理学
療
法学第35n巻第21丿
』
70−
79頁 〔2DO8年 }紹
介
本 学 院
に お
け
る
人
体解 剖
実
習
に
つ い
て
の
学
生
ア
ン
ケ
ー
ト
の
解析
人
体解
剖 実 習 お
よ び
実 習 前 後
の セ ミ
ナ
ー
に
よ
る
学 生
の
意 識
の変 化
に
つ いて
*山 田
貴
代
1)#信 崎 良 子
T)藤 原 雅 弘
1)澤 田 昌 宏
2)松 田 正 司
3)小 林
直
人
4)要 旨
愛 媛 十 全 医 療 学 院
PT ・OT
学 科
で は,
愛 媛 大 学
医 学 部の協 力
に より
2003
年
か ら専 任 講 師
の人体 解 剖 研
修
を実 施
し,
2004
年
か ら 学 生 が”
自 らメ ス を 持っ て tt 行う
人体 解
剖 実習
を行
っ てい る。
今 回
は,
人 体 解
剖 実 習 を行 う
に あた っ て 必 要 と さ れ る医
の倫
理 につ い て,
学
牛自身
が どの よう
に考 え理 解
しているか を把
握 す
ると と も
に,
その 理解
度 を向
上 さ せ る授 業
を開
発す
る 日的
で アンケー
トを実施
し た。そ
の結 果
,
1
矢の 倫 理 に 関 す る授 業 に は 効 果 が あっ た と 考 え ら れ たtt ま た,
そ も そ も 人体 解 剖
実 習 を経 験 す
る ことEl
体
が,
医療 従 事 者
に 必 要 な倫
理観
につ い て考
え さ せ ら れ る貴
重 な体 験
であ る と考
え ら れ た。今後
はアンケー
ト内
容 を吟 味
し,
学 生
の心 境
が よ り正確
にア ンケー
ト結果
に 反 映 さ れ る よう
な方 法
で実 施
していく
必要
があ
る。 また セ ミナー
の内
容 に 関 しては,
解 剖 学 知 識の補 填 を 充 実 させ る と と もに,
医
の倫
理につ い てはより
理解
しや すい 教育
方 法 を 模索 す
る 必 要 が あ る。
キー
ワー
ド人
体
解
剖 実習
,
医
の倫
理,
ア ンケー
ト背 景
と経 緯
当
学 院の理 学 療 法(
PT
)
学 科 お よ び 作 業 療 法(
OT
)学 科
は,3
年 制
の専
門 学 校 で あ る。
当学
院 は1979
年
の開校 時
より愛 媛 大 学
医学 部 解 剖 学
教室 (
現在
の解
剖学
・
発 生 学 分 野 )の 全 而 的 な 協 力 に よ り,
解 剖 体 や 剖 出 標 本 の見 学 に よ る 実 習 を 行っ て き たu そ して,
1999
年 度
よ り人体
解剖
実 習の時 間 数 を 増やす
と 共に,
チェ ック表
に よる 具 体 的 な 課 題 設 定 を 行っ て実 習の 充 実 を 図っ た。
*An
AnaLysTs uf
Questi
【n’
inaires onthe Ana匸omical Dissection Course irl the EILilne
Juzell
School of A田ed Medi〔a 且Professio1’
i/s.
Srnaii Group.
Learning for Anatomy and Medical Ethics,
andChanges k1匚he Students
’
Respons.
e1)愛 媛 十全医療 学院 理学療法 学 科
〔〒791
−
0385 愛 媛 県 東温市 南 方561番地 )Kiyo Yamada
,
RPT,
Ryoko Sinozaki「
RPT、
Masahiro Fujiwara,
RPT :Depar亡rrlellt 〔,f Physiじal Therapy
「
Ehime 」uzen Sch〔,oL of Allied Medical Prefessions2)愛媛 「
.
全医療 学 院 作 業 療 法 学 科Masahiro Sawada
、
OTR :Department of Occupat「
onal Therapy.
