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若手研究者特別委員会による博士号取得者進路調査

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Academic year: 2021

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DOI: http://dx.doi.org/10.14947/psychono.34.27

176 基礎心理学研究 第34巻 第1号

若手研究者特別委員会による博士号取得者進路調査

四 本 裕 子

東京大学

Survey of Postdoctorates in the field of Psychonomic Science

Yuko Yotsumoto

The University of Tokyo

The Young Researchers Committee of the Japanese Psychonomic Society conducted a survey of postdoctorates in the field of psychonomic science. Results showed some discrepancy from national surveys: postdoctorates in the field of psychonomic science tend to have higher rates in research positions, especially in academia.

Keywords: Young Researchers Committee, survay, postodoctorates

近年,博士号取得者(ポスドク)のその後の就職状況 について,「ポスドク問題」「高学歴ワーキングプア」と いう言葉とともに,その厳しさが取りざたされている。 大学院に進学して博士号を取得しても,その後の職がな く生活が立ち行かなくなる人が増加しているというこの 問題は,社会にも広く認知されている。1990年代に実 施された大学院重点化や,1996年度から2000年度のポ ストドクター等一万人支援計画によって,博士号取得者 数は増加したものの,その後の雇用が確保されていない ことが原因と言われている。ポスドクの就業問題は,日 本に限った問題ではない。2011年のNature誌によると, ポスドクの数は増加している一方で,フルタイムのテ ニュアポジションは減少傾向にあり,博士号取得後に安 定した職に就けない研究者が増えている(Cyranoski, Gilbert, Ledford, Nayar, & Yahia, 2011)。

2013年度の文部科学省による学校基本調査によると, 大学院の在学者数は2011年度に過去最高となり,その 後は連続して減少している。人口の推移や景気もあるだ ろうが,博士号取得後の将来像が見えないという不安や 家族の反対を大学院進学を断念した理由として挙げる学 生も少なくない。同調査によると,博士課程修了者の就 職率は,2003年には54.4%という低い数字であったが, その後上昇しており,2011年,2012年,2013年度の就 職率はそれぞれ,63.9, 67.2, 65.9%である。 文部科学省のこの調査では,学問分野にかかわらず平 均した値であるため,文系と理系,さらに細かい学問領 域間の違いは明らかではない。2010年度先導的大学改 革推進委託事業「博士課程修了者の進路実態に関する研 究調査」では,博士号取得後の就職状況が学問分野別に 調査・報告されている。この報告によると,基礎心理学 会の構成員の多くが所属する人文科学系の就職率は 50%とされているが,その数字も,歴史学,美学,文 学,言語学,民俗学,文化人類学,哲学など,他の人文 科学の学問領域との平均値であるため,やや理系の要素 が強いとされる心理学の実態を正しく反映しているとは 言えない。また,これらの調査はすべて博士号取得直後 の就職状況を調べたものであり,博士号取得者の 5年 後・10年後の状況を調査したものではない。 そこで,日本基礎心理学会若手研究者特別委員会で, 基礎心理学分野で博士号を取得した者の進路を調査し, その結果を公開することで,学生や若手研究者の意思決 定の一助となることを目的として,本調査を企画した。 その際,15年前までさかのぼって調査することで,博 士号を取得した者の5年後,10年後,15年後の就職状況 を明らかにすることを目指した。 方 法 大学で研究室を主催する基礎心理学会会員51人に電

The Japanese Journal of Psychonomic Science

2015, Vol. 34, No. 1, 176–179

報  告

Copyright 2015. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. Corresponding address. Department of Life Sciences, The

University of Tokyo, 3–8–1 Komaba, Meguro-ku 153–8902, Japan. E-mail: [email protected]

(2)

177 四本: 博士号取得者進路調査 子メールで依頼した。そのうち,20の研究室から214名 分の進路について回答を得た。進路状況についての回答 は,エクセルで作成された表(Table 1)に数字を入力す る形で行われた。 さらに,各研究室において博士号取得者の進路をどの ように把握しているかについて,エクセルで作成された 表(Table 2)のA∼Cの中で該当するものを選択して回 答した。 結 果 回答を得た214名分の内訳は,博士号取得の時期が過 去 1∼5年の92名,過去5∼10年の59名,過去10∼15年 の63名であった。集計結果をTable 3とFigure 1に示す。 いずれの年代についても,就職している率は,ポスド ク職を含めた就職率が 50∼60%であると報告した前出 の調査よりも高い傾向があった。過去5年の取得者では 国内ポスドクの割合が最も高いが,過去5∼10年,10∼ 15年の取得者では准教授以上の割合が最も高くなって いる。企業や官公庁の研究開発職の割合は計 10%程度 であるのに対し,研究職以外への企業への就職率は低い ことがわかる。 回答に用いた選択肢の中から,国内ポスドク,海外ポ スドク,助教・非テニュア教員,准教授以上,企業正規 雇用(研究開発・調査系),官公庁正規雇用(研究開発 Table 1. 

