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CONTENS 3 巻 頭 言 山 中 英 治 ( 若 草 第 一 病 院 院 長 ) 特 集 急 性 期 発! 多 職 種 連 携 による 地 域 包 括 ケアの 推 進 プロローグ 岡 田 晋 吾 ( 北 美 原 クリニック 理 事 長 ) 事 例 1 事 例 2 13 シリーズ

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(1)

急性期発! 多職種連携による

地域包括ケアの推進

事例1

 磐田市立総合病院/地域訪問活動を軸とした医療・介護連携の推進

事例2

 JA長野厚生連佐久総合病院/機能再編による包括ケア体制の強化

2015

秋号

シリーズ企画 第2回 

医療連携への眼差し

看護師、社会福祉士、医療福祉連携士

一般財団法人 住友病院 地域医療連携室 村上 治子 さん

薬ネットワーク

オピオイド使用患者への自記式手帳を

利用した緩和ケア連携の取り組み

地域連携レポート 大垣市民病院

連携による糖尿病診療の質追求

かかりつけ医の成長に確かな手応え

最前線

2015

れんけい

医 療 連 携 と パ ス

特 集

(2)

2015

秋号

最前線

れんけい

医 療 連 携 と パ ス

C O N T E N S

3

巻頭言

山中 英治

(若草第一病院 院長)

4

特 集

急性期発! 多職種連携による

地域包括ケアの推進

プロローグ

岡田 晋吾

(北美原クリニック 理事長)

事例1

磐田市立総合病院

地域訪問活動を軸とした医療・介護連携の推進

事例2

JA長野厚生連佐久総合病院

機能再編による包括ケア体制の強化

13

シリーズ企画

医療連携への眼差し

医療から福祉に至る幅広い経験を生かし

前方連携業務に新たな風を吹き込む

村上 治子 さん

(看護師、社会福祉士、医療福祉連携士 一般財団法人 住友病院 地域医療連携室) 第2回

16

地域連携レポート 大垣市民病院

連携による糖尿病診療の質追求

かかりつけ医の成長に確かな手応え

19

薬ネットワーク

オピオイド使用患者への自記式手帳を

利用した緩和ケア連携の取り組み

小枝 伸行

(八尾市立病院 事務局 参事 薬剤師・医療情報技師・診療情報管理士)

23

編集後記

地域包括ケアの構築が喫緊の課題となるなか、地域連携のニーズや仕組みづくりも多様化しています。このような激変の時代に対応するため、長

(3)

大人は誰も初めは子どもだった

~人は誰も終わりは老人になる~

 「宝宝」という中国語をご存知ですか? 夏休みに2泊 3日で娘夫婦と孫が住む上海を訪れました。大阪からは 空路3時間弱、新幹線で東京に行く程度で着く近い国で す。中国人は非常に子ども好きで、みんなが孫に笑顔で 「バウバウ」とあやしてくれます。babyのことを中国語 で宝宝(バウバウ)と言うそうです。子どもは宝、やは り漢字って良いなあと思いました。中国も高齢化社会を 危惧して、一人っ子政策を完全にやめるそうですが当然 でしょう。子どもが減ると社会に活気がなくなります。 上海は人が多くにぎやかで、街に活気がみなぎっていま した。  子どもの活力も宝ですが老人の知恵や経験も国の宝で す。「老人」という呼称がよろしくないとか言う方たち が「高齢者」という無味乾燥な呼称に変えられたようで すが、「長老」「老練」「家老」「老大家」という言葉はす べて豊富な人生経験に敬意を表しています。かつては日 本でも町内はみんな顔見知りで、町内で走り回って遊ぶ 子どもたちを、地域の老人が遊び相手をしたり見守った りしていました。老人たちは元気をくれる子どもが好き で、子どもたちは手先が器用でいろいろな遊びを知って いて、お菓子をくれて甘やかしてくれるお爺ちゃんやお 婆ちゃんが好きでした。  しかし、近年は近所づきあいを疎む傾向になり、過剰 な個人情報保護も相まって、地域の子どもと老人が触れ 合う機会がなくなりました。そのためか不足している保 育所を建設しようとすると「せっかく静かな住宅地なの に子どもの声でうるさくなる」と、周辺の高齢者を中心 とした住民から建設反対運動が起こったりしています。 確かに保育園や幼稚園より老人ホームのほうが静かでは ありますが、元気な子どもの声を騒音と感じる人が増え てしまった日本の社会が寂しく思われます。ところで、 日本と同じく少子高齢化が進むドイツでは、2011年に「子 どもの声は騒音ではない」という法律が制定されました。 法律で定めてしまうところはさすがドイツです。  数年前に東京・世田谷区で保育園新設の話が出て、や はり高齢者たちを中心に反対運動が起こったそうです。 園側は説明会を何度も開いて理解を求めました。「子ど もの声のしない町には未来がない」と考えた人が話し合 いを仲介し、住民の不安を解消する対処を行い、園長も 地域の仲間として迎え入れてほしいとお願いしました。 その結果、住民たちも理解し保育園を受け入れました。 それからは地域の祭りに保育園の子どもたちが参加し、 老人も一緒に楽しく過ごす街になったそうです。子ども たちのおかげで町が明るくなり、老人は元気をもらい、 子どもたちは老人から遊びを教えてもらい見守ってもら う。これこそ「地域包括ケア」ではないでしょうか?  これからは、子どもも老人も地域で安心して過ごすこ とができる施設とシステムが必要です。保育園、老人ホー ム、公園、公民館、図書館、商店街、そして診療所、薬 局、病院も、すべて地域にあって住み慣れた街で顔見知 りの人たちと健やかに過ごせる。医療施設もその中心に なれると考えます。そしてリニューアルした「れんけい 最前線」は、医療を中心に人と人とのつながりを深める 情報を提供することを目指します。 若草第一病院 院長

山中 英治

巻頭言

(4)

特 集

急性期発! 多職種連携による

地域包括ケアの推進

プロローグ

かかりつけ医と多職種とのネットワークが地域包括ケアの生命線

北美原クリニック 理事長 

岡田 晋吾

 高齢化社会の急速な進展、人口減 少の時代を迎えて地域包括ケアシス テムの構築は避けられない課題と なっています。私自身も函館市、南 渡島の医療介護連携の会議のメン バーに入っており、医療と介護の連 携についてのいろいろな課題につい て考えることが多くなっています。 もはや1つの病院だけでは医療を行 えないことは明らかであり、地域全 体で1人の患者さんをどう診ていく かという体制づくりが重要になると 感じています。  また、医療だけでなく地域におけ る介護環境をどう整えていくかを考 えることが大切であり、地域ごとに 課題が異なり、構築の方法も異なっ てくるでしょう。  私もいろいろな地域で講演させて いただき、さまざまな取り組みにつ いて勉強させてもらっていますが、 うまくいっていると思える地域は、 行政と医師会が上手に連携をとって 進めています。しかし、一般の診療 所医師にとっては目の前の外来患者 を診ているだけで精一杯であり、地 域包括ケアシステムという言葉はよ く聞くし、目にする機会も増えてい るが、どのような立場で関わればい いのかわからないというのが正直な ところだろうと思います。  私も開業して11年目を迎えます が、診療所の医師は病院勤務医とは 違い、患者さんを病人として診てい るだけではなく、患者さんの生活や 家族環境を考える機会も多くあり、 患者さんを地域の生活者として見て います。かかりつけ医として病院へ の紹介状だけでなく、介護保険制度 における主治医意見書も書いてお り、一人ひとりの患者さんを通して 地域の医療・介護システムに深く関 わっているのが診療所医師だと思い ます。そのため、地域包括ケアシス テムの構築において患者さんに一番 近い立場として積極的に関わる必要 があり、地域医師会がリーダーシッ プをとっていくことが重要でしょう。  在宅医療の経験が少ない医師は、 地域の医療・介護の現場で働いてい る訪問看護師、ケアマネジャー、ヘ ルパーなどを知る機会が少なく、ど のような場面で彼らがどのような働 きをしているのかを十分に把握して いるとはいえません。地域包括ケア システムにおいては多職種との連携 関係を構築することが重要であり、 医師は医療でも介護においてもリー ダーシップをとることが求められま す。ただし、実際に医師が自ら行わ なければならないことは少なく、地 域の優秀なスタッフに任せることで 今まで通り、目の前の患者さんの診 療や治療に集中していくことができ ると考えています。  今、地域では医療・介護の多職種 が一緒に勉強することができるさま ざまな研究会などが多く開かれるよ うになっています。しかし残念なこ とに積極的に参加される医師は少な いのが現状でしょう。たくさんの医 師が地域のスタッフと一緒に楽しく 勉強できる地域こそ、地域包括ケア システムを構築できる地域ではない かと考えています。

