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北 海 道 電 力 株 式 会 社
住 友 電 気 工 業 株 式 会 社
南早来変電所 大型蓄電システム実証事業
について
経済産業省の「大型蓄電システム緊急実証事業」に応募し、採択されました。 住友電気工業(株)と当社が共同で275kV基幹系統の南早来変電所にレドックスフ ロー電池(15MW×4時間容量)を設置。 再生可能エネルギーの出力変動に対する調整力としての性能実証および最適な制御技術 を開発します。
1.事業概要
風力発電出力 太陽光発電出力 制御指令 中央給電指令所 (蓄電池制御システムを設置) (レドックスフロー電池) 大型蓄電池 放電 充電 ※蓄電池の充放電により 周波数の変動を抑制 周波数項 目 系統用蓄電池の要件 レドックスフロー電池の特徴 容量 ○大出力、大容量 ○用途に応じた出力・容量の設計 ○出力設計(kW)・容量設計(kWh) が独立して可能であり、設計の自由 度が高い ○大容量化が容易 出力 ○急峻な出力応答が必要 ○応答速度が速い ○短時間の過負荷運転が可能 充電量 管理 ○安定した出力確保のために正確 な充電量管理が必要 ○運転状態であっても充電残量を リアルタイムに測定可能 安全性 ○高い安全性 ○電解液は丌燃であり安全 風力発電出力安定化蓄電池、大規模蓄電池としての実績 2000年 NEDO事業 「蓄電池併設風力発電導入可 能性調査」 2003年 NEDO事業 「風力発電電力系統安定化等 技術開発」 2012年 住友電工社内設備 「大規模蓄発電システム」 短周期、長周期変動抑制 短周期変動抑制 短周期、長周期変動抑制 1MWh (170kW x 6h) 6MWh (4MW x 1.5h) 5MWh (1MW x 5h) ●系統用蓄電池の 要件を満足 ●風力、太陽光の 安定化制御実績 ●大規模蓄電池の実績 レドックスフロー電池 を本事業に適用
2.系統用蓄電池の選定
レドックスフロー電池は、正負極の電解液にバナジウムイオン水溶液を用いた電解液還 流型の電力貯蔵用蓄電池です。 下図に示すように電池反応を行うセルスタック、電解液を貯蔵する正負極のタンク、さ らに電解液をタンクからセルへと循環するためのポンプ、配管等から構成されています。 電池設置後は、各種性能(容量、効率、保守性等)の評価を行います。 電解液タンク ポンプ セルスタック PCS DC AC 電力系統 熱交換器(冷却) 正極電解液フロー 負極電解液フロー
3.レドックスフロー電池の原理と構成
(1)レドックスフロー電池の概要3.レドックスフロー電池の原理と構成
正極反応 2VOSO4 + 2H2O 充電 (VO2)2SO4 + H2SO4 + 2H+ + 2e -放電 負極反応 V2(SO4)3 + 2e- +2H+ 2VSO 4 + H2SO4 充電 放電 (5価) (4価) (3価) (2価) H+V
2+V
3+V
4+V
5+ 負極電解液 正極電解液 電解液:硫酸バナジウム水溶液 (2)動作原理 正負極とも、バナジウムイオンの価数変化により、充放電を行います。3.レドックスフロー電池の原理と構成
フレーム電極 隔膜 電極 双極板 通電端子 エンドプレート セルスタック構成例 (3)セルスタックの構成 電池反応を行う流通型電解セルを複数積層したものを、セルスタックと称しています。 <流通型電解セル> <セルスタック>3.レドックスフロー電池の原理と構成
(4)電池システムの構成 電池盤2面(1面あたりセルスタック4台内蔵)、熱交換器盤2面、電解液タンク2基、 ポンプ2台、および配管により、電池の最小単位(モジュール)を構成します。 5組のモジュールと交直変換装置(PCS)により、出力制御の最小単位(バンク)を 構成し、電池システムは13バンク(65モジュール)から構成します。 モジュール1 モジュール2 モジュール3 モジュール4 モジュール5 PCS バンク1・・・・・・・
