哲学者が好きな哲学者
とは誰なのか?
横路 佳幸
(日本アリストテレス協会 名誉事務員) 哲学Dynamite!!(日本アリストテレス協会主催研究発表会) @2017年12月26日・27日 ※後日修正済懇親会中で、大盛り上がりしている(予定)
ところ、大変申し上げにくいのですが…
哲学者の好きな哲学者を発表します!!
(強烈なお呼びじゃない感)
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先日、アンケートフォーム上で、「哲学Dynamite!!」参加者のみなさま
に、次のような質問をしました
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我々世話人(というか横路)のわがままに付き合っていただき、
本当にありがとうございました
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ここで、みなさまのご回答結果を無記名で発表させていただきます
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でも、こんなご不満があるかもしれません
こんなことやる暇あったら研究やれや(正論)。
内輪ネタってほんと痛い(正論)。
つよい哲学者、よわい哲学者、そんなのひとのかって。ほんとうにつよい哲
学者ならすきな哲学者でかてるようがんばるべき
ゲロスベりしてるんですけど。なんでこんな茶番やってるんですか?
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茶番だと思われるかもしれませんが(いや実際、茶番ですが)
本発表の動機は最後に述べます
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でもその前に!実は、この手のアンケートやランキング(質的・量的調査)
は、著名な哲学者を対象に、すでに何度かなされている
•ただし、「好きな哲学者」、「重要な哲学者」、「自分と立場が近い哲学者」、
「尊敬する哲学者」の違いはある(けど笑顔で無視しようね!)
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我々の結果の前に、これまでどんなランキング結果が出ていたのかを見て
おきたい
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以下は、飲み食いしながら・他の人と喋りながら・
横路にツッコミながら等、ご自由なスタイルで
お聞きください!
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ちなみに…本発表会主催の日本アリストテレス協会とは次のような団体です
•哲学を研究する若手研究者を中心とした団体。ただし、哲学でも若手でも研究者
でなくてもメンバーになれる。入会方法は自己承認制。
•学会でも研究会でも読書会でもない。学会誌も会報もない。理念や憲章もない。
中心人物もいない。何もない。学会以下、同好会未満。
•時々思い出したら、研究発表会やその他イベントを催してほしいぜひ催したい。
•協会内の役職はすべて自称。 ただし、「終身」名誉会長はアリストテレス。
•本家イギリスのAristotelian Societyから訴訟を起こされた場合は、可及的速やか
に土下座する。
日本農林規格 日本中央競馬会 本家 日本航空 日本工業規格参考①
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調査対象:60数人の著名な哲学者
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M. Dummett, J. Knobe, J. McMahan, S. Neale, M. Nussbaum,
M. Sandel, R. Sorabjiなどのスーパースター
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方法:「あなたのお気に入りの哲学者は誰ですか」と直撃インタビュー