磐田市立総合病院/地域訪問活動を軸とした医療・介護連携の推進

JA長野厚生連佐久総合病院/機能再編による包括ケア体制の強化

事例1

事例2

(5)

磐田市立総合病院

事例1

地域完結型を目指すも

医療連携だけでは限界

 磐田市立総合病院は、静岡県の西寄りに位置する中東 遠二次医療圏(人口約47万人)で、救命救急医療セン ターを持つ基幹病院である。年間の救急外来受診者数は 1万7,000人を数え、周産期母子医療センター、がん診療 連携拠点病院、地域医療支援病院等の指定を受けている。 その地域を代表する急性期病院において数年前から、在 宅医療や介護分野との連携強化など、地域包括ケア実践

“地域包括ケア”の現場に身を置き

医療と介護の共通言語づくりに着手

 急性期機能の維持・向上を図るうえで急性期病院は 積極的に地域包括ケアに関わっていかなければならな い ── 。このような信念のもと、磐田市立総合病院 では地域の基幹病院として行政や医師会等との協働 により、多職種間交流や地域医療連携の拡充を図り、 2014年からは病院スタッフが積極的に外へ出ていく ことで地域包括ケアの基盤づくりを進めている。地域 包括ケアの構築に向けた同院の取り組みを紹介する。

地域訪問活動を軸とした医療・介護連携の推進

に向けての基盤整備が図られている。  「当院に一番求められるのは、もちろん急性期患者さ んの対応です。そのためには当院の退院後、住み慣れた 地域でのケアにすぐ移行できるように、在宅医療や介護 との連携にも力を入れていく必要がありました」と、同 院の副病院長で地域連携活動を統括する田ノ井千春氏は 語る。  静岡県は全国的にも人口当たりの医師数が少ない県 で、さらに同県のなかでも中東遠二次医療圏は医師数が 不足している。限られたマンパワーや病床を有効に活用 して自院の急性期機能を高めていくうえで、それぞれの 施設の役割分担と連携による地域完結型医療は欠かせな い。同院でも連携パスなどを駆使して医療ネットワーク の構築を進めてきた。  「ただ、回復期や慢性期の患者さんをしかるべき医療 機関へ紹介したり、病診連携を進めていくだけではどう しても限界が出てきます」(田ノ井氏)。地域完結型医療 の実践には、在宅医療や介護を見据えた連携が重要との 考えから、数年前より市が主導する地域包括ケアに向 けた取り組みに参加している。多職種間交流研修では、 市の保健師や栄養士、居宅介護支援事業所のケアマネ ジャーや看護師などの研修を受け入れる一方、同院から も地域包括支援センター等にスタッフを派遣し、それぞ れの職場や職種への理解を深めている。 在宅や介護との連携にも力を入れる磐田市立総合病院

(6)

事例1 磐田市立総合病院

にあたり、連携室スタッフがかかりつけ医の個別訪問を 行っていたが(表)、2014年からは同院の医師によるか かりつけ医の訪問・面談を開始した。従来からかかりつ け医を対象とした診療科別のカンファレンスや連携の会 等を開催しているものの、参加者が限られていたり、か かりつけ医からの本音がつかみにくいため、多くの開業 医等の先生方に直接会ってコミュニケーションを深めて いく狙いがある。これも率先垂範の精神で管理者クラス から訪問をスタート。副病院長である田ノ井氏も数カ所 の診療所を訪れた。  「やはり面と向かってお話するといろいろなことを聞 くことができます。相手の先生も話しやすいのだと思う。 良いことも悪いこともざっくばらんに話してもらえるな かで、気づかされることも少なくありません」と成果を 口にする。将来的には病院勤務の多くの医師に参加して もらう考えで、まずは訪問する医師を診療科部長クラス までに広げていくという。  そのほか、磐田市と隣接する森町の病院・訪問看護ス テーションの看護代表者と薬剤師が一堂に会する「つな がる会」を発足し、地域医療における課題の共有や課題 解決に努めている。同会をつくるにあたっても、回復期 病院や精神科病院、訪問看護ステーションなど15の参加 施設に対して、同院の薬剤部長と看護部長が挨拶訪問を 実施した。組織全体として地域連携を推進する一方、看 護部や薬剤部など各部門でも地域との関係づくりに前向 きなのが同院の特徴といえる。

介護施設からの情報をもとに

医療職の介護への意識触発

 一方、介護との連携は2015年、地域医療連携室に専任  さらに、2014年からは病院主導で地域包括ケアの基盤 をつくる活動にも取り組み始めた。「行政任せにするの ではなく、急性期病院としてもっと積極的に関わってい こうということになりました」と田ノ井氏は説明する。

医師と看護師による訪問

指導者クラスからスタート

 同院の地域包括ケアに向けた活動の基本コンセプト は、「病院を出て、現場を知る」という一言に集約される。 「連携先の実情がわからなければ、具体的な連携のイメー ジもつかめない」(田ノ井氏)と考え、病院スタッフが 連携先で面談や研修を行う活動を開始した。  同院看護師の訪問看護ステーション研修もその1つだ。 急性期医療に携わる看護師が数日間、地域の訪問看護ス テーションに出向き、訪問看護師と患者宅を訪問して訪 問看護の実際を学ぶ。まず指導者クラスの意識改革を図 る狙いから、2014年は副看護部長、看護師長や主任看護 師、認定看護師といった職制や認定資格を持つ看護師39 名を研修に送り出した。「研修を受けた後に話を聞くと、 退院支援に活かせるといった意見や、そもそも退院支援 や退院後に対する意識が低かったと自覚する看護師が結 構いました。それだけでも成果はあったと思います」と 田ノ井氏は語る。研修後、退院時カンファレンスでケア マネジャーや訪問看護師の話を聞いて在宅のイメージが つかめるようになるなど、同研修が病院業務で活かされ る機会も多いという。2015年は残りの看護師長や主任看 護師が研修に参加し、指導者クラスの看護師全員の研修 を終える計画だ。その後は、他の看護師にも研修に行っ てもらうことを予定している。  “病院を出て、現場を知る”活動は医師も例外ではない。 もともと同院の地域医療連携室では、病診連携を進める 磐田市立総合病院 副病院長

田ノ井 千春

表 地域医療連携室の各施設への訪問件数(2014年度) 診療所 助産院 72 病院 41 訪問看護施設等 12 介護老人福祉施設 1 介護老人保健施設 2 居宅介護支援事業所 1 その他 18 計 147

(7)

