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軽症脳梗塞患者における急性期病院入院中の身体活動量と身体機能との関係

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(1)理学療法学 第 230 43 巻第 3 号 230 ∼ 235 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 3 号. 研究論文(原著). 軽症脳梗塞患者における急性期病院入院中の身体活動量と 身体機能との関係* 北 村 友 花 1)# 野 添 匡 史 1) 金 居 督 之 1) 久 保 宏 紀 1) 1)  1) 2) 1) 山本美穂  古市あさみ  間 瀬 教 史  島 田 真 一. 要旨 【目的】急性期病院入院中の軽症脳梗塞患者における身体活動量と身体機能との関係について検討するこ と。【方法】院内歩行が自立している急性期軽症脳梗塞連続 25 例(以下,患者群),および健常成人 13 例 (以下,対照群)における一日あたりの総歩数を活動量計にて測定し,身体機能との関係について検討した。 【結果】総歩数は対照群に比較して患者群で有意に低値を示した(4,214 ± 1,544 歩:8,205 ± 3,232 歩=患 者群:対照群,p < 0.001)。患者群の総歩数(r = ‒ 0.45,p < 0.05)およびリハビリテーション非実施時 歩数(r = ‒ 0.46,p < 0.05)は 10 m 歩行時間と有意な相関が認められたが,リハビリテーション実施時 歩数はどの項目とも相関関係は認められなかった。 【結語】急性期軽症脳梗塞患者の身体活動量は減少し ており,その程度は 10 m 歩行時間と関係があった。 キーワード 身体活動量,軽症脳梗塞患者,急性期. Attacks;TIA)患者における身体活動量について報告. はじめに. しているが,彼らの報告における身体活動量は加速度計.  身体活動量の減少に関して,世界保健機関は高血圧,. の運動量で示されており,具体的な歩数については検討. 喫煙,高血糖に次いで全世界の死亡に対する危険因子の. されていない。歩数は健常者だけでなく様々な疾患にお. 第 4 位として位置づけており,その対策として身体活動. いて身体活動量の指標として用いられており. に関する国際勧告も発表され,身体活動に関して世界レ. 的に理解されやすい指標であることからも,患者指導等. 1). 5‒7). ,一般. ベルでの注目が高まっている 。加えて,身体活動量の. にも用いられやすいという利点がある。また,脳卒中患. 減少は種々の疾患の再発や増悪因子にもなりうることが. 者における身体活動量は身体機能を中心に様々な要因が. 知られているが,近年,歩行が自立しているような軽症. 関与していることが報告されているが,ほとんどが慢性. 脳梗塞に関しても同様の報告があり. 2). ,身体活動量の増 3). 期における報告である. 4)8). 。そのため,急性期において. 。軽症脳. 身体活動量が減少しやすい患者の特徴は,身体機能に. 梗塞患者における身体活動量は,急性発症に伴う入院期. 限っても明らかにされていない。もし,急性期において. に減少することが容易に予想されるが,この病期におけ. 身体活動量が減少しやすい患者の特徴が明らかにできる. 加を図る介入効果に関しても報告されている. る身体活動に関する報告は少ない。唯一,Billinger ら. 4). は脳梗塞および一過性脳虚血発作(Transit Ischemic *. Relationships between Physical Activity and Physical Function in Acute Mild Ischemic Stroke Patients during Hospitalization 1)伊丹恒生脳神経外科病院 (〒 664‒0028 兵庫県伊丹市西野 1‒300‒1) Yuka Kitamura, PT, Masafumi Nozoe, PT, PhD, Masashi Kanai, PT, MSc, Hiroki Kubo, PT, Miho Yamamoto, PT, Asami Huruichi, PT, Sinichi Simada, MD, PhD: Itami Kosei Neurosurgical Hospotal 2)甲南女子大学 Kyousi Mase, PT, PhD: Konan Women’s University # E-mail: kitamurayuka0827@gmail.com (受付日 2015 年 7 月 22 日/受理日 2016 年 2 月 12 日) [J-STAGE での早期公開日 2016 年 4 月 7 日]. と,それらの患者に対する指導・介入をより集中的に実 施することが可能になると考えられる。  本研究の目的は,急性期病院入院中の軽症脳梗塞患者 における身体活動量と身体機能との関係を検討すること である。 対象と方法 1.対象  対象は 2014 年 7 ∼ 12 月の 6 ヵ月間に非心原性脳梗塞 発症に伴い伊丹恒生脳神経外科病院へ入院となり理学療.

