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HOKUGA: 国・地方自治体間の争訴と「法律上の争訴」覚書(2)

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Academic year: 2021

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全文

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タイトル

国・地方自治体間の争訴と「法律上の争訴」覚書

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著者

秦, 博美; HATA, Hiromi

引用

北海学園大学法学研究, 53(2): 47-72

発行日

2017-09-30

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・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 研 究 ノ ー ト ・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・

目 次 一 は じ め に 二 判 例 三 学 説 ( 以 上 五 一 巻 四 号 ) 四 検 討 ( 一 ) 公 権 力 の 行 使 ( 統 治 権 ) の 特 質 ( 以 上 本 号 ) 五 検 討 ( 二 ) 司 法 権 の 観 念 六 終 わ り に

使

村 上 裕 章 教 授 は 、 国 や 地 方 自 治 体 が 独 立 の 法 人 格 を 有 す る 以 上 、 原 則 と し て 、 そ れ ら 相 互 間 の 争 訟 は ⽛ 法 律 上 の 争 訟 ⽜ に 当 た り 、 個 別 法 の 規 定 が な く と も 訴 訟 を 提 起 で き る と 解 す べ き で あ る と 述 べ 、 肯 定 説 を 支 持 す る ( 32) 。 そ の 上 で 、 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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村 上 教 授 は 、 否 定 説 の 論 拠 と し て 、 公 権 力 行 使 の 特 質 に 着 目 す る ア プ ロ ー チ と 、 司 法 権 の 観 念 に 着 目 す る ア プ ロ ー チ に 大 別 で き る と 述 べ 、 前 者 の 公 権 力 行 使 に つ い て は 、 ① 法 律 関 係 の 成 立 を 否 定 す る 見 解 、 ② 行 政 主 体 の 権 利 の 成 立 を 否 定 す る 見 解 、 ③ 行 政 主 体 間 の 関 係 を 内 部 関 係 と み る 見 解 な ど が 、 後 者 の 司 法 権 の 観 念 に つ い て は 、 ① 訴 訟 目 的 を 根 拠 と す る 見 解 、 ② 裁 判 を 受 け る 権 利 を 根 拠 と す る 見 解 、 ③ 日 本 国 憲 法 に お け る 司 法 権 の 観 念 を 根 拠 と す る 見 解 が あ る と 分 析 し て い る ( 33) 。 以 下 、 村 上 教 授 の 手 際 よ い 整 理 に 従 い 、 各 論 点 に つ い て 検 討 を 加 え る こ と と す る 。 先 ず 、 公 権 力 の 行 使 ( 統 治 権 ) の 特 質 に 着 目 す る ア プ ロ ー チ に つ い て 、 検 討 す る 。 ⚑ 法 律 関 係 の 成 立 を 否 定 す る 見 解 こ の 見 解 は 、 公 権 力 行 使 に つ い て は 、 そ も そ も 法 律 関 係 は 成 立 し な い と す る 見 解 で 、 か つ て の 国 庫 理 論 で 採 ら れ て い た 考 え 方 で あ る 。 現 在 、 こ れ を 明 言 す る 学 説 は な い の で 、 学 説 史 的 に 克 服 さ れ た 考 え 方 と い っ て よ か ろ う 。 村 上 教 授 は 、 行 政 権 の 主 体 と 財 産 権 の 主 体 を 区 別 し 、 前 者 に つ い て ⽛ 法 律 上 の 争 訟 ⽜ は 成 立 し な い と す る 宝 塚 判 決 ( 二 の ⚖ 参 照 ) は こ の よ う な 考 え 方 に 基 づ く も の と も 解 し う る と 述 べ る ( 34) 。 国 庫 理 論 と は 、 国 家 に 単 一 の 法 人 格 を み る の で は な く 、 国 家 を 、 法 の 規 制 を 受 け な い 公 権 力 の 主 体 と し て の ⽛ 国 家 ⽜ と 財 産 権 主 体 と し て の ⽛ 国 庫 ⽜ と い う 二 つ の 法 人 格 と し て 考 え 、 後 者 の 意 味 で の ⽛ 国 家 ⽜ は 、 権 力 主 体 と し て の ⽛ 国 家 ⽜ と は 異 な り 、 常 に 通 常 の 私 人 と 同 様 の 法 ( 私 法 ) に よ っ て 規 律 さ れ 、 通 常 司 法 裁 判 所 の 審 理 権 に 服 す る と い う 考 え 方 で あ る ( 35) 。 こ の 理 論 は 警 察 国 家 思 想 の 下 で は そ れ な り の 実 践 的 意 義 は あ っ た も の の 、 法 治 国 家 思 想 が 確 立 し 、 国 家 の あ ら ゆ る 活 動 が 裁 判 的 統 制 に 服 す る よ う に な る と 、 そ う し た 用 法 は 本 来 的 な 意 味 を 失 う 。 現 在 の 用 法 は 、 単 に 財 産

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権 の 主 体 と し て の 国 家 を 便 宜 上 呼 称 す る に 過 ぎ な い( 憲 法 四 九 条 、民 法 二 三 九 条 二 項 、九 五 九 条 、刑 訴 四 九 九 条 三 項 等 ( 36) )。 ⚒ 行 政 主 体 の 権 利 の 成 立 を 否 定 す る 見 解 こ の 見 解 は 、 公 権 力 行 使 に つ い て は 、 行 政 主 体 に ⽛ 権 限 ⽜ は 認 め ら れ る が 、⽛ 権 利 ⽜ は 成 立 し え な い と す る 見 解 で あ る 。 村 上 教 授 は 、 こ の 見 解 も 国 庫 理 論 の 影 響 下 に あ る の で は な い か と 思 わ れ る が 、 現 在 で も 時 折 主 張 さ れ る こ と が あ る と し 、 雄 川 一 郎 博 士 の 見 解 を こ の 趣 旨 で な い か と 解 さ れ る と 述 べ る ( 37) 。 そ の 上 で 、 行 政 機 関 が ⽛ 権 限 ⽜ し か も ち え な い と し て も 、 行 政 主 体 に つ い て は ⽛ 権 利 ⽜ が 成 立 し う る は ず で あ り 、 現 行 法 上 も 、 公 権 力 の 行 使 は 各 行 政 主 体 の 行 為 と さ れ て い る と 主 張 す る ( 38) 。 思 う に 、 こ の 見 解 は 、 法 形 式 的 に は 、 行 政 主 体 の 権 利 と 行 政 機 関 の 権 限 の 概 念 の 区 別 に 無 頓 着 な 主 張 と い え よ う 。 確 認 的 に 述 べ れ ば 、⽛ 権 限 ⽜ に つ い て 、 法 律 用 語 辞 典 で は 、⽛ 国 又 は 公 共 団 体 の 機 関 の 権 限 と は 、 当 該 機 関 の 行 為 が 、 国 又 は 公 共 団 体 の 行 為 と し て の 法 的 効 力 を 発 生 さ せ る 範 囲 の こ と ⽜ と 定 義 し て い る ( 39) 。 ま た 、⽛ 行 政 機 関 は 権 限 の 主 体 で あ っ て 、 権 利 の 主 体 で は な い 。 権 利 主 体 で あ る 行 政 主 体 の た め に 活 動 す る 権 限 を 与 え ら れ て い る に と ど ま る ⽜ と 説 明 さ れ て い る ( 40) 。 権 利 と 権 限 の 違 い に つ い て 、 石 川 敏 行 教 授 は 、⽛ 権 利 と は 、⽝ 自 己 の 利 益 を 守 る た め に 、 法 に よ っ て 与 え ら れ た 力 で あ る ⽞ と 定 義 さ れ る ( G ・ イ ェ リ ネ ク )⽜ が 、⽛ ʠ 利 益 を 守 る 力 ʡ と い う 意 味 で は 、 権 利 も 権 限 も ま っ た く 等 し い 。 し か し 、 権 利 に よ っ て 守 ら れ る の は ʠ 自 分 自 身 の 利 益 ʡ( 個 人 的 利 益 ・ 私 益 ) で あ る の に 対 し て 、 権 限 に よ っ て 守 ら れ る も の は 法 人 と い う ʠ 他 人 の 利 益 ʡ( 集 団 的 利 益 ・ 公 益 ) で あ る 、 と い う 点 に 違 い が あ る ⽜ と し 、⽛ 権 限 と い う パ ワ ー は 、 ʠ 国 の 利 益 を 守 る こ と ʡ に 限 定 し て 機 関 に 与 え ら れ て い る た め に 、 権 利 と は 区 別 し て ʠ 限 り の あ る 力 ( 権 )ʡ と い う 意 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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味 で ⽝ 権 限 ⽞ と 呼 ば れ る の で あ る ( 公 務 員 は 権 利 を 行 使 し 、 機 関 は 権 限 を 行 使 す る )⽜ と 述 べ る ( 41) 。 西 上 治 准 教 授 は 、⽛ ⽝ 権 限 ⽞ は そ れ が 属 す る 行 政 主 体 の 利 益 な い し 目 的 の た め に 付 与 ・ 行 使 さ れ 、⽝ 権 利 ⽞ は 自 身 の 利 益 な い し 目 的 の た め に 付 与 ・ 行 使 さ れ る 点 で 異 な る の で あ る ( 42) ⽜ と 要 約 し て い る 。 ⽛ 権 限 ⽜ を 行 使 す る の は 行 政 機 関 ( 行 政 庁 ) で あ る が 、 そ の 権 限 行 使 に よ っ て 守 ら れ る の は 法 人 で あ る 行 政 主 体 ( 国 ・ 地 方 自 治 体 ) の ⽛ 集 団 的 利 益 ・ 公 益 ⽜ と い う こ と に な り 、 そ の 結 果 、 法 人 で あ る 行 政 主 体 は 権 利 義 務 を 取 得 す る こ と に な る の で あ る 。 藤 田 宙 靖 教 授 は 、⽛ 国 民 と の 間 で 行 政 法 上 の 権 利 義 務 の 主 体 と な る 者 ( 国 ) と 、 こ の 者 の た め に 国 民 に 対 し 自 己 の 名 に お い て 行 政 行 為 な る 意 思 表 示 を 行 う 権 限 を 与 え ら れ て い る 者 ( 税 務 署 長 ) と の 区 別 が 存 す る こ と に な る ⽜ と 述 べ る ( 43) 。 す な わ ち 、 税 務 署 長 の 課 税 処 分 に よ り 国 が 租 税 債 権 を 取 得 す る こ と に な る の で あ る が 、 こ の 法 理 は 、 株 式 会 社 等 の 私 法 人 の ⽛ 権 利 ⽜ と そ の 機 関 ( 代 表 取 締 役 な ど ) の ⽛ 権 限 ⽜ の 関 係 と 何 ら 異 な る も の で は な い ( 一 般 社 団 法 人 及 び 一 般 財 団 法 人 法 七 七 条 、 会 社 法 三 四 九 条 な ど )。 も っ と も 、 雄 川 博 士 は 、 行 政 庁 の 行 為 に よ っ て 、 公 行 政 の 主 体 で あ る 国 ・ 公 法 人 の ⽛ 権 利 ⽜ が 侵 害 さ れ た と し て も 、 当 然 に 裁 判 所 に よ る 保 護 を 受 け る も の で は な く 、 そ の 意 味 で ⽛ 権 限 ⽜ と 実 体 的 に 異 な ら な い の で は な い か と 述 べ て い る が 、⽛ 権 利 ⽜ の 成 立 自 体 を 否 定 し て い る 訳 で は な い ( 注 ( 37) 参 照 )。 以 上 に 述 べ た よ う に 、 ⚑ 及 び ⚒ の 立 論 に は 、 今 日 、 合 理 的 な 法 的 根 拠 を 見 出 す こ と は で き な い と い う べ き で あ る 。 ⚓ 公 権 力 行 使 に 関 し て 国 や 自 治 体 は 内 部 関 係 に あ る と す る 見 解 こ の 見 解 は 、 公 権 力 行 使 に 関 し て 国 や 自 治 体 は 内 部 関 係 に あ る と す る 見 解 で あ る 。 村 上 裕 章 教 授 は 、 そ の 根 拠 と し て 、( ⚑ ) 国 の 公 権 力 ( 統 治 権 ) は 本 来 一 体 で あ る と す る 考 え 方 や 、( ⚒ ) 行 政 主 体 と 私 人 の 二 元 論 か ら す れ ば 、 私 人