地域訪問活動を軸とした医療・介護連携の推進

いをしているところも見受けられます。そこのところを フィードバックして少しでも両者の溝を埋めていければ と考えています」  地域包括ケアの実現にあたって、田ノ井氏が考えるも う一つのハードルが市民の理解である。サービス提供側 が地域の流れのなかで医療やケアを提供しようとして も、患者さんやご家族がそれを拒めば、地域包括ケア構 想は根底から揺さぶられるからだ。そうならないために、 市民への啓発が重要と指摘する。「行政は地域包括ケア のPRに熱心ですが、行政だけにお任せするのではなく、 病院としても市民の方々に理解していただくことが必要 であると考えました」(田ノ井氏)。同院では「地域医療 いわた」という市民団体と定期的に情報交換しているほ か、市民や企業を対象に病気や健康づくりに関する出前 講座を行っている。各自治区などで行う出前講座は、認 知症や生活習慣病予防などいくつかのラインナップを揃 え、そのなかからテーマを選んでもらって同院の医師や 看護師らが講演を行うというスタイル。2014年度は市民 向けに29回、企業向けに8回開催するなど好評を博して いる(図1)。こうしたイベントを開催する際に、併せ て医療制度の課題や地域完結型医療、地域包括ケアの必 要性等に言及し、市民の理解を促している。 の看護師長が配属されたのを機に、介護保険施設など介 護施設への訪問を本格化させている。専従看護師と連携 室スタッフが介護施設を訪問するなかで、同院の役割や システムを説明したり、施設からの不満や要望などの声 を集めるなどが主な目的だ。すでに二次医療圏内の介 護保険に関連する全施設のうち半数以上を回っており、 2015年中に一通り訪問し終えるという。  とはいえ、介護との連携は、かかりつけ医や訪問看護 師といった医療職との連携ほど容易ではない。「これま で医療職と介護職はあまりつきあいがないため、お互い がよくわからないところがあります。特に医師は私を含 めて介護への関心が低かったと思います。そういう教育 を受けてきたからですが、これからは医療は医療、介護 は介護という時代ではありません。双方の溝を埋めて、 共通言語をつくっていく必要があります」と田ノ井氏は 強調する。そのため、介護に関心の低い医師に対しては 医局会で介護に関する基本的な知識を習得してもらう働 きかけを行っている。また最近では、連携室スタッフ の訪問によって介護施設からの情報を収集できるように なってきたことが、病院スタッフの意識を高めるきっか けになっている。「寄せられた情報に対する当院スタッ フの反応を伺うと、なかには医師や看護師が大きな勘違 図1 市民への啓発活動 市民団体との交流  市民の方たちと情報交換  年2回(総会)、毎月の定例会に参加 出前講座  各自治区などで講演を行う    市民 29回    企業 8回   参加者 医師 看護師 MSW       理学療法士 臨床心理士

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尿道カテーテル抜去パスの意義

事例1 磐田市立総合病院

図2 退院時共同指導料の算定数

退院時共同指導料は前年の3倍

院内の情報共有体制の強化へ

 一連の活動により、田ノ井氏はまだまだというものの、 連携先の診療所や訪問看護ステーションとの関係は大き く前進した。2014年の退院時共同指導料2の算定数が前 年の3倍以上に増加したことが、それを裏付けている(図 2)。  「一番積極的な看護部では、市内6カ所ある訪問看護ス テーションとの風通しは非常によくなってきました。今 年はそれを二次医療圏全体に広げていく方針です」(田 ノ井氏)。人的交流を深めるだけでなく、訪問看護の質 向上に寄与する例もいくつか出てきた。例えば、同院で は緩和ケアや褥瘡処置に対して病院の専門性の高い認定 看護師と訪問看護ステーションの看護師が一緒に訪問を 行う在宅患者訪問看護・指導料3を算定している。「当院 では皮膚・排泄ケアの認定看護師が訪問看護師と在宅を 訪問する機会がありますが、一緒にケアをしながらアド バイスを送ることで訪問看護師のレベルアップにもつな がります。特に褥瘡と緩和ケアのニーズが高く、同院か らの専門性の高い看護師の派遣は訪問看護師からも非常 に喜ばれています」と、田ノ井氏は語る。  これからの課題については、やはり介護との連携強化 である。同院では以前から介護施設連絡会を開催して情 報交換等を行ってきたが、今年度からは介護老人保健施 設や介護老人福祉施設など施設の種類別に連絡会を開催 し、各施設の具体的な課題を共有しているという。  加えて、退院調整や退院時カンファレンスを担う2名 の退院支援看護師にも、地域のケアマネジャー等との関 係強化を図るために、地域包括ケアセンター等の関係者 会議に機会があれば出席してもらっている。「現状では 介護職と直接接点があるのは相談支援センターのMSW がほとんどで、そこに退院支援看護師が積極的に関われ るようになればMSWの負担軽減にもつながる。また、 MSWとは違った形のコミュニケーションが図れると思 います」と田ノ井氏は期待する。  同院では今年、地域医療連携室と相談支援センターを 一緒にした「地域医療支援室」を立ち上げた。連携室ス タッフとMSWに加え、退院支援看護師が同じフロアで 入院から退院までの情報を共有し、円滑な地域連携や退 院支援に結び付けていくためである。また近々、入院 前から患者さんの背景をアセスメントして早期の退院支 援、退院後の在宅療養支援につなげていくシステムも導 入する。医療・介護のネットワーク強化が一定の成果を 挙げつつあるなか、急ピッチで地域包括ケア推進に向け た院内体制の整備にも取り組む考えだ。 保険医共同指導加算 3者以上の共同指導加算 20 (件) (件) (件) 18 16 14 12 10 8 6 4 2 2012 2013 2014 0 退院時共同指導料 90 80 70 60 50 40 30 20 10 2012 2013 2014 0 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 2012 2013 2014 0

(9)

JA長野厚生連佐久総合病院

事例2

「地域に出る」若月イズム受け継ぎ

独自の地域包括ケアを展開

 JA長野厚生連佐久総合病院は、1944年の開設時から、 農村地域の医療を守るためのさまざまな活動を展開して きた。なかでも、故・若月俊一名誉総長が1945年から始 めた地域の集会所などに出向いての出張診療や、「予防 は治療に勝る」と“検診隊”を派遣した巡回検診は広く 知られ、今も語り継がれている。 

病院機能を二分し連携体制を再構築

“佐久方式”の拡充に乗り出す

機能再編による包括ケア体制の強化

 「『病院の中だけにいたのでは現状を知ることはできな い。まず地域に出ろ』という若月先生の言葉が当院の原 点。地域との関わりを、終戦直後から大事にしてきた病 院です」と、診療部長の北澤彰浩氏は言う。  同院は、「目の前にいる患者さんを救うことに全力を 尽くす」ことを理念とし、救急医療や専門医療などを拡 充。並行して、高齢者の社会的入院が問題となった1980 年代後半には、「自宅に帰りたい」という患者さんの希 望に応えようと訪問診療に取り組み、継続した医療の提 供にも努めてきた。その後、医師と看護師を中心に、在 宅ケア活動を組織的に行う地域ケア科が設立され、訪問 診療・看護、居宅介護支援、訪問リハビリの提供や、宅 老所の運営などを手がけている。このように住民の要望 に沿った展開が、高度急性期から回復期、精神医療、在 宅医療・介護までの多彩な機能を持つ同院を形づくり、 独自の地域包括ケアシステムを築いてきたといえる。  現在、同院は佐久市を中心として、高度急性期・専門 医療では佐久、上小二次医療圏を合わせた、人口約40万 人の東信地区全域をカバーしている。2014年3月には、 同院の機能を2つに分ける形で、佐久市臼田にある本院 から、車で15分の市内中込に佐久医療センター(450床) をオープンさせた。  同センターは、高度救急・急性期医療や、がんや脳卒  「農村医学」の発祥の地、JA長野厚生連佐久総合病院は、 地域包括ケアの先駆けといっても過言ではない。故・若 月俊一名誉総長の理念に基づき「地域住民の要望」に沿っ た医療の提供に努め、高度急性期から在宅までをカバー する医療提供体制を築き上げた。しかし、医療環境が激 変していくなかで、他の医療機関と連携し役割分担を行 う、“地域完結型”のシステムへの転換がより一層求めら れている。2014年の佐久医療センターの開設をはじめ とする同院の新たな展開を紹介する。 地域医療と専門医療の“二足のわらじ”で、日本医療のモデルと いわれるほどのシステムをつくり上げた佐久総合病院

