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図 2 腐食モニタリング手法の体系 設備の腐食現象を直接測定する手法において 現在実用化されている腐食現象は 減肉 と 割れ である 減肉 では 設備の肉厚測定で評価する手法が主流である 割れ は 現状では進展の定量化が実現されていない 設備の腐食現象を間接測定する手法において 現在実用化されている

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腐食センターニュース

No. 074 2016 年 8 月

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化学プラントにおける腐食モニタリングの適用状況

腐食センター 宮澤正純

1.はじめに 化学プラントは製造過程に反応工程や加熱工程を含むため、設備内部が高温高圧や腐食環境に曝される。このような状況で化学 プラントの設備を安定的に維持管理するためには、使用環境を的確に把握することが求められている。設備状態を把握して、管理 するための手法として、従来から設備の開放点検時に、人による目視点検や非破壊的手法(肉厚測定や割れ測定等)を用いて評価 を行っていた。また、運転中設備外部から超音波で肉厚を測定し、腐食状況を評価していた。しかし、このような測定手法では腐 食発生の情報が適時に入手できず、腐食損傷が進展してから判明し、最悪の場合、内容物の漏洩による運転停止や事故に至る。 設備情報を的確に入手したいとする管理の現場からの要望で、近年、腐食状態を測定できる装置の開発が進み、運転中の設備か らも腐食の情報が得られるようになってきている。また、化学産業界では腐食モニタリング手法に対するニーズや使用実績の調査 を実施しており、結果から高い関心や使用実績が多数あることも判ってきた。腐食モニタリング情報から化学プラントの運転管理 や設備管理から利用対応するイメージを図―1に示す。このような化学プラントの管理を行うためには、リアルタイムに、かつ定 量的な正確な腐食情報が必要である。しかし、現状では腐食モニタリング手法が化学プラントのエンジニアに認知されて活用され ているか言えば、わが国の現状ではまだそこまで至ってない。そこで本稿では、化学プラントにおける腐食モニタリング手法の特 徴や適用状態を説明するとともに、抱えている課題を紹介する。 図―1 腐食モニタリングを用いた化学プラントの運転管理や設備管理 2.腐食モニタリング手法の体系 化学プラントに実際に適用されている腐食モニタリングの機能は、連続的に測定可能であることを前提としている。しかし、化 学プラントに適用されている腐食モニタリングについては、腐食に関する情報をどのような環境から入手するかまた測定装置の手 法によっても異なるため、本項では、腐食モニタリングの体系について説明する。 腐食モニタリングの体系の中の一つとして、NACE の提案している腐食モニタリングの体系1)を、図-2に示す。体系は大きく二 つに分けられ、ひとつは設備の腐食現象そのものを測定する手法と、他方は間接的に設備の環境測定をして、腐食発生を検知する 手法がある。前者は主に設備外部から測定し評価するタイプであり、後者は腐食現象を測定するタイプと腐食発生による環境変化 や生成物を測定するタイプがある。

