昭 和49年11月(1974年) 一13一
糖 蔵 に 関 す る 研 究(第2報)
一 カ ビの生 育 と糖 の 種 類 及 び濃 度 と の 関 係一
坂 田 由紀 子*太
田
馨*
Stadies
on the Preservation
by Sugar
(Part
2)
— The relation between the Growth of Mold and Kinds & Concentration of Sugar —
Yukiko Sakata and Kaoru Ohta
ま え が き の 前 報 に於 て 著 者 らは 空 気 中 か ら耐 浸 透 圧 性を 有 す る ヵ ビ,酵 母 を 分 離 し,そ のstrainを 推 定 した が,こ れ らを 供 試 菌 と して,糖 蔵 の 際 に砂 糖 と他 の糖 を 併 用 す る こ とに よ り,糖 蔵 の 効 果 を よ り増 大 せ しめ る こ と を 目的 と し て実 験 を 行 な った の で 報 告 す る。 糖 蔵 に於 ては 塩 蔵 の 際 のC1一 イ ナ ンの 毒 作 用,細 胞 のCO2感 受 性 の 高 揚,酵 素 活 性 の 阻 害 作 用 が 期 待 出 来 な い 。 そ こで よ りAw値(Active water)を 低 下 させ るた め に 糖 質 量 を 増 加 さ せ な け れ ば な らな い わ け で あ る が,糖 質 量 の 増 加 を求 め る こ とは,溶 解度 に 限 度 が あ り,ま た,微 生 物 の生 育 を阻 止 す るAwを 求 め る こ と も不 可 能 で あ る。 この た め何 らか の他 の 手 段 を 併 用 す る 事 に よ り,そ の 効 果 を 高め る事 が 必 要 とな る。 例 えば 変 敗 原 因 菌 の 混 入 防 止,pHの 低 下,低 温 保 蔵, 保 存 料 の 使 用 な どが 考 え られ る。 著 者 らは この 目的 の た め に 単 糖 類,複 糖 類 を砂 糖 と 併 用 す る 事 に よ りそ の 貯 蔵 効 果 を 高 め よ う と,種 々検 討 を 試 み た 。 実 験 の 部 ◎ 供 試 菌 前 報 で 空 気 中 よ り 分 離 し た 耐 糖 性 の カ ビ ニ 種 を 使 用 し た 。strainはAsp. glaucusとAsp. niger
と 推 定 さ れ る も の で あ る 。 ◎ 培 地 Czapek・Dox寒 天 培 地 に 各 々 の 濃 度 とな る よ うに 糖 を 添 加 した 。 Czapek-Dox培 地 の 組 成 は 次 の 通 りで あ る 。 NaNO3 2. O g K2HPO4 1. Q S FeSO4・7H20 0.01 S 寒 「F lea 実 験 方 法 MgSO4・7H20 0.5g KCI O.52 蒸 溜 水 14 上 記 の 培 地 を シ ャ ー レに 分 注 滅 菌 し,平 板 と な し斜 面 培 養 の 菌 を 白 金 カ ギ に て 接 種 し,300Cに て 培 養 後, 2日 毎 に と り出 し て コ ロ ニ ー の 生 育 を 測 定 した 。 用 い た 糖 はD・ グ ル コ ー ス,マ ル トー ス,D・ フ ラ ク トー ス, D・キ シ ロ ー ス で あ り シ ョ糖 と 種 々 の 割 合 に 混 合 し て 総 糖 濃 度30∼60%に つ い て 検 討 し た 。 誌 面,関 係 て 高 濃 度50,60°oの も の だ け を 図 に 示 し た 。 結 果 及 び 考 察 *本 学食 品加工 研究 室 1.D・ フ ラ ク トー ス
Asp. glaucus一 糖 濃 度60°oの 培 地 で も 充 分 生 育 が み ら れ る が,シ ョ糖 とD・ フ ラ ク トー ス の 割 合 が1:4位 か ら の 生 育 阻 害 の 効 果 は 高 くな る が,生 育 を 全 くお さ え る 事 は 出 来 な い 。 Asp・niger‐Asp・glaucusよ り滲 透 圧 に 耐 え ず, 全 般 に 生 育 は 低 く な っ て い る が,シ ョ糖 とD・ フ ラ ク ト ー ス の 混 合 比 が1:1で 濃 度60°oVな る と そ の 効 果 は 50°°の 場 合 の2倍 と な る 。 2. マ ノレ トー ス
- 14ー 食物学会誌・第