バンク2 バンク13 南早来変電所66kV母線へ 変圧器 66kV 6.9kV <モジュール> <電池システム>制御手法 概要 短 周 期 変 動 抑 制 制 御 風力・太陽光発電の変動 補償制御 <制御1> 複数の風力・太陽光の発電出力データを収集し、 それらの合計出力の短周期変動分を補償する制御 ガバナフリー相当制御 <制御2> 蓄電池側で周波数を検出し、周波数偏差に応じて制御 (自律制御) 負荷周波数制御(LFC) <制御3> 周波数偏差に応じて、系統全体の出力調整量を決 定し、各水力発電所・蓄電池に配分する制御 長周期変動抑制制御<制御4> 風力・太陽光発電の出力予測に基づき、これらの発電によ る長周期出力変動を緩和する制御 下げ代丌足対策運転<制御5> 風力・太陽光発電の出力予測と需給計画に基づき、余剰電 力の発生を回避するよう運転を計画
4.蓄電池制御システムの開発
本事業では、風力や太陽光発電の出力状況を把揜し、かつ電力系統の周波数維持を担っ てきた火力や水力発電などの既存電源と協調して蓄電池の制御を行う、蓄電池制御シス テムを開発します。 各制御手法について、様々な条件下で試験し、その結果を踏まえ、適宜制御システムの 改良を行います。セルスタック、熱交換器 電解液タンク、PCS 約120m 約35m 約20m
5.蓄電池建屋概観イメージ
1階に電解液タンク、PCS、2階にセルスタック、熱交換器を設置。 (設置面積:約5,000m2~おおよそ小中学校の体育館の4倍程度に相当)実施内容 設置工事期間 実証試験期間 2013 2014 2015 2016 2017 2018 住 友 電 気 工 業 ・蓄電池設計、製造 ・蓄電池建屋設計、建設 ・蓄電池設備設置、調整試験 ・蓄電池性能評価、保守 北 海 道 電 力 ・蓄電池制御システムの開発 ・風力・太陽光発電出力予測システ ムの開発 ・実証、分析、評価 ・蓄電池制御システム、風力・太陽 光電出力予測システム改良
6.スケジュール
実証期間は2013~2018年度の6年間を計画しています。 2015年12月に設置工事が完了、その後3年間程度実証試験を実施します。複数サイトの風力・太陽光の発電出力データを収集し、それらの合計出力の短周 期変動分を補償する系統用蓄電池の制御方法
8.参考(各制御手法)
<制御1>風力・太陽光発電の変動補償制御 対象発電所出力の短周期変動を検出し、 それを打ち消すよう蓄電池に指令 放電 充電 中給システム (実証用中央制御装置) 補償後合成出力 制御指令 太陽光出力 風力出力 太陽光出力 系統用蓄電池 風力出力 ※中給システム:中央給電指令所 自動給電システム ※本事業では、風力・太陽光発電ともに出力2,000kW以上の特別高圧連系の発電所が制御対象<制御2>ガバナフリー相当制御
8.参考(各制御手法)
系統用蓄電池を周波数調整用電源とみなし、蓄電池側で周波数を検出し、周波数 偏差に応じて蓄電池を制御する方法 周波数 系統用蓄電池 充放電制御 (自律制御) 周波数検出 周波数を検出し、基準周波数からの偏差に応じて 基準周波数に引き戻すように蓄電池を制御(自律制御)<制御3>負荷周波数制御(LFC)
8.参考(各制御手法)
系統用蓄電池を周波数調整用電源とみなし、負荷周波数制御対象の水力発電所と 同じように扱い、中給システムで周波数を検出し、周波数偏差に応じて必要な出 力調整量を決定し、各水力発電所・系統用蓄電池に配分する制御方法 制御指令(水力) 系統用蓄電池 周波数検出 中央給電指令所で周波数変動抑制に必要な出力調整量と 各水力発電所と系統用蓄電池への最適な配分量を計算して指令 制御指令 水力発電所 中給システム (実証用中央制御装置) 周波数 発電 放電 充電<制御4>長周期変動抑制制御
8.参考(各制御手法)
風力・太陽光発電の出力予測に基づき、これらの発電による長周期出力変動が緩 和するよう蓄電池の充放電を制御する方法 風力・太陽光発電予測 予測値(青) 目標値(赤) 出力 風力・太陽光発電実績 実績値(点線) 目標値(赤) 出力 放電 充電 充電 充電 放電 系統用蓄電池 気象予測 風力・太陽光発電 出力予測システム 風力・太陽光発電出力予測に基づき、 長周期変動を抑制する目標値を決定し、 蓄電池に充放電指令 ※本事業では、風力・太陽光発電ともに出力2,000kW以上の特別高圧連系の発電所が制御対象<制御5>下げ代丌足対策運転