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図―2 腐食モニタリング手法の体系 設備の腐食現象を直接測定する手法において、現在実用化されている腐食現象は、「減肉」と「割れ」である。「減肉」では、設 備の肉厚測定で評価する手法が主流である。「割れ」は、現状では進展の定量化が実現されていない。設備の腐食現象を間接測定す る手法において、現在実用化されている腐食現象は、「減肉」である。評価する手法としては、発生現象を評価する方法と環境変化 を評価する方法がある。発生現象を評価する方法は、電気化学を用いて測定する方法と腐食により試験片に生じる形状変化を利用 して測定する方法がある。環境変化を評価する方法は、腐食現象で生成される物質を測定する方法と環境変化を測定する方法があ る。 3.腐食モニタリング手法の測定原理 化学プラントに用いられる腐食モニタリング手法の中で、主な手法の測定原理を紹介する。 3.1直接測定 本項では、設備の腐食現象を直接測定して腐食現象の進展を監視する手法を示す。 3.1.1 減肉測定 (1)超音波測定(UT:Ultrasonic Testing) 超音波測定は、トランスデューサー(プローブ、探触子)と呼ばれるセンサーから発信した超音波が、測定物の反対面に反射し戻 ってくる時間(伝播時間)をもとに、厚さを算出する。具体的には、伝播時間(t)に測定物の音速(C)を乗じ、厚さを算出する。腐食 モニタリングとしては、設備外部に表面にセンサーを設置して定期間隔に超音波を発信し、時系列的に設備の肉厚を表示すること で、設備の肉厚のトレンドと、肉厚の変化と測定時間間隔から腐食速度のトレンドを提供できる。測定は肉厚のため、減肉現象が エロージョンや摩耗にも対応できる。測定センサーと設備の間に超音波をスムーズ通過させるための媒体としてゼリー状の物質を 塗布するが、温度によっては制限されることがあるので、注意が必要である。超音波測定手法の特徴は、長期的な視点で装置の減 肉傾向を把握するには有効な手法であるが、測定精度が約 0.1mm のため、短期的に腐食挙動を把握するにやや不向きである。

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図―3 超音波測定の原理 (2)磁気漏洩測定(MT: Magnetic Testing) 磁気漏洩測定は、鋼板の部材を直流磁化すると、磁化された部材内には、図-4のような板厚や材料に応じた均一な磁束が発生 する。もし減肉された部分があると、健全部にくらべ断面積に減少すると磁束密度が増加する。この磁束密度の変化を過流センサ ーで検出することによって板厚減少量を求め、腐食速度を算出する。磁気漏洩測定は、測定対象の材料が強磁性材に限定され、測 定精度が板厚の約数%であるため、装置の減肉傾向を把握するには有効な手法であるが、短期的腐食挙動を把握するにやや不向き である。 図―4 磁気漏洩測定の原理

(3)渦電流測定(ET: Eddy Current Testing)

渦電流測定は、高周波電流を流した探傷コイルを検査表面に接近させると、検査表面に渦電流が誘電される。表面および表面直 下に欠陥があると、渦電流や位相に変化を生じる。電磁誘導の変化を健全部と比較し、判定する。腐食モニタリングとしては、渦 電流の時間的変化を減肉変化に換算し腐食速度を算出する。図―5に、渦電流測定の原理を示す。渦電流測定は、測定対象の材料 が強磁性材に限定され、かつ測定精度が約 0.1mmであるため、短期的腐食挙動を把握するに不向きである。しかし、設備に直接接 触せず測定できるため、設備の表面を研磨する必要がないことや温度に影響されることない。このため,他の測定法に比べ適用範 囲が広くなる特徴がある。

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図―5 渦電流測定の原理

(4)リモートフィールド渦流探傷測定(RFECT: Remote-Field Eddy Current Testing)

リモートフィールド渦流探傷測定は、強磁性材料管に設置された励磁コイルに交流電流を流すと、管壁内に渦電流が流れる。こ の渦電流により生じる磁場を間接誘導磁場と称し、この間接誘導磁場成分が支配的になる領域がリモートフィールド領域である。 これに対して励磁コイルにより誘起される磁場を直接誘導磁場と称し、この直接誘導磁場が支配的になる領域がニアフィールド領 域である。リモートフィールド領域とニアフィールド領域の間に、存在する領域を遷移領域と称す。遷移領域において、管に欠陥 があると渦電流に乱れ磁場も乱れる。この磁場の乱れを板厚に換算し腐食速度を算出する。図―6に、リモートフィールド渦流探 傷測定の原理を示す。リモートフィールド渦流探傷測定は、測定精度が約 0.1mm であるため、装置の減肉傾向を把握するには有効 な手法であるが、短期的腐食挙動を把握するにやや不向きである。 図―6 リモートフィールド渦流探傷測定の原理

(5)電場指紋照合法(FSM;Field Signature Method)