Ehllne
Juzen
Schc〕ol of Alhed MedicaL Professio1Ls3〕 愛媛大学 大 学 院 医 学 系 研 究 科 解 剖 学
・
発’ヒ学 分 野Seiji Ma匸suda
,
MD,
PhD; Department of Anat 〔}mv andEmbryology
、
Ehime Ulliversity School of MedicTne4) 愛 媛大 学 医 学 部 総 合 医 学 教 育 セ ン タ
ー
Naoto Kobayashi
,
MD,
PhD:Medical EducatioiユCcnter,
Ellime Univcrsity Scbeoi of N’
ledicine#
E
.
mai1;1apis@esm・
iuzen
.
ac.
ip
(受 {」口 2007年3月12日 /受理 日 2008年1月 7冂)
2003
年 度
より専 任 講 師
の入体 解 剖 研 修 を 実 施
し.
2004
年 度
より
,
本 学 院
のPT
・
OT
学 科
1
年
生が,
従
来の 見 学 型の解
剖 実習
に と ど ま らず
’
‘
自
らメ ス を持
っ て”
行 う
人体 解 剖 実 習
を行
っ て い る 1−
4♪ 。解 剖 実 習 導 入
に よっ て 教育
上 変化
が現
れ たか否
か の参 考
とし て,
1
年 次
に開講
さ れる解 剖 学
1
及
び解 剖 学
H
の成 績
の合 計 点 数
を実 習 導
人 前
と実 習 導 入 後
とで比 較
したtt その結
果,
同一
の講 師
の下で,
導
入前
の3
年
間の平 均点
は69.
8
点
,
導
入 後3
年
間
の平 均 点
は74
,
7
点
であ り
,解 剖学
の成 績
の向
上が 認 め ら れ た。ま
た,
当 学 院
で毎 年 夏 休
み前
に実 施
し てい る 基礎
医学
の試 験
において も 同様
の変 化 が 認め ら れ た。
し か しこ れ らの デー
タ は,
実 習 導
入 以外
の様
々な 因 子も影
響
して い ると考 え
ら れ,
今 後 も推 移 を観 察
し ていく必 要
が ある。
PT
・
OT
の教 育 課 程
に おけ
る人体 解 剖 実 習
につ い て は,
以前 か
らのそ
の必 要性
が訴 え
ら れ てき
ている5 脚。
し か しなが ら,
2005
年
3
月 に報 告
さ れ た 「コ メデ ィ カ ル教 育
に おける人体 解 剖 実
習の本格
的導
入 に向
けての養成 校 側
の準 備 体 制 整 備 」
m〔
理学 療 法
士養 成 校
172
校
送付 中
128
校
より
同答
され,
有 効
回 収数
127 校,
有 効 同 収率
73
.
8
%)
に よ る と,
人体 解 剖 実
習 を ピン セ ッ ト・
メ スな
ど を用
い た剖 出 を 含
め て行
っ てい る養 成 校
は28
.
3
%あ
る,
、
コ メ デ ィ カ ル教 育
の た め に 人体 解
剖 実 習 を実 施
する こ とが,
法
的に適
切であ る かどう
かとい う論 点S) につ い て は ,1992
年
に 日 本解
剖学 会
がコ メディカル教
育 委
員会
を 設 置 す る な ど十年
来の議 論 が な さ れてい る6) に も 関 わ らず
結論
が 出て いない。
坂井
は その法 的 論 点
を,
以下
の5
つ の理 由
に集約 し
て い るIL,
)。1
点 目
は人体
解 剖
の目的
,
2
点 冂
は有 資 格 者
に関す
る点
,
3
点
凵は人
体 解 剖
の場 所
,
窪点
目は倫
理・
礼 意
に関す
る点
,5
点
目 は献 体 者
の意 思
であ
る。坂 井
による1
点
目の論 点
,
す な
わち 人体 解 剖
の囗的
につ いて,
死体 解 剖 保 存 法 第
一
条で は「医学 (
歯 学
を含
む)の教 育
に資 す
る」
と定
め られて おり
,
こ の「
医 学
(
歯 学 を含
む)
」
にコ メディカルが 人 る か 否 か が 論 点 に なっ ている、
,
現 在 ま で に 明 確 な 結 論 は 出 てい ないが,
小林
は「
有 資 格 者
の指 導
ドであっ て も 人体 解
剖の実習
が 医療
技術 者 養
成機 関
の学
生 に は許
さ れ な い と解
釈 さ れる の であるな ら,
文部省
や厚
生省
は実 態
に合
わ せて解 釈
を変
える方 向
で整 備
・
検 討す
べき」
tt と し,
法
整備
の必要性
を提 言 す
る と共
に.