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間 と は 性 質 を 異 に す る 行 政 主 体 間 の 関 係 は 、 原 則 と し て 、 内 部 関 係 と な る と す る 考 え 方 が あ る と 述 べ る ( 44) 。 こ の 見 解 に つ い て 、 曽 和 俊 文 教 授 は 、 杉 並 区 住 基 ネ ッ ト 事 件 ( 二 の ⚗ 参 照 ) に 関 し 、⽛ 国 の 発 想 は 住 民 基 本 台 帳 法 の 執 行 と い う 、 一 貫 し た 一 つ の 行 政 過 程 を 巡 る 、 そ の 執 行 の 仕 方 を 巡 る 争 い な の で 、 行 政 内 部 の 紛 争 だ と 大 き く と ら え る と い う ⽜ 趣 旨 な の だ ろ う と 端 的 に 指 摘 し て い る ( 45) 。 否 定 説 に 傾 く 有 力 学 説 は 、 次 の よ う に 、⽛ 行 政 組 織 法 ⽜ に つ い て 総 論 的 説 明 を 行 っ て い る 。 藤 田 宙 靖 教 授 は 、⽛ 専 ら 行 政 主 体 の 側 の 内 部 構 成 ・ 内 部 組 織 に 関 わ る 問 題 は 、⽝ 行 政 の 内 部 関 係 ⽞ に 属 す る 問 題 と し て 、 行 政 主 体 と そ の 外 に あ る 私 人 と の 関 係 で あ る ⽝ 行 政 の 外 部 関 係 ⽞ 上 の 問 題 と は 、 本 質 的 に 異 な っ た 法 原 理 に よ っ て 支 配 さ れ る 、 と い う こ と に な る 。 後 者 が す な わ ち 行 政 作 用 法 の 分 野 を 成 す の に 対 し 、 前 者 は と り も な お さ ず 行 政 組 織 法 の 問 題 と な る 、 と い う わ け で あ る ( 46) ⽜ と し 、⽛ 本 書 で は 、⽝ 行 政 の 内 部 関 係 ⽞ を 、 私 人 の 個 人 的 利 益 に は 直 接 に 関 わ ら な い 、 そ の 意 味 で 客 観 法 的 な 性 質 を 持 つ 法 関 係 、 と し て 捉 え て い る ( 47) ⽜( 傍 線 筆 者 ) と 述 べ る 。 ま た 、 小 早 川 光 郎 教 授 は 、⽛ 行 政 上 の 法 律 関 係 に は 、 行 政 組 織 法 関 係 ( 行 政 内 部 法 関 係 と も い う ) と 行 政 外 部 法 関 係 と が 区 別 さ れ る 。 前 者 は 、 行 政 組 織 内 部 の 、 言 い か え れ ば 行 政 組 織 の 構 成 要 素 の 相 互 間 に お け る 法 律 関 係 で あ り 、 後 者 は 、 行 政 と 人 民 と の あ い だ で 問 題 と な る 法 律 関 係 で あ る 。 行 政 組 織 ( そ れ に 属 す る 行 政 機 関 ) の 活 動 が 実 際 に ど の よ う に 行 わ れ る か は 、 行 政 組 織 内 部 に お け る 諸 関 係 の 規 律 の あ り 方 に 大 き く 左 右 さ れ る の で あ り 、 行 政 組 織 法 関 係 の 考 察 は 、 軽 視 さ れ て は な ら な い ( 48) ⽜ と 述 べ る 。 藤 田 教 授 が ⽛ 行 政 の 内 部 関 係 ⽜ と い う と き は 、 一 元 的 な ⽛ 行 政 ⽜ 像 を 、 ま た 、 小 早 川 教 授 が ⽛ 行 政 組 織 内 部 ⽜ と い う と き は 、 一 元 的 な ⽛ 行 政 組 織 ⽜ 像 を 、 そ れ ぞ れ 、 そ の 理 論 的 前 提 と し て 置 い て い る も の と 思 わ れ る 。 現 在 、 と り わ け 後 者 の よ う な 一 元 的 理 解 に 合 理 的 根 拠 が あ る の か が 、 以 下 に 述 べ る よ う に 鋭 角 的 に 問 わ れ る こ と に な る 。 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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( ⚑ ) ⽛ 国 家 ⽜ の 公 権 力 ( 統 治 権 ) は 本 来 一 体 で あ る と す る 考 え 方 ア 小 早 川 説 と 判 例 実 務 小 早 川 教 授 は 、 国 家 法 人 説 を 基 礎 と す る 従 来 の 行 政 法 学 に お け る 、 行 政 上 の 法 律 関 係 に つ い て の 捉 え 方 に つ い て 、 次 の よ う に 説 明 す る 。⽛ 行 政 上 の 法 律 関 係 の 一 方 当 事 者 と し て 人 民 に 対 す る の は 、 国 家 に は 限 ら な い 。 す な わ ち 、 ① 地 方 公 共 団 体 は 、 行 政 権 の 本 来 の 主 体 で あ る 国 家 か ら 行 政 権 を 分 与 さ れ て 行 政 の 一 部 を 行 う 、 ② … 、 ③ 法 人 た る こ れ ら 地 方 公 共 団 体 そ の 他 の 団 体 は 、 国 家 か ら そ の 存 立 目 的 を 与 え ら れ た と い う 点 で 一 般 の ʠ 私 法 人 ʡ と は 性 質 を 異 に す る ʠ 公 法 人 ʡ と し て の ʠ 公 共 団 体 ʡ で あ り 、 国 家 か ら 分 与 さ れ た 行 政 権 の 帰 属 主 体 、 す な わ ち 、ʠ 行 政 主 体 ʡ で あ る と さ れ る 。 こ の 場 合 に は 、 行 政 を め ぐ る 法 律 関 係 は 、 国 家 と 人 民 と の 間 に で は な く 、 い わ ば 国 家 の 身 代 わ り と も 言 う べ き こ れ ら の 公 共 団 体 と 人 民 と の 間 に 成 立 す る こ と に な る ⽜( 傍 線 筆 者 ( 49) )。 小 早 川 教 授 は 、⽛ ʠ 国 ʡ と ʠ 国 家 ʡ と は 同 義 で あ る が 、 一 般 に 、 地 方 公 共 団 体 と 区 別 さ れ た 行 政 主 体 と し て 言 う と き に は 、ʠ 国 ʡ の 語 を 用 い る こ と が 多 い ( 50) ⽜ と 述 べ て い る 。 そ れ を 前 提 に 考 察 す る と 、 右 記 に 引 用 し た 小 早 川 教 授 の ⽛ 行 政 上 の 法 律 関 係 の 一 方 当 事 者 と し て 人 民 に 対 す る の は 、 国 家 に は 限 ら な い ⽜⽛ い わ ば 国 家 の 身 代 わ り と も 言 う べ き こ れ ら の 公 共 団 体 ⽜ と い う 記 述 か ら は 、⽛ 国 家 = 国 ⽜ と い う こ と に な り 、 従 来 の 行 政 法 学 は 、 地 方 公 共 団 体 を 、⽛ 国 ⽜ か ら そ の 存 立 目 的 を 与 え ら れ た 存 在 で あ る と 考 え る 国 家 伝 来 説 を 帰 結 す る こ と に な る 。 こ の 点 、 藤 田 宙 靖 教 授 は 、⽛ 憲 法 九 四 条 に よ っ て 直 接 地 方 公 共 団 体 に 与 え ら れ た 権 能 は 、 言 う ま で も な く 、⽝ 国 家 ⽞ か ら 与 え ら れ た 権 能 で は あ っ て も ⽝ 国 ⽞ か ら 与 え ら れ た も の で あ る わ け で は な い ( 51) ⽜ と 述 べ 、⽛ 国 家 ⽜ と ⽛ 国 ⽜ を は っ き り と 概 念 区 分 し て 立 論 し て い る 。 本 稿 に お い て も 、 社 会 に 相 対 す る 意 味 で ⽛ 国 家 ⽜ の 用 語 を 、 地 方 公 共 団 体 と 区 別 さ れ た 行 政 主 体 と い う 意 味 で ⽛ 国 ⽜ の 用 語 を 、 意 識 し て 区 別 し て 用 い る こ と と す る 。 そ の 場 合 、⽛ 国 家 = 国 + 地 方 公 共 団

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体 ⽜ と い う こ と に な る 。 三 の ⚒ の ( ⚓ ) で 述 べ た よ う に 、 小 早 川 教 授 は 、 二 〇 〇 二 年 の 論 稿 で 、⽛ 自 治 体 の 自 治 権 に 関 し て は 、 憲 法 は 裁 判 所 に よ る 保 護

