日機連15 先端― 14
平 成 15 年 度
21世紀の科学と技術のパラダイムシフトの本質構造と
機械工業に求められる対応に関する調査研究報告書
平 成 16 年 3 月
社団法人 日本機械工業連合会
三菱重工業株式会社
序 戦 後 の わ が 国 の 経 済 成 長 に 果 た し た 機 械 工 業 の 役 割 は 大 き く 、 ま た 機 械 工 業 の 発 展 を 支 え た の は 技 術 開 発 で あ っ た と 云 っ て も 過 言 で は あ り ま せ ん 。 ま た 、 そ の 後 の 公 害 問 題 、 石 油 危 機 な ど の 深 刻 な 課 題 の 克 服 に 対 し て も 、 機 械 工 業 に お け る 技 術 開 発 の 果 た し た 役 割 は 多 大 な も の で あ り ま し た 。 し か し 、 近 年 の 東 ア ジ ア の 諸 国 を 始 め と す る 新 興 工 業 国 の 発 展 は め ざ ま し く 、 一 方 、 わ が 国 の 機 械 産 業 は 、 国 内 需 要 の 停 滞 や 生 産 の 海 外 移 転 の 進 展 に 伴 い 、 勢 い を 失 っ て き つ つ あ り 、 将 来 に 対 す る 懸 念 が 台 頭 し て お り ま す 。 こ れ ら の 国 内 外 の 動 向 に 起 因 す る 諸 課 題 に 加 え 、 環 境 問 題 、 少 子 高 齢 化 社 会 対 策 等 、 今 後 解 決 を 迫 ら れ る 課 題 が 山 積 し て い る の が 現 状 で あ り ま す 。 こ れ ら の 課 題 の 解 決 に 向 け て 従 来 に も ま し て ま す ま す 技 術 開 発 に 対 す る 期 待 は 高 ま っ て お り 、 機 械 業 界 あ げ て 取 り 組 む 必 要 に 迫 ら れ て お り ま す 。 わ が 国 機 械 工 業 に お け る 技 術 開 発 は 、 戦 後 、 既 存 技 術 の 改 良 改 善 に 注 力 す る こ と か ら 始 ま り 、 や が て 独 自 の 技 術 ・ 製 品 開 発 へ と 進 化 し 、 近 年 で は 、 科 学 分 野 に も 多 大 な 実 績 を あ げ る ま で に な っ て き て お り ま す 。 こ れ か ら の グ ロ ー バ ル な 技 術 開 発 競 争 の 中 で 、 わ が 国 が 勝 ち 残 っ て ゆ く に は こ の 力 を さ ら に 発 展 さ せ て 、 新 し い コ ン セ プ ト の 提 唱 や ブ レ ー ク ス ル ー に つ な が る 独 創 的 な 成 果 を 挙 げ 、 世 界 を リ ー ド す る 技 術 大 国 を 目 指 し て ゆ く 必 要 が 高 ま っ て お り ま す 。 幸 い 機 械 工 業 の 各 企 業 に お け る 研 究 開 発 、 技 術 開 発 に か け る 意 気 込 み に か げ り は な く 、 方 向 を 見 極 め 、 ね ら い を 定 め た 開 発 に よ り 、 今 後 大 き な 成 果 に つ な が る も の と 確 信 い た し て お り ま す 。 こ う し た 背 景 に 鑑 み 、 当 会 で は 機 械 工 業 に 係 わ る 技 術 開 発 動 向 等 の 補 助 事 業 の テ ー マ の 一 つ と し て 三 菱 重 工 業 株 式 会 社 に 「 2 1 世 紀 の 科 学 と 技 術 の パ ラ ダ イ ム シ フ ト の 本 質 構 造 と 機 械 工 業 に 求 め ら れ る 対 応 に 関 す る 調 査 研 究 」 を 調 査 委 託 い た し ま し た 。 本 報 告 書 は 、 こ の 研 究 成 果 で あ り 、 関 係 各 位 の ご 参 考 に 寄 与 す れ ば 幸 甚 で あ り ま す 。 平 成 1 6 年 3 月 社 団 法 人 日 本 機 械 工 業 連 合 会 会 長 相 川 賢 太 郎
序文 わが国の機械工業は、明治開国と富国工業化、戦後復興、高度成長、世界のトップラン ナー期、バブル崩壊を経て、現在、自らがトップランナーとして白紙に絵を描くという未 体験領域に直面している。一方、躍進する中国では産学官のトライアングル構造の急速な 変身が進行しており、このような内外環境の激しい変化の下、日本の機械工業を中心とす る製造業の活路の設計が21 世紀の日本にとって重要な課題となっている。 要となる命題は、第一に世界のトップランナーとして絶えず白紙に絵を描き、かつ市場 の求める付加価値の高い製品とサービスを継続的に生み出すことができる技術の進化能力 の堅持と育成への考え方及びその理論構築、第二に中国を含むアジアパワーとの WIN− WIN ベースの共存共栄への道の設計と打ち手である。 この命題を説く糸口として、石井威望東大名誉教授から「テクノ進化」という見方に立 った「テクノゲノム」というキーワードを示唆していただいた。(三菱重工技報、Vol.40、 No.1,2003,p3) それは、従来の機械工業が立脚していた技術論では、専ら技術をフェノタイプ(現象の 様々な形態的なもの)として捉えていたが、科学技術のパラダイムがニュートン力学から 量子論にシフトし、さらには生命科学がゲノムレベルまで解明されたことによって生じた パラダイムシフトに立つと、「もの創り技術」の進化には個人と組織が保有する遺伝的とい うべきゲノタイプの能力構造が存在すると考え、量子論的あるいはゲノム的見方で技術の 持つ本質に新たなメスを入れることができるのではないか、というものである。 この考え方に立ち、「もの創り技術の進化」及び「技術の持つ人間と組織の係わり」 を「擬似生命体」として捉えることにより、前述の二つの命題に対して従来は無か ったアプローチが可能になるのではないかとの仮説を立ててみた。 この大胆な仮説がどこまで正しいか、あるいは根本的誤りを犯しているのか、本 研究では自然科学、社会科学、生命科学の学識経験者及び伝統的機械産業の有識者 により構成される研究会をつくり、先導的調査研究を行うこととした。 おりしも、産学官挙げて第二次科学技術基本計画の成果の刈入れ期と、第三次計画策定 の時期を迎えており、本研究がこれらの政策設計及び21世紀型産学官連携設計の参考に なれば幸いである。 平成16年3月 三菱重工業株式会社 常務取締役技術本部長 柘植綾夫
事業運営組織 平成15年度科学と技術のパラダイムシフトの本質構造研究委員会 委員長 東京大学名誉教授 石井 威望 委 員 東海大学工学部教授 武田 修三郎 委 員 東京大学経済学部教授 藤本 隆宏 委 員 元東京大学工学部助教授 藤末 健三 委 員 (株)日立総合計画研究所主管研究員 常深 康裕 委 員 高菱エンジニアリング(株)常務取締役 松本 長 三菱重工(株)研究員 技術本部高砂研究所製造技術開発センター長 石出 孝 技術本部高砂研究所製造技術開発センター主席研究員 川口 聖一 技術本部高砂研究所製造技術開発センター主席研究員 妻鹿 雅彦 技術本部技術企画部業務グループ長 池之上 哲慶 技術本部技術企画部開発計画グループ長 泉澤 清次 技術本部技術企画部業務グループ主席部員 村井 豊
目 次 第1章 パラダイムシフトの本質構造--- 1 1.1 技術文明史から見た 21 世紀の特徴--- 1 1.2 20世紀後半の機械工業の歴史的考察 --- 5 1.3 21世紀型のパラダイムシフト --- 7 1.4 テクノゲノム --- 8 1.5 基本構造モデルとしての「分岐と合流」--- 9 1.6 パラレル・リアリティ --- 10 1.7 テクノゲノムの表現型(フェノタイプ)--- 12 第2章 グローバルな技術進化における「テクノゲノム仮説」の検証--- 16 2.1 テクノゲノムについて --- 16 2.2 「資本主義5百年」におけるテクノゲノム進化と変異 --- 25 第3章 わが国の産業力強化政策と効果の観点からの検証 --- 61 3.1 東大寺における大仏建造と鋳造技術の発達--- 63 3.2 日本刀と和鋼 ∼たたら製鉄の発展史∼--- 68 3.3 機械式時計技術の発達 ∼二挺天賦時計開発と和時計への対応∼ --- 70 3.4 鉄砲の伝来と技術的発展 --- 79 3.5 明治期における造船技術の発達 --- 84 3.6 戦前・戦中期におけるレーダー技術開発の失敗 --- 89 3.7 戦前における自動車技術の導入と発展 --- 95 第4章 代表的機械製造業における仮説の検証--- 101 4.1 自動車産業 --- 101 4.1.1 進化論的枠組とテクノゲノム--- 101 4.1.2 製品・工程ライフサイクル論と自動車の産業史 --- 109 4.1.3 トヨタ的もの造りシステムの組織能力 --- 115 4.1.4 自動車のアーキテクチャの将来--- 121 4.2 重機械産業 --- 130 4.2.1 まえがき --- 130 4.2.2 下地としての技術の蓄積と伝承--- 131 4.2.3 原子力技術の習得と独自技術への進展 --- 139