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何人かは「おらんで」とか「事前に言ってくれや」と不満
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内訳:政治哲学者が多めで、大陸哲学者が少なめ
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ということで、その回答結果をグラフにしてみました
ヒューム
(14票)
アリストテレス (6票) カント (6票) ウィトゲンシュタイン (5票) ミル (4票) ニーチェ (3票) Q:あなたの好きな哲学者は誰ですかぶっちぎりの1位
デイヴィッド・ヒューム(14)
投票者(抜粋) 分野 Beebee, H. 分析 Churchland, Pat. 分析 Rosen, G. 分析 Russell, P. 分析 Smith, B. 分析 Gopnik, A. 認知 Pickard, N. 認知 Kukathas, C. 政哲 Wolff, J. 政哲 Lewens, T. 科哲 Phillipson, N. 歴史 Voorhoeve, A. 倫理 Q:あなたの好きな哲学者は誰ですか同率2位
アリストテレス(6)
同率2位イマヌエル・カント(6)
投票者(抜粋) 分野 Fine, K. 分析 Kelly, S. 分析 Wolf, S. 分析 Freeland, C. 歴史 Carroll, N. 芸術 投票者(抜粋) 分野 Dworkin, H. 分析 Moore, A.W. 分析 O’Neill, O. 政治 Pogge, T. 科哲 Strawson, G. 歴史 Q:あなたの好きな哲学者は誰ですか4位:ウィトゲンシュタイン
(5)5位:ミル
(4; M. Nussbaum)6位:ニーチェ
(3; J. Knobe)7位:ホッブズ
(P. Pettit)〃 :デカルト
(T. Crane)〃 :ベンサム
(J. Mikhail)〃 :ヘーゲル
(M. Sandel)〃 :ルソー
(T. Todorov)8位:プラトン
(M. Lane)〃 :アーレント
(A. Phillips)〃 :パナイティオス
(R. Sorabji)〃 :シジウィック
(P. Singer)〃 :カルナップ
(D. Chalmers)〃 :フレーゲ
(M. Dummett)〃 :ラッセル
(S. Neale)〃 :パーフィット
(J. McMahan)〃 :D. ルイス
(F. Jackson)〃 :ラムジー
(D.H. Mellor) Q:あなたの好きな哲学者は誰ですか(括弧内は投票者、7位は2票、8位は1票のみ)参考②
•
調査対象:1972人
•世界中の有名大の職業哲学者
•この選定の時点でアングロサクソン系・分析哲学寄りになるかもと、
この論文の著者たち(D. BourgetとD. Chalmers)は認めている
•
方法:「あなたが自身の仕事をX主義だと自認するとすれば、
Xに当てはまる哲学者は誰ですか」とオンライン上で尋ねる
•ただし、Xで選べるのは、故人の哲学者のみ
•実際の回答者数は931人(回答率は47.2%)
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ということで、その回答結果をグラフにしてみました
売れないギタリストと有能プロデューサー感Q:あなたが自身の仕事をX主義だと自認するとすれば、Xに当てはまる哲学者は誰ですか 0 20 40 60 80 100 120 140 160 ヒューム アリストテレス カント ウィトゲンシュタイン フレーゲ ルイス ラッセル クワイン デイヴィドソン カルナップ ミル ロールズ プラトン ロック ムア スピノザ ニーチェ デカルト ライプニッツ ヘーゲル 獲得票数
1位:ヒューム(139)
2位:アリストテレス(118)
3位:カント(113)
4位:ウィトゲンシュタイン(73)
5位:フレーゲ(70)
6位:D. ルイス(69)
7位:ラッセル(61)
〃 :クワイン(61)
9位:デイヴィッドソン(49)
10位:カルナップ(45)
11位:ミル(42)
〃
:ロールズ(42)
13位:プラトン(37)
