1. は じ め に
アパジ・マーリア(Apagyi Mária : 1941
-)
1は、ハンガリーのピアノ教育における即興
演奏指導のリーダーである。筆者らはアパジが著した『ピアノの夢 ─ 創造的なピアノ学
習(ZONGORÁLOM Kreatív Zongoratanulás)』全 3 巻(以下『ピアノの夢』と表記する)
2の内容の特徴や意義について、3 年間にわたって共同研究を進めてきた
3。『ピアノの夢』
の最も大きな特徴は、その内容と構成の学際性と指導法の即興演奏・作曲重視にある。こ
れまでの共同研究では、以下の 3 点の考察を行った。1. ハンガリーのピアノ教科書の概
略的な歴史的考察、すなわち、1960 年代の『ピアノの学校』から 90 年代のテーケ・マリ
アンヌによる 5 分冊の『新ピアノの学校』に至る
4ピアノ教科書の理念的、実践的発展、2. 歴
史的な考察を踏まえて更に進化させたアパジの教科書の独創性と意義の考察、3. アパジ
の教科書の特徴である学際性の詳細と全体の構成の分析・考察。本稿は、その上に立って、
アパジの指導法の特徴である即興演奏指導法(以下、作曲指導法を含む)に焦点を絞った
研究である。なお、アパジの「作曲」の概念は、即興演奏の学びを発展させるものである。
アパジ即興演奏指導法は、ジャズや日本音楽をも含む音楽史上のあらゆる様式を目指す指
導法であり、その方向が多様である点に大きな特徴がある。
アパジは、1965 年から国立音楽学校
5、大学などの場でピアノ指導の実践研究を行い、
その実技指導の柱は、即興演奏指導だった。アパジは、そのような実績の上にハンガリー
の即興演奏指導の国家カリキュラム
6を著した。日本では、ピアノ指導は、楽譜を読み取っ
て演奏する方法、すなわち再創造演奏指導が中心的な内容で、即興演奏指導法は、まだ、
一般的ではない。この現状の中で、本稿は、前提となるアパジのピアノ教育の理念と指導
法の概略を明らかにし、『ピアノの夢』に示された 287 の即興演奏課題を全訳し、アパジ
の即興演奏指導法の理念と方法について具体的に明らかにする。アパジの指導法は、系統
的で細密、段階的であるため、誰でも即興演奏が可能になる。アパジの全 287 の即興演奏
課題が明らかにされることは、ハンガリー以外では初めてである。『ピアノの夢』で示さ
れた即興演奏課題の全訳からアパジの多様な様式をもつ音楽の即興へと導く即興演奏指導
法の全貌を明らかにすることは、極めて意義が大きく、日本のピアノ教育、ひいては、一
ハンガリーのピアノ教育の発展 III
── 学際的な内容をもつアパジ・マーリア著『ピアノの
夢─創造的なピアノ学習』における即興演奏指導法 ──
岩 淵 摂 子・降 矢 美彌子
般の音楽教育にも多くの示唆を提供すると思われる。なお、執筆にあたって、2013 年 9 月、
降矢は、アパジのもとに滞在し、即興演奏指導、および作曲指導法について、詳しい聞き
取り調査を行った。
構成は、 1. はじめに、 2. 『ピアノの夢』の特徴、 3. 『ピアノの夢』の即興演奏全指導課
題、4. おわりに、である。1、2、3
-1、3
-2、4 を降矢が、3
-2
-1、3
-2
-2、3
-2
-3
を岩淵が
担当する。ハンガリー語からの翻訳は岩淵が行った。文中、ハンガリー語の表記は、ハン
ガリーにならい姓名の順とし、日本語表記は、なるべく原語の発音に従った。なお、本研
究は、科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)課題番号 23531212 の助成を受け、
第 44 回日本音楽教育学会大会において口頭発表された
7。
2. 『ピアノの夢』の特徴
2
-1. 『ピアノの夢』の目的は人間教育
アパジによって著された『ピアノの夢』の序文には以下のように書かれている。「ピア
ノを弾く機械になるのではなく、関連性を発見し、感じることによって、ピアノを通じて
創造的な音楽演奏を実現させること、彼らの中に創造的な人間の考え方を形成することで
ある。」、「楽器の学習を通して数え切れないことを学ぶことによって、総合的な考え方が
広がり、人格全体が豊かになり、将来、どんな分野に進んでも、役に立つような様々なこ
とを知ることができる(抜粋)」
8。アパジのこの言葉に象徴されるようにアパジのピアノ
教育の目的は、まずは、人間教育である。アパジがピアノ教育を通して、人格を豊かにし、
どんな分野に進んでも役に立つ知識を得、創造的な人間の考え方を形成することを目的と
していることは重要である。
『ピアノの夢』の協力者でハンガリーピアノ教育界のリーダーであるアーブラハーン・
マリアン(Ábrahám Mariann : 1933
-)
9は、以下のように書いている。「『ピアノの夢』のプ
ログラムは、多様な分野との連携を基礎とする学際的なものである。ピアノを学ぶ中で、
生徒がただ楽譜の通り指を動かすのではなく、音楽が他の芸術分野、自然や科学と分かち
合い、共通する点に気付くことである。」
10本稿で取り上げる、『ピアノの夢』の特徴はこ
れらの文章に象徴されている。
写真 1 アパジ・マーリア著『ピアノの夢 ─ 創造的な音楽学習』全 3 巻 写真 2 チューリップの 鳥瞰図2
-2. アパジのピアノの音に対する概念
アパジは、一般的なピアノ教則本とは異なって、ピアノから出せる音の可能性を現代音
楽的な音響を含めた大変広い概念で捉えていることを明らかにする。アパジは、ピアノで
様々な音を出す弾き方について以下のように記述している
11。
