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アブダビの石油天然ガス開発をめぐる現況

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(1)

アブダビの石油天然ガス開発を

めぐる現況

ー「重層的パートナーシップ」の構築に JOGMEC も貢献ー

じめに

 アラブ首長国連邦(UAE)のアブダ ビでは、2014 年 1 月に期限を迎える 陸上の巨大油田の権益更新をめぐる動 きが佳境に入っている。今回、アブダ ビ政府はメジャー各社が持つ権益をそ のまま継続させるのではなく、新たな 企業を含む入札で選び直す方針で、今 年(2013年)3月以降、入札資格を取 得した対象企業との間で、一連の入札 手続きが進められている。日本にとっ ては、最大の自主開発油田であるアブ ダビ海上鉱区の権益が 2018 年に期限 を迎え、その更新が最優先課題である。 陸上鉱区の権益賦与の方法が海上鉱区 の更改時にも適用される可能性もあ り、陸上鉱区の動向についても十分注 視する必要があろう。  日本にとってUAEはサウジアラビア に次ぐ第2位の原油供給国ということに 加え、アブダビに日本として最大の自 主開発油田の権益を保有しているとい う点で、エネルギー安全保障の観点か らも極めて重要な産油国と位置づけら れる。JOGMECとしても、民間企業の 産油国における活動のサポートになる ような取り組みを同国に対して行って きたところである。本稿では、こうした 重要産油国であるアブダビの石油天然 ガス開発状況について概観するととも に、陸上鉱区の権益更改の動向につい ても、アブダビ側からの公式発表がほ とんどなく専門誌報道等の限られた情 報を頼りに若干の分析、考察を試みる ことにしたい。併せて、JOGMECの同 国における活動状況について、特に筆 者が JOGMEC中東事務所に在籍した 2010 年 5 月から本年 7 月頃までの3 年 間に行われた取り組みを中心に紹介し たい。  なお、ここで取り上げた動向、ニュー スや各種統計データ等は本稿執筆時点 (2013 年 10 月 16 日)に得られた情報 に基づくものであり、その後の本誌刊 行までの間の状況変化は反映されてい ない。

1.

UAEの 石 油 天 然 ガ ス

資源の現状

(1)埋蔵量および生産量  最新の BP統計によると、2012 年 末の UAEの原油埋蔵量は 978 億バレ ル、天然ガス埋蔵量は215兆cfで、と もに世界第 7 位にある有数の産油ガス 国である(表1)。ちなみに、中東地域 に絞ってみた場合、UAEの原油埋蔵 量はサウジアラビア(2,659億バレル)、 イラン(1,570億バレル)、イラク(1,500 億バレル)、クウェート(1,015億バレ ル)に次いで 5 番目、天然ガス埋蔵量 はイラン(1,187兆cf)、カタール(885 兆cf)、サウジアラビア(291兆cf)に 次いで4番目となっている。  UAEの 7 首長国中で原油・天然ガ スを生産しているのは、アブダビを含 む 4 首長国であるが、原油・天然ガス の埋蔵量、生産量においてアブダビが 圧倒的なシェアを占めている。UAE 外国貿易省によると、原油埋蔵量の 世界ランク 可採年数 確認埋蔵量 原油 978億バレル 第 7 位 79.1年 天然ガス 215.1兆cf 第 7 位 100年以上 生産量 原油 338万バレル/日 第 8 位 天然ガス 517億㎥/年 第17位 UAEの石油・天然ガス資源の概要(2012年) 表1 (注)原油生産量はコンデンセートを含む。

(2)

94.3%がアブダビに集中しており、ド バイ 4.1 %、シャルジャ 1.5 %、ラス・ アル・ハイマは 0.1 %に過ぎない。天 然ガス埋蔵量もアブダビが 92.5 %を 占めるのに対し、ドバイ 1.9 %、シャ ルジャ5.0%、ラス・アル・ハイマは0.6% となっている。 (2)日本との関係  UAE(アブダビ)は、日本にとって、 サウジアラビアと並ぶトップクラスの 原油供給国であるということのほか、 最大の自主開発油田の権益を有する国 であるという2 点において、極めて重 要な産油国であると言える。  近年、日本への国別原油輸入量では、 サウジアラビアとUAEが常に1 位、2 位を占めてきたが、2012 年の原油輸 入量のデータを見ても、UAEは21.7% にあたる79 万 6,000 バレル /日を日本 に供給しており、これはサウジアラビ アの31.2%に次いで第2位である。  また、アブダビには、日本企業が開 発に参加する油ガス田権益事業が 5件 ある。とりわけ、国際石油開発帝石 (INPEX)の子会社であるジャパン石油 開発(JODCO)が12%(一部40%)の 権益を有する海上油田の ADMA鉱区 (2018年に権益期限が到来)と、上部 ザクム油田(2026年に権益期限が到来) を合計した JODCOの引き取り量は約 20万バレル/日(わが国自主開発原油 65万バレル/日の3割に相当)となる*1  経済産業省が発表したエネルギー基 本計画(2010年6月制定、現在見直し 作業中)で、エネルギー安全保障の強 化、資源安定供給確保の観点から、石 油および天然ガスを合わせた自主開発 比率を現状の約 20 %から 2030 年に 40 %へ引き上げるとの目標が示され た。現状の自主開発油田権益の根幹を 成す ADMA鉱区の 2018 年の権益更 新(維持)に失敗した場合、この目標は ほとんど達成不可能な絵に描いた餅に 終わる可能性が高い。その意味で、 ADMA鉱区の権益は当事者の民間企 業にとってのみならず、日本のエネル ギー政策上も死活的に重要な位置づけ となっている。

2.

アブダビの石油天然ガ

ス開発の概況

(1)アブダビの石油天然ガス政策決定 の構造  UAEは七つの首長国から構成され る連邦国家であるが、1996 年に制定 された連邦憲法によって、天然資源の 所有と処分権は連邦政府ではなく各首 長国に帰属することが定められてい る。連邦のエネルギー大臣はアブダビ をはじめとする各首長国のエネルギー 政策に直接関与する権限を持っておら ず、石油輸出国機構(OPEC)やアラブ 石油輸出国機構(OAPEC)などの国際 機関の会議に UAE代表として参加す るなど、もっぱらUAEの「顔」として 対外的、国際的な交渉窓口としての役 割にとどまっている。また、UAE(連 邦)の副大統領兼首相として連邦の内 政・外交面で大きな影響力を持つムハ ンマド・ドバイ首長も、こと、アブダ ビの石油政策については一切口を挟む 立場にはない。  アブダビでは、首長国政府に石油・ 天然ガス産業を統括する省庁は置かれ ておらず、ハリーファ・ビン・ザーイド・ アル・ナヒヤーンUAE大統領(アブダ ビ首長)を議長とする10名のメンバー から成る「最高石油評議会」(Supreme Petroleum Council〈SPC〉)によって石 油・天然ガス政策の基本方針について の意思決定が行われる。SPCの定めた 政策指針に基づき、石油・天然ガス政 策 の 執 行 をア ブ ダ ビ 国 営 石 油 会 社 (Abu Dhabi National Oil Company 〈ADNOC〉)が担っている。  SPCの 10 名のメンバーのうち、議 長であるハリーファ首長や同国のエネ ルギー政策で大きな影響力を有すると されるムハンマド皇太子を含め上位 6 名までが首長家(ナヒヤーン家)メン バーで構成されている。首長家メン