4.2.4 将来に向けての技術の伝承と発展--- 143 4.2.5 まとめ、提言 --- 145 第5章 デミングの組織論に照らした仮説の検証 --- 155 5.1 この章での作業 --- 155 5.2 デミングの世界からの検証 --- 156 5.3 知、科学、技術を検証する --- 162 5.4 今後の課題 --- 206 第6章 まとめ--- 224 6.1 テクノゲノムとデミング --- 224 6.2 標本化とデジタル化 --- 225 6.3 サイクル --- 226 6.4 位相とコヒーレンス --- 228 6.5 産業における進化とコヒーレンス --- 230 6.6 グローバル化とアイデンティティ --- 230 第7章 討議録--- 231 7.1 第4回委員会(2月5日) --- 231 7.2 第5回委員会(3月17日) --- 257 参考資料 わが国産業の強化策と効果の観点からの検証--- 315 ―米国における代表的論文の紹介― 要約 --- 395
第 1 章 パ ラ ダ イム ・ シ フ トの 本 質 構 造 1.1 技 術 文 明 史か ら 見 た 21 世 紀 の 特徴 ニ ュ ー トン の「 自 然 哲 学 の 数 学的 原 理( プ リ ン キ ピ ア )」( 1 6 8 7 年 )に 代 表 さ れ る 1 6 ∼ 17 世 紀 の「 科 学 革 命」に 続 く 1 8世 紀 の 特 徴は ,化学 の 近 代 科 学 化す な わ ち,土 , 水 , 空 気, 火 の 4 大要 素 に も とづ く 古 来 の物 質 観 か らの 離 脱 で ある 。 1 7 84 年 の キ ャヴ ェ ン デ ィッ シ ュ の 水の 合 成 実 験と , 1 7 85 年 の ラ ヴェ ア ジ ェ の水 の 分 解 実験 に よ っ て, 水 が 単 体で な い こ とが 示 さ れ た。 こ の よ うな 手 法 ( 化学 分 析 ) によ っ て , ラヴ ォ ア ジ ェの 「 化 学 原理 」 ( 1 78 9 年 ) は物 質 が 元 素か ら 構 成 され て お り ,化 学 反 応 を定 量 的 に 捉え る と , 「質 量 不 変 (保 存 ) 則 」の 物 質 観 が成 立 す る こと を 明 ら かに し た 。 技 術 文 明は 質 量 不 変の 認 識 か ら科 学 革 命 後の 近 代 的 物質 科 学 の 時代 が 始 ま った 。質 量 の 属 性 は 慣性 を も つ こと で あ る 。ハ ー ド ウ ェア と し て 実在 す る か ぎり 必 ず 質 量を も ち , 当然 そ の 慣 性に も と づ く「 状 態 の 保持 」 機 能 が伴 う 。 主 とし て 金 属 材料 ( 通 常 密度 が 大 き い) の 加 工 によ っ て 製 作さ れ る 機 械工 業 製 品 は, 産 業 革 命の 時 代 以 来, 専 ら こ のハ ー ド ウ ェア の 状 態 継続 特 性 ヘ の信 頼 の 上 に成 立 し て いる 。精 密 な 運 動 を 確 実に 反 復 し よう と す る 場 合 , た と え ば測 長 , 計 時, 計 算 な どに お い て ,古 く か ら ねじ や 歯 車 の機 構 が 常 用さ れ て き たの も そ の ため で あ る 。一 般 に , 状態 の 慣 性 的継 続 と い う前 提 条 件 が容 認 で き る範 囲 で 考 えて い る 限 り, 専 ら 決 定論 的 過 程 (deterministic process) を 中 心に 考 え る こと が 可 能 であ り , そ の結 果 太 陽 系を 典 型 と する ラ プ ラ ス的 古 典 力 学モ デ ル が 世界 の 本 質 と見 な さ れ るこ と に な る。 し か し, 運 動 中 の物 体 に は 静止 の 場 合 (古 代 の 巨 大神 殿 な ど )と は 異 な る要 素 が 付 加さ れ る。た と え ば,運 動 エ ネ ル ギー の 影 響 は,速 度 の 2乗 に 比 例 して 変 化 す る。し た が っ て , と く に 高速 度 運 動 を扱 う に は ,速 度 や 加 速度 を 始 め 何ら か の 情 報処 理 が 必 要に な る 。 つま り , エ ント ロ ピ ー に密 接 に 関 連す る 情 報 とい う 概 念 を使 う こ と が必 要 に な り, そ れ は 本質 的 に 確 率論 的 過 程(stochastic process)と の 関 連 が生 じ る こ とを 意 味 し てい る。し か し , た と え ば量 子 論 出 現以 前 に は ,そ の ア ル ゴリ ズ ム 自 体は 一 定 ( ニュ ー ト ン の絶 対 空 間 のよ う に 不 変) で あ り ,世 界 は そ の慣 性 的 継 続, つ ま り 反復 実 行 に よっ て 表 現 され る と 考 えら れ た 。 通 常 ,確 率 的 要 素の 混 入 は ,シ ス テ ム の信 頼 性 の 低下 を も た らす が , 戦 略目 標 と し てい わ ゆ る 「拙 速 」 が 求め ら れ る よう な 場 合 ,た と え ば 運動 制 御 な どの 場 合 に は, 一 種 の トレ ー ド・オ フ の 関 係 が生 じ る。シ ス テ ム の 故障(failure)の 発 生 に対 処 す る 問題 ,た と え ば 統 計 力 学的 ア プ ロ ーチ な ど は ,そ の 典 型 的な 例 で あ り, シ ス テ ム環 境 か ら の影 響 を 過 酷係 数 (severity factor) な ど の予 測 情 報 (知 識 ) を 活用 し て 取 り込 み な が ら, 最 適 点 を探
る こ と にな る 。 こ の 最適 化 の た めに 用 い ら れる 情 報 シ ステ ム に つ いて , ど の よう な 歴 史 的展 開 が な され て き た のか を , 現 実的 環 境 条 件と の 関 係 とと も に 考 えて み よ う 。 ま ず ,物 体 の 運 動に つ い て ニュ ー ト ン 力学 が 天 体 まで 含 め て 体系 化 に 成 功し た ( 1 68 7 年 ) 。そ れ を 梃 子に し て , 19 世 紀 に は熱 力 学 と 電磁 気 学 の 成功 が 続 い た。 質 量 保 存則 や エ ネ ルギ ー 保 存 則, エ ン ト ロピ ー 増 大 則が 確 立 し て, 古 典 物 理に も と づ く宇 宙 観 を 反映 す る 各 種各 領 域 の 計算 が 実 行 され た 。 い わゆ る 時 計 仕掛 け の 宇 宙と い う シ ステ ム の 考 え方 で あ る 。し た が っ て, す べ て は, 決 定 論 的に 予 測 (prediction)で き る 筈 であ っ た 。 さら に , 現 実に 起 こ っ てし ま っ た 事実 の 記 録 (観 測 デ ー タ) は こ の 決定 論 的 な 理論 が 正 し いな ら ば , 当然 満 足 な 説明 が で き る筈 で あ り ,そ の 理 論 探求 の 知 的 作業 を 後 測 (postdiction) と 呼 ぶ 場合 も あ る 。い わ ゆ る 「隠 れ た 変 数」 と い う 発想 も 後 測 作業 中 に 出 てき た と 思 われ る 。 一 方,2 0 世 紀 は 物理 学 の 世 紀と い わ れ るが ,この“ 後 測 ”を 行 な う 際 に 必ず 考 慮 し な け れ ば なら な い 重 要な 前 提 条 件は , 非 決 定論 的 な 量 子力 学 に も とづ く 宇 宙 観, い わ ゆ る量 子 宇 宙 観( ク ァ ン タム ・ パ ラ レリ ズ ム ) であ り , 2 0世 紀 後 半 には 完 全 に 主流 に な っ てき た こ と であ る 。 量 子力 学 の 基 本方 程 式 の 表現 形 式,た と え ば シ ュー レ デ ィ ンガ ー 方 程 式 が , 波 動 方 程式 の 形 を とり 量 子 宇 宙に お け る 事象 の 確 率 分布 の 「 場 」を 記 述 し てい る と 解 釈さ れ る こ とか ら も 判 るよ う に , 一方 で 粒 子 力学 的 系 譜 とし て の 側 面を 保 存 し つつ も , 化 学熱 学 的 系 譜( ク ラ ウ ジウ ス が 導 入し た エ ン トロ ピ ー の 不可 逆 性 の 概念 を 中 核 とし て 本 格 的に 始 動 し た) を も 併 せ持 っ て い る。 両 方 の 系譜 を パ ラ レル に 各 々 タテ に 辿 っ てい く 知 的 継承 は 遺 伝 的モ デ ル を 連想 さ せ る 。ま た , 1 9世 紀 に 完 成し た と 考 えら れ た 古 典物 理 学 の 3本 柱 ( 力 学, 電 磁 気 学, 熱 力 学 )が 2 0 世 紀初 頭 に ア イン シ ュ タ イン , ボ ー ア, ド ウ ・ ブロ イ ら に よっ て , 根 本的 に 見 直 され 一 種 の 知的 な 淘 汰 (2 0 世 紀 の環 境 条 件 下の 最 適 情 報シ ス テ ム の再 編 成 ) を受 け た 結 果, 現 在 ま で熱 力 学 だ けが 生 き 延 びて い る 。 たと え ば , ブラ ッ ク ホ ール の エ ン トロ ピ ー ( ホー キ ン グ ら提 唱 ) の 研究 に お い て, 最 近 の 量子 宇 宙 の フロ ン テ ィ アで も 熱 力 学は 依 然 と して 決 定 的 な役 割 を 演 じ続 け て い る。 さ ら に ,2 1 世 紀 にお い て も ,熱 力 学 と くに エ ン ト ロピ ー は “ 量子 宇 宙 に おけ る 予 測 ”の 問 題 を 考え る 場 合 ,恐 ら く 極 めて 有 効 な 手段 に な ろ う。 「 第 2科 学 革 命 」と も い わ れる 近 代 科 学の 1 9 世 紀か ら 2 0 世紀 前 半 に かけ て の 大 変貌 は ,産 業 革 命 の 勃 興や 科 学 の 制度 化(大 学,学 会 な ど での 科 学 研 究の 開 始 や 職業 的 科 学 者 の 出 現 ) によ っ て も たら さ れ た 。ち な み に ,近 代 科 学 とく に そ の 中心 的 役 割 を演 じ た 物 理学 は , 1 6∼ 1 7 世 紀に 西 欧 で 起こ っ た 「 科学 革 命 」 が底 流 に あ る。 こ れ は ,1 6 世 紀 中葉
