鍛造解析におけるメッシュ生成法に関する
いくつかの考察
Some investigations of mesh generation scheme
used in forging analysis
岡田達夫* *理化学研究所 VCADシステム研究プログラム 加工成形シミュレーションチーム [email protected] 1. はじめに 任意の3次元幾何形状の自動要素分割方法は多くの研究が行われており,四面体要素では比較的質 の良い要素が生成されるようになっている.しかしながら,鍛造解析での使用を考えた場合,四面体 1次要素では非圧縮の拘束条件により良好な解析結果が得られない,四面体2次要素では素材と工具の 接触の取扱いが難しい等の問題がある.鍛造解析に適した六面体要素の生成法には,最初に四面体要 素を生成し,それを六面体に幾何学的に変換するindirect 法と,直接六面体を生成するdirect法がある [1].direct法としては,grid-based法[2],medial surface法[3],plastering[4]等,様々な手法が研究されて いる.しかしながら,いずれの方法にも得失があり,現状では幾何形状によらず常に品質の良い六面 体が生成できる方法はないと言わざるを得ない.VCADシステム研究プログラムにおいては,grid-based法の一つとして,双対格子(Dual Grid)を用いた六面体生成法が研究されている[5].この方法は 高速かつ確実な要素生成が可能で,構造解析では良好な成果を上げている.一方,他のgrid-based法 と同様に,物体表面付近にやや質の劣る要素が生成される場合があり,鍛造のような大変形問題の解 析に使用するには未だ十分とは言えない[6]. 本研究では,双対格子を基礎とする六面体生成法において,表面付近に現れる非凸要素のより良い 細分割方法を検討する第一段階として,非凸六面体の分類を行った.また,部位ごとの非凸六面体の 発生状況を詳細に観察し,その原因について検討した. 2. 双対格子を基礎とする六面体生成法 2.1 現在の非凸六面体細分割方法 現在のV-DualGridでは,生成された非凸六面 体はFig.1に示すように,ピラミッド形状と四 面体形状の凸要素に細分割され,それらを全て 縮退六面体として取り扱う方法が採用されてい る.縮退六面体を用いても解析精度にはさほど 影響しないことが著者の過去の研究から明らか になっているが[6],現状の細分割方法で得ら れる縮退六面体は品質が良くないことがほとん どであり,容易に非凸→リメッシュの繰返しと
な っ て , 解 析 が 事 実 上 進 ま な く な る 場 合 が あ る . Fig.1 Subdivision scheme of concave hexahedron 2.2 非凸六面体の分類 素品質が低く,その後の細分割が困難になると考えられる.分類された要素の 非凸六面体が生成されることを前提にして,その後の非凸六面体の細分割により,凸化・要素品質 向上を目指す戦略をとるならば,どの部位にどのような非凸六面体が生成されるかを把握することは 重要である.そこで,本研究では六面体を構成する8節点のうち,どの節点が非凸になっているか, すなわち,節点位置におけるJacobianの正負に着目して,非凸六面体を分類した.一般的には非凸な 節点の数が多いほど要
一覧をFig.2に示す.
Fig.2 Classification of the concave elements by the number of concave nodes and their configurations 双対格子を基本にする六面体要素生成では,8つの節点は各々が隣接した独立な主セル内に生成さ れるという拘束条件が存在し,さらに,主セルが非境界セルであった場合には,セル中心に節点が生 成されるので,どのような場合にもFig.2の全ての要素タイプが生成され得るわけではない.そこで, Fig.3に示す5つの場合について,どの要素タイプが生成され得る可能性があるのかを数値実験により 検討した.Case 1は主セル8個のうち7個が境界セルとなる場合,Case 2は6個,Case 3は4個,Case 4は 2個,Case 5は1個が境界セルとなる場合である.なお,生成し得る要素を調べる方法は,既報に示し た数え上げ手法[7]を拡張して行った.
