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Microsoft Word - RealEstate-backedLoan_ABS_COMM_J_ EN追加.doc

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2007 年 4 月 20 日 日本のストラクチャード・ファイナンス

不動産担保ローン ABS の分析手法

アナリスト: ストラクチャードファイナンス部 佐当絵里子、東京 電話 03-4550-8270 寺本久夫、東京 電話 03-4550-8280 山本武成、東京 電話 03-4550-8656 事業法人・公益事業格付部 吉澤亮二、東京 電話 03-4550-8453 *本格付け規準リポートは2007年4月20日に発表されたものであり、現在では適用しておりません。 昨今、ABS(資産担保証券)案件の裏付け資産としての不動産担保ローンに注目が集まってい る。従来の不動産担保ローン専業会社に加え、複数の消費者金融会社や商工ローン会社などが不 動産担保ローン・ビジネスに本格参入し始めたことに起因して、不動産担保ローンの残高が急増 している。その結果、不動産担保ローンを裏付けとした証券化案件が数多く組成されるに至って いる。本稿ではこうして組成された証券化案件を「不動産担保ローンABS」と呼び、スタンダー ド&プアーズの同案件の分析手法について解説する。 2006 年 12 月に貸金業関連改正法が国会で可決・成立したのに伴い、消費者金融会社や商工ロ ーン会社各社は近い将来、主力商品である無担保ローン商品の金利引き下げを中心とした変更を 余儀なくされることとなった。各社が低金利での採算を想定した事業戦略への転換を図るなか、 比較的低利運営が容易な不動産担保ローンに注目し、積極的に取り組んでいる会社も数多く見ら れる。折りからの国内不動産市況の活況で、担保不動産の価値に着目した当該ローンに取り組み やすい状況にあることから、近年、消費者金融会社や商工ローン会社において不動産担保ローン の取り扱いが急激に増加していることが、この背景にある。 本稿の前段では、不動産担保ローン事業の概要や主な商品性について解説し、後段では、不動 産担保ローンABS を組成する上で直面する、裏付け資産の特徴に起因した様々な問題点に焦点を 当て、案件の仕組み上問題点をどのように整理し、解決しているのか述べる。加えて、必要信用 補完比率を決定する際のスタンダード&プアーズの格付け分析手法についても解説する。 なお、本稿で取り上げる不動産担保ローンは、①債務者の返済資力と②担保不動産の価値を審 査してこれら2 点に依拠して貸し出す「リコース型ローン」であり、不動産価値にのみ依拠して 貸し出す、いわゆる「ノンリコース・ローン」は対象ではない。また、住宅取得を目的とする住 宅ローンは本稿の対象外である。特段の表示がないかぎり、本稿において「不動産担保ローン」 とは上記のような範疇のローンを意味するものとする。

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本稿には、確立した判例・学説の存在しない法律上の論点について、スタンダード&プアーズ の考え方を表明する記述が含まれている。本稿における記述は、現時点においてスタンダード& プアーズが相当程度に合理的であると判断している意見に基づくものである。今後、本稿に記載 されている考え方に影響を及ぼす判例や学説が現れる可能性があり、その場合にはスタンダード &プアーズの考え方や依拠する意見も変更される可能性がある。

1.不動産担保ローン事業の概要

不動産担保ローンは対象債務者によって、①法人向けローン、②個人向けローンの2 つに大別 される。①の法人向けローンは不動産販売業者向け販売不動産仕入れ代金としてのローンが主流 で、②の個人向けローンは、複数の既存借り入れを一括返済(リファイナンス)することを主眼 にした、いわゆる「おまとめローン」が中心である。ローン商品の種類については、「2.不動産 担保ローンの商品性」の項を参照されたい。 不動産担保ローン事業の主要プレーヤーとしては、法人向けローンではアトリウム、ファース トクレジット、SFCG(旧商工ファンド)、NIS、SMBC ファイナンスサービス、オリックスなど が挙げられ、個人向けローンではアイフル、ディック(CFJ)、アコム、レイク(GE コンシュー マー・ファイナンス)、三洋信販などが挙げられる。 不動産担保ローン事業の現状 1)法人向けローン 法人向けローンは銀行の不動産担保貸し出しと比較すると、一般に資金調達費用率および貸倒 費用率は高いものの、適用金利が高く、経費率が抑制されていることから、比較的高い収益率が 維持される傾向が見られるようである。一方、同業他社との競合激化により、近年、貸出金利の 低下傾向が見られる。 2)個人向けローン 個人向けローンは、無担保消費者ローンに比べて平均金利は低いものの、貸倒費用が極めて低 く抑えられているため、収益性の点で無担保消費者ローンに大きく見劣りがすることはないと考 えられる。しかし、ここ数年は競争が激化してきていることなどから、金利は低下傾向にある。 大手消費者金融の開示情報によると、平均金利は14-15%と、無担保消費者ローンの 22%程 度の利回りに比べ7-8%程度見劣りする。 コスト面では、不動産担保ローンの方が無担保ローンより優位にある。差異の主因は、担保の 有無が大きく影響する貸倒償却率である。不動産担保ローンの償却率は各社でばらつきがあるも のの、ここ数年0-2%程度で推移しているのに対し、無担保ローンは近年 7%程度の水準となっ ている。したがって、不動産担保ローンの貸倒費用の方が5-7%程度低く、貸出利回りの差がか なりカバーされていると言えよう。また、不動産担保ローンではいわゆる「グレーゾーン金利」(出 資法上限金利以下かつ利息制限法上限金利超の金利)を適用していないものも多く、過払い金返 還コストが少なくて済むことも優位である。ただし、経費率については、優劣を決めるのは難し い。規模の面では不動産担保ローンが1 口座当たり貸出額が 300 万-500 万円程度と多額なのに 対し、無担保ローンは50 万-60 万円程度と非常に小口であるため、不動産担保ローンの方が優 位だが、審査関連費用、担保処分費用を含む回収関連費用などを考慮すると、不動産担保ローン

