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防災のための情報番組に関する研究

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Academic year: 2021

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防災のための情報番組に関する研究

Study on Application of Informational Program

for Disaster Prevention

Hiroshi YOKOYAMA

山  

【研究論文】

1.緒言

 日本の国土は,地球上でも地震,津波,暴風,火山噴火などの災害が発生しやすい地形条件下に 位置している。そのため日本では,各般にわたる災害対策が積極的に実施されており,防災,減災 のための情報活用はその対策の重要な一分野である。近年の社会の高度情報化に伴い,防災・災害 に関する情報は高速で大量に保存,伝達できるようになった。また,スマートフォンなどのICTの普及, 発展に伴い,それらの情報を受信できる機会も大幅に増加した。その一方で,様々な原因により生 じる情報格差問題が指摘されている。  筆者らはこれまでに,東日本大震災に見る市民の情報リテラシーに関する研究及び防災および災 害対策情報のための情報リテラシーに関する研究において,災害で利用される情報源やソーシャル メディア,自治体情報システム運用の実態例などを調査し,市民にとって必要な情報リテラシーに ついて検討してきた1)2)。これらの研究から,現在ICTを活用した広域且つ確実性の高い防災・災 害情報システムが整備されつつある一方で,自治体・行政組織が発信する緊急速報メールなどにも 情報格差の問題があることがわかっている3)。また,ローカルな情報収集の優位性と,地域防災ネッ トワークの有効性についても指摘された。これらのことからも情報伝達の方法と市民の情報リテラシー との相違による情報格差などの問題に関する研究が必要とされていることがわかる。  近年,高齢者の情報格差が広がってきた背景には,スマートフォンなどの端末や検索方法が複雑 化してきたこと,高齢者には必ずしもデジタル機器を持つことがライフスタイルに適していないこ となどが挙げられる。しかし,東日本大震災の時には,デジタル経由の情報を持つか持たないかで, 情報を的確に把握したり,助けを得る方法を検索したりするときに差が生じ,情報格差によって高 齢者が逃げ遅れてしまうという問題が浮き彫りとなった。これまでの研究から,甚大な自然災害発 生時における情報収集の現状について以下の事が言える。  ◦  数多くの媒体で災害情報を入手できるため,危機発生時における重要性が周知されている。  ◦  災害情報について緊急地震速報等の迅速な情報が伝達され,以前より素早く危険回避ができ ると考えられる。  ◦  震源地付近では,緊急地震速報が遅れると同時に安全確保が遅れてしまう。