(2) 急性期軽症脳梗塞患者における身体活動量と身体機能との関係. 231. 法が処方された患者のうち,病前より歩行が自立してお. 値とした。等尺性膝伸展筋力の測定は,徒手筋力計. り,発症後 1 週間以内に院内歩行自立となった急性期軽. ミュータス F-1(アニマ株式会社)を用いた。測定肢位. 症脳梗塞患者とした(患者群)。除外基準は,下肢関節. は端座位とし,等尺性膝伸展筋力を麻痺側および非麻痺. 疾患および疼痛,循環器疾患,呼吸器疾患といった脳梗. 側ともに 2 回ずつ測定し,それぞれ高い値を体重で除し. 塞の症状以外で明らかに身体活動を阻害する因子を有す. た値(kgf/kg)を算出した。. る例,せん妄や発熱,深部静脈血栓といった合併症が生. 3)介入内容. じた例,認知機能低下に伴って身体活動量の測定協力が.  患者群の理学療法・作業療法は各対象者の心身機能も. 困難な例,研究参加に同意を得られない例とした。また,. しくは活動能力の改善を図ることを目的に,上下肢の筋. 対照群として患者群と年齢・性別をマッチさせた健常成. 力トレーニング,全身持久力トレーニング,屋外歩行練. 人 13 例についても対象とした。研究実施に際し,全対. 習,日常生活活動練習,上肢機能練習,日常生活関連動. 象者に本研究の目的および内容について説明し,同意を. 作練習,外出練習を中心に実施した。実施内容は各担当. 得たうえで実施した。また,本研究は伊丹恒生脳神経外. 者の判断のもと個別で実施することとし,実施頻度は各. 科病院研究倫理委員会の承認を得ている(承認番号. 対象者の状態に合わせて,40 ∼ 60 分 1 セッションの理. 20140002)。. 学療法および作業療法を週 5 日の頻度で実施した。 4)解析方法. 2.方法.  患者群における身体活動量は,測定期間である 7 日間. 1)身体活動量測定方法. のうち,理学療法もしくは作業療法を実施した連続 3 日.  身体活動量の測定は,患者群においては医師,看護師,. 間を対象とし. および療法士が患者の身体機能および認知機能等を総合. ション実施時間中の歩数(以下,リハ時歩数),リハビ. 的に判断した病棟管理上の安静度として院内歩行が許可. リテーション非実施時間中の歩数(以下,非リハ時歩数). され,かつ測定協力に関して対象者から同意が得られた. に分けた値も算出し,各歩数について 3 日間の平均値を. 日から 1 週間,対照群においては測定協力の同意が得ら. 算出した。対照群の歩数は測定開始 3 日目から 5 日目ま. れてから 7 日間,各対象者にワイヤレス活動量計・睡眠. での 3 日間を解析対象とした。また,患者群に関しては,. 10). ,各日における総歩数,リハビリテー. 計 Fitbit One(Fitbit 社 製 ) を 用 い て 行 っ た。Fitbit. 身長・体重・body mass index(以下,BMI) ,脳梗塞. One は 3 軸加速度計を内臓した身体活動量計であり,歩. の病型,測定開始までの日数,在院日数,解析対象日に. 数や消費カロリー,身体活動強度が算出可能である。今. お け る 点 滴 加 療 の 有 無, 入 院 後 最 重 症 時 の National. 回は,脳卒中患者において信頼性が報告されている歩数. Institute of Health Stroke Scale(以下,NIHSS)につ. 9). を身体活動量の指標として測定した 。各対象者には更. いてカルテから後方視的に抽出した。. 衣時,入浴時,就寝時を除くすべての時間において,腰. 5)統計学的検定. 部のベルトもしくはズボンに装着するよう指示した。装.  すべての結果は平均値±標準偏差で示した。各歩数,. 着状況は理学療法および作業療法実施時に各担当者が確. 年 齢, 身 体 組 成 お よ び 身 体 機 能(10 m 歩 行 時 間,. 認し,同時に各療法の開始および終了時間を記録した。. TUG)に関して,患者群と対照群で対応のない t 検定. また,測定期間中は対象者に対して身体活動量に関する. を用いて比較した。また,患者群の総歩数は非リハ時歩. フィードバックは一切行わず,測定終了後に各担当者か. 数とリハ時歩数について,対応のある t 検定を用いて検. ら 1 週間の結果のフィードバックを行うこととした。. 討 し た。 ま た, 患 者 群 に お け る PA 各 項 目 と 年 齢,. 2)身体機能測定方法. BMI,身体機能(10 m 歩行時間,TUG,麻痺側および.   身 体 活 動 量 測 定 開 始 日 に 身 体 機 能 の 評 価 と し て,. 非麻痺側膝伸展筋力)についてピアソンの相関係数を算. 10 m 歩 行 時 間,Time Up & Go Test( 以 下,TUG) ,. 出した。すべての統計学的検定は SPSS ver. 20 を用い. 等 尺 性 膝 伸 展 筋 力( 患 者 群 の み ) の 測 定 を 行 っ た。. て行い,有意水準は 5%とした。. 10 m 歩行時間は,直線歩行路を個人の快適歩行速度で 歩行し,歩行開始から終了までの 10 m の所要時間をス. 結   果. トップウォッチにて測定することとした。このとき,普. 1.対象者の属性(表 1). 段の歩行時に杖,その他の歩行補助具等を使用している.  対象者の属性を表 1 に示す。各群間の比較において,. 場合は使用を許可した。TUG は,座面高 40 cm の肘掛. 年齢,性別,身長,体重,BMI において有意な差は認. のない椅子に腰掛けた姿勢から起立し,最大歩行速度に. められなかった。患者群 25 例中 1 例はアテローム血栓. より 3 m 前方のポールを回って着座するまでの歩行時. 性脳梗塞であったが,その他の 24 例はラクナ梗塞であっ. 間をストップウォッチにて測定した。10 m 歩行時間,. た。測定開始までは 3.7 ± 2.1 日,在院日数は 12.9 ± 3.7. TUG ともに測定は 2 回行い速かった試行の秒数を記録. 日であった。解析対象日に点滴加療を行っていたものは.