鍵盤 黒鍵(2 つ、3 つのグループ) 白鍵 音の出し方 : a. 手のひらで、前腕で、指で、など。 b. 音を出さずに鍵盤を押さえて、鳴らす、鍵盤 ─ 倍音。 c. グリッサンド(すべらせる)・白鍵で・黒鍵で・白鍵と黒鍵で。 弦 太い、細い 1 つの音に 1、2、3 本の弦がある。 音の出し方 : a. 爪で引っかく。 b. 指先で(指の腹で)鳴らす。 c. 手のひらで慎重に叩く。 d. 爪で、指先で(指の腹で)グリッサンド。 鍵盤と弦 ダンパー/弱音器/が設置してある場所の前か後ろで、指を弦の上に滑らせる、そしてそ の弦の鍵盤を叩き続ける ─ 倍音を鳴らす、など。 特殊な効果 : 左手で鍵盤を、音を出さずに和音を(三和音、四和音)押さえて保ち、右のペダルを踏み 続け、その間右手で、押さえてある鍵盤の弦を下から上へ(上から下へ)グリッサンドを 演奏する。その直後にペダルを放して、そしてまたすぐ踏んで、そうすると音を出さずに 押さえてあった和音が鳴り出す。ペダルを踏み続けて、左手で次の音のグループを、音を 出さずに押さえる…、そして前述の流れを行う。アパジは、即興演奏指導においても、これらの全てを試みさせる。1 音の可能性とその
吟味が即興においても出発点なのである。これは、先行するテーケ・マリアンヌ(Teöke
Marianne : 1929
-2011)
12の『新ピアノの学校』の発展である。その指導書
13には、子ども
にとっては、最初のレッスンが最も重要で、最初のレッスンで、グランド・ピアノの蓋を
開け、ピアノのもつ機能の全てを体験させることの重要性が述べられている。アパジの指
導法にはこのテーケのピアノ指導理念が受け継がれている。
2
-3. 『ピアノの夢』の全ての物事に要素による構造の原理
アパジは、『ピアノの夢』の子どもの見る 1 ページ(『ピアノの夢』p. 14)に、全体のシ
ンボルとしてラントシュ・フェレンツ(Lantos Ferenc : 1929
-)
14によるチューリップの鳥
瞰図(写真 2)と国民的詩人ヴェレシュ・シャーンドル(Weöres Sándor : 1913
-1989)の詩
「世界は夢のように広い でもたった 1 輪の花にも世界はある。」
15と、生化学者セント =
ジェルジュイ・アルベルト(Szent
-Györgyi Albert : 1893
-1986)の言葉「自然は大きな原
理によってできている。自然は一本の木、一本の灌木、一輪の花、一人の人間それぞれ異
なる原理でできているのではない。全ては共通した、大きな基本原理でできており、だか
ら結局は全て同じことで、私たちが何を研究しているか、もし私たちがそれについて十分
『ピアノの夢』でこれらの理念を具現しようと試みたのである。
アパジは、文章に加えて、多くの写真、絵画、楽譜などを例に挙げて基本原理や構造の
原理について、説明している。アパジが考える「全てに共通した、大きな基本原理」を、
『ピ
アノの夢』から記述する。アパジは、いくつかの最も重要な構造の原理として、以下をあ
げている
17。
対比、リズム、シンメトリー、アシンメトリー、黄金分割、並行、繰り返し、再現。また、対比とその推移について、以下のように記述している。
対比 ─ 推移18 高い ─ 低い、大きい ─ 小さい、長い ─ 短い、一定の ─ 一定でない、ゆっくり ─ 速い、奇数 ─ 偶数、 強調のある ─ 強調のない、同時に ─ 交互に、協和 ─ 不協和、緊張 ─ 緩和、結ばれた ─ 結ばれてい ない。なお、シンメトリーについては、横軸のシンメトリーと縦軸のシンメトリー(鏡のシン
メトリー)など、さらに詳しく説明を加えている。
2
-4. アパジの考えるピアノの音の概念
アパジは、ピアノの音色の可能性を引き出す方法について以下のように記述してい
る
19。
右のペダル : 音をつなげる、響かせる。 使い方 : 後で踏む、同時に踏む、前に踏む。 真ん中のペダル : 大体のピアノの真ん中にあるペダル。 a. 音の響きをとても柔らかくする。 b. ソステヌート・ペダル、音を長く保たせる。 左のペダル : 音を柔らかくする。 楽器本体、木と金属の部分。 音の出し方 : 手で、あるいは何かの物で(慎重に叩くこと)。 プリペアード 音を出す様々な手段を使って、例えば : 紙、消しゴム、弦に使える物。『ピアノの夢』のピアノ指導の最初のページ 28 ページに、グランド・ピアノに向かって、
4
手連弾をする子どもと、6 手連弾をする写真が載っている。アパジは、楽曲のピアノ指
導でも、即興演奏指導でも、コミュニケーションを大切にし、連弾を多く用いる。
2
-5. 『ピアノの夢』の理念と特徴
『ピアノの夢』には、2
-1
で述べたようにピアノ指導を通して人間教育を行うという、
これまでのピアノ教則本になかった理念と特徴があるので、本項に改めてその理念と特徴
を記述する。『ピアノの夢』の序文には、以下のように書かれている。
ピアノ教育の理念(抜粋
-1)
20 この「ピアノ教科書」は、様々な分野に関連を持って作られており、演奏の能力の発達だけでなく、 実際のピアノ作品、テクニックの練習、音楽理論の素材、即興と作曲の課題、そして、様々な類似性も 含んでいる。 1. 様々な分野に関連を持つことが強調されているのは、その出発点が、狭められた専門性によるので はなく、異なる分野が交わるところ、或はそれらの共通点や互いに影響しあうところにおかれるべき だからである。 2. もし音楽家にならないとしても、楽器の学習を通して数え切れないことを学ぶことによって、総合 的な考え方が広がり、人格全体が豊かになり、将来、どんな分野に進んでも、役に立つような様々な ことを知ることができる。 3. 即興演奏が良くできるようになると、メロディー、リズム、ハーモニー、形式などの関係から、言 いかえれば構造の全て、全体から、音楽作品がより良く理解できるということは、経験によって正し いことが証明されている。 4. 大切なことは、「ピアノを弾く機械」になるのではなく、関連性を発見し、感じることによって、 ピアノを通じて創造的な音楽演奏を実現させること、彼らの中に創造的な人間の考え方を形成するこ とである。(筆者注 太字著者)序文の抜粋から、アパジのピアノ教育の理念として挙げられている以下の 3 点は、ピア
ノ学習のテキストとして特筆すべき理念だと言えよう。1. 人間教育と位置付けている。す
なわち、
「総合的な考え方が広がり、人格全体が豊かになり、将来、どんな分野に進んでも、
役に立つような様々なことを知ることができる。」、「彼ら(筆者注 子どもたち)の中に創
造的な人間の考え方を形成することである。」2. 内容と構成の学際性。すなわち、「様々な
