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Sprague et al 図 2 茨城県牛久市牛久沼周辺の 迅速測図. 拡大すると, 樹種や土地利用が記載されている NPO NGO Web- GIS

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GIS−理論と応用

Theory and Applications of GIS, 2009, Vol. 17, No.1, pp.83-92

【データ論文】

FOSS4G を用いた歴史的農業環境閲覧システムの構築

岩崎亘典・デイビッド S. スプレイグ・小柳知代・古橋大地・山本勝利

Development of the Historical Agro-Environment Browsing System constructed by FOSS4G

Nobusuke IWASAKI, David S. SPRAGUE, Tomoyo KOYANAGI, Taichi FURUHASHI and Shori YAMAMOTO

Abstract: The Rapid Survey Maps are the first modern cartographical map series of Japan.

These maps were surveyed in early Meiji Era. Especially, in the map series of the Kanto Plain, land use is shown by color. These maps provide valuable information about traditional landscapes, hazard assessment, biodiversity conservation, and agricultural land use in early modern Japan. We developed a Web-GIS System to publicize the Rapid Survey Maps of the Kanto Plain using FOSS4G. We named this system the Historical Agro-Environment Browsing System (HABS).

First, we mosaiced and georeferenced 900 maps of the Rapid Survey Maps. The HABS provides two ways to browse map data. One is a web-based interface, the other is a KMZ file for Google Earth. In the web-based interface, we use GeoServer as the GIS server and OpenLayers as the client. We also use GeoWebCache to improve performance. We use GDAL2Tiles to generate tile files and the KMZ file for Google Earth.

Keywords: 迅 速 測 図(rapid survey map),FOSS4G(Free Open Source Software for Geospatial),

Web-GIS 1.はじめに  迅速測図とは,三角点による測量網が出来る前の 簡易的な測量法の名称であるとともに,それにより 作製された地図の総称でもある(財団法人日本地図 センター,2003).作製年代は明治10∼30年代にわ たり,作製範囲は,断片的ながらも北海道の岩見沢 周辺から,鹿児島の鹿児島市周辺まで,全国におよ ぶ(井口,2001).  このうち「第一軍管地方二万分一迅速測図」(以 下,迅速測図)は,関東平野と三浦,房総の両半島を 測量範囲(図1)とし明治13年から19年の間に作製 されたものである.この迅速測図はその後日本全国 岩崎:〒305-8604 茨城県つくば市観音台3-1-3 独立行政法人 農業環境技術研究所

National Institute for Agro-Environmental Sciences 3-1-3 Kannondai, Tsukuba, Ibaraki 305-8604, JAPAN. TEL:029-838-8226

