西南学院大学 法学論集 第四七巻 第一号 二〇一四年 五月 別刷
田
中
英
司
─ドイツの裁判例を素材として判断枠組みの再構成を模索する─
住居の転貸借をめぐる許可の請求とその拒絶
(三
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完)
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 七 巻 第 一 号 ( 二 〇 一 四 年 五 月 ) 一 目 次 Ⅰ は じ め に 一 本 稿 の 位 置 づ け と 課 題 二 本 稿 の 構 成 Ⅱ 住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 賃 借 人 に よ る 許 可 の 請 求 │ 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ │ 一 前 提 と な る こ と が ら 二 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ を め ぐ る 裁 判 例
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住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 許 可 の 請 求 と そ の 拒 絶 ( 三 ・ 完 ) 二 1 基 本 と な る 裁 判 例 ( 以 上 、 四 五 巻 三 ・ 四 合 併 号 ) 2 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ を め ぐ る 具 体 的 な 事 案 ( 1 ) 純 粋 に 個 人 的 な 人 生 形 成 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ( 2 ) 経 済 的 な 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ( 以 上 、 四 六 巻 二 号 ) ( 3 ) 家 族 的 な 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ( 4 ) そ の 他 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 Ⅲ 住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 賃 貸 人 に よ る 許 可 の 拒 絶 │ 賃 貸 人 に と っ て の ﹁ 要 求 不 可 能 性 ﹂ │ 一 基 本 と な る 裁 判 例 二 賃 貸 人 に と っ て の ﹁ 要 求 不 可 能 性 ﹂ を め ぐ る 具 体 的 な 事 案 Ⅳ 総 括 と 日 本 法 へ の 示 唆 ( 以 上 、 本 巻 本 号 )
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 七 巻 第 一 号 ( 二 〇 一 四 年 五 月 ) 三 Ⅱ 住居の転貸借をめぐる賃借人による許可の請求 ─ 賃借人の「正当な利益」 ─ 二 賃借人の「正当な利益」をめぐる裁判例 2 賃借人の「正当な利益」をめぐる具体的な事案 ( 3 ) 家族的な観点から必要性がある場合 第 三 の 類 型 は 、 賃 借 人 の 側 に 、 家 族 的 な 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 で あ る 。 第 三 の 類 型 の 典 型 は 、 賃 借 人 の 側 に 、 家 族 的 な 観 点 か ら 、 賃 借 人 の 兄 弟 姉 妹 、 両 親 等 が 当 該 賃 借 住 居 に 受 け 入 れ ら れ る 必 要 性 が 生 じ た 場 合 で あ る 、 と 考 え ら れ る 。 