分野に関連を持つことが強調されているのは、異なる分野が交わるところ、或はそれらの
共通点や互いに影響しあうところにおかれるべき」、3. 即興演奏の重視と目的の明確化。
すなわち、「即興演奏が良くできるようになると、メロディー、リズム、ハーモニー、形
式などの関係から、言いかえれば構造の全て、全体から、音楽作品がより良く理解できる」。
『ピアノの夢』の助言者で、ハンガリーピアノ教育界のリーダーであるアーブラハーンは、
『ピアノの夢』の指導法の特徴についてよりわかりやすく、以下の 4 点にまとめている
21。
1. ピアノ指導の最初の瞬間から、生徒達が自立した若者になり、自分自身の考えや意
見を持つように教育すること。そのために教師と生徒との間に良い関係を作り上げ、
生徒の意見や考えを知ることが必要である。
2. 『ピアノの夢』のプログラムは、多様な分野との連携を基礎とする学際的なもので
ある。ピアノを学ぶ中で、生徒がただ楽譜の通り指を動かすのではなく、音楽が他の
芸術分野、自然や科学と分かち合い、共通する点に気付くことである。
3. 音楽と視覚芸術に共通する根っ子を見つけること。音楽作品の構造をもとに、類似
した絵を描くことによって、音楽作品のより良い理解を可能にする。
4. 即興、作曲、解釈(演奏)の 3 つを統一して扱う。新しい曲にであった時、これら
3
つのアプローチは、学習の過程において作品を探求し分析する助けとなり、音楽の
言葉を習得することにつながる。
第 4 点目の即興、作曲、解釈(演奏)の 3 つを統一して扱うこと、この 3 つのアプロー
チは、学習の過程において作品を探求し分析する助けとなり、音楽の言葉を習得すること
につながるという特徴には、即興演奏指導の理想的な目的が端的に表されている。
3. 『ピアノの夢』の即興演奏指導全課題
3
-1. アパジの即興演奏指導法について
アパジの即興演奏指導法は、2013 年 9 月に行った聞き取り内容を加えると、以下の 4
点にまとめられる。1. 全ての指導過程が、非常に段階的に細密に書かれていて、誰もが
できる最もシンプルなものであること、2. 音という音楽の最少要素のあらゆる側面の認
識とそれぞれを使った即興から、音楽史のバロック、クラシック、ロマン派、近代の様式
による即興、ジャズの様式による即興、5 音音階による即興と大変広い世界へと子どもた
ちを導くこと、3. 要素や構成の特徴を理解して、それぞれの時代や国の異なる様式の音
楽の即興を行い、その後、譜面に書き表し、その過程で推敲し、作曲という行為を体験す
ること、4. 最後に、もう 1 度、モデルとなる音楽の譜面に戻り、より深い作品理解をもっ
て演奏すること。
付け加えれば、序文にもあるように「様々な分野に関連を持って作られており」アパジ
のピアノ指導は、自然、絵画、建築、数学、詩など様々な分野に関連をもつ、すなわち学
際性に特徴があるが、「視覚との関連」
22という項目には、特に重点が置かれ、系統的に点
から絵を描き、絵から即興する。『ピアノの夢』には、多くの絵が掲載され、絵を楽譜に
見立てて、即興演奏を行う。ペーチ大学のピアノ科に勤務していた際には、吹奏楽器専攻
などの学生とともに、絵を楽譜に見立て、上段から読んだり、下段から読んだりして、様々
な方法で楽譜を読んで合奏し、即興を楽しんだと語った。
3
-2. 『ピアノの夢』の即興演奏指導 287 課題の全訳
『ピアノの夢』の中にある即興の課題を抽出する
23。全部で 287 課題ある。これを上記の即
興演奏指導法で指導すれば、誰もが、音楽史上のほとんどの音楽の様式の即興演奏が可能
になり、また、音楽史上のほとんどの音楽を深い理解をもって弾くことができるようになる。
3
-2
-1. 『ピアノの夢』I 巻の即興の課題
最初の即興の課題である I 巻 29 ページには、前述の「1 音の可能性とその吟味」につ
いて記されている。音色、強さ、高さ、長さという音の要素に基づいて音を吟味し、対比
とその推移という、最も基本となる構造の原理によって即興演奏する。
p. 29 即興の課題 : 音を ─ 音の響きを作る 簡単な楽器やピアノを使って、音と友達になり、音で遊ぶ 1. 色々な音を出し、鳴った音に注目して、それぞれの音の性質に基づいて比べる。2. 異なる音色の 音を出す。3. 異なる強さの音を出す。4. 異なる高さの音を出す。5. 異なる長さの音を出す。6. 鳴らさ れた音とその間にある沈黙に注目する。7. 同じやり方で鳴らされた音(例えば : 同じ音色 ─ 同じ強さ ; 同じ高さ ─ 同じ長さ など…)。8. 今までの課題の色々な組み合わせでできた音。9. 実際にある音に 基づいて、対比 ─ 推移 ─ のようなもの : 音色の ─、音の強さの ─、音の高さの ─、音の長さの ─。10. 音を出すものを推移に応用。11. 与えられた 1 つの音(同じ高さ)による ─ 対比、推移。12. 与え られた 1 つの音(オクターヴ)による ─ 対比、推移。13. 与えられた 1 つの音とその周り ─ 与えられ た 1 つの音を鳴らすことと、その他の音にも一緒に注目すること。14. 楽器の導入 : 上記のことをまと めた音の流れ、楽器の音の響きの可能性の導入に関連して、鳴らすことまで。15. 音による自由な遊び、 上記の課題を作ること。16. 音による会話、生徒と先生、生徒同士の遊び、4 手連弾で、6 手連弾で。(a, bの写真のように。筆者注 4 手連弾で、6 手連弾の写真) ピアノを始める時に役に立つのは ─ 正しい手の位置をつかむために ─ たくさんの黒鍵を使うことで ある。
特に重視されている「視覚との関連」については、I 巻 30 ページに絵を描く課題が置
かれた後、32 ページに視覚と音の響きの関連について述べられ、33 ページには、視覚と
関連づけた音の響きによるピアノ即興の課題が 8 つ掲載されている。視覚と関連づけた音
の響きとは、絵の要素を楽譜として読み解き、音をイメージして音楽を奏することを意味
する。その可能性は、原則を持ちながら無限である。34, 35 ページには、2 つの絵が載せ
られ、33 ページに示された響きを応用して即興演奏する。