の 地 動 説( コ ペ ル ニク ス ) に 端を 発 し , ガリ レ オ , デカ ル ト ( 17 世 紀 ) を経 て , ニ ュー ト ン 力 学成 立 ( 1 7世 紀 末 ) に至 っ て 完 成さ れ た と いう 歴 史 的 経過 を さ し てい る 。 産 業 革命 は , 1 8世 紀 に イ ギリ ス の 技 術者 ( ワ ッ トや ニ ュ ー コメ ン な ど )に よ っ て 始ま り , 1 8世 紀 末 か ら1 9 世 紀 前半 に は 技 術的 探 究 か ら次 第 に 自 然科 学 的 学 術的 色 彩 を 深め て い き ,ド ル ト ン ,フ ァ ラ デ ー, ジ ュ ー ルら ( イ ギ リス ) や ラ ヴォ ア ジ エ ,ア ン ペ ー ル, カ ル ノ ー父 子 ら ( フラ ン ス ) によ っ て , 化学 ・ 熱 力 学・ 電 磁 気 学・ 生 理 学 など の 新 領 域が 学 問 分 野と し て 成 立し た 。 産 業革 命 に は 出遅 れ た が ,1 9 世 紀 前半 に カ ン トや フ ン ボ ルト に よ る 大学 改 革 が 実行 さ れ て いた ド イ ツ は, こ の 新 領域 を 研 究 対象 に 取 り 入れ ( た と えば そ れ ま での 自 然 哲 学と い う 名 称も 物 理 学 に改 称 ) , 19 世 紀 後 半に は 研 究 型大 学 が 各 地に つ く ら れ, 組 織 的 に活 発 な 研 究活 動 が な され て い た 。し か も , 実験 的 研 究 と理 論 的 研 究が 合 流 し 融合 し て い た。 丁 度 , その 当 時 明 治開 国 を 果 たし た 日 本 にと っ て , ドイ ツ が モ デル に 選 ば れた の は 自 然の 流 れ と して 理 解 で きる 。 い わ ゆる 化 学 熱 学的 系 譜 の 中心 で あ っ たド イ ツ に 対し て , イ ギリ ス ・ フ ラン ス ・ オ ラン ダ で は 数学 的 科 学 と実 験 的 科 学の 分 裂 が まだ 続 い て おり , 1 8 30 年 チ ャ ール ズ ・ バ べッ ジ は 「 英国 に お け る科 学 の 衰 退に つ い て 」と い う 書 物を 出 版 し て警 鐘 を 鳴 らし て い る 。産 業 革 命 で先 行 し た イギ リ ス が ,大 学 改 革 では ド イ ツ の後 塵 を 拝 した 。こ のよ う な 歴 史 は,テ ク ノ ゲノ ム( 後述 )の 継 承・進 化 そ し て 産 業 革 命 と の関 連 な ど の事 例 と し て豊 富 な 材 料を 提 供 し てく れ る 。 2 0 世紀 の 前 半 が1 9 世 紀 から 続 く 「 第2 科 学 革 命」 で あ る とす れ ば , 20 世 紀 後 半は 2 1 世 紀の 先 駆 け であ っ た と 見な す こ と がで き る 。 つま り , 2 1世 紀 の 特 徴は , す で に半 世 紀 前 から 実 質 的 に技 術 文 明 史に 現 れ 始 めて い た の かも 知 れ な い。 具 体 的 には , 1 9 53 年 D N A分 子 構 造 発見 , 1 9 57 年 人 工 衛星 打 上 げ ,1 9 4 5 年核 エ ネ ル ギー 解 放 ( 発電 は 5 0 年代 ) , 1 94 6 年 E NI A C ( 電子 計 算 機 の原 型 ) , MR I , 1 94 7 年 ク ロラ ム フ ェ ニコ ー ル ( 広帯 ス ペ ク トラ ム の 抗 生物 質 ) , 超音 速 飛 行 ,家 庭 用 テ レビ , 1 9 48 年 ト ラ ンジ ス タ ー ,1 9 5 2 年核 融 合 ( 爆弾 ) , 1 95 7 年 ト ンネ ル ・ ダ イオ ー ド , 19 6 0 年 レー ザ ー , 集積 回 路 , 19 6 2 年 通信 衛 星 , 19 6 9 年 アポ ロ 1 1 号月 着 陸 , 人工 心 臓 , 19 7 0 年 遺伝 子 合 成 ,組 換 え D NA , 走 査 型電 子 顕 微 鏡, 超 音 速 旅客 機 , 1 97 1 年 ブ ラッ ク ホ ー ル検 出,1 9 7 5 年 マ イク ロ チ ッ プ利 用 の パ ーソ ナ ル コ ンピ ュ ー タ 登 場 , 1 9 8 1年 ス ペ ー スシ ャ ト ル ,1 9 8 0 − 8 7 年 ニ ュー ト リ ノ ,1 9 9 0 年C フ ラー レ ン , 19 9 0 − 2 0 0 3 年 ハッ ブ ル 宇 宙望 遠 鏡 , 19 9 0 年 代イ ン タ ー ネッ ト 普 及 ,2 0 0 0 − 0 3 年 ヒ トゲ ノ ム 計 画完 成 な ど であ る 。 60 こ の よう に , 2 0世 紀 前 半 まで の 第 2 科学 革 命 が ,そ の 成 果 を2 0 世 紀 後半 に な る と, 新 技 術 の創 出 に 反 映さ せ , 産 業活 動 を 介 して ラ イ フ スタ イ ル に まで そ の 影 響を 波 及 さ せ,
そ の 結 果人 々 の 意 識変 革 を 誘 起し , 2 1 世紀 の パ ラ ダイ ム へ の シフ ト を 促 がす に 至 っ たと 考 え ら れる 。 そ の 過程 に お い て, 2 1 世 紀の 特 徴 が ,後 述 す る とお り 表 現 型( フ ェ ノ タイ プ ) と して 顕 在 化 する 前 に , 20 世 紀 後 半に は シ ー ドの 形 で 片 鱗が 垣 間 見 えた 筈 で あ る。 そ れ は ,表 現 型 に 対し て , 遺 伝子 型 ( ゲ ノタ イ プ ) とい う 。 暦 の上 で は ま だ2 0 世 紀 であ る に も 拘ら ず , 実 質的 に は 2 1世 紀 の 技 術文 明 の ゲ ノタ イ プ が 定着 し , そ れを 予 行 的 に体 験 し 始 めて い た の では な か ろ うか 。 そ の 意味 で は , 20 世 紀 の 技術 文 明 史 上の 位 置 づ けが 改 め て 検討 さ れ な けれ ば な ら ない 。 す な わち , 世 紀 前半 が 1 9 世紀 以 来 の 第2 科 学 革 命の 仕 上 げ 時期 つ ま り ゲノ タ イ プ の進 化 の 完 成期 に 当 り ,そ れ に 続 く後 半 は 2 1世 紀 技 術 文明 へ の フ ェノ タ イ プ 出現 の 開 始 期に 突 入 し てし ま っ て いた の か も 知れ な い 。 要す る に , 第2 科 学 革 命は , 2 0 世紀 半 ば に 量子 宇 宙 観 を中 心 と す るパ ラ ダ イ ム( ゲ ノ タ イプ ) を 生 み出 し , そ のパ ラ ダ イ ムが 単 に 学 術的 領 域 に 止ま ら ず 2 0世 紀 後 半 には , あ ら ゆる 分 野 へ 横断 的 に 拡 がり , フ ェ ノタ イ プ と して 2 1 世 紀に お け る 本格 的 展 開 を準 備 し て きた の で は ある ま い か 。た と え ば ,2 1 世 紀 初頭 に ヒ ト ゲノ ム 全 解 読計 画 が 成 功し た こ と は今 後 の 発 展を 予 感 さ せる 準 備 で あり , 極 め て象 徴 的 な 出来 事 で あ った 。 当 初 の予 測 を 裏 切っ て 大 幅 に計 画 達 成 が短 縮 で き たの は , シ ーケ ン サ ー の自 動 化 な どメ カ ト ロ ニク ス ( 後 述) 応 用 の 賜物 で あ る 。メ カ ト ロ ニク ス は , メカ ニ ク ス とエ レ ク ト ロエ ク ス と いう 2 つ の 技術 の 系 譜 が合 流 し て 新規 領 域 が 誕生 し た わ けで , ゲ ノ タイ プ に お ける 典 型 的 な共 生 型 細 胞進 化 モ デ ルで あ り , その 後 の 発 展は そ の 表 現型 で あ る 。1 9 5 3 年D N A 分 子構 造 の 発 見か ら 丁 度 半世 紀 を 経 て, ヒ ト ゲ ノム の 解 明 は確 か に 分 子生 物 学 上 の画 期 的 業 績と な っ た こと は 明 ら かで あ る が ,そ れ は ま だ分 子 レ べ ルの ミ ク ロ 構造 論 が 中 心で あ っ た 。一 方 , 先 述の と お り 21 世 紀 ヘ の準 備 と し て本 格 的 量 子宇 宙 観 が 用意 さ れ て おり , 満 を 持し て 出 番 を待 っ て い る状 況 で あ るこ と か ら ,2 1 世 紀 の特 徴 を 予 想す れ ば , 分子 生 物 学 が量 子 宇 宙 観と の 合 流 (共 生 )を し ,「 分 子 細胞 学 」か ら「 量 子 細 胞学 」へ ,あ る い は「 分 子 進 化 」か ら「 量 子 進 化 」 へ の 拡 張が 予 測 さ れ, ゲ ノ タ イプ の 概 念 自体 も 2 1 世紀 型 へ の 脱皮 が 期 待 され る 。 ま た ,ゲ ノ − フ ェ ノ 両 夕 イ プの 相 互 関 係に つ い て は, 通 常 生 物的 諸 現 象 を遺 伝 情 報 の発 現 と 考 えて い る の で, 双 方 向 的な 対 称 性 はな く 「 ゲ ノか ら フ ェ ノヘ 」 の 一 方通 行 的 非 対称 性 が あ る。 た と え ば, 鳥 類 が 空中 を 飛 行 する と い う 生物 的 現 象 は, ゲ ノ か らフ ェ ノ ヘ の順 当 な 方 向で 理 解 で きる 。 し か し, 人 類 が 航空 機 に 乗 って 旅 行 す る現 象 は , ゲノ タ イ プ の欠 如 を 航 空技 術 で 代 替さ せ て い る。 つ ま り ,フ ェ ノ タ イプ と し て の空 中 飛 行 を鳥 類 と の 類似 で 考 え るな ら ば , 仮想 的 に ゲ ノタ イ プ 相 当の 疑 似 的 遺伝 情 報 の 存在 を 仮 定 する と い う 選択 肢 が あ る。 実 体 と して は , そ れは 航 空 技 術と い う テ クノ ロ ジ ー を疑 似 的 に ゲノ タ イ プ と見 な す こ とで あ り , ドー キ ン ス (オ ッ ク ス フォ ー ド 大 学) が 提 唱 する ミ ー ム の概 念 に 近 い。