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を対象として整備される五万分の一地形図より大 縮尺であること,土地利用毎に彩色されており判読 が容易なこと,さらに森林などには「松」,「椚」の ように樹種が記載されている場合もあること(図2) が特徴としてあげられる.また,図2にも見られる ように,図郭外部には当時の景観や構造物などの視 図が描かれていることがあり,植生や土地利用を復 元するのに重要な情報源となる.一方で小椋(1996) で指摘されているように,土地利用や植生の区分が 十分統一されていなかったり,Sprague et al. (2007) が指摘しているように,図葉内に測量誤差が認めら れる場合もある.しかし,これらの点を考慮して使 用すれば,近代化以前の関東平野の土地利用や景観 を復元する貴重な資料として利用可能である.これ らの図群は,1991年に「明治前期手書彩色關東實測 圖:第一軍管地方二万分一迅速測圖原圖覆刻版」と して日本地図センターより復刻され(迅速測図原図 復刻版編集委員会,1991),様々な研究に用いられて いる(小椋,1996;スプレイグほか,2000;別所ほか, 2001;白井,2002;岩崎・スプレイグ,2005).しか しこれらの研究は,土地利用の復元が半定量的であ ることや,対象地域が限定的であることから,明治 初期の関東平野の景観構造や土地利用特性の全体像 が明らかになったとは言い難く,今後も迅速測図を 活用した研究の進展が期待される.  さらに迅速測図は,学術的な分野以外での活用も 期待される.例えば近年,農村周辺の里地里山の利 用の変化と,生物多様性の減少が指摘され(環境省, 2007),NPO や NGO 等による里地里山の保護・管 理活動が行われている.これらの活動においても, 里地里山の源景観の復元や変遷を評価するための資 料として活用が期待できる.また長岡(1991)は, 現在の地形図との比較により,防災等にも活用でき ると指摘している.  しかし実際には,迅速測図の利用が広く進んでい るとは言い難い.これは,「覆刻版」の発行部数が 160部と極めて少数かつ高価であり,入手が困難で あることがあげられる.また,現在は関東平野の西 半分について再度復刻されているが,千葉県と茨城 県については大半が復刻対象外であり,利用できる 範囲が限られている.さらに,正規の測量成果に基 づいていないため地理座標が与えられておらず,現 在の地理空間情報との比較が困難なことも一因と いえる.特に一般の利用を促進するためには,Web-GISなどを活用して,利用や閲覧が容易な形で迅速 測図を公開することが必要である.  加えて,迅速測図を含めた歴史的地図を電子媒体 として公開することは,紙媒体の原版が経時変化に より劣化が進む中で,デジタル・アーカイブとして の機能も期待されるだろう.  さて近年,地理空間情報を巡る社会的情勢は大き く変わりつつある.平成19年5月に地理空間情報活 用推進基本法が制定され,平成20年4月には地理空 間情報活用推進基本計画(国土地理院,2008)が閣 議決定された.これらは,地理空間情報の整備と公 開が,社会的にますます求められていることを示し ている.また,「Google Maps」等の公開により,イ ンターネット上での地理情報の活用や公開も活発に なっている. 図 2 茨城県牛久市牛久沼周辺の「迅速測図」.拡大する と,樹種や土地利用が記載されている. (国土地理院所蔵,第一軍管地方二万分一迅速測圖原圖よ り作製)

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 この様な状況を受けて,企業や公的な主体だけ でなく,個人や NPO,NGO 等の様々な主体による

Web-GISを利用した地理空間情報の提供も始まりつ

つある.例えば国土地理院の電子国土を利用した情 報の公開の試み1)や,民間企業である Google でも

「Google Maps」や「Google Earth」の NPO による利 用を促進している2)  一方で,この様な外部のサービスを利用する場 合,個人情報や犯罪発生等のセキュリティーに関わ る情報については,情報管理の観点から利用が限ら れるだろう.さらに,サービス自体の継続性や,メ ンテナンスによるシステムの停止の可能性等によ り,継続的かつ確実な情報発信が保障されない点も 問題である.しかしこれまで,独自に Web-GIS シス テムを構築することは,ソフトウェア的にもハード ウェア的にも多大な投資と高度な技術が必要とされ 困難であった.

 ここで,FOSS4G(Free Open Source Software for Geospatial)と呼ばれるオープンソースの GIS ソフ トウェアを活用することは,有効な手段であると考 えられる.FOSS4G の特徴としては,ライセンス料 がかからないので導入時のコストを低く抑えられる こと,ソースコードが公開されておりプログラムの 改良が可能なこと,改良したプログラムの再配布が 可能なことが挙げられる.これらのソフトウェアは, 国際連合食糧農業機関(FAO)による GeoNetwork の開発3)と利用4)や,国連環境計画(UNEP)の GEO