(3) 232. 理学療法学 第 43 巻第 3 号. 表 1 対象者属性 患者群(n = 25) 年齢(歳). t 値もしくは χ 2 値. p値. 64.4 ± 3.4. 0.25. 0.80. 7(54). 0.07. 0.80. 162.1 ± 9.2. 0.03. 0.97. 対照群(n = 13). 64.1 ± 9.5. 男性(n,(%)). 16(62). 身長(cm). 161.9 ± 9.4. 体重(kg). 64.4 ± 11. 62.4 ± 9.8. 1.01. 0.32. BMI(kg/m2). 24.6 ± 3.8. 23.6 ± 2.2. 1.25. 0.22. 1.5 ± 1.3. -. -. -. NIHSS. 平均値±標準偏差 BMI: body mass index, mRS: modified rankin scale, NIHSS: National Institute of Health Stroke Scale.. 表 2 患者群と対照群の歩数および身体機能の比較 患者群(n = 25). 対照群(n = 13). 平均値の差. 95%信頼区間. p値 <0.001 -. 総歩数(歩). 4,214 ± 1,544. 8,205 ± 3,231. 3,991. 2,430 ‒ 5,552. 非リハ時歩数(歩). 2,224 ± 1,158. -. -. -. リハ時歩数(歩). 1,985 ± 881. -. -. -. -. 10.0 ± 3.0. 7.2 ± 0.9. 2.8. 1.1 ‒ 4.6. <0.001. 8.3 ± 2.3. 5.7 ± 0.8. 2.6. 1.3 ‒ 4.0. <0.001. 10 m 歩行時間(秒) TUG(秒). 平均値±標準偏差 非リハ時歩数:非リハビリテーション時歩数,リハ時歩数:リハビリテーション時歩数,TUG: timed up and go test. 表 3 患者群の歩数と各指標との相関係数(n = 25) 総歩数. 非リハ時歩数. リハ時歩数. 年齢. ‒ 0.28. ‒ 0.22. ‒ 0.18. BMI. 0.03. ‒ 0.09. 0.18. 麻痺側膝伸展筋力. 0.21. 0.35. ‒ 0.10. 0.07. ‒ 0.02. 10 m 歩行時間. ‒ 0.45*. ‒ 0.46*. ‒ 0.17. TUG. ‒ 0.38. ‒ 0.34. ‒ 0.20. 非麻痺側膝伸展筋力. 0.13. *:p < 0.05 **:p < 0.01 非リハ時歩数:非リハビリテーション時歩数,リハ時歩数:リハビリテーショ ン時歩数,BMI: body mass index, TUG: time up and go test. 23 例(92%)であった。. 3.軽症脳梗塞患者における歩数と身体機能との関係  患者群における総歩数,非リハ時歩数,リハ時歩数と,. 2.軽症脳梗塞患者における歩数および身体機能(表 2). 各指標(年齢,BMI,麻痺側膝伸展筋力,非麻痺側膝伸.  患者群と対照群の歩数を表 2 に示す。総歩数は対照群. 展筋力,10 m 歩行時間,TUG)のピアソン相関係数を. と比べて患者群で有意に低値を示した(平均値の差. 表 3 に示す.総歩数は 10 m 歩行時間(r = ‒ 0.45,p =. 3,991 歩,95%信頼区間,2,430 ‒ 5,552)。患者群におけ. 0.02)と有意な相関を認めた。非リハ時歩数は 10 m 歩. る非リハ時歩数は 2,224 ± 1,158 歩,リハ時歩数は 1,985. 行時間(r = ‒ 0.46,p = 0.02)と有意な相関を認めたが,. ± 881 歩であった。身体機能として,10 m 歩行時間(平. リハ時歩数はどの項目とも有意な相関を認めなかった。. 均値の差 3.0 秒,95%信頼区間,1.2 ‒ 4.7),および TUG (平均値の差 2.7 秒,95%信頼区間,1.3 ‒ 4.0)は患者群. 考   察. で有意に高値を示した。なお,10 m 歩行時間,TUG の.  本研究においては,急性期病院入院中の軽症脳梗塞患. 測定において杖や歩行補助具等を使用した者はいなかっ. 者における身体活動量と身体機能の関係について検討を. た。また,患者群における麻痺側膝伸展筋力は 0.45 ±. 行った。結果,急性期軽症脳梗塞患者の身体活動量は健. 0.11 kgf/kg,非麻痺側膝伸展筋力は 0.51 ± 0.16 kgf/kg. 常人と比べて低下しており,その程度は 10 m 歩行時間. であった。. と関係が認められていた。.