そ れ は 、 場 合 に よ っ て は 個 人 の 権 利 の 確 保 と 対 立 す る こ と に も な り う る

を 憲 法 自 体 で 保 障 す る の で は な く 、 地 方 自 治 の 本 旨 に 即 し つ つ 裁 判 所 の 介 入 を い か な る 程 度 と 態 様 に お い て 制 度 化 す べ き か の 決 定 を 法 律 に 委 ね て い る ( 憲 法 九 二 条 ) と 解 す る の が 妥 当 で あ ろ う ⽜ と 述 べ て い た 。 そ の 五 年 後 に 刊 行 さ れ た 行 政 法 教 科 書 に お い て は 、 次 の よ う に 論 を 進 め て い る 。 先 ず 、⽛ 行 政 庁 が 公 的 主 体 に 対 し て 指 示 そ の 他 の 行 為 を し た 場 合 に 、 相 手 方 で あ る 公 的 主 体 が そ れ を 不 服 と し て 取 消 訴 訟 等 で 争 う こ と が で き る か ⽜( 第 一 の 問 題 )、⽛ あ る 公 的 主 体 ( 法 人 ) に 属 す る 行 政 庁 ( 原 処 分 庁 ) が 一 定 の 処 分 を し 、 他 の 行 政 庁 が 関 係 者 の 不 服 申 立 て に も と づ い て そ れ を 取 り 消 し ま た は 変 更 す る 裁 決 を し た 場 合 に 、 原 処 分 庁 の 属 す る 公 的 主 体 ( 法 人 ) が そ れ を 取 消 訴 訟 等 で 争 え る か ど う か ⽜( 第 二 の 問 題 ) と い う 二 つ の 問 題 を 立 て る 。 そ し て 、 第 一 の 問 題 で は 、 立 法 は 、 要 旨 ⽛ 財 産 や 事 業 に つ い て の 侵 害 ⽜ で は な く 、⽛ 固 有 の 資 格 ⽜ に お い て 行 政 庁 の 行 為 の 相 手 方 と な る 場 合 は 、⽛ 行 政 組 織 の 一 体 性 や 行 政 案 件 処 理 の 迅 速 性 ・ 効 率 性 等 の 観 点 か ら そ の よ う な 保 護 を 与 え な い の が 適 切 だ と 考 え ら れ る 場 合 が 多 い で あ ろ う ⽜( 傍 線 筆 者 ( 52) ) と 述 べ る 。 ま た 、 第 二 の 問 題 で は 、⽛ 原 処 分 庁 と 審 査 庁 と の 関 係 は 、 基 本 的 に は 、 共 通 の 行 政 目 的 の た め に 行 政 組 織 内 部 で 役 割 を 分 担 す る 関 係 に と ど ま る も の で あ ⽜ る と し 、 そ の 場 合 は 、 自 治 体 の 行 政 庁 が 行 っ た 自 治 体 の ⽛ 財 産 な い し 事 業 に 関 係 す る 一 定 の 処 分 ( 原 処 分 )⽜ に つ い て も 、 否 定 さ れ る と す る ( 傍 線 筆 者 ( 53) )。 こ こ で の 小 早 川 教 授 の ⽛ 行 政 組 織 の 一 体 性 ⽜⽛ 行 政 組 織 内 部 で 役 割 を 分 担 す る 関 係 ⽜ と い う 用 語 か ら は 、 国 家 を 擬 人 化 し て 国 家 意 思 の 単 一 性 を 前 提 と す る ⽛ 国 家 法 人 説 を 基 礎 と す る 従 来 の 行 政 法 学 ⽜ の 考 え 方 と 径 庭 が な い よ う に 思 わ 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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れ る 。 一 九 九 六 年 の 那 覇 市 自 衛 隊 基 地 情 報 非 公 開 請 求 事 件 控 訴 審 判 決 ( 二 の ⚕ 参 照 ) の 判 旨 は 次 の よ う に 言 う 。⽛ 国 又 は 地 方 公 共 団 体 に 属 す る 行 政 権 限 の 根 源 で あ る 公 権 力 は 、 そ の 性 質 上 、 本 来 は 一 体 の も の で あ る が 、 こ れ を 国 及 び 地 方 公 共 団 体 の 各 個 の 行 政 機 関 に 分 属 さ せ て い る の は 、 行 政 目 的 、 行 政 事 項 な ど を 考 慮 し 、 地 方 自 治 の 本 旨 に も 配 慮 し つ つ 、 行 政 の 執 行 に お い て 、 矛 盾 を 避 け 、 統 一 を 図 り 、 適 正 及 び 合 理 性 を 保 っ て 行 政 効 率 の 促 進 を 図 る た め 、 分 業 を 行 わ ね ば な ら な い 必 要 性 に 基 づ く も の に ほ か な ら な い 。 そ う す る と 、 こ の よ う に し て 分 属 さ せ ら れ た 個 々 の 行 政 権 限 又 は そ の 行 使 に つ い て 矛 盾 や 抵 触 が 生 じ 、 そ れ を 巡 っ て 各 行 政 機 関 の 間 に 紛 争 が 発 生 し た と し て も 、 こ の 紛 争 は 、 行 政 組 織 内 部 に お い て 処 理 し 解 決 さ れ る べ き 性 質 の も の で あ り 、 専 ら 、 司 法 機 関 に お い て 法 令 を 適 用 し て 最 終 的 に 解 決 す べ き 紛 争 、 す な わ ち 法 律 上 の 争 訟 と い う こ と は で き な い ⽜( 傍 線 筆 者 )。 こ の 判 示 に は 、 次 の 二 つ の 理 論 的 内 容 が 含 意 さ れ て い る 。 第 一 に 、 行 政 権 限 の 根 源 で あ る 公 権 力 は 、 そ の 性 質 上 、 本 来 は 一 体 の も の で あ る が 、⽛ 分 業 ⽜ の た め に 国 ・ 地 方 公 共 団 体 の 各 個 の 行 政 機 関 に 分 属 さ せ ら れ て い る こ と 、 第 二 に 、 個 々 の 行 政 権 限 又 は そ の 行 使 に つ い て 各 行 政 機 関 の 間 に 紛 争 が 発 生 し た と し て も 、 こ の 紛 争 は 、 行 政 組 織 内 部 に お い て 処 理 し 解 決 さ れ る べ き 性 質 の も の で あ り 、 法 律 上 の 争 訟 で は な い 。 イ 行 政 権 限 の 根 源 で あ る 公 権 力 は 、 そ の 性 質 上 、 本 来 は 一 体 の も の で あ る の か こ の 問 題 に 対 し て 、 村 上 教 授 は 、 公 権 力 が 本 来 一 体 で あ る と す る 実 定 法 上 の 根 拠 が 明 白 で は な く 、 む し ろ 、 行 政 主 体 が 法 人 格 を 付 与 さ れ て い る 以 上 、 そ れ ぞ れ が 公 権 力 を 行 使 す る と み る の が 自 然 で は な い か と 批 判 す る ( 54) 。 思 う に 、 小 早 川 教 授 や 控 訴 審 判 決 の 思 考 の 根 底 に は 、 主 権 の 単 一 ・ 不 可 分 性 に 起 因 す る 国 家 ( 国 ) の 行 政 権 な る も

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の が 先 に あ る と い う 国 家 法 人 説 的 な 理 解 が あ る も の と 思 わ れ る 。 Ἑ 部 信 喜 教 授 は 、⽛ イ ェ リ ネ ク に 代 表 さ れ る 国 家 法 人 説 は 、 法 人 格 を 有 し 権 利 の 主 体 で あ る 国 家 の 意 思 を 国 ㅡ 権 ㅡ 、 こ の 国 家 意 思 の 属 性 と し て の 最 高 独 立 性 を 主 ㅡ 権 ㅡ 、 国 家 意 思 の 内 容 を な す 諸 権 利 ( 立 法 、 行 政 、 司 法 等 ) を 統 ㅡ 治 ㅡ 権 ㅡ と 呼 ん で 区 別 し 、 … 概 念 の 混 用 を い ま し め た ( 55) ⽜ と 述 べ る 。 そ し て 、 国 家 意 思 は 単 一 不 可 分 で 、⽛ 国 権 ⽜ と 呼 ば れ 、 国 権 は 、 そ の 性 質 に お い て は 最 高 独 立 で ⽛ 主 権 ⽜ と 呼 ば れ 、 そ の 内 容 ( 国 家 意 思 の 内 容 を な す 諸 権 利 ) に お い て ⽛ 統 治 権 ⽜( 立 法 、 行 政 、 司 法 等 ) と 呼 ば れ る と 説 明 す る ( 56) 。 国 家 法 人 説 的 な 理 解 か ら は 、 国 家 の 統 治 権 ( 国 の 行 政 権 ) か ら 自 治 体 の 権 能 全 般 ( 自 治 権 ) が 派 生 す る と 考 え る ⽛ 国 家 伝 来 説 ⽜ が 順 接 的 に 導 か れ る こ と に な り 、 そ こ で は 、 国 家 と 中 央 政 府 が 漠 然 と 一 体 化 さ れ る こ と に な る ( 57) 。 渋 谷 秀 樹 教 授 は 、⽛ 国 と い っ て も 、 社 会 学 的 意 味 に お け る 国 家 の 三 要 素 の 一 角 を 占 め る 被 治 者 た る 人 を 含 む 場 合 と 、 統 治 権 を 掌 握 す る 政 府 を も っ ぱ ら 指 す 場 合 が あ る 。 後 者 の 場 合 の 国 は 、 前 者 の 場 合 と 区 別 し て 中 央 政 府 と し て こ れ ま で 論 じ て き た ( 58) ⽜ と 述 べ た 上 で 、⽛ 地 方 公 共 団 体 が 国 と い う 統 治 団 体 の 中 に 包 摂 さ れ る 団 体 で あ り 、 そ の 団 体 統 治 権 を 行 使 す る の が 地 方 政 府 と い う 位 置 付 け か ら は じ め な け れ ば な ら な い ⽜⽛ 地 方 政 府 も 中 央 政 府 も そ れ ぞ れ 統 治 団 体 た る 国 お よ び 地 方 統 治 団 体 の も つ 統 治 権 を 行 使 す る 点 は 同 じ で 、 明 ら か な 相 違 は 、 統 治 権 の 及 ぶ 範 囲 の 広 狭 、 つ ま り 全 国 に 及 ぶ か 、 そ れ と も 当 該 地 方 統 治 団 体 の 地 方 統 治 権 の 領 域 内 に と ど ま る か と い う 点 に あ る に 過 ぎ な い ( 59) ⽜ と 述 べ る 。 塩 野 宏 教 授 は 、 行 政 法 教 科 書 に お い て 、⽛ 日 本 国 憲 法 六 五 条 は 行 政 権 一 般 に つ い て ふ れ て い る が 、 他 方 で 、 憲 法 は 地 方 自 治 を 保 障 し て お り 、地 方 公 共 団 体 の 行 う 行 政 は 、当 該 地 方 公 共 団 体 の そ れ で あ っ て 、国 の 行 政 で は な い 。 し た が っ て 、 地 方 公 共 団 体 の 行 政 機 関 は 、 内 閣 の 管 轄 下 に あ る 行 政 機 関 に は あ た ら な い ( 60) 。⽜ と 述 べ て い る が 、 次 の 内 閣 法 制 局 長 官 の 国 会 答 弁 に は 直 接 触 れ て い な い 。 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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一 九 九 六 年 一 二 月 六 日 の 衆 議 院 予 算 委 員 会 に お い て 、菅 直 人 委 員 が⽛ 憲 法 六 五 条 に お け る 内 閣 に 属 す る と さ れ る⽝ 行 政 権 ⽞ の 中 に 自 治 体 の 行 政 権 は 含 ま れ る の か ど う か ⽜ と 質 問 し た の に 対 し 、 大 森 正 輔 内 閣 法 制 局 長 官 は 次 の と お り 答 弁 し た 。⽛ 現 行 日 本 国 憲 法 は 、 第 八 章 に お き ま し て 地 方 自 治 の 原 則 を 明 文 で 認 め て お り ま す 。 そ し て 九 四 条 は 、⽝ 地 方 公 共 団 体 は 、 そ の 財 産 を 管 理 し 、 事 務 を 処 理 し 、 及 び 行 政 を 執 行 す る 権 能 を 有 す る ⽞ こ の よ う に 明 文 で 規 定 し て い る わ け で ご ざ い ま す の で 、 地 方 公 共 団 体 の 行 政 執 行 権 は 憲 法 上 保 障 さ れ て お る 。 / し た が い ま し て 、 憲 法 六 五 条 の ⽝ 行 政 権 は 、 内 閣 に 属 す る ⽞ と い う そ の 意 味 は 、 行 政 権 は 原 則 と し て 内 閣 に 属 す る ん だ 。 逆 に 言 い ま す と 、 地 方 公 共 団 体 に 属 す る 地 方 行 政 執 行 権 を 除 い た 意 味 に お け る 行 政 の 主 体 は 、 最 高 行 政 機 関 と し て は 内 閣 で あ る 。 そ れ が 三 権 分 立 の 一 翼 を 担 う ん だ と い う 意 味 に 解 さ れ て お り ま す ⽜( 傍 線 筆 者 ( 61) )。 こ の 解 釈 は 、 先 進 有 力 学 説 に と ど ま る も の で は な く 、 二 〇 年 前 の 国 ( 内 閣 ) の 国 会 答 弁 と い う 公 的 な ⽛ 有 権 解 釈 ⽜ な の で あ る 。 右 記 の 高 裁 判 決 は 、 二 〇 〇 七 年 に 言 い 渡 さ れ た も の で あ る が 、 そ の よ う な 解 釈 は 、 現 行 憲 法 の 、 少 な く と も 二 〇 〇 〇 年 四 月 一 日 の 分 権 改 革 以 降 の 憲 法 解 釈 と し て お よ そ 許 さ れ な い も の と 言 わ ざ る を 得 な い 。 阿 部 泰 隆 教 授 も 、⽛ 国 と 地 方 公 共 団 体 の 関 係 は 、 も と も と 地 方 自 治 の 本 旨 ( 憲 法 九 二 条 ) か ら 、 遅 く と も 、 二 〇 〇 〇 年 の 地 方 分 権 改 革 に よ り 、 同 一 団 体 の 内 部 関 係 で は な く 、 法 治 国 家 的 に 構 成 さ れ て い る 。 そ の 間 の 争 い は 、 民 事 法 的 な 意 味 で の 当 事 者 間 の 権 利 義 務 に 関 す る も の で は な い が 、 行 政 主 体 間 の 権 限 行 使 の 争 い で あ り 、 法 律 関 係 が 生 じ 、 そ れ ぞ れ の 団 体 に は そ れ な り の 利 害 関 係 が あ り 、 具 体 的 な 法 的 紛 争 で あ る 以 上 は 、 法 律 上 の 争 訟 と 理 解 す べ き で あ る ( 62) ⽜ と 指 摘 し て い る 。 そ も そ も 、⽛ 国 家 ⽜ の 公 権 力 ( 統 治 権 ) は 本 来 一 体 で あ る と す る 考 え 方 は 、 戦 後 の 憲 法 構 造 の 転 換 に 無 自 覚 で あ り 、 そ の 変 化 を 的 確 に 理 解 し て い な い よ う に 思 わ れ る 。