(10)

事例2 JA長野厚生連佐久総合病院

中などの専門医療に特化した病院である(表)。東信地 区全域から患者さんが来院することから、地区の中央に 位置しアクセスの良い立地を選んだ。一方の本院(351床) には、Common Diseaseを中心とした一般急性期や回復 期、在宅医療、人間ドックなどの機能を残し、地域密着 型の医療に軸足を移した。  もともと老朽化した本院を建て直す計画はあったもの の、あえて機器・設備費などが余計にかかる病院の分割 を選んだのには理由がある。地域の医療環境の変化が大 きかったと、北澤氏は指摘する。

地域住民の理解を重視

病院分化の理由を繰り返し説明

 きっかけは、2004年度から始まった新臨床研修制度だ。 研修医不足を懸念した大学病院が、派遣医師を医局に引 き上げた結果、多くの病院が医師不足に陥った。東信地 区も例外ではない。  同院の場合、研修病院として全国的な知名度があり、 医局と関係なく就職する医師が多く、医師引き上げの影 響はほとんど受けなかったが、周辺の病院では医師確保 が困難になり診療機能の低下を余儀なくされた。その結 果、地域ごとに4病院で急性期医療を分担していたバラ ンスは崩れ、同院が周辺病院で担えなくなった機能を肩 代わりするケースが増えていた。  「自院だけを守っていたら地域を守れない。当院だけ で完結していた医療を、他の医療機関と連携した地域完 結型に転換させる必要性に迫られました。そこで、“当 院の再構築だけでなく地区医療の再構築”をキーワード に、地域需要の高い急性期機能を切り離したのです」  同院には、2003年に南佐久郡で経営危機に陥った小海 赤十字病院の経営を引き継ぎ、全職員を再雇用して小海 分院として再建した実績もある。北澤氏はその経験を踏 まえ、「医療機関が1つ閉院すれば、その影響は他の医療 機関にも及びます。ある程度機能分担して地域医療を守 るという流れは、小海から始まったように思います」と 振り返る。  病院再構築の過程において重視したのは、一つは地域 住民の理解である。本院周辺の住民に対しては、なぜ病 JA長野厚生連佐久総合病院 診療部長

北澤 彰浩

2014年3月に開設した佐久医療センター。3次医療圏における高度 急性期の需要を満たすとともに、本院の在宅復帰機能の向上をも たらした 表 佐久総合病院と佐久医療センターの病床数 一般病棟 123床 人間ドック 36床 地域包括ケア病棟 40床 療養病床 40床  うち回復期リハビリ病棟 (40床) 精神病床 112床 合計 351床 一般病棟 372床 救命救急病棟 20床 ICU(集中治療室)・HCU(高度治療室) 36床 NICU(新生児集中治療室)・GCU(新生児治療回復室) 18床 感染症病床 4床 合計 450床 佐久総合病院 佐久医療センター

(11)

機能再編による包括ケア体制の強化

院を2つに分けなければならないのかを説明するために、 職員が地域の集まりなどに何度も赴いた。北澤氏自身も 「100回近くは足を運んだ」という。  そうした姿勢は住民を動かした。同センターの予定地 は工業専用地域で、本来は病院の建設が認められていな かった。そこで、全職員が2、3人ずつグループを組み、 佐久市全戸を訪問して2病院の構想を説明し、賛同者の 署名を募る活動を実施。最終的に、同市人口の約10万人 を上回る18万筆の署名が市内外から寄せられ、センター 建設の強い追い風となったのである。センターの正面玄 関壁面のボックスには、この時の署名が同院の“魂”と して今も保管されている。

医療の機能分担について

地域の医療機関と徹底協議

 この計画で、同院がもう一つ不可欠だと考えたのは地 域の医療機関の協力である。「近隣の急性期病院にとっ て、センター新設は患者流出のリスクをはらみます。他 の病院の経営悪化は、地域全体の医療機能の低下をもた らしかねず、同院にとっても、それは絶対に避けたい事 態でした」と北澤氏は語る。  そのため、事前に地域の病院や医師会とも協議を重ね、 同院ではセンターの機能を、東信地区全域で不足してい る高度救急や周産期、がん、脳卒中などの特殊治療に限 定することを説明。さらに、診療圏が重なる近隣2病院 に対しては、外科、内科など同じ科の医師同士で話し合 う場を設け、具体的な医療内容の分担を確認したという。  以前からの懸案事項だった「佐久総合病院に紹介した 患者が帰ってこない」という問題についても、センター を原則予約・紹介制とし、紹介率65%以上、逆紹介率 40%以上という要件が課される地域医療支援病院を目指 すことで解決を図った。同センターは、2015年6月に佐 久医療圏で初めての地域医療支援病院として承認された が、申請時の紹介率、逆紹介率はともに65%を超えてい た。  「協議を重ねるなかで、それまで疎遠だった地域の先 生方との距離も近くなり、紹介、逆紹介がスムーズに運 んでいるのだと思います」と、北澤氏は話し合いの成果 を評価する。  一方、佐久医師会とは、同院が在宅医療において早く から協力要請を行うなどしていたため、連携の土台は築 かれていた。さらに地域医療の再構築を進めるなかで、 医師会の在宅医療推進委員会委員長を務める北澤氏が率 先し、在宅医療普及のために顔の見える関係をつくろう と、診療所や民間病院の医師9人が隔月で集まる地域ケ アネットワーク研究会を牽引。また、医師や看護師、ケ アマネジャーなど多職種が集まり事例検討などを行う佐 久コミュニティーケアネットを発足させたほか、地域医 療連携拠点事業にともに取り組むなどの活動を進めてい る。  最近では、同医師会にインターネットを介して情報共 有や意見交換を行うICTツール「Net4U」を導入し、在 宅医療に関わる医師、看護師などの利用も始まった。同 院の古くからの取り組みもあって佐久地域の在宅医療・ 介護の資源は豊富であるが、そこに多職種間の情報共有 の仕組みが加わるなど、地域包括ケアの受け皿の整備は 全国に先駆けて進んでいる。

急性期と地域を橋渡しする

本院の機能を強化

 同センターの開設後、今秋で1年半が経過した。今回 の再構築で、センター、本院の機能は地域により開かれ たように映る。「設備費などで経営は厳しいのですが、 他医療機関との連携は大きく前進しました。センターを 完全紹介制としたことで患者の受け入れもスムーズにな り、受診までの期間が短縮できました」(北澤氏)  半面、急性期以降の受け皿の不足が指摘されている。 そのため、高度急性期後の機能が主体となった本院では 「今日も行く 朝もやついて 農民の待つ 町から村へ」。同院の原 点を示す農村巡回検診隊の歌は、今も同院のスタッフに歌い継が れている

(12)