た と え ば 、 ベ ル リ ン 地 方 裁 判 所 一 九 九 一 年 三 月 二 一 日 判 決 ︶111 ︵ は 、 賃 借 人 が 、 住 居 に つ い て の 困 窮 状 態 に 陥 っ た 姉 妹 を 援 助 す る た め に 、 当 該 姉 妹 に 本 件 住 居 の 一 部 を 使 用 さ せ た か っ た と い う 事 案 に お い て 、 ﹁ 近 い 関 係 の 成 年 の 構 成 員 が 困 窮 に 陥 り 、 賃 借 人 が 、 い ず れ に せ よ 、 倫 理 的 に ( 当 該 構 成 員 を ) 援 助 す る よ う に 義 務 づ け ら れ て い る 場 合 ﹂ ︶112 ︵ 、 本 件 住 居 の 一 部 の 転 貸 借 に つ い て 、 賃 借 人 の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ が 認 め ら れ る 、 と 判 断 し た 。
住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 許 可 の 請 求 と そ の 拒 絶 ( 三 ・ 完 ) 四 そ の ほ か 、 次 の 二 つ の 民 事 裁 判 所 の 裁 判 例 も 確 認 し て お こ う 。 ︻ 14︼ カ ッ セ ル 地 方 裁 判 所 一 九 八 八 年 一 一 月 一 五 日 決 定 )113 ( ① 事 案 の 概 要 と 経 緯 原 告 は 、 三 つ の 部 屋 、 玄 関 ホ ー ル 、 台 所 、 浴 室 、 お よ び 、 地 下 室 か ら 構 成 さ れ て い た 本 件 住 居 を 被 告 ら に 賃 貸 し て い た 。 被 告 ら は 、 一 九 八 七 年 の 終 わ り に 、 被 告 ・ 1 の 兄 弟 を 本 件 住 居 に 受 け 入 れ た 。 原 告 は 、 被 告 ら に 対 し て 、 被 告 ・ 1 の 兄 弟 を こ れ 以 上 本 件 住 居 に 居 住 さ せ な い よ う に 請 求 し た う え で 、 一 九 八 八 年 五 月 一 七 日 付 け で 、 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 を 即 時 に 解 約 告 知 し た 。 ② 決 定 理 由 地 方 裁 判 所 は 、 は じ め に 、 賃 借 人 の 兄 弟 は B G B旧 五 四 九 条 一 項 一 文 の 意 味 に お け る 第 三 者 と 考 え ら れ な け れ ば な ら な い か ど う か 、 と い う 点 を 明 ら か に し た と こ ろ の 、 バ イ エ ル ン 上 級 地 方 裁 判 所 一 九 八 三 年 一 一 月 二 九 日 決 定 ︶114 ︵ と の 関 係 を 、 次 の よ う に 確 認 し た 。 ﹁ 確 か に 、 バ イ エ ル ン 上 級 地 方 裁 判 所 一 九 八 三 年 一 一 月 二 九 日 決 定 に よ る と 、 賃 借 人 は 、 賃 貸 人 の 許 可 な し に 、 通 常 、 自 己 の 兄 弟 を 継 続 し て 当 該 賃 借 住 居 に 受 け 入 れ る 権 限 は な い 。 し か し 、 当 該 決 定 に お い て 、 バ イ エ ル ン 上 級 地 方 裁 判 所 は 、 そ れ と と も に 、 賃 借 人 が 、 権 限 の な い 使 用 の 委 譲 で あ る こ と に 依 拠 し た 解 約 告 知 に 対 し て 、 B G B五 四 九 条 二 項 に も と づ く 許 可 が 賃 借 人 に 付 与 さ れ な け れ ば な ら な か っ た と い う こ と を 抗 弁 す る こ と が で き る か ど う か と い う 問 題 は 、 否 定 さ れ な い こ と を 明 確 に