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渋 谷 秀 樹 教 授 は 、 憲 法 教 科 書 の 中 で 、 現 在 、 用 い ら れ て い る ⽛ 主 権 ⽜ と い う 言 葉 に は 三 つ の 用 法 ( 意 味 ) が あ る と し 、 ① 統 治 権 、 ② 統 治 権 の 性 質 、 ③ 統 治 活 動 の 最 高 決 定 権 を 挙 げ る 。 ① の 用 法 は 、 統 治 権 ( 国 家 権 力 ) そ の も の を 指 し 、 憲 法 四 一 条 に い う ⽛ 国 権 ⽜ も こ れ を 指 し て い る 。 そ の 具 体 的 な 内 容 は 、 統 治 権 を 構 成 す る 立 法 権 ・ 行 政 権 ・ 司 法 権 で あ る と 述 べ る 。 ② の 用 法 は 、 対 外 的 独 立 性 と 対 内 的 最 高 性 を 表 し 、 前 者 は 、 対 外 ( 国 外 ) 的 に 神 聖 ロ ー マ 皇 帝 ・ ロ ー マ 教 皇 等 に 対 す る 独 立 性 を 、 後 者 は 、 対 内 ( 国 内 ) 的 に 封 建 領 主 ・ 自 治 都 市 等 に 対 す る 最 高 性 を 主 張 す る 政 治 理 論 と し て 唱 え ら れ た と 素 描 す る 。 そ し て 、 ③ の 用 法 は 、 国 民 主 権 と し て 語 ら れ る も の で あ る ( 63) 。 ま た 、 高 橋 和 之 教 授 は 、⽛ 主 権 の 単 一 ・ 不 可 分 性 ⽜ と 地 方 自 治 権 の 根 拠 と の 関 係 に つ い て 、 次 の よ う に 説 く 。⽛ 伝 来 説 は 、 近 代 国 家 が そ の 主 権 の 単 一 ・ 不 可 分 性 を 根 拠 に 中 央 集 権 的 権 力 構 造 と し て 成 立 し た と い う 理 解 を 前 提 に し て 、 地 域 が 自 治 権 を も つ の は 、 国 家 に よ り 承 認 さ れ た 限 り に お い て で あ り 、 自 治 権 は 国 家 か ら 伝 来 す る も の で あ る と 説 明 す る 。 こ の 説 か ら は 、 自 治 権 の 内 容 は 、 国 家 が 自 由 に 定 め う る と い う こ と に な る が 、 そ れ で は 自 治 権 の 憲 法 的 保 障 が 無 意 味 に な っ て し ま お う 。 そ こ で 、 こ の 批 判 に 応 え て 、 こ の 説 の バ リ エ ー シ ョ ン と し て ⽜ 唱 え ら れ た ⽛ 制 度 保 障 説 に よ れ ば 、 地 方 自 治 は 憲 法 上 制 度 と し て 保 障 さ れ て い る の で あ り 、 国 家 は そ の 制 度 の 本 質 を 空 洞 化 す る よ う な 自 治 権 の 内 容 規 定 を 行 う こ と は で き な い と す る 。 こ の 説 は … 通 説 的 に 受 け 入 れ ら れ て き た が 、 制 度 保 障 説 の 前 提 は あ く ま で も 中 央 集 権 的 国 家 の 存 在 で あ り 、 か か る 国 家 を 予 め 前 提 と し て し ま う こ と 自 体 の 問 題 性 を 問 う 必 要 が あ る 。 国 家 主 権 の 単 一 ・ 不 可 分 性 は 対 外 的 関 係 に お け る 論 理 に す ぎ ず 、 国 家 の 内 部 構 造 は 中 央 集 権 的 で あ る 必 然 性 は な い こ と を 理 解 す れ ば 、 主 権 者 た る 国 民 は 憲 法 に よ り 国 家 の 内 部 構 造 を 分 権 的 に 定 め た の で あ り 、 憲 法 の い う 地 方 自 治 と は 国 と 地 方 の 対 等 関 係 に お け る 分 権 的 構 造 を 意 味 す る と い う 理 解 が 可 能 と な る ⽜( 傍 線 筆 者 ( 64) )。 そ の 理 解 の 上 で 、 高 橋 教 授 は 、 自 治 権 の 起 源 ・ 根 拠 と し て ⽛ 憲 法 伝 来 説 ⽜ を 採 る 。 こ こ で 、⽛ 国 家 ⽜ と あ る の は 、 本 稿 の 用 語 方 で は ⽛ 国 ⽜ と い う こ と に な 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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る 。 市 川 正 人 教 授 も 、⽛ 最 近 で は 、 地 方 自 治 権 は 、 他 の 統 治 権 と 同 様 に 憲 法 に 由 来 す る も の で あ る と し 、 国 民 主 権 や 基 本 的 人 権 の 保 障 に よ っ て 基 礎 づ け よ う と す る 新 固 有 権 説 ( 憲 法 伝 来 説 ) が 有 力 に 主 張 さ れ て い る 。 / 新 固 有 権 説 ( 憲 法 伝 来 説 ) は 、 地 方 自 治 権 を 中 央 政 府 の 統 治 権 の 一 部 を さ い て 認 め ら れ た も の と は 捉 え ず 、 国 の 統 治 権 が 中 央 政 府 の 統 治 権 と 地 方 自 治 権 と か ら な る と 理 解 し 、 国 民 主 権 、 基 本 的 人 権 保 障 に よ り 地 方 自 治 の 独 自 の 意 義 を 探 ろ う と す る も の で あ り 、 魅 力 的 な も の で あ る ( 65) ⽜ と 述 べ て い る 。 こ こ で 、⽛ 国 ⽜ と あ る の は 、 本 稿 の 用 語 方 で は ⽛ 国 家 ⽜ と い う こ と に な る 。 な お 、 憲 法 学 説 で は 、 仮 に 制 度 的 保 障 説 に 立 つ 場 合 で も 、 自 治 体 の 自 治 権 の 執 行 が 妨 げ ら れ た と き に 、 自 治 体 の 主 観 的 権 利 性 を 否 定 す る こ と に は な ら な い と 解 し て い る よ う で あ る ( 66) 。 ま た 、 渋 谷 教 授 は 、 日 本 に お い て 統 治 権 を も つ ⽛ 政 府 ⽜ と し て 、 現 行 憲 法 は 、⽛ 国 ⽜ と ⽛ 地 方 公 共 団 体 ⽜ が あ る と し 、 憲 法 第 四 章 ⽛ 国 会 ⽜、 第 五 章 ⽛ 内 閣 ⽜、 第 六 章 ⽛ 司 法 ⽜ は 、 も っ ぱ ら ⽛ 国 ⽜ の 政 府 で あ る 中 央 政 府 の 仕 組 み を 定 め 、 第 八 章 ⽛ 地 方 自 治 ⽜ は 、⽛ 地 方 公 共 団 体 ( = 自 治 体 ) の 政 府 で あ る 地 方 政 府 の 仕 組 み を 定 め て い る と し 、 現 行 憲 法 は 、 中 央 政 府 と 地 方 政 府 と い う 二 元 的 な 統 治 構 造 を 前 提 と し て い る と 述 べ る ( 67) 。 そ し て 、 憲 法 九 四 条 は 、⽛ 地 方 公 共 団 体 は 、 そ の 財 産 を 管 理 し 、 事 務 を 処 理 し 、 及 び 行 政 を 執 行 す る 権 能 を 有 し 、 法 律 の 範 囲 内 で 条 例 を 制 定 す る こ と が で き る ⽜ と 規 定 す る が 、 こ れ は 、 地 方 公 共 団 体 が 、 行 政 権 と 立 法 権 の 二 種 の 統 治 権 を も つ 政 府 で あ る こ と を 意 味 す る と 述 べ る ( 68) 。 以 上 に 述 べ た 統 治 構 造 に 関 す る 憲 法 学 説 の 成 果 を 踏 ま え る な ら 、 近 代 国 家 の 主 権 ( 統 治 権 ) の 単 一 ・ 不 可 分 性 な る も の は 対 外 関 係 に お け る 議 論 に す ぎ ず 、国 家 の 内 部 構 造 は 中 央 集 権 的 で あ る 必 然 性 は な い こ と が 導 か れ る 。 そ の 結 果 、 戦 後 の 憲 法 体 制 の 下 で 、 那 覇 市 自 衛 隊 基 地 情 報 非 公 開 請 求 事 件 控 訴 審 判 決 が 述 べ る よ う な 、⽛ 国 家 ⽜ の 公 権 力 ( 統 治 権 )