そ の よ うな 選 択 が なさ れ た 場 合の メ リ ッ トは 何 か を 考え て み よ う。 上 記 の航 空 機 の 例に 限 ら ず,航 海 や 陸 上車 輌 交 通,乗 馬 ま で 含め て ,各 種 交 通 技 術 は“ ゲ ノ タ イ プな き フ ェ ノタ イ プ ” を遺 伝 外 情 報に よ っ て 実現 す る も ので あ り , すで に 多 数 実在 す る 。 他方 , 自 然 界に は 対 応 する フ ェ ノ タイ プ な き (あ る い は 不明 の ) ゲ ノタ イ プ が 数多 く 存 在 する 。 そ の 意味 は , 恐 らく 生 物 多 様性 を 現 在 の環 境 条 件 から 淘 汰 さ れず に 保 持 し続 け , い わゆ る 分 子 進化 を 進 め るの が 狙 い であ ろ う 。 現在 の 環 境 その も の に 密着 し , い わば 即 戦 即 決的 な フ ェ ノタ イ プ の 世界 と は 一 線を 画 し た ゲノ タ イ プ のレ べ ル で の遺 伝 情 報 の存 続 に よ って も た ら され る 利 点 は少 な く な い筈 で あ る 。そ の よ う な多 様 性 保 持増 進 の 観 点か ら , ミ ーム 的 遺 伝 外情 報 ( と くに テ ク ノ ロジ ー を 含 めて ) を ゲ ノタ イ プ の グル ー プ メ ンバ ー に 加 えて い く 戦 略は 長 期 的 に生 存 を 確 保す る の に 有効 な 選 択 肢で あ ろ う 。 ゲ ノ タイ プ は 本 来天 然 自 然 のも の で あ るが , テ ク ノロ ジ ー は いわ ゆ る 人 工的 (artificial)あ る い は 人 工 物(artifact)と い わ れ る範 疇 に 入 る。人 工 的 なも の の 中 に , 最 近 遺 伝子 自 体 が 含ま れ る 場 合が 出 て き た。 す な わ ち, 遺 伝 子 合成 の 成 功 (コ ラ ー ナ ,1 9 7 0 年) や , 組 換え D N A の成 功 ( ス ミス と ネ ー サン ズ , 1 97 0 年 ) さら に 遺 伝 子工 学 の 開 発( コ ー エ ンと ボ イ ヤ ー, 1 9 7 3年 ) な ど の実 例 に 加 えて , 最 近 では 天 然 の アミ ノ 酸 以 外で の 遺 伝 情報 の コ ー ド( コ ド ン )や そ の フ ォー マ ツ ト の拡 張 な ど にも 成 功 し てお り , ゲ ノタ イ プ の 内容 が 人 工 的な も の ま で含 み 出 し た。 ま た , 手作 業 の 道 具は 勿 論 , 技術 全 般 を 「手 の 延 長 」と 見 な す こと が あ る が, ゲ ノ タ イプ に つ い ても 拡 張 さ れた ゲ ノ タ イプ (extended geno-type)と い う表 現 も,遺 伝 外 情 報 を考 え る 場 合に 使 わ れ てい る。こ こ で , “ 延 長 ”に せ よ “ 拡張 ” に せ よ, あ る い はゲ ノ タ イ プか ら フ ェ ノタ イ プ に せよ , 方 向 性が あ る 。こ の 点 に つ いて は 後 述( 1 .7 で )す る の で ,こ こ で は 単に 指 摘 す るの に と ど め る 。 本 節 の目 的 は , 21 世 紀 の 特徴 を 技 術 文明 史 か ら 見て 全 般 的 に論 述 す る こと で あ っ た。 次 節 で はメ カ ト ロ ニク ス を 具 体例 と し て 採り 上 げ , 主と し て 機 械工 業 の 観 点か ら 述 べ るこ と に す る。 1.2 2 0 世 紀 後半 の 機 械 工業 の 歴 史 的考 察 2 0 世紀 後 半 , 機械 工 業 に 関連 し て パ ラダ イ ム ・ シフ ト の 名 に値 す る 科 学技 術 の 本 質 的 構 造 変 化の 事 例 と して メ カ ト ロニ ク ス が 注目 さ れ る 。 メ カ トロ ニ ク ス が確 実 に 定 着し た 時 期 は, エ レ ク トロ ニ ク ス にお け る 半 導体 , I C 革 命 が 起 こ った 時 期 , すな わ ち 1 97 0 年 代 であ り , い わゆ る 地 上 に降 り た 宇 宙技 術 の 一 例 と み な す こと も で き る。 メ カ ト ロニ ク ス と いわ れ る 言 葉自 身 が 和 製英 語 で は ない か と 言 わ れ る よ う に1 9 7 0 年代 中 頃 に 日本 は 工 作 機械 の 分 野 でよ う や く 世界 の ト ッ プグ ル ー プ に 追 い つ い てい る 。 工 作機 械 の 貿 易の 輸 出 入 収支 も こ の 時点 か ら 黒 字に 転 じ て おり , 以 後 3 0
年 近 く 日本 の 優 位 が確 立 す る 基盤 を 作 っ たの で あ る 。 1 9 60 年 代 , 製鉄 業 , 電 力, 化 学 工 業な ど , い わゆ る 臨 海 工業 地 帯 の 重化 学 工 業 が テ イ ク オ フし , そ の 上に 自 動 車 ,家 電 の よ うな 耐 久 消 費財 が 花 咲 くこ と に な った 。 そ の 以 前 に も 船 舶等 の 輸 出 競争 力 は 高 まっ て い た が, モ ー タ リゼ ー シ ョ ンが 十 分 に 普及 し て い な か っ た 。 造船 の よ う なタ イ プ の 技術 の 確 立 はあ っ た が ,裾 野 の 広 い自 動 車 な どの 本 格 的 機 械 工 業 が ,大 衆 消 費 社会 の 出 現 とあ い ま っ て, 進 展 し 始め た 。 自 動車 産 業 , 家電 製 品 に お い て は , 工作 機 械 も 大型 な も の だけ で は な く, 中 小 企 業で 部 品 を 生産 す る 工 作機 械 ま で が 重 要 な 役 割を 果 た す 。そ れ ら が ある 水 準 に 達し た の が 19 6 0 年 代後 半 で あ る。 1 9 7 0 年 代 に 入 ると 本 格 的 に現 実 の 工 作機 械 の 技 術水 準 が 世 界的 水 準 へ 到達 し た が ,そ の 前 提 条 件 と し て の6 0 年 代 まで の 1 0 年余 に 及 ぶ 努力 が あ っ たこ と に 注 目し な け れ ばな ら な い 。 ま た,ア メ リ カ の 宇 宙開 発( 例 え ば「月 ア ポ ロ 計 画」)に お け る 重要 な ア ウ トプ ッ ト は,I C を 使 っ た大 規 模 で 複雑 な 制 御 シス テ ム の 出現 で あ る 。い わ ゆ る シス テ ム 工 学が 確 立 す る こ と に よ って 技 術 文 明が 新 し い 段階 を 2 0 世紀 後 半 に 迎え た わ け であ る 。 そ れ を 支え ,あ るい は そ れ に よっ て 生 み 出さ れ た パ ラダ イ ム が メカ ト ロ ニ クス と い う こ と も で きる 。 メ カ とい う の は ,い う ま で もな く 「 機 械」 を 意 味 し, ト ロ ニ クス は 「 エ レ ク ト ロ ニ クス 」の 省 略 で あ り,強 い て 訳 せ ば機 械 電 子 工学 と な る。そ れ 以 前 十数 年 以 上 昔 の , 「 機 電 一体 化 」 な どと は 異 な り極 め て 高 度な 二 つ の 技術 体 系 の 融合 を 意 味 して い る 。 具 体 的 に は ,機 電 一 体 化の 時 代 の 機械 精 度 は ,メ カ ト ロ ニク ス の そ れに 比 べ れ ば桁 違 い に 低 か っ た 。 当時 の 機 電 の「 電 」 は ,電 子 と い うよ り は 電 気工 学 を 意 味し て お り ,ほ と ん ど 完 全 に ア ナ ログ 技 術 中 心で あ っ た 。