(4) 急性期軽症脳梗塞患者における身体活動量と身体機能との関係. 233. 1.急性期軽症脳梗塞患者の身体活動量. 膝伸展筋力や TUG といった最大の努力を要する運動評.  本研究において,急性期軽症脳梗塞患者の身体活動量. 価指標よりも,快適歩行速度で測定した 10 m 歩行時間. は健常人と比較して減少していることが明らかになっ. の方が,身体活動量との関係が強くあらわれたのではな. た。急性期脳卒中患者の身体活動量について,急性期脳. いかと考えられた。特に,本研究においては治療介入者. 卒中患者ではベッド臥床時間が長くなり,結果的に身体. の指示のもとによる身体活動ではなく,対象者自身の能. 活動量が減少すること. 11)12). ,さらには入院中の身体活. 動的な身体活動と身体機能との関係を検討するため,歩. 13). 数をリハ時歩数と非リハ時歩数に分けた値を算出し,そ. 動量は機能予後とも関連することが報告されている 4). 。. は急性期病院入院中の脳卒中患者. れぞれの関係性について検討した。その結果,リハ時歩. における身体活動を検討しているが,あくまで加速時計. 数ではなく非リハ時歩数と 10 m 歩行時間の関係があっ. における運動量を算出しているだけで歩数を身体活動量. たことからも,日常生活における能動的な身体活動は快. の指標としては用いられていない。身体活動量の指標と. 適歩行速度と関係があると考えられた。. また,Billinger ら. して,歩数は多くの患者にとっても理解しやすい指標で あり,改善を図る際にも目標値を決定しやすいという利. 3.臨床応用. 点があることからも,急性期脳卒中患者における歩数を.  本研究では,急性期脳梗塞患者の身体活動量は低下し. 検討することは重要と考えられる。急性期病院入院中に. ており,その程度は 10 m 歩行時間と関係があることが. おける身体活動量について,心大血管疾患患者において. 明らかにされた。先行研究から,脳梗塞発症 3 ヵ月時点. 5). における身体活動量の低下が脳卒中の再発や心血管系イ. は約 4,100 歩であることや. ,心不全患者においては半 14). 2). ,それぞれ健常人と. ベント発生要因になることからも ,脳梗塞患者におけ. 比較して有意に減少していたことが報告されている。一. る二次予防として,脳梗塞発症後いかに身体活動量を維. 方,慢性疾患を有する高齢者においても,急性期病院入. 持・増加できるかが重要になってくると考えられる。心. 院中においては多くの患者が 2,000 歩未満の歩数であり,. 血管患者においては,セルフモニタリングの指導を行い. 数以上が約 5,000 歩未満であり. 半数以上は 4,000 歩未満であったと報告されており. 6). ,. ながら急性期患者における身体活動量の増加を図ること 15). 。本研究結果から考えると,. 我々の結果同様に,多くの患者において急性期病院入院. が可能といわれている. 中の身体活動量は減少することが確認されている。各疾. 軽症脳梗塞患者においても歩行速度の低下した患者を中. 患において身体活動量が減少する要因は異なる可能性が. 心に身体活動に関する指導を行うことは急性期病院入院. あるが,一方で,点滴加療のように疾患の急性期発症に. 中の理学療法介入の一手段として重要ではないかと考え. 伴い病院内で生活を送るという環境面の変化は共通して. られた。. いる。本研究においても多くの対象者が点滴加療を行っ ており,今回の結果から環境面の影響を検討することは. 4.研究の限界. できないが,健常人と比較して入院患者で身体活動量減.  本研究の限界点として 1 つ目に,対象者は活動量計を. 少を招く要因である可能性は十分に考えられる。. 自己管理できる患者に限られていたために,多くの脳梗 塞患者に本研究結果をあてはめることはできないことが. 2.急性期脳梗塞患者の身体活動量と身体機能との関係. 挙げられる。2 つ目は,対象者におけるリハビリテー.  今回,急性期脳梗塞患者の総歩数と非リハ時歩数と相. ションの介入方法については規定以上の統一ができてい. 関が認められたのは,10 m 歩行時間であった。Michael. ないことが挙げられる。本研究で対象となったものの理. ら. 8). は,慢性期脳卒中患者の身体活動量において 10 m. 学療法・作業療法は各対象者の状態に合わせて治療介入. 歩行速度とバランス能力が関連していると述べており,. 者が個別に検討して行っており,治療介入者の判断で身. 本研究の結果もそれを支持するものであったが,バラン. 体活動量が増減する可能性は考えられる。3 つ目は,本. ス能力の指標である TUG との関連性については異なっ. 研究においては身体活動量と身体機能との関係は検討で. た傾向を示した。その要因として対象者における重症度. きたが,身体活動セルフ・エフィカシー,転倒恐怖感や. の違いが考えられる。先行研究における対象者は本研究. 活動意欲,抑うつ傾向といった心理面といった他疾患等. の対象者よりも重症例が含まれており,歩行補助具や杖. で身体活動量と関連性が指摘されている項目との関係は. を使用していることから,バランス能力との関連性も抽. 検討できていない。多くの脳梗塞患者が抑うつ傾向を示. 出されていたと考えられた。また,膝伸展筋力について. し,転倒恐怖感が増強することが報告されていることか. も麻痺側および非麻痺側ともに身体活動量と関係は認め. らも. られなかった。本研究における身体活動は,けっして高. とも必要と考えられる。. 負荷の運動のみを測定したわけではなく,日常生活にお ける歩数も多く含まれた結果である。そのことからも,. 16)17). ,これらの指標との関連性を検討していくこ.