Table used in the questionnaire. 博士号 取得者数 ポスドク国内 ポスドク海外 助教・ 非テニュア 教員 準教授 以上 非常勤 講師 企業正規 雇用(研究 開発・ 調査系) 企業正規 雇用 (その他) 2009–2013 (H21–H25)過去5年 2004–2008 (H16–H20)過去5–10年 1998–2003 (H10–H15)過去10–15年 官公庁正規 雇用(独法 含む: 研究 開発職) 官公庁正規 雇用(独法 含む: その他) 非常勤 研究職(テ クニカルス タッフなど) 無職 不明 その他 計(学位取 得者数と 一致する こと) 「その他」の 詳細, 無職の 理由など 2009–2013 (H21–H25)過去5年 0 2004–2008 (H16–H20)過去5–10年 0 1998–2003 (H10–H15)過去10–15年 0 Table 2. 

Questions regarding investigation methods in the participants’ labs or the institutions. 調査状況について 貴学での学位取得者進路の調査状況についてお知らせください.該当する調査状況に○をつけてください. 調査状況 ○ or × A) 毎年あるいは数年に一度,全修了者を対象に進路の調査を行っている. 非加入者数 B) 同窓会,あるいはそれに類する組織の名簿による確認.同窓会に加入していないものは 不明.○の場合は,調査対象期間における博士課程修了者のうち,非加入者は何名です か? C) 修了時に確認.それ以来の追跡調査は行っていない. その他

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178 基礎心理学研究 第34巻 第1号 職)を「研究職」と定義し,准教授以上,企業正規雇用, 官公庁正規雇用,企業正規雇用を「テニュア正規雇用」 と定義した。この定義に基づいて算出した,研究職およ びテニュア正規雇用の割合をFigure 2に示す。 研究職の割合は,どの年代も約 80%という高い値を 示した。また,研究職に限らないテニュア正規雇用の割 合は,過去 5年以内に博士号を取得した人では少ない が,博士号取得後に時間が経つにつれて増加の傾向があ り,過去 10∼15年に博士号を取得した人ではその値は 68%であった。 Table 3.  Summed numbers. 国内ポスドク 海外ポスドク 非テニュア 助教・ 教員 準教授以上 非常勤講師 企業正規雇用 (研究開発・ 調査系) 企業正規雇用 (その他) 過去5年 35 6 13 15 6 4 0 過去5–10年 1 1 13 25 5 5 2 過去10–15年 3 0 7 39 3 1 0 総計 39 7 33 79 14 10 2 官公庁正規雇 用(独法含む: 研究開発職) 官公庁正規雇 用(独法含む: その他) 非常勤研究職 (テクニカル スタッフなど) 無職 不明 その他 計(学位取得 者数と一致 すること) 過去5年 4 1 4 1 1 2 92 過去5–10年 2 0 1 1 1 2 59 過去10–15年 3 0 0 0 3 4 63 総計 9 1 5 2 5 8 214

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179 四本: 博士号取得者進路調査 各研究室における進路調査状況については,20件の 回答が得られた。「毎年あるいは数年に一度,全修了者 を対象に進路調査を行っている」が 6件,「同窓会,あ るいはそれに類する組織の名簿による確認」が2件,「修 了時に確認,それ以来の追跡調査は行っていない」が7 件,「その他」が5件であった。 考 察 今回の調査結果は,基礎心理学分野での博士号取得者 の就職率は,文部科学省による調査で報告されているよ りも高いことを示した。特に,大学・官公庁・民間企業 などで研究職に就いている割合が高いことは,基礎心理 学分野での博士号取得が,専門職への就業につながって いることを示唆している。一方で,過去 1∼5年に博士 号を取得した人が,テニュアの正規雇用についている割 合は低い。 准教授以上の職を得ている者の割合は,博士号を取っ てからの年数が長いほど高いという結果が得られた。楽 観的に解釈するのであれば,博士号取得後に順調に研究 を進めていればその後の就職状況は悪くないと考えう る。しかしながら,この結果からは,博士号取得直後も しくはこれから取得予定の学生の今後の就職状況を予測 することはできない。 今回の調査は,51の研究室に依頼してそのうち回答 を得られた20の研究室のデータに基づいている。回答 が得られなかった31の研究室で博士号を取得した者の 進路と,今回の調査結果には,差がある可能性は大き い。また,回答を得られた 20研究室においても,進路 調査状況についてのアンケート結果が示すとおり,全修 了者を対象に進路調査を行っている研究室は少ない。研 究室主催者が把握している範囲のデータに基づいている ため,調査結果にバイアイスがかかっていることは否定 できない。しかしながら,研究室が把握している修了生 の数という意味では前出の文部科学省による調査におい ても同じバイアスがあると考えられるため,基礎心理学 分野と人文社会系の他の学問領域との間で,博士号取得 後の進路に大きな違いがあることは明確に示唆されてい ると考えられる。 今回の調査結果は,以下からダウンロードできます。 http://webpark1842.sakura.ne.jp/others/KisoshinSurvey2014/ 謝 辞 今回の調査にご協力いただいた基礎心理学会員のみな さまに,感謝申し上げます。 引用文献

Cyranoski, D., Gilbert, N., Ledford, H., Nayar, A., & Yahia, M. (2011). Education: The PhD factory. Nature, 472, 276–279. doi: 10.1038/472276a

文部科学省(2010).先導的大学改革推進委託事業「博 士課程修了者の進路実態に関する調査研究」 日本総 合研究所.

文部科学省(2013).平成25年度学校基本調査. Figure 2. Percentages of the academic jobs and of the

Table used in the questionnaire.
Figure 1. Percentages of the each job-category.
Figure 2. Percentages of the academic jobs and of the  tenured positions.

参照

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