その他

12.7%

オマーン

2.9%

インドネシア

3.7%

ロシア

4.6%

イラン

5.2%

クウェート

7.3%

カタール

10.7%

UAE

21.7%

サウジアラビア

31.2%

日本の国別原油輸入量(2012年) 図1 出所:石油連盟「石油資料月報」

(3)

バー主体の構成が見直され る可能性は低く、国の根幹 を成すアブダビのエネル ギー政策の決定は今後も首 長家が直接下すと考えられ、 このことは、同国のエネル ギー政策の意思決定構造を 理解する上で重要なポイン トと言えよう。権益期限切 れが目前に迫った陸上鉱区 や海上鉱区の権益更改にお いても、権益賦与の方法(入 札方針等)から契約先選定ま で、基本方針の決定はすべ て首長家が支配するSPCに よって行われることになる。 ADNOCはSPCに対し方針 案の提案、助言を行うが、 意思決定には関与できない。 (2)石油・天然ガス開発の体制  1970年代以降の世界的な資源ナショ ナリズムの高まりのなか、サウジアラ ビアやクウェートといった湾岸の有力 産油国が石油産業の国有化、石油・ガ ス上流操業からの外国企業の締め出し を行ったのに対し、アブダビは、国有 化は行わず、石油操業会社に事業参加 し外国石油企業と共存する道を選ん だ。同国は、ADNOCと外国石油企業 のジョイントベンチャーによる上流操 業のほか、100 %権益を賦与する伝統 的な石油利権契約に基づく外国石油企 業による上流操業も認めている数少な い産油国の一つであり、このことが多 くの石油企業がアブダビを自社ポート フォリオのなかで優先度の高い魅力的 な国と位置づける所ゆ え ん以となっている。  陸上のADCO鉱区、洋上のADMA-OPCO、ZADCO等、巨大油田を含む 鉱区の操業会社には ADNOCが 60 % (一部88%)事業参加し、残りの40%(一 部 12 %)を外国石油企業が出資する ジョイントベンチャー方式が採られて いる。外資が100%権益の石油利権操 業を行うケースとしては日本企業が全 額または一部出資を行っているアブダ ビ石油(Abu Dhabi Oil Co., ADOC)、 Bunduq社およびアブアルブクーシュプ ロジェクトの例がある。 (3)操業会社別油田開発状況と原油生 産能力増強計画  UAEの原油生産量は、直近のBP統 計(2012)では340万バレル/日弱となっ ているが(既述)、この数字にはコンデ ンセート(約55万バレル/日)および 他の首長国の生産量(約5万バレル/日) も含まれており、これらを除いた現状 のアブダビのみの原油生産量としては 270 万~ 280 万バレル /日程度と考え られる。このような状況下でのアブダ ビの油田開発状況について陸上、洋上 の操業会社別に以下で概観する。  また、アブダビでは、2009 年 3 月 に「2017年末までにアブダビの原油生 産能力を現状比 100 万バレル /日増の 350 万バレル /日に引き上げる」とす る増産目標が掲げられており、この増 産目標の内訳についても後に触れる。 ①陸上の操業会社

Abu Dhabi Company for Onshore Oil Operations(ADCO)

 ADCOの歴史は、1939年1月11日、 アブダビにおける最初の石油利権契約 が Petroleum Development Company (Trucial Coast)との間で締結されたこ とに始まる。Petroleum Development は1960年にBab油田を発見し、以降、 商業生産規模の油田発見が相次いだ。 その間、1962年に社名は、Abu Dhabi Petroleum Company(ADPC)と変更 された。その後、世界的に資源ナショ ナリズムが高まるなか、1973年1月1 日より ADNOCが 25 %の事業参加を 行い、1974 年 1 月 1 日にはシェアを 60 %まで引き上げた。この結果、権 益 比 率 は、ADNOCが 60 %、BP、 Total、Shell、ExxonMobil各社が9.5%、 Partexが 2 %となった。1978 年 10 月 には、首長令によって ADPCは Abu Dhabi Company for Onshore Oil Operations(ADCO)に改組され(権益 比率は変わらず)、現在に至っている。  ADCOの 主 要 生 産 油 田 は、Bu 01. H.H Sheikh Khalifa Bin Zayed Al Nahyan(議長) UAE大統領、アブダビ首長 02. H.H Sheikh Sultan Bin Zayed Al Nahyan 元UAE副首相

03. H.H General Sheikh Mohammed Bin Zayed Al Nahyan アブダビ皇太子

04. H.H Sheikh Mansour Bin Zayed Al Nahyan UAE副首相・大統領府長官 05. H.H Sheikh Hamed Bin Zayed Al Nahyan アブダビ皇太子府長官 06. H.H Sheikh Mohamed Bin Khalifa Bin Zayed Al Nahyan アブダビ執行評議会議員

07. H.E Mohamed Habroush Al Suwaidi 元アブダビ財務庁長官

08. H.E Hamad Mohamed Al Hur Al Suwaidi アブダビ財務庁長官 09. H.E Khalifa Mohamed Khalifa Al Kindi ADIC* Managing Director

10. H.E Eng. Abdulla Nasser Al Suwaidi ADNOC Director General

アブダビ最高石油評議会(SPC)メンバー(2013年10月現在)

表2

(注) メンバーは以前11名であったが、SPC事務局長(Secretary General)を務めていたDr. Ju’an Salem Al Dhaheriが本年4月に逝去し、10名となった。

*:アブダビ投資評議会(Abu Dhabi Investment Council) 出所:2011年6月第25号首長令、各種報道等

(4)

Hasa、Bab、Asab、Sahil、Shahおよ び北東Bab(NEB)エリアのDabbiya、 Rumaitha、Shanayel各油田などがあ る。現状、ADCO全体の生産量は約 140万バレル/日程度と見られ、今後、 これら既存油田の能力増強と新規開発 油田(Bida Al-Qemsan,Qusahwira油田 等)の生産開始により、2017年に生産 能力の180 万バレル /日への引き上げ を目指している。ただし、ADCOに出 資している外国 石 油 企 業としては、 2014年1月に期限を迎えるADCO利権 の更改が実現するまでは、増産に伴う 投資決定を先送りしようとする可能性 が高く、現時点でADCOの増産が計画 どおり実現する目め ど途は立っていない。  ADCOの増産が先送りになった場 合、ホルムズ海峡を迂う か い回してアブダビ 油田 利権保有比率 現 状 生 産 能 力 2017年目標生産量 利権更新期限 Bu Hasa ADNOC 60% BP Total Shell ExxonMobil     各9.5% Partex 2% 550 730 2014年1月 Bab 350 430 同 上 Asab 280 310 同 上 Sahil 55 75 同 上 Shah 50 60 同 上 NEB 110 110 同 上 Bida Al-Qemsan 51 同 上 Qusahwira 50 同 上 計 1,395 1,816 ADCO陸上油田原油生産能力 表3