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収集が多く見られたため,他媒体においても非常時を想定した情報リテラシーを身につける必要が あり,すぐ対応させることが急務である。東日本大震災直後から,日本国民の情報リテラシーに関 するそれらの諸課題に対する研究が多くなされており,以下のようなものがある。  国土交通調査室の岡村光章は東日本大震災における災害情報提供について研究し,災害情報とメ ディアとの関係全般の特徴的変化を検証した結果,被害情報は包括的であり,広域性,速報性,同 時性が要求されるため,その点ではテレビでのメディア特性がマッチしているが,頑健性・耐災害 性に強いラジオが最終的に使用率向上につながることが分かった。デジタルメディア等が遠隔伝達, 大量配信,記憶性,同時性等のあらゆる点で他メディアを凌駕しているが,災害時には情報インフ ラが被災し,情報リテラシーが十分でないため,結果的に頑健性・耐災害性の強いメディアを選択 してしまうため,今後は新しい情報機器の頑健性が向上し,かつ被災者の情報リテラシーが高い水 準に達した環境にある場合,例としてデジタルネイティブが社会の大多数を占めるようになるなら, 災害情報とメディアの関係は大きく変わってくると報告している4)  総務省消防庁防災情報室は災害情報手段の整備において,住民への災害情報伝達手段の多様化実 証実験を行った5)。実証実験で,情報伝達媒体をどのように活用し,どのような成果を得られたか を報告し,東日本大震災の津波警報時に多く活用された防災行政無線に加え,MCA無線システムサー ビスや,エリアメール,登録制メール,コミュニティFM,SNS等の様々な媒体について検証している。 その結果,エリアメールでは,情報は携帯電話網の制御チャネルを通して,同報的に送信されるため, 輻輳の影響を受けにくく,短時間に対応端末保有者に情報を伝達することができること。登録制メー ルでは,警報・注意報のみならず,気象情報や避難情報なども取得でき,さらに地域内在住者以外 でも自由に登録でき,情報受信できることから,地域内はもとより地域外に出掛けている場合でも 自治体からの災害情報を入手できる大変有効な手段であること。災害時の情報伝達において,通信 や放送といった伝達方法はそれぞれ違う利点が存在することについて考察している。  しかし,これらの研究では,自然災害において多場面で実施されてきた情報伝達手段の効率性と 必要性,利便性が述べられている一方で,年月が過ぎ,情報リテラシーの高いメディアツールの活 用方法が増加してしまうことで,情報リテラシー教育が少ない現代の高齢者にとって,情報収集が 厳しいものと推測される。  この研究では,株式会社アース・サイエンティフィックスが運営する現代技術を駆使した科学的 な方法による情報コンテンツである「ハザードラボ」を防災情報コンテンツのモデルとしての調査 の対象とした6)。ハザードラボは地震情報,地震予測,火山情報,放射線量など8つの情報を無料 で配信している情報メディアである。「ハザードラボ」は,「知る,考える,備える」をキャッチフレー ズに,少しでも減災に資する可能性がある新技術・新サービスを積極的に取上げ,この国で生きて いくための知恵を多くの市民が共有できるサイトにするために,広く減災に取組んでいる。2015年 11月現在,地震予報は結果検証中のため更新はされていないが,地震予報を日常的なものにするた

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防災のための情報番組に関する研究 めにはこのような情報発信が有効であると考えられる。  そこで本研究では,地震予測を日常的なものにするには,防災情報コンテンツを知ってもらい, 日常的なものという認識を高めることで防災情報の日常化が進展するものと期待し,防災情報コン テンツに対する,大学生の認識について研究した。また情報活用のための障害や問題点について考 察し,幅広い世代が情報リテラシーに関しての理解を深めることで,多くの情報伝達媒体から迅速に, 正確に伝わるための防災情報の活用方法について研究した。

2.研究方法

 本研究では,大学生を対象として,防災情報についてのアンケート調査を行い,130人から回答を得た。 そこで,メディアの利用状況や,防災情報の収集方法について考察し,その結果についてまとめた。

3.結果

3-1.気象情報・地震情報の入手方法・端末 3-1-1.気象情報の入手方法  気象庁が定める気象情報とは,警報・注意報に先立って注意・警戒を呼びかけたり,警報・注意 報の発表中に現象の経過,予想,防災上の留意点等を解説したりするための情報である。気象情報も, 警報や注意報などと同じように関係行政機関,都道府県や市町村へ伝えられ,防災活動等に利用さ れるほか,報道機関などを通じて地域住民へ伝えられ,警報や注意報と一体のものとして発表され, 現象の経過,予想,防災上の留意点等を解説するなど,防災上重要な情報である7)  天気予報の情報はどのように入手しますか,という問いに対して「テレビ」と回答したものが 51.6%,次いで「パソコンや携帯機器でのネット」と回答したものが40.1%とこの二つが大半を占めた。 グラフ3-1-1 「天気予報の情報はどのように入手しますか」回答結果 テレビ 51.6% パソコンや 携帯機器での ネット 40.1% 新聞 6.0% ラジオ 2.2%

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た。  また,「見る」と回答したものの中で,何時頃によく見るかについて集計したところ,19時から24 時の間が多かった。また,6時から12時の間でも比較的にテレビを見ているものが多いことが分かった。 3-1-3.通信機器の利用状況  携帯電話,スマートフォンなどの通信機器を持っていますかという問いに対して,「はい」と答え たものが94.6%,持っていないと回答したものが5.4%となった。 見ない 31.8% 見る 68.2% 0 5 10 15 20 25 30 35 1 時 2時 3時 4時 5時 6時 7時 8時 9時 10時 11時 12時 13時 14時 15時 16時 17時 18時 19時 20時 21時 22時 23時 24時 4 2 0 0 1 10 17 14 17 15 14 14 6 4 4 2 4 9 20 25 29 33 25 22 グラフ3-1-2-1 「テレビをよく見ますか」回答結果 グラフ3-1-2-2 「テレビの視聴時間」回答結果

