香川生物(KAGAWA SEIBUTSU),㈹:5−12,1982
香川県高校市におけるアブラコウモリ 乃如8≠γβZ£媚αわ?て扮†批β
(Teminck,1840)3個体群の出巣活動
野 口 修岡山県高梁市立津川中学校
Emer・genCe Activity of Three Population of Pipistrellus abra仇uS
(TEMMINCK,1840)at Takamatsu City,Kagawa,Japan
Osamu NoGUCHI,TsugawaJ元niorHighSchool,Tsugawa,nkahashi716,Japm
Abstract:1me emerIgenCe aCtivity of Pipistrellus abra仇uS wasinvestigated at three separate populations of Takamatus City,Kagawa,1apan during March 14 and December’5,1980。 Bats emer’ged from the thr■ee populations wer・e not found when the air temperature dropped tollOcin spring(fr・om thelatter part of March to earlyin April)andl40cin autumn(from the middle of October・to themiddle of November)‖ Itis suggested that the air・tempera−
tur.e affects the emergenceo The dailyintervalbetween sun set and emergence
time was shorter from thelatter par・t oflune to earlyin August than other periods It seems thatlactating females and new born】uVeniles emerge earI−
1ier after sun setin the period mentioned above thanin other per・iods・ After the weaning of the new born〕uVeniles,the aver−age r・ate of emergenCe
incr’eaSedin both juveniles and adultsっItis suggested that,aS Wellas〕u−
Veniles,the socialfacilitationin adults acts on strongly after・the weanlng Of new born]uVeniles than before the weaningh From the finding of the diff−
erence of emergence time among the three populations,itis suggested that
the difference relates with that of distar】Ce from their food fields and with
that of population,in which juvenileslear’n the time of emer’enCe from theiradults 気や気温,および食物となる昆虫の出現と関連 させて出巣活動の季節的変化の分析を行なって いる。そして,本種の日周性活動および摂食活 動について議論し,他のアブラコウモリ属(クー 乞−p宜β≠γβ肋β)のものとの比較を行なっている。 しかし,森井(1976)は数個体群の集まった1 地点で調査を行なっている。また,Funakoshi &Uchida(1978)は福岡県内の25ケ所の異な った個体群において観察を行なっているにもか は じ め に アブラコウモリP五p五ざfγβ〃%βαるγα仇祝β (Temminck,1840)の夜間の出巣活動の研究 としては,森井(1976)およびFunakoshi& Uchida(1978)がある。森井(1976)は香川県 観音寺市において本種の出巣時刻・出巣個体数 の季節的変化を日没時刻・気温・照度との関連 で議論している。また,Funakoshi&Uchida (1978)は福岡県内および福岡市内において天 −5 −