電場指紋照合法は、測定対象に設置された2端子に電流を流し、2端子間に設置されたピンの電位変化を測定する。測定対象部 材が減肉した場合、電気抵抗が変化して電位が変化することを利用して減肉を測定する。ピンの設置個所をマトリックス状に設置 し、有限要素法を用いて解析すれば測定範囲の減肉を全面的に評価することも可能になる。図―7に、電場マップ測定の原理を示 す。電流のための端子やピンを測定対象の部材に溶接等を実施し、測定することで恒久的に測定することが可能になる。電場指紋 照合法は、測定精度が約 0.1mm のため、装置の減肉傾向を把握するには有効な手法であるが、短期的腐食挙動を把握するにやや不 向きである。しかし、測定範囲が面的測定のため、局部的腐食にも対応できる特徴を有している。

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図―7 電場指紋照合法測定の原理

3.1.2 割れ測定

(1)アコースティック・エミッション(AE: Acoustic Emission)

アコースティック・エミッション は、割れ発生の初期微候の検出が可能であり、運転中の割れ発生、あるいは割れ進行状態の監 視用としても使用される。腐食モニタリングとしては、割れの発生音を材料表面に設置した AE センサー(圧電素子センサー)で測 定し、割れ進行を測定する。図―8に、アコースティック・エミッション測定の原理を示す。アコースティック・エミッションは、 割れ等を広範囲に動的観測が可能である。課題としては電磁ノイズに弱く、高温域での測定が困難なことや設備の表面処理は必要 なことがある。アコースティック・エミッションの測定データが膨大であり、コンピューターの処理能力により測定が困難であっ たが、今日ではコンピューターの処理能力の向上により、割れ判定の応答性や複数の AE センサーの設置から割れ発生箇所の特定も 可能になってきた。アコースティック・エミッションによる測定は、未完成な点が多々あり腐食モニタリングとして適用するには 課題が多い。しかし、測定の研究進化により適用の範囲が広がってきており、今後の研究の進展を期待したい。 図―8 アコースティック・エミッション測定の原理

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3.2間接測定 設備の腐食現象を間接測定して腐食現象の進展を監視する。測定方法としては、試験片を設備内に挿入して、試験片に発生する 腐食現象を測定する方法と、設備の発生する腐食現象に付随して生じる環境の変化を測定する方法がある。 3.2.1 腐食現象 設備に挿入した試験片の腐食現象を捉えるために、試験片の形状変化を測定し腐食速度に換算する手法と、試験片に発生する化 学反応を捉えて腐食速度を測定する手法がある。 (1)形状変化

(1-1)電気抵抗(ER: Electric Resistance Measuring)

電気抵抗法は、試験片となるプローブを腐食環境に挿入し腐食による形状(断面積)の減少に伴う電気抵抗増加を測定することで、 腐食速度を算出する。プローブの形状としては、ワイヤー状や円筒状が用いられている。図―9に、電気抵抗測定の原理(測定装 置概要と測定回路)を示す。腐食によるプローブの減肉を電気抵抗として捉え、時間的変化と肉厚変化から腐食速度を算出する。 図―10 に、電気抵抗測定の測定事例(減肉測定の時間的推移)を示す。電気抵抗法は、プローブの減肉で測定するため測定環境に とらわれず測定できる。しかし、測定対象の腐食現象は局部腐食に適用が難しく、全面腐食に限定される。測定精度はプローブの 形状により約 0.01mm まで向上させることが可能である。ただ測定精度を向上させると、プローブの測定可能な期間が短くなる特性 を有している。 図―9 電気抵抗測定の原理(測定装置概要と測定回路) 図―10 電気抵抗測定の測定事例(炭素鋼の 3%NaCl 溶液による減肉測定の時間的推移)

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(2)化学変化

(2-1)電位変化

(2-1-1)電位測定(EP: Electric Potential Measuring)