Data Portalにおける MapServer の採用5)等,国際

機関による利用も進んでいる.国内では特定非営利 活動法人 BigMap が開発している「マップ de コミュ ニケーション」6)や,(社)全国地質調査業協会連合 会,(NPO)地質情報整備・活用機構,日本情報地質 学会の協同開発事業で開発された「Web-GIS 版電子 納品統合管理システム」7)の例があるが,十分に認 知が得られているとは言い難い.そのため,より多 くの主体による地理空間情報の発信が可能になるた めには,日本国内における FOSS4G の有効性の検 証や活用事例の蓄積が必要になる.  そこで本研究では,FOSS4G を用いた Web-GIS システムである「歴史的農業環境閲覧システム(略 称:HABS)」を構築することにより,迅速測図を一 般に利用しやすい形で公開するとともに,システム の構築にあたっての問題点や FOSS4G の有効性を 検証する事を目的とする. 2.歴史的農業環境閲覧システムの構築  Web-GIS システムの構築にあたっては,目的,用 途,想定するユーザーによってシステムの設計が異 なる.本研究では,特殊な技能を持たず一般的なイ ンターネット閲覧程度の技能を持ったユーザーによ る利用を想定した.そのため,Web ブラウザーを使 用し,ユーザーが別途ソフトウェアを導入しなくて も迅速測図を利用,閲覧できることを必要要件とし た.  また公開にあたっては,迅速測図を単体ではな く,現在の地理空間情報との比較が可能な方が利便 性が高いと考えられる.そこで,現在と過去の位置 を比べるために道路と水涯線を,土地利用を比較す るために国土数値情報の1997年の土地利用1/10細 分メッシュをシステム上で閲覧可能とすることとし た.一方で,1/10細分メッシュは一辺が約100m で あり,細かい土地利用の比較は困難である.そこで, 外部サービスではあるが,Google Earth 上での迅速 測図の閲覧も可能とすることにした.  以下に,本システムで使用したデータの作製手順 と,システムの構築について述べる. 2.1.迅速測図データの作製  迅速測図は国土地理院の測量成果にあたるため, 利用には国土地理院に対する利用申請8)が必要であ る.本システムでは,「測量成果の複製承認申請」 を行い,使用許可を得た.  デジタルデータの作製にあたっては,まず迅速測 図の全図幅を150dpi でスキャンした.次にこの画 像に地理座標を与え幾何補正する必要があるが,先 にも指摘したように迅速測図には位置情報が与え られていない.Sprague et al. (2007)では二段階の 幾何補正手法を提案しているが,これはベクター・ データについての手法であり,今回は適用できな い.さらに,都市化や区画整理などにより土地利用

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や道路区画などが大きく変化している場合,幾何補 正を行うための基準点を見つけることが困難であ る.そこで,本研究では以下の手順で幾何補正を 行った.  関東地方の迅速測図は,皇居の富士見櫓を原点と して,一図葉の測地面積が東西4km,南北5km であ る(迅速測図原図復刻版編集委員会,1991).そこで まず,各図葉の四隅に測量原点からの距離を与えて 幾何補正を行った.なお一部図葉の測量範囲は,隣 接する図幅と重複する部分が100m とられている場 合がある(図 3).その場合は 4km×5km の格子を しめす内側の赤線と,100m の重複部を示す外側の 黒線のうち,明瞭な方を用いて幾何補正を行った. また,通常の測地面積に比べ,それぞれ南北に二分 割,東西に二分割,東西南北に四分割されている図 葉もある.これらの場合,分割にあわせて測量原点 からの距離を算出し,幾何補正を行った.図郭外部 については,幾何補正を行う際に削除した.なお, 本システムでは図郭外部の視図を扱うことができな かったが,公開方法を検討する必要があるだろう.  次に,幾何補正済みの図幅を,測量原点からの距 離に基づき一枚の画像に合成した.この合成した画 像について,数値地図25000(地図画像)のデータを 参照として GCP を与え,JGD2000測地系,UTM54 帯に幾何補正した.これらの作業を終了した時点で のデータ容量は GeoTiff 形式で約9.6GB であった. 2.2.その他の地理空間情報の作製  道路および水涯線については,株式会社オーク ニーが販売している Orkney GIS Datapack 2007 を 使用した.このデータは都道府県単位で1/2.5万地 形図相当の道路,水涯線,鉄道等のデータが shp 形 式で記録されている.また,国土地理院より一括し て使用許諾を取っているので,Web-GIS 上での公開 が可能である.このデータのうち島嶼部を除く関東 地方一都六県の道路と水涯線について,それぞれ一 つのファイルに結合して使用した.なお道路につい ては,幅員が6m 以上のものと実幅道路を使用した.  土地利用図は,国土数値情報ダウンロードサービ ス9)からダウンロードした1997年の土地利用1/10 細分メッシュを使用して,道路・水涯線と同様に島 嶼部を除いた関東一都六県について土地利用図を作 製した.これらのデータは JGD2000測地系,経緯 度座標系で作製した. 2.3.Web-GIS サーバーの構築  サーバーの構成概要を表1に示す.サーバーには OSとして CentOS10),Web サーバーとして Apache

HTTP Server11),Java 開発環境として JDK612),Java

実行環境に Apache Tomcat13)をインストールした.  さて,Web-GIS システムは二つの部分から構成 される.一つは,データを蓄積し,リクエストに 応じてデータを送信する機能を持つ GIS サーバー と,送信されたデータを利用,表示するためのクラ イアントである.本研究では,GIS サーバーとして GeoServer14),クライアントとして OpenLayers15) 使用した.