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以上、総合的にみると、不動産担保ローンの収益性が無担保ローンに大きく劣るようなことは ないと考えられる。効率的な業務の推進により経費率が低下している会社については、むしろ不 動産担保ローンの方が収益性が高くなっている場合もありうる。 今後の見通し 法人向け不動産担保ローン事業は今後、不動産市況の変化の影響を大きく受けるであろう。不 動産市況が軟調となった場合、資金需要が減少し、短期貸し出しが多い同事業では、同程度のペ ースで収益も減少する恐れがある。さらに、不動産の売却・転売が困難となり、借り手の資金繰 りが急速に悪化した場合、または不動産価格が下落し回収率も低下した場合、貸倒費用が増加す る可能性がある。各社が同事業を安定的に行っていく上で重要なポイントは、1)不動産市況の動 向を十分注視する、2)審査段階において、各案件の物件処分の可能性、売却価値などを適切に判 断する、3)与信費用を管理可能な水準に抑制していく、4)各案件のリスクに見合った十分なリ ターン(利回り)を確保する――ことである。 一方、個人向け不動産担保ローン事業については、今後数年間は、貸金業関連法改正の影響で、 追加借り入れができない多重債務者の多くがこうした不動産担保ローンに流れることも予想され、 一時的に需要が伸びる可能性もある。しかし、こうした需要を狙って、一部の銀行やその他金融 機関も同市場に参入していることから、競争はさらに激化し貸出金利が低下すると予想される。 さらに、総量規制の導入により貸出残高も制限されるであろう。ローンにグレーゾーン金利が付 されている場合は、業法改正の影響などにより、過払い返還費用を含めた貸倒費用の増加も見込 まれる。その結果、同事業の収益性はさらに厳しくなっていくことが予想される。こうしたなか で同事業を維持していくためには、1)コストをカバーする十分な貸出利回りを維持する、2)適 切な与信基準や担保評価基準を引き続き維持する――ことが必要となる。競争激化のなかで、不 動産担保価値の評価基準が緩和された場合などは、貸倒費用の増加につながる恐れもあることか ら、2)は特に重要なポイントとなろう。

2.不動産担保ローンの商品性

商品概要 一般に「不動産担保ローン」と呼ばれているローン商品の種類・内容は、表1 の通りである。 表1:不動産担保ローン商品 目的 顧客 期間 金利 担保形態 不動産業者 向けローン 物件仕入れ代金 (短期つなぎ資金) の借り入れ 不動産販売 業者 1-2 年 固定金利; 7-10%/年が中心 (20%超のケースも あり、適用金利に幅 がある) 抵当権 根抵当権 譲渡担保権 根譲渡担保権 おまとめ ローン 既存の複数ローン (無担保消費者ロ ーン等)の借り換え 個人 10-20 年 固定金利; 10-15%/年が多い 根抵当権が 多い 個人向け フリーローン 資金使途自由 個人 1-2 年の短 期ローン/ 10-30 年の 長期ローン 変動金利; 8-10%/年が多い 抵当権 根抵当権 *上記以外に、中小零細企業向けに運転資金を使途として貸し出す「事業者向けローン」もあるが、実際のサンプルデー タが少なく、詳細は不明である。 出所:スタンダード&プアーズ