p. 33 ピアノ即興 1. 「斑点のような」響き24を自由に作る(鍵盤、弦、ペダルを使って ─ 手のひらで、前腕で、グリッ サンドで)。2. 「点のような」響き25を自由に作る(鍵盤、弦を使って、右のペダルなしで、場合によっ て柔らかくする左(真ん中)のペダルで ─ 中指で ─ 落とす、手首のスタッカート、引っかく)(手首 のスタッカート ─ 手首の柔らかい動きを伴って音を分けて鳴らすことの連続 : 音が鳴るときに手首が 上がり、それから下へ引き下げる、次の音が鳴るまで。)。3. 「線のような」響き26を自由に作る(両手 の中指を交代しながら)。4. 「点 ─ 線 ─ 斑点のような」響きのさまざまなつながり。5. 「点 ─ 線 ─ 斑 点のような」響きを使って、色々なキャラクター、雰囲気を作る(例えば : 走る、喜び、悲しみ、慰め、 自然の音、など)。6. ピアノでの響きと音色(鍵盤、弦、鍵盤と弦のつながり、簡単なプリペアード・ ピアノ)。7. 瞑想(計画された、よく考えられた、まとまりのある演奏)。8. 会話(4 手、または 2 台 ピアノでの即興)この後、ピアノの鍵盤の構造やリズム、楽典の知識が述べられた後、リズムの練習や拍
子の数え方なども、即興の課題として記されている。大切なのは 1 つの課題に 1 つのやり
方ではなく、強弱や速さ、キャラクターなどを変えて多様な方法で行うことである。44 ペー
ジではヴェレシュ・シャーンドルの詩が、言葉のリズムと拍子を関連づけて学ぶために用
いられている。
p. 42 一定 ─ 一定でない、規則的 ─ 不規則な、つながった ─ つながっていない 即興 1. 手のひらで一定のリズムで、右手で上へ、下へ。2. 手のひらで一定のリズムで、左手で上へ、 下へ。3. 手のひらでつながっていないリズムで、自由に、右手で。4. 手のひらでつながっていないリ ズムで、自由に、左手で。5. 手のひらで一定のリズムで手を交代しながら ─ 後から両手で ─ 高さを 変えて。6. 手のひらでつながっていないリズムで、自由に、手を交代しながら ─ 後から両手で ─ 高 さを変えて。7. 3 番の指で自由に音を出す、後から一定のリズムで : 右手で、左手で、手を交代して、 両手で。1 つの課題で異なる音の強さでもやってみよう。p. 43 偶数 ─ 奇数拍子、四分音符 一定のリズムで 即興(1-11番まで)は、それぞれの拍子に基づいて 3 の指で繰り返す、また場合によっては手のひ らで、片手ずつで、手を交代しながら、両手で : 同じ高さの音で、違う高さの音で。 ピアノで弾く前にリズムを叩くことと大きな声で数えること : 1-2、2-2、3-2、4-2、1-2-3、2-2-3、 3-2-3、4-2-3、1-2-3-4、2-2-3-4、3-2-3-4、4-2-3-4…など。 黒鍵で始めるのがよい。課題をさまざまなテンポで、さまざまなキャラクターでやってみること、キャ ラクターを表すような標題を与えることも可能である。 1 4 2 5 3 p. 44 ヴェレシュ・シャーンドル :「そりのベル(タンポポ)」 ─ 部分 夜の深いところから聞こえてくる、 ─ チング・リング・リング ─ そりのベル、そりのベル ─ チング・ リング・リング ─、冬のしじまにやさしく揺れる…。 ヴェレシュ・シャーンドル :「ハンガリー・エチュード 76 番」 クマさんがほえる : 、 ─ ダメだ ダメだ、 僕の毛皮はぼろぼろだ、これじゃ意味がない! 6 7 p. 46 2+3 8 9 p.47 3+2 10 11 p. 49 偶数・奇数拍子 異なる音の長さ、休符 ここから続く即興の課題は(12-37番まで)、決められたリズムに基づく。同じ、または異なる高さ の音で 3 番か 2 番の指でピアノを弾くこともできる。これまでのように黒鍵を沢山使うのがよい。それ ぞれの課題を異なるテンポで、異なるキャラクターで演奏する、キャラクターを表すような標題をつけ ることもできる。両手で弾く時にも手を正しく保つように気をつけて。 12 14 13 15 p. 50 付点音符 16 18
17 p. 51 同時に二種の一定 19 22 20 23 21 p. 52 付点リズム 24 27 25 28 26 p. 55 音符と休符 黒鍵でスタッカートを演奏する。 29 黒鍵で 2 番と 3 番の指でレガートを演奏する。 30 p. 57 音のペア ─ 異なる高さの音 ため息 1. ため息 2. p. 59 3 番(2 番)の指で打つ 揺れている 1. 黒鍵でレガートに 揺れている 2. p. 60 シンコペーション アクセントの移動 p. 61 35 37 36
I 巻ではこれ以降、即興は作曲と統一した課題として扱われ、音程や和音、民謡の形式
や 5 音音階を用いて、また倍音などの様々なピアノ奏法による即興と作曲を行う。アパジ
は、レッスンで行った即興を記憶して帰り、家で譜面に考察して書き写す作業を作曲とい
う課題の第一段階とする。それを出発点として、段階的、系統的に作曲を発展させていく。
p. 63 即興と作曲の課題、注意すること 1. 良く知っている拍子で、一定の一声のリズムの即興/作曲。2. 指定された拍子で、同時に二種類 の一定のリズム。3. 良く知っている拍子で、二声のリズムの即興/作曲。4. 指定された拍子で、指定 されたリズムの上で、あるいは音楽的な課題の上に、リズムの即興/作曲、例えば次のようなリズムの 上で : ・付点音符、・付点リズム、・タイで結ばれた音、・音のペア、・スタッカート、・音のペアとスタッ カートのつながり(例えば 3/4 拍子で)、・レガート、・3 連符、・シンコペーション。5. 異なる高さの音 を後から踏むペダルでつなぐ。 p. 97 即興と作曲の課題、注意すること a. 一声(片手で、交互に) b. 二声 c. 偶数拍子 d. 奇数拍子 e. 解放された遊びのように f. 弦 と鍵盤を使って g. ペダルを使って 1. 1 つの同じ高さの音。2. 1 つの音とそのオクターヴ。3. 音を繰り返す。4. 「点のような」遊び(分 けられた音)。5. 順次進行。・2 つの隣り合った音。