 GeoServer は Java 言 語 に よ り 作 製 さ れ た GIS サーバーであり,OS に依存せず利用が可能であ 図 3 図葉の重複部の例 赤線が 4 km×5 km の外郭の線, その外側が重複部になる. (国土地理院所蔵,第一軍管地方二万分一迅速測圖原圖よ り作製) ハードウェア CPU Pentium4 631 (3.0GHz) メモリー 1GB 内蔵HDD 73GB ソフトウェア OS CentOS (Ver. 5.1)

httpサーバー Apache HTTP Server (Ver. 2.2.3-11) Java開発環境 JDK6 (Ver. 1.6.0_04)

Java実行環境 Apache Tomcat (Ver. 6.0.16) Web-GISサーバー GeoServer (Ver. 1.6)

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る.GIS のデータベース・サーバーとしての機能 と,データの送信サーバーとしての機能を持ってお り,GeoTiff や Shape 等の一般的な GIS ソフトで入 出力に対応しているファイル形式を利用できる.ま た,地理空間フォーマットの国際標準化団体である OGC (Open Geospatial Consortium)により承認さ れた Web-GIS 用標準インターフェイスである WMS (Web Map Service),WFS (Web Feature Service),

WCS (Web Coverage Service)に 対 応 し て い る. WMSについては,Version 1.1.1まで対応しており, Google Earthや ArcGIS,オープンソースのデスク トップ GIS である uDig や Quantum GIS 等からも GeoServer上のデータを表示できる.

 OpenLayers は JavaScript で作 製された Web-GIS クライアントで,Web ブラウザー上で動作する. Ajax技術を利用して縮尺や表示範囲を動的に変更 でき,WMS,WFS 等のサービスを利用できる.さ らに Google Maps 等のインターネット地図サービ スをレイヤーとして表示することも可能である.本 システムでは,WMS 1.1.1を利用してデータのやり 取りを行うこととした.  さて,WMS ではクライアントからサーバーに対 して表示するデータ範囲について要求が送信され, それに応じてサーバーが表示用の PNG 形式等の画 像ファイルを動的に生成し,その画像がクライアン トに表示される.そのために,大容量データを扱う 場合やデータ生成の要求が多い場合,サーバーの反 応速度が低下する事が問題点としてあげられる.そ こで本システムでは,生成した画像ファイルを静的 に保持し,クライアントからの要求に対して画像を 送信する機能を持った GeoWebCache16)を使用する こととした.   ま た,GeoServer は 登 録 さ れ て い る デ ー タ を Google Earth上で表示するための KML ファイル を生成する機能を持っているが,これもリクエスト に応じて画像ファイルを生成するため,サーバーに 負荷がかかることになる.そこで,GDAL2Tiles17) を 使 用 し て Google Earth 上 で 表 示 す る た め の ファイルを生成し,これを公開することとした. GDAL2Tilesは Python で 作 製 さ れ た ス ク リ プ ト であり,地理空間データ変換ライブラリーである GDAL(Geospatial Data Abstraction Library)18)を使

用して,Google Earth,Google Maps 等の表示用ファ イルを作製できる.  なお,GeoWebCache や GDAL2Tiles のように生 成したファイルを静的に保持する場合,サーバーに かかる負荷は低減するが,表示レイヤーの凡例等を 動的に変更することが困難である.また,ファイル を保持するためのディスク容量が必要になるので, システムの構築や運用にあたっては,これらの点に 留意する必要がある.  導入したアプリケーション間のデータの流れを図 4に示す.Google Earth の場合,HTTP サーバーで ある Apache にリクエストを出し,直接データを取 図 4 システムにおけるデータ処理の流れ WMS対応GIS OpenLayers Google Earth Apache Google Earth 表示用ファイル GeoWebCache GeoServer GISデータ ① データを要求 ② データを要求 ③ データを送信 ④ データを送信 ①’ データを要求 ②’ データを要求 ③’ データ生成を要求 ④’ 表示用データ を生成 ① ’’データを要求 ② ’’データ生成を要求 ③’’表示用データ を生成 ⑤’データを送信 ⑥’データを送信 ⑦’データを送信 ④’’データを送信 ⑤’’データを送信