医 療 技 術 者 養 成 機 関
の学
生 が解
剖 実習
に参 加 す
る ことは現 法
の趣旨
にも合
致 し たも
の と 主張
している。次
に,
有 資 格 者 お
よ び場 所
に関 す
る点
につ いて は,
「
系 統 解 剖
に関 す
る死 体 解 剖
の右
資 格 者」
の指 揮
・
監 督
のも
とで,医学 剖
≦ま
た は歯学 部
の「
特
に設
け た解 剖 室
1
で実 施 す
る 必 要 が あ る(
死体 保 存
法 第 九 条)
。
倫
理・
礼 意
に 関す
る点
につ いては,
同法
ニー
ト条 に 「特 に 礼 意 を 失 わ ない よう
に 注 意 し な け れ ば な ら ない」
と あ る。
最後
に 献 体 者の意 思 につ い て は,
医 学 及 び歯
学 教育
のた めの献 体
に 関 す る 法律 (
献 体 法 ) 三 条に「
献 体
の意 思 は,
尊
重 さ れ な け れ ば な ら ない」
と謳
わ れ てい 70,
,
最 後 に挙 げ
た 点 は,
1
点
凵の論 点
で あ る 凵的
に つ い ての明確
な解 釈
が な さ れてい ない か らこそ 非 常 に重
要 だと考 え ら れ る。
愛
媛 大学
で は,
2003
年
にコ メ ディ カルの解
剖実
習 につ い ての説 明 文 と承 諾 書 を,
献 体 登 録者
の団体
であ る愛 媛 大 学 白 菊 会
の会
員全
て に郵 送 し,
直
接 文 書 でコ メディ カルに よ る解 剖
の承 諾
を得
てい る])2 )。
ま た,2003
年
に は愛
媛 大学 白菊
会 会報 「
し ら ぎ く」 に コ メディ カル の解
剖 につ い て理解
を 求 め る 記事
を掲 載 し,
その後
も経 過 報 告の 記事
を定
期 的 に掲 載
し てい る13−
ls )u これ らの活 動
に よ り, 当 学 院のPT
学
科
の学 生 が“
自 ら メ スを持
っ て”
行 う人体 解 剖 実
習の実
現 に 至っ てい る。
2
点 目 と3
点 目の 論 点 につ い ては,
愛
媛 大学 医 学 部
に お け る解
剖 学の主任
教 授 〔筆
者
の松
田)
の管
理責 任
の も と で 同 学部
の解 剖 実 習 室におい て実習
を 行っ ている。
4
点 目の論 点 につ い て は,
解
剖 実習
を 実 施 した学
生 は 全員
慰 霊祭
に 出席
し,学
生の代 表 者
が 遺 族 に直接 御
遺骨
を 返 還 している。
学 生 が慰
霊祭
に参
加 す ることで,
献 体 者の バ ッ ク グラ ウ ン ドを知
る事
がで き,
再
び献体 者
の意
思 につ いて 考 え る と共 に 倫 理 観 を 成 長 さ せ る機
会 を得
る こ と が山 来
ると考 え
る。
その他
,
実
習 開 始 時 お よ び終
了時
の黙 祷.