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図 1 カピの生育と糖の種類及び濃震との関係 によく菌は生育し,ショ糖のみの場合よりも生育はよ い。しかも溶解度が低く50%の濃度になるとコントロ ールでは結晶が析出しショ糖をじよじょに増加させて も結晶の析出がみられ糖蔵には不適当である。 Asp. niger-Asp. glaucusより惨透圧には耐性の少 ないAsp.nigerの場合でもその効果は小さい。しかも ショ糖との中に比較的少い割合で混合した場合 (1: 4, 1 : 9など〉は却って菌はマルトースのコントロールよ り高い生育を示した。 3. D・キシロース Asp. glaucus-D同キシロースは五炭糖であり微生物 によって資化されにくい糖であり,甘味もさっぱりと しているが,ショ糖と混ぜた場合60%の濃度で、はショ 糖との混合比 1: 1から,効果が50%の場合より 3倍 近く認められた。 Asp. niger-Asp. nigerに対しては50%濃度の D.キシロースのコントロールには全く生育がみられ ない。 60%の濃度では 1: 1以上D.キシロースが増 えると全く生育は示さなかった。 4. D-グノレコース
昭和49年11月 (1974年〉
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カピの生育と糖の種類及び濃度との関係 が,D
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ク、、ルコースのコントロールでは50%
で、も生育し た。しかし60%
の濃度になればD-キシロースの場合と 殆んど同様の生育阻害の効果がみられた。 以上の結果より,カピは微生物の中でも特にAw値 の低い中でも生育するが, この実験で用いたA
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は特に耐惨透圧性菌であり,糖濃度60%
でも 充分に生育し,今井らはょうかんよりこの菌を分離し ている。この菌の繁殖を少しでも防止するのに,糖量 を増加させればよいが,糖の溶解度の問題もあって,60%
以上の添加は不可能である。この問題の解決に本 図 2A
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glaucus-
糖濃度50%
に於てはD-ク、、ルコースの コントロールはD-キシロースのコントロールより生育 阻害効果は少かったが,60%
の濃度になると D・グルコ ースのコントロールには全く生育がみられず, ルコース2:
ショ糖1
の割合でも生育は全くみられな かった。 D-ク、、ルコースは単糖類であり同じ濃度ではそ の惨透圧は複糖類より高いがD-キシロースよりその生 育阻害効果の高いのは興味あることである。A
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niger-Asp. n
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の場合D-キシロースの5
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%濃度のコントロールで、は全く生育がみられなかった D-グ食物学会誌・第
2
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号16
-Sucrose: o-Glucose
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Sucrose zD-Glucoses
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カピの生育と糖の種類及び濃度との関係 てもかなりの生育阻害効果を有しその利用は期待出来 るものと思う。 耐糖性の強い,高楼透庄の食品に対して変敗の原因 菌と考えられる Asp.glaucusとAsp.nigerを用い て,糖蔵の際の溶質である糖について,その糖蔵効果 を比較検討した。使用した糖は,D
・ク)レコース,ショ 糖,D
・フラクトース,D
.
キシロース,マルトースであ る。 め と ま 図 3 実験では合成品ではない,種々の糖を用いてその貯蔵 性について検討したが, Asp. gIaucusについてはD
.
クザルコースの添加で糖蔵の際の効果はかなり高くなる と考えられる。 D.クールコースは価格も安く,溶解度も 高く,糖蔵に充分利用出来ると考えられる。又D.キシ ロースはそう快な甘味を有し,最近では純度の高いも のも得られ,そのいろいろな特性が食品に広く利用さ れ始めている。加工的には溶解度が高く,凄透圧が複 糖類より高く,しかも天然のノンカロリー食品であり, 上品な甘さはきわやかな感じをもたらし,カピに対し昭和