尿道カテーテル抜去パスの意義

事例2 JA長野厚生連佐久総合病院

急性期から地域に橋渡しする機能を強化し、回復期リ ハビリ病棟に加え、2014年11月には地域包括ケア病棟 40床を開設。「独居でも、リハビリで身の回りのことが できるようになれば、家に帰れる可能性が高まります」 (北澤氏)と、同センターや、周囲の急性期病院から、 ADLの低下などですぐには自宅に戻れない患者さんを 受け入れ、在宅復帰を支援している。  特に力を入れたのは、ケアマネジャーとの入院時の情 報共有である。介護保険の利用者が入院すると、介護保 険証に記載された居宅介護支援事業所に連絡を入れ、ケ アマネジャーと連携室の医療ソーシャルワーカー、看護 師によるカンファレンスを設けるという流れが、すでに できているという。カンファレンス時に看護師が一緒に 病棟に付き添うことで、ケアマネジャーと病棟看護師と のその後のやりとりを容易にするといった配慮もなされ ている。「退院時の状態像をイメージできるようになっ たので、看護師やリハビリ職が何をすればよいのか、自 ら考えて動けるようになったのは大きい」と北澤氏は語 る。  取り組みの成果は、本院一般病棟の平均在院日数の短 縮という形で現れている。「病院の分割により、在院日 数の短い患者層が急性期や専門治療を担うセンターに 移ったため、本院の在院日数は長くなると予想していま した。しかし、今では分かれる前と同じ期間で退院でき 図 機能分化前後の平均在院日数(前年との比較/一般病棟) ています(図)」  ただ、北澤氏は、地域包括ケアシステムとしてはまだ 課題は多いと指摘する。「在宅療養を望まない人や、独 居など在宅介護のマンパワーのない人を地域としてどう 支えるか。また、認知症の人や、重度心身障がい児が普 通に生活できるような地域をつくることも必要です。や らなければいけないことは、まだたくさんあります」と、 決して現状に満足していない。“地域に出て住民の悩み を知る”という同院の精神は、北澤氏をはじめ同院スタッ フの中に今も息づいている。 (日) 20 18 16 14 12 10 8 3月 4月 5月 6月 7月 8月 12.3 11.9 11.7 11.0 11.5 10.8 13.3 13.1 12.7 11.8 12.1 11.6 15.7 15.0 14.9 14.7 14.2 14.0 16.8 18.8 16.3 14.4 14.3 14.6 (再掲)本院(2014年度) 本院(2013年度) 本院+医療センター(2014年度) (再掲)医療センター(2014年度) 厚労省地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会資料「長野県佐久地域における医療機能の分化・連携と当院の役割」より

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医療から福祉に至る

幅広い経験を生かし

前方連携業務に

新たな風を吹き込む

 住友病院(大阪市北区)は、1921(大正10)年に創立され、1世紀近くにわたって地域住民の健康を守 り続けてきた。大阪府がん診療拠点病院として質の高いがん医療を提供するとともに、地域の中核病院と して地域医療連携にも積極的に取り組んでいる。  看護師や在宅介護支援センター相談員を経て、同院地域医療連携室に勤務する村上治子さんは、地域の 医療機関からの診療・検査依頼、入院・転院調整などの前方連携業務を担当する。後方連携と異なり、前 方連携における看護師の役割は必ずしも明確でないと感じた村上さん。それを学ぶために医療福祉連携士 の資格を取得し、病院の内外で活動の幅を広げてきた。「つないでいく」という連携業務に派手さはないが、 そこには確かなやりがいと手応えがあるという。 関わりたいとの思いから院外へと活動の場を移した経歴 をもつ。市内の在宅介護支援センターで相談員を約14年 間勤め、介護保険の導入や地域包括支援センターの設立 などを実地に体験してきた。そんな村上さんが、連携室 所属の看護師として復職したのは2009年春のことである。  15年ぶりの病院勤務には戸惑うことも多かった。連携 室の業務は、紹介患者の予約を入れたり、紹介状に返書 したりする事務的な内容が主体で、前方連携における看 護師の役割も明確ではない。さらに村上さんを待ってい たのは、「住友病院は紹介をなかなか受けてくれない」「予 約をとるのに時間がかかりすぎる」といった周辺医療機 関からのクレームの数々だ。「何でそんなに言われるの

村上 治子 さん

看護師、社会福祉士、医療福祉連携士 一般財団法人 住友病院 地域医療連携室

第2回

地域福祉分野を約14年間経験し

住友病院に復職

 住友病院は地域連携の重要性をいち早く認識し、1997 年に「病診連携部」を開設して地域の診療所などとの連 携強化に努めてきた。病診連携部は2008年に「地域医療 連携部」に改称して組織を拡充、「地域医療連携室(以下、 連携室)」は前方連携を、「医療福祉相談室」は後方連携 を担当して2室体制になり、スタッフも増員した。現在、 連携室には看護師2名と事務スタッフ5名、相談室には看 護師1名と社会福祉士2名が配属されている。  村上さんは長く同院看護部に勤務した後、地域福祉に

眼差し

医療連携への

シリーズ企画

医療連携の推進・調整役として日々奮闘している方々にスポットを当て、 その等身大の姿をご紹介します。

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医療連携への

眼差し

か最初はわかりませんでしたが、私の赴任直前にとった アンケート結果を照らし合わせてみると、改善されてい ないことがたくさんあり、課題の多さを痛感しました」 と村上さんは話す。

アンケート調査を踏まえて

前方連携の体制強化

 このアンケートは2009年、住友病院が地域の462医療 機関を対象に同院の連携に関する評価について調査した もの(回収率42%)。調査結果によると、「医師に対する 信頼性」「先進的」などが評価された一方、「最終診療報 告」「優先診療」「予約依頼に対する円滑・迅速な受付対応」 「救急受診の対応」「逆紹介」―― の順で評価が低かった。  なかでも連携室に直結した課題は、予約依頼や救急依 頼に対する円滑・迅速な対応である。「できるだけ早く 対応しているつもりでも、それ以上のスピードが求めら れる場合もあり、地域の先生方が不満を抱く原因になっ ていました」と村上さんは説明する。ネックとなってい たのは、他の医療機関からの紹介依頼内容によっては、 患者さんの受け入れを各科の診療部長に確認する仕組み だ。連携室では自分たちの裁量で予約を受け付けるシス テムの導入を働きかけてきたが、“予約枠”をめぐる各 診療科の抵抗も少なくなかったという。  「転機となったのは、アンケート結果を重くみた院長 から“紹介患者さんは断らない”という明確なメッセー ジが病院職員全員に発信されたことでした」と村上さん は回想する。病院全体の問題として前方連携の強化に本 腰が入れられ、後押しを受けた村上さんら連携室スタッ フは、診療部長会・師長会など職員が集まるあらゆる機 会を捉えて地域医療連携への協力を呼びかけた。  紹介患者を優先して診療してもらうため、念願だった 地域連携専用の予約枠も全診療科で確保した。とはい え、各診療科にもそれぞれの事情があり、紹介元の要望 もさまざまであるため、個々の調整が不可欠であること に変わりはない。「双方の立場や住友病院を取り巻く現 状について診療科と意見交換しながら、そして何より患 者さんに気持ちよく受診していただくとの想いをもちな がら、お互いが納得できる着地点を見いだしていく。そ れが連携室に求められているのだと思います」。村上さ んは自身の役割をそのように捉えている。