を励 行
し,
献 体 者
に礼
意 を尽 くす 実 習
に な る よう
に促
し ている。
人
体解
剖 実 習
を学
生 に導
入 す る に あ たっ て は,解
割学
の知 識の他,
献 体 者
に対 する礼 意 を含
め た 医の倫 理 につ いて も学
生自 身
が考
える必要
が あるu従
っ て,
その内容
や形 態
には様
々な可 能 性 が あ
るとし
ても
,
事 前
に医
の倫
理につ い て の授 業 を実 施
し,
必要
と され る倫 理 観
を学
生自身
が身
につ けてお か な け ればならない。
事 実
,
医 学 部
の入体 解 剖実 習
に おい て,
医
の倫 理 を無 視
した 医 学 生
の 言動
が 取 り立 て ら れ,
退 学 処 分 に なっ た例 も存 在
する。
PT
・
OT
・
ST
を 含
む コ メ デ ィカ ル学
生対 象
の解 剖 実
習を 遂 行す
る に あ たっ て,
同様
な 例 が危 惧
さ れ ないと
は 言い切 れ ず,
未 然 にこ のよ う な 問 題 を 防ILす る 必 要 が あ る、
t何
より も
,
献 体 者
の意
志 を考
え る と,
医
の倫
理 につ いて理解
がで きていない学
生 に は 人体 解 剖
実習
を 受 講 さ せる こと はで き ない。
先
述の「
死体 解 剖 保 存 法 」 「
献 体
法 」 も献体 者
に対
して礼 意
を尽 くす
こと を求
めてい る。当 学 院
では,
人体 解 剖 実 習
を行 う
にあ
たっ て必要
と さ れ る知 識
につ いて は,
解 剖 学 講 義 (
ユ年
次前期
に2
単 位
,
同 年 後 期
に2
単 位 ) を中 心
に講 義 され
,
そ
の補 填
とな
る人体 解 剖 実 習
セ ミナー
も別 途実 施 し
てい る(
図
ユ,
表
1
)
。
人 体 解 剖 実
習は ユ年
生の8
月
に実 施
され る が,
医
の倫
理 につ い て 学生
に自覚
さ せ て おく
必要
が あ ると考 え
,
その た め に 医の倫
理セ ミナー
も
以 ドのよう
な内容
で実 施
して い る。
これ は4
〜
6
名
での 小 グルー
プでの 意 見 交 換 を 主 と す るセ ミ ナー
で あ り, 人 体 解 剖 実 習前
のみ な らず
, 実 習後
も 継 続 して実施
し た(
図L
表
2
:
.
.
今
回の研
究では,
学
生 を対 象
に 人学
当 初・
人体 解 剖
実習 直 前
・
学 年 末
にア ンケー
トを 実施
し,
入学
時 に どのよう
な倫
理観 を持
っ てい る か 調査
し,
そ れ が実
習の串前
に 実 施 さ れ る 人体 解
剖 実習
セ ミナー
及び医の倫 理セ ミナー
に よっ て どの よう
に 変 化 す る か捉 え
ること を試
み た。
ま た そ れ に よ り,
学生
が 医療 職
に就 く
という事 を 自覚 す
る という
目 的 に おい て,
医
の倫 理の授業
を 人 体 解 剖 実 習 後 に も取
り入 れ ること に・
定
の効 果 が あ るのか を 判 断 す る一
助
と す る と 共 に,
次 年 度
の取 り組
み を考 え
ること
に役
立 て るこ とを 冂 的とす る、
、
対 象
お よ び方 法
ア ンケ
ー
ト内容
を表
3
に 示 す。
各
設 問 に,A
:そ う 思う
(yes)
,
B
:ど ち ら か といえ
ば そう
思う
,C
:ど ち ら と もい え ない,
D
:ど ち ら か といえ
ば そう
思 わ ない,
E
:そう
思 わ ない(
no)
の記号
を 記 入 して も ら う 方 法で,
無 記名
で実 施 し た。
ア ンケー
ト用 紙 はA4 一
枚 に 片 面 印 刷 と し た。
ア ンケー
ト項
目 は,
大
きく分 類
して,
「
死」
につ い ての質 問
,
解
剖体
へ の敬 意 につ い ての質
問, 解 剖 実 習の意義
理 解 につ い ての質
問,全
22
問 と し た。
ま た,
回答
が肯 定
や否定
に ば らつく
よう
に意 図
し た質 問 形 態
に よっ て,
ア ンケー
ト内容
を しっ か り 読 む 様 に 促 し,
考 え72 理学 療 法 学 第35巻 第2号
解 剖 実 習 ガ イ ダ
ン ス アンケ
ー
ト
u
解 剖 実 習 ガ
イダ
ン ス アンケ
ー
ト
u
アン ケー
トu
解
剖 学
1
(
1
単
位 )
*解
剖 学
H
(
ユ単
位
)
* *解 剖学
皿(2 単位 )
* * *人 体
解
剖 実
習
セ ミナ
ー
人 体
解
剖 実 習
(
半 日
×60
)
医
の倫 理
セ ミナ
ー
医
の倫
理セ ミナー
4
月7N
8
月
10
月
1
月
2
月
解 剖 学 講 義 内 容
*
骨 学
・
筋 学
・
神 経 学
**
循 環 器
・
呼 吸 器
・
消 化 器
・
泌 尿 生 殖 器
・
内 分 泌 系
・
感 覚 器
・
解
剖
につ い て・
献
体
につ い て* * *
組
織 学
・
発生
学
・
神 経 解剖 学
・
肉
眼
解
剖
学
図1
人体 解 剖 実 習 関連 授 業の実 施 時期 表1 入体解Sil
実習セ ミナー
の授 業 内容 表 2 医の倫 理 セ ミナー
の授業内容 第1回オ リエ ンテ
ー
ショ ン,
実 習 概要 第2
回 医の 倫 理 グルー
プワー
ク 第3回上 肢の筋
・
神
経につ い て 第4
回 グルー
プワー
ク 第5
回Il
肢の筋・
神 経につ い て 第6
回 グルー
プ ワー
ク 第7
回頸部
・
体幹の筋
・
神経
につ い て 第8
回 頸 部・
体 幹の筋・
神 経 につ い て第
9
回卜
.
