。さらに非常勤講師による授業科目を設置し ており,臨床心理学や精神医学,行動計量学,神経薬理 学などを学ぶことができます。また,文学部では他専攻 に教育心理学や発達心理学,社会心理学等の専任教員が いるため,多くの心理学関連の授業を受けることがで き,文学部全体で考えると幅広い視野を養うことができ る心理学教育がなされています。心理学専攻の学部生は 3 年次からゼミに入ります。現在,7 つのゼミがあり, Figure 1. Current laboratory rooms (panel A) and the proposal design in draft (panel B).

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265 川畑: 慶應義塾大学文学部心理学研究室 卒業論文のための研究を行います。心理学実験実習は3 年次にあり,毎回のようにレポートの提出が求められ, 実験データの収集からデータ分析,まとめ方に至るまで の教育を受けることになります。 大学院生の場合,社会学研究科心理学専攻に所属する ことになります。講義・演習の授業に参加しつつ,自ら 実験を行うことにより研鑽を積むことになり,その他に も学部の心理学実験のTAやインストラクターにも従事 します。大学院入試での募集人員は,1学年で修士課程 で5名,博士課程で2名と,少数先鋭であることがうか がえるでしょう。また「心理学コロキウム」という心理 学研究室全体での研究発表の場が年に2回ほど設定され ており,教員,若手研究員,大学院生全員が参加してい ます。特に,博士論文を提出する直前の大学院生はこの 場で発表することで,異なる様々な研究分野の教員・研 究者に自分の研究を紹介する機会を得ています。さら に,大学院生には国際的な視野をもって研究を進めても らうために,国際学会での研究発表や英語論文の執筆が 奨励されているだけでなく,ゲストとして招いた海外の 著名な研究者と講義や演習,講演会を通して接する機会 を設けています。海外からの特別招聘教授は例年 1名 で,英語による授業が行われています。2018年度は, ウィーン大学教授のHelmut Leder氏を招聘し,「実験美 学」に関する講義がなされる予定です。 上記のように,当研究室の教員の関心領域は,実験心 理学を背景としています。2018年4月現在,伊澤栄一准 教授(生物心理学・動物行動学・神経行動学),伊東裕 司教授(認知心理学・司法心理学),梅田聡教授(認知 神経科学・神経心理学・認知心理学),大森貴秀助教 (発達心理学),坂上貴之教授(行動分析学・行動経済 学),寺澤悠理助教(認知神経科学・神経心理学),皆川 泰代教授(言語心理学・発達心理学・認知神経科学), 山本淳一教授(発達心理学・発達臨床心理学・応用行動 分析学),そして本稿の筆者である川畑秀明(感性心理 学・認知神経科学・神経美学)の9名の教員がいます。 教育・研究の柱としては,生物心理学・行動分析学・知 覚心理学・認知心理学・発達心理学・認知神経科学の6 つの領域ですが,9名の教員が緩やかに重なりあいなが ら教育・研究を展開しているとともに,1つの領域だけ でなく複数の異なった領域を専門としている教員が多い のが特徴だと思います。 現代の心理学の研究には多くのスタイルがあり,チー ムプレイが求められますが,本研究室ではそれぞれの教 員が自分の専門領域に閉じることなく,多くの共同研究 を行っています。同じ専攻内で,教員同士が共同研究を 行っていたり,応用的研究や心理学以外の隣接領域との 共同研究や,海外との共同研究,企業との共同研究も多 く取り組まれていたりします。それも本研究室の特徴だ と思います。現在のところ,公認心理師や臨床心理士の 資格のための教育プログラムは準備されていませんし, 心理学の基礎領域以外のテーマで学位論文を書くには難 しいかもしれません。あくまでも実験心理学を背景とし た研究であれば,研究のためのリソースは豊富にあるわ けですから,幅広い研究ができるでしょう。ぜひ,一 度,当研究室に足をお運び頂ければ幸いです。

Figure 1. Current laboratory rooms  (panel A)  and the proposal design in draft  (panel B) .

参照

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