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得する.Web ブラウザーから OpenLayers を利用す る場合,Apache を経由して GeoWebCache にデータ を要求し,ファイルがあった場合にはそれが送信さ れる.ファイルがなかった場合には GeoWebCache が GeoServer に表示用画像の生成をリクエストし, そのリクエストに基づき,表示用ファイルが生成 される.このファイルが GeoWebCache に保持さ れ,OpenLayers に表示されるとともに,同じリク エストがあった場合にも表示に用いられる.WMS に対応した GIS ソフトウェアを利用する場合には, Apacheを経由して GeoServer に表示用ファイルが リクエストされ,それに応じたファイルが生成,表 示されることになる. 2.4.公開用データの作製とサーバーへの登録  作製した迅速測図等の GIS データはそのままで も GeoServer に登録可能であるが,GeoWebCache で使用するには座標系変換が必要である.また,巨 大なファイルは運用上望ましいものではない.そ こで,サーバーに登録するにあたって以下の処理を 行った.   ま ず, 迅 速 測 図 の デ ー タ を GeoWebCache や GDAL2Tilesで利用可能な WGS84測地系の経緯度 座標系にリサンプルした.このファイルに対して GDAL2Tilesを使用して Google Earth 表示用ファ イルを作製し,サーバー上にアップロードした.次 に,リサンプル後のデータを東西約23km,南北約

30kmに分割した.分割後の一枚の画像データサイ

ズはおおよそ275MB になった.分割後のファイル を GeoServer の ImageMosaic plugin を利用して一 枚の画像データとして登録した.なお,リサンプル 前の JGD2000 測地系,UTM54 座標系のデータも, WMS経由で GIS ソフトから利用することを想定 し,同様に分割後 ImageMosaic plugin を使用して GeoServerに登録した.また,国土数値情報から作 製した土地利用図と,水涯線および道路のデータも WGS84測地系に変換して GeoServer に登録した.  本システムではこれらのデータを OpenLayers を 用いて Web ブラウザー上で表示するが,本来はレ イヤー毎に表示の有無を切り替えられることが望ま しい.その際,透過 PNG 画像を用いて道路などの ベクター・データを出力するのが一般的である.し かし,現在最も利用されている Web ブラウザーで ある Internet Explorer バージョン6では,透過 PNG 画像を正しく処理できない19)  そこで,GeoServer 上で迅速測図や土地利用図と 水涯線・道路を重ね合わせた統合レイヤーを作製し, これをブラウザー上の表示に用いることとした.こ の場合,道路や水涯線の表示の有無を切り替えるこ とはできないが,Internet Explorer バージョン6で も重ね合わせて表示することができる.この統合レ イヤーを GeoWebCache に登録し,OpenLayers での 表示に用いることとした.以上の一連のデータ処理 および登録の流れを図5に示した. 合成画像をJGD2000, UTM54帯に幾何補正 WGS84,緯度経度座標系 に変換 GeoServerに データを登録 ファイルを分割 国土数値情報より 土地利用図を作製 モザイクプラグインを 使用 GDAL2Tilesを使用 してGoogle Earth用 データを作製 富士見櫓からの距離に基づき 迅速測図を幾何補正 図郭外を切り取り 一枚に合成 島嶼部を除く一都六県の水涯線 データを抽出 島嶼部を除く一都六県の 幅員6m以上および実幅の 道路データを抽出 Webサーバーに 登録 一つのファイルに結合 一つのファイルに結合 WGS84,緯度 経度座標系に 変換 迅速測図と道路・水涯 線の結合レイヤーを GeoWebCacheに登録 図 5 データの作製と登録までの処理

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3.歴史的農業環境閲覧システムの利用法  以上のシステムは2008年4月21日より「歴史的農 業環境閲覧システム」として一般に公開した.  Web ブラウザーで利用する場合は,「http://habs. dc.affrc.go.jp」にアクセスすると,図6に示すトップ ページが表示される.この画面で,中段左の地図上 の地名をクリックするか,中段右の地名をクリック すると,選択した地点の周辺が拡大表示される(図 7).地図の表示範囲や縮尺の変更は,左上の矢印や スケールバーを使うか,ドラックやマウスのホイー ルを使用する.また,地図が表示されている枠の右 上の「+」記号をクリックすると,迅速測図を表示 するか,1997年の土地利用図を表示するか選択でき る.迅速測図や土地利用図の凡例については,「歴 史的農業環境閲覧システム FAQ」にて確認できる.  Google Earth で利用する場合,トップページもし くは地図表示ページで Google Earth 表示用の KMZ ファイルをダウンロードし,このファイルを開くと Google Earth上に迅速測図が表示される.Google