肢の筋
・
神
経につ い て 第10
回 グルー
プワー
ク 第11
回 卜肢 の 筋・
神 経 につ い て 第12回 筆記 試 験 第13
回実 習 オ リエ ンテ
ー
ショ ン (用 只・
手 順・
概 要 な ど) て か ら回答
させ る 工夫
を した。
アンケ
ー
トの対 象
は2005
年 度
の ユ年
生 で,
授 業 時 問内
の 20 分 間 に 同 答 して も らい,
100
% 回 収 し た。
ア ン ケー
トの 実 施 時 期 は,
入学 当
初(
4
月 )
,
人体 解 剖 実 習
直
1〕
『 (
7
月)
お よ び 学年 末
(
1
月)
の3
同 で あり
,
ア ン ケー
トの配 布 数 は,
入 学 時40
名,
人 休解
剖 実習 直 前
は39
名
, 学年 末
は38
名
で あっ た。
この学 年
の入学 時
の平
均 年 齢
は20.
1
歳
であ
り,
その内
訳 は,
高卒 者
29
名
,
大卒 者
9
名
,
短 大 卒 1名,
専 門 学 校 卒1
名で,
高 卒 者 以 外 の11
名
の学 生のう
ち, 社会
人経
験(
医 療 関 係
3
名
・
教
育 関係
2
名
・
医療 系
以外
の技
術 職2
名 )
を し てい る学
生 は7
名
で あっ た。
ま た,
ア ンケー
トを 実 施す
る前に,
こ の アンケー
トの 目 的 と その方 法
につ い て説 明
し た。1
−1
的
は,
解 剖 実
習 に 対 す る心
理 状 況の把 握,
解剖 実 習
セ ミナー
の 授 業 改 善,
研 究 に 使 用 す る 情 報 収
集
と し,
ア第
1回 :1
生一
ま た は 「死」をテー
マ にして自 由論 文 作 成 第2回 :老齢疑 似 演習1
あ な た は83歳の独 居 老 人 』 第3同 :安 楽死『あ な た が不治 の病に か かっ た と き
,
安 楽死 を 望 み ま す か剤第
4
回 :家 族の 死 『配偶 者の余 命が宣 告さ れ た と き,
あな た は どのよう に過ご しますか ?』 第5回 :ア ル ツハ イマー
病 『あ な た がア ル ツハ イマー
病だ と分かっ た と き,
どの よ うに過ご し ますか ?』 第6回 :無 脳 児の臓 器 提 供1
「あ な たの子 ど も が羆脳 児で 生 ま れ た と き,
臓 器提 供 を し ま す か ?』第
7
回 :交 通事
故で下 半 身 麻 痺に なっ た 『交 通事故 で脊 髄 損 傷に なっ た あ な た は,
今 後の生活 設 計を どの ように しますか ?』 (第
2〜
7回 は各
々 の テー
マ につ い て,
配 布 資 料に元つ く意 見の 表 明 と小 グルー
プ討 論) {吏用 !塞1
書17 :: …
一
生・
老・
病・
死 を考 える15章 実 践・
臨 床 人 間 学 入門一
1 庄司 進一
編 著 朝日新 聞 社,
2003年 ンケー
トを使
用 した研 究
に際
し て は,
個
人 の情 報
とし て は扱
わず
,
回答 者が 不 利 益
とな
る よう な事
はな
い と説 明
し,
同意
を得
て実 施
した。
関 連 す
る カ リ キュ ラ ム の スケジュー
ル は図 ユに 示 す 通り
であ
る。入 学 当 初
の アンケー
トを実 施
した後
す ぐに 人体 解 剖実 習
の ガイ
ダン スを行
い,
4
月 中 旬
より解 剖 学 講
義
を中
心 とし て計 画 的
に人体 解 剖 実
習セ ミナー
を 実 施表3 ア ンケ
ー
ト内 容 自分の 身 近 な 人の死を経 験し た こ と が あ る 人の死 は身近 な ものだ と 感 じ る人の死 は 「
1
常
的なこと だ と 思う他 人の死 は
,