・3 つの隣り合った音。6. 「線のような」遊び(つな がった音)。7. 跳躍進行。8. 二重音。9. 反復音、順次進行、跳躍進行と二重音のさまざまな組み合わせ。 10. 「斑点のような」遊び(二重音、クラスター、グリッサンド)。11. 後から踏むペダルを伴う二重音。 12. 「点-線-斑点のような」遊び。13. ピアノでさまざまな響きと音色。 p. 161 即興と作曲の課題、注意すること 1. 音程 : a. ある自由に選んだ音程 b. 1 度 c. 2 度 d. 3 度 e. 4 度 f. 5 度 g. 6 度 h. 7 度 i. オクターヴ j. 転回音程、 音程の種類は、決められたものでも自由に選んだものでもよい。 2. ペンタコード : a. 長調 b. 短調 c. 1 : 2 型 d. 1 : 3 型 e. バグパイプの伴奏 f. オルガンポイ ント g. オスティナート。 3. 三和音 : a. 長三和音 b. 短三和音 c. 減三和音 d. 増三和音 拍子、小節数、テンポ、キャラ クターなどは、決められたものでも自由に選んだものでも良い : それぞれに関して。 p. 168 即興と作曲の課題、注意すること 1. 音を出さずに鍵盤を押さえ、その周りで完全 8 度を弾く。2. 音を出さずに鍵盤を押さえ、その周 りで完全 5 度を弾く。3. 音を出さずに鍵盤を押さえ、その周りで完全 8 度と完全 5 度を弾く。4. 音を 出さずに鍵盤を押さえ、その周りで完全 4 度を弾く。5. 音を出さずに鍵盤を押さえ、その周りで完全 5 度と完全 4 度を弾く。6. 音を出さずに鍵盤を押さえ、その周りで完全 8 度、完全 5 度、完全 4 度を弾く。 7. 音を出さずにいくつかの鍵盤を押さえ、その周りでさまざまな音を弾く。8. 鍵盤と弦の関係によっ て起こる倍音の響き。 p. 178 5 音音階「サス」の伴奏による* 問い-答え (2+2、4+4 小節を何度も繰り返す)即興と作曲 の課題** 問い : 始まりの 5 音音階 答え : 完全 4 度上の 5 音音階問い : 始まりの 5 音音階 答え : 増 4 度上の 5 音音階 問い : 始まりの 5 音音階 答え : 半音低い音上の 5 音音階 問い : 始まりの 5 音音階 答え : 半音高い音上の 5 音音階 問い : 始まりの 5 音音階 答え : 完全 5 度上の 5 音音階 *「サス」―掛留音が引き伸ばされて残っている 4-3指へ、解決されずに残る (4 度堆積和音) p. 182 即興と作曲の課題 5 音音階による 1. 4 つの段、民謡形式。2. 完全 5 度の伴奏による、2+2 小節の問い-答え。3. 完全 5 度、長 6 度、完 全 4 度の伴奏による、4+4 小節の問い-答え。4. 「サス」コードの伴奏による、問い-答え。5. ペロッグ。 6. 平調子。7. 雲井調子。
3
-2
-2. 『ピアノの夢』II 巻の即興の課題
II 巻の即興の課題は、シンメトリーの構造から始まる。
p. 10 始まり(出発点) 水平軸(横軸)の鏡による即興、作曲。テンポ、キャラクター、拍子、小節数、形式は自由に選んでよい。始まりはオクターヴ、またはその 他の音程で適切な位置で、そして声部を交代してもよい。
*全音音階 ─ それぞれの音程が全音であるもの、1 オクターヴ内に 2 つの音階を作ることができる。 p. 31 行ったり来たりの練習(即興へ) 即興 : リズムによる、強弱による、音色の効果による (例えば : ペダル、短く-乾いた、)など。 p. 44 即興と作曲の課題、注意すること 1. あらゆる音、音程、あるいは音の組み合わせを用い て、水平軸による鏡。2. 垂直軸(縦軸)の鏡 : a. リズム ─ リズムへ b. 旋律 ─ 旋律へ c. A B A 形式 d. A A5A5 A の民謡のような形式 e. A B B A の民謡 のような形式。3. 水平軸と垂直軸による鏡 : a. 12 個の音から音列を作ること、音列の逆行形、転回形、 逆行形の転回形を作ること b. 作られた 4 つの音列で作曲すること。4. 並んで進むシンメトリー : a. 繰 り返し b. オスティナート(一番簡単な可能性 : 左手 ─ 完全 5 度を 4 分音符で弾き、決められた拍子で、 右手で ─ 低音の上に作られた長調のペンタコード(短調のペンタコードなども)の音から旋律を作る こと。完全 5 度はその他の音に進むこともできる、音階も替えることができる。声部を替えたり、旋律 を彩る音を入れる可能性もある) c. ゼクヴェンツ d. 模倣。 p. 69 三和音の伴奏による旋法の音階 即興の出発点 旋法の音階音から旋律を作る、音階のそれぞれの音の上にできる三和音の伴奏による。 声部を替えるのもよい。 ドリア アパジ・マーリア作曲 リディア 続けて 続けて 拍子、小節数、キャラクターは自由に選ぶ フリギア ミクソリディア 続けて 続けて 拍子、小節数、キャラクターは自由に選ぶ
質問 : ♯が 2 つのドリアはどれか? H から始まるフリギアの調号は何か? p. 85 易しい即興の課題 T-D-D-T 1. 和音だけ使用する。 ト長調 続けて 2. 分散和音で。 ホ短調 続けて 3. 変化音(刺繍音)。 ハ長調 続けて 4. 経過音(変化音)。 イ短調 続けて p. 86 T-S-D-T ハ長調 続けて イ短調 続けて ニ長調 続けて ヘ長調 続けて p. 90 装飾音* 機能の練習に関連させて学習する(装飾音は拍頭から始めること)。 1. 前打音(短い)、アッポッジャトゥーラ(イタリア語)、フォルシュラグ(ドイツ語) 2. モルデン ト(イタリア語)、モルデント(ドイツ語) 3. プラルトリラー、トレモレット(イタリア語)、プララー (ドイツ語) 4. トリル、トリッロ(イタリア語)、トリラー(ドイツ語)。 トリラー…主要音から始めて、その上の音と交互に素早く反復させる装飾音。