メ カ ト ロ ニク ス と い う場 合 に は ,N C 工 作 機械 ( N C は 数 値 制 御 の略 ) の 例 にみ ら れ る よう に , 本 格的 な デ ジ タル の 情 報 処理 ・ 信 号 伝達 と , そ の 信 号 を 確 実に 機 械 で 実現 す る 技 術と い う 意 味で は , 本 質的 に ア ナ ログ 制 御 の 機電 一 体 化 の レ ベ ル を 脱却 し,「 ア ナ ロ グ か らデ ジ タ ル へ」の 転 換 に成 功 し た ので あ る。い ち 早 く メ カ ト ロ ニ ク ス を軌 道 に 乗 せる こ と が でき た 歴 史 的な 条 件 , ある い は 日 本の ユ ニ ー クな 背 景 が あ っ た に せ よ, メ カ ト ロニ ク ス で 日本 の 国 際 競争 力 は 断 然強 く な り ,工 作 機 械 (産 業 ロ ボ ッ ト も 含 め て) に お け る先 述 の レ ベル ア ッ プ と並 び , 生 産さ れ る 製 品に お い て もメ カ ト ロ ニ ク ス を 徹 底的 に 活 用 する も の が 増え て き た 。ビ デ オ テ ープ レ コ ー ダな ど が そ の最 た る も の で あ り , その 他 の 精 密な 光 学 機 械, カ メ ラ など も そ の 例で あ る 。 それ ら は 大 衆消 費 , 大 量 消 費 の 典 型的 な 市 場 を形 成 し て おり , 市 民 一般 の 消 費 者が 直 接 に その 技 術 に 触れ る こ と が で き , 人 々の メ カ ト ロニ ク ス へ のパ ブ リ ッ クア ク セ プ タン ス を 高 める の に 役 立っ た 。 ビ デ オ テ ー プ レコ ー ダ は ,一 つ の シ ンボ ル 的 な 花形 商 品 で ,瞬 く 間 に 自動 車 に 次 ぐ独 占 的 な 輸 出 競 争 力 をも つ よ う にな っ た ( 世界 に お け るシ ェ ア も 一時 は 実 質 的に , 殆 ど 10 0 % に 近 く
な っ た 程で あ る)。 1.3 2 1 世 紀 型の パ ラ ダ イム ・ シ フ ト し か し 今日 メ カ ト ロニ ク ス を 例に と っ て ,新 し い 2 1世 紀 型 の パラ ダ イ ム・シ フ ト の 本 質 を 考 えて み る と ,2 1 世 紀 の場 合 に は メカ ト ロ ニ クス の メ カ にあ た る 部 分は ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー にな り , ト ロニ ク ス に 相当 す る 部 分は 量 子 コ ンピ ュ ー タ を中 心 に し た技 術 に な る で あ ろ う 。そ の 結 果 ,デ ジ タ ル から キ ュ ー ビタ ル ( 名 称に つ い て は後 述 ) な シス テ ム に 変 わ る こ と にな る 。 ナ ノ テク ノ ロ ジ ーの 示 す 意 味は , 単 に 加工 精 度 が ナノ メ ー タ (1 0 メー タ ) の 分 子 原 子 の 世界 に 近 づ くの み な ら ず, そ こ で 使わ れ る 技 術体 系 は , 従来 の ニ ュ ート ン 力 学 の 範 囲 を 超 えて , 量 子 力学 ( ク ァ ンタ ム ・ メ カニ ク ス ) を駆 使 す る 技術 に 転 換 する こ と を 意 味 し て い る。 情 報 面 で制 御 な ど のシ ス テ ム を形 成 す る のが 量 子 情 報シ ス テ ム (ち な み に エ レ ク ト ロ ニク ス は 電 子情 報 シ ス テム で あ っ た) で あ る 。両 方 に 共 通す る 特 色 は, 量 子 力 学 が 反 映 さ れて い る こ とに ほ か な らな い 。 − 9 機 械 工 業 が 2 0 世 紀 に 生 ま れ た メ カ ト ロ ニ ク ス を 梃 子 と し て 2 1 世 紀 の 量 子 的 な 新 し い メ カ トロ ニ ク ス の登 場 を 迎 えよ う と し てい る 。 そ れに よ っ て ,ど の よ う に変 わ る か , ど の よ う な発 展 が 始 まる の か ,ま さ に「 量子 効 果 」を積 極 的 に 取 り込 ん だ「量 子 型 機 械 工 業 」 の 創 造 が期 待 さ れ る。 一 方 ,2 1 世 紀 の科 学 技 術 にお い て は ,ヒ ト ゲ ノ ムの 解 読 が 20 0 3 年 4月 に 完 了 す る と い う 人類 史 的 な 通過 点 を 経 過し て , そ の影 響 が 確 実に 2 1 世 紀の 技 術 文 明の 最 大 の 特 色 に な っ てい く 。 こ の場 合 , 並 行し て 進 ん でい る 最 近 の重 要 な 変 化は , 2 1 世紀 の バ イ オ に 対 応 す るメ カ ニ ク スが ナ ノ テ クノ ロ ジ ー を新 し い “ エン ジ ン ” 要素 と し て 取り 入 れ た こ と で あ ろ う。 そ れ と 同様 に ゲ ノ ムに お い て も2 0 世 紀 のレ ベ ル は ,分 子 生 物 学と い う 言 葉 で 象 徴 さ れる よ う に ,ま だ 量 子 的な 水 準 を 含む も の で はな か っ た 。し か し 最 近, 従 来 の 分 子 レ ベ ル の進 化( 分子 進 化 )に対 し て,「 量 子 進 化 」と い う 言 葉 も提 唱 さ れ るよ う に な り ,分 子 細 胞 学に 加 え て 量子 細 胞 学 への 期 待 も 高ま り 始 め てい る 。 ま だ極 め て 萌 芽的 で あ る が , 2 1 世 紀の メ カ ト ロニ ク ス の 特色 は , い わゆ る 従 来 の分 子 レ ベ ルま で の ビ ット , デ ジ タ ル 化 を 超 えて , 量 子 ビッ ト ( キ ュー ビ ッ ト )が 主 役 を 演じ る 世 界 にな る で あ ろう 。 同 様 に 量 子 細 胞 学に お い て も,キ ュ ー ビッ ト を 重 視し た パ ラ ダイ ム が 展 開さ れ る こ とが 予 想 さ れ る 。 そ の よ うな 横 断 的 な傾 向 , あ るい は 世 界 観と も い う べき ア プ ロ ーチ の 共 通 特性 に 対 し て , こ こ で はキ ュ ー ビ ット を ベ ー スに し た 「 キュ ー ビ タ ル」 と い う 言葉 を , 新 しい 方 法 論 の 表 現 と し て使 い た い 。 も ち ろん 「 量 子 進化 」 の 考 え方 は も し それ が 正 し いと す れ ば ,現 存 の 生 物, あ る い は 過
去 の 生 物の 中 に も 存在 し た は ずで あ る が ,い わ ゆ る キュ ー ビ タ ル方 法 論 が なか っ た が ゆ え に , 存 在す れ ど も 見え ず , 無 視さ れ る 状 況が 続 い て きた 。 そ れ が2 1 世 紀 にな っ て , 方 法 論 と し ての 「 キ ュ ービ タ ル 」 が実 現 し 発 展す る に つ れて , 量 子 的な 側 面 ま でが ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ実 在 が 確 認さ れ て い くと 予 想 さ れる 。 1.4 テ ク ノ ゲ ノム し た が って ,テ ク ノ ゲ ノ ム( 名 称 に つ い ては 後 で 再 述 )と い う 場合 に も ,ゲ ノ ム が キ ュ ー ビ タ ルな レ ベ ル でま で 考 え られ る と 同 時に , テ ク ノも ナ ノ テ クノ ロ ジ ー や量 子 コ ン ピ ュ ー タ の よう な キ ュ ービ タ ル な 方法 論 を 含 むよ う に 変 化を す る 。 つま り , 2 1世 紀 の 人 間 側 で の ゲ ノム の 問 題 と機 械 側 で のキ ュ ー ビ タル な 問 題 の新 し い 相 互関 係 が 生 まれ る に 違 い な い 。 こ の よう な 観 点 から ヒ ト ゲ ノム ( 人 間 の全 遺 伝 情 報) の 解 読 の意 義 を 考 えれ ば , そ れは 人 類 を 月面 上 へ 降 り立 た せ た アポ ロ 計 画 に匹 敵 す る 。か つ て メ カト ロ ニ ク スが 地 上 へ 降り た 宇 宙 技術 の 一 つ とし て ス タ ート し た よ うに , ヒ ト ゲノ ム 計 画 がテ ク ノ ゲ ノム 自 体 と 新し い 2 1 世紀 型 メ カ トロ ニ ク ス に同 様 の 決 定的 影 響 を 与え る の で はな い か と 予想 す る 。 ヒ ト ゲ ノム の 全 解 読完 了 後 の 予定 表 と し ては ,約 3 万 個 の 遺 伝 子( ゲ ノ ム の文 字 列 中 で 生 命 活 動を 担 う た んぱ く 質 を 作り 出 す 部 分) の 特 定 と, そ れ ら の機 能 の 研 究が 本 格 化 する に 違 い ない 。 他 の 生物 の ゲ ノ ムと 比 較 す ると , ヒ ト の遺 伝 子 約 3万 個 の う ち四 分 の 三 は多 く の 生 物と 共 通 で あり , 残 り 四分 の 一 は 脊椎 動 物 と だけ 共 通 だ とい う 。 つ まり , ゲ ノ ム・ レ ベ ル では 他 の 生 物と の 間 に 極め て 強 い 共通 性 が 存 在す る 。 