高松而東ハゼ町(134002IE:34019−N:標高0− 10m)の2階建の家の2階の屋根裏である。周 囲はほとんど2階建の家ばかりで,北東側には 100m2ぐらいの畑がある。 調査期間は1980年3月14日から1980年12月5 日までである。3月14日から4月11日まではA とCを1日ごとに調査し,以後は10月の中旬ま で,およそ1週間々隔で3地点の調査をした。 なお,Bは5月7日から調査を開始した。そし て,10月の中旬以降はほぼ毎日3地点を順次調 査した。なお,調査当時,または調査の途中で 雨が降り出した場合は調査をとりやめた。 調査方法は,まず巣のある家の近くに.いて, 巣から飛び出す個体を4月18日までは5分ごと に,4月25日以降は1分ごとにその数をかぞえ 記録した。また,同時にその時の照度を東芝照 度計7号型(最小目盛,201ux)で,気温を乾 湿温度計(最小目盛,10c)でそれぞれ記録し た。また,日没時刻および最高・最低気温は高 松地方気象台の記録を用いた。 結 果 a 冬眠と覚醒 1980年の高松市に.おけるアブラコウモリの覚 醒としての実際に出巣がはじめて観察されたの は,Aでは3月20日,Cでは4月11日であるが, 4月11日まではAとCで1日ごとに観察を行な っているため,それぞれ3月19日・4月10日に 出巣した可能性もある。しかし,Bでは覚醒が いつごろか確認していない。 また,冬眠開始は,11月20日から23日まで観 察を行なっていないため,3地点とも11月19日 から23日の間であったと思われる。 b 出巣時刻と出巣時の照度 アブラコウモリの出巣時刻は,3月から4月, および6月下旬から8月にかけては,日没前に 出巣のはじまる日もあれば,日没後時間がたた ないと出巣のはじまらない日もあり,日没前に 出巣する個体もAでは7例,Bでは1例,Cで は9例観察された。しかし,9月以降はしだい に出巣時刻は,日没よりAでは6∼18分,Bで は6∼18分,Cでは11∼r25分おくれるようにな かわらず,各個体群の出巣活動を一括してとり 扱っており,各個体群ごとの出巣活動に対する 日没時刻および照度・気温・昆虫の出現時刻の 異同については分析されていない。 そこで,今回は香川県高松市において市内3 ケ所の個体群で出巣活動を調査し,各個体群ご とに覚醒から冬眠開始までの期間における出巣 活動と日没時刻・照度・気温との関連を分析し, 森井(1976),およびFunakoshi&Uchida (1978)の結果と比較した。 調査地点および調査方法
Fig.1Map showinglocations of three st11dy placesin Takamatsu City.Solid circles
indicate points of three populations of P‖αゐrαm!. 調査地点は以下に示す3地点である。Aは:香 川県高松市番町2丁目8(134002tE:34020,N: 標高0−10m)の2階建の家の2階の屋根裏で ある。周囲はほとんど2階建の家ばかりで,北 側は幅6mの道路をへだてて3階以上のビルが あり,西側は幅4mの道路をへだてて工芸高校 のグランドがある。Bは香川県高松市昭和町1 丁目5(134◇01−E:34020■N:標高0−10m)の 2階建の家の2階の屋\根葉である。すぐ北側と すぐ西側には幅4mと幅8mの道路があり,番 地の区画の北西の角の家に当たる。西側の道路 は市内バスの路線に当たり,通勤・通学に利用 されるため,交通量も比較的多い。Cは香川県
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Fig3 Fluctuation of coefficientoflightintensity
とくらべて出巣がはじまるのが5∼6分おそい。 また,各個体の出巣時の照度を月別平均で考 えると(Table2),5・6月はCでは出巣がは じまるのは他の2地点とくらべてかなり暗くな ってからである(£検定.001〉p)。また,全体 で見ても,Cは出巣時の照度が低い(≠検定.01〉p)。 また,4月から6月の平均照度と9月から11月 の平均照度を比較するとA・Bでは9月から11 月の方が照度が低い(f検定,それぞれ,、05〉p 〉.02,。001〉p)。しかし,Cでは有意差は見ら れない(孟検定 p〉。5)。また出巣時における 照度の変異係数(SD…×10O/加)を見ると(Fig 3),覚醒直後は変異係数が大きいが,4月か ら5月にかけて急激に小さくなり,以後はほぼ −・定である。 c l分当たりの出巣個体数 次に,出巣個体数と1分当たりの出巣個数の
MAト1JJ
AS◇N
Fig..2Dailyintervals between sun set and emep
rgence of the first batin cach populationい
();anintervalbetween sun set and emc−
【官enCe Of the first bat except juveniles・
A,Band C8how three populationsin Fig.1” った(Fig。2)。 ここで,3地点において出巣が日没後どれぐ らいたってから起こるのかを月ごとの平均値と して求めてみると(Tablel),AとBではほぼ 似かよっており,各月ごとおよび総計の有意差 は見られない(f検定.2〉p〉11)。しかし, AとC・BとCとの比較においては,5・6・ 9月において有意差が見られ(≠検定.05〉p), 4・7・11月においても有意差が見られないま でも(才検定.2〉p〉.1),Cの方が他の2地点
Tablel.・Honthly averageintervals(M土S.D.)betveen sun set,and emergence of the fir$t bat(minutes)”