詳細な内容については : ベーム・ラースロー :『音楽作品事典』(Editio Musica Budapest、1990 年)、 ロベルト・ドニングトン :『バロック音楽の奏法』(音楽出版社、ブダペシュト、1978 年)、バッハ : 18 の小プレリュード、二声のインヴェンション、三声のインヴェンション、ヘルナーディ・ラヨシュによ る出版、分析の論文付き。 *ここでは種々の装飾音の中から少しだけ扱う。
92 ページ、93 ページ、94 ページでは、シューベルトの楽曲を用いて、その和声構造に
よる即興と作曲を行う。その後、モデルとなった楽曲に戻ることによって、より深い理解
を持った演奏が可能になる。III 巻の 2 つの即興課題も同様である。
p. 92 レントラー 作品のハーモニーの枠を使って種々の長調でレントラーの 即興、作曲 : 基本の長調 基本の長調の V 度=ドミナントの I 度 基本の長調 作品の中に見られる色々なシンメトリーをよく探そう (形式、調性、ハーモニー、リズム)。p. 93 ワルツ 作品のハーモニーの枠を使って種々の長調の調性でワルツ の即興、作曲 : (短調) (平行長調) p. 94 レントラー 作品のハーモニーの枠を使ってレントラーの即興、作曲 : II-V-Iの連結 : 最初のカデンツ、ゼクヴェンツ、終止。 p. 104 II-V-I-VI 長調で 全ての長調に移調すること。 クラシック音楽(バロック、古典派、ロマン派)では II-V-Iの和声のつながりは最初のカデンツとし て、内的な終止として、ゼクヴェンツや終止のところに現れる。*ジャズでは II-V-I-VIはよく現れるハー モニー・ラインである。** 即興の出発点 練習方法 : a. 左手で低音・右手で和音(リズムのヴァリエーション)。b. 左手で和音・ 右手でスケール、多様な動きの形で。 c. 左手で歩く(散歩する低音)・右手で和音。 d. 左手で歩く、または和音・右手で自由な即興。 ドリア (II) ミクソリディア (V) ドリア (イオニア I) 旋律的短音階 V 度旋法 ドリア ミクソリディア 長音階 長音階
p. 105 練習* (声部を交代しても演奏すること。) 動きの形 II-V-I-I 8 分音符 分散和音 3 連符 16分音符 分散和音とスケールをミックスさせて *ビンデル・カーロイによる例 p. 106 長調の II-V-I-VI 分散和音 変化音を含む音型 音階 ブルースの音階 音型 変化した音、変化音 p. 107 和音の散歩(散歩する低音)* II -V-I-I 根音-5度の動き 根音-5度-7度の動き 機能が変わってしまうような半音階的変化音を避けること。 *ビンデル・カーロイによる例 p. 108 II-V-I-VI 短調で 全ての短調に移調すること。 即興の始まり 例 : ハ短調 *和声短音階 VI 度 : A♭∆ 旋律短音階 VI 度 : AØ p. 109 短調の II-V-I-VI 分散和音 変化音 音階 ブルースの音階 音型 変化した音 p. 110 長調のブルース* 全ての長調に移調すること。即興の出発点 使用できる音階(訳者注 : ペンタトニックは 5 音音階のこと。)
音階 C 音上のラ・ペンタトニック C 音上のド・ペンタトニック C 音上のミクソリディア C 音上のブルース C 音上のブルース、拡大した音を伴う * アフリカ系アメリカ人民族に最も特徴的な形で、提示されている例は最も簡単なヴァリエーショ ン : TSTT、SSTT、DSTD(T) p. 119 短調のブルース* 全ての短調に移調すること。即興の出発点 オルタード・スケール(D♭旋律短音階 VII 度) ドリア si l t d r m fi si27 ドリア ドリア
オルタード・スケール ロクリア (A♭旋律短音階 VII 度) ドリア オルタード・スケール ドリアの音階の代わりに例えばブルースの音階、あるいはラ・ペンタトニックを弾くこともできる。 p. 125 即興と作曲の課題、注意すること 1. 決められた音の上に作る : a. 長調、b. 短調、c. 旋律短音階、d. 和声短音階、e. 旋法の音階 : ド リア、フリギア、リディア、ミクソリディア、ロクリア、f. 自然倍音列音階、g. 全音音階、h. 半音階、 i. 1 : 5(5 : 1)型、j. 1 : 3(3 : 1)型、k. 1 : 2(2 : 1)型、l. 旋律短音階の 5 度上にできる音階、m. オ ルタード・スケール28(例えば : C 7 5# 10 ♭のコードを伴う C のオルタード・スケール)、n. ブルース の音階。2. a. 8 分音符と 3 連符を同時に弾く。b. 16 分音符と 3 連符を同時に弾く。3. ある決められた 四和音に作る。4. 決められたハーモニーに対して作る、和音の機能を、ある小節まで保って(拍子は 自由に選んでよい)。: マイナー ─ メジャー=同じ主音を持つ長調と短調。 5. 易しい練習曲に関連させて。6. ワルツ、レントラー。7. II-V-I-VI 長調で、短調で。8. 長調のブ ルース、短調のブルース。 p. 131 即興と作曲の課題、注意すること 1. 12 小節の音楽フレーズ(4 + 8 小節)3/4 拍子で、12 音の音で、スタッカートの音。2. 10 小節の 音楽フレーズ(6+4 小節)4/4 拍子で、ペンタトニックの音で。3. 8 小節の音楽フレーズ 小さい-小さ い-大きい、の部分に分けて(2+2+4 小節)4/8 拍子で。4. 拍子を替えて : 4/8、3/8、2/8、5/8 拍子。 p. 141 即興と作曲の課題、注意すること 1. +AM29: 1つの音で 8 小節(5+3)4/4 拍子で。2. +AM : ある音程で 13 小節(8+5)2/4 拍子で。 3. +AM : あ る 与 え ら れ た 音 の 組 織 で。4. −AM : 自 由 に 選 ん だ 音 の 組 織 で(5+8)3/4 拍 子 で。 5. −AM : スタッカートの音で(3+5)3/4 拍子で。6. +AM : 4 段の歌。7. モーツァルトのハ長調のメ ヌエットのハーモニーに基づく古典的なメヌエット。 p. 150 即興と作曲の課題、注意すること 1. ある与えられた音に対してオクターヴの並行を作る。2. ある音程に作られた並行。3. 3 度の並行。 4. 7度の並行。5. 長調のペンタコードの並行。6. 短調のペンタコードの並行。7. 1 : 2(2 : 1)型のペ ンタコードによる並行。8. 1 : 3(3 : 1)型のペンタコードによる並行。9. 1 : 5(5 : 1)型による並行。 10. 全音音階による並行。11. 自由な並行。 t d r m f s l t si l t d r m fisi