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は 本 来 一 体 で あ る と す る 考 え 方 に 合 理 的 な 法 的 根 拠 は 見 出 せ ず 、 も は や 通 用 し な い 観 念 ( ド グ マ ) と い う べ き で あ る 。 ウ 各 行 政 機 関 の 間 の 紛 争 は 行 政 組 織 内 部 に お い て 処 理 し 解 決 さ れ る べ き 性 質 の も の で あ る の か 次 に 、 各 行 政 機 関 の 間 の 紛 争 は 行 政 組 織 内 部 に お い て 処 理 し 解 決 さ れ る べ き 性 質 の も の で あ る と い う 考 え 方 に つ い て 検 討 す る 。 こ こ で は 、 中 央 政 府 ( 国 ) と 地 方 公 共 団 体 ( 自 治 体 ) の 関 係 ( 国 政 に お け る 地 方 自 治 の 位 置 づ け ・ 分 権 構 造 ) を ど う 理 解 す る の か が 問 題 と な る 。 こ の 論 点 に つ い て 、 高 橋 和 之 教 授 は 、 大 き く 分 け る と 三 つ の 見 解 が 存 在 す る と し 、 次 の よ う に 論 述 し て い る 。 す な わ ち 、 第 一 の 見 解 は 、⽛ 憲 法 は 統 治 構 造 を ま ず 立 法 ・ 行 政 ・ 司 法 の 三 権 に 分 割 し 、 次 い で 、 そ の 行 政 を 中 央 と 地 方 に 分 け た と い う も の で あ る 。 こ こ で は 、 地 方 自 治 は 、 国 の 行 政 を 地 方 に お い て 自 治 的 に 遂 行 す る 制 度 と 理 解 さ れ る こ と に な る ⽜。 こ の 見 解 は 、⽛ 自 治 体 を 国 の 地 方 行 政 組 織 の 中 に 組 み 込 む 発 想 で 、 戦 前 的 な 自 治 の 観 念 と 連 続 的 で あ る 。 こ の よ う な 理 解 で は 、 日 本 国 憲 法 が 地 方 自 治 を 重 視 し た 意 義 を 捉 え る こ と は で き な い ⽜( 傍 線 筆 者 ) と 批 判 す る 。 第 二 の 見 解 は 、⽛ 憲 法 は ま ず 政 治 ( 統 治 ) の 領 域 と 法 の 領 域 を 区 別 し 、 次 い で 、 政 治 の 領 域 を 中 央 と 地 方 に 分 け た と 考 え る 。 こ こ で は 、 中 央 と 地 方 の 政 治 領 域 は そ れ ぞ れ 立 法 と 行 政 に 分 立 さ れ 、 法 の 領 域 は 中 央 ・ 地 方 を 通 じ て 統 一 的 に 司 法 権 に よ り 担 当 さ れ る と 解 す る こ と に な る 。 ゆ え に 、 地 方 も 統 治 団 体 と し て 政 治 を 行 う 主 体 と さ れ る の で あ る ⽜。 そ し て 、 第 三 の 見 解 は 、⽛ 憲 法 は ま ず 中 央 政 治 と 地 方 政 治 を 分 割 し 、 次 い で 、 そ れ ぞ れ に つ き 立 法 ・ 行 政 ・ 司 法 を 分 立 す る と 解 す る 。 こ こ で は 、 地 方 自 治 は 司 法 権 を も 備 え た 完 全 な 統 治 体 と 捉 え ら れ る ⽜。 こ の 見 解 は 、⽛ 日 本 の 統 治 構 造 を 連 邦 制 的 な 構 造 と し て 捉 え る も の で 、 地 方 の 地 位 を 最 も 理 解 す る 立 場 で あ る ⽜ が 、⽛ 憲 法 解 釈 と し て は 困 難 と 思 わ れ る ⽜ と 述 べ て い る ( 69) 。 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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以 上 の 検 討 結 果 か ら 、 高 橋 教 授 は 、 日 本 国 憲 法 の 解 釈 と し て は 、 第 二 の 見 解 が 最 も 適 切 で あ る と す る ( 70) 。 思 う に 、 高 裁 判 決 が 述 べ る よ う な 、 各 行 政 機 関 の 間 の 紛 争 は 行 政 組 織 内 部 に お い て 処 理 し 解 決 さ れ る べ き 性 質 の も の で あ る と い う 考 え 方 は 、 高 橋 教 授 が 分 析 し て い る 第 一 の 見 解 か ら 導 か れ る も の で あ る 。 そ し て 、 第 一 の 見 解 は 、 戦 前 的 な 自 治 の 観 念 と 連 続 的 で あ り 、 現 行 憲 法 の 採 用 す る と こ ろ で は な い こ と は 、 高 橋 教 授 の 指 摘 す る と お り で あ る 。 塩 野 宏 教 授 も ⽛ 地 方 公 共 団 体 は 立 法 権 及 び 司 法 権 に は 服 す る が ( た だ し 、 立 法 に よ る 侵 害 に つ い て も 、 制 度 的 保 障 は あ る )、 行 政 権 に 対 し て は 、 当 然 権 力 服 従 の 関 係 に た つ も の で は な い 。 そ の 意 味 で は 、 国 と 地 方 公 共 団 体 は 、 憲 法 上 原 則 と し て 併 立 的 関 係 に あ る ( 71) ⽜ と 述 べ 、 同 様 の 見 解 を 示 し て い る 。 前 述 し た よ う に 、 一 九 九 六 年 一 二 月 六 日 の 衆 議 院 予 算 委 員 会 に お い て 、 内 閣 法 制 局 長 官 は 、 地 方 公 共 団 体 の 行 政 機 関 は 、 内 閣 の 管 轄 下 に あ る 行 政 機 関 に は 当 た ら な い 旨 国 会 答 弁 し て い る 。 そ う で あ る 以 上 、 自 治 体 の 行 政 権 の 執 行 が 、 内 閣 の 職 務 と し て の 憲 法 七 三 条 一 号 の ⽛ 国 務 を 総 理 す る こ と ⽜ 及 び 内 閣 総 理 大 臣 の 職 務 と し て の 内 閣 法 六 条 の ⽛ 行 政 各 部 ⽜ の ⽛ 指 揮 監 督 ⽜ の 対 象 に な ら な い こ と は 明 白 で あ る 。 当 然 の こ と と し て 、 地 方 自 治 体 ( 地 方 政 府 ) と 国 ( 中 央 政 府 ) の 間 で 法 的 に 解 決 可 能 な 紛 争 が 起 き た 場 合 は 、 公 正 な 裁 判 手 続 に よ り 解 決 が 図 ら れ る べ き こ と に な る ( 72) 。 二 〇 〇 〇 年 四 月 一 日 施 行 の 地 方 分 権 改 革 の ス ロ ー ガ ン ⽛ 上 下 主 従 ⽜ か ら ⽛ 対 等 協 力 ⽜ の 関 係 へ と い う メ ッ セ ー ジ は 、 機 関 委 任 事 務 に 代 表 さ れ る 反 憲 法 的 な 戦 後 の 地 方 自 治 法 制 の 変 換 を 画 す る 、 憲 法 施 行 五 三 年 後 に 発 せ ら れ た ⽛ 確 認 ⽜ 的 な も の で あ る こ と が 分 か る 。 塩 野 教 授 も ⽛ 権 力 的 監 督 手 段 に 関 し て は 司 法 的 救 済 手 段 が 認 め ら れ る の で あ っ て 、 現 行 法 制 度 を 前 提 と す れ ば 、 行 政 事 件 訴 訟 法 に よ る 抗 告 訴 訟 を 提 起 す る こ と が 可 能 で あ る ⽜ と 述 べ て い る ( 73) 。 以 上 の 検 討 結 果 か ら 、 那 覇 市 自 衛 隊 基 地 情 報 非 公 開 請 求 事 件 控 訴 審 判 決 が 判 示 す る よ う な 立 論 は 成 立 す る 余 地 は な い と い う べ き で あ る 。