出所:Arab Oil Gas Directory 2012等各種資料より作成

千バレル/日

アブダビ

ドバイ

サウジアラビア

カタール

イラン

オマーン

ザララ油田 ザララ油田 シャー油田 シャー油田 シャー(サワーガス) シャー(サワーガス) クザヴィラ油田 クザヴィラ油田 ハリバ油田 ハリバ油田 アサブ油田 アサブ油田 フワイラ油田 フワイラ油田 ブハサ油田 ブハサ油田 ダフラ油田 ダフラ油田 ルワイス油田 ルワイス油田 ビダアルケムザイ油田 ビダアルケムザイ油田 ヘイル油田 ヘイル油田 アルダビヤ油田 アルダビヤ油田 ウムルル油田 ウムルル油田 ウムアダルク油田 ウムアダルク油田 ムバラス油田ムバラス油田 ハー ハー デルタ デルタ ワー ワージームジーム SWエプシロン SWエプシロン エプシロン エプシロン ラシッド油田 ラシッド油田 マンドュス マンドュス アレフ アレフ ザクム油田 ザクム油田 ナスル油田 ナスル油田 ウムシャイフ油田 ウムシャイフ油田 ヤサール油田 ヤサール油田 エルフンドク油田 エルフンドク油田 サター油田 サター油田 ジャルナイン ジャルナイン プジュファイル プジュファイル アルザーナ油田 アルザーナ油田 ガーシャ ガーシャ ヘアダルマ ヘアダルマ ペルパゼム ペルパゼム ダルマ島 ダルマ島 アルザーナ島 アルザーナ島 サーバニヤス島 サーバニヤス島 ジルク島 ジルク島 ダス島 ダス島 ウムアルアンバー油田 ウムアルアンバー油田 SARB SARB ピンナシェフ ピンナシェフ アフアルプクーシュ油田 アフアルプクーシュ油田 サルマン(サッサン)油田 サルマン(サッサン)油田 バブ油田 バブ油田 ミルファ油田 ミルファ油田 ルマイサ油田ルマイサ油田 シャナイエル油田 シャナイエル油田 ジャンヤプール油田 ジャンヤプール油田 サヒール油田 サヒール油田 メンデル油田 メンデル油田 アブダビ市 アブダビ市 シュワイハットガス田 シュワイハットガス田 油田 ガス・コンデンセート田 アブダビの油田分布 図2 出所:各種資料よりJOGMEC作成

(5)

陸上油田から産出される原油をインド 洋側に位置するフジャイラから出荷す るために建設されたハブシャン・フ ジ ャ イ ラ・ パ イ プ ラ イ ン( 全 長 370km、最大通油量:180万バレル/日) の本格稼働にも影響を及ぼす可能性が ある。 ②洋上の操業会社

Abu Dhabi Marine Operating Company(ADMA-OPCO)  ウムシャイフ(Umm Shaif)油田およ び下部ザクム(Lower Zakum)油田の 開発・操業および ADMA鉱区内の未 開発構造の探鉱開発を行っている。  1955年にBP、CFP(現・Total)が 設 立 し た Abu Dhabi Marine Areas (ADMA)が前身であり、1959年にウ ムシャイフ油田を発見し、1962 年に はダス島ターミナルからウムシャイフ 原油がアブダビ産原油として初めて輸 出(日本向け)された。ADCOと同様、 ADNOCによる 25 %事業参加(1973 年 )、60 % 参 加(1974 年 ) を 経 て、 1977 年 7 月に ADNOCと国際石油企 業による共同操業形態のオペレーター

会 社 Abu Dhabi Marine Operating Company(ADMA-OPCO)が設立され た。ADMA-OPCOの 権 益 比 率 は、 ADNOC 60 %、BP 14.67 %、Total 13.33 %と、1973 年から ADMA事業 に参画したJODCOが12%である。  ADMA-OPCOは、油層圧維持のた め、ウムシャイフ油田では 1976 年か ら水攻法、1994 年から頂部ガス圧入 を開始、下部ザクム油田では 1978 年 から水攻法、2005 年から頂部ガス圧 入を開始した。  さらに、アブダビの原油生産能力増 強計画に基づき、新規油田開発も実施 し て お り、 洋 上 の ウ ム ル ル(Umm Lulu)油田、SARB油田、ナスル(Nasr) 油田の開発が進んでいる。これら3 油 田の開発により、2018 年までに約 27 万バレル /日の増産が可能とされ、さ らに下部ザクム油田の再開発による10 万バレル/日の増産と合わせ、ADMA-OPCO全体の生産量は現状の約 60 万 バレル /日の上に、40 万バレル /日近 いさらなる増産を目指す計画と見られ る。ただし、現行の ADMA-OPCO参 加企業にとっては、2018 年の権益更 改で利権を失った場合、開発投資に見 合ったリターンを得られないまま撤退 しなければならなくなるというリスク を抱えているので、ADMA-OPCO参 加企業の意思決定が先送りされ結果的 に増産プロジェクトが遅延する可能性 もある。

Zakum Development Company (ZADCO)  1977 年 11 月に設立された ADNOC と国際石油企業の共同操業形態による オペレーター会社。上部ザクム(Upper Zakum)、 ウ ム ア ダ ル ク(Umm Al Dalkh)およびサター(Satah)各油田 の開発・操業とジャルナイン、ダルマ 構造の探鉱開発を行っている。  パートナーとなる国際石油企業の顔 ぶれ、参加比率は、油田ごとに異なっ ているが、すべての油田操業において JODCOがパートナーとして名を連ね ている。上部ザクム油田については、 2006 年 3 月 に 変 更 が あ り、 新 た に ExxonMobilがパートナーとして選定さ れ、オペレーターシップおよび権益 28%を付与された。変更後の利権保有 比率は、ADNOC 60 %、ExxonMobil 28%で、JODCOの 12%権益は変更な し。また、ウムアダルクとサター油田の 外資パートナーはいずれもJODCO1社 で、ウムアダルクの JODCOシェアは 12 %(ADNOC 88 %)、サター油田で は40%(ADNOC 60%)と当初からの シェアを維持している。  ZADCO操業油田でも、油層圧維持 のための方策が採られており、上部ザ クム油田に対しては 1984 年から水攻 法を、ウムアダルク油田に対しては 1986 年から水攻法を実施し、サター 油田に対しては 1988 年から頂部ガス 圧入を開始、さらに 1998 年から水攻 法が実施されている。  3油田とも生産能力増強計画がある。 上部ザクム油田については、ADNOC の指示の下、生産能力を従来の 55 万

アラブ首長国連邦

イラン

オマーン

アブダビ

アブダビ

ジェベルダナ

ジェベルダナ

ハブシャン

ハブシャン

マスカット

マスカット

フジャイラ

フジャイラ

ハブシャン・フジャイラ原油パイプライン 図3 出所:各種資料よりJOGMEC作成

(6)