連携担当者同士が連携する

「ワンコイン講座」

 かかりつけ医からの依頼への対応・調整に加え、院内 スタッフとの情報共有を進めていく取り組みも欠かせな い。なかでも地域連携を円滑に進めるうえで同院看護師 の理解と協力が不可欠と考え、2015年から村上さんは、 院内の各種会議や勉強会にも可能な限り参加し、連携室 からの情報発信に努めている。  併せて、連携室スタッフの1人ひとりのスキルアップ も急務となっている。院内外からのさまざまな依頼や要 望に対して、連携室の看護師だけですべて対応すること は困難であるため、連携室と相談室の看護師が中心と なって勉強会を定期的に開催し、事務職を含めた連携室 スタッフの底上げを図る。  このように山積する課題に対して村上さんは粘り強く アプローチを続ける一方、2013年には研鑚の場を院外に 求め、地域の連携担当者が集う「ワンコイン講座」を企 画した。講座名は、会費の500円玉を握ってくれば誰で も参加できることに由来する。  「どの病院の連携室も、連携に関して同じ悩みを抱え ていることが少なくありません。その悩みを乗り越える ためには、地域連携に必要な知識やスキル、マインドを 培っていく必要があり、講座がその一助となればと思い、 始めました」と村上さんは説明する。  当初、近隣にある5つの急性期病院の連携室スタッフ のスキルアップを目的にスタートしたが、徐々に口コミ 住友グループの支援を受けて最先端の医療を提供してきた住友病院

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で参加者が増加し、今では回復期病院の連携室スタッフ、 介護施設の相談員、さらには連携室関係者だけでなく、 病棟や外来の看護師、事務職、MSWまで広がっている。  同講座の成果は、人的交流を背景とした日常業務にお ける連携の円滑化、連携担当者としての目標の明確化な どさまざまだ。しかし最も大きな成果は、同講座が連携 担当者の“癒しの場”となり、日々の業務へのモチベー ション維持につながっている点だという。  「当院の連携室はマンパワーなどの面でかなり恵まれ ていますが、多くの施設では少人数で前方連携を担って います。そういうなかで各病院の連携に対する向き合い 方にもよりますが、前方連携というある意味で裏方的な 業務に対しての周囲の理解はあまり進んでいないように 思います」と村上さんは話す。ややもすると自分の仕事 に自信を持てなくなったり、組織の中での自身の存在意 義が揺らいでしまう連携担当者も少なくない。だからこ そ、連携業務における不安や悩みを本音で語れる同講座 では、参加者から「気持ちが軽くなった」「明日から仕 事が楽しくできそう」といった声が飛び交う。連携担当 者にとっては自身の立ち位置やゴールを再確認させてく れる貴重な場となっている。  

「つないでいく」を続けて知る

連携のやりがい

 村上さんがもつ院内外での抱負な経験に対する住友病 院側の期待は大きい。近い将来、福祉分野における知識 やネットワークを退院支援の知識向上が求められる病棟 看護師の教育に活用したいと考えている。村上さん自身 も担当している前方連携で自身の経験がどう生かせるの か模索している。  「例えば、当院の外来に受診される患者さんも年々高 齢化し、認知症の方、独居や老々介護の世帯が多くなる なかで、診察室での説明が理解できない、あるいは予定 日なのに受診されないといったケースが増えています。 多忙な外来看護師だけでは、キーパーソンを探して連絡 をとったり、地域の相談窓口と連携をとるといったこと は難しいと思いますので、適宜介入してアドバイスして いきたいです」という。より積極的に診療現場と関わり、 患者さんの診療を支援していく考えだ。  村上さんが連携業務で一番大切にしているのは、「つ なぐ」ということ。紹介患者さんと直接接するわけでは ないが、ベストのタイミングを考えて同院の診療に結び 付け、治療を終えたら、紹介医や支える方たちにバトン タッチしていく。「渡すタイミングはそれぞれ異なりま すが、折り合いをつけていくことが私たちの仕事です」 と明言する。「つなぐ」という意識が希薄であれば、単 なる事務処理、もっと言えば患者不在の“丸投げ”にな りかねないとも。  「ときどき、私たちの仕事に対して連携先の先生から 感謝やねぎらいの言葉をいただくことがあります。その ときは連携室スタッフ全員に報告します。自分たちの関 わった患者さんが元気になって地域に戻られたという喜 びを事務スタッフも含めて皆で分かち合うことが大事。 連携業務のやりがいや手応えを少しでも感じてもらえれ ばと思います」。連携室スタッフを鼓舞しながら、村上 さんの挑戦はこれからも続いていく。 村上さんのよき理解者である下村篤子室長と。「2025年問題などを 背景に、地域連携は“病院の顔”といっても過言ではないほど重要 なウエートを占めています。地域における村上さんの経験や知識を 最大限生かして当院のネットワークを拡大していきたい」と語る “地域に開かれた病院”に向 けての情報発信の一環とし て、地域連携室では、80頁 にも及ぶ『診療のご案内』を 毎年作成し、連携先や周辺の 医療施設に配布。各診療科の 診療体制や実績、最近の取り 組みなどがこと細かく記載 されている

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外来診療機能の限界から

パスのない時代に連携開始

 糖尿病連携のきっかけは、大垣市 民病院の外来診療の危機を救うため だったと、糖尿病・腎臓内科部長の 傍島裕司氏は振り返る。  「私が赴任した1990年代後半、当 院には糖尿病を専門とする医師は2 人だけで、外来に患者さんがあふれ、 診療機能は限界に達していました。 ちょうどその頃、大垣市医師会から 声をかけていただき、かかりつけ医 の先生方への糖尿病の勉強会を始め るなかで、連携への協力をお願いす ることになったのです」  勉強会では、同院で実施している 糖尿病診療をかかりつけ医に理解し

連携による糖尿病診療の質追求

かかりつけ医の成長に確かな手応え

 大垣市、海津市、養老町など岐阜県西部の2市9町からなる西濃医療圏(人口約40万人)では、三次救急を担う大 垣市民病院(903病床)を中心に、早くから糖尿病連携に取り組んできた。2001年に同院と大垣市医師会とで始め た糖尿病連携が土台となり、08年には地域連携パスを作成。現在までに同院でパス登録した患者数は延べ1,000人弱 に上る。大垣市民病院糖尿病・腎臓内科部長の傍島裕司氏に、糖尿病連携の経緯や継続のコツを伺った。 てもらおうと、診療の実際や患者教 育の内容、合併症の検査・治療など を説明し、そのうえで連携のおおよ その枠組みをつくった。  かかりつけ医が検査や薬剤処方を 手がけ、同院では半年に1回診察。 必要な人には栄養・運動指導を行う ほか、年に1回は蓄尿や心電図、眼 科での眼底検査など合併症の検査を 実施するという流れだ。この循環型 連携は、内服薬のみの比較的軽症な 患者さんを対象に2001年からスター トし、当時連携パスというツールが まだなかったため、情報のやりとり には診療情報提供書が用いられた。  「紹介を嫌がる患者さんもいまし たが、連携開始から6カ月後に、当 院に戻ってきた患者さんにアンケー トを取ったところ、満足していると いう声が多数を占めていました。家 から近い、糖尿病以外のいろいろな 疾患も診てもらえるといったことが 主な理由です」(傍島氏)。一方で、 特に糖尿病専門医の治療に慣れた患 者さんからは、HbA1cの検査結果 がその日のうちにわからない、14日 分しか薬を処方してくれないなどの 不満や苦情も寄せられた。  傍島氏は連携先に改善を促すた め、即座にこれらの声を勉強会で フィードバック。処方日数は当時、 診療所では14日処方が一般的だった が、患者さんの声を受けて処方日数 を延長したり、HbA1cの迅速測定 器を導入して検査結果をすぐに知ら せるなど、前向きに取り組んでくれ