設備内部の環境が腐食環境にあるか、さらに発生確度を測定する手法として、設備と同材質の試験片と参照電極の電位差を測定 することで、評価する手法である。図―11 に、電位測定の原理を示す。本手法は腐食発生の確度を示すが、腐食速度そのものを示 すものではないことに注意することが必要である。また設備内部に挿入するため、参照電極の選択も重要な項目となる。電位測定 は、参照電極を設備内部に設置されるため、設置環境が制限される。図―12 に、電位測定の事例(炭素鋼の腐食挙動:水道水に塩酸 添加による変化)を示す。 図―11 電位測定の原理 図―12 電位測定の事例(炭素鋼の腐食挙動:水道水に塩酸添加による変化) (2-2)反応変化

(2-2-1)交流インピーダンス法(EIS: Electrochemical Impedance Spectroscopy)

交流インピーダンス法は、試験片極と対極の2極法と試験片極と対極、参照電極の3極法があり、測定原理としては試験片極と 対極に電位を高周波で印加して、測定データを解析することで反応抵抗と溶液抵抗を測定する。反応抵抗から腐食速度を算出する。 現地で適用される腐食モニタリングは、高周波と低周波の2点測定の簡易法が採用されることが多い。図-13 に、2極法の測定装 置の概要と分析法の結果を示す。腐食速度は、測定データを解析した結果から求めた腐食抵抗 Rct より、下記の式から算出する。

環境条件:大気雰囲気

試験温度:20℃

試験電極:炭素鋼

試験条件

①水道水

②水道水

20%塩酸を0.5cc添加

200ppm

③水道水

20%塩酸を0.5cc添加

400ppm

④水道水

20%塩酸を0.5cc添加

600ppm

⑤水道水

20%塩酸を0.5cc添加

800ppm

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腐食速度 Cr = G / Rct 腐食速度 Cr (mm/y)、 腐食係数 G (実験等から求めた係数)、 腐食抵抗 Rct(Ω/cm2 交流インピーダンス法は、電気化学測定のため測定環境は電解質であることが前提になる。測定結果として、腐食抵抗のほかに 溶液抵抗も求められる。測定は交流測定のため、現地では外部ノイズにより影響を受ける。 図-13 交流インピーダンス法の2極法の測定装置の概要と分析法の結果

(2-2-2)分極法(PR: Polarization Resistance Measuring)

分極法は、試験極と対極および参照電極を用いて、電位を変化させ分極曲線を測定する。簡易的に測定するために2電極を用い て行う手法がある。図-14 に、分極法の3極法と2極法を示す。測定した分極曲線から腐食抵抗 Rct を求め、腐食速度を求める。 腐食速度 Cr は、下記の式から算出する。 腐食速度 Cr = G / Rct 腐食速度 Cr (mm/y)、 腐食係数 G (実験等から求めた係数)、 腐食抵抗 Rct(Ω/cm2 実際の測定では、測定時間が掛かるため、簡易的手法と直線分極法を採用するのが一般的である。分極法は、電気化学測定のため 測定環境は電解質であることが前提になる。分極法は、電位を印加して測定するため、腐食抵抗には溶液抵抗の影響を受ける。こ のため溶液抵抗が高い環境では誤差が大きくなる。 図-14 分極法の3極法と2極法の測定概要

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(2-2-3)電気ノイズ法(3電極を用いた電位・電流測定)(EN: Electrochemical Noise Measuring)