逆 に, そ の 僅 かな 種 間 の 違い が , 言 語や 直 立 二 足歩 行 や さ らに は 手 ・ 指の 作 業 能 力, 感 覚 器 官や 神 経 回 路網 の 発 達 など の 人 間 らし さ を 生 み出 し ,モ ノ 作 り す る ヒト( ホモ・フ ァ ー ベ ル)の 誕 生 にま で つ な が る 。 こ れ が ,ゲ ノ ム か ら見 た “21世紀技術”の出自であり“家系図”にほかならない。勿論,技 術 内 容( ソ フ ト ウ ェア )は 後 天 的 に 習 得 され る も の であ る 点 は,言 語 の 場 合と 同 じ で あ る 。 ホ モ ・フ ァ ー ベ ルの 場 合 , 道具 の 使 用 ,道 具 を 作 る道 具 ( 工 作機 械 ) か ら最 新 の コ ンピ ュ ー タ 制御 の 生 産 シス テ ム に 至る ま で , 上記 の 遺 伝 子の 差 が 極 端に 増 幅 さ れ, 膨 大 な 遺伝 外 情 報 の蓄 積 を も たら し た 。 遺伝 外 情 報 まで 含 め て これ ら を 「 テク ノ ゲ ノ ム」 と い う キー ワ ー ド によ っ て 一 括し , 当 面 作業 仮 説 と して 有 効 利 用し た い 。 ゲ ノ ム にお け る 生 物多 様 性 と 各生 物 間 の 共通 性 の 存 在と を 対 応 させ て 考 え ると ,ま ず テ ク ノ ゲ ノム に お け る共 通 性 に つい て は 科 学技 術 一 般 の普 遍 性 が 保証 し て く れる 。 問 題 は多 様 性 で ある が , 言 語の 場 合 の よう に , 人 種・ 民 族 差 や歴 史 的 背 景が 相 当 影 響す る 。 ま た, 多 様 性 がど の よ う に時 間 的 変 化す る の か につ い て は ,生 物 の 種 が短 期 間 で の“ 不 変 性 ”を 示 す 一 方, 長 期 間 では “ 進 化 ”す る と い う「 時 間 ス ケー ル 」 上 での 長 短 に 対応 し て 相 反す
る 両 方 の性 格 を 示 すよ う に , テク ノ ゲ ノ ムも 両 方 の 可能 性 を も つと 考 え ら れる 。 と く に,ル ネ ッ サン ス 以 後 の西 ヨ ー ロ ッパ が,他 地 域 を 凌 駕 する 競 争 力 を獲 得 し た の は , テ ク ノ ゲノ ム 相 互 間の 競 争 的 進化 の 結 果 であ る が , 最近 の ア ジ アで も 同 じ こと が 起 こ って い る の では あ る ま いか 。 ア ジ ア随 所 に 出 現し て い る 飛躍 的 経 済 発展 は , 2 0世 紀 ま で の常 識 か ら すれ ば , 一 種の “ 飛 び 越し 現 象 ” にも 見 え る 。新 種 の テ クノ ゲ ノ ム が出 現 し た のだ と す れ ば, 前 例 を 見な い 変 化 いわ ゆ る 進 化の 系 統 樹 にお け る 「 分岐 」 現 象 が起 こ っ て いる と 考 え ても お か し くは な い 。 1.5 基 本 構 造 モデ ル と し ての 「 分 岐 と合 流 」 従 来 か らの パ ラ ダ イム の ま ま で ,分 岐 が 起こ ら な い ロー ド マ ッ プを 仮 に A とし ,分 岐 し た 方 を Bと 考 え る と, A の 尺 度か ら 見 る と遅 れ て い るB の ル ー トは , 全 く 新し い 別 の 世 界 で 進 ん でい る( 図1 )。A と B が分 か れ 始 めた 部 分 を 注意 し て み ると ,引 き金 と な る 要 素 C が 作 用 して い る 。 Cは 新 し い 「モ ノ 」 で ある 場 合 が 多い 。 C に よっ て 新 し い「 コ ト 」 が 起 こ る 結 果に な っ た 。と こ ろ が 新し い C と いう モ ノ が なけ れ ば , Bへ の 分 岐 は起 こ ら ず A の 方 へ 進 んで し ま う 。 こ れ を 生物 の 進 化 で考 え た 場 合 ,B は 新 種と し て 横 へ分 か れ て おり ,B の 先 の 方 の こ と は A ル ート で 先 に いっ た 方 に は分 か ら な い。 A の 先 端か ら 考 え たら , 分 岐 点で の 記 憶 し か な い か ら遅 れ て い るよ う に 見 える 。 B へ いっ て い る 人は , 日 常 化し た C を 使い な が ら , C の 普 及 をベ ー ス に した “ 慣 性 ”運 動 に 従 って い る 。 どの く ら い 慣れ て く る と成 果 が 出 て く る か は ,デ ー タ と して も と れ る筈 で あ る 。も し , そ れが 繰 り 返 され れ ば , ある 地 域 に B が 定 着 し て, そ の 結 果ど の 程 度 のメ リ ッ ト を生 み 出 す か知 れ 渡 っ てく る 。 メ リッ ト を 誰 が 享 受 し て いる か は , 勿論 そ れ を 使っ て い る 人, い わ ば 「B 人 」 で ある 。 使 わ ない 「 A 人 」 の 場 合 に 比べ れ ば 「 B人 」 は 実 利の 味 を 占 めて い る と いえ る 。 こ の「 味 を し める 」 と い う の は , B の方 へ 分 岐 する こ と で ,新 し い 「 コト 」 が 起 こり , そ の 味を し め る 可能 性 が 生 ま れ た の で あり ,別 の言 葉 で い え ば「 未 来 心 理( 未 来 に 感じ る で あ ろう 心 理)」を 味 わ う と い う こ と が 重要 で あ る 。つ ま り 「 分か っ た 」 とい う 未 来 への 確 信 が 全体 へ 広 が り, 皆 が そ の 味 を し め るこ と が,「 B 人 」の方 で は 起 き る。つ ま り,未 来 心 理 を伴 い つ つ Cが 普 及 し て B を 分 岐 さ せ, 新 し い 進化 の 系 統 樹が で き て いく と い う よう な イ メ ージ を 持 つ こと が で き る。 B は 新 しい 分 岐 し た世 界 で あ り,A と 違 うパ ラ レ ル ワー ル ド で ある 。A に い る 人,つ ま り 「 A 人」 に と っ て「 B 人 」 との 交 信 を する キ ュ ー ビタ ル ・ チ ャン ネ ル ( キュ ー ビ ッ ト の よ う に A と B の状態を重ね合せる)さえあればBのことがわかる。もちろん「B人」もそ の チ ャ ンネ ル が あ れば A の 事 が分 か る 。 ツー ル と し ては , 紙 は 勿論 , そ れ 以外 に 液 晶 , 木 簡 , 竹 簡, さ ら に イン タ ー ネ ット も 使 え るわ け で 多 様な 可 能 性 があ る 。
1.6 パ ラ レ ル ・リ ア リ テ ィ こ こ で パラ レ ル・リ ア リ テ ィ の問 題 と し て ,単 に 理 論上 の 存 在 だけ で な く リア リ テ ィ と し て 実 在す る こ と が物 理 学 や 宇宙 論 で わ かっ て き た 。つ ま り , 今ま で は A の路 線 の み で あ っ た が ,B が 加 わ って パ ラ レ ルに な っ た 。そ の 現 実 をC と い う 新し い ツ ー ル( キ ュ ー ビ タ ル・チャ ン ネ ル )に よ っ て 未 来心 理 と し て実 感 で き るよ う に も なっ た( 図1 )。A が あ っ た か ら こ そB が ブ ラ ンチ で き た ので あ っ て ,は じ め か らB し か な いの で は , それ は 違 う 意 味 の A オ ンリ ー に ほ かな ら ず , 依然 と し て シン グ ル で ある 。 A と Bの パ ラ レ ル・ リ ア リ テ ィ に な っ たと き に 始 めて キ ュ ー ビタ ル ・ チ ャン ネ ル , ある い は C の意 味 が 明 らか に な っ て く る 。 生 物の 進 化 で も, 原 始 的 な生 物 か ら 分か れ て 進 化す る 一 方 ,合 流 す る こと も 起 こ る 。 ( 図 2)。 ミ ト コ ンド リ ア の 共生 ,つ ま り 細 胞 融 合 が2 0 億 年 前に 起 こ っ てい る。そ の 結 果,エ ネ ル ギ ー を大 量 に 必 要と す る ( たと え ば 脳 機能 や 空 間 的運 動 な ど )極 め て 活 発な 動 き を す る 細 胞 , たと え ば 神 経細 胞 や 筋 肉と い う よ うな 分 化 が 発生 し た 。 自然 は 太 古 から 融 合 を 行 っ て い る とい う 証 明 であ る 。分 岐 し た ら 永 遠に 分 岐 の まま で は な い 。融 合 す るた め に は ,C’ に 相 当 する 何 か が いる ( 図 3)。 パ ラ レル ・ リ ア リテ ィ に 関 連し て 一 番 大き な 問 題 は, 宇 宙 観 の変 化 で あ る。 今 ま で は 宇 宙 と , 日常 的 な 地 球表 面 の 世 界は 別 で あ ると 切 り 離 して い た 。 ニュ ー ト ン より 以 前 は , そ れ は 更 に徹 底 し て いた 。例 え ば 月 ,天 空 の 運 動 法 則 は,地 上 と 全く 違 う と 考え ら れ て い た 。 こ れ は 宗教 的 な 意 味も あ っ た 。