大垣市民病院

地 域 連 携

レ ポ ー ト

2001年から糖尿病の地域連携を開始した大垣市民病院

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図1 糖尿病 西濃地域連携パス ※掲載した「連携パス」のほか、運用依頼書・運用要綱、診療情報提供書などのPDFを、第一三共 株式会社コーポレートウェブサイトのMedicalLibrary(情報誌紹介)にて、閲覧・ダウンロード いただけます。https://www.medicallibrary-dsc.info/index.php  例えば、最初は互いに要領がよく わからず、かかりつけ医が半年間薬 の処方のみで検査をしないという ケースもあった。そうした問題につ いて勉強会でかかりつけ医と共有・ 検討し、参加施設の意識改革を図っ ている。それでも状況が変わらない 場合は紹介先から外さざるを得ず、 おのずと連携先は絞られていった。  「患者さんが不満を募らせれば、 別の先生を紹介することもありま す。ただ、連携を重ねるなかで、安 心して紹介できる施設が増え、また、 この病状ならばどこが紹介先として 適切かが見えるようになり、問題は 少なくなりました」  こうした経験の積み重ねにより、 地域全体の糖尿病診療レベルは向 上しているのではないかと、傍島 氏は見ている。2000年代後半以降、 DPP-4阻害薬などインクレチン関連 薬が次々と登場したが、同院がそれ らの新薬を導入した患者さんを紹介 することで、かかりつけ医も使い方 を学び、地域での普及が比較的早 かったという。また、勉強会を重ね る診療所が多かったという。  2008年からの第5次医療法改正で 4疾病の地域連携パスの整備が促さ れると、連携パス運用にも着手し、 診療内容や検査結果等を共有する仕 組みがつくられた(図1)。  「パスがなかった頃は、かかりつ け医の先生の診療状況がなかなか把 握できず、薬の変更がなかったかを 患者さんに確認したこともありまし たが、そうした情報が見えやすくな り、半年ごとの再診も円滑に実施で きるようになりました」と、傍島氏 はその効用を話す。  現在は患者さんが受診時に携帯す る糖尿病手帳を利用し、かかりつけ 医が検査結果などを記録、傍島氏は 半年ごとの受診時に病院側医師が確 認する仕組みを取っている。連携パ スと、緊急紹介が必要な場合の基準 などをまとめた運用要綱なども、こ の手帳に貼られている。  「連携をしてよかったのは、糖尿 病が専門でない地域の先生方に、実 際の患者さんを通じて糖尿病診療の ありようを学んでいただいたことで す。温度差はありますが、糖尿病診 療に一生懸命取り組んでくださる診 療所が1施設でも増えることがうれ しいですね」と、傍島氏は連携の啓 発効果を指摘する。なお、同連携パ スは2010年から、西濃医療圏共通の 連携パスとして運用されている。

専門医との差埋める試行錯誤

地域全体の質上げる力に

 これまでの実践で、傍島氏が常に 気を配ってきたのが、連携による 糖尿病診療の質だ。連携開始から4 年後に、同院で治療を継続した患 者群と、連携対象となった患者群 のHbA1cの変化を比較検討ところ、 病院群では4年後のHbA1cが6.41± 0.81%(開始時6.18±0.83%)で、連 携 群 の6.95±0.82 %( 開 始 時6.21± 0.71%)よりも、コントロールが有 意に良好であることが示された。  その原因について傍島氏は「コン トロールが悪い場合、専門医は栄養 指導やインスリン量の調節など、素 早く手を打てるからではないか」と 分析したうえで、「実際の連携では、 そうした専門医による診療との差を できるだけ埋めようと取り組んでき ました」と話す。 大垣市民病院 糖尿病・腎臓内科部長

傍島 裕司

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地域連携レポート 

大垣市民病院

薬物治療なし インスリン+GLP1 インスリン 薬物治療なし 経口糖尿病薬 経口糖尿病薬 2013年4月∼ 2014年3月 2001年4月∼ 2002年3月 GLP1 6.15 6.1 6.05 2010年度 HbA1c(%) 2011年度 介入の内容:栄養指導(医療機関)、保健指導や健康教室(保健) 6 2010年度 BMI 2011年度 22.9 23.3 23.7 介入あり (P=0.001) 介入あり (P<0.001) 6.14±0.21 23.61±3.21 6.08±0.19 6.08±0.29 23.65±3.16 23.04±3.26 6.04±0.28 介入なし (P=0.03) 介入なし (n.s.) 23.48±3.21 るなかで、インスリン注射の患者さ んにも連携パスが適用され、今では インスリン導入を担うかかりつけ医 も増えている(図2)。  このように糖尿病診療の連携が定 着しつつあるなか、西濃医療圏では、 糖尿病予備軍への早期介入を目的と した保健と医療の連携も進めてい る。傍島氏がメンバーとなっている 岐阜県糖尿病対策推進協議会では、 軽症耐糖能障害の早期発見・介入の ために、75g経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT)の実施を推奨しているが、 同医療圏では2010年度から市町村国 保の特定健診で、HbA1cの正常高 値や境界型などの方を対象にOGTT の受検勧奨を行う事業を実施。検査 や事後指導は主に診療所が担う仕組 みを取り入れた。事後指導で、予備 軍の方を保健指導などにつなげるだ けでなく、診療所での栄養指導など 医療介入を選択できるのが特徴だ。  1年 後 の 追 跡 調 査 で は、 早 期 介 入 に よ るOGTT受 検 者 のHbA1cや BMIに改善が見られ(図3)、特に医 療機関の栄養指導による改善効果は 大きかったという。この事業が円滑 に実施されたのも、糖尿病診療に関 心の高いかかりつけ医のネットワー クが、長年の連携によって整備され ん。悪化や合併症の進行が見られた 場合は、パスを一時中断して当院で 診て、落ち着いたら再度紹介してい ます。糖尿病では“バリアンスは起 こるもの”と認識し、起きたときに 辛抱強く繰り返し連携を立て直して いくことがコツだと考えます」  連携に完璧さを求めていないこと もポイントだという。連携医にはパ スの狙いを理解し、検査結果をしっ かり手帳に記入してくれる医師もい れば、検査結果をはさむだけの医師 もいる。傍島氏は、忙しいかかかり つけ医に、100%の運用を求めるの は無理だと割り切っている。  「その代わり、患者さんには、必 ず糖尿病手帳を出して診療に臨んで くださいと徹底しています。加えて 大事なのは、当院でしかできないこ とをしっかりやっていくこと。栄養 指導など、必要な人には半年に1回 でもきちんと指導を受けて地域に 帰ってもらう ―― そういう機能を充 実させていこうと考えています」  同院では、糖尿病教育入院のほか、 週1回3週連続で受講してもらう外来 糖尿病教室も設けている。今後も教 育のための手段を多く備え、専門医 療機関の機能を最大限発揮して連携 を支えていく意向である。 ていたからだといえる。

バリアンス発生を前提に

根気強く紹介を繰り返す

 同院と大垣市医師会で始めた糖尿 病連携は、今年で15年目を迎える。 同院の2013年のパス登録患者数は 740人で、運用する医療機関は約80 施設に上る。現在、同院外来には月 2,500人の糖尿病患者が訪れている が、そのうちパス登録者は100人ほ どだという。外来診療の負担軽減効 果を考えると、その割合は決して多 くはないが、傍島氏は「当院で半年 ごとに診なくても、全面的にお願い できる専門医レベルの診療所も約30 施設ほどあり、パスなしでの連携も 増えています。これも連携の成果で、 広い意味で負担軽減につながってい ます」と、成果を説明する。  いわば、息の長い連携が糖尿病に 精通したかかりつけ医を育てたわけ だが、糖尿病に限らず連携の頓挫例 は枚挙にいとまがない。なぜ同院で は継続的な活動が可能だったのだろ うか。傍島氏は、次のように話す。  「長くパスを継続している患者さ んでも、必ずしもずっとコントロー ルが良好だったわけではありませ 図2 新規地域パス登録患者の治療内容の変化 図3 境界型および正常境界型の経過