図―15 に、電気ノイズ法(3電極を用いた電位・電流測定)の原理を示す。試験極と参照極の間に電位計を設置し、試験極と対 極の間に無抵抗電流計を設置して、電位と電流を測定する。電位の変化幅と電流の変化幅から反応抵抗を求め、腐食測定を算出す る。電気ノイズ法の特徴は、外部から電位、電流を印加しないで測定する。そのため電気ノイズ法(3電極を用いた電位・電流測 定)の課題は、電気測定装置では通常行われるキャリブレーションができないことである。これらの課題を解決する方法としては、 現状では測定データを多数収集し、パターン認識で評価することになる。また電気ノイズ法(3電極を用いた電位・電流測定)は、 反応抵抗に溶液抵抗の影響が出るため、溶液抵抗が大きい溶液の測定は、評価に注意が必要である。電気ノイズ法は、電気化学測 定のため測定環境は電解質であることが前提になる。ただ電気ノイズ法の最大の特徴は、他の手法に比べ応答性が非常に速いこと である。 図―15 電気ノイズ法(3電極を用いた電位・電流測定)の原理 図―16 に、電気ノイズ法(3電極を用いた電位・電流測定)による3%NaCl 溶液中の炭素鋼の腐食挙動を示す。腐食速度は、電 流データと電位データからノイズ抵抗を求め、腐食速度=腐食係数/ノイズ抵抗の式から算出する。 図―16 電気ノイズ法(3電極を用いた電位・電流測定)による3%NaCl 溶液中の炭素鋼の腐食挙動 電流データ 電位データ ノ イ ズ抵抗 腐食速度

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(2-2-4)多電極法(CMAS: Coupled Multi electrode Array Sensor)

多電極法は、複数の電極をケーブルで接続することで、複数の電極を1個の金属にして表面で発生するアノード反応とカソード 反応を個別の電極とケーブルの間に無抵抗電流計を設置しスイッチングで切り替え測定を行うことで、個々の電極でのアノード反 応とカソード反応の発生電流を測定する。電極のアノード電流密度から孔食の腐食速度を算出する。図-17 に、多極電極法の測定 原理とセンサーの写真を示す。多電極法は、外部から電位、電流を印加しないで測定する。測定で注意しなければならないことは、 測定時電極の腐食状態が重要になる。電極が全面的に減肉してない場合は、腐食速度の算出に考慮することが求められる。 図―17 多極電極法の測定原理とセンサーの写真 3.2.2 環境変化 (1)生成物質 (1-1)金属イオン 金属イオンによる測定は、腐食発生により生成される溶液中の金属イオン濃度を原子吸光法や発光分光分析法により、測定する ことで腐食速度を算出する。ただ環境と金属により、溶出したイオンが酸化等で沈降してしまうことがあり、注意が必要である。 事例として、鋼鉄製の設備が腐食した場合、設備内の溶液を一定時間間隔でサンプルし、鉄イオン濃度を測定して、濃度の時間変 化から腐食速度を算出する。設備の広範囲の部位を対象にマクロ的な視点で腐食の有無や、腐食の経時的な推移を把握するには有 効な手段である。 (1-2)水素 水素による測定は、腐食発生により発生する水素量を測定し、腐食速度を算出する。一般に測定は設備を透過してくる水素を設 備外表面に設置された装置で測定する。水素測定の特徴は、設備外部から測定できるため、設備内部の環境等に影響を受けずに測 定できる。ただ、設備材料を水素が通過するため、材料中の水素の拡散や吸着の影響を受けるため、短期の腐食管理より長期に渡 る腐食管理に向いている。

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(2)環境変化 (2-1)残酸素濃度 残酸素濃度による測定は、溶液中の溶存酸素が腐食反応により消費されることを利用して、溶液中の残酸素濃度を測定すること で腐食速度を算出する。設備の広範囲の部位を対象にマクロ的な視点で腐食の有無や、腐食の経時的な推移を把握するには有効な 手段である。 4.化学プラントにおける腐食モニタリングの適用 腐食モニタリングを化学プラントに適用する場合、腐食モニタリングの機能を明確に把握することが重要である。腐食モニタリ ングの適用で、失敗するケースでよく見られるのは設置の目的が明確に提示されず測定していることである。腐食モニタリングの 機能としては、図―18 に示すように ①腐食発生は検知する機能、②腐食発生の原因を解析する機能、③防食対策の効果の検証機 能が挙げられる。 しかし、化学プラントにおける腐食管理の主体は、設備管理や運転管理であることを忘れてはいけない。これらの管理を行うた めに、必要な情報項目および情報の精度レベルを確認しておくことが必要である。さらに、情報の精度レベルについては、変動す る可能性があるため、絶えず変動した場合の対応策を事前に構築しておく必要がある。このためには、設備管理や運転管理の担当 者と、腐食モニタリングの管理担当者との情報の共有化が重要になる。 図―18 腐食モニタリングの機能 つぎに、腐食モニタリングを適用するには、腐食モニタリングで紹介した各種の手法の特徴を把握することが重要である。測定 対象では、①設備内部の溶液環境、例えば、電気伝導度、溶液の液膜厚さ、圧力、温度等、②管理に必要な項目、例えば、応答性、 データ精度等、③測定装置の耐久性、例えば、センサーの使用期間等、④設備の設置環境、例えば、火気への対応、外乱ノイズ等、 ⑤その他、例えば、測定装置の操作性、コスト等が挙げられる。これの手法の特徴を把握し、管理しようとする化学プラントの設 備の情報を収集して適用することになる。