Earthでは図8に示すように道路等の情報と重ね合 わせて表示ができるとともに,レイヤーの透過度を 変更することもできる.そのため,高解像度衛星画 像が整備されている地域では,より詳細に土地利用 の比較が可能である.  WMS 対応の GIS ソフトウェアからの利用につい ては,サーバーへの負荷やユーザーが限られている ことから,問い合わせがあった場合に利用方法を連 絡することとした.  本システムの使用や画像の二次利用については制 限を設けていない.しかし,例えば Web-GIS のレイ ヤーとして使用する場合などは,国土地理院への申 請8)が別途必要である。 4.考察 4.1.迅速測図の幾何補正精度  今回作製したデータは,迅速測図の全範囲を公開 するために,簡便に,かつ広範囲を一括して幾何補 正する手法を用いた.そのため,Sprague et al (2007) のように図葉単位で幾何補正した場合に比べ,誤差 が大きいと考えられる. 図 6 歴史的農業環境閲覧システムのトップページ 図 7 Web ブラウザーによる表示例 図 8 GoogleEarth 上での表示例

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 また,一枚の画像に合成する際に図葉間でずれが みられる場合があった.図9に埼玉県所沢市中富地 区周辺20)の例を示す.ここは四枚の図葉の境界で あるが,東西の図葉間では大きなずれが見られない が,南北の図葉間にはずれが認められた.同様のず れは他にも認められる.本手法では,各図葉の測量 範囲が測量原点を中心にした南北5km,東西4km の格子状であると仮定している.しかし,この様な ずれは,測量範囲が格子に一致しない場合があるこ とを示している.そのため,格子と図葉のずれがど こで認められるのかを確認し,位置精度を向上させ ることが望まれる.  しかし,土地利用や景観変化の概要の把握などの 用途であれば,十分に活用できるだろう.さらに, 迅速測図の全域について現在の地理空間情報と比較 が可能となったことは,迅速測図の利用の促進にあ たって重要である.本システムは,これらの点を考 慮すれば,明治時代初期の環境を復元するための有 効な資料として利用できると考えられる. 4.2.システムの利用傾向  本システムでは,Web ブラウザーを利用して閲 覧する方法と,Google Earth を利用して閲覧する方 法を用意した.一般公開した 2008 年 4 月 21 日から 2008年7月20日までの三ヶ月間の利用は,Web ブラ ウザーによる利用が約11400回,Google Earth での 利用が約3900回であり,Web ブラウザーでの利用 者の方が多かった.このことは,特定のアプリケー ションに依存せず,一般に用いられる Web ブラウ ザーでの閲覧が可能な方が,利用が促進されること を示している.  次に,利用されたブラウザーの比率は,Internet Explorerが 約 8200,Firefox が 約 2100, 残 り の 約 1100が そ の 他 の ブ ラ ウ ザ ー で あ っ た.Internet Explorerのバージョンは,約 5100 がバージョン 6, 約 2900 がバージョン 7,残りの約 200 がその他の バージョンであった.このように PNG の透過表示 が出来ない Internet Explorer バージョン6の利用が 全体のほぼ半数を占めていた.データとしての迅 速測図を利用するには,道路や水涯線と迅速測図を 別レイヤーとし Web ブラウザー上で表示の有無を 切り替えられる方が望ましい.しかし,現時点では 透過 PNG の表示が可能な Web ブラウザーの普及 が進んでいないため,この機能を使用すると利用者 の利便性が低下するため,この機能は採用しなかっ た.今後,Web ブラウザーの利用の変化を見て,レ イヤーの表示切り替えを可能にする予定である. 4.3.FOSS4Gを用いたWeb-GISシステムの有効性  Web-GIS システムを構築・運用する際に最初に 問題となるのは,導入時におけるハードウェアとソ フトウェアのコストであろう.本研究で構築したシ ステムのハードウェアは,農林水産研究情報総合セ ンターのバーチャルラボシステムにより提供頂いた サーバーを利用しているが,そのスペックは一般的 な PC と同程度のものであり,ワークステーション のような高価なハードウェアではない.また,サー バーに導入した OS やアプリケーションはオープン ソースのものであり,ソフトウェアの導入にはコス トはかからなかった.つまり同様のシステムを構築 する場合,ハードウェアを新たに調達するのであれ ばそのコストが必要となるが,それ以外にはコスト はかからず安価にシステムの構築が可能である.こ のことは,Web-GIS システムを構築するにあたって, 重要な利点の一つである.  次に,システムの構築にあたって専門的な技能や 図 9 図葉間に認められるずれの例  (埼玉県所沢市中富地区付近)