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防災のための情報番組に関する研究  また,その携帯型通信機器はスマートフォンなどの多機能携帯端末ですかという問いに対して「は い」と答えたものが91.9%,そうではないと答えたものが8.1%となった。  さらに,多機能携帯端末では普段どのような目的で使用するかという問いには「SNS」という回 答が89人と最も多く,次いでゲーム,ミュージックとなり,この3つ以外はそれほど使われていない。 1.ゲーム 2.エンターテインメント 3.教育 4.仕事効率化 5.SNS 6.天気  7.ナビゲーション 8.ニュース 9.ヘルスケア 10.ミュージック 11.ユーティリティ 12.その他 グラフ3-1-3-1 「携帯電話,スマートフォンなどの通信機器を持っていますか」回答結果 グラフ3-1-3-2 「その携帯型通信機器はスマートフォンなどの多機能携帯端末ですか」回答結果 グラフ3-1-3-3 「多機能携帯端末は普段どのような目的で使用するか」回答結果 はい 91.9% いいえ 8.1% はい 94.6% いいえ 5.4% 0 20 40 60 80 100 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 85 13 2 8 89 29 14 25 1 61 0 2

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 ハザードラボとは,防災,災害情報を発信する情報メディアである。そのハザードラボを知っているか, という問いに対して「はい」と回答したものが7.1%であった。  また,実際にハザードラボを見てもらい,有用性,内容,総合的な満足度を聞くと87%,83%, 90%で概ね「良い」という結果が出た。また,どのくらいの頻度で視聴したいかという問いでは「毎日」 が11.8%,「週2~3回」が16.5%,「週1回」が24.4%,「月1回」が17.3%,「視聴したいとは思わない」 は29.9%となった。 知らなかった 92.9% 知っていた 7.1% ある程度 有用だと思った 63.50% 有用だと 思った 47.37% あまり有用だとは 思わなかった 7.5% 有用だとは 感じなかった 10.8%

有用性

どちらかといえば 良い 67.53% 良い 37.30% どちらかといえば 悪い 14.11% 悪い 8.6%

内容

グラフ3-2-1-1 「ハザードラボを知っていますか」回答結果 グラフ3-2-1-2 「ハザードラボの有用性について」回答結果 グラフ3-2-1-3 「ハザードラボの内容の評価について」回答結果

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防災のための情報番組に関する研究 3-2-2.地震予報情報  地震予報に関する情報を入手したいと思いますか,という問いで概ね「思う」と回答したものが 82%であった。しかしハザードラボのアプリをインストールしたい,既にインストールしていると 答えたものは47.3%であった。

4.考察

 3-2から,ハザードラボは多くの人に周知されていないものの,内容の有用性は認められ,その グラフ3-2-1-4 「防災情報としてハザードラボの満足度について」回答結果 グラフ3-2-2-1 「防災情報として地震予測情報の必要性について」回答結果 グラフ3-2-2-2 「ハザードラボ・アプリの利用状況について」回答結果 どちらかといえば 満足 76.62% 満足 35.28% どちらかといえば 不満 9.7% 不満 4.3%

満足度

まぁまぁ思う 63.49% 強く思う 43.33% あまり 思わない 20.15% 入手しようとは 思わない 4.3%

地震情報

いいえ 69.54% はい 54.43% 既にインストール している 4.3%

ハザードラボ・アプリ

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ドラボを広めるためのひとつの方法として,テレビの気象予報とハザードラボとを関連付けること で広めることが考えられる。3-1から,テレビで気象情報を入手しているものは最も多く,テレビ での普及が効率的だと考えられる。さらに,3-1-2の結果から,放送する時間帯は19時から24時が 望ましいものと考えられる。また,3-1-3の結果から既に広く普及しているスマートフォンなどの 携帯型通信機器を使った方法も有効であることは明白である。SNSでの公式アカウント等を活用し て情報を発信するなどの方法が考えられる。SNSはスマートフォンアプリの中でも最も使われてい るジャンルであるため,効果が期待できる。しかし、SNSを利用する際,多くの学生は自分の必要 な情報しか見ようとはしないものと考えられ,必ずしも情報が届かない恐れがある。その対策として, スマートフォンの初期アプリとしてハザードラボが入るようにすれば,インストールする手間もな くスマートフォンを持つ人に情報が届く可能性が高まる。