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「化学プラントの腐食モニタリングの適用事例の解析」 腐食モニタリングの適用には、大きく分けて2つの項目がある。ひとつは腐食発生の原因を追求し、対策を実施したところで終 了するケースである。もうひとつは腐食発生や腐食状態の監視を行うため、常時測定するケースである。 (1)腐食発生の原因を追求し、対策の立案したケース 化学プラントでは、運転条件や使用材料が複雑に絡み合っており、腐食原因を解明するには困難を要すことは容易に想定できる。 一番困難にしている原因は、いつ腐食が発生しているか不明なことである。この対策として、腐食モニタリングで測定し、必要に 応じて溶液等をサンプリングして、解析することで原因解明が可能になる場合がある。化学プラントで原料ガス中の硫黄を除去す る設備で発生した腐食について、図―19 にフローを示す。発生範囲は設備全体に発生していた。 図―19 腐食発生の化学プラントのフロー 腐食検討を開始したが、腐食原因を解明することが出来なかった。そこで、分離設備に腐食センサーを設置して測定した。図― 20 に、測定結果を示す。腐食発生の挙動が時間ともに変化している事例を示す。プロセスの稼働率に対して腐食速度が変化してお り、溶液の分析データと腐食速度の相関を解析することで、腐食発生原因の解明と発生防止策の立案が可能になった。 図―20 プロセスと腐食発生の挙動の変時間変化

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(2)腐食発生や腐食状態の監視 腐食発生の監視は、腐食モニタリングの機能のなかで大きなものの一つである。例えば、燃料のオクタン価を高めるアルキレー ション装置は、腐食発生が設備のどの部位で、かつ、いつ発生するか明確に把握されていない。内部流体が毒性であるため、もし、 設備が破孔した場合、甚大な事故となる。このため、UT 法の測定装置を用いた腐食発生監視システムを示す。図―21 に、腐食発生 の可能性がある部位に UT センサーを複数設置して監視している事例を示す。図―22 は、測定箇所の測定結果を表示したイメージ を示す。腐食モニタリングの機能であるアラーム機能を活用した事例である。 図―21 UT 法の測定装置による腐食監視システム 図―22 測定箇所の測定結果を表示したイメージ 5.おわりに 化学プラントで行われている腐食モニタリングについて紹介してきたが、実際の適用事例が非常に少ないのが現状である。その 原因としてはいろいろと考えられるが、最大の問題は、担当者が腐食モニタリングを用いた腐食管理のビジネスモデルを描けてい ないことと思われる。まずは、ビジネスモデルのターゲットは何かを決める。トラブルの解決か、管理費の削減か等のターゲット を決める。これを進めるために必要なデータと腐食モニタリングにより収集できるデータの関係を調査する。これらから腐食モニ タリングに採用する種類を選定する。これらの一連の業務を行うためには、各業務に精通した知識と経験が必要となる。 海外の状況では、専門のコンサルタントが存在するが、わが国においても、専門家の育成が必要と思われる。 文献

1) Item No. 24203 NACE International Publication 3T199 (2012 Edition)

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