天 空 は , 神の 支 配 す る世 界 で あ り, 地 上 は 俗な 人 間 の 醜 い 世 界 で ある と 聖 域 的に 考 え て いた 。 例 え ば, 真 円 , 球は 完 璧 だ とさ れ , 球 体と し て , 月 や 太 陽 な どを 考 え て いた 。 地 球 も地 球 の 周 りを 取 り ま く惑 星 の 軌 道も , 全 て 真円 で あ る 。 プ ト レ マ イオ ス の 宇 宙観 も 全 て そう で あ っ た。 と こ ろ が, 地 動 説 を入 れ ず , 天動 説 の み で 真 円 だ け で考 え る と 無理 が あ る 。一 つ は ケ プラ ー の 観 測や ニ ュ ー トン 力 学 か ら, 楕 円 軌 道 で あ る こ とが 分 か り ,真 円 で は ない こ と が 証明 さ れ た 。望 遠 鏡 で 見る と 月 の 表面 も で こ ぼ こ し て い た。 地 上 と 同じ 山 あ り ,谷 あ り で ある 。 天 空 を完 璧 な 神 の支 配 す る 世界 と い う 理 論 が 崩 れ る。そ の 典 型的 な エ ピ ソー ド が,「 リ ン ゴ が 地球 の 引 力 で落 下 す る」と い う ニ ュ ー ト ン の 発 見で あ る 。 地上 で 起 こ る現 象 と 月 の運 動 , 太 陽系 の 惑 星 の運 動 , 天 空の 神 が 支 配 す る と こ ろが 同 じ 法 則で あ っ た ので あ る 。 これ が 決 定 的な ブ レ ー クス ル ー で あり , ガ リ レ オ の 望 遠 鏡で 見 た 月 の表 面 の 山 あり , 谷 あ りと い う 画 像が 一 般 人 にと っ て も 極め て 説 得 的 で あ っ た 。天 空 と 地 上は 続 い て いて , 分 け る必 要 は な いと い う こ とが 分 か っ た。 全 く 関 係 の な か っ た世 界 , 天 空と 地 上 と が繋 が っ て ,パ ラ レ ル ・リ ア リ テ ィに な っ た 。そ れ ま で は 全 く 関 係 がな か っ た のが 繋 が っ たの も , 力 学的 に ニ ュ ート ン 力 学 (C に 相 当 )が き っ か け で
あ っ た 。 今 日 ,同 じ よ う なこ と が 起 こっ て い る 。量 子 力 学 とい う の は 超ミ ク ロ の ナノ テ ク ノ ロ ジ ー 世 界 を人 工 的 に 扱う た め に 不可 欠 で あ る。 ナ ノ テ クノ ロ ジ ー の世 界 を 支 配す る 量 子 力 学 を ベ ー スに し て , 全宇 宙 が 運 動し て い る とい う 考 え は, リ ン ゴ と月 を 同 じ 力学 で 考 え た ニ ュ ー ト ン流 の 拡 張 を行 っ て い る。 そ の 結 果, 必 然 的 に量 子 宇 宙 ,ク ァ ン タ ム・ パ ラ レ リ ズ ム と い うよ う な 考 え方 に な る 。こ れ は , 非常 に 無 理 な考 え 方 と いう 見 方 も でき る 。 も の す ご く 小 さな 世 界 と ,も の す ご く大 き な 世 界を 同 じ と 考え る ス ケ ール 効 果 の 無視 で あ る 。 こ れ が 主 流に な り 始 める と , そ こで パ ラ レ ル・ リ ア リ ティ , キ ュ ービ タ ル の 本格 的 な 裏 付 け が で き たこ と に な る。 つ ま り ,神 の 世 界 と人 間 の 世 界を 重 ね 合 わせ た , エ ンタ ン グ ル さ せ た の が ニュ ー ト ン 革命 で あ っ たと す れ ば ,今 も 量 子 と大 宇 宙 を 重ね 合 わ せ て, エ ン タ ン グ ル (entangle,もつれ合わせる)させているのである。 パ ラ レ ル・リ ア リ ティ ,あ る い は デ ジ ッ トで な く キ ュー ビ ッ ト とい う よ う な新 し い コ ン セ プ ト は, 色 々 な 意味 が あ る が, 結 局 , 宇宙 観 の 反 映に ほ か な らな い 。 そ れを , 情 報 の 世 界 , コ ンピ ュ ー タ ,あ る い は 通信 の 世 界 に反 映 し た のが , 量 子 コン ピ ュ ー タや パ ラ レ ル ・ リ ア リ ティ , キ ュ ービ タ ル と 言っ た 一 連 の展 開 で あ る。 我 々 人 間は , 全 宇 宙の 中 に 含 ま れ る 存 在 であ る し , 1つ の 原 子 にせ よ , 1 つの 量 子 に せよ 全 て 宇 宙の 一 員 で ある か ら , 宇 宙 観 が 変 わる と 全 て が変 わ る 。 逆に 量 子 的 な小 さ な 世 界で の 法 則 が変 わ る と ,宇 宙 全 体 が 変 わ る 。 ここ で 変 わ ると い う の は, 実 在 が 新規 に 出 て くる の で は なく , 我 々 の見 方 が 変 わ る こ と に よっ て す で に在 っ た 実 在を 認 知 で きる 。ブ ラ ッ ク ホ ー ル など は 昔 か らあ っ た 筈 だ が , そ れ が 分か ら な か った 。 一 般 相対 性 理 論 の出 現 に よ り, 宇 宙 観 が変 わ っ た 時に , そ の 目 で 見 て み ると 初 め て 実在 し て い ると い う こ とが 分 か っ た。 こ れ は 理論 で 予 見 され て い る も の を , 計 測者 が 観 測 して 分 か る とい う メ カ ニズ ム に な って い る 。 宇宙 観 が 変 わる 2 1 世 紀 に は , I Tで も ナ ノ テク ノ ロ ジ ーで も バ イ オで も , 宇 宙の 中 に あ る限 り 全 て その 影 響 を 受 け て し ま う。 日 本 の場 合 , 世 界の 技 術 文 明に 強 い 影 響を 与 え , 決定 的 に 自 分の 存 在 を アピ ー ル し た の は , 上 述の 通 り 1 97 0 年 代 後半 に 起 き たメ カ ト ロ ニク ス 革 命 であ っ た 。 これ は 産 業 革 命 に 匹 敵 する と ま で 言わ れ て い る。 し か し ,そ の 時 は 今の パ ラ レ ル・ リ ア リ ティ の 宇 宙 観 は ま だ 有 力で は な か った 。 2 0 世紀 最 後 の 四半 世 紀 に 起こ っ た メ カト ロ ニ ク ス革 命 の 実 際 の 成 果 を ふま え な が ら, 2 1 世 紀は メ カ ト ロニ ク ス 革 命で 何 が 起 こっ て い た のか を 本 質 的 に パ ラ レ ル・ リ ア リ ティ の 宇 宙 観か ら 捉 え 直し た 上 で ,新 し い 量 子的 な メ カ トロ ニ ク ス を 構 想 す べ きで は あ る まい か。「 ニ ュ ー ト ン 力学 」を最 も 良 く 理 解 でき た の は,ニ ュ ー ト ン で は な く ア イン シ ュ タ イン で あ っ たと い わ れ てい る よ う に, 2 0 世 紀は 2 1 世 紀か ら 振 り 返 る
こ と で ,よ り 良 く 理解 で き る であ ろ う 。 1.7 テ ク ノ ゲ ノム の 表 現 型( フ ェ ノ タイ プ ) ゲ ノ タイ プ と し ての「テ ク ノ ゲ ノ ム」が ,フ ェ ノ タイ プ と し てど の よ う に発 現 す る の か , あ る い は発 現 し な いの か が 問 題に な ろ う 。パ ラ ダ イ ム・ シ フ ト を論 じ る 場 合, フ ェ ノ タイ プ を 除 外で き な い 。と り わ け ,テ ク ノ ゲ ノム は 天 然 自然 の ゲ ノ タイ プ で は なく て , 拡 張さ れ た 定 義に も と づ くも の で あ るか ら , そ れな り の 特 色が あ る 筈 であ る 。 つ まり , 「 ゲ ノか ら フ ェ ノヘ 」 の 不 可逆 的 方 向 性( 非 対 称 性) と い う 自然 界 に 実 在す る 真 実 があ り , 熱 力学 の 第 2 法則 す な わ ちエ ン ト ロ ピー 増 大 則 の存 在 が あ り, さ ら に は過 去 か ら 未来 へ の 時 間の 流 れ の 方向 性 が あ り, 因 果 律 にも つ な が ると 通 常 考 えら れ て い る。 い わ ば ,こ の 順 当 な方 向 の 逆 が「 フ ェ ノ から ゲ ノ ヘ 」で あ り , 相当 無 理 な 論理 で は な いか と い う 印象 を 与 え るか も 知 れ ない 。 少 な くと も , 古 典宇 宙 観 に 立つ 限 り , まず 論 外 で ある 。 し か し, 量 子 宇 宙観 で は 逆 方向 の 実 在 が妥 当 性 を もつ 。ただ し ,そ の 場 合に は ,一 定 の 条 件 が つく 。すな わ ち , エ ネ ル ギー の 追 加 的増 減 の 許 容と , 量 子 力学 的 な 確 率分 布 に も とづ く ト ン ネル 効 果 を 考慮 す る こ とで あ る 。 まず 前 者 に よっ て , エ ント ロ ピ ー 増大 則 の 前 提で あ る 閉 じた 世 界 で とい う 条 件 が除 か れ , この 法 則 と の衝 突 は 免 れる 。 ま た 後者 は , 古 典力 学 的 な ポテ ン シ ャ ル・ エ ネ ル ギー な ど の 障壁 を 貫 通 でき る こ と を意 味 す る 。