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 七 巻 第 一 号 ( 二 〇 一 四 年 五 月 ) 五 し た ﹂ ︶115 ︵ 。 そ の う え で 、 地 方 裁 判 所 は 、 右 の 本 件 事 実 関 係 を 踏 ま え て 、 次 の よ う に 論 じ る こ と に よ り 、 賃 借 人 で あ っ た 被 告 ら が 被 告 ・ 1 の 兄 弟 を 本 件 住 居 に 受 け 入 れ た こ と に つ い て 、 賃 借 人 ら の ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ が 認 め ら れ る 、 と 判 断 し た 。 ﹁ し か し 、 本 件 事 案 に お い て 、 被 告 ら は 、 一 九 八 七 年 の 終 わ り に 、 被 告 ・ 1 の 兄 弟 が 妻 と 別 居 し た 後 に お け る 家 族 的 な 問 題 に も と づ い て 、 被 告 ・ 1 の 兄 弟 を 一 時 的 に 本 件 住 居 に 受 け 入 れ た 、 と 申 し 立 て た 。 原 告 に よ っ て 否 認 さ れ た と こ ろ の 、 こ の よ う な 申 立 て は 、 究 明 さ れ な け れ ば な ら な か っ た 。 と い う の は 、 こ の よ う な 理 由 は 、 本 件 住 居 に つ い て の 共 同 占 有 の 委 譲 の た め の 許 可 の 付 与 に つ い て 、 被 告 ら の 正 当 な 利 益 を 基 礎 づ け た か ら で あ る ( 連 邦 通 常 裁 判 所 一 九 八 四 年 一 〇 月 三 日 決 定 )116 ( 参 照 ) 。 当 該 決 定 に お い て 、 連 邦 通 常 裁 判 所 は 、 賃 借 人 が 第 三 者 と と も に 継 続 し て 基 礎 づ け ら れ た 住 居 共 同 体 を 形 成 し た い 場 合 に も 、 自 己 の 私 的 な 生 活 を 自 己 の 四 つ の 壁 の な か で 自 己 の 考 え に も と づ い て 形 成 す る こ と は 、 原 則 と し て 、 賃 借 人 の 自 由 な 決 定 に 属 す る 、 と 論 じ た 。 も っ と も 、 こ の こ と は 、 あ ら ゆ る 任 意 の 種 類 の 共 同 体 に 向 け て の 願 望 が 、 正 当 な 利 益 と み な さ れ う る こ と を 意 味 し な い ﹂ )117 ( 。 ︻ 15︼ バ イ エ ル ン 上 級 地 方 裁 判 所 一 九 九 七 年 一 〇 月 六 日 決 定 )118 ( ① 事 案 の 概 要 と 経 緯 夫 婦 で あ っ た 被 告 ・ 1 お よ び 2 は 、 一 九 八 四 年 七 月 三 一 日 付 け の 使 用 賃 貸 借 契 約 に も と づ い て 、 当 時 の 所 有 権 者 か ら 、 本 件 一 家 族 用 住 宅 を 賃 借 し て い た 。 賃 料 は 、 当 時 、 一 五 五 〇 ド イ ツ マ ル ク で あ っ た 。 被 告 ら は 、 当 時 、 一 〇 八 平 方 メ ー ト ル の 居 住
住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 許 可 の 請 求 と そ の 拒 絶 ( 三 ・ 完 ) 六 面 積 で あ っ た と こ ろ の 本 件 住 宅 に 、 三 人 の 子 供 ら と と も に 居 住 し て い た 。 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 が 経 過 す る な か で 、 被 告 ら は 、 所 有 権 者 の 同 意 を 得 て 、 屋 階 を 改 修 し た た め 、 三 三 平 方 メ ー ト ル の 居 住 面 積 が 追 加 さ れ た 。 当 該 屋 階 は 、 被 告 ら の 一 番 上 の 娘 に よ っ て 居 住 さ れ て い た が 、 一 九 九 三 年 に 被 告 ら の 娘 が 当 該 屋 階 を 引 き 払 っ た 後 、 被 告 ら は 、 当 該 屋 階 を 、 恒 常 的 な 使 用 の た め に 、 被 告 の 両 親 、 す な わ ち 、 被 告 ・ 3 お よ び 4 に 委 譲 し た 。 