Mar・・ Åpr・・ May Jun・・ Jul. Au9,. Sep.. Oct小 Nov… Total
A 193+4..5 −2.6+5‖2 5..0+4..2 3‖6+4.6 −1.0+2.8 3..0 43+4り2 12..3+2.1 14∴7+4.2 6..6+8小3
B 5..5+2い1 56+3.5 3.3+3.4 3.5+2.1 6.8+2‖8 ‘7.5+0∴7 16.5+2..1 6り1+4.5
C 9..5+10.6 18い5+3.5 133+5.0 4.3+1.2 −4.0 11い5+2.5 12.0 23.0+2.8 11‖6+7。.6
Table2い Monthly averagelightintensity(M土S“D.)at the emergence of the first bat(1ux)1・
Apr.. May Jun‖ Julり Au9“ Sep・・ Oct・・ Nov・ でOtal
200 133+38 58土30 30土30 132+103 120+85 66土26 50土42 25 104+66 80 65土10 60 13土4 58土55 A 213+144 200+85 102十68 215+205 B 195+64 11‘7+一76 135十56 C lO土14 20土1■7 113+95 160 + 56 148 + 43 37 + 51 A 月 C ー7−
Table3.Monthly average air temperature(M土S…D・・)at theemergenceof the firstbat・(℃)
Mar. Åpr・ May Jun・・ Jul・ Au9・ Sepり Oct・ Nov・・
♪ 10…5+0.4615.9+0巾6723..3+3.8 24・9+2“3 26・・2+1∴7 28…2 25・・1+1・・5 20・・6+2・716‖3+2・O B l7・・1+2∴7 25・糾2・・126…2+1・・9 26“1+1・・124・・0十3…8 23・・0 16・・‘7+0・・99 c 13..5+2い21・7り小51・9 23・1+2・・2 251・5+0・・99 26…0 23一・6+3・・一7 18・・6 14‖0 関係を今年生まれた幼体が巣立ちをはじめる前 と後で比較すると(Fig4),Aでは,前:財= 0035+007∬(γ=089:孟検定、01〉p),後:
y=014+0085ガ(γ=095:と検定01〉p),
Bでは,前:封=018+0065ガ(γ=088:≠検
定 01〉p),後:釘=065+0054∬(γ=094:f検定.01〉p),Cでは,前:y=013+0058
∬(γ=094:と検定.01〉p),後:財=062+ 0057∬(γ=090:≠検定 01〉p)となり,そ れぞれ強い直線関係がみとめられる。また,3 地点とも今年生まれた幼体が巣立ちをはじめた 後の方が,切片が増加している(ダ検定,05〉 p)。このことは,出巣個体数の多少にかかわ らず,今年生まれた幼体が巣立ちをはじめた後 の方が1分当たりの出巣個体数は多いことを示 して−いる。 d 出巣開始と気温 出巣開始時の気温を3地点の月別平均気温で 比較すると(Table3),4月の平均気温のAと Cの比較においてのみCの斉が気温が低い(f 検定.05〉p〉.02)と言えるだけで,その他の月 では3地点の間で有意差は見られない(f検定 AB U ︵毒し王S1月こピVど苫むー○琶:ぎ‡く 20 :つ 60 80Em叩er−Ce nUmber O†山ts
Fig”4 Average rate Of emergence oiP・abTaTTuJS・
Solidlines and solid symboIsindicate that
the emergence number o董 bats was recOr ̄
ed before weaning of5uveniles73rOken
lines and open syrnboIs showしhatthenumberwas recorded after weamng of Juvenlles
A,Band C show three populationsin Figl
p〉.1)。 そこで,気温の低下する覚醒前後および冬眠 開始前後の気温について検討を行なった。覚醒 前後および冬眠開始前後の最高・最低気温の変 動を見ると(Fig・5),出巣は最高気温の高い B 30 10 20 Nov
Fig”5Daily maximum−minimurn air temperature A:reCOrded from Marh15 to Apr・l14;B:recorded from Oct15to Nov.25●:air temperature at the day of emer・genCe found;「.、:airtemperature at
A
Lrが蒜 」ニ:」ニ_」亜ニL_が止ニ 130 B
:L一_ニ
」血ニL謹二_:」虹二二
」ニ辿虹
』ユ__ニL止血払二」」_』ニニ:
・:」_」芸コL息二二転__ニ:」_山二二L迅 18・ち0・___‥●_∴.__…∴…二 」_嵐_:L.几∴… 」 l)20 =咄 l010
:L叫ニ
」血二」一曲ニ・」虹ニ 」ニ 19.00 .20