p. 155 即興と作曲の課題、注意すること 1. 音の繰り返し。2. リズムの繰り返し。3. 音程の繰り返し。4. ハーモニーの繰り返し。5. 調性の 繰り返し。6. モチーフの繰り返し。7. 旋律の繰り返し。8. 楽節の繰り返し。9. 4 つの段、民謡のよう な形式 : AABA。 p. 166 即興と作曲の課題、注意すること 1. 音の再現。2. リズムの再現。3. 音程の再現。4. ハーモニーの再現。5. 調性の再現。6. モチーフ の再現。7. 旋律の再現。8. 楽節の再現。9. トゥッティ ─ ソロの遊び(例えばトゥッティ ─ ソロ ─ トゥッティ ─ ソロ ─ トゥッティ)。10. 3 部形式 A B AV 決められた音の組織で、決められた拍子で、 決められた小節数で。11. 速く ─ ゆっくり ─ 速くの遊び。12. スタッカート ─ レガートースタッカー ト。13. 和音 ─ 旋律線 ─ 和音。14. リズムのロンド。15. ロンド A B A C A 決められた音の組織で、 決められた拍子で、決められた小節数で。 p. 175 即興と作曲の課題、注意すること 1. 音の長さのヴァリエーション。2. 音の強さのヴァリエーション。3. 音の高さのヴァリエーション。 4. ある音程に対して作るヴァリエーション。5. あるハーモニーに対して作るヴァリエーション。6. あ る音組織に対して作るヴァリエーション。7. アーティキュレーションの変奏。8. キャラクターの変奏、 a. 同じリズムで、そのリズムのテンポによる、ダイナミックによるヴァリエーションを伴う三種類の キャラクター、b. 同じ旋律を異なるキャラクターで。9. 音域を変えること。10. あるハーモニー線に よる変奏。11. あるモチーフによる変奏。12. あるバス声部への変奏。13. ある主題による変奏。14. 変 奏曲形式(バロック、古典、など)。
3
-2
-3. 『ピアノの夢』III 巻の即興の課題
p. 40 『メヌエット』 ドメニコ・ツィポーリ作曲 p. 41 『フランス人気質、またはドミノ(仮面舞踏 会の頭巾)』フランソワ・クープラン作曲4. お わ り に
考察したように、アパジのピアノ教育の目的は、人間教育である。そして、本稿のテー
マである即興演奏指導については、これまで多く行われてきた 1 つの様式に限られた即興
演奏指導ではなく、以下の 3 点に特徴があった。1. 音楽史上のあらゆる様式や音階によ
る即興へと系統性をもった広がりのあるものであること、 2. 即興、作曲、解釈(演奏)
の 3 つを統一して扱うという指導法であって、「即興演奏が良くできるようになると、メ
ロディー、リズム、ハーモニー、形式などの関係から、言いかえれば構造の全て、全体か
ら、音楽作品がより良く理解できる。」、すなわち、「これら 3 つのアプローチは、学習の
過程において作品を探求し分析する助けとなり、音楽の言葉を習得することにつながる。」
ということ、 3. 即興演奏によって、より深い音楽の理解をもった演奏が可能になること。
アパジの指導法は、非常にシンプルな単純な 1 音の丁寧な観察、吟味、即興から、バロッ
ク、クラシック、ロマン派、近代の様式、ジャズの様式、5 音音階、バルトークの中心軸、
ドデカフォニー、現代音楽へと分かりやすい 287 の即興演奏への課題を体験し、その後、
即興した音楽を記憶から楽譜に書き、書いたものを吟味することで作曲という行為をし、
行った即興を絵にも表し、描いた絵からも即興し、再びテキストに載っている楽譜に立ち
返って、より深い理解をもって作品を弾くという連続性をもっている。それは、アパジの
二十数年の実践研究から生まれ、検証されたもので、誰でもその能力に応じて即興演奏が
可能になるという優位性をもっている。
このような形で一音の吟味という音の原点から即興演奏を系統的に、段階的に体験をす
れば、子どもたちは、音楽史上のあらゆる様式で即興演奏をし、作品もよりよく理解して
弾き、自身の思考や人間性を高めることができるであろうと思われる。日本のピアノ教育
においても、ピアノ教育に人間教育の視点をもち、この即興・作曲・演奏のサークルをも
つ指導法から多くを学び取っていきたいと願う。そして、本稿の全訳によって日本におい
ても、アパジの即興演奏指導法の理念と指導法が実践的に拡がっていくことを願っている。
注
1 1964 年 : ハンガリー南西部にあるペーチ(Pécs)市のリスト・フェレンツ音楽院音楽教員養成 科(Liszt Ferenc Zeneművészeti Főiskola Zenetanárképző Intézet)を、ピアノとソルフェージュ教師の資格を得て卒業。1965-1985年 : ハンガリー南西部のコムロー(Komló)市のエルケル・フェ
レンツ音楽学校(Erkel Ferenc Zeneiskola)でピアノ指導。1985-2008年 : ペーチのマルティン・
フェレンツ芸術自由学校(Martyn Ferenc Művészeti Szabadiskola)の音楽部門主任。1990-1994年 :
ブダペシュト(Budapest)のリスト・フェレンツ音楽院(Liszt Ferenc Zeneművészeti Főiskola)で
即興演奏を担当。1994-2004年 : ペーチ大学音楽学部ピアノ科にてピアノ・室内楽・即興演奏と
作曲を担当。1998 年 : 国立音楽学校の即興科目のカリキュラムを著す。1999-2003年 : 国際ピ
アノ・セミナーにて即興演奏指導。2008 年 : ZONGORÁLOM Kreatív Zongoratanulás I・II・III(『ピ アノの夢 ─ 創造的なピアノ学習』)全 3 巻出版。