被 告 ら の 申 立 て に よ る と 、 こ の こ と は 、 被 告 の 両 親 に 対 す る 被 告 の 扶 養 義 務 の 枠 組 み に お い て 行 わ れ た 。 と い う の は 、 被 告 の 両 親 は 、 父 親 の わ ず か な 年 金 に か ん が み て 、 固 有 の 住 居 を 賃 借 す る 余 裕 が な く 、 父 親 は 、 糖 尿 病 お よ び 視 力 の 低 下 に 苦 し み 、 世 話 を 必 要 と し た か ら で あ っ た 。 原 告 ら の 申 立 て に よ る と 、 所 有 権 者 は 、 一 九 九 五 年 七 月 に は じ め て 、 こ の よ う な 変 化 を 知 っ た 。 所 有 権 者 は 、 被 告 の 両 親 に よ る 本 件 住 宅 の 使 用 を 警 告 し 、 両 親 の 退 去 を 要 求 し た が 、 被 告 ら は 、 こ れ を 拒 絶 し た 。 そ の 結 果 と し て 、 所 有 権 者 は 、 一 九 九 五 年 九 月 二 二 日 付 け の 書 面 を も っ て 、 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 を 即 時 に 解 約 告 知 し 、 本 件 住 宅 の 明 渡 し を 求 め て 訴 え を 提 起 し た 。 区 裁 判 所 は 、 本 件 訴 え を 棄 却 し た 。 賃 借 人 で あ っ た 被 告 の 両 親 の 場 合 、 賃 借 人 ら が 、 扶 養 を 与 え る と い う 枠 組 み に お い て 、 本 件 住 宅 の 共 同 使 用 を 賃 貸 人 の 許 可 な し に も 委 譲 す る こ と が で き た と こ ろ の 構 成 員 に か か わ る 問 題 で あ っ た 、 と い う 理 由 で あ っ た 。 裁 判 上 の 手 続 き の 間 に 、 元 々 の 所 有 権 者 は 、 本 件 住 宅 の 所 有 権 を 原 告 ら に 譲 渡 し た 。 原 告 ら は 、 地 方 裁 判 所 に 控 訴 し 、 本 件 住 宅 の 明 渡 し を さ ら に 請 求 し た 。 原 告 ら は 、 賃 借 人 の 両 親 は 、 賃 借 人 ら が 本 件 住 宅 の 共 同 使 用 を 賃 貸 人 の 許 可 な し に 委 譲 す る こ と が で き た と こ ろ の 構 成 員 に 属 し な か っ た し 、 賃 借 人 ら は 、 本 件 住 宅 に 両 親 を 受 け 入 れ る た め の 許 可 に 対 す る 請 求 権 も 有 し な か っ た 、 と 主 張 し た 。 地 方 裁 判 所 は 、 バ イ エ ル ン 上 級 地 方 裁 判 所 に 次 の 法 的 問 題 を 提 出 し た 。
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 七 巻 第 一 号 ( 二 〇 一 四 年 五 月 ) 七 す な わ ち 、 ﹁ 1 賃 借 人 が 、 両 親 に 対 し て 、 扶 養 義 務 が あ る と い う 理 由 で 、 賃 貸 人 の 許 可 な し に 、 継 続 し て 、 賃 借 し て い た 一 家 族 用 住 宅 に 両 親 を 受 け 入 れ た 場 合 、 そ の こ と は 、 賃 借 物 に つ い て の 独 立 し て い な い 共 同 使 用 を 意 味 す る か 。 2 賃 借 人 は 、 扶 養 の 必 要 な 両 親 に 対 し て 扶 養 義 務 が あ り 、 そ れ ゆ え 、 両 親 と と も に 継 続 し て 基 礎 づ け ら れ た 住 居 共 同 体 を 築 き た い 場 合 、 B G B五 四 九 条 二 項 に も と づ い て 、 第 三 者 と し て の 両 親 の 受 入 れ に つ い て 、 正 当 な 利 益 を 有 す る か ﹂ )119 ( 、 と い う 法 的 問 題 で あ っ た 。 地 方 裁 判 所 は 、 次 の よ う な 見 解 で あ っ た 。 