そ も そ も ,エ ン ト ロ ピー も 状 態 確率 か ら 算 出さ れ る 物 理量 で あ り ,量 子 力 学 の波 動 方 程 式も 確 率 分 布の 空 間 的 時間 的 変 化 を記 述 し て いる か ら , 両者 は 決 し て無 関 係 で はな い 。 つ まり , 多 く の可 能 な 世 界が パ ラ レ ル・ リ ア リ ティ と し て 存在 す る と いう 量 子 宇 宙観 ( ク ァ ンタ ム ・ パ ラレ リ ズ ム )の 表 現 に ほか な ら な い。 表 現 型と い う 言 葉自 体 の 解 釈に つ い て も, 2 1 世 紀の 潮 流 と して “ ク ァ ンタ ム ・ パ ラレ リ ズ ム ・フ エ ノ タ イプ ” に 傾 く筈 で あ る 。し た が っ て, テ ク ノ ゲノ ム に つ いて , そ の 表現 型 と の 相互 関 連 を 研究 す る 場 合に も , 古 典的 立 場 か らの ア プ ロ ーチ の み で は必 ず し も 十分 満 足 で きる 結 果 が 得ら れ な い おそ れ が あ る。 本 研 究報 告 の 第 1章 で , パ ラダ イ ム ・ シフ ト の 本 質構 造 と 題 して 論 述 し た目 的 は , 次章 以 降 で テク ノ ゲ ノ ムの 表 現 型 との 関 係 が 詳述 さ れ る 際, そ の 足 場を 提 供 し たい と 考 え たた め で あ る。
第2章 グローバルな技術進化における「テクノゲノム仮説」の検証 2.1 テクノゲノムについて (1)テクノゲノム概念の有効性 生物の成長では、そのパターンが、遺伝子によって、あらかじめ決定されていること が知られている。生物が成長するために必要な最小限度の遺伝子を含む染色体は、ゲノ ムと呼ばれている。このゲノムには、生命体が誕生し、如何なるたんぱく質を形成し、 組織体を作り、成長していくべきか、その時間的な過程で、どのような変化をするかが、 あらかじめ書き込まれ、やがて死滅するようにプログラムされている。 ところで、社会が累積的に蓄積していく、つまり成長するものには、およそ三つのも のがある。知識と資本および人口である。この中で、知識は技術レベルとその革新能力 を決定する。蓄積された資本量は、生産レベルを決め、人口は生産と同時に消費の水準 を決定する。大雑把に言えば、知識は生産能力を、資本は所得を、人口は消費を決定し ている。 知識、資本、人口の長期累積的な蓄積(成長の実体)をパワーに変えるのが組織(D NAから作られるたんぱく質に相当するか)であり、最大の事業体としての国家、生産 組織としての企業、消費の組織としての無数の家族がある。 さて、三つの蓄積の間には強い相関関係がある。つまり、知識による生産性を飛躍的 に向上させるような発明と実用化は、資本の蓄積を刺激し、資本の蓄積と所得の増大は、 人々の将来に対する見通しを楽観的なものにさせ、結婚年齢が早まり、長期的には、出 生率が高まり、人口増加が始まる。人口の増加は、翻って、経済産出を増加させる。さ らに豊かになった社会では、人々のより高い所得への欲求が、教育投資を増加させ、社 会全般の知的水準は、さらに向上する。 累積的な変化は、時間と空間を越えて伝播(世代交代、増殖)される。これらが成長 人 口 人 口 人 口 知 識 知 識 知 識 資 本資 本資 本 知識人の 供給 所得増加 技術革新 生産性の向上
し、世代を超えて再生産されるという過程は、まさしく、一個の生命体が成長し、新し い次の世代を生み出すのであって、その意味で、ゲノム的機能が働いていると考えられ る。→技術がゲノム的に発展しない、とするなら、技術がもたらす社会的な発展のプロ セス、つまり三つの要素の成長パターンは、全くの混沌、ランダムなものだということ になる。そこで、伝播の構造を決定するものをテクノゲノム(石井)と仮定すると、と りあえず、社会的存在としてのテクノゲノムを考えることができる。本章でとりあげる グローバル化を推進したテクノロジーは、各々共通した遺伝子をもち、その成長は、一 定の先天的に書き込まれたプログラムに従って、生起し、社会に独自の影響を与えてい ったので、その構造を明らかにすることである。 * 生物学的なゲノムでさえ、現在では、DNAだけで決定されているのではなく、 もっと多くの要因が関与している。とはいえ、社会的なテクノゲノムの存在形 式は、第一に知識内であり、第二に、組織内部の技術、ノーハウなどの蓄積、 いわゆる組織能力として存在し、第三には、社会的な資本として実存している と考えられる。 * つまり、社会的実体であるテクノゲノムに関しても、書かれた情報、科学、技 術情報のみでなく、環境、資源、人々の思考方法にいたる要因が関与している と見るべきである。 * 明らかにすべきことは、二つある。一つは、国家や企業等の組織がどのような メカニズムで同じように再生されるのか、今ひとつは、突然の変化はどのよう な条件で起きるのかである。 * 技術の進化が遺伝子的な構造をもっているとするならば、それが一つの国から 他の国へと伝播した際に、あらかじめ決定されたルートに従って、技術進化が 引き起こされるということであり、その構造が明らかにされなければならない。 * これらの決定因子には、知識、人口(増加および減少、組織の構造変化)、資 本(経済産出→インフレ、デフレなどの経済現象)についてあると考えられる。 それぞれの因子に内在する現象が、成長の一定段階、つまり時間の経過ととも に発現する。 テクノゲノム(技術遺伝子)を考える場合、当然に問題になるのは、技術について遺 伝的つまり先天的に決定されている要因があるという場合それはどのようなものである のか、ということである。例えば、昆虫、蜂や蟻でさえ、自分の巣を建造する。これら は、知識獲得による後天的な才能によるのではなく、むしろ遺伝的に決定された能力で ある。こうしたレベルでの巣の構築能力では、技術の獲得や改善は見られない。つまり、
社会は、伝統的な技術の呪縛に囚われ、ほとんど進化することがない。 これに比較して、人間には、「模倣するという能力」がある。あるいは技術そのもの が、本来、何ものかの模倣であった。模倣能力には、本能を越え、他の動物の真似をす る特異な能力が内在していることを示唆している。単なる本能でない組織的行動能力、 本能が命ずるところに従った巣を作る能力だけでなく、あれこれの工夫を凝らした家を 作り、環境に自在に適応するのは、人間社会に特有である。つまり、「物まね」は、本能 あるいは、本来自分がやってきたこと、伝統的な社会での規範などを脱する意欲であり、 「脱自能力」とでもよぶべきである。模倣能力が如何にして獲得されたかは、今のところ 分かっていない。私は、生物的なゲノムが関与していると推測しているが、ともかく、 それは本能を越える人間の第一歩であり、全く新しい技術、「独自なものを開発する」社会 的・技術的人類の手前なのである。しばしば、猿真似などと言われ、模倣は、蔑まれるこ とが多いが、私はそうは考えない、むしろ、独創への不可欠な道のりだと考える。 テクノゲノムを構成する二つの要因、つまり組織の能力には二つのものがある。一つ は如何にして作り出すかという能力であり(藤本、武田論文を参照)、他の一つは、そも そも何を作り出すかを決定する能力である。 (2)何をつくるか(何に投資するか)を決定する能力 何にして生産するか、で日本は 優 伝達可能な 情報 A 国 A 国 伝達不可能な 因子・思考様式 環境制約 何を作るか 伝達された 因子・情報 B 国 B 国 新環境制約 新しく 作られた技術 伝達不可能な 因子・思考様式 テクノゲノム いかに作るか 20 世紀では、何を作るか、でアメリカがリードし、如 位を得た。20 世紀の後半、グローバルな競争の中で、日本は第一の能力において圧倒 的な優位をもった。しかし、今ひとつの能力において、劣後した、あるいはなお決定的 な能力を持つに至っていない。競争上、如何に作るか、効率性、合理性は極めて重要で
ある。しかし、次の時代に、決定的なパワーを握るには、何を作るかを決定しなければ ならない。1.2 で分析するが、資本主義 500 年の歴史の中で、もっとも重要な決断は、 次世代をリードするテクノロジーに誰が、何時、どのような決定をしたかであった。そ れによってのみ、一つの国家は繁栄を持続させることができたし、それができなかった 国家は、たとえある時期、グローバルな覇権を握ったとしても、次の時代には、力を喪 失し、相対的に劣後した地位に追いやられたのである。それは、なんといっても、技術 の ポ ー ト フ ォ リ オ が 一 国 あ る い は 企 業 の マ ネ ー ジ メ ン ト に と っ て 極 め て 重 要 な 事 項 (Technology Portfolio Management 以下 TPM) であるという意識を欠いていたから に他ならない。 ①何を作るか、を決定する能力→意欲に裏付けられた能力 さらに分析してみると、 ほ ト)→理念、理想→欲望→人間的能力の拡張 出口は、政府から市場ま で 「必要は発明の母」などとしばしば言われてきたことを ぼ以下のようになる。 ・作りたいもの(ウオン ・つくるべきもの(マスト)→規制、相互牽制→社会的理性 ・できるもの(キャン)→技術→効率性→科学的理性 研究開発→出口のないものはたいていものにならない→ ある。→これを結びつける仕組みが巧みに構築される。→国家あるいは企業の組 織にとっては、テクノロジー・マネージメント及びテクノロジーポートフォリオの 管理と運用(TPM)の問題となる。 欲求 WANT 欲求 WANT