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( ⚒ ) 行 政 主 体 と 私 人 の 二 元 論 か ら す れ ば 、 行 政 主 体 間 の 関 係 は 、 原 則 と し て 、 内 部 関 係 で あ る と す る 考 え 方 村 上 裕 章 教 授 の 論 稿 に お い て 、⽛ 内 部 関 係 論 ⽜ の 論 者 と し て 、 藤 田 宙 靖 教 授 が 挙 げ ら れ て い る 。 し か し 、 村 上 教 授 の 学 会 発 表 に 対 し 、 当 人 か ら 自 説 は ⽛ 内 部 関 係 論 ⽜ で は な い 旨 の 指 摘 が あ っ た と の こ と で あ る ( 74) 。 以 下 の 論 述 に お い て 、 藤 田 説 を 紹 介 し 、 そ の 上 で 、 巷 間 交 わ さ れ て い る 議 論 が ⽛ 藤 田 説 に 対 す る 誤 解 ⽜ な の か 、 あ る い は ⽛ 藤 田 説 の 誤 解 ⽜ な の か を 考 察 し て み よ う と 思 う 。 ア 藤 田 宙 靖 教 授 の 見 解 藤 田 教 授 は 、 三 の ⚒ の ( ⚒ ) で 紹 介 し た よ う に 、⽛ 行 政 主 体 と 私 人 の 区 別 ( な い し 二 元 論 )⽜⽛ 行 政 の 内 部 関 係 と 外 部 関 係 の 区 別 ( な い し 二 元 論 )⽜ を 前 提 と し て 、⽛ 行 政 主 体 相 互 間 の 法 関 係 は 、 基 本 的 に 、 行 政 主 体 内 部 の 組 織 構 造 に 関 す る 法 関 係 で あ る ⽜ と し て 位 置 付 け て い る 。 そ し て 、 行 政 主 体 相 互 間 の 法 関 係 が ど の よ う な 場 合 に ⽛ 内 部 関 係 ⽜ と さ れ る の か に つ い て 、 論 を 進 め て い る 。 第 一 に 、 軍 事 、 警 察 、 司 法 、 課 税 等 、 行 政 主 体 の み が 行 い 得 る 活 動 の 場 合 は 、 少 な く と も 原 則 的 に は ⽛ 内 部 関 係 ⽜ と な り 、 客 観 法 的 な 関 係 と な る は ず で あ る と 述 べ る 。 第 二 に 、 普 通 財 産 の 管 理 等 、 私 人 の 活 動 と 本 質 的 に 違 い の な い 場 合 は 、 本 来 、⽛ 内 部 関 係 ( 客 観 法 的 関 係 )⽜ で は な い と す る 。 第 三 に 、 公 共 施 設 の 管 理 者 、 事 業 の 施 行 主 体 な ど の 中 間 的 な ケ ー ス を 挙 げ る ( 75) 。 こ の 箇 所 で 、⽛ 仮 に 問 題 の そ も そ も の 始 め が 、⽝ 行 政 主 体 と 私 人 の 二 元 ⽞ と い う 考 え 方 に あ る と す れ ば 、 行 政 主 体 が ⽝ 固 有 の 資 格 ⽞ に お い て 登 場 す る も の で あ る か 否 か と い う と こ ろ に 解 決 の 基 準 を 求 め 、 ま た 、 ⽝ 固 有 の 資 格 ⽞ か 否 か と い う こ と の 判 断 を ⽝ 一 般 私 人 も ま た 立 ち 得 る 立 場 で あ る か 否 か ⽞ に よ っ て 判 断 し よ う と す る 考 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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え 方 ⽜ を 採 用 す る が 、⽛ 問 題 は 、⽝ 一 般 私 人 も ま た 立 ち 得 る 立 場 で あ る か 否 か ⽞ を 具 体 的 に ど の よ う に 判 断 す る か 、 に あ る ( 76) ⽜ と 述 べ る 。 ⽛⽝ 固 有 の 資 格 ⽞ に 立 つ 場 合 で あ っ て も 、 そ の 法 主 体 の 固 有 の 利 益 と し て 特 別 の 法 的 保 護 が 与 え ら れ る べ き で は な い か 、 が 問 題 と な り 得 る ケ ー ス ⽜ と し て 、 普 通 地 方 公 共 団 体 の 利 益 を 挙 げ る ( 77) 。 ⽛ 地 方 公 共 団 体 は 、 行 政 主 体 と 私 人 の 二 元 論 と い う 意 味 で の 私 人 で は な い に し て も 、 憲 法 上 保 障 さ れ た 、⽝ 自 治 権 ⽞ と も 言 う べ き 固 有 の 権 利 を 持 っ て い る の で あ っ て 、 こ の 権 利 に 基 づ き 、 他 の 行 政 主 体 と り わ け 国 に 対 し て 、 特 別 の 法 的 地 位 に 立 つ の で は な い か 、 と い う 問 題 で あ る ( 78) ⽜。 ⽛ こ の 問 題 が と り わ け 明 確 な 形 で 出 て く る の は 、 地 方 公 共 団 体 は 、 そ の 公 権 力 の 行 使 ( 統 治 権 の 行 使 ) に 対 す る 国 か ら の 監 督 行 為 ( 取 消 し そ の 他 ) に 対 し て 、 行 政 事 件 訴 訟 法 三 条 に よ り 抗 告 訴 訟 を 提 起 す る こ と が で き る か 、 と い う 問 題 で あ る 。 例 え ば 、 塩 野 宏 教 授 は 、 ま さ に こ の よ う な 問 題 意 識 か ら 、 こ の 問 題 に 対 し て 肯 定 的 な 解 答 を 与 え て お ら れ る 。 し か し 、 私 は 、 こ の 点 に 関 し て は 、 少 な く と も 現 時 点 で は 、 逆 に 否 定 的 な 考 え 方 を し て い る 。 そ の 理 由 は 次 の 通 り で あ る ( 79) ⽜ と 述 べ る 。 先 ず 、⽛ 行 政 事 件 訴 訟 法 の 定 め る 抗 告 訴 訟 が 、⽝ 私 人 ⽞ の 権 利 を 保 護 す る た め に 設 け ら れ た も の で あ り 、 そ れ は 究 極 的 に は 、 日 本 国 憲 法 三 二 条 の 定 め る 基 本 的 人 権 と し て の ⽝ 裁 判 を 受 け る 権 利 ⽞ に 基 づ く も の で あ る ⽜⽛ 行 政 主 体 に よ る 公 権 力 行 使 が 、 こ う い っ た 基 本 的 人 権 に よ る 保 護 の 対 象 と は な ら な い ⽜⽛ い わ ゆ る ⽝ 統 治 団 体 ⽞⽜ と し て の 資 格 に お け る 地 方 公 共 団 体 は 、 こ の 意 味 に お い て 、 本 来 当 然 に は 、 抗 告 訴 訟 を 提 起 す る 権 能 を 持 た な い ⽜( 傍 線 筆 者 ( 80) )。 こ の 論 点 に つ い て は 、⽛ 五 検 討 ( 二 ) 司 法 権 の 観 念 ⽜ に お い て 、 検 討 す る 。 次 に 、⽛ ⽝ 裁 判 を 受 け る 権 利 ⽞ で は な く 、⽝ 地 方 自 治 の 保 障 ⽞ か ら 由 来 す る 憲 法 上 の ⽝ 自 治 権 ⽞ に 基 づ い て 、 以 上 の 理 屈 と は 別 に 、 現 行 法 上 の 抗 告 訴 訟 を 利 用 し 得 る ⽜ か と い う 問 題 が あ る 。⽛ こ の 問 題 に つ い て は 、 ま ず 、 憲 法 解 釈 論 と し

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て 、 そ う い っ た 意 味 で の 実 体 的 な 権 利 と し て の ⽝ 自 治 権 ⽞ な る も の が 、 憲 法 上 保 障 さ れ て い る か 、 と い う 問 題 と 、 更 に 、 仮 に そ の よ う な 実 体 法 上 の 権 利 が あ る と し て 、 そ れ は 同 時 に 手 続 法 上 も 、 抗 告 訴 訟 を 提 起 す る 権 利 と し て 認 め ら れ て い る か 、 と い う 点 が 論 じ ら れ な け れ ば な ら な い ( 81) ⽜ と 述 べ る 。 こ れ に 対 し 、 塩 野 教 授 は 、⽛ 監 督 権 の 違 法 な 行 使 は 、 地 方 公 共 団 体 た る 法 人 が 国 に 対 し て 有 す る 自 治 権 の 侵 害 に あ た る の で あ っ て 、 日 本 国 憲 法 の 地 方 自 治 の 保 障 の 充 実 の 見 地 か ら す る と 、 こ れ に 対 し て 、 地 方 公 共 団 体 は 裁 判 所 に 救 済 を 求 め る こ と が で き 、 そ の 訴 訟 は 、 現 行 法 で は 、 行 政 事 件 訴 訟 法 の 抗 告 訴 訟 に 該 当 す る と 解 さ れ る ( … )。 も と よ り 、 こ の 見 地 に た っ た と し て も 、 改 正 自 治 法 の よ う な 特 別 の 定 め を 置 く こ と は 十 分 考 え ら れ る ( 82) ⽜ と 述 べ る 。 こ れ に 対 し 、 藤 田 教 授 は 、⽛ 客 観 法 的 関 係 に お い て 、 そ も そ も 法 人 格 の 有 無 と い う こ と が 、 何 ら か の 意 義 を 持 ち 得 る か ( す な わ ち 、⽝ 行 政 機 関 ⽞ 概 念 と 区 別 さ れ た ⽝ 行 政 主 体 ⽞ 概 念 が そ も そ も そ こ に 必 要 で あ る か ( 83) )⽜ と 問 題 提 起 す る 。 そ し て 、⽛ 客 観 法 的 関 係 に あ る と さ れ た 法 主 体 相 互 の 間 に お い て は 、 独 立 の 法 人 格 を 有 す る か 否 か と い う こ と は 、 理 論 的 な 意 味 を 持 た ず 、 従 っ て ま た 、 当 該 主 体 が ⽝ 行 政 主 体 ⽞ で あ る か ⽝ 行 政 機 関 ⽞ に 止 ま る か 、 と い う 問 題 も 本 来 生 じ な い も の と 考 え る ⽜ と し 、 大 阪 国 民 健 康 保 険 事 件 ( 二 の ⚓ 参 照 ) の 最 高 裁 判 決 の 判 旨 ⽛ 保 険 者 の し た 保 険 給 付 等 に 関 す る 処 分 の 審 査 に 関 す る か ぎ り 、( 法 人 格 の な い 行 政 機 関 で あ る ) 審 査 会 と ( 法 人 格 を 有 す る 行 政 主 体 で あ る ) 保 険 者 と は 、 一 般 的 な 上 級 行 政 庁 と そ の 指 揮 監 督 に 服 す る 下 級 行 政 庁 の 場 合 と 同 様 の 関 係 に 立 つ ⽜( 括 弧 内 は 筆 者 が 補 充 ) と い う 論 理 を 肯 定 的 に 引 用 し て い る ( 84) 。 そ の 上 で 、⽛ 私 は 、 … 、 こ の 問 題 を ⽝ 自 治 権 の 保 障 ・ 拡 充 ⽞ と い う 一 面 的 な 見 地 か ら の み 考 え て 良 い の か と い う こ と を 、 問 題 と し て い る の で あ る 。 地 方 公 共 団 体 に よ る 住 民 に 対 す る 公 権 力 の 行 使 に つ き 国 が 権 力 的 に 介 入 す る と い う 場 合 ( 私 は 、 終 始 、 こ う い っ た ケ ー ス を 問 題 と し て き て い る )、 問 題 を 専 ら 住 民 の 側 か ら 見 る な ら ば 。 そ れ は 、 実 質 上 、 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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い わ ば 、 行 政 機 関 の 公 権 力 行 使 に 対 す る 上 位 の 監 督 機 関 か ら の 監 督 行 為 で あ る に 他 な ら な い 。 こ の 場 合 に 、 住 民 に 対 し て 公 権 力 を 行 使 し た 機 関 が 、 監 督 機 関 に 対 し て 抗 告 訴 訟 を 提 起 し 得 る と い う 構 造 が 、 住 民 の 権 利 保 護 の 見 地 か ら す る 場 合 に ど の よ う な 意 味 を 持 つ か と い う こ と を ( 地 方 公 共 団 体 の 自 治 権 の 保 護 の 問 題 と 共 に )、 よ り 正 面 か ら 考 え な け れ ば な ら な い の で は な い か 、 と い う の が 、 抗 告 訴 訟 肯 定 説 に 対 す る 私 の 疑 問 な の で あ る ( 85) ⽜( 傍 線 筆 者 ) と 述 べ る 。 こ こ で 、 藤 田 教 授 の 主 張 ( 疑 問 ) の 要 点 は 、 第 一 に 、 こ の 問 題 を ⽛ 自 治 権 の 保 障 ・ 拡 充 ⽜ と い う 一 面 的 な 見 地 か ら の み 考 え て 良 い の か 、 第 二 に 、 住 民 に 対 し て 公 権 力 を 行 使 し た 機 関 が 、 監 督 機 関 に 対 し て 抗 告 訴 訟 を 提 起 し 得 る と い う 構 造 は 、 住 民 の 権 利 保 護 の 見 地 か ら ど の よ う な 意 味 を 持 つ の か 、 と い う こ と に な る 。 イ 藤 田 説 に 対 す る 誤 解 藤 田 説 に 対 し 、 村 上 教 授 は 、 行 政 主 体 と 私 人 の 二 元 論 か ら す れ ば 、 行 政 主 体 間 の 関 係 が 私 人 の そ れ と 同 じ で な い と し て も 、 こ れ を 内 部 関 係 と み る 必 然 性 は な い よ う に 思 わ れ る と 批 判 す る ( 86) 。 と こ ろ で 、 塩 野 教 授 も 指 摘 し て い る よ う に 、 藤 田 説 は 、⽛ 必 ず し も 自 身 の 断 定 的 結 論 を 述 べ た も の で は な い ⽜ と い う こ と 、 そ し て 、⽛ 論 者 の 関 心 の 焦 点 は 住 民 に 対 す る 自 治 体 の 公 権 力 の 行 使 に つ き 国 が 介 入 す る 場 合 に お け る 自 治 体 の 出 訴 資 格 ⽜ に あ り 、 対 象 の 範 囲 に も 限 定 が あ る こ と に 留 意 す る 必 要 が あ る と い え よ う ( 87) 。 加 え て 、 藤 田 教 授 は 、⽛ 私 は 、 行 政 主 体 相 互 間 の 法 関 係 は 押 し な べ て ⽝ 内 部 関 係 ⽞ で あ り 、 そ れ 故 に 、 お よ そ そ こ で 起 こ る 紛 争 は ⽝ 法 律 上 の 争 訟 ⽞ で は な い 、 な ど と い う 主 張 を し た こ と は 、 一 度 と て 無 い の で あ っ て 、 こ の 問 題 に つ い て の 私 に 対 す る 批 判 は 、 ま ず 、 こ の こ と を 明 確 に 理 解 し た 上 で な さ れ る の で な け れ ば な ら な い 。 私 の 場 合 、⽝ 内 部 関 係 ⽞⽝ 外 部 関 係 ⽞ と い う 規 準 は 、 ま さ に 、 本 稿 で 述 べ た ⽝ 補 助 線 ⽞ の 一 つ に 過 ぎ な い ⽜ と 述 べ て い る ( 88) 。