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不動産業者向けローン:不動産販売業者を対象に、販売用不動産の仕入れから売却販売までのつ なぎ資金として貸し付ける短期ローン。仕入れた物件を売却して得た代金によってローンの返済 が行われる。あくまでもつなぎ資金が主な資金使途であるが、なかには運転資金などを貸し付け ている例もある。銀行などの融資と比べて金利は高いものの、審査・決裁が迅速で、ローンがス ピーディに実行されることが魅力である。返済方式は満期一括返済方式のものが多い。同商品は、 不動産担保ローン専業会社に加え、中小零細企業向けローン(いわゆる「商工ローン」)を主要ビ ジネスとしていた会社が近年積極的に取り扱っている。 おまとめローン:既存の無担保消費者ローンなど、複数の借り入れ(他社からの借り入れも含む) をまとめてリファイナンスすることを主眼とするローン。不動産が担保に供されることから、一 般的には、従来の無担保借り入れよりも低金利でのローン実行が可能になっている。結果的に、 債務者はローンを完済しやすくなるという効果がある。返済方式には元利均等返済方式、元金均 等返済方式、ミニマム・ペイメント方式などがあり、ローン契約がリボルビング方式になってい るものもある。同商品は、不動産担保ローン専業会社に加え、個人向けローン商品のチャネルを 持つ消費者金融会社や信販会社を中心に取り扱い残高が増えている。 個人向けフリーローン:いわゆる「ホーム・エクイティ・ローン」的な位置づけで利用されるこ とを意図した商品ラインナップとなっていることが多い。ただし、実際の運営上は第一順位の抵 当権となっているケースがほとんどで、住宅ローン等を完済した不動産を担保にした貸し付けと なっている。資金使途は自由だが、実際には他社からの借り入れへの返済に回すことも多く、お まとめローンとの区別は判然としていない。返済方式は元利均等返済方式、元金均等返済方式、 ミニマム・ペイメント方式などがあり、ローン契約がリボルビング方式になっているものもある。 おまとめローン同様、不動産担保ローン専業会社に加え、個人向けローン商品のチャネルを持つ 消費者金融会社や信販会社を中心に取り扱い残高が増えている。 担保権の種類 不動産担保ローンの担保権には、表1 に示した抵当権、根抵当権、譲渡担保権、根譲渡担保権 などがある。不動産販売業者向けのローンには担保権として抵当権が設定されていることが多く、 個人向けローン(おまとめローン、フリーローン)には、将来の追加貸し出しを容易にするため に一定の貸し付け限度枠を決めた根抵当権が設定されていることが多い。 抵当権・譲渡担保権は、被担保債権の移転に随伴するため、証券化案件の組成上大きな問題は 生じない。根抵当権・根譲渡担保権については、確定(以後、確定時点の残存債権のみが被担保 債権となる)を行わなければ被担保債権の移転に随伴しないため、根抵当権・根譲渡担保権の実 行による回収(リカバリー)を見込むような案件に仕立てる場合、根抵当権・根譲渡担保権の確 定を実施する必要がある。具体的には債務者宛てに確定の通知を送付するか、または債務者から 承諾を取得することになる。そもそも根抵当権・根譲渡担保権を設定するのは、他の担保権(抵 当権・譲渡担保権)で対応しようとした場合に、追加貸し出しを行う都度、担保権設定を行う必 要があるという手続きの煩雑さを回避するところに理由があることを考えると、この点が案件組 成上、1 つのハードルとなる。根抵当権・根譲渡担保権を確定せずにリカバリーを見込める証券 化案件に仕立てるための仕組み上の工夫については「3.不動産担保ローンABS のストラクチャ ー」の項を参照されたい。

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3.不動産担保ローン ABS のストラクチャー

不動産担保ローンを証券化する際のストラクチャーのポイントとして、以下の点が挙げられる。 基本スキーム 基本的な枠組みとしては、通常の証券化案件と同様、倒産隔離(バンクラプシー・リモート)性 を有する特別目的会社(倒産隔離 SPV)を設立し、対象債権である不動産担保ローンを、1)当該 SPV へ譲渡する方式、または 2)信託銀行・信託会社へ信託譲渡する方式が想定される。ローン債 権については、当初から特例法登記などにより第三者対抗要件を具備する必要がある。いずれの場 合も譲渡された裏付け資産はオリジネーターの信用力の影響から完全に分離されていることから、 付与できる格付けレベルに制限はない(すなわち、「トリプルA」まで格付けが可能である)。 不動産担保ローンの担保権を移転し、担保からの回収(リカバリー)を見込むことを仕組み上 考える場合、抵当権・譲渡担保権は被担保債権の譲渡に伴って移転するので(随伴性)特に問題 はないが、根抵当権・根譲渡担保権については確定手続きを行うことが別途、必要となる。不動 産担保の移転登記に関しては、1)案件当初から移転登記必要書類一式をあらかじめ準備し、SPV サイドで保管している場合で、かつ 2)オリジネーターの信用事由など一定の事由が発生した際 に移転登記を一斉に実施するような仕組みが設定されている場合、いずれの担保権についても案 件当初は移転登記を留保することが可能と考える。また、根抵当権・根譲渡担保権については、 確定の登記についても留保が可能である。このような登記留保の取り扱いについては、オリジネ ーターが突然破綻するようなワースト・ケースにおいては、あらかじめ準備された登記必要書類 を用いて登記を実施することが困難なケースも想定される(例えば、オリジネーターの代表者名 が管財人名に変更され、保管している委任状が利用できないケース)。ただし、そもそも当該担保 権の被担保債権であるローン債権について譲渡および第三者対抗要件具備がなされており、破綻 後のオリジネーター(管財人)が当該登記申請について協力を拒否するインセンティブがないこ となどから、格付け分析上、問題はないものと判断している。 根抵当権・根譲渡担保権については、上記のように証券化実行時に確定を行わなければ案件上 リカバリーを見込むことはできない。一方、追加貸し出しの際の手続きを容易にするという利便 性の観点から根抵当権・根譲渡担保権を設定していることを考えると、証券化実行後の追加貸し 出しを想定した場合、根抵当権・根譲渡担保権を確定することは顧客との関係上好ましくない。 その点、会社分割スキームを用いれば、根抵当権を確定せずに倒産隔離SPV へ債権とともに担保 を移転させることが可能となる。 会社分割スキーム 上述の通り、根抵当権を確定せずに証券化を実施するという目的を達成するために、会社分割 の枠組みを利用することが可能である。会社(オリジネーター)の一事業部門(不動産担保ロー ン事業)を会社分割によって本体から切り離し、SPV 化された承継会社に不動産担保ローンを保 有させることによって、裏付け資産である不動産担保ローンをオリジネーターの信用力の影響か ら分離するという発想である。 会社分割を原因として不動産担保ローンを移転する場合、不動産上の根抵当権は、分割会社(オ リジネーター)と承継会社(SPV)との間で準共有となる。この権利関係を反映するため、会社 分割を原因とする根抵当権一部移転登記を行う。さらに、承継会社の権利がオリジネーターであ