す な わ ち 、 賃 借 人 の 両 親 の 場 合 、 た と え 本 件 の よ う に 定 員 超 過 が 認 め ら れ な い と し て も 、 賃 貸 人 の 許 可 な し に 本 件 住 宅 に 受 け 入 れ る こ と が 、 正 当 化 さ れ 、 そ れ ゆ え 、 契 約 に も と づ い て い る と 考 え ら れ う る と こ ろ の 人 々 に か か わ る 問 題 で は な い 。 賃 貸 人 は 、 何 の 問 題 も な く 、 両 親 の 受 入 れ を 考 慮 に 入 れ な け れ ば な ら な い わ け で は な い 。 そ う で な か っ た ら 、 他 の 共 同 賃 借 人 に と っ て も 、 そ の 両 親 の 受 入 れ の た め の 許 可 が 拒 絶 さ れ る こ と は で き ず 、 そ の 結 果 、 賃 貸 人 は 、 最 終 的 に 、 本 件 住 宅 に 四 人 の さ ら な る 人 々 を 受 け 入 れ る こ と を 許 容 す る よ う に 強 要 さ れ る で あ ろ う 、 と い う 考 え で あ っ た 。 ② 決 定 理 由 上 級 地 方 裁 判 所 は 、 は じ め に 、 地 方 裁 判 所 か ら 提 出 さ れ た と こ ろ の 右 の 法 的 問 題 に お い て は 、 地 方 裁 判 所 に と っ て 、 次 の 二 つ の 問 題 が 重 要 で あ っ た 、 と 整 理 し た 。 す な わ ち 、 ﹁ 一 方 に お い て 、 賃 借 し て い た 本 件 一 家 族 用 住 宅 に 賃 借 人 の 両 親 を 受 け 入 れ る こ と は 、 両 親 が B G B五 四 九 条 一 項 の 意 味 に お け る ﹃ 第 三 者 ﹄ で は な い と い う 理 由 で 、 賃 借 人 が そ の た め に 最 初 か ら 賃 貸 人 の 許 可 を 必 要 と し な か っ た と い う 結
住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 許 可 の 請 求 と そ の 拒 絶 ( 三 ・ 完 ) 八 果 を と も な っ て 、 契 約 に し た が っ た 賃 借 物 の 使 用 に あ た る か ど う か ﹂ )120 ( 、 と い う 問 題 で あ る ( 第 一 の 問 題 ) 。 ま た 、 ﹁ 他 方 に お い て 、 第 一 の 問 題 が 否 定 さ れ る 場 合 、 賃 借 人 は 、 賃 借 し て い た 本 件 目 的 物 に 両 親 を 受 け 入 れ る こ と に つ い て 、 B G B五 四 九 条 二 項 一 文 の 意 味 に お け る 正 当 な 利 益 を 有 す る か ど う か ﹂ )121 ( 、 と い う 問 題 で あ る ( 第 二 の 問 題 ) 。 上 級 地 方 裁 判 所 は 、 右 の よ う に 問 題 を 整 理 し た う え で 、 第 一 の 問 題 に 関 し て 、 次 の よ う に 論 じ た 。 ま ず 、 上 級 地 方 裁 判 所 は 、 裁 判 例 お よ び 学 説 に よ る と 、 賃 借 人 が 、 ご く 近 親 の 家 族 構 成 員 を 当 該 賃 借 住 居 に 受 け 入 れ る た め に は 、 原 則 と し て 、 賃 貸 人 の 許 可 を 必 要 と し な い こ と が 認 め ら れ て い る が 、 賃 借 人 の 両 親 が 、 こ の よ う な 家 族 構 成 員 に 属 す る か ど う か と い う 点 は 、 こ れ ま で 明 ら か に さ れ て い な か っ た 、 と 論 じ た 。 す な わ ち 、 次 の よ う な 論 述 で あ っ た 。 ﹁ 裁 判 例 お よ び 文 献 に お い て は 、 賃 借 人 が 、 ご く 近 親 の 家 族 構 成 員 、 そ の 世 帯 に 属 す る 使 用 人 、 お よ び 、 自 己 の 世 話 の た め に 必 要 と す る 人 々 を 受 け 入 れ る た め に は 、 原 則 と し て 、 賃 貸 人 の 許 可 を 必 要 と し な い こ と が 認 め ら れ て い る 。 こ れ ら の 人 々 は 、 B G B五 四 九 条 一 項 一 文 の 意 味 に お け る 第 三 者 で は な い 。 も っ と も 、 家 族 構 成 員 に 関 し て は 、 個 別 的 に 、 ど こ に そ の 限 界 が 引 か れ な け れ ば な ら な い か と い う 点 は 、 最 終 的 に 明 ら か に さ れ て い な い 。 議 論 の 余 地 も な く 、 配 偶 者 、 お よ び 、 共 通 の 子 供 ら は 、 特 権 を 与 え ら れ た 人 々 の 範 囲 に 属 す る 。 通 常 、 賃 借 人 ま た は 賃 借 人 の 配 偶 者 の 継 子 、 同 じ く 、 事 情 に よ っ て は 、 賃 借 人 の 孫 も ま た 、 特 権 を 与 え ら れ た 人 々 の 範 囲 に 数 え ら れ る 。 し か し 、 賃 借 人 の 兄 弟 姉 妹 、 あ る い は 、 賃 借 人 の 義 姉 妹 は 、 数 え ら れ な い 。 ・ ・ ・ ・ こ の 問 題 は 、 賃 借 人 の 両 親 に 関 し て 、 ・ ・ ・ ・ こ れ ま で 決 定 さ れ て い な か っ た 。 も っ と も 、 ベ ル リ ン 地 方 裁 判 所 は 、 賃 借 人 の 姑 は 、 特 権 を 与 え ら れ た 人 々 の 範 囲 に 数 え ら れ な け れ ば な ら な い こ と を 認 め た ﹂ )122 ( 。 次 に 、 上 級 地 方 裁 判 所 は 、 第 一 の 問 題 は 、 当 該 使 用 賃 貸 借 契 約 に お い て 、 当 該 賃 借 住 居 を 使 用 す る 権 限 が あ る 人 々 の 範 囲 に
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 七 巻 第 一 号 ( 二 〇 一 四 年 五 月 ) 九 関 す る 明 確 な 合 意 が 欠 け て い る 場 合 、 契 約 解 釈 の 問 題 で あ り 、 個 々 の 事 案 の 状 況 に 依 存 す る 、 と 論 じ た 。 す な わ ち 、 次 の よ う な 論 述 で あ っ た 。 ﹁ ・ ・ ・ ・ 当 該 使 用 賃 貸 借 契 約 が 、 当 該 賃 借 物 を 使 用 す る 権 限 が あ る 人 々 の 範 囲 に 関 す る 明 確 な 定 め を 含 ん で い な い 場 合 、 当 該 問 題 は 、 信 義 誠 実 の 原 則 に し た が い 、 取 引 の 慣 行 を 考 慮 し て ( B G B一 五 七 条 ) 、 解 釈 に よ っ て 決 定 さ れ な け れ ば な ら な い 。 し た が っ て 、 提 出 さ れ た 問 題 は 、 契 約 解 釈 の 問 題 で あ る の で 、 当 該 問 題 の 答 え は 、 個 々 の 事 案 の 状 況 に よ っ て 影 響 を 与 え ら れ る 。 賃 借 人 の 両 親 が B G B五 四 九 条 一 項 の 意 味 に お け る 第 三 者 で あ る か ど う か と い う 問 題 は 、 一 般 的 な 答 え に な じ ま な い ﹂ )123 ( 。 最 後 に 、 上 級 地 方 裁 判 所 は 、 第 一 の 問 題 が 、 契 約 解 釈 の 問 題 で あ り 、 個 々 の 事 案 の 状 況 に 依 存 す る と い う 点 に つ い て 、 次 の よ う に 敷 衍 し て 論 じ る こ と に よ り 、 第 一 の 問 題 に 答 え た の で あ る 。 す な わ ち 、 次 の よ う な 論 述 で あ っ た 。 ﹁ ・ ・ ・ ・ 今 日 の 実 際 の 諸 関 係 に よ る と 、 通 常 、 住 居 は 、 い わ ゆ る 核 家 族 、 す な わ ち 、 賃 借 人 ま た は 賃 借 人 ら 、 な ら び に 、 そ の 配 偶 者 お よ び 子 供 ら に よ る 使 用 の た め に 賃 借 さ れ る こ と か ら 出 発 し な け れ ば な ら な い で あ ろ う 。 賃 借 人 ま た は 賃 借 人 ら の 両 親 を 受 け 入 れ る と い う 問 題 は 、 特 別 な 理 由 な し に は 、 契 約 締 結 者 の 考 慮 に 取 り 入 れ ら れ な い で あ ろ う 。 し か し 、 当 部 は 、 賃 借 人 の 両 親 は 、 一 般 に 、 い わ ば 当 然 に 当 該 住 居 を 共 同 で 使 用 す る こ と が 許 さ れ て い る と こ ろ の き わ め て 緊 密 な 家 族 構 成 員 の 範 囲 に 数 え ら れ る こ と は で き な い と い う ま で に 、 一 般 的 な 見 解 を 確 認 す る こ と も で き な い 。 む し ろ 、 国 民 の 大 部 分 は 、 そ の た め に 必 要 性 が 存 在 し 、 た と え ば 、 成 人 し た 子 供 ら が ( 当 該 住 居 を ) 引 き 払 っ た 後 、 十 分 な 場 所 が 存 在 す る 場 合 、 両 親 を 自 己 の 住
住 居 の 転 貸 借 を め ぐ る 許 可 の 請 求 と そ の 拒 絶 ( 三 ・ 完 ) 一 〇 居 に 、 そ れ と と も に 、 き わ め て 緊 密 な 住 居 共 同 体 に 受 け 入 れ る こ と を 適 切 で 当 然 で あ る 、 と 感 じ る の で あ る 。 立 法 者 も ま た 、 子 孫 の 扶 養 義 務 の 可 能 性 ( B G B一 六 〇 一 条 ) が 示 す よ う に 、 両 親 に 対 す る 特 別 な 近 し い 関 係 か ら 出 発 す る 。 当 該 家 族 の 住 居 共 同 体 に 賃 借 人 の 両 親 を 受 け 入 れ る こ と は 、 決 し て 異 例 の こ と で も な い 。 特 に 、 ひ と り 暮 ら し の 人 々 が 問 題 で あ り 、 世 話 の 必 要 性 が 認 め ら れ て い る 場 合 は そ う で あ る 。 立 法 者 は 、 介 護 保 険 の 枠 組 み に お い て 、 明 ら か に 、 こ の よ う な 形 態 の 世 話 を 支 援 し て い る 。 そ れ ゆ え 、 家 族 に よ る 使 用 の た め に 賃 借 さ れ 、 そ の 間 取 り に よ る と 、 よ り 大 人 数 に よ る 使 用 に 適 し て い る と こ ろ の 住 居 に 両 親 を 受 け 入 れ る こ と は 、 賃 貸 人 に と っ て 、 当 該 使 用 賃 貸 借 契 約 の 締 結 の 際 に ほ ど 遠 い 展 開 で も な い の で あ る 。 そ れ ゆ え 、 賃 借 人 の 両 親 が 、 具 体 的 な 使 用 賃 貸 借 契 約 に 関 し て 、 B G B五 四 九 条 一 項 の 意 味 に お け る 第 三 者 で あ る か ど う か と い う 問 題 の 答 え は 、 決 定 的 に 、 よ り 詳 し い 状 況 、 特 に 、 当 該 住 居 の 種 類 お よ び 広 さ 、 な ら び に 、 さ ら な る 人 々 を 受 け 入 れ る た め の 当 該 住 居 へ の 人 員 配 置 お よ び 当 該 住 居 の 適 性 に 依 存 す る の で あ る ﹂ )124 ( 。 他 方 に お い て 、 上 級 地 方 裁 判 所 は 、 第 二 の 問 題 に 関 し て 、 次 の よ う に 論 じ る こ と に よ り 、 本 件 事 案 の よ う な 事 実 関 係 の 場 合 、 賃 借 人 は 、 当 該 賃 借 住 居 に 両 親 を 受 け 入 れ る こ と に つ い て 、 ﹁ 正 当 な 利 益 ﹂ を 有 す る 、 と 判 断 し た 。 ﹁ ・ ・ ・ ・ 賃 借 人 の 正 当 な 利 益 は 、 提 出 さ れ た 問 題 に お い て 申 し 立 て ら れ た 事 案 に お い て 、 ・ ・ ・ ・ 一 般 に 肯 定 さ れ る 。 賃 借 人 と 親 密 な 間 柄 で あ る が 、 し か し 、 き わ め て 狭 い 意 味 に お け る 家 族 に 所 属 す る と 考 え ら れ る こ と が で き な い 人 々 の 場 合 、 す で に 、 一 般 に 、 通 常 、 当 該 住 居 に そ れ ら の 人 々 を 受 け 入 れ る こ と に つ い て 、 賃 借 人 の 正 当 な 利 益 が 認 め ら れ な け れ ば な ら な い で あ ろ う 。 こ の こ と は 、 賃 借 人 が 、 B G Bに も と づ い て 、 そ の よ う な 人 々 を 扶 養 す る よ う に 義 務 づ け ら れ て い る 場 合 、 ま す ま す 妥 当 す る 。 こ の こ と は 、 扶 助 を 必 要 と す る 両 親 の 場 合 、 そ う で あ り う る 。 援 助 を 必 要 と す る 両 親 を 子 供 ら が 受 け 入 れ る こ と
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 七 巻 第 一 号 ( 二 〇 一 四 年 五 月 ) 一 一 は 、 社 会 的 な 理 由 か ら も 、 差 し 迫 っ て 、 望 ま し い こ と で あ る 。 そ れ ゆ え 、 い ず れ に せ よ 、 賃 借 人 が 両 親 に 対 し て 援 助 を 義 務 づ け ら れ て い る 場 合 、 両 親 を 受 け 入 れ る こ と に つ い て 、 賃 借 人 の 正 当 な 利 益 が 肯 定 さ れ な け れ ば な ら な い こ と が 認 め ら れ て い る ﹂ )125 ( 。 と こ ろ で 、 以 上 の よ う な 裁 判 例 以 外 に も 、 第 三 の 類 型 に あ た る と 考 え ら れ る 民 事 裁 判 所 の 裁 判 例 は 存 在 す る 。 そ の よ う な 裁 判 例 の ひ と つ と し て 、 ハ ン ブ ル ク 区 裁 判 所 一 九 八 二 年 八 月 一 七 日 判 決 を 確 認 し て お こ う 。 ︻ 16︼ ハ ン ブ ル ク 区 裁 判 所 一 九 八 二 年 八 月 一 七 日 判 決 )126 ( ① 事 案 の 概 要 と 経 緯 被 告 ら は 、 一 九 八 〇 年 六 月 九 日 付 け の 使 用 賃 貸 借 契 約 に も と づ い て 、 原 告 か ら 、 ハ ン ブ ル ク に 所 在 す る 本 件 一 家 族 用 住 宅 を 賃 借 し て い た 。 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 は 、 一 九 八 〇 年 八 月 一 日 に 始 ま っ た が 、 本 件 使 用 賃 貸 借 関 係 が 始 ま る 前 に 、 被 告 ・ 2 は 、 職 業 上 の 理 由 か ら 、 リ ュ ー ベ ッ ク で 職 場 を 受 け 入 れ 、 そ の 結 果 、 彼 の 六 歳 の 息 子 と と も に 、 本 件 住 宅 を 使 用 す る こ と を 意 図 し な か っ た 。 被 告 ・ 1 の 依 頼 に も と づ い て 、 原 告 は 、 一 九 八 〇 年 八 月 二 六 日 に 、 被 告 ・ 2 が 本 件 住 宅 に 居 住 す る ま で 、 か つ 、 遅 く と も 一 九 八 二 年 八 月 三 一 日 ま で 、 婦 人 ・ R を 本 件 住 宅 に 受 け 入 れ る こ と を 許 可 し た 。 さ ら に 、 被 告 ・ 1 は 、 一 九 八 一 年 六 月 一 二 日 付 け の 書 面 を も っ て 、 被 告 ・ 2 が 最 終 的 に 本 件 住 宅 に 居 住 す る こ と を 意 図 し な