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否 定 説 に 立 つ と 解 さ れ て い る 藤 田 宙 靖 教 授 は 、 一 九 九 七 年 の 論 稿 に お い て 、⽛ 国 ⽜ と ⽛ 地 方 公 共 団 体 ⽜ と の 関 係 に つ い て 、 次 の 点 を 明 確 に し て お き た い と し 、 次 の よ う に 述 べ る 。⽛ 先 に 見 た よ う に 、 新 た な 国 家 像 ( 筆 者 注 : 社 会 の 補 完 機 能 と し て の 国 家 機 能 ) の 下 で は 、 社 会 ( 国 民 ) の 具 体 的 な 必 要 を 超 越 し た 観 念 的 抽 象 的 な ⽝ 国 家 公 共 の 利 益 ⽞ な る も の は 、 そ れ 自 体 と し て の 存 在 理 由 を 求 め ら れ 得 ず 、 国 家 は 、 社 会 が そ の 必 要 に 応 じ て 作 っ た 、 そ の 意 味 で い わ ば 一 種 の 道 具 と し て の 一 機 構 ( go ve rn m en t) と し て 位 置 付 け ら れ る に 過 ぎ な い 。 と こ ろ で 、 こ の 意 味 で の ⽝ 機 構 ⽞ は 、 必 ず し も ⽝ 国 ⽞ だ け と は 限 ら れ ず 、 市 町 村 ・ 都 道 府 県 等 の 地 方 公 共 団 体 も 、 当 然 の こ と な が ら 、 そ う い っ た 性 質 を 持 つ 機 構 の 一 つ で あ る 。 こ の 意 味 に お い て は 、⽝ 国 ⽞ と ⽝ 地 方 公 共 団 体 ⽞ と の 間 に 本 質 的 な 違 い は な い の で あ り 、 両 者 は 、 上 に 見 た 意 味 で の ⽝ 国 家 機 能 ⽞ を 、 そ れ ぞ れ の 役 割 に お い て 分 担 す る 、 そ の 意 味 で 対 等 な 存 在 で あ る 。⽝ 国 家 機 能 ⽞ は 、 ⽝ 国 ⽞ と ⽝ 地 方 公 共 団 体 ⽞ と に 分 属 せ し め ら れ て い る の で あ り 、 決 し て 、⽝ 国 家 ⽞ イ ー ク オ ー ル ⽝ 国 ⽞ で あ る の で は な い 。 日 本 国 憲 法 が 、⽝ 地 方 自 治 の 本 旨 ⽞ を 保 障 し た の も 、 ま さ に こ の 意 味 で あ る ( 89) ⽜( 傍 線 筆 者 )。 こ れ ら の 記 述 か ら は 、 藤 田 教 授 の 立 論 は 、 村 上 教 授 が 整 理 し た ⽛ 公 権 力 行 使 に 関 し て 国 や 自 治 体 は 内 部 関 係 で あ る ⽜ と す る 考 え 方 と 親 和 性 を 有 す る と は 考 え に く く 、 そ の 理 論 的 延 長 線 上 に お い て 、 自 治 体 の 行 政 権 限 の 行 使 を 巡 る 国 と 地 方 自 治 体 の 間 の 紛 争 が 、 行 政 組 織 内 部 に お い て 処 理 し 解 決 さ れ る べ き 性 質 の も の で あ る と い う 考 え 方 に 逢 着 す る と は 解 せ な い の で あ る 。 理 論 的 整 合 性 の 分 析 が 問 わ れ て い る と 考 え る 。 ウ 藤 田 説 の ( 若 干 の ) 誤 解 ( ア ) 第 一 の 疑 問 に 対 す る 弁 明 肯 定 説 に 対 す る 藤 田 教 授 が 挙 げ る 疑 問 の 第 一 は 、⽛ ⽝ 自 治 権 の 保 障 ・ 拡 充 ⽞ と い う 一 面 的 な 見 地 か ら の み 考 え て 良 い 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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の か と い う こ と ⽜ で あ る 。 藤 田 教 授 の 疑 問 は 、 肯 定 説 の 思 考 の 基 軸 に 向 け ら れ た も の と 思 わ れ る が 、 言 う ま で も な く 、 抗 告 訴 訟 が 認 め ら れ る た め に は 、 原 告 適 格 等 の 訴 訟 要 件 が 必 要 と な る 。 塩 野 教 授 は 、 日 田 サ テ ラ イ ト 事 件 判 決 ( 二 の ⚘ 参 照 ) に つ い て 、⽛ 特 徴 的 な こ と は 、 裁 判 所 は 、 行 政 主 体 と し て の 地 方 公 共 団 体 の 原 告 的 マ マ 適 格 を カ テ ゴ リ ー と し て 否 定 し て い る こ と で は な い 点 で あ る ⽜ と し 、 地 方 公 共 団 体 の 原 告 適 格 を 認 め る た め に は 、⽛ 地 方 公 共 団 体 の 包 括 的 事 務 処 理 権 限 で は な く 、 よ り 具 体 化 さ れ た 利 益 論 が 展 開 さ れ る 必 要 が あ る こ と は い う ま で も な い ( 90) ⽜ と 述 べ る 。 ま た 、 曽 和 教 授 は 、 同 判 決 に つ い て 、 自 治 体 の 原 告 適 格 を 認 め る た め に は 、⽛ 単 な る 自 治 権 侵 害 の 主 張 で は な く 、 一 定 の 場 合 に 限 定 し て い た の で は な い か と 思 い ま す ⽜ と 述 べ て い る ( 91) 。 以 上 述 べ た よ う に 、 当 然 の こ と な が ら 肯 定 説 の 論 者 は 、⽛ 自 治 権 の 保 障 ・ 拡 充 ⽜ と い う 一 面 的 な 主 張 で 、 全 て が 決 す る と は 考 え て い な い の で あ る 。 ( イ ) 第 二 の 疑 問 に 対 す る 反 論 藤 田 教 授 は 、 住 民 に 対 し て 公 権 力 を 行 使 し た 機 関 が 、 監 督 機 関 に 対 し て 抗 告 訴 訟 を 提 起 し 得 る と い う 構 造 が 、 住 民 の 権 利 保 護 の 見 地 か ら す る 場 合 に ど の よ う な 意 味 を 持 つ か 、 と い う こ と を 問 題 と す る 。 換 言 す れ ば 、⽛ 国 民 の 権 利 を 保 護 す る こ と を 目 的 と す る 主 観 訴 訟 と し て の 抗 告 訴 訟 に お い て 、 こ の よ う な こ と ( 筆 者 注 : 抗 告 訴 訟 が 私 人 の 権 利 に 対 す る 侵 害 の た め の 手 段 と し て 利 用 さ れ る と い う こ と ) が 認 め ら れ る と い う こ と は 、 果 し て こ の 訴 訟 の 基 本 的 構 造 に 矛 盾 す る こ と 無 し に 、 あ り 得 る の で あ ろ う か ⽜ と 疑 問 を 呈 す る ( 92) 。 常 岡 孝 好 教 授 は 、 藤 田 教 授 が 懸 念 す る ⽛⽝ 私 人 の 側 か ら 見 れ ば 、 抗 告 訴 訟 が 自 己 の 権 利 に 対 す る 侵 害 の た め の 手 段 と