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る分割会社よりも優先することを明確にするために、優先の定めの登記を行う。これにより、承 継会社は根抵当権移転に関する対抗要件を具備することになる。なお、不動産担保ローン自体は 金銭債権なので、通常通り特例法登記の実施により、第三者対抗要件を具備する必要がある。 しかしながら、会社分割を用いたスキームでは、例えば、承継会社が貸し出しなどのオペレーシ ョンを行うことが想定されていて従業員が存在する場合には、承継会社が想定外の労働債務等を負 担する可能性があるため、SPV 性に悪影響を及ぼす可能性がある。また、承継会社の株主がオリジ ネーターである点なども、SPV 性の観点から問題となる。スタンダード&プアーズでは、倒産隔離 に関する格付け規準に照らしながら(詳細は2006 年 10 月 18 日付のリポート「日本のストラクチ ャード・ファイナンス案件:SPV の倒産隔離の考え方」を参照)、これらの問題点を中心に個別案 件における仕組みを総合的に勘案し、格付け可否を検討する。このようなスキームでは取引の性質 上、税務上の問題が生じやすいため、その点についても十分な注意が必要となる。 なお、会社分割に関する格付け分析の視点からの考え方の詳細については2007 年 2 月 23 日付 のリポート「日本のストラクチャード・ファイナンス案件:会社分割を利用した事業証券化案件 の分析のポイント」が一部参考になるものと思われる。 サービシングに関する注意点 不動産担保ローンを裏付け資産とする証券化の場合、裏付け資産が無担保ローンの場合とは異 なり、延滞債権の回収に際してサービサーが抵当権などの担保権を実行することになる。通常の 案件ではオリジネーターが裏付け資産のサービシング業務を委任されることが多いが、当該サー ビシング行為が弁護士法(72 条)およびサービサー法(債権管理回収業に関する特別措置法)に 抵触することがないよう、注意が必要である。 サービサーであるオリジネーターがサービサー法上のサービサーでない場合は、担保権実行等 のサービシング業務を別途、スペシャル・サービサー(サービサー法上のサービサー)に委任す る必要がある。 なお、対象となる不動産担保ローン債権にいわゆる「グレーゾーン金利」が適用されている場合に は、注意が必要となる。サービサー法上のサービサーは、グレーゾーン金利を含む債権については必 ず金利の引き直し計算を行った上で回収行為を行うものとされている。担保不動産からのリカバリー を見込むような証券化案件の場合で、担保権実行等のサービシング業務をサービサー法上のサービサ ーに委任する場合、金利引き直し計算後の元本額を前提に格付け分析を行う必要がある。 他ローンのグレーゾーン金利に関連するリスク 不動産担保ローンについては、一般的に当該ローン自体は現行の利息制限法上限金利以下で貸し 出されていることが多く、いわゆる「グレーゾーン金利」にかかる過払い金返還請求の問題(注1) 生じない。しかしながら、貸出人(オリジネーター)が過去に当該債務者に対して貸し出した無担 保消費者ローンなどにグレーゾーン金利が適用されていたようなケースにおいては、過去に支払っ たグレーゾーン金利部分につき当該無担保ローンの元本に充当してなお過払い金がある場合、当該 過払い金の不動産担保ローン債権への元本充当が主張される(注2)、あるいは当該過払い金返還請求 権と不動産担保ローンの返済債務とが相殺される可能性がある(注3)多くの証券化案件においては、 対象債権の譲渡時に債務者から異議をとどめない承諾を取得することは稀であり、上記のような元 本充当や相殺の抗弁が切断されるようなケースはあまりない。