5.結言

 地震予測を日常的なものにするには,防災情報コンテンツを知ってもらい,日常的なものという 認識を高めることで防災情報の日常化が進展するものと期待し,防災情報コンテンツに対する,大 学生の認識について研究し,以下の結論を得た。  ◦  ハザードラボは未だ多くの人には周知されていないものの,内容の有用性は認められ,その 評価も高いものであることがわかった  ◦  ハザードラボを広めるためにはテレビや携帯型通信機器との関連付けが効果的であると推察 される  ◦  テレビを活用する場合は,天気予報に地震予報を関連付ける方法が考えられる  ◦  携帯型通信機器の初期アプリとしてハザードラボアプリを導入するなどが,普及のひとつの 方法として考えられる 引用文献 1)横山泰,“東日本大震災に見る市民の情報リテラシーに関する研究”,新潟経営大学紀要,Vol.18,2012,71-80 2)横山泰,東川輝久,“防災および災害対策情報のための情報リテラシーに関する研究”,新潟経営大学紀要,Vol.19, 2013,73-82 3)東川輝久,久保貞也,島田達巳“自治体の電子化レベルに関する実証的研究”,日本社会情報学会学会誌,Vol.18(2), 一般社団法人社会情報学会,2006,59-69 4)岡村光章,“東日本大震災における災害情報提供について”, http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/pdf/ 072803.pdf,最終アクセス日2015.11.1 5)総務省消防庁,“災害情報伝達手段の整備に関する手引き(住民への情報伝達手段の多様化実証実験)” ,http://www.

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防災のための情報番組に関する研究 fdma.go.jp/html/data/tuchi2505/pdf/250523-1.pdf,最終アクセス日2015.11.1 6)株式会社アース・サイエンティフィック,“ハザードラボ” ,最終アクセス日2015.11.1 7)気象庁,http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/kishojoho.html,最終アクセス日2015.11.1 参考文献 ◇ 伊藤慎吾, 滝沢惟, 大部由香, 米倉達広,“東日本大震災に見る効果的な情報共有方法の調査”,日本社会情報学会全国大会 研究発表論文集26(0), 309-314, 2011 ◇ 内閣府中央防災会議,“首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)”,首都直下地震対策検討ワーキンググルー プ,http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg/pdf/syuto_wg_report.pdf,最終アクセス日2015.11.1 ◇ 南條善明,“東日本大震災危機発生時の対応について考える 2.携帯電話の震災対応”,情報処理,Vol.52,No.9,情報処 理学会,2011,1064-1065 ◇ 樋地正浩,“東日本大震災における情報通信技術の利用と課題”,電子情報通信学会論文誌D,Vol.J95-D,No.5,一般社 団法人電子情報通信学会,2012,1070-1080 ◇ 大江将史,植原啓介,“東日本大震災における情報格差解消への取組み”,電子情報通信学会誌,Vol.95,No.3,一般社団 法人電子情報通信学会,2012,213-217 ◇ 武井佑介,伊東俊彦,“防災および災害対策に有効な情報ネットワーク・システム”,情報処理学会研究報告情報システ ムと社会環境,Vol.27,社団法人情報処理学会,2006,115-122 ◇ 総務省消防庁,“国民保護”,総務省消防庁,http://www.fdma.go.jp/,最終アクセス日2012.11.26 ◇ 畑山満則,“自治体情報システムにおける防災機能の実装に関する考察”,情報処理学会研究報告情報システムと社会環境, Vol.81,社団法人情報処理学会,2008,77-80

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