バレル /日から 2016 年までに 75 万バ レル/日に増強する“UZ750”プロジェ クトが進行中である。能力増強を実現 するため、既存サテライトに加え、四 つの人工島を建設し、そこから集中的 に掘削するという新たな工法が採用さ れている。近い将来(2024 年頃)の 100 万バレル /日への能力増強につい ても検討が行われているようである。 また、ウムアダルク油田、サター油田 についても、2014 ~ 2015年頃にそれ ぞれ現状生産量比50%増し、100%増 しのレベルまで引き上げる計画があ り、両油田合わせて1万8,000バレル/ 日程度の増産が期待される。  アブダビの洋上油田全体の生産量を 見ると、表4に示したように、現状生 産 能 力 約 120 万 バ レ ル /日 に 対 し、 2018 年までの目標生産量は合計約 180万バレル/日となる。 (4)天然ガス開発をめぐる状況  UAEでは、経済発展による電力消費 の著しい伸びを背景として、発電の主 要燃料である天然ガスの需要が急増し ており、今後、天然ガスの供給不安と いう事態を回避するための対策が急務 となっている。天然ガス供給の拡大に 向け、アブダビが進めている天然ガス 開発プロジェクトやガス輸入プロジェ クトなど、アブダビの天然ガス開発を めぐる主要動向について紹介する。 アブダビ洋上油田概要(原油生産能力等) 表4

出所:MEES(15 February 2013)他各種情報、各種資料よりJOGMEC作成

油田 利権保有比率 現状生産能力 (千バレル/日) 目標生産量(時期) (千バレル/日) 利権更新期限 (年) ADMA-OPCO 下部ザクム ADNOC 60% BP 14.67% Total 13.33% JODCO 12% 300 425(2016) 2018 ウムシャイフ 275 275(2018) 2018 ウムルル 0 105(2016) 2018 ナスル 0 65(2016) 2018 SARB 0 100(2017-18) 2018 <小計> <575> <970> ZADCO 上部ザクム ADNOC 60% ExxonMobil 28% JODCO 12% 550 750(2016) 2026 ウムアダルク ADNOC 88% JODCO 12% 10 20(2014-15) 2018 サター ADNOC 60%JODCO 40% 17 25(2014) 2018 <小計> <577> <795> ADOC(アブダビ石油) ウムアルアンバー コスモ石油 63% JX日鉱日石開発 31.5% 東京電力 中部電力 関西電力   各1.8% NA NA 2042 ニーワットアルギャラン NA NA 2042 ムバラス 24 24 2042 ヘイル NA NA 2042 Bunduq エル・ブンドク BP 3% 合同石油開発*97%  *:UPD株主内訳    コスモ石油45%    JX日鉱日石開発45%    三井石油開発 10% 10 10 2018 アブアルブクーシュプロジェクト アブアルブクーシュ(ABK) Total 75% INPEX 25% 10 10 2018 計 1,196 1,809

(7)

①パイプラインによる天然ガス輸入 「ドルフィン・プロジェクト」  カタールのノース・フィールドで産 出される天然ガスをラスラファン(カ タール)からアブダビのタウィーラま での370㎞の海底パイプラインによっ て輸送し、アブダビ、ドバイのガス需 要家に供給するとともに、さらにタ ウィーラからフジャイラまで 48 イン チ級パイプラインで結び、またフジャ イラからオマーンに向けて 24 インチ 級パイプラインで天然ガスを輸出する 事業である。オマーンからパキスタン まで延伸する構想もある。  2 0 0 3 年 1 2 月 に、Q P(Q a t a r Petroleum) と 事 業 主 体 の Dolphin Energy Ltd(DEL、株主は、アブダビ 国営投資会社のムバダラ〈Mubadala〉 開 発 社 51 %、Totalと Occidental各 24.5%)がプロジェクト開発契約に調 印し、正式にスタート。ラスラファン からタウィーラまでのパイプライン は、2007年7月に完工し、2010年12 月には、タウィーラからフジャイラま で244㎞のパイプラインも完成した。  ドルフィンプロジェクトは二つの フェーズに分かれており、第 1 フェー ズで20億cf/日を、第2フェーズで12 億 cf/日を供給して、計 32 億 cf/日の 天然ガスを輸入する計画であった。し かし、カタールがノースフィールドガ ス田のモラトリアム宣言を行った関係 で、第 2 フェーズ分は凍結されている が、オマーン向けには既に 2 億 cf/日 のガスを供給している。 ②サワーガス開発プロジェクト  UAEは世界第7位の天然ガス埋蔵量 (215兆cf、2013年BP統計)があるが、 埋蔵されるガスの大半がサワーガスと 呼ばれる毒性や腐食性の強い高硫黄ガ スであるため、多くは未開発のままで あった。しかし、天然ガス需要の急増 に対応するため、リスクの高いサワー ガスの開発がアブダビ陸上油田の随伴 ガスを対象として着手されている。 Shahサワーガス開発プロジェクト  Shahガス田は、サウジアラビアとの 国境に近いアブダビの南西180 ㎞の内 陸部に位置し、1966年に発見されたが、 経済的、技術的理由からガス層は長年 開発されず手つかずのままであった。 2007 年の入札の結果、2009 年 7 月に ADNOCと ConocoPhillips合同のプロ ジェクトとしてスタートした。その後 2010年にConocoPhillipsが撤退を表明 したため、改めて開発企業の選定が行 われ、2011年2月にOccidentalが選定 された。権益比率はOccidental 40 %、 ADNOC 60%とされた。  Shahサワーガス開発プロジェクト のアブダビ側実行組織として、2010 年 3 月の首長令により ADNOC傘下の A b u D h a b i G a s D e v e l o p m e n t Company(AL Hosn Gas)が発足した。 ドルフィンガスパイプライン 図4 出所:各種資料よりJOGMEC作成

アラブ首長国連邦

サウジアラビア

イラン

オマーン

カタール

アブダビ

アブダビ

タウィーラ

タウィーラ

ジュベールアリ

ジュベールアリ

マクタ

マクタ

アライン

アライン

ラスラファン

ラスラファン

フジャイラ

フジャイラ

ドーハ

ドーハ

ノースフィールド・ガス田 ノースフィールド・ガス田

ドルフィン・ガスのパイプライン

その他の既設ガスパイプライン

(8)

 2009 年以降、評価井の掘削を始め て開発プログラムは順調に進んできて おり、2014年から生産を開始する予定。 生産ガスは H2S 23 %、CO2 10 %を含 有するサワーガスであるが、日量 10 億cfの生産が見込まれる。 Babサワーガス開発プロジェクト  アブダビの南西 150kmの内陸部に 位置する。2007 年にShahガス田とと もに入札にかけられたが、Bab油田の 真下にガス層があり、開発が困難であ るなどの理由から多くの企業は入札を 見送り、契約には至らなかった。今年 になって改めて入札が行われ、4 月に ShellがTotalなどを押さえて落札した。 ③ADGAS LNGプロジェクト

 Abu Dhabi Gas Liquefaction Limited (ADGAS)は1973 年に設立。ADMA-OPCOが操業する洋上油田からの随伴ガ スをダス島のプラントで液化、東京電力 向けに1994年から2019年までの25年 間のLNG供給契約を結んでいる。同社 権 益 は、 三 井 物 産 15 %、BP 10 %、 Total 5 %、 ADNOC 70 %。2012 年度 以 降 は、 ス ポ ット 契 約 分 も 含 め た ADGAS生産分全量(約570万トン/年) が東京電力に供給されており、日本とし ては、アブダビはカタールとともに中東に おける重要な天然ガスサプライヤーの位 置づけとなる。現契約が終了する2019 年以降も契約締結できるかどうかは、日 本のエネルギー安全保障の観点からも重 要であるが、アブダビ国内で、急増する 天然ガスの国内需要に対応するため、ガ スを国内向けに使用し、ADGASのLNG については生産規模の縮小を主張する声 があり、注視が必要である。

3.