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し て 利 用 さ れ る ⽞ と い う 事 態 は 、 行 政 主 体 が 抗 告 訴 訟 を 提 起 す る 場 面 以 外 に お い て 部 分 的 に は す で に 生 じ て お り 、 こ れ を 裁 判 所 も 認 め て い る ⽜ と 指 摘 す る ( 93) 。 す な わ ち 、⽛ 複 効 的 行 政 処 分 に つ い て 名 宛 人 以 外 の 第 三 者 が 抗 告 訴 訟 を 提 起 し て 原 告 適 格 等 の 訴 訟 要 件 を 満 た し た 場 合 … 、 当 該 抗 告 訴 訟 は 、 処 分 名 宛 人 の 側 か ら す れ ば 、 自 己 の 権 利 に 対 す る 侵 害 の た め の 手 段 と し て 事 実 上 作 用 し て い る と い え よ う ⽜ と 述 べ る 。 逆 に 、 地 方 公 共 団 体 が 私 人 の 権 利 を 守 る た め に 抗 告 訴 訟 を 利 用 す る 場 面 と し て 次 の 例 を 挙 げ る 。⽛ 地 方 公 共 団 体 が 私 人 の 権 利 を 促 進 ・ 助 成 す る よ う な 公 権 力 行 使 を 行 い 、 こ れ に 対 し て 国 が 法 律 上 許 さ れ た 監 督 権 行 使 を 行 っ た と こ ろ 、 当 該 地 方 公 共 団 体 が 抗 告 訴 訟 を 提 起 す る 場 合 ⽜ で あ る 。 そ し て 、⽛ 藤 田 裁 判 官 の 論 理 に よ っ て も 、 地 方 公 共 団 体 が そ の 自 治 権 に 基 づ い て 国 の 監 督 処 分 に 対 し て 抗 告 訴 訟 を 提 起 で き る 場 合 が あ り 得 る の で は な か ろ う か ⽜ と 疑 問 を 呈 す る ( 94) 。 な お 、 行 政 不 服 審 査 制 度 が ⽛ 簡 易 ・ 迅 速 か つ 公 正 な 手 続 の 下 で ⽜ の ⽛ 国 民 の 権 利 利 益 の 救 済 を 図 る ⽜( 行 政 不 服 審 査 法 一 条 ) と い う 目 的 を 有 す る こ と か ら の 疑 念 も あ り 得 る 。 こ の こ と に つ い て 、 人 見 剛 教 授 は 次 の よ う に 述 べ て い る 。 ⽛ 紛 争 が 長 引 く と い う 問 題 も 、 不 服 申 立 人 は 国 地 方 間 の 争 訟 の 当 事 者 で は な い し ( … )、 地 方 公 共 団 体 の 出 訴 を 認 め た と こ ろ で 、 国 の 裁 定 は 公 定 力 を も っ て 有 効 に 存 在 し て い る 以 上 、 不 服 申 立 人 に は 何 ら の 不 利 益 も な い 。 地 方 公 共 団 体 が 、 取 消 訴 訟 に 併 せ て 執 行 停 止 の 申 立 て を 行 い 、 そ れ が 認 め ら れ る と 実 際 に 不 利 益 を 被 る こ と に な る が 、 裁 判 所 の 執 行 停 止 の 要 件 ( 行 訴 法 二 五 条 二 ~ 四 項 ) の 審 査 の 中 で 、 不 服 申 立 人 の 利 益 は 十 分 に 考 慮 さ れ る べ き で あ ろ う ( 95) ⽜。 要 す る に 、 法 治 主 義 の 貫 徹 の た め に は 何 ら か の コ ス ト は か か る も の の 、 不 服 申 立 人 に は 実 質 的 に は 不 利 益 は 生 じ な い と い う こ と で あ ろ う 。 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

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⚔ 小 括 阿 部 教 授 は 、 次 の よ う な 基 本 的 な 疑 問 を 呈 し て い る 。⽛ 藤 田 説 は 、 地 方 分 権 が 進 む 前 の 、 国 家 が 自 治 体 を す べ て コ ン ト ロ ー ル し て い た 、 国 家 と い う よ り も 、 国 の 中 央 省 庁 が 法 律 に よ ら な い で 自 治 体 を 行 政 的 に コ ン ト ロ ー ル で き る 。 自 治 体 も 、 国 の 下 部 機 構 で あ る と い う こ と に な っ て い た 、 戦 前 の 地 方 組 織 を 前 提 と し た 議 論 で は な い の か 。 そ う で は な く て 、 地 方 分 権 が こ れ だ け 進 ん だ 時 代 も ち ゃ ん と 念 頭 に 置 い て の 議 論 な の か 。 そ う だ と す る と 、 そ の 理 論 的 根 拠 は 何 だ ろ う 。 国 家 と 社 会 は 二 元 的 で あ る に し て も 、 国 家 の 中 で も 二 元 的 で は な い の か 、 と い う の が 私 の 疑 問 な の で す ( 96) ⽜。 ま た 、 藤 田 教 授 は 、 行 政 主 体 と 私 人 の 二 元 論 を ベ ー ス に 、 自 治 体 の 出 訴 資 格 を 否 定 す る 範 囲 を 、 国 民 健 康 保 険 審 査 会 の 裁 決 ( 二 の ⚓ 参 照 ) の 例 の よ う な 裁 定 的 関 与 の 事 例 に 限 定 す る 主 張 を し て い る が 、 阿 部 教 授 は 、 端 的 に ⽛ 法 律 の 仕 組 み の 中 で 、 大 阪 市 は 大 阪 府 の 審 査 会 に 取 り 込 ま れ て い る と い う ふ う に 解 釈 し て も い い の で は な い か ( 97) ⽜ と 述 べ る 。 山 本 隆 司 教 授 は 、⽛ 自 治 行 政 に お い て 、⽝ 全 体 国 民 ⽞ に よ る 正 当 化 の 要 素 に 対 し 自 律 的 正 当 化 の 要 素 が 強 く 働 く 場 合 、 国 家 と 自 治 行 政 主 体 と の 関 係 は 、 統 一 性 を 基 礎 と す る 組 織 内 部 関 係 で は な く 、 明 瞭 な 距 ㅡ 離 ㅡ を 基 礎 と し 、 国 家 に 対 し て 、 自 治 行 政 主 体 が ⽝ 権 利 ⽞ を 持 つ 、 外 ㅡ 部 ㅡ 法 関 係 と 解 さ れ る ( 自 治 行 政 主 体 相 互 の 関 係 も 同 様 )。 か く て 自 治 行 政 は 、 客 観 的 制 度 と し て 保 障 さ れ る の み な ら ず 、 自 治 行 政 主 体 の 主 観 的 権 利 に よ っ て 保 障 さ れ 、 自 治 行 政 主 体 に よ る 主 観 的 権 利 の 主 張 を 通 じ て 実 現 さ れ る こ と に な る ( 98) ⽜ と 説 明 す る 。 思 う に 、⽛ 行 政 主 体 相 互 間 の 法 関 係 は 、 基 本 的 に 、 行 政 主 体 内 部 の 組 織 構 造 に 関 す る 法 関 係 で あ る ⽜ と す る 考 え 方 は 、 国 家 像 の 高 橋 モ デ ル 一 ( ⚓ の ( ⚑ ) の ウ ) に 依 拠 す る も の で あ ろ う 。 そ こ で は 、 地 方 公 共 団 体 の 法 的 主 体 性 ( 法 人 格 ) を 超 越 す る 一 元 的 ・ 統 一 的 な 行 政 主 体 な る も の を 想 定 し 、 国 と 自 治 体 相 互 の 関 係 は 内 部 の 組 織 構 造 に 関 す る 法 関 係 に

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帰 す る と い う も の で あ り 、 お よ そ 現 行 憲 法 に 適 合 的 な 解 釈 と は い え ま い 。 今 日 、 内 部 関 係 論 は 有 用 性 を 持 つ 立 論 た り 得 な い と 考 え る 。 注 ( 32)( 33) 村 上 裕 章 ・ 前 掲 注 ( 2) 二 一 頁 ( 34) 同 ・ 前 掲 注 ( 2) 二 一 頁 。 塩 野 宏 教 授 は 、 取 消 訴 訟 が 可 能 で あ る こ と と の 関 係 で 、⽛ か か る 片 面 的 法 律 上 の 争 訟 概 念 が ど こ か ら 導 き 出 さ れ る か に つ い て は 、 判 決 に は 説 明 が な く 、 結 論 だ け が 示 さ れ て い る に 過 ぎ な い ⽜ と 批 判 す る (⽝ 行 政 法 Ⅱ 〔 第 五 版 補 訂 版 〕⽞( 有 斐 閣 、 二 〇 一 三 年 ) 二 八 一 頁 以 下 )。 ( 35) 藤 田 宙 靖 ⽝ 行 政 法 総 論 ⽞( 青 林 書 院 、 二 〇 一 三 年 ) 三 一 頁 以 下 の 注 ( 2) ( 36) 高 橋 和 之 = 伊 藤 眞 = 小 早 川 光 郎 = 能 見 喜 久 = 山 口 厚 編 集 代 表 ⽝ 法 律 学 小 辞 典 [ 第 五 版 ]⽞ ( 有 斐 閣 、 二 〇 一 六 年 ) 四 四 九 頁 ( 37) 村 上 裕 章 ・ 前 掲 注 ( 2) 論 文 二 二 頁 。 雄 川 博 士 は 、⽛ 公 行 政 対 人 民 の 関 係 を 想 定 す れ ば 、 公 行 政 が 形 式 上 行 政 機 関 に よ っ て 行 わ れ よ う と 、 或 い は 人 格 を 有 す る 国 や 公 共 団 体 が 正 面 に 出 で よ う と 、 実 態 的 に は 同 様 で あ る と 考 え ら れ る の で あ っ て 、 … 従 っ て 、 そ の よ う な 地 位 に お け る 国 ・ 公 法 人 が 何 ら か の 行 政 庁 の 行 為 に よ っ て ⽝ 権 利 ⽞ が 侵 害 さ れ た と し て も 、 そ れ は 当 然 に 裁 判 所 に よ る 保 護 を 受 け 得 べ き も の で は な く 、 そ の 意 味 に お い て は ⽝ 権 限 ⽞ と 実 体 的 に は 異 な ら な い の で は な い か と 思 わ れ る ⽜( 傍 線 筆 者 )(⽛ 機 関 訴 訟 の 法 理 ⽜ ( 初 出 一 九 七 四 年 )⽝ 行 政 争 訟 の 理 論 ⽞( 有 斐 閣 、 一 九 八 六 年 ) 四 六 四 頁 ) と 述 べ て い る 。 そ の 理 論 的 延 長 線 上 で 、 同 博 士 は 、 三 の 2の ( 1) で 述 べ た よ う に 、⽛ 国 や 公 法 人 自 体 が 出 訴 す る 場 合 で あ っ て も 、 そ れ ら が 公 行 政 の 主 体 と し て の 地 位 に あ る 場 合 に は 、 機 関 訴 訟 の 性 質 を も つ も の と 考 え 得 る 場 合 が 多 い よ う に 思 わ れ る ⽜ と い う 結 論 を 導 く の で あ る 。 ( 38) 同 ・ 前 掲 注 ( 2) 二 二 頁 。 村 上 教 授 の ⽛ 現 行 法 上 も 、 公 権 力 の 行 使 は 各 行 政 主 体 の 行 為 と さ れ て い る ⽜ と い う フ レ ー ズ は 、 国 家 賠 償 法 一 条 一 項 の ⽛ 国 又 は 公 共 団 体 の 公 権 力 の 行 使 に 当 る 公 務 員 ⽜ を 、 抗 告 訴 訟 ( 行 政 庁 の 公 権 力 の 行 使 に 関 す る 不 服 の 訴 訟 。 行 訴 法 三 条 一 項 ) の 被 告 適 格 が 行 政 主 体 で あ る こ と ( 行 訴 法 一 一 条 ) を 指 し て い る も の と 思 わ れ る 。 ( 39) 高 橋 和 之 = 伊 藤 眞 = 小 早 川 光 郎 = 能 見 喜 久 = 山 口 厚 編 集 代 表 ・ 前 掲 注 ( 36) 三 二 四 頁 ( 40) 伊 藤 正 己 = 園 部 逸 夫 編 ⽝ 現 代 法 律 百 科 大 辞 典 2⽞( ぎ ょ う せ い 、 二 〇 〇 〇 年 ) 四 一 六 頁 ( 稲 葉 馨 執 筆 ) 国・地方自治体間の争訟と⽛法律上の争訟⽜覚書(二)

参照

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