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子宮がん集団検診における液状化検体細胞診の有用性

立花美津子、河西十九三、黒川祐子、大木洋子、早田篤子、藤澤武彦、三橋暁、生水真紀夫

Effect of Liquid-based Cytology on Mass Screening of the Cervical Cancer

Tachibana Mitsuko,Tokuzou Kasai,Yuko Kurokawa,Yoko Oki,Atuko Souda,

Takehiko Fujisawa,Mitsuhasi Akira,Makio Syouzu

要 旨

 検診車による子宮がん集団検診における、Sure Path 法による液状化検体細胞診 (Liquid-based cytology:LBC) の有用性を明らかにする事を目的とした。

 対象は2011 年 11 月に行った T 市の子宮頸部がん検診受診者 3,201 人で、細胞診判定にはベセス ダシステムを用い、Atypical squamous cells of undetermined significance (ASC-US) の診断がつい た症例においては、LBC 標本作製後の検体を用いて HPV ハイリスクテストを行った。結果は、不適 正標本は認められず、細胞採取者間による塗抹のばらつきも無くなり、均一薄層の標本ができ、鏡検 時間の短縮につながった。要精検率の上昇、異形成や癌の発見率の上昇を認め精度向上に役立つこと が示唆された。また、ASC-US 64 例に集団検診の検体を用いて行った HPV ハイリスクテストでは 陽性は16 例 25%、陰性は 48 例 75%で、これ等の受診者は、改めて医療機関を受診して HPV ハイ リスクテストを行う事の負担が軽減された。

 キーワード: The cervical cancer on mass screening、liquid- based cytology (LBC)、atypical squamous cells of undetermined significance (ASC-US)、 不適正標本、HPV ハイリ スクテスト はじめに  我が国の子宮頸部細胞診の報告様式は、2008 年よりベセスダシステムが採用されたが1)、多 くの施設では従来の日本母性保護医協会( 現日 本産婦人科医会) によって作成された日母分類 とベセスダシステムの結果を併記しているのが 現状である。しかし2013 年度より産婦人科医 会がん対策委員会はベセスダシステム単独採用 を打ち出した。  ベセスダシステムでは、細胞診の質的向上を 目的に結果報告の項目に不適正を新設した。不 適正な標本としては①上皮細胞の数が少ない標 本( 従来法では 8,000 個以下、LBC では 5,000 個以下)、②炎症細胞や血液で覆われた標本や 細胞が乾燥して観察困難な標本が挙げられる。 不適正標本と判断された場合は再検査が公に認 められた。不適正標本が高率となり再検査が多 くなると、受診者の時間的負担のみならず検査 費用も増えるため、不適正標本はできるだけ減 らす必要がある。また、判定がASC-US の場 合HPV ハイリスクテストによりトリアージす ることが推奨されているため、ASC-US 該当 者はいわゆる精密検査ではなく、単にHPV ハ イリスクテストだけを目的に精密検査機関を受 診する必要が有り、負担増となってしまう。  今回、検診車よる出張検診である子宮頸がん 集団検診において検体をLBC にすることによ り、①LBC の精度、②ベセスダシステムで生 じる不適正標本の出現率増減と③ASC-US 対 象者の残余検体を使用してHPV ハイリスクテ ストを施行した場合、受診者の負担をどれくら い軽減できるかの3 点を従来法の過去 5 年間 と比較検討した。 対象および方法  2011 年 11 月に行った T 市子宮頸部がん検 診を受診した3,201 人を対象とした。受診者の 年齢は21 歳から 88 歳で平均 52.5 歳であった。 検診日数は15 日間で、一日の検診人数は 104 人から306 人で平均 213 人であった。LBC 標 本の作製方法は、細胞採取器具としてサーベッ クスブラシを使用し、細胞採取後シュアパスバ

原著(2)