14位:ロック(35)
15位:ムア(27)
16位:スピノザ(22)
17位:ニーチェ(21)
18位:デカルト(19)
19位:ライプニッツ(18)
20位:ヘーゲル(16)
Q:あなたが自身の仕事をX主義だと自認するとすれば、Xに当てはまる哲学者は誰ですか参考③
•
調査対象:600票
•職業哲学者だけでなく、一般の哲学ファン(たぶん)も含む
•
方法:「過去200年で最も重要だと思う哲学者は誰ですか」と、
シカゴ大教授の哲学者B. Leiterのブログ上で投票を募る
•さっきのBourgetとChalmersの論文で、哲学者「X」
の選定の参考にされており、そこそこ信頼できる(はず)
•コメント欄にJ. CogburnやD. Papineauが出没
•
ということで、その回答結果を並べてみました
ニーチェ研究で有名だが、PGRやC. Jenkinsとの もめ事の方がさらに有名なMr.お騒がせマン1位:ウィトゲンシュタイン
2位:フレーゲ
3位:ラッセル
4位:ミル
5位:クワイン
6位:ヘーゲル
7位:クリプキ
8位:ニーチェ★
9位:マルクス★
10位:キルケゴール★
11位:カルナップ
12位:ロールズ
13位:D. ルイス
14位:ムア
15位:デイヴィッドソン
16位:ハイデガー★
17位:フッサール★
18位:パトナム
19位:ジェイムズ
20位:パース
Q:過去200年で最も重要だと思う哲学者は誰ですか (いわゆる大陸哲学者には★)たぶんわかったこと
•
哲学者が好きな哲学者の四天王をあえて挙げるとすれば、ほぼ間違いなく、
ヒューム・アリストテレス・カント・ウィトゲンシュタイン
になる
つよい哲学者よわい哲学者そんなのひとのかって ほんとうにつよい哲学者ならすきな哲学者でかてるよう がんばるべき(再) •特に、ヒュームの無双ぶりはマジやばい。今すぐ日本ヒューム協会に改名するべき
•日本でも、一位はヒュームになるのか気になる(個人的にはカントになる予感)
•
プラトン・デカルト・ロック・ヘーゲルは、思ったより伸びない
•哲学四天王の割を食っているかも
•意外と、ミルが多分野(政哲・分析・倫理)で大健闘
•一世を風靡したカルナップとクワインの人気も一応健在
•デイヴィドソンの現在は、過去のブームに鑑みると寂しいか
•近現代では、ニーチェ・フレーゲ・ラッセルの評価は安定
•ルイスとクリプキは今後安定するかが試される
•ライルやオースティン、ストローソン等のオックスブリッジ派は失踪
•他方、中世の哲学者(トマスなど)はまったく出てこず、
現象学やフランス思想を含む大陸哲学者もあんまり出てこない
•逆に、フッサールとハイデガーはすでに地位を確立したとも
•総括:実感として哲学者や主義の流行り廃りは一応あるはずだが、
不動の人気者が強すぎるせいでランキング等では保守的になる傾向が顕著
•いずれにせよ、各分野の研究者人口や統計バイアスが関係してくるので、
以上は主観だし参考程度に(という逃げの一手を忘れない)
「哲学Dynamite!!」参加者の場合
Q:あなたが尊敬する哲学者は誰ですか 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 アリストテレス プラトン クワイン XX ソクラテス トマス 自然 ウィギンズ フレーゲ ルイス ケイン ド・クインシー ヒューム ダーウィン 吉川幸次郎 クリプキ オーエン XX ヴェーユ シンガー ジェイムズ スコトゥス ソフィスト ローティ 獲得票数
•
1位 アリストテレス(9)
• プラトンについての最も優れた(そして最も嫌味な)脚注を書いてくれたから • 彼がいなかったら日本アリストテレス協会は存在しなかったから •2位 プラトン(8)
• いろいろな問題とそこへの接近法を嫌らしい仕方で提起してくれたから • ほとんど無謬だと思っています • アリストテレスの師だから Q:あなたが尊敬する哲学者は誰ですか•
栄えある1位はなんとアリストテレスという結果に(JAS万歳!)
•
が、上記の理由を読むと、プラトンのおまけ感とJASへの忖度による票獲得
の疑惑があるので、実質的な1位はプラトンかも(!?)
•
そして、アリストテレスとプラトン以外はすべて単独者票です
(…え??)