(5) 234. 理学療法学 第 43 巻第 3 号. 結   論  本研究においては,急性期病院入院中の軽症脳梗塞患 者における身体活動量と身体機能の関係について検討し た。結果,急性期軽症脳梗塞患者の身体活動量は減少し ており,その程度は歩行速度と関係が認められた。歩行 速度が低下した急性期脳梗塞患者では身体活動量増加を 図るなんらかの介入を行う必要があると考えられた。 謝辞:本研究に際し,多大なご理解とご協力をいただき ました伊丹恒生脳神経外科病院リハビリテーション部ス タッフの皆様には深く感謝いたします。また,協力して 下さった患者様に心より感謝いたします。  本研究は日本理学療法士協会の助成を受けて実施した ものである。 文  献 1)Global Recommendations on Physical Activity for Health. http://whqlibdoc.who.int/publications/2010/9789241599979_ eng.pdf(2015 年 4 月 25 日引用) 2)Kono Y, Kawajiri H, et al.: Predictive impact of daily physical activity on new vascular events in patients with mild ischemic stroke. World Stroke Organization. 2015; 10: 219‒223. 3)Mansfield A, Wong JS, et al.: Use of AccelerometerBased Feedback of Walking Activity for Appraising Progress With Walking-Related Goals in Inpatient Stroke Rehabilitation: A Randomized Controlled Trial. Neurorehabil Neural Repair. 2015 Jan 20; pii:1545968314567968. 4)Billinger SA, Arena R, et al.: American Heart Association Stroke Council; Council on Cardiovascular and Stroke Nursing; Council on Lifestyle and Cardiometabolic Health; Council on Epidemiology and Prevention; Council on Clinical Cardiology. Physical activity and exercise recommendations for stroke survivors: a statement for healthcare professionals from the American Heart. Association/American Stroke Association. Stroke. 2014; 45: 2532‒2553. 5)井澤和大,渡辺 敏,他:心大血管疾患患者における入院 期の身体活動量とその関連要因についての検討.心臓リハ ビリテーション.2008; 13(1): 176‒179. 6)河崎雄司,武田賢一,他:慢性疾患を有する高齢者の歩数 とその関連因子についての検討.日本臨床生理学会雑誌. 2013; 43(3): 125‒133. 7)Bravata DM, Smith-Spangler C, et al.: Using pedometers to increase physical activity and improve health: a systematic review. JAMA. 2007; 298: 2296‒2304. 8)Michael KM, Allen JK, et al.: Reduced ambulatory activity after stroke: the role of balance, gait, and cardiovascular fitness. Arch Phys Med Rehabil. 2005; 86(8): 1552‒1556. 9)Fullk GD, Combs SA, et al.:Accuracy of 2 Activity Monitors in Detecting Steps in People With Stroke and Traumatic Brain Injury. Phys Ther. 2014; 94(2): 222‒229. 10)Mudge S, Stott NS: Test‒retest reliability of the StepWatch Activity Monitor outputs in individuals with chronic stroke. Clin Rehabil. 2008; 22: 871‒877. 11)Bernhardt J, Dewey H, et al.: Inactive and Alone Physical Activity Within the First 14 Days of Acute Stroke Unit Care. Stroke. 2004; 35: 1005‒1009. 12)West T, Bernhardt J: Physical activity patterns of acute stroke patients managed in a rehabilitation focused stroke unit. Clinical Study. 2013; Article ID438679. 