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イアルの中にブラシの先端を落とし、攪拌した 後検査室へ持ち帰り、日本ベクトン・ディッキ ンソン株式会社(BD 社 ) (Tokyo, Japan) のプ レップメイト及びプレップステインなどを用 い、標本作製ワークフローに沿ってLBC 標本 を作製した(Sure Path 法 )。細胞判定にはベ セスダシステムを用い、ASC-US の診断がつ いた症例には、残った検体を用いて、ハイブリッ ドキャプチャー法によるHPV ハイリスクテス トを行った。  また、2006 年から 2010 年に行われた T 市 子宮頸部がん検診を受診した11,691 人と比較 検討した。この5 年間は、採取器具としてスポ ンジやサイトピック、綿棒等を使用し、スライ ドガラスに細胞を直接塗抹する従来法で行われ て来た。 結 果 1.標本作製  BD 社のプレップメイト及びプレップステイ ンを使用すると、1 回に 48 検体がセットでき 1 セット約 90 分かかった。これを 2 人で作業 すると、半日で5 ~ 6 セット 240 ~ 288 件の 処理が可能であった( 図 1、写真 1)。 ① 前準備 ラベリング 数ヶ月前からの準備 ② 前処理 検体攪拌 48 検体 15 分 48 検体約 90 分 分離剤文注 ③ プレップメイト 48 検体 15 分 ④ 遠 心 ①200G 2 分 48 検体 15 分 ②800G 10 分 デカント ⑤ プレップステイン 48 検体 40 分 ⑥ 固 定 48 検体 5 分 図1 LBC 検体作製ワークフロー 写真1 プレップステイン 2.一次検診結果  一次検診の細胞診結果は、NILM 3,072 例 (95.97%)、ASC-US 64 例 (2.00%)、LSIL 30 例(0.94%)、ASC-H 8 例 (0.25%)、HSIL 23 例 (0.72%)、SCC 2 例 (0.06%)、AGC と Adeno.2 例(0.06%) であった ( 表 1)。 3.HPVハイリスクテスト  ASC-US 64 例に HPV ハイリスクテストを 行 っ た。 陽 性16 例 (25%)、 陰 性 48 例 (75%) であった。 表1 一次検診結果

NILM ASC-US LSIL ASC-H HSIL SCC AGC Adeno. Total

n 3,072 64 30 8 23 2 1 1 3,201

% 95.97 2.00 0.94 0.25 0.72 0.06 0.03 0.03 100

NILM:Negative for intraepithelial lesion or malignancy ASC-US:atypical squamouse cells of undetermined significance

LSIL:low-grade squmous intraepithelial lesion ASC-H:atypical squmouse cells, cannot exclude HSIL

HSIL:high-grade squmous intraepithelial lesion SCC:squamous cell carcinoma

AGC:atypical glandular cells Adeno.:Adenocarcinoma

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4.二次検診初回組織診結果

 要精検者81 例のうち当財団施設内において 二次検診を受診し組織診を施行した53 例の結 果を、一次検診の細胞診結果と対比してみる と、ASC-US 4 例、LSIL 7 例、ASC-H 6 例、HSIL 7 例、AGC 1 例 の 25 例 (47.2%)