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はじめに

 わが国の死亡原因の1位は「がん(悪性新生物)」で ある。2013年の「がん」による死亡者数は約36万5,000 人であり、全死亡者数の28.8%を占めている。今後10年 間で2人に1人が「がん」により死亡すると予想されてお り、「がん」対策は喫緊の課題となっている。  「がん」対策には、早期診断と早期治療が基本である。「が ん」と診断された場合、インフォームド・コンセントの もと手術、放射線治療、がん化学療法などの治療が行わ れる。これらのがんの治療とともに重要であるのが、緩 和医療である。緩和医療は、従来「がん」の末期患者に 対する治療だと考えられてきた。しかし、現在の緩和医 療の考え方では、「がんと診断された時からの緩和ケア」 というキャッチフレーズのもと、診断時点からの症状コ ントロールを行う緩和医療の提供に加えて、つらさなど の精神的な緩和ケアを開始する方向になっている(図1)。  緩和ケアは、手術などの急性期医療を過ぎても継続す る。したがって外来を中心とした在宅での治療期間にお ける緩和ケアの実践が必要となる。  外来での緩和ケアを実践するためには、病院の医療者 による指導や管理だけではなく、がん患者自身や家族が 治療に積極的に参加することが必要である。患者が普段 の生活のなかで、身体的、精神的痛みのコントロールに

オピオイド使用患者への自記式手帳を

利用した緩和ケア連携の取り組み

薬 ネ ッ ト ワ ー ク

八尾市立病院 事務局 参事 薬剤師・医療情報技師・診療情報管理士

小枝 伸行

図1 がん治療と緩和ケアの関係 図2 緩和ケアのPDCAサイクル ついて理解し、治療に積極的に参加することで、緩和ケ アのPDCAサイクルを回すことが求められる(図2)。

国が進める緩和ケア体制

 国が指定するがん診療連携拠点病院では、さまざまな 診療機能に関する基準が定められている。特に緩和ケア については、非常に多くの項目があり、国は緩和ケアの 体制の整備が重要であると位置づけている。  これらの項目の一つに、「医療用麻薬等の鎮痛薬の初 回使用や用量の増減時には、医師からの説明とともに薬 剤師や看護師等による服薬指導を実施し、その際には自 記式の服薬記録を整備、活用することにより、外来治療 中も医療用麻薬等の使用を自己管理できるよう指導して いる。」という項目がある。  2014年4月、当院は国指定のがん診療拠点病院の指定 を目指すため、院内の緩和医療提供体制の見直し、自記 式の服薬記録(以下、「自記式手帳」という)を整備す ることになった。

八尾市立病院の概要

 八尾市立病院は、大阪府の東部に位置する380床の公 過去 がんに対する治療 遺族ケア つらさや症状の緩和ケア 現在の考え方 がんに対する治療 緩和ケア これまでの考え方 診断 Plan 処方 Do 服用 Check 痛みの評価 服用状態・レスキュー Action 用法・用量の変更 種類の変更 痛みの コントロール 患者自身による コントロール

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薬 ネ ッ ト ワ ー ク

*当該病棟の担当薬剤師が不在時(土、日、祝日および平日の公休時等)は看護師で対応する 医師はオピオイドを初回投与時または増減・剤形変更時には患者に対して説明を行い、麻薬処方を行う 自記式手帳が記入できる患者であるかどうかをスタッフ間で評価する 病棟薬剤師または看護師が 自己式手帳を配布し説明する 主治医から指示を受けた病棟看護師は、緩和リンク看護師、 病棟受け持ち看護師または病棟担当薬剤師に連絡を入れる 医師より指示 初回投与時 記入可能患者 記入不可能患者 病棟担当薬剤師または病棟看護 師で説明を行いカルテ記載する 病棟看護師は定期的に患者の自 記式手帳を確認し、熱計表の観 察項目にあげ、カルテ記載する すでに手帳が配布され ている患者でオピオイ ド増減・剤形変更時 評価者は記入不可理 由をカルテ記載する 病棟看護師 病棟担当薬剤師は薬剤管理指導時に 患者の自記式手帳を確認し、内容をカ ルテ記載する(麻薬加算を算定する) 病棟薬剤師 図3 自記式手帳運用の手順(入院患者) する自記式手帳が有効である。自記式手帳は、患者がい つ、どんな時に痛みが起こるのかなどの状態を記録する ことができ、患者自身も自分の痛みに対して向き合うこ とで、治療への積極的な参加を促すことができる。  特に診察時に患者の日常の痛みを把握することは、現 在の治療がうまくいっているか、改善するポイントはな いかなどを効率よく判断することができる。これにより、 疼痛コントロールのPDCAサイクルを回し、より最適な 治療が可能になる。  

自記式手帳による疼痛コントロールの運用

 当院では、自記式手帳による疼痛コントロールとして、 入院、外来を分けた運用を導入した。  入院では「緩和ケア認定看護師」が主に指導する運用 と、「病棟常駐薬剤師」が主に指導する運用を検討した。  緩和ケアチームでの議論、検討の結果、「病棟常駐薬 剤師」を中心に「緩和ケア認定看護師」と情報共有しな がら運用を行うこととした(図3)。 ①医師は、オピオイドを初回投与する場合や用量の増減、 剤形変更時には患者に対して説明を行い、処方オーダ を発行する。 ②主治医からの指示を受けた看護師が、リンクナースや 受け持ち看護師、病棟薬剤師に連絡を入れる。 ③スタッフ内で自記式手帳を記入することが可能な患者 であるかどうかの評価を行う。 ④自記式手帳の記入が可能であると判断した場合、病棟 薬剤師もしくは緩和ケア認定看護師が自記式手帳を配 布し、患者にその利用方法の説明を行う。 立病院である。  診療科は21診療科あり、2014年度の院外処方せん発行 率は87.2%、そのうち、時間内の院外処方せん発行率は 99.9%と医薬分業が進んでいる。主な特徴としては2012 年度に地域医療支援病院として承認され、さらに2015年 度に、国の地域がん診療連携拠点病院として指定された。

オピオイド使用の実際

 がん患者へのオピオイド処方は、がん患者の痛みをコ ントロールするためである。「痛み」とは、「実際に何ら かの組織損傷が起こった時、あるいは組織損傷が起こり そうな時、あるいはそのような損傷の際に表現されるよ うな、不快な感覚体験及び情動体験」と国際疼痛学会で 定義されている。  痛みは、患者の主観的な症状であるため、心理社会的、 スピリチュアルな要素の影響を受ける。痛みの神経学的 機序(性質の分類)、パターン、原因(疼痛症候群)の 診断を的確に行い、診断結果に従って速やかに適切な薬 物療法と原因治療を行うことが重要である。  疼痛管理の目標は、痛みに妨げられずに夜間の睡眠時 間が確保できること、日中の安静時に痛みがない状態で 過ごせること、起立時や体動時の痛みが消失することで ある。これらの目標を達成し、鎮痛効果の継続と日常生 活を安定させることが理想である。しかしながら、がん 性疼痛は、「がん」そのものに起因する痛みだけでなく、 骨転移による体動時痛や神経障害性疼痛など、コント ロールの難しい痛みもあり、完全な症状緩和が難しい場 合もよく見られる。そのため、緩和ケアとして痛みのコ ントロールについての方法やアウトカムについ ては、繰り返し丁寧に説明することが重要であ る。  短い診察時間で、医療者が日常生活での痛み の状態や精神的問題を把握することは難しく、 また、患者自身も自分の状態や悩みをうまく伝 えることが難しい。

自記式手帳の活用

 日常生活における患者の痛みの状態を把握す るために、患者自身が自分で痛みの状態を記録

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私大病院で勤務していたものが,和田村の集成材メーカーに移ってい

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