陸上油田の利権更改の

動き

(1)最近の動き  2014 年 1 月に期限を迎える ADCO の陸上鉱区の利権更改の動きが注目を 集めている。  1939 年の最初の契約以降、70 年以 上にわたり、国際石油会社側のADCO 利権の保有者は、BP、Total、Shell、 ExxonMobil、Partexの 5 社で変更は ないが、今回、アブダビ政府は、各社 の権益をそのまま継続することを認め ず、新たな企業を加えた入札で契約先 を決める方針である。本年 3 月以降、 事前資格審査(PQ)をクリアして入札 資格を取得した企業との間で、入札手 続きが進められている。今回、PQを 取 得 し た の は、BP、Total、Shell、 ExxonMobilの既往利権保有者に加え、 Occidental(米)、Statoil(ノルウェー)、 Eni(伊)、Rosneft(露)、KNOC(韓)、 CNPC(中)、INPEX(日)の計11社が 選定された。既往利権保有者のなかか ら Partexが落選し、一時、BPも外さ れたとの情報もあったが、UAEを訪 問した英キャメロン首相がアブダビ側 に強く働きかけ、なんとか復活したと いう経緯がある。  本稿執筆時点での情報では、PQ取 得企業は、2013 年 10 月 20 日までに 技術提案書をADNOCに提出すること になっている。その後、提案書に対す るアブダビ側の評価作業が行われ、さ らに、商業見積もりの提出、評価といっ た選定プロセスが続くことになるが、 ここにきて、利権契約の期限(2014年 1 月 10 日)まで 3 カ月を切るという段 階となり、期限前の契約更新(新パー トナーの選定、新規利権契約の締結等) は物理的に間に合わないのではという 見方が出てきている。  これに関し、ADNOCのスウェイ ディ総裁は 10 月 2 日、現地紙の取材 に対し、「ADCOの利権期限は 2014 年 1 月であるが、期限後の 1 月以降も 生産継続を認める」とコメントした。 スウェイディ総裁の発言は、期限切れ 後も、ADCOが現状体制のまま存続し、 操業を続けることを容認するという意 味と解釈されるが、そうではなくて、 期限切れ後は外資(パートナー企業)は ADCOの経営から撤退し、外資から ADCOに出向している技術者がいな くなっても、ADCOプロパーの要員 だけで油田操業を行うことを想定して いるとの見方もできる。穿うがった見方を すれば、ADCOへの出向者の引き揚 げという事態をちらつかせることで現 パートナーにプレッシャーをかけ、利 権交渉を有利に進める思惑があるとも 取れる。 (2)契約条件の見直し  ADCOの更新契約においては、契 約条件の見直しも行われる模様であ る。アブダビの多くの上流プロジェク トでは、参加企業が受け取るマージン が「バレルあたり1ドル」とされ、外資 にとっては経済性の低さが大きな問題 となってきた。PIW(2013.9.30)では、 今回の更新契約の入札プロセスの過程 で、「バレルあたり3ドル」という新条 件がアブダビ側から提示されたと報じ ている。この条件が実現すれば、外資 にとって劇的な改善ではないものの、 アブダビ事業の収益性向上につながる 一歩となるであろう。  また、アブダビ側は、コンソーシア ムへの参加比率について「10 %」と 「5%」の二つのケースでの選択を外資 に提示しているとも伝えられている。 あえてシェア 5 %のケースを提示する ことで、既存株主であるメジャーだけ に利権を取らせるのではなく、新規企 業にもマイナーシェアでの参加を促進 したいとのアブダビ側の意向が透けて 見えるようで興味深い。 (3)アジア勢の動き  PQ通過11社からパートナー候補企 業を選定するにあたり、ADNOC側は 何を評価基準としているのであろうか?  油田操業に関する技術力や操業経 験、コスト競争力ということであれば、

(9)

既存ADCO株主でもあるメジャー各社に 一日の長があるのは明らかである。むし ろ、アジア企 業 3 社(CNPC、KNOC、 INPEX)もノミネートされたところに何ら かのヒントが隠されているのかもしれな い。この3カ国は、いずれも大きな原油マー ケットを有する国であり(特に中国)、アブ ダビ原油を安定的に調達してくれる国の 企業として重視していると思われる。  韓国、中国については、両国とアブダ ビの経済面での関係強化のほか、ここ数 年の首脳レベルでのアブダビへの急接近 が功を奏したとの見方もできる。韓国の 李明博前大統領は任期5年の間に3回も 同国を訪問しており(2009年12月、2011 年3月、2012年3月)、ハリーファ大統領 やムハンマド・アブダビ皇太子との会談 を重ねた。2009年12月訪問時には、韓 国企業のアブダビでの原発受注契約の締 結に立ち会い、2011年3月には、石油、 ガス分野における広範な協力について合 意している。後者の合意は、その後の韓 国企業(KNOC、GS Energy)へのアブダ ビにおける3鉱区(陸上2、海上1)の開発 権益付与につながるものであった。  ムハンマド皇太子も李大統領任期中に 韓国を2度(2010年5月、2012年3月)訪 問しており、両者の親密さには際立った ものがあった。ムハンマド皇太子は誰も が認めるアブダビのエネルギー行政の キーマンであり、大統領と皇太子の良好 な関係がエネルギー分野における韓国企 業にとっての追い風になったことは間違 いない。日本の安倍晋三首相が本年5月 にUAEを訪問しムハンマド皇太子との会 談も行ったが、日本首相のUAE訪問は 第1次安倍政権時代以来6年ぶりのこと で、韓国とは大きく事情が異なる。  中国も、トップによるアブダビでの プレゼンスの拡大に余念がない。最近 では、2012年1月にアブダビで開かれ た World Future Energy Summit (WFES)2012(WFESはムハンマド 皇太子がホストでアブダビで毎年1月 に開かれる再生可能エネルギーに係る 大規模な国際会議・展示会、皇太子系 のMubadala社がメインスポンサー)で 温家宝首相(当時)が基調演説を行い、 カンファレンスに参加した内外のエネ ルギー関係者に強い印象を残した。  温首相のUAE訪問に合わせ、アブダ ビの未開発鉱区の共同調査に係るCNPC とADNOCの合意書の調印も行われた。 アブダビで開催されるエネルギー関係の 国際会議として有名なADIPEC(アブダ ビ国際石油展示会・カンファレンス、毎 年11月に開催)があるが、同じエネルギー 関係会議でもWFESは開会式をムハンマ ド皇太子が主宰し、元首クラスが基調演 説を行うという点で、会議のステータス ではADIPECより上と思われる。ムハン マド皇太子への絶好のアピールの場にも なり得る。余談ながらWFES開会式へ日 本からは最近では経済産業政務官や資 源エネルギー庁長官が参加しているが、 大統領や首相級を出席させる他国と比べ 役不足感は否めなかった。  初のアブダビ陸上鉱区への参入を目 指すINPEX(JODCO)は、40年にわた るアブダビ沖合鉱区での操業実績を有 し、その間に、アブダビ石油開発事業へ の多大な技術的・人的貢献を果たしてき ただけでなく、文化・社会・教育等石油 分野にとどまらない実に幅広い分野での 貢献をしてきており(「アブダビとの永続 的関係をめざして」 石油・天然ガスレ ビ ュ ー「2009.5 Vol.43 No.3」)、ア ブ ダ ビ 政 府、 ADNOCからも高 く評価されている。   今 回 の 入 札 で は、アブダビ側は EORに よ る 石 油 生産能力拡大を大 きな技術課題と捉 え て お り、 特 に CO2による増進回 収技術を持つ企業 が有利との見方がある。INPEXは油 田操業で得た EORに係る経験・知見 に加え、JOGMECが ADNOCと進め てきたCO2EORの共同研究(後述)に メンバーとして参加し技術内容を共有 してきており、この点は CO2EOR技 術を保有しない中韓に対する大きなア ドバンテージとなり得る。