では腫瘍性の病変が認められなかった。また、 ASC-US 5 例、LSIL 11 例、ASC-H 1 例、 HSIL 8 例、Adeno. 1 例の 26 例 (49.1%) に は、軽度から高度異形成の所見を認めた。上皮 内癌1 例、浸潤癌 1 例には、共に LBC 標本で がん細胞を認めた( 表 2)。 表2 二次検診初回組織診結果 組 織 診 集検時 細胞診 腫瘍性病変 を認めず 軽度異形成 中等度異形成 高度異形成 上皮内癌 浸潤癌 合計 n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) n (%) ASC-US 4 (44.4) 3 (33.3) 1 (11.1) 1 (11.1) 9 (100) LSIL 7 (38.9) 8 (44.4) 3 (16.7) 18 (100) ASC-H 6 (85.7) 1 (14.3) 7 (100) HSIL 7 (46.7) 3 (20.0) 3 (20.0) 2 (13.3) 15 (100) SCC 1 (50.0) 1 (50.0) 2 (100) AGC 1 (100) 1 (100) Adeno. 1 (100) 1 (100) 合計 25 (47.2) 14 (26.4) 9 (17.0) 3 (5.7) 1 (1.9) 1 (1.9) 53 (100) 5.従来法との比較  1)不適正標本と標本作製の標準化    従来法による過去 5 年間では、420,408 件中100 件 0.02% の不適正標本を認めたが、 LBC 標本 3,201 件では、細胞少数や固定不 良による不適正標本は認められなかった。ま た、LBC の場合、細胞採取者間による塗抹 のばらつきもなくなり、一様な薄層標本が作 製できた( 表 3、写真 2)。 表3 不適正標本出現率 不適正標本 n % 2006 ~ 2010 年度 100 0.02 従来法標本 (420,408 件 ) 2011 年度 T 市 0 0.00 LBC 標本 (3,201 件 ) 写真2 標本作製の標準化  2)要精検率    従来法による過去 5 年間の要精検率の平 均は、0.90% であったが、LBC を導入した 昨年は2.53% と急増した。年齢別の要精検 率を見ると、各年齢層において1.3 から 8.3 倍とLBC で高く平均 2.8 倍であった ( 図 2)。 スポンジ・ 綿棒 サイトピック LBC

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 3)異形成と癌の発見率    他機関への二次検診受診を含めて、従来 法 で は105 例 中 83 例 (79.0%)、LBC で は 81 例中 73 例 (90.1%) において二次検診の結 果が判明した。各々を異形成と癌に分け従来 法の過去5 年間と比較してみると、従来法で は、5 年間で異形成 53 例 (0.45%)、癌 4 例 (0.03%) であったが、LBC では異形成 37 例 (1.16%)、癌 4 例 (0.12%) であった。この 2 群をカイ二乗検定すると、p 値は 0.001 以下 で、異形成および癌群ともに有意差が認めら れた( 表 4)。 7.58 3.89 3.04 1.43 1.9 2.33 1.89 6.06 1.86 1.33 0.68 0.23 0.44 0.64 0 1 2 3 4 5 6 7 8 ~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~ (歳) (%) LBC(2011年)     要精検率:2.53% 従来法(2006~2010年)要精検率:0.90% 図2 T市要精検者の年齢別比較 表 4 発見率の比較 異常を認めず 異形成* 癌* 上皮内癌 浸潤癌 従来法 2006 ~ 2010 年度 39 例 53 例 4 例 0.03% (11,691 例 ) 0.33% 0.45% 1 例 0.01% 3 例 0.03% LBC 2011 年度 38 例 37 例 4 例 0.12% (3,201 例 ) 1.19% 1.16% 1 例 0.03% 3 例 0.09% *:カイ二乗検定結果 p < 0.001 考 察

 現在、LBC には Sure Path 法、Thin Prep 法、 TACAS 法、Liqu Prep 法 な ど が あ り、Sure Path 法、Thin Prep 法、TACAS 法 は 標 本 作 製の原理により細胞の重なりが少ないことから Thin-layer 標本と呼ばれている2) 。この三者 の標本作製原理は違うが、出来上がり標本は一 様に薄層で検鏡もしやすく精度もかなり上がる ことが期待されている。LBC 法のデメリット 来法とLBC 法で比較した 9 論文を解析した結 果では、High grade CIN に対する感度・特異 度は同程度であるとしている。最近の報告で はLBC は従来法に比べ細胞診の精度が向上す るとの報告も見られる。平井4) らの Thin Prep 法を用いた検討では、中等度異形成以上の病変 を検出する感度は従来法71.3%、Thin Prep 法 77.4%、また特異度は従来法で 98.9%、Thin Prep 法で 99.0% であったとして LBC は従来