Fig.3 Configuratio al (VCAD) cells Table 1 Generated concave types
n of the boundary cells in the 8 prim
10 20 21 22 30 31 32 40 41 42 43 44 45 50 51 52 60 61 62 70 Case 1 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ - ○ -Case 2 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ - ○ ○ - ○ ○ - - - - -Case 3 ○ ○ ○ - ○ - - ○ - - - -Case 4 ○ - - - -Concave type Case 5 ○ - - -
-結果をTable.1に示す.○が生成される可能性のある非凸要素タイプである.物体のエッジ(特徴線) 近傍ではCase 1 あるいはCase 2になることが予想され,いずれも非常に多くの種類の非凸要素が生成 される可能性があることがわかる.しかしながら,8つの主セルに占める非境界セルの数が増えれば, 生成され得る非凸要素の種類は大きく減少している.したがって,主セルを部分的に変形(切断位置 を移動)して主セルに占める非境界セルの数を増やすことができれば,その後の細分割は容易になる 直交する面で構成されている.(C)は側方押出し加工の途中段階の形状である.FEMで解析 された要素表面の形状をパッチデータとして抽出したものであり,同一節点が複数の法線ベクトルを 持つ. ものと考えられる. 2.3 実モデルによる非凸六面体の生成状況 Fig.4に示す3つの実モデルに対してVobj2Dheを適用し,実際の非凸六面体の生成状況を調査した. (A)は座標軸に沿った円柱.CADデータをvobj表現したもので,微小な凹凸を持たない理想的な凸包 である.(B)もCADデータのvobj表現であり,一部にRや凹形状を有しているものの,大部分が座標軸 に対して
Fig.4 Test models represented by vobj
結果について述べる.(A)のモデルでは要素数が少ない場合は非凸要素は生成されないが,要素数 が多くなると非凸要素が生成されるようになる(Fig.5).生成される部位はx軸(y軸)から円周方向に45 度回転した付近で,エッジ部にType10あるいはType20,側面に沿った縦壁に連続してType20が現れ る.sharp featureを保存しない場合も,数は減少するものの傾向は同様である.(A)は完全な凸形状で あるから,理論上は非凸な要素は生成されないはずであるが,実際には生成される.これは,要素数 が多くなると(要素が小さくなると)45度付近に生成される要素形状がFig.6(a)に示すプリズム形に 近くなり,●で表される節点の生成座標が,わずかな計算誤差により1点がプリズムの内側に入れば Type10,2点とも入ればType20が発生するものと推測できる.Fig.6 (b)はプリズムの三角形面の模式図 である.この図から,プリズムを縮退六面体に細分割した場合,主セルの位置によっては平面に近い 形状の要素が生成される可能性があることがわかる.したがって,このような場合には,凸な縮退六 面体に細分割するよりも,この要素全体を6節点プリズム要素あるいは6節点の縮退六面体にしてしま う方が良好な結果になるものと思われる.
(B)のモデルでは中央凹部の角R縦壁でType20,角R底部でType10が発生した.角R部は凹形状であ るから,(A)のモデルとは逆に,要素が小さくなればそこに生成される要素はプリズム形に近くなり, 品質は改善される方向に向かう.また,他の凹部には要素数を変化させても非凸要素は全く生成され ず,座標軸に直交する面で構成される場合は,凹部であっても比較的安定した要素生成が可能である 個の節点が平面に近い状態に 位置するようになり,●で表される節点の生成座標がその平面の内側に入ることによって1~4個の節 点が非凸となる.この問題の解消には今後更なる検討が必要である. ことがわかった. (C)のモデルではFig.7に示すように,非常に多くの非凸タイプが生成される.そのほとんどが Type10と20であるものの,それ以外にも,3,000要素程度でType21, 30, 31, 32, 40, 42, 43, 50が生成され, 30,000要素,100,000要素と要素数が増えるにつれて,Type22, 41, 51なども生成されるようになる.要 素数が増えるにつれて質の良くない非凸要素が増える傾向は(A)のモデルの場合とほぼ同様である. また,非凸要素は全面に渡って分布しているものの,面が座標軸に対して垂直に近い部分では比較的 少なく,一方,面の向きと座標3軸との角度が大きい部分では非凸節点の多い要素が生成されている ことがわかる.この原因は(A)のモデルの場合と同様に考えることができる.すなわち,要素が小さ くなると,Fig.8に一例を示すように,この付近で生成される六面体の7
Fig.7 Generated mesh of model (C) Fig.8 Tetrahedron-type hexahedral element
きい部位に多く発生する.(3) 要素数が多いほど,品 質の劣る非凸六面体が生成される傾向がある.(4) その理由は,8節点のうち,多数の節点が同一平面 ようになるためである. 形解析”, VCADシステム研究2007, (2007), p.212 3. まとめ 双対格子を基礎とする六面体生成法において,表面付近に現れる非凸要素のより良い細分割方法を 見出すため,非凸六面体の分類を行うとともに,部位ごとの非凸六面体の発生状況を観察し,その原 因について検討した.その結果,次のような知見が得られた.(1) 節点位置におけるJacobianの正負に 着目すると,非凸六面体は21種類に分類できる.(2) 非凸六面体は凸な表面にも生成されることがあ り,面の法線ベクトルと座標3軸とのなす角が大 に近い場所に位置する 4. 参考文献
[1] S. Owen, “A survey of unstructured mesh generation technology”, 7th international Mesh Roundtable, (1998), pp.26-28.
[2] R. Schneiders, “A grid-based algorithm for the generation of hexahedral element meshes”, Engineering With Computers, (1996), Vol.12, pp.168-177.
[3] M. Price and C. Armstrong, “Hexahedral mesh genaration by medial surface subdivision: Part I”, Int. J. Numer. Meth. Engng, (1995), Vol.38, pp.3335-3359.
[4] T. Blacker and R. Myers, “Seams and wedges in plastering: a 3D hexahedral mesh generation algorithm” Engineering With Computers, (1993), Vol.2, pp.83-93.
[5] 大竹豊, “双対格子によるVCADデータから縮退六面体メッシュ生成”, ものつくり情報技術統合化研究(第5回), (2005), p.259