4.

JOGMECのアブダビ

への取り組み

 筆者は 2010 年 5 月から今年 7 月ま での3年あまり、アブダビのJOGMEC 中 東 事 務 所 で 勤 務 し、 そ の 間、 JOGMECの同国向け事業の進展に向 け微力ながら取り組んできた。それら の事業の概要を以下に記す。なお、 JOGMECの事業は日本の民間企業と の連携を前提とした事業も多く、アブ ダビに対しても、下部ザクム油田にお ける CO2EORの共同研究等、民間企 業を巻き込んだ官民挙げての取り組み が多く成されてきた。一方、1989 年 に開始されたADNOCをはじめとする 産油国 NOC向けの研修事業などは民 間企業での実施が困難な分野の事業で あ り、 こ の 点、 政 府 系 機 関 で あ る JOGMECが独自に有する機能、リソー スを最大限に活用した事業と言える。 WorldFutureEnergySummit2012で 基調講演を行う温家宝中国首相(当時、2012年1月) 写1 出所:筆者撮影

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JOGMECは多彩な内容の事業をアブダ ビで展開することにより、本年5月の安 倍首相のUAE訪問で両国が合意した 「重層的パートナーシップの拡充」に少 しでも貢献できればと考えている。 (1)ADNOCとの新たなMOUの締結  2013 年 2 月 10 日、JOGMECは ADNOCとの間で、「石油・天然ガス 分野における技術協力に関する覚書」 (Memorandum of Understanding: MOU)に調印した 。2000年に締結さ れた旧 MOUの改訂版となるもので、 従来の協力事業を大幅に拡大して、わ が国企業の先端技術により油・ガス田 での操業上の問題を解決する事業の実 施やこれらの新技術に関する人材育成 を強化していくことで合意した。MOU 調印式は、アブダビ市のADNOC施設 で、茂木敏充経済産業大臣同席の下、 双方の代表者(河野博文JOGMEC理事 長、スウェイディ ADNOC総裁ほか)が 出席して行われた。  協力対象分野を拡大して新たに共同 実施する事業は以下のとおりである。 ◦ アブダビでの油・ガス田操業上の問 題をわが国企業の先端技術で解決す る~「資源国向け技 術ソリューション事 業」~ ◦ 従来の石油・天然ガ ス開発技術に加え、 上記先端技術を活用 す る た め の 人 材 育 成・研修事業 ◦ CO2を用いた原油増 進 回 収(Enhanced O i l R e c o v e r y: EOR)および温暖化 ガス削減に資する海 洋油田での実証試験 の共同推進  MOU調印式の様子 は、地元の有力メディ ア(アラビア語紙Al-Ittihadなど)でも 大 き く 取 り 上 げ ら れ、JGGMECと ADNOCの協力関係が石油関係者のみ ならず UAE国民全般に広く認知され ることになった。 (2)技術ソリューション事業  資源国向け技術ソリューション事業 は、JOGMECが 2013 年度から本格的 に始めた新たな資源国協力事業である。 産油国が抱える石油・天然ガス開発に おける技術的課題(ニーズ)に対し、日 本の先端・先進的な産業技術(シーズ) を転用・活用し、技術的解決策(ソリュー ション)を提供するというコンセプトで 進められ、わが国企業のビジネス創出 を支援するとともに、産油国との関係 強化を狙いとしている*2。JOGMECは ADNOCとのMOU調印式(2013年2月10日) 写2 (注) (左から)シャムシ戦略調整局長、クベイシ探鉱生産局長、加茂駐UAE特命全権大使、 スウェイディ総裁、茂木経済産業大臣、河野JOGMEC理事長 出所:JOGMEC 技術ソリューション事業のコンセプト 図5 出所:JOGMEC

(11)