2 Apagyi M. (2008) ZONGORÁLOM Kreatív Zongoratanulás I・II・III. Pécs : Duplex-Rota Kft.
究発表 Q「ハンガリーのピアノ教育の発展 ─ 絵画・建築・数学などを総合し、即興を重視する ハンガリーのピアノ教科書 ─ アパジ・マーリア著『ピアノの夢 ─ 創造的なピアノ学習』全 3 巻の意義」2010.9.26.埼玉大学.日本音楽教育学会第 42 回大会 研究発表 H「ハンガリーのピ アノ教育の発展 II ─ 絵画・建築・数学などを総合し、即興を重視するハンガリーのピアノ教科 書 ─ アパジ・マーリア著『ピアノの夢 ─ 創造的なピアノ学習』全 3 巻の意義」2011.10.22. 奈 良教育大学。
4 『ピアノの学校』: Kassai, F.M., Hernádi, L., Komjáthy, A., Máthé, M., Inselt, K (1966). Zongorais-kola 1. Budapest : Editio Musica Budapest. (他一冊)
『新ピアノの学校』: Teöke, M. (1993). Találkozások a zongoránál. Budapest : Akkord Zenei Kidadó. (他四冊)
5 ハンガリーでは、放課後、Zene iskola(音楽学校)でピアノなど器楽や声学などを学ぶシステム。 6 Művelődési és Közoktatási Minisztérium. 1998. Az Alapfokú Művészetoktatás Követelményei és
Tan-tervi Programja Improvizáció, Mogyoród : Romi-Suli Könyvkiadó.
7 口頭発表 N. 「ハンガリーのピアノ教育における即興指導法 ─ アパジ・マーリア『ピアノの夢』
から ─」日本音楽教育学会第 44 回大会 2013.10.12-13. 弘前大学。
8 Apagyi 2008a, Bevezetés. pp. 5-7.
9 リスト音楽院卒業後、ドレスデン、モスクワのチャイコフスキー音楽院で学ぶ。1989 年フルブ ライト奨学金を得てアメリカに渡り、コンサート、マスタークラスを行う。1996 年からヨーロッ パピアノ指導者協会(EPTA)のハンガリー支部長。2002 年博士号を取得。1961 年から現在ま でバルトーク・コンセルバトリーの教授を務める。リサイタル、著書・論文、ショプロニ・ヨー ジェフ等の CD、ハンガリーのピアノ指導、とりわけクルターグなど現代音楽指導の VHS、DVD を制作。長年にわたって音楽雑誌 Parlando の編集長を務める。アパジの『ピアノの夢』の助言 者であり、ハンガリーのピアノ教育の指導者として活躍している。 10 日本音楽教育学会第 42 回大会 共同企画 I「人間教育としての音楽教育 I ─ アパジ・マーリアの ピアノ教育の理念と方法、ドイツの音楽教育との関連において ─」(2011.10.22.)、奈良教育大学。 11 Apagyi 2008a, p. 23. 12 ハンガリーの国立音楽学校の『ピアノ・カリキュラム』を著したハンガリーのピアノ教育の第 一人者。1975 年から 1985 年まで、リスト音楽アカデミー器楽教員養成で、ピアノ教授法とピア ノ教授実習の授業を担当。ピアノ教員養成大学のピアノ教授法の教科書『ピアノ教授法』を執 筆した。数多くの子どものための楽譜を出版。 13 Teöke 1993, p. 1. 14 画家。1964 年ブダペシュトのハンガリー美術大学美術教師養成科卒業。ペーチにて教員養成大学、 レオウェイ高等学校、デザイン工芸研究所にて教育、研究活動を始める。1985 年アパジ・マー リアとともにペーチのマルティン・フェレンツ芸術自由学校を創設。 15 Apagyi 2008a, p. 14. 16 Apagyi 2008a, p. 14. 17 Apagyi 2008a, p. 17. 18 Apagyi 2008a, p. 19. 19 Apagyi 2008a, p. 23. 20 Apagyi 2008a, pp. 5-7. 21 日本音楽教育学会第 42 回大会 共同企画 I「人間教育としての音楽教育 I ─ アパジ・マーリアの ピアノ教育の理念と方法、ドイツの音楽教育との関連において ─」(2011.10.22.)、奈良教育大学。 22 Apagyi 2008a, p. 30. 23 『ピアノの夢』I 巻の p. 29 と p. 33、II 巻の p. 10-11と p. 31 については、注 3 の論文においてす でに訳しているが、本稿では即興演奏指導課題を全訳することが必要であるため、本稿に掲載 する。
24 音の響き方(音の立ち上がりや消え方)や長・短、響きのかたさや柔らかさ、音がつながって いるか、分かれているか、そして、それらが同時に響くか、連続的に響くかということも、音 の特徴を形成する重要な要因である。視覚の分野との関連を用いて、音の種類を分類する。(Apagyi 2008a, p. 32.)「斑点のような」響き…和音または、クラスターで 1 音、またはグループで長時間 響く音。 25 「点のような」響き…スタッカートの音や互いに分かれている音。 26 「線のような」響き…レガートの旋律や互いにつながりあった音。 27 si l t d r m fi si は、シラティドレミフィシという階名を表す。si(シ)は s(ソ)の上向変化音、 fi(フィ)は f(ファ)の上向変化音を表す。 28 オルタード・スケールは、長音階において主音以外の音全てを半音下げた音階である。 29 AM は黄金分割を示す。
引用・参考文献
Apagyi M. (2008a). ZONGORÁLOM Kreatív Zongoratanulás I. Pécs : Duplex-Rota Kft.
Apagyi M. (2008b). ZONGORÁLOM Kreatív Zongoratanulás II. Pécs : Duplex-Rota Kft.
Apagyi M. (2008c). ZONGORÁLOM Kreatív Zongoratanulás III. Pécs : Duplex-Rota Kft.
Teöke M. (1993). Találkozások a zongoránál Tanári kézikönyv. Budapest : Akkord Zenei Kiadó. 降矢美彌子・岩淵摂子(2011) 「ハンガリーのピアノ教育の発展 ─ アパジ・マーリア著『ピアノの
夢 ─ 創造的なピアノ学習』の意義 ─」『帝京平成大学紀要』22(1), 71-88.
降矢美彌子・岩淵摂子(2012) 「ハンガリーのピアノ教育の発展 II ─ アパジ・マーリア著『ピアノ