:」逓叫二∵L皿址二 19堤○ 混 咄 L増虹ニー:L山山二 」 二_ 17上場 lO巾0」_ニ 」 L__「_血ニL一計ヱ
トぷ二」_山ニ」_二二
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」¶ニニ
け▲O」⊥止二二 」 ニ
l轟∝〉Fig6..Emergence patternsin each pop111ation.Open histogramS Show the emergence number. 旬にかけては出巣の中央より前にピ・−クがあり, 10月中旬から10月下旬にかけては出巣の中央よ り後にピ・−クが現われている。また,その他の 時期は出巣個体数のピ・−・クが現われていない。 また,3月から11月までの観察すべてにおい て,数個体が出巣したかと思えば,しばらく出 巣個体が見られなくなり,また数個体が出巣す るという様な出巣パタ・−ソが見られた。 考 察 アブラコウモリP勿β£γβgg%さαるγα刑%βの出 巣活動の研究はすでに森井(1976), および Funakoshi&Uchida(1978)によってなさ れており,ヨ・−PッパアブラコウモリP。P才一 Pistre肋腋についてはChur・Ch(1957),
Prakash(1962),De Coursey&De Con− rsey(1964),およびSwift(1鱒0)の報告が ある。まず,本種が冬眠から覚醒するのは,森 井(1976)およびFunakoshi&Uchida(1978) によると3月中旬となっている。今回の調査に 日において見られると言える。また,10月15日 から11月25日までは,気温が低下して出巣の見 られない日が観察されるようになる。この期間 中で,出巣の見られた日の出巣開始時刻と日没 時刻の関係から出巣の見られなかった日の予想 出巣開始時の気温を外挿した。そして,この両 者(出巣の見られた日と見られなかった日)の 気温を比較してみると,見られた日の平均値は 165℃,見られなかった日の平均値は14℃で, 見られた日の出巣開始時の気温の方が高い(£ 検定 01〉p〉。001)。 e 出巣バク・−ソ 観察された出巣/くタ・−ソを見ると(Fig。6), 出巣のどークが3地点とも出巣がはじまってか らおわるまでの間の位層の年変化は認めにくい。 しかし,3月から4月にかけては,出巣個体 数のピ・−クが出巣の中央より後に現われており, 5日中旬から6月にかけては,出巣の中央より 前にピ・−クがあり,7月下旬から8月上旬にか けてはピ・−クが2つあり,9月上旬から10月上 −9−
おいては,Aの覚醒はこれと−・致するが,Cの 覚醒はおよそ20日おくれている。また,冬眠開 始は森井(1976)およびFunakoshi&Uchida (1978)によると,11月中・下旬となっており, 今回のものと−・致する。 これは,くわしいデータがないので断言はで きないのであるが,3・4月の気温がCの方が 低かったこと(Table3),10月15日から11月25 日までの期間の,出巣が見られた日の気温が出 巣が見られなかった日の気湿より高かったこと (Fig・5)から,覚醒前後および冬眠開始前後 の時期においては気温が本種の出巣を左右する 要因にな・つているのではないかと考えられる。
次に,森井(1976)およびFunakoshi&
Uchida(1978)によると,本種の夕方から夜 にかけての出巣開始時刻は日没時刻に関連して いることがわかっている。これは,本種に.おい てはその出巣が採光行動による−1連のリズムに よって制御されており,同じコロニ−の他の個 体とも同調されている(Funakoshi&Uchida,1978:Swift,1980)ためと説明されている。
しかし,日没時の照度1つをとって見ても(Fig 7),50\ノ4001uxの幅があり,出巣開始の最も 多い1001ux前後に照度が落ちた時を見ても, 日没前5分から日没後10分までおよそ15分の幅 がある。日に.よってこれだけ照度に差があるこ とを考えると,本種の出巣は−日の照度同期に ある程度の許容範囲を持って同調されていると 考えられる。 また,今回確認された1分当たりの出巣個体 数の変化の分析を行なう。これは,8月上旬を 境として,全出巣個体数の多少にかかわらず増 加している(Fig・4)。このことはSwift(1980) によると,個体群の中の1個体の出巣活動のパ フォ・−マンスが他の個体が同じ行動を起こすた めのきっかけとして働く“社会的促進”のため であろうという。この社会的促進は巣の中にい る若い個体に.強く働くだろうとされている。こ れは幼体が巣立ちをすると成体雌が巣をはなれ るヨ−ロッパアブラコウモリについてのことで ある。しかし,成体雌が巣をはなれない本種 (内田,1966)について,同じ現象が観察され ているということは,幼体が巣立ちをはじめる と幼体のみでなく,成体雌に.も幼体の巣立ち以 前よりも強く社会的促進がはたらくことを示し ているのではないだろうか。 最後に,3地点の出巣情動のちがいを考える と,Cの覚醒がAよりもおそいこと,Cの出巣 時刻が他の2地点よりおそいことが上げられる (Fig。2,Tablel):)覚醒については前述したの で,ここではとり扱わない。