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このようなリスクについては格付け分析上、懸念対象となっているグレーゾーン金利適用債権 の母体ヒストリカル・データを参考に、格付けレベルに応じた一定のストレスを加えた過払い金 返還発生率を想定し、これに起因する相殺権の行使等により一定程度債権プールが毀損する(ダ イリューション)というシナリオのもと、必要信用補完に関する分析を行っている。 注1:消費者金融会社の多くは現在、利息制限法の上限金利を超える利息、いわゆる「グレーゾーン金利」を 付したローン商品を主力商品として提供している。当該グレーゾーン金利に関しては、貸し手が貸金業 法上の一定の条件を満たしている場合には、同法において認められる「みなし弁済」として有効な利息 の弁済として収受することが可能である。 この条件を満たさない状況下でグレーゾーン金利を収受した場合には、債務者はこれを元本に充当する よう請求することが可能で、さらに元本充当後も剰余がある場合は、剰余部分を過払い金として返還請 求することができる。現実問題として、貸し手が当該条件を完全に満たすことは事実上困難となってい る。各種裁判例において、「みなし弁済」規定の適用範囲を制限的に解する判断が下され、一般的な消 費者金融会社の現行オペレーションに基づいたグレーゾーン金利部分の利息としての収受が不当利得 と認定される可能性が極めて高いことが明確になるなか、2006 年に入って消費者金融業界全体におい て債務者からの過払い金返還請求が急増している。 注2:不動産担保ローンの場合、当該ローン自体がグレーゾーン金利を含むのは稀である。しかし、当該債務 者が他のローンにつきグレーゾーン金利を支払っており、当該グレーゾーン金利部分を当該他ローンの 元本に充当してなお過払い金がある場合には、その影響を考慮する必要がある。証券化対象となってい る不動産担保ローンとは別のグレーゾーン金利付きローンに関する過払い金が当該不動産担保ローン に与える影響として、第1 に当該過払い金の不動産担保ローン元本への充当が考えられる。 まず、当該過払い金を不動産担保ローンに充当する特約がある場合は、当該過払い金は不動産担保ローン の元本に充当される(最判昭和43.10.29)。そのような特約がない場合でも、当該過払い金の不動産担保 ローンへの充当を指定したと推認される場合には、当該過払い金が不動産担保ローンに充当される。過去 の判例によれば、同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される場合、また 基本契約が締結されていない場合であっても基本契約が締結されているのと同様の貸し付けが繰り返さ れているような場合には、そのような弁済指定が推認される可能性がある(最判平成15.7.18、最判平成 19.2.13)。 グレーゾーン金利付きローンの過払い金の、不動産担保ローンの弁済への指定が推認されない場合であ っても、法定充当により当該過払い金の不動産担保ローンへの充当が認められるか否かについては、否 定説が有力のようであるが、肯定説と解される見解もないわけではない(最判昭和39.11.18 奥野健一 裁判官補足意見)。したがって、法定充当が認められる可能性は低いと考えられるものの、今後の判例・ 学説における議論の推移を見守る必要がある。 仮にグレーゾーン金利付きローンの過払い金の不動産担保ローン元本への充当が認められた場合、多く の証券化案件では債務者による異議なき承諾を取得しないため、当該不動産担保ローンの譲受人は、か かる充当を抗弁として債務者から対抗されることになる(民法468 条第 2 項)。なお、名古屋地裁昭和 47 年 7 月 22 日判決によれば、過払い金元本充当については、債務者が異議なき承諾をした場合でも譲 受人に対抗できる可能性がある。 注3:グレーゾーン金利付きローンの過払い金が不動産担保ローン元本に充当されない場合、債務者は当該過 払い金に関する返還請求権を有することになる。この過払い金返還請求権が不動産担保ローン譲渡時に 存在する場合、債務者から異議なき承諾を取得しない以上、不動産担保ローンの譲受人は当該過払い金 返還請求権との相殺の抗弁を債務者から主張されることになる(民法第468 条第 2 項)。なお、グレー ゾーン金利付き債務についてグレーゾーン金利が支払われているものの、元本充当の結果、いまだ過払 いには至っていない状態で、不動産担保ローンが譲渡された場合には、譲渡時において反対債権(過払 い金返還請求権)が存在しない以上、上記の相殺の抗弁は受けない。

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4.格付けの分析手法 個人向け不動産担保ローンを裏付け資産とする証券化対象プールの場合、通常は1 債務者当た りの借入残高は概ね1,000 万円未満であり(平均 300 万-500 万円程度)、債務者数・ローン債権 数が多く、債務者属性・債権属性が比較的均一な大数分散型プールであることが多い。一方、法 人向け不動産担保ローンを裏付け資産とするプールの場合、1 債務者当たりの借入残高は数百万 円から数億円とかなりばらつきがあり、一部の上位債務者に残高が集中する傾向が見られる。債 務者数は数十社から数百社と比較的限定的で、大数分散型プールでないことが多い。 このような事情から、スタンダード&プアーズでは格付けの際、個人向け不動産担保ローンに ついては、ヒストリカル・データに基づいて算出されるベース貸倒率を設定し、これに各格付け レベルに応じた適切なストレスをかけたものを対象裏付け資産のキャッシュフローに適用すると いう、いわゆる「大数分散型ABS」の分析手法を基本的に採用している。担保物件からの回収率 (リカバリー率)についても原則としてヒストリカル・データを参照し、これに適切なストレス を加えたものを分析上利用している。これに対し、法人向け不動産担保ローンは債務者数が少な く上位集中が著しいプールが多いことから、大数分散型ABS の分析手法とともに、債務担保証券 (CDO)の分析手法も併用している。また、担保不動産の中に商業用不動産も多く見られるため、 リカバリー率の算出・設定については、ヒストリカル・データを参照しながら、商業用不動産担 保証券(CMBS)の分析手法も一部取り入れている。 個人向け、法人向けいずれの場合も、不動産担保ローンの債権としてのパフォーマンス(債権 の延滞率・貸倒率)、担保不動産からのリカバリー率、キャッシュフローなどの要素を中心として、 必要な信用補完比率に関する分析を行っている。 債権のパフォーマンス(貸し倒れ等)に関する分析 オリジネーターとのデューデリジェンス・ミーティングなどを通じて、債務者の返済能力に関 するオリジネーターの与信基準および審査手法を確認した後、オリジネーターから提出された不 動産担保ローンのパフォーマンスに関するヒストリカル・データをもとに、ベース貸倒率(主と して当該ローンの担保物件売却による返済を見込まないとの前提での長期延滞率)を算出する。 与信基準および審査方法については、個人向けローンについてはLE(他社借り入れ)件数や、 本件借り入れによるリファイナンスの可否(おまとめローンのケース)、DTI(返済比率)の基準 などから、貸し出し可否や貸し出し可能額、金利水準などを決定しているケースが多い。特にLE 件数基準は貸倒率との相関が高いことから、有効な指標となっているようである。法人向けロー ンについては、企業信用調査会社のスコアなどを参照しつつ、事業収支やローンの資金使途とな っている対象販売用不動産の販売計画を含めた事業プランの評価による回収妥当性の検証を中心 に返済可能性について審査を行っているケースが多い。スタンダード&プアーズでは、オリジネ ーター各社の与信基準および審査方法の特徴を捉えながら、過去および将来の貸倒率の推移につ いて分析を行っている。 近年残高が急増しているようなケースにおいて、ヒストリカル・データがダイナミック・デー タである場合、データ上、残高対比の貸倒率が小さく見える傾向があることから、ベース貸倒率 を算出する際は注意を要する。スタンダード&プアーズではこのようなケースに対応して、算出 の根拠となる残高の捉え方の点などで適切な調整を加えて、ベース貸倒率を算出している。ベー