• クワイン • 最初全く分からくても何年か哲学を勉強して読み直したとき脳内麻薬出まくるタイプの人の中で、一番好きだから • (人間を含めた)自然 • 「(我々の理論・理論計算は間違いばかりであるのに)なぜ自然は間違えないのだろう」 • ウィギンズ • 何でも屋で、伝統と革新を重んじる、お手本のようなひと • フレーゲ • 算術の基礎を読んで以来のファン • XX • ソクラテス • トマス Q:あなたが尊敬する哲学者は誰ですか(単独3票)
• D. ルイス • 様相実在論かっこいい • トマス・ド・クインシー • とにかく繊細で優しい。自らを回顧して、自分の人生は全体に亘って哲学者のそれであり、生まれついての知的被造物と言って も別に真実や慎みに反しないだろう、と語った。自伝作品でアヘンを止める、止めたと何度も宣言したが、死ぬまで止めなかった • 吉川幸次郎(中国文学者で元京都大学教授) • 時代に流されず中国における伝統的な研究手法を墨守しながらも 膨大な新しい知見を見いだした • ヒューム • 才能とセンスがすごい。哲学が死なない限り「ヒューミアン」も絶対に死なない • クリプキ • 大物哲学者に忖度しないところ • ダーウィン • ケイン Q:あなたが尊敬する哲学者は誰ですか(単独2票)
• 古代ギリシャのソフィストたち • こういった方々の胡散臭さがソクラテス等を哲学に駆り立てる原動力の一つになっていたのではないか 舞台では英雄より悪役の方が演者の力量が問われるものである • ピーター・シンガー • 研究者としてよりも人間として、その行動力と発信力は素直に尊敬する(とともに自身に恥を覚える) • シモーヌ・ヴェーユ • こういう、世界にはまりきれず死んでいってしまう人の言葉が、結局は一番心を救ってくれます • G.E.L. オーエン • プラトン・アリストテレスについて精密かつ面白い注釈の付け方の模範を示してくれたから • ローティ • 哲学等に対する素直な言動 • XX • XX • スコトゥス • ジェイムズ Q:あなたが尊敬する哲学者は誰ですか(単独1票)
「あなたが哲学やご自身の研究内容に
興味を持ったきっかけは何ですか」
• XX • XX
和製哲学四天王が爆誕? (通称・哲学の4N)
•
この数年で、一時代を築いた重要な哲学者が次々と亡くなっていること
が、本発表の動機です
•
特に今年2017年は、偉大な研究者を失いすぎたように思います
•
いずれ「哲学者が好きな哲学者」のリストに名を連ねるはずの彼らに、
• Marcus, R.B. (1921-2012) • Smart, J.J.C. (1920-2012) • Dretske, F. (1932-2013) • Dworkin, R. (1931-2013) • Geach, P.T. (1916-2013) • Allaire, E.B. (1930-2013) • Danto, A. (1924-2013) • Lowe, E.J. (1950-2014) • Suppes, P. (1922-2014) • Brueckner, A. (1953-2014) • Higginbotham, J. (1941-2014) • Norton, D.F. (1937-2014) • Armstrong, D. (1926-2014) • Menzies, P. (1953-2015) • Donnellan, K. (1931-2015) • Hintikka, J. (1929-2015) • Putnam, H. (1926-2016) • White, M. (1917-2016) • 神崎繁 (1952-2016) • Hesse, M. (1924-2016) • Parfit, D. (1942-2017) • Todorov, T. (1939-2017) • 竹内外史(1926-2017) • Apel, K.-O. (1922-2017) • Smullyan, R. (1919-2017) • Dreyfus, H. (1929-2017) • O’Neill, E. (1953-2017) • Fara, D.G. (1969-2017) • Parsons, J. (1973-2017) • Fodor, J. (1935-2017) • Hale, B. (1945-2017) • Baker, L.R. (1944-2017) (敬称略) R.I.P.
以上、ご清聴ありがとうございました
(最後しんみりムードですが…)
参考文献
• Edmonds, D. and Warburton, N. (2012), Philosophy Bites Back,
Oxford University Press.(邦訳があるが、ひどい訳なのでおすすめできない)
• Bourget, D. and Chalmers, D. J. (2014), “What Do Philosophers
Believe?”, Philosophical Studies 170, 465-500.
• Leiter Reports: A Philosophy Blog, “So who *is* the most
important philosopher of the past 200 years?”, March 2009,
http://leiterreports.typepad.com/blog/2009/03/so-who-is-the-most-important-philosopher-of-the-past-200-years.html
(他にも、”The 20 “Most Important” Philosophers of All Time”など、た くさんのランキング記事がネット上にあるけど、僕はもうしんどいです)
(なお、Leiterがなかなかヤベー人間ということは、次の記事からわかる)
https://www.ubyssey.ca/news/two-popular-ubc-professors- threatened-with-a-lawsuit-over-a-blog-post-on-professional-goals-435/