13)Askim T, Bernhardt J, et al.: Physical Activity Early after Stroke and Its Association to Functional Outcome 3 Months Later. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2014; 23(5): e305‒e312. 14)Dontje ML, van der Wal MH, et al.: Daily physical activity in stable heart failure patients. J Cardiovasc Nurs. 2014; 29(3): 218‒226. 15)Izawa KP, Watanabe S, et al.: Determination of the effectiveness of accelerometer use in the promotion of physical activity in cardiac patients: a randomized controlled trial. Arch Phys Med Rehabil. 2012; 93(11): 1896‒1902. 16)福尾実人,田中 聡,他:在宅脳卒中患者における身体活 動量の現状と影響を及ぼす因子の検討.理学療法学.2014; 29(2): 233‒238. 17)Schmid AA, Acuff M, et al.: Poststroke fear of falling in the hospital setting. Top Stroke Rehabil. 2009; 16(5): 357‒366..

(6) 急性期軽症脳梗塞患者における身体活動量と身体機能との関係. 〈Abstract〉. Relationships between Physical Activity and Physical Function in Acute Mild Ischemic Stroke Patients during Hospitalization. Yuka KITAMURA, PT, Masafumi NOZOE, PT, PhD, Masashi KANAI, PT, MSc, Hiroki KUBO, PT, Miho YAMAMOTO, PT, Asami HURUICHI, PT, Sinichi SIMADA, MD, PhD Itami Kosei Neurosurgical Hospotal Kyousi MASE, PT, PhD Konan Women’s University. Purpose: This study was to examine physical activity in hospitalized patients with mild ischemic stroke and consider the relationships between physical function. Methods: We calculated physical activity by measuring daily number of steps in subjects who were consecutive 25 patients with acute ischemic stroke walking independence in hospitalization after onset (groups of patients), and 13 healthy adults (control group). We measured the relationships between these results and physical performance. Result: physical activity showed a significantly lower value in the patient group compared to the control group (4,214 ± 1,544 steps: 8,205 ± 3,232 steps = patient groups: control group, p <0.001). physical activity (r = ‒ 0.45, p < 0.05), and non-rehearsalat the physical activity (r = ‒ 0.46,p < 0.05) group of patients was observed only relationships between 10 m walking time; however rehearsal time physical activity was not a significant correlation among any parameters. Conclusion: The physical activity amount of acute mild ischemic stroke patients has decreased, the degree have relationships between walking speed. Key Words: Physical Activity, Mild ischemic stroke patients, Acute phase. 235.

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