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ス貸倒率は債権としての貸倒総額に基づいて算出したものであり、貸倒債権からの回収金(リカ バリー)などは考慮していない。以下に、担保物件の売却によるリカバリー率について述べる。 リカバリー率の分析 リカバリー率は、担保不動産の換価による回収額のローン残存金額(被担保債権額)に対する 割合である。リカバリー率は必要信用補完率を決定する際の重要な要素で、不動産担保ローンで は、債務者の信用状態とともに担保物件の価値が与信時においても非常に重視されている。ただ し、案件の仕組み上、リカバリーを案件上のキャッシュフローとして取り込めないような場合に は、リカバリー率をゼロとして必要信用補完率の算出を行う。 なお、法人向けの不動産担保ローンとCMBS 案件の裏付け資産となっているノンリコース・ロ ーンには一見類似性が見られるが、前者の特徴として以下の点があり、これら2 つのローンの相 違点となっている。 • 担保物件に対するデューデリジェンスが簡易に済まされている(地震リスク、環境リスク、 遵法性リスクなどに対する第三者によるデューデリジェンスは通常なされていない)。 • 担保物件は全体的に管理水準が高くない小規模物件が多く、LTV(ローン・トゥ・バリ ュー)率が非常に高い(100%を超えることも多い)。 • 開発リスクがあるものや購入価格を上回る価格での転売を前提に貸し出されているものが 多い。 不動産担保ローンは、法人向け、個人向けの別によって、担保不動産の種類・分散度合いなど がかなり異なる。そのため、リカバリー率の分析についても、以下のように若干異なる分析方法 を採用している。 1) 個人向け不動産担保ローンの場合 個人向けローンの場合、担保不動産は居住用土地建物(一戸建て、マンション)が大半で、商 業ビルなどの収益物件が担保に供されることはほとんどない。担保不動産の評価方法は取引事例 比較法が中心である。担保権の順位は第一順位であることが多いが、第二順位以下の設定となっ ているローンも少なくない。 個人向けローンを裏付け資産とする証券化案件の場合、先に述べたように、かなり分散の効い た大数分散プールであることが多いため、リカバリー率の算定に際しても、主にヒストリカル・ データを参照する。具体的には、オリジネーターから提出されたリカバリー実績データの分析に 加え、不動産物件評価(与信時に提供された鑑定評価書など)のサンプル・チェックやオリジネ ーターとのデューデリジェンス・ミーティングを通して入手した情報を総合的に勘案し、適切な ベース・リカバリー率を設定する。 最終的にストレス・シナリオとして分析上適用するリカバリー率としては、バックアップ・サ ービサーによる回収にかかる一定のコスト、将来的な任意売却比率低下の可能性(通常は任意売 却で換価される方が競売処理よりも高いリカバリー率が期待される)、不動産市況の変動なども考 慮して、上記で算出したベース・リカバリー率に、格付け水準に応じた適切なストレスを加えた ものを採用している。

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2) 法人向け不動産担保ローンの場合 法人向けローンの場合、担保不動産が収益物件もしくは開発物件であることが多い。担保不動 産の評価方法は、①収益還元法・取引事例比較法、②開発法の2 つのタイプに大きく分けられる。 既存の土地・建物をリースアップする、もしくはそのまま転売するなどの出口戦略をもとに、物 件を現況のまま評価する場合に収益還元法・取引事例法を用い、現状の用途が物件評価に際し最 適ではないと判断された場合は、開発法を用いて担保評価が行われることが多い。場合によって は、当該担保物件の利用によって発生する事業キャッシュフロー自体を副次的な担保として部分 的に評価に織り込むケースもある。担保権の順位は第一順位であることが多いが、第二順位以下 の設定となっているローンも散見される。 法人向けローンを裏付け資産とする証券化案件の場合、前述のように、比較的債務者数が少な いため分散度合いが弱く、上位集中が大きいプールになっていることが多いため、リカバリー率 の算定に際しては、大口ローンを中心に、個人向けローンを裏付け資産とする場合よりも多くの 担保不動産のサンプル・チェックを実施している。サンプル・チェックは個別ケースに応じて、 外部の不動産鑑定会社による鑑定評価書(もしあれば)、オリジネーターの稟議書、物件所在地が 確認できる地図、物件外観が確認できる写真などの情報に基づいて行っている。サンプルに関す るオリジネーターもしくは不動産鑑定会社の評価額を検証し、分析のベースとなる数値として、 プール全体に関する担保物件評価額およびLTV 率を算出する。前述のように、CMBS 案件の裏 付けとなるノンリコース・ローンと比較すると、担保不動産に対するデューデリジェンスの水準 が低く、LTV 率が非常に高い(100%を超えることも多い)という特徴があることから、個別ロ ーンからの回収額を精緻に評価することは困難である。また、リボルビング期間が設定されてい る案件においては、当該期間内に裏付けとなるローンが入れ替わるため、プールの平均的なLTV 率を検証することとなる。加えて、対象となる不動産担保ローンの債務者は株式会社であること が多いため、債務者の一部に会社更生法が適用され当該担保が更生担保権となるリスクについて も別途、考慮を要する。 最終的にストレス・シナリオとして分析上適用するリカバリー率としては、上記LTV を基準 として格付け水準に応じて適切なストレスを加えたものを採用している。さらに、貸付金額上 位債務者(格付け水準によって対象社数を調整)については、会社更生法が適用されたケース を想定し、当該上位ローンがデフォルトした場合に適用するリカバリー率については、別途、 更生担保権売却価格を想定して、上記想定リカバリー率に対してさらにストレスを加えたもの を採用している。 3) 担保不動産のモニタリング 不動産担保ローンABS については、無担保ローンを裏付け資産とする証券化案件とは異なり、担 保不動産に関するモニタリングを行う必要がある。個人向けローンは、担保不動産のプロフィール 等が比較的均一であるため、モニタリングに際してあまり大きな問題は生じない。一方、法人向け ローンを対象とするリボルビング型の案件など、債権プールの中味や担保不動産の属性が案件期間 中大きく入れ替わることが想定されている場合、スタンダード&プアーズでは案件期間中、オリジ ネーターの物件評価手法に大きな振れが生じていないことをモニタリングするために、四半期から 半年に1 度をメドに適宜、担保不動産の中から何件かサンプルを抽出し、独自に物件評価を再検証 している。検証の際には、原則として案件当初のサンプル・チェック時に実施したのと同様の方式・

