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黄色ブドウ球菌の表層タンパク質Skipの発現制御機構の解析

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Academic year: 2021

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第 8 号様式 論 文 審 査 の 要 旨 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 歯 学 ) 氏名 達 川 伸 行 学位授与の要件 学位規則第4条第1・2項該当 論 文 題 目 黄色ブドウ球菌の表層タンパク質Skip の発現制御機構の解析 論文審査担当者 主 査 教 授 兼 松 隆 印 審査委員 教 授 加 藤 功 一 審査委員 教 授 菅 井 基 行 〔論文審査の要旨〕 黄色ブドウ球菌はヒト皮膚の常在フローラであるが,多様な皮膚感染症の起因菌となる ことが知られている。最近,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 (Staphylococcal Scalded Skin Syndrome : SSSS) 由来株は他の感染症由来株と異なり,菌体表層タンパク Skip (Skin infection related protein) を選択的に発現していることが明らかにされた。Skip 高発 現株はバイオフィルムを高産生し,皮膚への強い接着性を示すと同時に,高い個体間の伝 播性を示す。一方,skip遺伝子を保有しながら,Skip をほとんど発現せず,上記の形質を 持たない株も存在する。そこで申請者は,Skip の発現制御機構を明らかにするために Skip 非発現株と高発現株の比較解析を行い,Skip 発現制御の分子メカニズムについて考察し た。

染色体ゲノム上にコードされる skip 遺伝子の直上流には,sarA (staphylococcus accessory regulator homolog A) ホモログであるsarT及びsarUの二つの転写因子遺伝子 が存在する。変異株の解析からsarT,sarU はskip発現を正に制御することが判った。 Skip 非発現株と強発現株の染色体ゲノムsarT – sarU遺伝子間の塩基配列を比較した。 その結果,Skip 強発現株は非発現株と比べて,sarT – sarU 遺伝子間において,特定の 6 塩基配列が欠落している事を見出した。この欠落が,Skip の発現制御に関わっているか否 かを調べるために,6 塩基欠落株に対し 6 塩基を相補した株,さらに,6 塩基保有株に対し 6 塩基を欠落させた株を作製し,それぞれの株の Skip の発現を比較した。その結果,6

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塩基欠落株では Skip の発現が高く,6 塩基保有株では Skip の発現が低いことが判明した。 また,sarT, sarU及びskipの発現の変化を比較したところ,6 塩基保有株ではsarT, sarU 及びskipの発現は低下していた。このことより,未知の抑制因子が 6 塩基を保有する同領 域に結合するのではないかと推察された。加えて,新生児マウスを用いた菌固着実験にお いて,6 塩基保有株に比べ,6 塩基欠落株は菌固着能が有意に高い事が分った。 次に,この 6 塩基に関連する抑制因子を探索するために,6 塩基保有株または 6 塩基欠 落株から抽出した細胞質画分を用いて,6 塩基を保有または欠落した同領域 DNA 断片を結 合させた磁気ビーズを用いて,プルダウンアッセイを行った。その結果,6 塩基を保有し た DNA 断片に約 15kDa のタンパクが選択的に結合することを見出した。単離したタンパク は MALDI-TOF/MS 解析により,黄色ブドウ球菌のグローバル制御因子の一つである MgrA (Multiple gene regulator A) と同定された。さらに,Skip 非発現株において mgrA を相 同組換え法により欠損させたところ,Skip の発現が顕著に増大した。また,sarT, sarU及 び skip の発現の変化を比較したところ,mgrA欠損株ではsarT, sarU及び skip 発現量が 著しく上昇していることが分かった。続いて,6 塩基欠落株と 6 塩基保有株において,mgrA の発現量を比較したところ,6 塩基保有株のmgrAの発現量は 6 塩基欠落株よりも有意に高 いことが分かった。さらに,MgrA と SarT 及び SarU の発現の相互関係を調べるために,sarT またはsarU欠損株においてmgrAの発現量を比較した。その結果,どちらの欠損株におい ても,mgrAの発現量は有意に増加しており,SarT 及び SarU は MgrA の発現を抑制すること が示唆された。また,SarT と SarU の発現の相互関係を調べるために,sarT または sarU 欠損株においてsarUまたはsarTの発現量を比較した。その結果,一方の欠損株では他方 の発現量が有意に低下していた。このことから,SarT と SarU はその発現を相互に正に制 御することが示唆された。以上の結果から,MgrA, SarT 及び SarU は互いの発現を制御し 合う,複雑な制御ネットワークを構築しており,6 塩基保有株では,MgrA が Skip の発現制 御に関わっていることが強く示唆された。

以上の結果から,本論文は SSSS 由来株は,sarT – sarU 間の 6 塩基配列の欠落により, MgrA の結合性が低下し,結果として SarT や SarU の発現量が増大することで Skip の発現 が著しく亢進し,バイオフィルム高産生性,皮膚への強い接着性を獲得し,強い伝染性を 示すことを示唆した。よって審査委員会委員全員は,本論文が著者に博士(歯学)の学位 を授与するに十分な価値あるものと認めた。

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