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知識がどの程度必要になるかも重要である.本シス テムの構築にあたっては,Cent OS,JDK6,Apache HTTP Server,Apache Tomcat のインストールと設 定は農林水産研究情報総合センターの技術協力を受 け,GeoServer 等のインストールと設定,データの 作製やサーバーへの登録,Web 表示用インターフェ イスの作製は著者らが行った.これらの技能を客観 的に評価するのは困難であるが,少なくとも簡易な 作業とは言い難いだろう.そのため,設定済みのソ フトウェアやシステムの利用やインストールができ る LiveDVD を利用して,より容易に Web-GIS シス テムの構築を可能とすることが必要である.また, 本システムは Windows 等の他の OS でも構築可能 なので,一般に利用が進んでいる OS での運用も選 択肢の一つだろう.  さらに,本システムでは10GB 近くの大容量のラ スター・データを公開した.WMS を用いてデータ を提供しているため,サーバーへの負荷が大きくレ スポンスの低下が懸念されたが,GeoWebCache 等 を活用することにより,Web ブラウザーや Google Earthでの閲覧では十分な速度を確保でき,安定し て運用されている.  このようにFOSS4Gを用いたWeb-GISシステムは, 構築にあたって一定の技術が必要になるものの,地 理空間情報の発信にあたって有効な手段である.  ただし,インストールや設定等の技術的側面以外 にも,改善が期待される点もある.例えば,WMS 経由でデスクトップ GIS へデータを提供する場合, 現状ではサーバーへの負荷やレスポンスが遅いなど の問題点がある.一方で,FOSS4G をはじめとする オープンソース・ソフトウェアは,有志により改良 が進むことが特徴であり,今後,GIS での利用も改 善されることが期待される.  また本システムでは,Google Earth での表示を可 能にしたことにより,独自の基礎的地図を用意しな くても土地利用の比較が容易に行えるようになっ た.この様なシステムを構築する場合,基礎的地図 の整備にもコストがかかるので,そこを削減するに は有効な手段だといえる.ただし,Google による サービスの継続性や,Google Earth 画像の位置精度 が保証されていない点に注意が必要である.その ため,現在整備が進んでいる基盤地図情報や,環境 省により公開されている自然環境 GIS などを活用 することにより,より詳細な比較が可能な基礎的地 図を独自に作製する必要があるだろう.一方で,今 回使用した KMZ 形式を含む KML ファイル形式は, 2008年4月に OGC によりオープンスタンダードの 地理空間情報規格として採用された21).これにより, 他のサービスやアプリケーションでも KML 形式の データが利用可能になり,本システムの活用も進む ことが期待される. 5.まとめ  本論文では FOSS4G を用いて Web-GIS システム を構築し,迅速測図の公開を行い,その有効性を検 証した.  本システムは利用者を広く一般と想定し,可能な 限り簡素で,直感的な利用が出来るシステムとする ことを心がけた.全ての場合に簡素なシステムが望 ましいとはいえないが,利用者の視点に立ったシス テムの設計が必要である.  データの提供にあたっては,オープンスタンダー ドである WMS を使用した.これにより,アプリケー ションに制限されない利用が可能となり,これまで に今昔マップ2(谷・鈴木,2008)などで利用され ている.この様に,データの相互活用を促進する意 味でも,オープンスタンダードに準拠してデータを 提供することが望ましいと考えられる.  また,専門家のみならず,個人の blog でも言及さ れており,今後,迅速測図の利用が様々な場面で進 むことが期待される.  さらに本研究で構築したシステムは,ハード,ソ フトの両面で,学術研究機関や公的機関のみでな く,NPO 等の主体でも利用可能なものである.今後, FOSS4Gの活用により,より広範な主体により様々 なデータが公開・共有され,地理空間情報のさらな る利活用が進むことを期待したい.