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ンからの回収額を精緻に評価するのではないため、あらかじめ複数のサンプルについて不動産鑑定 会社の評価額とスタンダード&プアーズの検証結果をマッピングしておくことで、鑑定評価会社の 評価によって簡易的にモニタリング・プロセスを代替することも可能である。 不動産担保ローンにおいて、リカバリー率は必要な信用補完比率を決定する上で重要な要素で あるため、上記モニタリングの結果、オリジネーターの評価による物件評価額とスタンダード& プアーズの検証結果、もしくは不動産鑑定会社による鑑定評価が大幅に乖離するような場合には、 当該案件を格下げする可能性がある。 キャッシュフロー分析 必要信用補完率を決定する際、オリジネーターから提出された約定キャッシュフロー(リボ ルビング期間を設定する場合は、ローンの適格基準などから保守的に推測される想定キャッシ ュフロー)をもとに、上記で検討した貸倒率、リカバリー率を適用して(リカバリーのタイミ ングについては過去実績を参考に、保守的なストレス・シナリオを想定する)、キャッシュフロ ー分析を行う。シナリオとしては、サービサー交代などの事由による早期償還への移行タイミ ング、デフォルト発生のパターン(均等発生、前倒し、後ろ倒しなど)、期限前償還の発生額、 ローンプールの加重平均金利などを変数として、様々なパターンの分析を行っている。最終的 には、格付け水準に応じたストレス・シナリオで必要となる超過担保比率を、必要信用補完率 として決定している。 CDO アプローチの併用 証券化対象となるローンが、法人向け不動産担保ローンの場合、前述の通り、債権プール中の 債務者が集中するなど、大数分散型プールによる分析だけでは補捉し切れないリスクが存在する。 そのような場合、スタンダード&プアーズでは、各債務者の信用力、貸付金額、業種などを考慮 したモンテカルロ・シミュレーションに基づく「スタンダード&プアーズ CDO エバリュエータ ー」による分析(CDO アプローチ)を通常の大数分散型プールに対する分析(ABS アプローチ) と併用して、最終的な必要信用補完率を決定する。CDO アプローチにおける分析の留意点は、1) 各債務者の信用力を評価するのに十分な情報入手が困難な場合には保守的に格付け符号をマッピ ングせざるを得ない、2)リカバリー率については格付けレベルに応じたリカバリー率を適用する が、貸付金額上位債務者については会社更生法適用時の保守的な更生担保権売却価格を評価基準 とする――点である。

5.その他の注意ポイント

不動産担保ローンの証券化に関連して、その他の注意すべきポイントは、以下の通りである。 コミングリング・リスク 法人向け不動産担保ローンは、1)1-2 年の短期ローンで満期一括返済型のものが多い、2)不動 産の任意売却による期限前返済の発生頻度が高い――という特徴がある。この特徴に起因して、証 券化プールの回収額が特定の月に集中するリスクが高く、また実際の回収タイミングが約定月から 振れやすく、予測を立てにくい。通常の証券化案件においては、債務者が従来通りオリジネーター 兼サービサーの口座へ返済金を振り込むことで回収が行われることが多いため、返済が多い特定月 にサービサーが破綻した場合、巨額のコミングル・ロスが発生する可能性がある。また、1)どの時