長期にわたる協力関係のベースがある ADNOCに対し他に先駆けて同事業の コンセプトを紹介したところ、前向き な反応が示されたため、今次 MOUの 合意事項の一つとして織り込まれた。 具体的な案件の選定はこれからである が、今後、産油国側ニーズの調査とニー ズにマッチした日本側の提供可能な技 術(シーズ)について議論するワーク ショップの開催等により、アブダビで 技術ソリューション事業の先行実施案 件が生まれることが期待される。  また、技術ソリューション事業の関連 イベントとして本年 5月に開催された JOGMECテクノフォーラム2013では、 ADNOCとJOGMECの長年の協力関係 を背景として、ADNOCのCO2EOR事業 担当マネージャーのアラファト・アル・ヤ フェイ氏が NOCを代表する立場からの 基調講演(題名「持続可能な発展への貢 献」)を行った(詳細については石油・天然 ガスレビュー「2013.7 Vol.47 No.4」参照)。 (3)研修事業の実施  教育・人材育成はアブダビが最も力 を入れている分野である。JOGMEC は、長年にわたり同分野でのアブダビ への協力・貢献を行ってきた。石油公 団時代の 1989 年から実施している産 油国 NOCを対象とする石油天然ガス 開発に関する研修コース(地質、物探、 掘削、油層の 4 コース、各コース定員 約 20 名、 期 間: 約 10 週 間、 場 所: TRC)において、毎回、ADNOCおよ びグループ会社の技術者を受け入れて きた。UAEからの参加実績は、石油 公団時代から平成 24 年度まで合計 67 名に上る。各コース 参加者は各国 1 名が 原 則 で あ る が、 UAEについては同 国との関係の重要性 に鑑かんがみ 2 名を受け入 れている。   上 述 の JOGMEC が実施する通常研修コースとは別に、 民間企業に委託してADNOCグループ 会社のみを対象とする特定テーマの研 修(LNG研修等)も実施している。こ れには過去41名が参加している。  その他、フェローシップ制度として、 毎年、UAE大学(地質系学部)から5名、 Petroleum Institute(PI、アブダビ石 油 大 学 ) か ら 5 名 の 学 生 を 招 い て JODCOが企画・実施している夏季日 本研修について、JOGMECは資金面 での支援を行っている。夏季日本研修 には、2013年3月時点で両大学からこ れまで計115名の学生が参加している。  通常研修コースは開始以来 25 年に なるが、過去のアブダビからの研修参 加者のなかには、ADNOCや操業会社 の幹部クラスになった者も多くおり、 各社のキーパーソンとして活躍してい る。たとえば、ADNOC Director(取 締役)のアリ・ハリファ・アル・シャム シ戦略調整局長は総裁の懐刀とも称さ れる実力者であるが、石油公団(当時) の海外技術者研修の第1回研修として 1989 年に開催された物理探鉱コース の 修 了 生 で あ る。 そ の ほ か に も、 ADNOCのE&P部門を中心に多くの部 長クラスの人材を輩出している。筆者 は多くの研修修了生と話をする機会が あったが、シャムシ氏をはじめとして 修了生は例外なく日本に対する好印象 を語っている。  アブダビで活動する日本の上流開発 会社各社からも、アブダビ側カウンター パートとなるADNOCの技術者のなか に親日派のJOGMEC研修修了生が少な からずいるため、日本企業・スタッフ が関与する業務の円滑な遂行に役立っ ている、ADNOCグループにおける日 本企業の評価・地位の向上にもつながっ ている、などJOGMEC研修の実績を高 く評価する声をいただいている。  本年 3 月に弱冠 39 歳の若さで UAE のエネルギー大臣に就任し、安倍首相 が参加した 5 月の日本 UAEビジネス フォーラムで UAE側ホストを務めた スハイル・ムハンマド・アル・マズルー イ氏もJOGMEC(当時、石油公団)に よる 1998 年開催の油層工学コースに 参加した経歴がある。エネルギー資源 の所有および処分に関する政策決定の 権限をすべて各首長国の行政機関(ア ブダビの場合、国営石油会社ADNOC と上位機関のSPC〈最高石油評議会〉) が握る UAEで、連邦のエネルギー大 臣に日本での研修経験を持つ人物が就 任したからといって、アブダビの油田 権益更改交渉で日本企業が有利になる ということにはならないが、日本アブ ダビ関係の深化を示すエピソードの一 例ということが言えよう。 通常研修(JOGMEC-TRC実施、地質・物理探査・掘削・油層の4コース) 67名 特定テーマ研修(民間企業委託LNG研修) 41名 フェローシップ事業(UAE大学、PI学生を対象とする夏季日本研修) 115名 JOGMEC研修事業へのUAEからの参加実績(1989年~2013年3月末) 表5 出所:JOGMEC マズルーイ・ UAEエネルギー大臣 写3 出所:UAE政府ホームページ

(12)

 産油国との人的交流を深めるため に、JOGMECは研修修了生との意見 交換会(OB会)を国別に数年に1回の 頻度で行っているが、アブダビにおい ては、最近では ADIPECの開催時期 に合わせ 2010 年 11 月、2012 年 11 月 と立て続けに意見交換会を開催した。 特 に 2012 年 11 月 の 意 見 交 換 会 は、 JOGMEC理事長主催で開催され、ア ブダビ側からは通常研修修了生のほ か、フェローシップ修了生や共同研究 関係者など50名を超える参加があり、 成功裡りに終わった。JOGMECのみな らず石油会社にとっても産油国におけ る重要な人脈構築の機会と考え、意見 交換会には在 UAEの日本の石油開発 会社の関係者も招待し、交流を深めて もらう場とした。   本 年 2 月 締 結 の MOUに 基 づ き、 ADNOC向けのJOGMECによる新たな 研修事業の実施に向けた検討も進めら れている。具体的実施内容は未定だが、 近年、JOGMECが実施してきたイラク 特別研修と同様の形態となることが想 定されており、産油国(アブダビ)側の ニーズに合わせたさまざまなテーマの2 ~ 4週間程度の短期コースを同国向け に提供する予定である。テーマについ ては、従来の石油上流開発に係る技術 研修プログラムに加え、アブダビ側の ニーズが高い施設、エンジニアリング 系のプログラム等が期待され、技術ソ リューション事業の進展に合わせわが 国の先端技術の活用に係る研修プログ ラムの導入も検討される。 (4)「国際資源開発人材育成事業」に よるPIとの関係強化  経済産業省が進める「国際資源開発 人材育成事業(石油・天然ガス分野)」 の一環として、JOGMECは「アブダビ 石油大学とわが国大学等との連携促 進」事業を受託して、活動してきた。 具体的には、アブダビ石油大学(PI)と 東京大学エネルギー関連3センター(エ ネルギー・資源フロンティアセンター 〈FRCER〉、エネルギー工学連携研究 セ ン タ ー〈CEE〉、 先 端 電 力 エ ネ ル ギ ー・ 環 境 技 術 教 育 研 究 セ ン タ ー 〈APRT〉)間の教育・研究に係る連携 を促進する活動で、2 年間にわたる協 議を経て、2013 年 3 月 4 日に PIと東 京大学大学院工学系研究科間で大学間 の包括的連携協定(MOU)が締結され、 今後の具体的な連携(共同研究、人材 交流等)の進め方に関して合意した。  PIは、自国での技術者育成を目的 として 2000 年に ADNOC主導で設立 された大学である。ADNOCのほか、 アブダビで活動している BP、ジャパ ン石油開発(JODCO)、Shell、Totalの 外国石油会社4 社もスポンサーとなっ て い る。PIの 卒 業 生 は 基 本 的 に ADNOCグループ会社への就職が義務 づけられるなどアブダビの石油ガス産 業にとって重要な人材供給センターの 役割を担っている。理事会(Governing Board)の会長を ADNOC総裁が務め るなど、PIは ADNOCと極めて深い 関 係 を 有 し、PIに 対 す る 貢 献 は ADNOCとアブダビ政府に日本の貢献 研修修了生との意見交換会(OB会、2012年11月) 写4 出所:JOGMEC PI校舎 写5 出所:PIホームページ

(13)

をアピールする良い機会に な る こ と か ら、JOGMEC としても積極的に大学間連 携事業の成立に向けたサ ポートを行ってきた。 (5)CO2EORに 関 す る ADNOCとの共同研究  JOGMECは 石 油 公 団 時 代も含めて 30 年以上にわ たってCO2EOR(CO2圧入に よる石油増進回収)を中心と したEORの研究開発を行っ てきており、国内外での実 証試験を通じて実績を積み 上げてきた。アブダビにお い て も、 長 年 に わ た り、 ADNOCとの間でCO2EORの共同研究 を 行 っ て き て い る。JOGMECは ADNOCとの合意に基づき、2000年か ら2005年まで沖合の上部ザクム油田を 対象とするCO2回収を含めたCO2EOR