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謝辞  本研究の実施にあたっては,科研費(17780190) の助成を受けた.本システムのファシリティは, 農林水産研究計算センターの提供する デジタルコ ミュニティシステムを利用した.記して感謝します.  また,OSGeo財団,OSGeo財団日本支部,GeoServer User Mailing Listの各位,そして FOSS4G をはじめ とするオープンソース・ソフトウェアの開発者各位 に心より感謝します. 注 1) http://www.jmc.or.jp/Howto/maplink.html 2) http://www.google.com/nonprofits/ 3) http://geonetwork-opensource.org/ 4) http://www.fao.org/geonetwork/srv/en/main. home 5) http://geodata.grid.unep.ch/ 6) http://www.bigmap.org/home/tool.php 7) http://www.gupi.jp/web-gis/ 8) http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-index.html 9) http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/ 10) http://www.centos.org/ 11) http://httpd.apache.org/ 12) http://www.java.com/ 13) http://tomcat.apache.org/ 14) http://geoserver.org/display/GEOS/Welcome 15) http://openlayers.org/ 16) http://geowebcache.org/ 17) http://www.klokan.cz/projects/gdal2tiles/ 18) http://www.gdal.org/ 19) 水涯線を透過表示にしたものが以下である. http://habs.dc.affrc.go.jp/water.html?zoom= 13 &lat=35.68&lon=139.75&layers=B0T Internet Explorer 6で閲覧すると透過部が灰色 に表示されるので利用に適さない. 20) http://habs.dc.af frc.go.jp/habs_map.html? zoom=15&lat=35.81933&lon=139.49023&layers= B0 21) http://www.opengeospatial.org/standards/kml/ 参考文献 井口悦男(2001)『明治期迅速測図の基礎的研究』,私家版. 岩崎亘典・デイビッド スプレイグ(2005)房総半島のニ ホンザル生息拡大地域における土地利用変遷に関す る研究.「農村計画論文集」,7,1-6. 小椋純一(1996)『植生からよむ日本人のくらし』,雄山閣. 環境省(2007)第三次生物多様性国家戦略,<http://www. biodic.go.jp/cbd/pdf/nbsap_3.pdf>. 国 土 地 理 院(2008)地 理 空 間 情 報 活 用 推 進 基 本 計 画, <http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS- RELEASE/ 2008/0414/01.pdf> 財団法人日本地図センター(2003)『新版 地図と測量の Q&A』,財団法人日本地図センター. 白井豊(2002)明治 10 年代における下総台地西部の土地 利用と薪炭生産−迅速測図と『偵察録』の分析を通し て.「歴史地理学」,44(5),1-21. 迅速測図原図復刻版編集委員会(1991)『明治前期手書彩 色關東實測圖:第一軍管地方二万分一迅速測圖原圖 覆刻版』,財団法人日本地図センター. 谷謙二・鈴木允(2008)時系列地形図閲覧ソフト『今昔マッ プ2』(首都圏編・中京編・京阪神圏編)の開発.「2008 年人文地理学会大会研究発表要旨」,152-153. デイビッド スプレイグ・後藤巌寛・守山弘(2000)迅速 測図の GIS 解析による明治初期の農村土地利用の分 析.「ランドスケープ研究」,63(5),771-774. 長岡正利(1991)明治前期の手書彩色関東実測図 −第一 軍管地方二万分一迅速測図解題−.「国土地理院時 報」,74,22-32. 別所力・恒川篤史・武内和彦・神山麻子(2001)多摩丘陵 鶴見川流域における GIS を用いた里山の植生変化. 「GIS−理論と応用」,9(2),83-90.

Sprague, D. S., Iwasaki, N. and Takahashi, S. (2007) Measuring rice paddy persistence spanning a century with Japan's oldest topographic maps: georeferencing the Rapid Survey Maps for GIS analysis. International Journal of Geographical Information Science, 21(1), 83 - 95 .

(2008 年 9 月 24 日 原 稿 受 理,2009 年 4 月 21 日 採 用 決 定, 2009年6月8日デジタルライブラリ掲載)

表 1 サーバーの構成概要

参照

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