臼 分 に は関係のない こと だ と思 う「死 」を考え る こ と は嫌だ 「死」を考え る意 味は よく分か らない 他 人の死 を 自分の身近 な 人に置 き換 えて想 像するこ とは で きない 自分の死 を 世の中のた め に活 か して欲 しいと思 う
臼 分の身近な 入 が
,
自分の死を他 人のため に活かすこ と は賛成でき る 将 来,
自分が医療 人と して働 くには人体 解 剖実習 は 必 要 であ る と 思う 人体 解 剖 実 習で献 体 を触 るのは気 持 ち悪い 人体 解 剖 実 習で献 体を見る の は怖い 人体 解 剖 実 習 はできれ ばや りた く ない 人体 解 剖 実習の話 を聞くよ りも早 く 実 際 に体験 し たいPT
になるため に人体 解 剖 するという
の は 理解
で き ない 献 体 も標 本と 同 じ扱い で良い と 思 う 1.
白分がPT になっ
たと きに,
人体解
剖 実 習は役
立つ と 思う
人 体 解 剖 実 習 を 実 施 す る 前 に,
勉 強 し な け れ ば な ら ないと思 うこと が た く さ ん あ る と 思
う
人 体解 剖 実 習 を実 施 する前に 必要な知識 は だい たい
身
に イ寸くと思 う 人体 解 剖 実 習 を実 施した後に は,
得るものが たくさ ん あ る 〔あっ た) と思う自分が 脳 死 に なっ た
場
合,
臓器 提 供を して も良いと 思う自分 が 夕匕亡 し た と き に 献体と して 自分の身 体を提 供して
も
良
い と 思う
し,
平 行
し て医
の倫
理セ ミナー
も開 講 (
月
に1
回
,
100
分 間)
す る。
人体
解
剖 実習
セ ミ ナー
の授 業 内容
を表
2
に,
医の倫 理セ ミナー
の授 業 内 容 を 表3
に示 す。
医の倫
理セ ミナー
は1
グルー
プ につ き学
生 が4
〜
6
名
で,
意 見 交 換
を
中心
と し,
最後
に 話 し合
っ た内
容 を各
班の代 表 者
が 発表
す る。
講 義 担 当 教 員 は1
名であ り,
各 グルー
プに司 会 進 行役
と書 記 を 話 し 合い に より決定
させ,
各班
で話
し合
っ た内
容の発表
者 は,
発表 直 前
に講 義 担 当教 員
が指 名す
る 方 法で実 施 し た。
8
月 よ り夏 期休
暇に入る為
,
7
月 末
の授 業
の最 後
に 人体 解剖 実 習 直前
の アンケ
ー
ト
を実 施 し
た。
そ し て,8
月22
日〜
27
凵の61
.
」問
で人体 解 剖 実 習
が 実 施 さ れ た。
その 後,
前 期 定 期 試 験 が終 了
し後
期授 業
が 開 始 さ れて以 降 に も,
医
の倫
理セ ミナー
は月
に1
度
の ペー
スで 実施
し た。
そ して,
医の倫
理 セ ミ ナー
の最 終 講
義の 際 に20
分 聞で学 年 末の ア ンケー
トを 実 施 した。
ア ンケー
ト結 果
の解析
はt
検 定
に よっ て行
い,
統 計 学 的有
意水 準
は危
険率
5
% と して処
理 し た。 ア ンケー
トの集 計
結 果 を 図2
〜
4
に示 す。
「ど ち ら か という と そ う 思 う 」は38
% まで減 少 していたtt学
年
末
に は29
% と なり
,
入学 時
と 比較 す
る と5
%の危
険率
で有
意 差 が認
め ら れ た。
『
他
人の死 を自分
の身
近 な 人に置
き換
えて想 像 す
る こと はで き ない1
という項 目
は,
入 学 当初
は30
%
の学
生が 「そ う思 う」 「
どち
らか
と いう
と そう
思う」
と回答
してい たが,
人体 解
剖実
習直前
に は10
%に減 少
し,
有 意差
が認
め ら れ た。
し か し,
学
年 末
に は21
%
と増 加 傾 向 を示
した
。『
.