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点で理論上コミングル・ロスが最大化するか、2)どの程度を最大コミングル・ロスとして見積もる べきかという点についても予測が立てにくい。このようなリスクを緩和する方策としては、日次で 債務者からの回収金をSPV 口座へ送金する「デイリー・スウィープ方式」(回収元本額全額を当日 中にSPV 口座へ送金する方式)を仕組みとして採用することが一例として挙げられる。 個人向け不動産担保ローンについては、不動産の任意売却やリファイナンスなどによる期限前返 済は比較的多く見られるものの、1)ローンの期間にばらつきがある、2)長期ローンについては元 利均等返済や元金均等返済になっている(すなわち、満期一括返済ではない)ケースが多い――こ となどから、法人向けローンに比べて、想定されるコミングル・ロスのインパクトは小さい。 流動性補完 サービサー交代事由発生時には、バックアップ・サービサーが回収業務を引き継ぐことになる が、交代には相当な時間を要する可能性があり、当該証券化案件のキャッシュフローが一時的に 中断されるリスクがある。このリスクを緩和するために原則、案件当初から数カ月分の金利・費 用を賄うためのキャッシュ・リザーブを準備しておくことが必要となる。 法人向け不動産担保ローンは満期一括返済型が多く、ローン期間も1-2 年のゾーンに集中して いるため、ローンのオリジネート時期に集中が見られるような場合には、多くのローン契約の約 定返済期日が同時に到来するような事態になりやすい。その場合、案件期間中、元本回収金がほ とんど見込めない期間が一定期間継続する可能性がある。一方で、返済期日において多数のロー ンが一斉に延滞する可能性があり、回収金(リカバリーとしての回収金を含む)が一定期間極端 に減少する可能性がある。その結果、一時的に毎月の回収金が金利・費用の支払いに不足するリ スクが高まる。このように約定返済期日の集中が想定されるようなケースでは、流動性補完とし てのキャッシュ・リザーブを通常よりも多めに準備しておく必要がある。 早期償還トリガー 多くの証券化案件において、早期償還トリガー事由を設定することによって、格付け対象であ るシニアの元利払いに悪影響を及ぼす恐れのある事由から、シニアを保護するような仕組みが設 定されている。不動産担保ローンの証券化案件における一般的な早期償還トリガー事由の代表的 なものは、以下の通りである。 • サービサー交代事由が発生した場合 • ローンの貸倒発生率(延滞発生率)が一定水準を上回った場合 • リカバリー率(担保物件からの回収率)が一定水準を下回った場合 • ローンの元本返済率が一定水準を下回った場合(返済方式・期限前返済などの状況によって は設定が必要な場合あり) • 貸金業法第24 条第 2 項通知が必要となるような事由が発生した場合 注1) オリジネーターが過去にグレーゾーン金利付の別のローンを対象ローン債務者に対して貸し出してい たような経緯がある場合、個別案件におけるリスクの程度にもよるが、一般的には、以下のような過払 い金返還請求の増加に対応するトリガー事由の設定が重要になる。詳細については、「3.不動産担保 ローンABS のストラクチャー/他ローンのグレーゾーン金利に関連するリスク」を参照。 • 米国のクラス・アクションに相当する訴訟制度を導入する法律が国会で成立した場合 • 過払い金返還発生率(ローン残高に対する発生割合)が一定水準を上回った場合

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注2)案件の仕組み上リボルビング期間の設定がある場合、以下のようなローン債権の属性に関するトリガー 事由の設定が重要になる。 • ローンの加重平均利回りが一定水準を下回った場合 • ローンの加重平均LTV が一定水準を超える場合 以上、不動産担保ローンを裏付け資産とする一般的な証券化案件に共通の事由とみられるポイ ントについて解説してきた。これ以外にも、案件固有の事情により解決すべき別の問題点が存在 する場合がある。スタンダード&プアーズでは、証券化案件の実際の格付け分析に際しては、個 別の事案ごとに当該案件の仕組み・裏付け資産の特徴などの諸事情を十分に勘案し、個別案件に 応じた適切な分析・検討を行う。 <過去に発表した関連リポート> 「日本のストラクチャード・ファイナンス案件:会社分割を利用した事業証券化案件の分析のポイント」 (2007 年 2 月 23 日発行) 「日本のストラクチャード・ファイナンス案件:SPV の倒産隔離の考え方」(2006 年 10 月 18 日発行) *過去に発表した日本語リポートはスタンダード&プアーズの以下の情報サービス商品(年間契約制)に掲 載されています。 <日本語情報サービス商品>

Research Online(リサーチ・オンライン):www.researchonline.jp

Credit Wire Japan(クレジット・ワイアー・ジャパン):ブルームバーグ・プロフェッショナル SPCJ<go>

上記商品の詳細、または個別リポートのご購入については以下までお問い合わせください。 担当部署:営業・クライアントサービス 電話:03-4550-8711 e メール・アドレス:[email protected] スタンダード&プアーズ(ザ・マグロウヒル・カンパニーズの一部門)より発行 ©2007 ザ・マグロウヒル・カンパニーズ 本誌の無断転写・複製を禁じます。ザ・マグロウヒル・カンパニーズ 会長兼社長-ハロルド・W・マグロウⅢ

本社:1221 Avenue of the Americas, New York, NY 10020, U.S.A. スタンダード&プアーズ:55 Water Street, New York, NY, 10041, U.S.A, スタンダード&プアーズ東京:東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル 28 階 弊社発信のリポートは信頼しうる情報に基づくものですが、情報源あるいはリポートその他に人為的または機械的な誤謬が生じる可能性がある ため、情報が正確、妥当または完全である旨の保証は致しかねます。さらに誤謬や脱漏、あるいはそうした情報に基づく結果についても責任を負 いかねます。スタンダード&プアーズは格付けに際して原則として対価を受領しています。格付けの発表についてはその権利を留保しており、出 版物の講読料を除き料金はいただいておりません。格付けは証券の購入や売却、あるいは保持を奨めるものではなく、また時価や利回り、ある特 定の投資家に対するその証券の適合性について言及するものでもありません。

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