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が示唆された。組織学的にも、従来法では異形 成が53 例で発見率は 0.45%、癌が 4 例 (0.03%) 発見されたのに対し、LBC では異形成 37 例 (1.16%)、癌 4 例 (0.12%) であり、カイ二乗検 定の結果、有意差も認められた。  検診車を用いた出張検診である子宮頸がん集 団検診は、多くの医師が携わるため採取者や採 取器具によって不適正率が変動し、細胞塗抹時 のばらつきも高率になってしまう危惧がある。 集団検診という特殊環境の中で、この課題を解 消するには採取器具の統一化と採取細胞の集積 が可能となるLBC が最適かと考えられる。不 適正出現率においても、従来法とLBC 法で比 較した文献5) ~ 9) を見ると、全ての報告で LBC での不適正出現率が有意に低いと述べている。  今回の検討での不適正率は0% であり従来法 の0.02% と比較して低率であるので、LBC は 集団検診に十分組み入れる事の出来る方法であ る。  ASC-US に対するトリアージとして HPV テ ストが推奨されているので、ASC-US の結果 を得た受診者は一次検診( スクリーニング ) と 二次検診( 精密検査 ) の中間的な検診として、 HPV ハイリスクテストだけを目的に医療機関 を受診する必要がある。ASC-US の検出率は 5% 以下とされているが、母数の多い集団検診 においては、かなりの人数に達する。この対象 者は単にHPV ハイリスクテストだけを目的に 医療機関を受診しなければならず、時間的、経 済的負担は大きい。LBC の場合、ASC-US 対 象者は集団検診で採取したLBC 検体の残存を 使用してHPV ハイリスクテストを行うことが 可能である為、対象者の時間的・経済的負担軽 減に寄与する利点がある。今回の検討では64 人がASC-US となったので、この人達には大 きなメリットとなった。  ベセスダシステムを導入していくには、不適 正標本やASC-US に対する HPV ハイリスクテ ストなどに対応する必要性から、LBC 標本の 普及が必要不可欠になると考えられる。 結 論  検診車による子宮がん集団検診にLBC を 導入して、その成績から精度向上、不適正率、 ASC-US における HPV ハイリスクテストを中 心に検討したところ、LBC は従来法と比較し て検診車による集団検診には十分に適応でき、 従来法と比較してメリットも多い方法であると 言える。今後全ての受診者に細胞診とHPV ハ イリスクテストを同時に行う併用検診を取り入 れることにより、子宮がん検診における更なる 質的向上が期待される。 文 献 1) 日本産婦人科医会:ベセスダシステム 2001 準拠子宮頸部細胞診報告様式の理解のため に.2008. 2) 久布白兼行、田岡英樹、山本泰弘:液状化 検 体 細 胞 診、 産 婦 人 科 治 療 2011;6:930-936.

3) Arbyn M, Bergeron C, Klinkhamer P、et al: Liquid compared with conventional cervical cytology: a systematic review and meta-analysis. Obstet Gynecol 111:167-177, 2008. 4) 平井康夫、古田則行、荒井祐司ほか:子 宮頸部病変検出における液状化検体細胞診 (LBC) Thin Prep の精度と有用性評価のため の前方視的検討. 日臨細胞会誌 49(4):237-241, 2010. 5) Strander B, Andersson-Ellstro m A, et al:Liquid-based cytology versus conventional Papanicolaou smear in an organized screening program: a prospective randomized study. Cancer Cytopathology 111:285-291, 2007.

6) Ronco G, Cuzick J, Pierotti P, et al: Human papillomavirus testing and liquid-based cytology: results at recruitment from the new technologies for cervical cancer randomized controlled trial. J Natl Cancer Inst 98:765-774, 2006.

7) Doyle B, O’Farrell C, Mahoney E, et al: Liquid-based cytology improves productivity in cervical cytology screening. Cytopathology 17:60-64, 2006.

8) Williams AR: Liquid-based cytology and conventional smears compared over two 12-months periods. Cytopathology 17:82-85, 2006.

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9) Kirshner B, Simonsen K, Junge J: Comparison of conventional smear and Sure Path liquid-based cytology in the

Copenhagen population programme for cervical cancer, Cytopathology 17:187-194, 2006.

参照

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