自分
が脳 死
に な っ た場 合
,
臓 器提 供
をし ても良
い と思う』
という項
目は,
入学 当 初
は15
%
の学
生が「
どち
ら とも
いえ
ない」
と 回答
し,
入 体 解 剖 実 習 直 前
には33.
3
% と有 意 差
は認
め ら れ な かっ たが増 加
し,
学 年 末
に は28
.
9
% と減 少
傾向
を示
した。
また, わず
かで はあるが,「
そう
思わ ない」
と答 え
た学 生
が経 時
的 に増 加
傾向 を
示 し た。
類 似の項 目 で あ る 『自 分 が 死 亡 した と き に 献 体 と して 白分の 身 体 を 提 供 し て も 良い と 思
う』
の 囘答
も同 様
に,
「
ど ち ら と も いえ
ない」
と 回答
した学
生 は,
人 体解
剖 実習
前 に 増 加 し 学 年 末 に は 減 少 した。
そ して この項 目 に 「そ う 思 わ ない 」 と回答
した学
生 は,
入学
当 初 か ら経 時
的 に 減 少 し,
入学
当 初 と 学年 末
との比 較 に おい て は,
58
% か ら34
%へ有
意 に 減 少 した。
結
果1
.
「死 」につ いて の質
問(
図2
)
「
「
死」
を考
え るこ と は嫌
だ』
という項 目
には,
入
学
時 は53
%の学
生 が「
そう
思う」 「
ど ち ら か という
と そ う 思 う 」 と 回 答 し,
人 体 解 剖 実習 直
前で,
「そう
思う」
2
.
解 剖 体
へ の敬 意
につ い て の質 問 (
図
3
)
『
人
体 解 剖 実 習
で献 体
を触
る の は気 持
ち悪
い1
という質 問
に対 し
て,
入 学
’
1〜初
と比較 し
て人体 解 剖 実習 直 煎
で は「
そう思 う」 「
ど ち ら か という
とそ う思 う」
と回答
し た学
生 は,
47
.
5
% か ら10
.
3
%へ有 意
に減 少
し,
「
そう
思 わ ない」 「
どち
ら か という
とそ う思
わな
い」
と回答
し た学
生 は,
35
% か ら64
% と有
意 に増 加
し た、
t「
人
体
解
剖 実習
で献 体
を 見る の は 怖い』
という質 問
に対
して は,
入 学 当 初
と 比較
して人 体 解 剖 実 習 直 前
で は「そ う思 う」
「
ど ち ら か という
とそ う
思う」
と回 答
し た学
生 は,
67
.
5
% か ら56
.
4
%へ減 少
してい る もの の有 意
差 は認
め られ な
かっ た。ま
た,
「そ う思
わな
い」 「
どち らか
という
と そう
思 わ ない」
と回 答
し た学
生 も,
25
% か ら30
.
8
% と有
意 差 は認
め られ な かっ た、
学 年 末 す
な わ ち 人体 解 剖 実
習
を経 験
し た後
では,
79
% と有 意
に増 加
し た。『
人 体
解 剖 実 習
はで きれ ば やり
たく
ない』
という項
目 は,
入学
峙
は20
%の学
生 が「
そう
思う」 「
ど ち ら か という
と そ う思 う」
と回答
していた が,
セ ミナ
ー
実 施 後
には2
.
5
%
に減 少
し た。3,
解 剖 実 習
の意 義
につ い て の質 問 (
図
4
)「
自分
がPT
に なっ た と き に,
人体 解 剖 実 習
は役
疏 つ と 思う 』
という項
目は,
入学 時
には2
,
5
%が「
そう
思 わな
い」 「
どち
ら か という
とそ う思
わな
い」
と回 答
して い た が,
人体 解 剖 実 習 直 前
に は0
% とな
っ た。「
.
人体
解
剖 実習
を 実 施 し た後
に は,
得
る ものが た く さんある74
理 学療 法学 第35
巻 第2
号そう思 う
・
どち ら か とい え 「まそ う思 う どちら でもないそ う思 わ ない