の研究を共同で実施し、2010年から2 年間は下部ザクム油田を対象とした共 同研究を実施した。下部ザクム油田に 関する研究では、研究施設でコアや原 油サンプルを使ったCO2圧入による回 収率の向上を評価し、良好な結果が得 られた。CO2EORが現行の水攻法(水圧 入)や随伴ガス圧入に比べEOR効果が 高いことが確認されている。  今後は、上記評価を基に、実際の油 田におけるCO2EORの実証試験(パイ ロット)に進むかどうかをADNOC側が 判断することになるが、JOGMECは 2013 年 2 月締結の ADNOCとの MOU での合意に基づき、実証試験の共同推 進に向けた取り組みを行っている。  CO2EORについては、EOR(アブダ ビの原油生産能力増強に寄与)、環境対 策(回収CO2の有効活用)、圧入随伴ガ スの国内消費への転用(UAEのガス供 給不足への対応)という“一石三鳥”の効 果があるとされる。経済性の見極めや CO2源の確保・輸送といった課題はあ るが、ADNOCはCO2EORの導入に基 本的に前向きである。  アブダビ政府が陸上鉱区の権益更新 にあたり入札参加の条件としてCO2を 含むEOR技術の有無を挙げ、2018 年 の海上鉱区の権益更新時も同様の方針 を採るとの見方がある。こうしたなか、 CO2EORに関して、日本は官民挙げて の取り組みを行ってきた。上記共同研 究の実施チームにはINPEX(JODCO) も参加し、CO2圧入技術に係る知見、 経験を積み重ねてきており、メジャー に劣らぬ先端EOR技術を保有すること が、今後、日本にとって権益更改交渉 を有利に運ぶための切り札になる可能 性を秘めている。

わりに

 UAEは1971年12月の建国(連邦成立) からまだ42年しか経過していない若い 国であるが、その間、ばく大な石油収入 を背景に飛躍的な発展を遂げてきた。 UAEを構成する7首長国のなかで、国 家経済の屋台骨を支える石油・天然ガ ス資源の大半が集中するアブダビ首長 国が、事実上の連邦の盟主と位置づけ られている。アブダビは、250万バレル /日を超える原油生産で得られる巨額の オイルマネーを生かした国造りを行って おり、the garden city of the gulf(湾岸 の庭園都市)とも称される緑あふれる近 代的な街並みの建設や、教育費、医療 費の手厚さなど充実した社会保障の実 現などに力を入れてきた。最近は、60 階を超える高層ビルやホテル、オフィス、 レジデンスの複合施設が次々と建てられ ている。とりわけ、2014年の完成を目 指し建設中のADNOCの新本社ビルは、 アブダビの石油産業の発展を象徴する 意味合いも持つ新たなランドマークとし て認知されることになろう。  成長を続けるアブダビは、日本から見 れば、有数の石油・天然ガスの供給国 であることに加え、最大の自主開発原油 の権益賦与国であるという2点において、 エネルギー安全保障の観点からも極め て重要かつ関係の深いエネルギー資源 国である。今後、来年1月に期限を迎え るADCO陸上油田利権問題の取り扱い を皮切りに、2018 年に期限を迎える ADMA沖合鉱区他、2026年期限の上 部ザクム油田まで、国際石油企業の関 心を集める重要な利権更新が続く。アブ ダビ側が利権賦与企業を選定するにあ たり何を評価基準とするのか、そして日 CO2EORのイメージ 図6 出所:JOGMEC

(14)

本としてどのような取り組みをすべきか について、改めて検討する必要がある。  これまで述べてきたように、アブダビ 側が重視する要素としては、「石油開発 に関する総合的な技術力や経験」「生産 能力拡大のためのEOR技術の保有」「ア ブダビ原油のマーケットを提供できる か」「教育・人材育成への貢献」などが 挙げられるが、このほかに「当該国・企 業とのトップを含めた関係の緊密さ、人 脈の有無」も無視できない要素であろう。 石油会社が有する「資金力・財務力」に ついては、キャッシュリッチのアブダビ にとって必ずしも優先順位は高くないと 考えられる。  ここで参考となるのが、本年5月7日 に開催されたJOGMECテクノフォーラ ム2013 で ADNOC代表として基調講 演を行ったアラファト・アル・ヤフェイ 氏の下記のコメントである。  「ADNOCは、JOGMECをはじ めと する日本企業とは、1989年以来技術者 研修プログラムや CO2EOR関連スタ ディに代表される多数の共同研究を通 じて、長期にわたって技術協力関係に ある。ADNOCはJOGMECと協力して、 アブダビ初の洋上CO2EORパイロット 実施に向け取り組んでいる、また、持 続可能な石油開発の実現に向け、HSE 活動・上下流開発・効率向上・人材育 成等の多岐にわたって、日本のあらゆ る技術分野との協力を必要としている」 (文責〈翻訳〉:JOGMEC)  こうしたコメントから浮き彫りになる のは、ADNOCがパートナー候補とし ての日本(企業含む)に最も期待してい るのは、「CO2EORを含めた技術力」と 「人材育成・教育への貢献」の2点であ ることである。4項「JOGMECのアブダ ビへの取り組み」で述べたJOGMECの 取り組み(研修事業、共同研究等)の多 くが、アブダビのこれらのニーズに十 分合致していることが分かる。  「トップを含めた関係の緊密さ、人脈の 有無」に関しては、少なくとも当事者であ る日本企業は、いずれもアブダビでの約 40 年 に わ た る 操 業 経 験 を 背 景 に、 ADNOCとは十分な関係を築いているこ とが確認できる(ちなみに、Bunduq社は 2010年12月に設立40周年、アブダビ石 油は 2013 年1月に45 周年、JODCOは 2013年2月に40周年をそれぞれ迎えた)。  今後は、今年5月の安倍首相のUAE 訪問で再び動き出した感のある政府間 の資源外交の取り組みや、JOGMEC のアブダビへのアプローチの一層の強 化を図る等により、2 国間声明で謳うたわ れた「重層的パートナーシップ」の構築 に取り組む必要がある。アブダビ、日 本双方が利益を得るWin-Win関係の実 現を目指すべきである。 執筆者紹介 猪原 渉(いのはら わたる) 兵庫県出身。大阪大学卒業。1982年住友金属工業(現、新日鐵住金)入社。1997年から2000年まで、サウジアラビアの日サ合弁鋼管製造 会社に勤務。2000年6月、石油公団(企画調査部)に出向後、中東の石油、天然ガス開発動向の調査・分析業務に従事。2004年1月、石油 公団に移籍し、その後、JOGMEC調査部上席研究員。2010年5月から2013年7月まで、アブダビ(UAE)のJOGMEC中東事務所所長。現在、 JOGMEC調査部特命調査役。 <注・解説> *1: 経済産業省「資源確保戦略」(平成24年6月)P12 *2: 技術ソリューション事業については、石油・天然ガスレビュー「2013.7 Vol.47 No.4」に詳しい紹介記事が掲載されて いるので参照されたい。 建設が進むADNOC新本社ビル(左、2013年1月撮影) 写6 出所:筆者撮影

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