しかし,Cの出巣 時刻のおくれについては,日没時刻・昆虫の出 巣時刻では説明できない。森井(1976)では, 香川県観音寺市において調査を行なっており, 調査地の状況は川べりで両岸に道路が通ってお り,それにそって家が並んでいるという(森井, 私信)。これから推測すると,調査地の状況は Cより家が少なく畑や田が多いであろうと思わ れる。そして,出巣時刻は日没前11分∼12分と なっており,出巣開始時の照度は8月上旬が最 も明るく,約36001uxであったという。また, 3 0 0 0 0 10 20Fig7 Lightintensity(Y−aXis)before ten− minutes and after twenty−five−minutes of sun set(Ⅹ−aXis)
Funakoshi&Uchida(1978)では福岡県およ び福岡市において調査を行なっている。そして, 出巣時刻は日没後およそ12分となっている。こ れはCの出巣時刻と−・致するが,Funakoshi &Uchida(1978)のものは25ケ所の個体群を 平均した出巣時刻であるから,当然,日没後12 分より早く出巣する個体群もあれば,おそく出 巣する個体群もあるだろう。また,出巣開始時 の照度は8月上旬に最も明るく,およそ2101ux であった。そして,今回の調査結果と比較する と,森井(1976)の調査した観音寺而の個体群 は,福岡の個体群(Funakoshi&Uchida, 1978)および今回調査した3ケ所の個体群とく らべて,非常に明るい時刻から出巣しているの がわかる。 そこで,推測できることは2つある。第1に は,今回の結果に述べてはないが,A・Bの個 体群を観察している時に,観察している巣の個 体が飛び出す以前に上空をこの巣より北の巣の 個体が通過していったことが,Aでは7回,B では10回,目撃された。また,出巣した個体す べてが南に向かって飛び去っていった。これら のことから,A・Bにおいては周辺はすべて建 物がたっており,えさとなる昆虫の集まりそう な畑・田・樹木・川は近くに.は見られず,本種 がえさ場としている所が巣から遠いため,出巣 が早くなるのではないかと思われる。つまり, えさ場から遠い個体群ほど出巣時刻は早くなる のではないだろうか。 第2には,内田(1966)によると,本種は年 中同一優屋に棲み,家族構造的性格が強いとさ れている。また,同山・家屋の屋根裏の2つの壁 面に,2つの個体群がお互いに個体の交流なし に存在していることも述べられている。そこで, 成体と幼体は少なくとも一年間はいっしょに生 活するので,幼体はその間に自分の所属してい る個体群の成体の行動のみを学習しうるであろ う。そして,本種の出巣活動は一日の照度周期 にある程度の許容範囲を持って同調されている のであるから,学習によって微調整が可能であ ると考えられる。今回は地点別の昆虫の出現時 刻のデータをとっていないので,地域によって 昆虫の出現時刻がことなっているかどうかはわ からない。しかし,Cの昆虫の出現時刻が他の 2地点よりおそいとすると,また森井(1976) の調査地点の昆虫の出現時刻が日没時刻より早 いとすると,出巣時刻が昆虫の出現時刻の遅速 に同調するように微調整されている成体の行動 を,幼体が学習するであろう。そして,このよ うな形質が代々伝えられたなら,その個体群の 行動型として固定されるのではないだろうか。 なお,今回の研究は,観察期間も短かく,収 集したデ・一夕も不十分で,不正確な点も多々あ ると思われる。これらの点については今後の研 究で明らかにされるであろう。 摘 要 香川県高松市の3ケ所のアブラコウモリの個 体群において,1980年3月14日から12月5日ま で出巣情動を調査した。 春(3月下旬から4月上旬)においては気温 の低い地点の覚醒がおくれた。また,秋(10月 中旬から11月中旬)においては出巣が見られた 日の気温の方が出巣が見られなかった日の気温 より高かった。これは,この時期においては気 湿が出巣を左右する要因になっているためだと 考えられる。 6月下旬から8月上旬に.かけて,出巣時刻が 日没時刻に対して早くなっている。出巣時刻は −・日の照度周期に同調されているということが 今まで他の研究者によって議論されているが, それに加えて,本種の生活リズムとも関連して いることが示唆された。 1分当たりの出巣個体数を今年生まれた幼体 の巣立ち前と後で比較すると,巣立ち後のカが 増加していた。これは,幼体だけでなく成体に も社会的促進がより強く働くためだと考えられ る。 今回観察された各個体群間の出巣時刻のちが いに関しては2つのことが推測される。第1に は,出巣時刻のちがいはえさ場と個体群との間 の距離のちがいに関連していると推測した。第 2には個体群ごとの出巣時刻のちがいは,成体 から幼体へと学習によって伝えられる個体群個 ー11−
有の出巣時刻のちがいと関連していると推測し た。 謝 辞 この調査をすすめるにあたり,適切な指導助 言をいただいた香川大学教育学部生物学教室の 金子之虞先生,香川県立坂出高等学校の森井隆 三先生に感謝致します。 引 用 文 献
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